センター試験を受ける若者には、優しくしてあげましょう! (24)


所詮この世は、

持ちつ持たれつである

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【センター試験 一週間前】

[学校の放課後]



男「さて」

女「おーい。一緒に帰ろうよ~」

男「ごめん。今日は図書室で勉強したいんだ」

女「あらら。アンタって真面目だよね~」

男「うーん。そうかな?」

女「じゃぁ、わたしも一緒に勉強していい?」

男「いいけど、キミは塾じゃないの。もうすぐセンター試験なのに」

女「あー、いいのいいの。どうせ自習だから。もう行かなくてもおんなじ」

男「うーん」

女「それより、私にとってはアンタと一緒に過ごす方が大事だもん。やっぱり」

男「……そう、なんだ」

女「じゃぁ、図書室にレッツゴー♪」


カリカリカリカリ


女「えへへ」

男「どうしたの」


女「やー、こういう風に二人きりで過ごすのって、久し振りだなーって」

男「そうだっけ」

女「そうだよ。最近はお互い忙しかったりで、会うとかも全然なかったじゃん」

男「まぁ確かに。忙しかったね」

女「メールやツイイッターすらも、返してくれないし」

男「う、それはゴメン」


カリカリカリカリ


男「ねぇ」

女「んー」


男「受験の手応えは、どう?」

女「まぁまぁかな。模試だと私立の第一希望はA判定。国公立はセンター次第かなー」

男「上手くいくといいね」

女「でも国公立も今年から出題形式変わったり、授業料が私立並みに値上がりとかで、やんなっちゃう」

男「たいへんだよねー」

女「まぁ、ねー」


カリカリカリカリ


女「アンタはどうなの?」

男「んん」


女「もうすぐ受験っていうか、高校卒業だけど?」

男「……」

女「その、卒業したら、どうするの?」

男「……とりあえず、西区にある工場に、就職が決まったよ」

女「わ、そうだったんだ!オメデトー!」

男「……う、うん」

女「あ、あれ。あんまりめでたくなかった?」

男「いやいや。君の気持ちはウレシイよ。ただ、」


女「ただ?」

男「結構、厳しくてさ。週休1日で残業月60時間。それで手取りは10万ちょっと」

女「……ここらだと不景気で、そんな感じかぁ」

男「都市部や東京だと、もうちょっと条件は良いらしいけど、自宅から出ることになるし」

女「あー、やっぱり難しい?」

男「じいちゃんばあちゃんの介護に、人手が足りなくなっちゃう。父さんはいい人だけど」

女「あー、不器用っぽいよねー」

男「うん。母さんの方のじいちゃんと、性格合わないし」

女「あわわわ」


女「……お母さんは、お元気?」

男「うん。術後のリハビリも、ほぼ順調」

女「おぉ、それは良かった」

男「うん」

女「もー、そうなら連絡くれても良かったのにー。この連絡下手め!」

男「ご、ごめん」

女「お見舞いもできない状況かと思って、心配してたんだよ!」

男「わわわ。ほんとごめん」

女「まぁ、元気なら、何より」

男「うん」

男(本当は難しい手術で、手術費用で息子の進学代が吹き飛んだって落ち込んでるけど、ナイショ)

男(……僕も父さんも、家族みんな、母さんが生きてくれてただけで嬉しいし)


男「ねぇ、大学受かったら、何がしたい?」

女「そうねー。うーん」

男「……」

女「……特に思いつかないなー」

男「あらら。何かあるでしょ。サークル入るとか旅行行くとか、バイトするとか恋愛するとか」

女「わー。ふじゅーん」

男「不純って」

女「サークルは見学してから決めるし、旅行やバイトはいつでもできるし、それに……」

男「それに?」

女「大学で恋愛とかは、アンタが居るから。私には、いい///」

男「……」


女「アンタは、どうしたい?」

男「……特に、今までと同じ様に生活できてりゃいいよ」

女「ふーん」

男「遅くまで働くことになるから、シンドイだろうけど」

女「……」

男「家族の介護とかは、やっぱり自分達で看なきゃだし。家族は助け合うものだから」

女「……」

男「しっかり働いて会社に貢献して、家族も平穏に暮らせるなら、それで十分さ」

女「……」


女「私さ、頑張るよ」

男「……」

女「大学行けなくなっちゃった、アンタの分まで、勉強するから」

男「うん。がんばれ」

女「うん。頑張るよ。がんばるから、だから……」

男「……」


女「……やっぱり別れようだなんて、言わないでよ」

男「……」

女「私は、アンタとずっと一緒にいたいもん」

授業料値上がりってしたんだっけ?


男「……保育園の時にした約束 、覚えてる?」

女「……忘れたことないよ」



男「大人になったら一緒に結婚して、小さくても家を買って」

女「犬を飼って、子ども3人くらいの、普通の暖かい家庭を作るって。懐かしいなぁw」


男「……あの頃は簡単だと思ったけど、今の僕ではゼッタイに無理だ」

女「……」

男「だから、僕と別れて、大学の中で、違うイイ人を見つけてくれないか」


女「……イヤよ!」


男「……けど」

女「……けどじゃないの! 嫌なものはイヤなの! 私のワガママでしかないけれど!」

男「……」


女「……それにアレだから、私はセンター試験の受験生なんだよ!」

男「えっ!?? そうだけど、それが何か?」


女「……日本ではね、センター試験の受験者には、みんなが優しくしたげないとダメなんだよ!」


男「……」クスッ


女「……だからお願い。私のワガママ、聞いてよ」

男「……わかった。別れるのは、なしで」

女「……ありがと。ごめんね」


キーンコーン カーンコーン♪


女「下校時間になっちゃったね」

男「帰ろうか。送るから」

女「うん」


女「泣いちゃってゴメン」

男「いいよ」



男「泣きたいのは、僕も同じだから」


列車がホームに参ります。白線の内側まで~








がたんごとん ガタンゴトン


男「それじゃ、また明日ね」

女「うん。また明日」

男「……僕さ、頑張るよ」

女「えっ」

男「負けたくないんだ」

女「……」


男「どう頑張ればいいかとか、何に負けたくないか、それすら分からないけれど」

女「……うん」

男「とりあえず、[残りの時間] は、悔いが残らないように勉強しようと思う」

女「……わたしも隣で、勉強を頑張っていい?」

男「あぁ」

女「ありがとう」


男「じゃぁね」


女「ばいばい。大好きだよ」









女(あっ、そうだ。腕時計を買わなくちゃ)

女(途中で電気屋さん寄ろう)


【電気屋】


女「腕時計、腕時計は……あっ、テレビで大学受験の特集してる」


TV「さて、今週はいよいよセンター試験です」

TV「しかし当日の天候は悪く、交通ダイヤの乱れなども予想されています」


TV「多くの若者、大学受験生にとって、大切な日です!」

TV「センター試験を受ける若者には、優しくしてあげましょう!」


女(……確かに多くの若者は受験するけれど)


女(それでも若者の全員が、センター試験を受ける訳じゃないですよ)


女(大学に行かない人や、行きたくても行けなくなった人もいますから)


女(だからどうか)

女(そういう人たちも忘れずに、)

女(みんなに優しくしたげてください)



女(本当の本当に助けが必要なのは、きっとそういう人たちだから)

おしまい。朝ニュース見たとき思いついた



こう書いちゃったけど、センターの受験者さんたちにもエールを!


他の誰でもない、自分自身の為に頑張れる出来事って、後の人生そうそうないので

>>11
レス感謝

フィクション&男の進学断念理由をはっきりさせるための設定です

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