翔鶴「加賀さんには失望しました」 (32)
加賀「いきなりご挨拶ね」
翔鶴「……偽らざる私の気持ちです」
加賀「そう……」
翔鶴「っ……」
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加賀「……ちなみに」
翔鶴「はい」
加賀「どこが悪いのか、参考までに聞かせてもらおうかしら」
翔鶴「…………」
加賀「……メモの準備は出来ています」スッ
翔鶴「加賀さんのそういうところです」
加賀「は?」
翔鶴「私が失望しているのは、加賀さんのそういうところです!」
加賀「意味が分からないわ」
翔鶴「わからない!? わからないんですか!?」
加賀「腹立たしい物言いね……」
翔鶴「後輩にバカにされておきながら」
翔鶴「素直にメモと筆記具を用意して、自分のウィークポイントを消そうだなんて……」
翔鶴「そんなクソまじめな……! そんなの! ダメでしょう!?」
加賀「私は何故怒られているのかしら」
翔鶴「私が期待していたのは……」
***
翔鶴「加賀さんには失望しました」
加賀「五航戦の分際で粋がるんじゃないわよ」バシーン
翔鶴「きゃっ!」ドサッ
加賀「口だけは達者だからこうして私に手を出されても何もできないのよ」サワッ
翔鶴「あっ加賀さんそんなところ」
***
翔鶴「こういう展開なんですよ!」
加賀「どういう展開よ」
加賀「……ちょっと待ってなんか最後の方おかしくない?」
翔鶴「別におかしくないですよ」
翔鶴「とにかく!」
翔鶴「後輩の話に耳なんか傾けるか、みたいな勢いで」
翔鶴「とりあえず手を出して黙らせておくか……みたいな」
翔鶴「そういう理不尽な先輩ぶりを期待していたんです!」
加賀「あなたいったい私に何を求めているの……」
翔鶴「理不尽な先輩ぶりです」
加賀「あなたのその要望が既に理不尽なのだけれど」
翔鶴「大体加賀さんはいつだってそうです!」
加賀「大体って……今までの流れで私に悪い所あったかしら」
翔鶴「はじめて私が艦隊に着任した時も……」
***
翔鶴「翔鶴型航空母艦、一番艦の翔鶴です」
翔鶴「よろしくお願いします」ペコリ
翔鶴(か、加賀先輩……)チラッ
加賀「ようこそ、翔鶴。歓迎するわ」ニコッ
***
翔鶴「こうだったじゃないですか!」
加賀「何がいけないのよ」
翔鶴「私が期待していた加賀さんは……」
***
翔鶴「翔鶴型航空母艦、一番艦の翔鶴です」
翔鶴「よろしくお願いします」ペコリ
翔鶴(か、加賀先輩……)チラッ
加賀「……五航戦ですか。精々私たちの足を引っ張らない事ね」ペッ
翔鶴「加賀さんの唾液! 加賀さんの唾液!」
翔鶴(そんな……私歓迎されていないんですね……ぐすっ)
***
翔鶴「こういう罵倒を飛ばしてきてくれるはずだったのに!」
翔鶴「そして加賀さんの唾液を舐めれる筈だったのに!」
加賀「あなたのイメージではどれだけ酷い女なのよ私は」
加賀「……ってちょっと待ちなさいあなたさらっとなんかすごいこと言っていない?」
翔鶴「言ってませんよ」
加賀「ええ……」
翔鶴「加賀さん。いいですか。私のイメージだとかそんなんどうでもよくて」
翔鶴「加賀さんはこうあるべきなんですよ!」
加賀「ひどい押しつけを見たわ……」
翔鶴「五航戦に優しくしちゃダメなんです!」
加賀「後輩を可愛がって何が悪いのよ……」
翔鶴「もっと、こう! 抉るように! 内から! 来てください!」ハァハァ
加賀「あなたちょっと怖いわ」ドンビキ
翔鶴「そう、加賀さんは瑞鶴が着任した時だって……」
***
瑞鶴「翔鶴型航空母艦、二番艦。妹の瑞鶴です!」
加賀「あら、翔鶴の妹ね」
瑞鶴「は、はいっ」
加賀「一航戦の加賀よ。よろしくお願いするわね」ニコッ
***
翔鶴「こうだった!」
加賀「ねえ、それ、私に何か落ち度でも?」
翔鶴「加賀さんは……」
***
瑞鶴「翔鶴型航空母艦、二番艦。妹の瑞鶴です!」
加賀「……」チッ
瑞鶴「えっ……」ビクッ
加賀「被害担当艦の次は七面鳥ですか。まあいいでしょう」
加賀「精々私たちの邪魔はしない事ね」
翔鶴「瑞鶴を罵るなら私も罵ってください加賀さん! さあ早く! ハリハリハリー!」
瑞鶴「!?」
***
翔鶴「加賀さんは、瑞鶴着任の時はこうあるべきでした……!」
加賀「これじゃ私ただの嫌な女だし何よりあなたがおかしいわよ」
翔鶴「おかしくありませんよ何も!」
翔鶴「何の毒気もない! ただの良い先輩じゃないですかこんなの!」
加賀「そこのどこに問題があるのか説明してごらんなさいな」
翔鶴「加賀さんは……加賀さんはもっとこう……」
翔鶴「五航戦を見下しているべきなんですよぉ!!」クワッ
加賀「ねえ翔鶴……あなた頭大丈夫?」
翔鶴「加賀さんには五航戦を見下していてほしかったんです!」
加賀「意味わかんないわよ」
翔鶴「加賀さんには性格悪く、私たちをいびってほしかった!」
翔鶴「もっと小姑みたいな! ネチネチと! 責めてほしかった!!」
翔鶴「ついでに私の下のお口も弄ってほしかった!!!!!」
加賀「ええ……」
翔鶴「わかりませんか?」
加賀「少なくともわかってもらうつもりはないわよねあなた」
翔鶴「ほら、なんて言うんですか……」
翔鶴「私って、加賀さんにいびられてるほど輝くっていうか……」
翔鶴「加賀さんにいびられることが私のアイデンティティみたいな……」
翔鶴「加賀さんに立場を笠にレイプされるのが似合うみたいな……」
翔鶴「……ありません?」
加賀「ありません」
翔鶴「そんな断言しなくても……」シクシク
加賀「私にいびられることがアイデンティティってのが既に意味不明なのだけど」
翔鶴「だって……」
加賀「だってもなにもないわよ」
翔鶴「わかりました……じゃあ本音言います」
加賀「本音?」
翔鶴「私、加賀さんにいじめられたいんです……!」
加賀「本音も何も言ってること変わってない」
翔鶴「加賀さんに責められたい……」
翔鶴「加賀さんに見えないところで乱暴されたい……」
翔鶴「加賀さんに言葉のナイフでグサグサ傷つけられたい……」
加賀「怖い怖い怖い」ドンビキ
翔鶴「でも実際の加賀さんは私にそんなことしてくれなくて……」
加賀「なんで私が悪いみたいな言い分になるのかしらね」
翔鶴「もうフラストレーションが溜まりすぎててまずいんですぅ……!」
加賀「……どうしちゃったのよあなた」
翔鶴「お願いです加賀さん! 私を罵倒してください!!」
加賀「な、何故そんなことを……」
翔鶴「私を助けると思って! さぁ、早く!」
翔鶴「『この醜い若白髪空母が、どうせその体で提督も誘惑してるんでしょう?』って!」
翔鶴「舐るように! 嬲るように! お願いします!!」ハァハァ
加賀「い、いやよ……必然性がない」
翔鶴「あります!! 言ってもらわなかったら私、加賀さんを襲います!」
加賀「なんで私が脅迫されてるのか本気で意味不明だわ……」
翔鶴「加賀さん……お願いします……切ないんです……」
加賀「どこをどう拗らせたらこうなってしまうのかしら……」
翔鶴「あっ、いいですねそれ! それをもっと冷たい感じで……」ハァハァ
加賀「……変態」ジトッ
翔鶴「……ああっ♥」ビクン
加賀「……」
翔鶴「もっと、もっとお願いします加賀さん!」
加賀「……本当に破廉恥な空母ですね、あなたは」
翔鶴「いぃっ♥」
加賀「…………」ゾクッ
翔鶴「加賀さん……?」
加賀「……って、やめましょう翔鶴。誰の得にもならないわ」
翔鶴「私の得になってます!!」
加賀「言い換えましょう。私の得にならないわ」
翔鶴「で、でも、私を言葉責めしたりいびったりできますよ……?」
加賀「それ別に得でもなんでもないわよ。むしろ罰ゲームじゃないの」
翔鶴「私と話すのは罰ゲーム、と……?」
加賀「いや、そこまでは言ってな」
翔鶴「良いですね! そういうのを待ってたんですぅ!」
加賀「……ダメだわ、この空母」ハァ
加賀「そもそもの話、いびられることに喜びを見出す要素なんてあるもの?」
翔鶴「きょ、興味がお有りですか……?」
加賀「いえ、純粋な好奇心としてなのだけれど……」
翔鶴「そうですね……蔑みの目線や言葉はたまらない快感を喚起します……!」
加賀「そ、そう……」メソラシ
翔鶴「だからもっと冷たい目線を……ああっなんで目逸らすんですか!」
加賀「いや……怖いし……若干楽しくなってしまった自分も怖いし……」
翔鶴「ああ……ちょっと距離置かれてるというのにそこに喜びを感じちゃいますぅ……」ゾクゾクッ
加賀「……翔鶴、お願い、一度入渠してきて」
加賀「一生のお願いよ」
翔鶴「わ、私はいたってまともですぅ!」
加賀「まともな子がこんなキ○ガイじみた欲望を吐露するわけないでしょう!」
翔鶴「好きな人にぞんざいに扱われることの喜びは何物にも代えがたいんです――!」
加賀「――えっ?」
翔鶴「あっ……」
加賀「……今、いままでで一番聞き捨てならない台詞が耳に入ったのだけれど」
翔鶴「な、何ですかね? あはは……」
加賀「あなた、好きな人って……え?」
翔鶴「あっ、ち、違います……! これは、そういうのじゃなくて!」
加賀「…………」
翔鶴「あぅ……」
加賀「翔鶴。私の目を見て答えてちょうだい」
翔鶴「か、加賀さん……」
加賀「あなた……私のことが好きなの?」
翔鶴「え、ぅ……ぁ……」
加賀「翔鶴」
翔鶴「……っ、す……」
加賀「す?」
翔鶴「……好き、です……」
加賀「そう……なら、気持ちは同じね」
翔鶴「えっ」
加賀「…………」
翔鶴「あの、加賀さん、今、あのっ」
加賀「……に、二度は言いません」
翔鶴「今聞き逃しちゃったんです! お願いします加賀さん! もう一回!!!」
加賀「っ、そ、それなら……気持ちは同じ、ねと……」
翔鶴「加賀さん!!」パァァ
加賀「……期せずして想いを伝えることになったわ」
翔鶴「わ、私たち……これで……両想いで……」
翔鶴「恋人、ですよね……?」
加賀「え、ええ……と、まあ、そういう風にならないでもないというかその」
翔鶴「それじゃあ加賀さん……」
翔鶴「……恋人らしく、罵倒してください!!!」ハァハァ
加賀「だから意味わからないのよ。恋人は普通もっと愛を囁いたりするものでしょう」
加賀「まったく……これだから……五航戦は」
翔鶴「ああ! それですっ! それっ! 五航戦と私のダメさを絡めて、こう、もっと抉って!」ハァハァ
加賀「難しいわね……」
***
提督「……この聖なる夜にあいつらは俺の執務室で何してんだ」ドンビキ
瑞鶴「……さぁ……」
おしまい
クリスマスは純愛
お付き合いいただきありがとうございました
このSSまとめへのコメント
ワロタw翔加賀とは珍しいですね