P.C.S.のサクッと読める短いお話です。
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ペロの朝は早い。
朝日が登る頃にこたつから這い出る。
首を振り、にゃあと鳴いて気合を入れる。
「嫌になったりしないの?」
返事をする代わりに、ペロは退屈そうにあくびをする。
それからまずは冷蔵庫を開ける。
コツは勢いをつけてドアをひっぱることだそうだ。
「貴方、なかなか苦労人なのね」
他にも、爪で冷蔵庫を引っかかないようにすることも大切だそうだ。
「ところで、いつからそんなことをしているの?」
さぁね、とでもいいたげに首を震わせる。
冷蔵庫を開けたら納豆を取り出す。
雪美ちゃんのママが1パック68円で買った特売の納豆パックだ。
「案外庶民的なのね」
千秋はふっと笑う。
ペロ曰く納豆は納豆そのものよりタレや混ぜ方で味が変わるそうだ。
主人の雪美が切りそろえてくれたご自慢の爪をテコのように使い、パックを開ける。
このとき、力を入れてパックを傷つけないようにするのが難しいらしい。
「すごいわね、人間の私でさえたまに傷つけてしまうのに……」
ペロは慰めるように千秋の手に頬ずりをする。
お礼代わりに喉元を撫でる。
「パックは開けられても、流石にタレまではできないでしょう?」
タレは当初かなり苦心したそうだ。
まず人間の動きを真似て爪で切ってみたが切った途端にタレがこぼれてしまいうまく納豆にかけることができなかった。
途方に暮れていたある日、事務所でたこ焼きを焼いているところを見た。
そのときにまずタレの真ん中に穴を開け、納豆の上でひっくり返す方式を思いついた。
「なるほど、人間じゃ思いつかない方法を人間の動きから発想するなんて不思議ね」
いよいよ醍醐味の納豆を混ぜる工程だ。
一秒に一回転の速度で納豆を回す。
ふくびきのときのように祈りながら力強く回すことが、納豆を美味しくする秘訣らしい。
「ふくびき、そういえば最近あんまり見なくなったわね」
「えっ、私?私はああいうの好きじゃないわ。本当にほしいものがあったら当たるまで回してしまいそうだもの」
うんうんと頷きペロは話を続ける。
混ぜるのは200回ほど、調子のいい日は300回ほど混ぜることもあるらしい。
「納豆って、なかなか大変ね」
最近はトッピングにネギを刻むこともあるのだそうだ。
「すごいわね、小料理屋でも開けるんじゃないかしら」
ふふんと自慢げに鼻を鳴らすペロ。
その仕草がなんだか妙に人間臭くて千秋は吹き出した。
完成した納豆はこっそり冷蔵庫に戻しておくらしい。
「こっそりって……流石に気づかれるんじゃないかしら?」
どうやらペロのご主人は納豆は冷蔵庫で寝かせると勝手に出来上がるものだと思っているらしい。
「佐城さん、大丈夫かしら」
いずれ真実を話すさとペロは吐き捨てるように言った。
「千秋さん、何してるんですか?」
「ペロとお話してたのよ」
「えっ?」
「佐城さんの朝食について話してたの」
「朝食」
「今日のお昼は和食にしない? 納豆の話をしてたら納豆を食べたくなってきたわ」
「納豆」
「それじゃぁ、またお話しましょ」
千秋はペロに別れをつげ翠と共に納豆を食べに行った。
終わり
以上、Pero・Chiaki・SajoのSSでした。
これからも膝の上の恋人こと佐城雪美ちゃんをよろしくお願いします。
前作です。
雪美「………ロン」
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