モバP「蘭子を思いっきり甘やかしたい」 (64)

P(神崎蘭子、熊本出身の14歳。

その独特なファッションと喋りで、幅広い世代から人気を博している。

一見奇抜に見える言動だが、それでもなお高い人気を維持しているのはひとえに彼女の本来持っている人柄、魅力による所が大きい。


しかし、彼女はまだ14歳の少女。

親元を離れ、競争の激しい芸能界に身を置いて入れば本人も気付かない内にストレスを溜めているに違いない)




P「という訳で、蘭子を思いっきり甘やかしたいんです」

ちひろ「どういう訳か分かりませんが、ダメです」

P「なぜ!?」

ちひろ「なぜも何も、どうせいかがわしいことでも考えているんでしょう?」

P「そ、そんな訳無いじゃないですか!ちゃんとした理由がありますから!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491658587

……

ちひろ「……大体の事情は分かりました。

まだ完全に信用してはいませんが、まあいいでしょう」

P「よっし! ありがとうございます!」

ちひろ「今日くらいは大目に見てあげます。

ただし、R的なことは厳禁ですよ?」

P「何言ってるんですか。

当たり前ですよ、そんなの」

ちひろ「……本当に?」

P「……と、当然じゃないですか」

ちひろ(こいつ……)

蘭子「闇に飲まれよ!」

P「おっと噂をすれば」

ちひろ「おかえりなさい、蘭子ちゃん」

蘭子「我が友よ、与えられし使命は既に果たしたか?」

P「今日の仕事か?だったらまだ……」

ちひろ「あ、今日はもう上がってもいいですよ」

P「えっ?」

ちひろ「後の仕事は私がやっておきます。

蘭子ちゃんもプロデューサーさんに用事があるみたいですし、さっき話していた事をするならいい機会じゃないですか。

それとも嫌なんですか?」

P「いいえ滅相もございません! ありがとうございます!

ってことで蘭子、用件は何だ?」

蘭子「うむ、今日は我が友に生贄の儀式に参加してもらおう!」

P「生贄の儀式……?」

ー女子寮、食堂

P(肉の焼ける音と良い匂いがする。

生贄の儀式っていうから何事かと思ったけど、ハンバーグのことだったのか)

蘭子「……できた!」

P「お、完成したか。

じゃあ俺は食器の準備でも……」

蘭子「プロデューサーさんは座っていて下さい!」

P「そ、そうか」

……

P「ごちそうさま。 美味しかったぞ」

蘭子「えへへ、良かったです!」

P「それにしても、どうして今日はハンバーグを?」

蘭子「……こほん。

えっと、今日は私の誕生日じゃないですか。」

P「……ああ、そうだな」

蘭子「私が今までアイドルとしてやってこれたのは、事務所のみんなのおかげで……

特に、プロデューサーさんには……私のありのままを受け入れてくれて、私のしたかった事を叶えてくれて、本当に感謝しているんです。

だから、ほんの少しでもお返しがしたくて……成長した所を、見てもらいたくて」

P「蘭子……」

蘭子「プロデューサーさん、私を導いてくれてありがとう。

これからも、よろしくお願いします」

P「……違うだろ」

蘭子「えっ?」

P「そうじゃないだろおおおおおお!!」

蘭子「ひぃぃっ!?」

P「蘭子!」

蘭子「は、はい!」

P「とりあえず誕生日おめでとう。 これケーキ」

蘭子「わぁ…! ありがとうございます!」

P「そうそう、こういうのだよ。

本当は俺が祝わなきゃいけないのに、蘭子にハンバーグを作ってもらっちゃダメだろ」

蘭子「でも、私がお礼したかったから……」

P「何か無いのか?

欲しいものとか、俺がしてやれることなら何でもするぞ」

蘭子「私は、これからもプロデューサーさんと一緒にお仕事できたら十分幸せです!」

P(天使かっ!)

P「何か悩みとか無いか?

仕事で嫌なこととか、生活で不便なこととか……」

蘭子「スタッフさんには良くしてもらってますし、事務所のみんなとも仲良くしてますよ?」

P(どうしよう、蘭子が良い子すぎる)

P「それでもな、心配になるんだよ。

蘭子の言葉は誤解されやすいし、もしかしたら密かに心細い思いをしているんじゃないかって。

だからどんな些細なことでもいい、俺にできることがあったら言ってくれ。

蘭子のためなら何だってするから」

蘭子「プロデューサーさん……ありがとうございます!」

ー事務所

ちひろ「……それで、戻って来ちゃったんですか」

P「ええ、その後女子寮の子達が誕生日会を開いて。

俺は邪魔者かなと思って」

ちひろ(そんなことは無いと思うんだけどなあ)

ちひろ「でも良かったんですか?

話を聞く限りだと、全然蘭子ちゃんのことを甘やかせていないじゃないですか」

P「ご心配には及びません。

本番は、これからですから」

ちひろ「……?」

ー女子寮、蘭子の部屋

蘭子(今日は楽しかったな。

みんながお祝いしてくれて、それにプロデューサーさんにもちゃんとお礼が言えたし。

……それにしても)

ー回想

P『そうだな、早速明日から実践してみようか』

蘭子『えっ?』

P『俺からの誕生日プレゼントだ。

しばらくの間、蘭子の言うことは可能な限り全部叶えてやる。 約束だ』

蘭子『ええ!? でも、そんなの大変じゃ……』

P『気にするな、俺がしたくてやることなんだから』

<蘭子ちゃーん?

P『ほら、呼ばれてるぞ?

俺はもう戻るから、明日からまた頑張ろうな!』

蘭子『あ、プロデューサー!

…….行っちゃった』

……

蘭子(お願いを何でも聞いてくれるって言ってたけど、本当なのかな?

何だか悪い気がするけど、でも……)

蘭子誕生日おめでとう!

続きは後日の予定です

ー翌日

蘭子「煩わしい太陽ね!」

P「蘭子か、おはよう」

蘭子「我が友よ、昨日の協定のことだが……」

P「おっ、早速何か願い事があるのか?」

蘭子「うむ!」


蘭子(プロデューサーさんが何でもしてくれるっていうのは凄く嬉しいけど、やっぱり迷惑になっちゃう。

だから、最初に無茶なお願いをして諦めてもらえば……!)


蘭子「闇が世界を支配し、月が姿を表すまで我に付き従うことを命ずる!」(今日は一日中お仕事に付き添って下さい!)

P「ああ、いいぞ」

蘭子「えっ」

P「ん、どうした?」

蘭子「えっと、その……だってお仕事が……」

P「蘭子の付き添いだって立派な仕事だろ?

最近はあまり行ってやれてなかったし、いい機会だから今日はずっと様子を見てやるからな!」

蘭子「で、でも!負担になっちゃうんじゃ……」

P「そんなの、蘭子は気にしなくていいんだよ。

俺が好きでやっていることなんだから。

それに、これ位負担の内に入らないさ」

P(そのために昨日事務所に戻って今日の分の仕事をしたんだし)

蘭子(どうしよう……本当に来てくれるなんて。

でも……嬉しいかも)

ースタジオ

監督「蘭子ちゃん、今日はかなりいい感じだねー!

何かいいことでもあった?」

蘭子「フッフッフ、今の我は翼の生えた如し!

いかなる試練も乗り越えてみせようぞ!」

P(蘭子の調子も良いみたいだし、何よりだ)

ー収録語、控え室

P「お疲れ様、蘭子」

蘭子「ぷ、プロデューサーさん!あの……

今日は、私のワガママに付き合ってくれてありがとうございました!」

P「さっきも言っただろ、こんなのワガママの内に入らないって」

蘭子「でも私、いつもワガママしてばかりだから…….」

P「え?」

蘭子「私、その……変な喋り方じゃないですか。

それに衣装だっていつも派手なものばっかりだし……

でもプロデューサーさんはそんな私を受け入れてくれて、やりたいことを全部叶えてくれてました。

スタッフの人たちも私に合わせてくれて、とっても楽しくお仕事できてます。

だから、お仕事はいつもしっかり頑張ろうって決めてるんです。

私ができるお返しは、それしか無いから…….」

P「……それは違うぞ、蘭子」

蘭子「えっ?」

P「俺が蘭子のしたいようにさせているのは、それがファンにとって一番魅力的だと信じているからだ。

蘭子がやりたいことを全力で表現しきるのがプロデューサーとしての務めだからな。

それはスタッフさん達も一緒だ。

もちろん、今の素直な蘭子もとても素敵だと思うけど」

蘭子「うぅ……」(恥ずかしい……)

P「だからな、心配なんだよ。

仕事に熱心なのはいいけど、根詰め過ぎて体調を崩したりしないかって。

蘭子はまだ子供なんだから、もっと周りの大人に甘えたっていいんだ」

蘭子「……本当に、いいんですか?

私、ワガママな子になってもプロデューサーさんに嫌がられたりしませんか?」

P「そんな事、あるはず無いだろう?

それに蘭子の願いを叶えるっていうのは俺が言い出したことだからな」


蘭子「……えへへ」

……

蘭子「我が友よ、禁断の果実を封じし宝珠を得ようぞ! 」(ハンバーガーを食べに行きましょう!)

P「お安い御用だ」


……

蘭子「我が友よ、聖なる泉で清めを行おうぞ!」(温泉に行きましょう!)

P「分かった」

P(日帰りなら何とかなるか…調整しないと)


……

蘭子「我が友よ、しばしの休息が必要であろう。

ここで翼を休めるがよい」(一緒にくつろぎましょー)

P「……何でわざわざ女子寮?」


……

蘭子「我が友よ、魔障に閉ざされし海魔を眺めようぞ!」(水族館に行きましょう!)

P「ああ、いいぞ」

P(それにしても……何か既視感が……)

とりあえずここまで

できるだけ早く終わらせられるよう頑張ります

ー数日後、事務所

蘭子(今日はお仕事が終わったらプロデューサーさんと映画かー、楽しみだなー♪)

飛鳥「やあ蘭子、これから収録かい?」

蘭子「我が同胞飛鳥よ! 闇に飲まれよ!」

飛鳥「最近、かなり調子が良いみたいじゃないか」

蘭子「うむ! 新たな年を刻んだことによって我が魔力も高まっているわ!」

飛鳥「でも、それだけじゃないだろう?」

蘭子「えっ?」

飛鳥「Pのことさ。 ボクの耳に入っていないとでも思ったのかい?」

蘭子「なっ!?」

飛鳥「近頃とても親密なようじゃないか。

皆、君とPのことを噂しているよ」

蘭子「そ、それは誕生日プレゼントとしてお願いを聞いてもらってるだけで……」

飛鳥「……仮にその通りだとしても、だ。

知っての通りPは多忙な人間で、最近は特にそれが顕著だ。

週に数える程しか会話のできない者も少なくない。

にも関わらず君だけは以前と変わらず、いやそれ以上にPとの時間を持っている。

そんな状況を快く思わない人がいるのも確かだ」

蘭子「そ、そんなつもりじゃ……!」

飛鳥「……かく言うボクも、快く思っていない側の一人さ」

蘭子「!!」

飛鳥「友人にこんな事を言うのは気が引けるけど、Pとの接し方について考え直した方がいいんじゃないか?

ボクたちは、第一にアイドルとプロデューサーの関係なんだから」

……

P「そうか……飛鳥がそんな事を」

P(急に半泣きで『もうお願いを聞かなくてもいい』なんて言い出すから何事かと思ったら)

蘭子「私……プロデューサーに甘えてばかりでみんなのことを何も考えてませんでした」

P「蘭子が気に病む事じゃないさ。

俺の配慮が足りなかったんだ」

蘭子「……やっぱり、もうやめなきゃいけないですよね」

P「確かに、蘭子との接し方については少し考え直さないといけないな」

蘭子「うぅ……」

P「おいおい、どうしてそんなに落ち込むんだ?

考え直すとは言ったが、もう蘭子の願いを叶えるのをやめるとは言ってないぞ」


蘭子「……えっ?」

P「確かに周囲の目は気にするべきだったな。

だからこれからは、できるだけ人目の付かない所で続けることにしよう」

蘭子「えええええええっ!?」

蘭子(それって……つまり二人っきりで……

まるでこ、恋人みたいな……)

蘭子「ダメですっ!」

P「何でだ?」

蘭子「だって、二人っきりなんて恥ずかしいし……」

P「でも、人目が無くなるだけでやること自体は今までと変わらないぞ?」

蘭子(……確かに、デートみたいなこといっぱいしてたかも……)

P「蘭子、顔が赤いぞ、大丈夫か?」

蘭子「だ、大丈夫ですっ!」

蘭子(……でも、だったら余計に)

蘭子「それに、 他の子たちにも悪いです……」

P「……確かに、最近は皆と話す時間が取れていなかった。

でもそれは今回の件とはまた別の理由なんだ。

そっちの方もある程度方が付いたから、これからは不満が蘭子に向かなくなるはずだ」

蘭子「でも……」

P「……やっぱり、迷惑だったか?」

蘭子「!」

P「元々蘭子のためにやろうとしていた事だ、嫌だっていうならもう終わりにする。

でも、他の子がとかじゃなくて蘭子がどうしたいのかを知りたい。

蘭子は俺と一緒にいるの、嫌か?」

蘭子「……私は」

ー数日後、女子寮、蘭子の部屋

P(今日は日曜日、何とかオフを蘭子と一緒のタイミングで取ることができ、バレないよう女子寮に入ることができた。

そして今何をしているのかというと)

蘭子「……ふみゅう」

P(蘭子に膝枕をして、頭を撫でている。

時折言葉になってない声を発しているが、それもまた可愛い)

P「……なあ蘭子、本当にこんな事で良かったのか?」

蘭子「だって、人目に付かない所なんて限られるじゃないですか。

それにせっかくのオフなんだからのんびりしたかったんです」

P「まあそうだが……いや誰にも気付かれずにこの部屋まで来るのも結構大変だったぞ」

蘭子「……手、止まってます」

P「ああ、悪い悪い」

蘭子「……えへへー」

P(蘭子の『やっぱり続けたいです!』の言葉を聞き入れ、こうしてこっそり願いを叶えてやっている。

あれから疎かにしてしまっていた他の子たちとのコミュニケーションを取ることに努めたので、不満はかなり解消できたと思う。

その分蘭子のために使える時間は減ってしまったが、こうして幸せそうな顔を特等席で見ることができるのだから、むしろ良かったのかもしれない)

P「何かしたい事とかあったんじゃないのか?

少しくらいなら遠出しても大丈夫だったのに」

蘭子「私がこうしたかったからいいんです!

たまにゴロゴロしたって罰は当たりませんよー」

P(……もしかしたら、最近忙しかったのを気遣ってくれたのかもしれない。

そういう所はずっと変わらないな)




P(……さて、ここまでは自分でも驚く程計画通り。

準備は全て整った、いよいよ最終段階だ)

とりあえずここまで

次で最後まで行く予定です

―翌日、事務所

P「というわけで、1週間の出張に行ってきます」

ちひろ「……は? 突然何を言い出すんですか」

P「大丈夫です、部長に話は通してあるので」

ちひろ「私は何も聞いていないんですけど!?」

P「問題ありません、ちひろさんならうまくやってくれるって信じてますから」

ちひろ「そりゃあ最近Pさんが頑張ってくれたおかげで私の負担も減ってますけど……

だからって1週間も不在なんて困りますよ、そもそもアイドルの子たちにどう説明するんですか?」

P「……」(無言のサムズアップ)

ちひろ「ちょ、私に押し付ける気ですか!?」

P「後のことはお願いします。 

では行ってきます」

ちひろ「ちょっとー!?」

P(ここまで来てしまった以上、もう引き返せない。

……覚悟が鈍らない内に行かないと)

蘭子「プロデューサーさん」

P「蘭子!? こんな早くにどうしたんだ」

蘭子「プロデューサーさんにお弁当を渡そうと思って……

それよりも、出張に行くって本当ですか?」

P(なんてこった、よりにもよって蘭子に聞かれてしまった)

P「もしかして、さっきの話を聞いていたのか?」

蘭子「……本当、なんですね。

どうして言ってくれなかったんですか!?」

P「急な話だったんだ、すまない」

蘭子「……嫌です」

P「え?」

蘭子「行っちゃ嫌です!

1週間もプロデューサーさんに会えないなんて耐えられません!」

P「そうは言っても仕事なんだ、分かってくれ」

蘭子「じゃあ、お願いします。

私の側を離れないでください!私も付いて行きます!」

P「無茶を言わないでくれ、蘭子にだってスケジュールがあるだろう?」

蘭子「私のお願い、叶えてくれるって言ったじゃないですか……」

P「……俺にもできないことはあるんだ、ごめん。

この埋め合わせは必ずするから」

蘭子「そんなのいりません!

私は今プロデューサーさんと一緒にいたいんです!」

P「聞き分けのないことを言わないでくれ、今回は本当にどうしようもないんだ」

蘭子「……やだ、行かないでプロデューサー」

P(そう言って俺の袖を掴み、涙を溜めて上目遣いでお願いしてくる蘭子を目の当たりにして決意が揺らぎそうになる。

だが、ここで諦めてしまっては計画が無駄になってしまう)

P「……悪い、もう行かないと」



蘭子「……ばかぁ」

―6日後、ホテル

P(今日が出張の最終日。

明日ようやく事務所に戻ることができる。

ここまで本当に長かったが、無事に計画を完遂手前まで持ってくることができた。


蘭子は派手なルックスと奇抜な言動とは裏腹に根は真面目で誠実な子だ。

だからガードを崩すために俺が何でも言うことを聞くと信じさせる必要があった。

信じ込ませた後は人目を気にせずひたすら蘭子に奉仕する。

そうすれば周囲の目を気にした蘭子が遠慮するようになるはずだ。

そこで俺が人目のつかない環境で続けることを提案する。

厚意を無下にできない蘭子は承諾するだろう。

後はもう簡単だ、甘えるのに歯止めが利かなくなった蘭子は俺にべったりになる。

そんな矢先の出張による俺の不在は、蘭子に強い喪失感を与える。

そして事務所に戻れば待ち構えていた蘭子が―



『プロデューサーさん、私気付いたんです。

あなたがどれだけ私の中で大切な存在になっていたかを。

これからも、ずっと一緒にいてくれますか?』



―完璧だ。

事務所に戻れば完全に俺の虜となった蘭子が待っている。

明日が来るのが待ち遠しい。

……しかし、この1週間はとても辛かった。

蘭子に会えずに何度ホテルの枕を濡らしたことか。

だがそれも今日までの話。

明日からは蘭子との夢のような日々が待っているんだ)

―翌朝、事務所

P(ついに、この時が来た。

扉を開ければ俺の楽園が待っている)


P「ただいま戻りました」

……………

P(あれ? 反応がない。

計画ならここで待ち構えていた蘭子が抱きしめてくれるはずだったんだが……

まあいい、あまりのショックで俺が今日帰ってくることを忘れていたのかもしれない。

後で謝らないとな)


ちひろ「あれ、Pさんもう戻ってきていたんですか。

おはようございます」

P「おはようございます。あの、蘭子は……」

ちひろ「ああ、蘭子ちゃんならもうすぐ……」

蘭子「煩わしい太陽ね!」

P「蘭子、久しぶりだな。

元気にしていたか?」

P(蘭子がこちらに気付き駆け寄ってきた。

そして躊躇うことなく―ちひろさんに抱き着いた)

蘭子「緑衣の女神!」(ちひろさーん♪)




P「……は?」

P「ちょ、これどういうことですか!?」

ちひろ「……どういうことか、ですって?

それはこちらの台詞ですよ」

P(あ、これマジで怒ってるやつだ)

ちひろ「私がどれだけ苦労したと思っているんですか!

アイドルの子たちをなだめるだけでも相当大変だったんですから」

P「それは……すいませんでした」

ちひろ「まあ、本当に怒っているのはそこじゃないんですけどね」

P「え?」

ちひろ「出張先の一覧を見せてもらいました。

確かにハードなスケジュールだったみたいですけど、明らかに不自然ですよねこれ」

P(……まさか)

ちひろ「中には急を要さない案件も含まれていました。

Pさん、本来なら日帰りで済むようなものを無理やりつなぎ合わせて出張に仕立て上げましたね?」

P(か、完全にバレてる)

ちひろ「しかもその動機も不純なものだとしたら、もう救いようがないですね」

P「な、何を言ってるんですか!?」

ちひろ「私が気付かないとでも思ったんですか?

最近の蘭子ちゃんに対する態度、とてもアイドルに向けたものとは思えませんでした。

かと思ったら突き放すように出張に……

大方、蘭子ちゃんに寂しい思いをさせて気を引きたかったんでしょうね。

そんなことのために仕事を利用するなんてどうかしています」



P「……す、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!」

ちひろ「あら、綺麗な土下座。

あっさり認めるんですね」

P「そこまで見透かされているなら言い逃れは無理かなと」

ちひろ「それもそうですね。

それで今回の件の処罰についてですが……」

P「……お手柔らかにお願いします」

ちひろ「私からは特に何もしません」



P「……え?」

ちひろ「不純な動機とはいえ、仕事は予定以上にしっかりこなしてくれていましたし。

蘭子ちゃんへの対応についても、Pさんに許可した私にも責任がありますので」

P(ちひろさんマジ女神!)

ちひろ「後は蘭子ちゃんが許してくれるかどうかですね」

P「そうでした。……蘭子、寂しい思いをさせてすまなかった。

だが悪気があってやった訳じゃないんだ。

これからは誠心誠意蘭子のために頑張る。

だからどうか許してほしい」

蘭子「……ふんっ」

P「なっ!?……というか、なんでさっきからちひろさんにべったりくっついているんだ!?」

ちひろ「あ、一つ言い忘れていたことがありました」

P「えっ?」

ちひろ「Pさんが出張に行った後、蘭子ちゃんはひどく落ち込んでしまいましてね。

3日ほど仕事もまともにこなせない様な状態でした。

そこで私が相談に乗ったんです。

その時にPさんが蘭子ちゃんにしていたことを聞かせてもらいました。

Pさん、私に『後のことは任せる』って言いましたよね」

P(……まさか)

ちひろ「だから私がPさんの代わりに蘭子ちゃんのお願いを聞いてあげていたんです。

そのおかげか今はすっかり元気になって。

蘭子ちゃん、プライベートではこんなに可愛らしい表情をするんですね。

もう私も夢中になっちゃいましたよ」

蘭子「女神よ、そのような戯れを……」(恥ずかしいですよー)



P(……つまり、俺が必死に頑張って得た蘭子からの愛情が全てちひろさんに持っていかれてしまった、と)

P「そんな……馬鹿な……話が……

おのれ、おのれちひろぉぉぉぉおおおおおおおおお」

蘭子「女神への冒涜は我が許さぬ!」

P「蘭子……そんな……どうして……」

蘭子「……我を見捨てた蛮神に差し伸べる手は無い」(プロデューサーさんのことなんか知りません)

P「そんな……嘘だろ……蘭子ぉ……」

蘭子「不可視の障壁!」(近付かないで下さい!)

P「そんな、そんな……

うわあああああああああああああああああ」


飛鳥「……アレは放って置いていいのかい?」

ちひろ「あら、飛鳥ちゃん来ていたんですか」

飛鳥「Pが土下座している辺りからね」

ちひろ「Pさんにとってはあれが一番きついお仕置きでしょうからね」

飛鳥「対象にとって最も残酷な罰を与える……全く、えげつないね」

ちひろ「何か言いましたか?」

飛鳥「いや、何でもない。

……今回の教訓は、過ぎたるは猶及ばざるが如し、といったところかな」

ちひろ「そうですね、蘭子ちゃんの気持ちをもっと考えてあげられていたら結果は変わっていたかもしれません」


ちひろ「……ところで飛鳥ちゃん」

飛鳥「何だい?」

ちひろ「もし『落ち込んでいるPを慰めるチャンス』とか思っているならやめておいた方がいいですよ。

それじゃあお仕置きになりませんから」

飛鳥「……理解っているさ」

飛鳥(ボクの誕生日は2月か……)

飛鳥「全く、ままならないものだね」



P「蘭子ぉ……許してくれぇ……」

蘭子「もう!離れて下さい!」

終わりです

イチャイチャエンドを期待していた人がいたらすいません

そっちも途中で考えたのですが最初の構想通りちひろエンドにしました

蘭子の年相応の可愛らしさを表現したかったのですが、幼くし過ぎましたね

多少ずれましたが割と一定のペースで書き切ることができたので個人的には満足しています

それでは失礼します


このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom