・ニューダンガンロンパV3SS
・ネタバレ等注意
・短い
始まるヨ
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才囚学園に閉じ込められ、コロシアイとやらを命じられてから数日。
僕は何をするわけでもなく寄宿舎の部屋にいた。
真宮寺「ンー……こうやって無為に時間を浪費するのはあまり良くないかもしれないネ」
真宮寺「せっかくだし、やれることはやっておかないといけないかな」
真宮寺「今ここにいる女性は八人か……」
真宮寺「ククク……」
今なら食堂に茶柱さんと夢野さん、それと東条さんがいるだろうし。とりあえずは食堂に行くべきかナ。
☆
東条「あら、真宮寺くん」
やはりと言うべきか、食堂には目的の三人がいた。
真宮寺「やァ。少し息抜きをしに来たヨ」
真宮寺「このまま部屋にいても暇だし、時間が無駄に消費されていくだけだしネ」
東条「そう。なら少し待っていて。今お茶を用意するわ」
そうやって厨房に向かう東条さんの後ろ姿を見送る。
ンー……やはり東条さんは気配りもしっかりできる人みたいだネ。メイド、という立場でやっているだけかもしれないけど、そういう立ち振る舞いは美しい。
夢野「真宮寺よ……厨房に行く東条の後ろ姿を眺めて何をしておるのじゃ?」
茶柱「東条さんの背中を見てよからぬ想像をしていたに違いないです! これだから男死は!」
真宮寺「いきなり何を言っているんだい? それに、そういうことを言う茶柱さんこそそういうフシがあるんじゃないかな?」
真宮寺「まァ、僕は民俗学者だから……人間観察が癖みたいなものなんだヨ」
夢野「そうじゃったか……それなら仕方ないのう」
茶柱「夢野さん! 真宮寺さんの言葉に納得する前に転子に対しての暴言を否定してください!」
何はともあれ、これは好都合かもしれない。
せっかくだし二人のことも観察しようかな……。
真宮寺「それで? 二人は食堂で何をしていたんだい?」
夢野「うむ、魔法とマジックの違いについて教えておったところじゃ」
茶柱「夢野さんの魔法の素晴らしさも理解できる、とても刺激的な講座です!」
真宮寺「魔法って……夢野さんは超高校級のマジシャンだよネ? まァ、そのマジックが魔法と言えるくらいに素晴らしいものだからこその肩書きなのかもしれないけどサ」
すると、夢野さんの表情が途端に曇るのに気付いた。
夢野「違うぞい……ウチは魔法使いなんじゃ」
茶柱「そうですよ! 真宮寺さんは夢野さんの言葉を信用するべきです!」
真宮寺「って言われてもねェ……僕はそういう不思議とかは認めない主義なんだ」
真宮寺「ほら、僕って民俗学者だからサ」
夢野「そういう問題なのか……?」
茶柱「なら真宮寺さんも実際に夢野さんの魔法を見るべきです! そうしたら少しは夢野さんの言葉を信用する気になれるでしょう!」
真宮寺「実際に夢野さんのマジックを?」
茶柱「魔法です!」
茶柱「ということで夢野さん、どうでしょう! 簡単な魔法でいいから真宮寺さんの前でやってみませんか!?」
夢野「んあー……やれと言うならやらんでもない、と言いたいところじゃが……」
夢野「生憎今の環境じゃ魔法をするには些か難しいのじゃ」
真宮寺「マジックの道具が無いから?」
茶柱「魔法ですって!」
東条「三人とも! 食堂で騒ぐのは感心しないわよ!」
結局お茶を持って戻ってきた東条さんに叱られる形でこのやり取りは終わったけれど。でもこの短いやり取りで僕も二人のことが少しは理解できた気がするヨ。
夢野さんは自分が譲れないところは絶対に譲らないという信念があるし、茶柱さんは友人のことを思いやる優しさを持っている。
どちらもやはり美しいネ……ククク……。
☆
アンジー「およ、是清だー」
食堂を出て適当に校内を歩こうとすると、女子トイレから出てきた夜長さんと出くわした。
真宮寺「やァ」
アンジー「ちょうどいいところに会ったよ。是清は今から何か用事でもあるかー?」
真宮寺「適当に校内を散策しようかと思ってたけど……何か用事かい?」
アンジー「もし暇なら一緒に神様にお祈りしないかと思ってー」
真宮寺「ンー……遠慮しておくよ」
真宮寺「今は神様にお祈りするよりも外へ出る糸口を探す方が大事でしョ?」
アンジー「それはまるで神様にお祈りすることが大事じゃないって言い方だね?」
アンジー「それはダメだよー。こういう状況だからこそ、神様へのお祈りはやらないとー」
アンジー「じゃないと……罰が当たるよ?」
そうやって口を開く夜長さんの表情はいつもの明るいものとは違い、妙に真剣な顔をしていた。
真宮寺「そうは言ってもね……今の僕にとって外へ脱出することの方が大事ってだけで」
真宮寺「そうやって自分の価値観を押し付けるのは感心しないヨ?」
アンジー「押し付けなんかじゃないよー。アンジーはただ事実を言ってるだけだからねー」
これは困った。このままじゃらちがあかない。どうしたものか……。
真宮寺「……彼らは何をやっているんだい?」
白銀「ああ……ほら、入間さんがキーボ君の機能をちょっと追加したがってるみたいなんだよ」
白銀「でも、その機能がちょっと……」
真宮寺「ああ、そういうこと」
入間さんの下品さは全員が知っていることだし、今の白銀さんの言葉からキーボ君にそういった類の機能を付けようとしているのは明らかだろう。
……彼女は不合格かな。容姿は悪くないとしても、やはり第一条件は最低限の品があるってことだしネ。
真宮寺「キーボ君には哀れみを向けてしまいそうだヨ。ああいうロボットを見れば発明家の血が騒ぐ、っていうのは理解できなくもないけどサ」
白銀「確かにね……わたしも漫画やゲームのキャラを見たらコスプレしたいって血が騒ぐから入間さんの気持ちもわかるんだけど」
真宮寺「彼女の血の騒ぎ方は僕や白銀さんのソレとは大きく違うみたいだからネ。無論、悪い意味でだけど」
白銀「あはは……」
真宮寺「まァ、二人のことは放っておいて。せっかくだし白銀さんに質問の一つをしてみようと思うんだけど、時間はあるかな?」
白銀「わたしに質問? 別に大丈夫だけど……真宮寺君に質問されるって珍しいシチュかもしれないね」
真宮寺「僕は白銀さんの言う漫画やゲームのジャンルには少し疎いからネ。こうやって話をすることは確かに珍しいかも」
白銀「それで、質問って?」
真宮寺「君は超高校級のコスプレイヤーだったネ。フィクションのキャラクターの衣装を着てその人物になりきるっていうのがコスプレイヤーの活動、らしいけど……」
真宮寺「そのコスプレするキャラクターには限界があるでしョ? 例えば女性の白銀さんは男性のキャラクターにはなれないし、白銀さんの背丈で巨漢の大男にはなれない……」
真宮寺「そういう時はどうするの? なりたいキャラクターがいても自分にはなれないって知った時……白銀さんはどうするの?」
白銀「ああ、そういうことか……」
白銀「確かに普通のコスプレには限界があるかもしれないね。さっき真宮寺君が言った例えがまさにそれだと思うよ」
白銀「でも、わたしはそういう限界とかの枠組みを突破したコスプレイヤーなんだ。ほら、超高校級のコスプレイヤーだから」
白銀「限界は既に決まっているものじゃない。わたしが歩く道が途絶えた時が限界なんだよ!」
真宮寺「へェ……」
その言葉を聞いて僕は白銀さんに対しての評価を改めないといけない。そう思った。
これも漫画とかの受け売りなのかもしれないけれど、その信念は美しいものであると言うしかない。
ククク……入間さんはともかくとして、白銀さんも合格かもしれないネ。
☆
春川「あ」
真宮寺「……春川さん」
寄宿舎の前を通ると、ちょうど寄宿舎から出てきた春川さんと鉢合わせする。
真宮寺「こんな時間まで部屋にいたの? 引きこもりは感心しないヨ」
春川「ちょっと部屋で休んでただけだよ。っていうか、見た目が引きこもりみたいな真宮寺に言われたくないんだけど」
真宮寺「…………」
真宮寺「まァ、春川さんはちょっと孤立気味だからネ。話をする相手がいないっていうのが現実かな?」
春川「大きなお世話。それに真宮寺だって似たようなものじゃないの?」
真宮寺「残念だけど、少なくとも君よりは会話を続けられる自身があるヨ」
春川「…………」
そんなつもりはなかったけれど、何故か皮肉の言い合いになってしまう。
ンー……春川さんは口が悪いのがややネックかもしれないネ。人を寄せ付けないような雰囲気は魅力的に映るかもしれないけれど、僕が求めている人の条件ではないかナ。
話飛んでた
>>9と>>10の間にこれが入るヨ
真宮寺「それならここから出たらってことでどう? 今は少し否定的な意見を述べたけど、夜長さんの言う神様自体には僕も興味があるからネ」
真宮寺「それに、場合によっては他の人にも君の神様について教えたいと思えるかもしれないし」
真宮寺「そうなったら教える人間は多いに越したことはないでしョ? ここの人たちだけに教えるよりも、外の世界の人たちにも教えた方が神様も喜んでくれるんじゃないのかナ」
アンジー「うーん……」
僕の言葉を受けて夜長さんは何やら考えるような仕草を見せる。
アンジー「わかったよー。その言葉、信じるからねー」
真宮寺「信じてくれて構わないよ。君の神様に興味があるのも事実だしね」
それにもしその神様が僕の思っているような神様だとしたら、民俗学者としては放っておけないしもっと広めたいからネ。
☆
入間『おーい! 待ってくれよー!』
キーボ『待ちませんよ!』
入間『別にお前の機能全部ぶっ壊そうってわけじゃねぇって! むしろ逆で機能を追加してやろうってんだ!』
入間『だからほら! オレ様にお前を開発させろよぉ!』
キーボ『や、やめてください!!』
校舎から出た矢先にそんなやり取りが僕の耳に届く。そちらを見ると、入間さんとキーボ君の追いかけっこを眺める白銀さんの姿が。
続きは夜
王馬「あれ? 真宮寺ちゃんと春川ちゃんなんて珍しい組み合わせだね」
王馬「根暗オーラが充満してたから何事かと思っちゃったよ」
真宮寺「…………」
春川「…………」
そこに加わったのは王馬君だった。校舎の方からやって来たみたいだけど、相変わらずの様子で王馬君はそんなことを言う。
王馬「あ、あれ? もしかして喧嘩中だった?」
王馬「根暗同士の喧嘩なんて見たことないよ! ほら、オレに構わず続けちゃって!」
真宮寺「……じゃあまたネ」
春川「……うん」
その王馬君の言葉を聞いてもうどうでもよくなった僕は適当に話を切り上げてこの場を去る。
王馬「あれ? 真宮寺ちゃん行っちゃうの? つまんないのー」
王馬「なら春川ちゃんとお話しようかなー。ほら、色々聞きたいこともあるしさ」
春川「こっちは聞きたいことも話したいこともないよ」
☆
中庭にやって来た僕を出迎えてくれたのは予想通りの人物だった。
赤松「あれ? 真宮寺君?」
真宮寺「赤松さんか……こんなところで何をしているの?」
赤松さんは僕の姿を見ると、驚いたような表情から一変して笑みを浮かべる。
赤松「ちょっと気晴らしにね。あと、時間を見つけては他の人たちと話をしたり」
真宮寺「へェ……僕も似たようなものだヨ」
真宮寺「この状況だからこその人間観察はなかなかやれないからネ」
赤松「……私はそういうのじゃないから」
真宮寺「わかってるヨ。赤松さんは他の人たちを信頼しているから、そうやってみんなと話をして仲を深めようとしているんだよネ?」
真宮寺「その姿勢と信念は美しいヨ……僕も見習いたいくらいだ」
赤松「そ、そう?」
真宮寺「しかも、ここから出たら友達になろうなんて……普通の人ならあまり言えないような台詞だヨ?」
赤松「で、でもそれが本心だからさ」
赤松「もちろん真宮寺君だって例外じゃないよ? ここから出たら真宮寺君とも友達になりたいって思ってるしさ」
真宮寺「友達……」
やはり彼女は素晴らしい人だ。この状況で他の人全員を信用し、あまつさえ友達になろうと言い出すなんて。
素晴らしい……そして、美しい。
真宮寺「なら、僕と友達になったら姉さんとも友達になってもらいたいんだけど」
赤松「姉さん? それって、真宮寺君の?」
真宮寺「そうだヨ。昔から病弱で、友達の少ない人なんだ……」
真宮寺「当然僕も話し相手にはなってるけど、友達は多いに越したことはないでしョ?」
赤松「それはそうだね……」
赤松「うん! それならここから出たらお姉さんを紹介してよ!」
真宮寺「……当然だヨ。赤松さんこそ、今の言葉忘れないでヨ?」
そうやって僕らは約束を交わした。
ああ、やっぱり彼女は合格だヨ……彼女なら姉さんの友達に相応しい……。
☆
モノクマ「ってことで今日の真宮寺クンの様子を見させてもらったけどさ」
真宮寺「さも当然のように僕の部屋に現れるのはやめてくれないかナ?」
夜時間。部屋に帰った僕はいつの間にか部屋の中に入っていたモノクマと話をしていた。
いくら神出鬼没のモノクマとはいえ、部屋で待ち伏せされてはこちらも心臓に悪い。鍵を閉めるのなんて忘れてしまうくらいだ。
モノクマ「いやー、キミは実に姉思いだね! 見てるこっちまで微笑ましくなるくらいだよ!」
真宮寺「その辺の事情も既に調査済みってこと……」
モノクマ「でもさ、それって見方によってはお節介じゃない? 姉の友人関係に弟が口を挟むなんてさ」
真宮寺「そんなことはモノクマには関係ないよネ? そもそも姉さんは僕のやっていることに関して迷惑なんて思ってないはずだヨ」
モノクマ「ふーん……でもさ、もし仮にボクの言っていることが本当だとしたらどうする? 弟の健気な行動を迷惑がる姉……なんてことになったら」
真宮寺「謝って」
モノクマ「ん?」
気付けば無意識にそんなことを口にしていた。
自分はある程度は温厚であると自負している。しかし今の言葉だけは――姉さんを悪く言う言葉だけは見過ごせなかった。
真宮寺「謝って謝って謝って謝って謝って」
真宮寺「ねぇ謝って謝って謝って謝って謝ってヨ」
モノクマ「おうふ……もしかして地雷踏んじゃった系?」
真宮寺「謝って謝って謝って謝って謝って」
☆
次の日の朝。食堂で東条さんの朝食が用意されるのを待っていると不意におかしな点に気付いた。
真宮寺「あれ……百田君がまだ来てないみたいだネ?」
最原「ああ……今朝迎えに行ったんだけど、何か体調が悪いみたいだったよ」
最原「いや……体調が悪いっていうよりは何かに怖がってるって感じかな?」
王馬「もしかして幽霊でも見ちゃったのかな? それとも姿じゃなくても幽霊の声とか?」
アンジー「神様にお祈りしてるだけかと思ってたけど、違うみたいだねー」
アンジー「神様は怖くないからさー」
獄原「神様はともかくとして……この学園ってゴン太たちのために造られた学園なんだよね?」
キーボ「なら幽霊とかではなさそうですね。ボクら以前に住んでいた人がいないなら、幽霊も出ないでしょうし」
王馬「どっかから迷い込んだ幽霊って可能性もあるかもしれないけどね」
東条「朝食ができたわよ」
赤松「今日は和食なんだね!」
次々に並べられる朝食は焼き魚やだし巻き卵といったまさに和食の定番といったメニューだった。
東条「味付けはそれぞれの好みでやってちょうだい。調味料はここにあるから」
王馬「キー坊、醤油取ってー」
キーボ「別に構いませんが……別に王馬クンの席からでも取れますよね?」
王馬「ロボットは黙って人間様の指示に従えよ!」
キーボ「ロボット差別はやめてください!」
星「今のはロボットがどうとかの問題じゃないと思うがな……」
入間「むしろ人間性の方を疑うぜ!」
真宮寺「僕は塩を使おうかな」
騒ぐ王馬君たちを尻目に僕は塩を手に取り、焼き魚に振りかける。
最原「へぇ、真宮寺君は塩派なんだ」
真宮寺「別に派閥を気にしたことはないけどネ」
そうやって塩味の魚を口に運びながら、今日も一日が始まる。
困難な状況でどんな人間の美しさが見られるのか……それが楽しみで仕方なかった。
真宮寺「ククク……」
真宮寺「ククククク……」
終里
真宮寺と謝ってと塩がやりたかっただけ。反省も後悔もしていない
ぐっばいならー
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