男「まあ、オレのことなんだけど」
友「なんだよ、なんかあったのか?」
男「……まあな」
男「実はさ、少し前にサークルでこんなことがあったんだよ」
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~
先輩『おーう、みんなやってるか』
同期生『先輩どこ行ってたんすか?』
先輩『便所だよ』
同期生『ちゃんと手ェ洗ったんすか~?』
先輩『もちろん洗ってねぇよ! しかも紙使わず手で拭いたし!』
同期生『ノリいいっすね、先輩!』
先輩『ハハハッ!』
男(これいいな、オレも今度やろっかな)
~
~
先輩『おっす』
男『先輩、どこ行ってたんですか?』
先輩『ああ、便所』
男『ちゃんと手を洗いました?』
先輩『……なんだよいきなり。洗ったに決まってんだろ。変なこというなよ』
男『あっ、す、すみません』
~
男「……ってな感じのことがさ」
友「あー……」
男「あれ以来、心なしかその先輩、オレに冷たい気がしてさ……」
友「んー……ま、言い方とかさ、先輩の気分とか、色々悪条件が重なった結果なんじゃねーの?」
男「いや……他にもバイト先でこういうこともあったんだ」
~
バイト仲間『ふぅ~、終わった終わった』
男『お疲れ~』
バイト仲間『それにしても今日は店長ウザかったなぁ』
男『ホントホント、あの人機嫌悪いとやたらオレらにあたってくるもんな』
バイト仲間『一発ブン殴ってやりてーよな』
男『ハハハ』
男(ここは、こいつの冗談に乗っかるところだよな)
~
~
男『なんなら、オレがやっちゃおうか?』
男『店長が一人になったところで、後ろから鉄パイプかなんかでガツーンて』
バイト仲間『お、おい……やめとけよ? そんなことしたら人生終わるぞ』
バイト仲間『店長だって、いつもウザイわけじゃないんだしさ……』
バイト仲間『落ち着こう? な?』
男『い、いや、もちろん冗談だって……』
~
男「オレはそいつの店長殴るネタに乗っかっただけなのに」
男「それ以来そいつ、オレはキレるとヤバイ奴、みたいな目で見てくるようになってさぁ」
友「こいつはマジで怒らせると暴力振るう奴だ、と思われちゃったわけね」
男「そうなんだよ~!」
男「誰か殴る殴られるなんて、小学校以来ご無沙汰だってのに……」
男「思い返すと、こういうこといっぱいあるぞ!」
男「女の子に軽い気持ちで“彼氏いるの?”っていったら露骨に警戒されたり」
男「冗談であからさまな嘘知識を披露したら、みんな本気にして大変なことになったり」
男「ふと“死にたい……”ってぼやいたら、本気で心配されたり」
男「この年になってやっと気づいたけど、オレの冗談は冗談として受け取ってもらえないんだよ!」
男「なんでだろ!?」
友「うーん……」
友「お前って冗談いうようなキャラじゃないし、それで真剣に受け止められちゃうのかもしれないな」
男「キャラって性格のことだよな?」
男「でも、オレの性格を知らない初対面の人相手の時もこんな感じになるんだぞ?」
友「だとしたら……“オーラ”とでもいうべきか」
友「お前の持つ“冗談言わないオーラ”“いつでも本気オーラ”のせいで」
友「みんなお前の冗談やギャグを、真剣に受け止めちゃうんだろうなぁ」
友「オレもお前がギャグいうと、面白いとかつまらないとか以前にビックリするし」
男「そっかぁ~」
男「はぁ~……この先どうしたらいいんだ」
男「社会でやってくにはコミュ力は不可欠。冗談もいえないような男じゃ、この先やってけないよ」
男「大学卒業したら、どんな道に進めばいいってんだ……」
友「――いや」
友「お前に向いてる職業……思いついちゃったかもしれない」
男「へ?」
……
……
……
男「待機児童はゼロにし、なおかつ老人福祉を今まで以上に充実させます!」
男「所得税、消費税、相続税……あらゆる税金を安くします!」
男「みんな豊かに! ニートやフリーターでも豪勢な生活が送れるようになることを約束します!」
男「海外なんて怖くない! 相手がどんな大国だろうが、言いたいことはビシッと言います!」
男「あらゆる犯罪に厳しく対処します! なおかつ更生した者にはきちんとチャンスを!」
男「皆様、よろしくお願いします!」
男「圧倒的得票数で当選だ!」
バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!
男「いやぁ~、あんな冗談みたいなマニフェストをよく有権者は真に受けてくれたな」
友「お前のオーラのおかげだよ」
男「でもさ、こうして政治家になったところで、すぐ化けの皮はげちゃうよなぁ」
友「なぁに、そしたら“次は絶対やり遂げます”とかなんとかいえばまたみんな投票してくれるさ」
<終わり>
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