高垣楓「肉まん」 (36)
秋の陽は釣瓶落とし、とはよく言ったものです。
十二月も目前に控えたこの時期は、ほんの少しの間でも空から目を離してしまうと、
気付いた時には星が輝いていたりします。
夜は好きじゃないとかお昼が大好きだとか、特にそういった人間でもないのですが、
気を抜くと逃げて行ってしまう暖かさが、何だか無性に勿体ない気がしてしまって。
アイドルにとって、またモデルにとって、そもそも女性にとって、寒さは油断ならない大敵です。
事務所は少々やり過ぎじゃないかしらと心配になる程しっかり加湿されていますし、
年少アイドルにも分かりやすいよう、壁のあちらこちらに保健機関の喚起ポスターが貼ってあります。
お陰で今シーズンは未だ病に伏せるアイドルが出ていません。
コートの裾を直し、ネックウォーマーの位置を整えます。
ありがたい事に、私はアイドルとして中々の人気が出始めてきました。
所属当初は特に気を使っていなかった服装も、
最近はなるべく変装するようにプロデューサーからお願いされてしまって以来、
街中では帽子や眼鏡を身に着けるようになりました。
なので夏に比べ、この季節は変装がしやすくて楽なのです。
夏のマスクやマフラーは大変目立ちますから。
「ほぉっ……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492782937
どんなものに季節を感じるかというのは、人によって様々な考え方があるかと思います。
ニュースの冒頭で読み上げられる二十四節気だったり、
それこそモデルであれば、お仕事で先取りする服に感じたり。
私が冬の訪れを感じる合図は、
とてもありきたりかもしれませんが……吐く息が白く、白く色づく事。
そして合図を確かめると、私は冬を迎える儀式の準備へ入ります。
儀式、は少し大げさかもしれませんね。
でも、誰にだって「これといえばこれ」みたいな習慣があるのではないでしょうか。
縁日と言えば焼きそば、一杯目はビール、といったような。
私の場合は――
白い霧となって流れ去る吐息を見送り、私はよしと深く頷きました。
来たる冬将軍を迎え撃つべく、コート姿の行き交う街中を眺め回します。
特に贔屓がある訳でもありませんが、やはりここは王道を攻めるべきでしょうか。
緑色の看板と鎬を削るようにして並ぶ橙色を見つけて、私は歩き出しました。
「セブンイレブン、いい気ブン♪」
良いCMですよね、あれ。
魅惑の柔肌こと高垣楓さんのSSです
http://i.imgur.com/HWRveDm.jpg
前作とか
高垣楓「プロデューサーも私とえっちな事、したいんですか?」 ( 高垣楓「プロデューサーも私とえっちな事、したいんですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492219846/) )
渋谷凛は背中が弱い ( 渋谷凛は背中が弱い - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490421457/) )
この冬に頒布した本の一節へ微修正を施したものです
― = ― ≡ ― = ―
自動ドアをくぐると、思わず吐息の零れてしまうような暖かさに包まれました。
環境破壊が叫ばれて久しい昨今ですが、
この安心感を享受する身ではなかなか声を上げにくいのもよく分かります。
さぁ、どうしましょう。
目的のモノはもう決まっているけれど、それだけっていうのもちょっと味気無いし。
まずはブラついてみよう、と右を見たところで、よく知った姿を見つけてしまいました。
「あれ。ばんわー。か……」
途中で気付いたように口を噤んだのは、制服姿で立ち読みをしていた加蓮ちゃん。
変装中の私を見て、悪戯に笑いながら口元へ指を立てました。
事務所には二種類のアイドルが居ます。
つまり、変装をするか、しないかで。
加蓮ちゃんは後者で、何か面倒くさい、と非常に分かりやすい理由を貫いています。
一方で、最近になって変装する派になった卯月ちゃんのような娘も居ます。
理由を訊ねてみると、
「えへへ……何となーく、アイドルっぽいかなぁ、なんて♪」
と、はにかむものですから、思わず私が頭を撫でてしまうのも無理はありません。
>>21
> 箱へしまい込んだヒールさん達から目を逸らし、
こういう一文にやられる
楓さんにはいい加減ガラスの靴はいてほしいわ
無冠の女王っていうのも確かにカッコいいけど、もう履かせてあげたいんよ…
>>32
周子「もうボイスあるんでしょwwwwww」
凛「アニメも終わっちゃったしwwwwww」
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