一ノ瀬志希が始めたラジオ番組を軸にアイドル達の日常を描いたお話です。
連載作品となっていますが、今回からでも楽しんでいただけると思います。
前作はこちら。
星輝子「第4回 フレ志希のケミカルカオスキュートラジオ(仮)」
星輝子「第4回 フレ志希のケミカルカオスキュートラジオ(仮)」 - SSまとめ速報
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星輝子「第1回 フレ志希のケミカルカオスキュートラジオ??」
星輝子「第1回 フレ志希のケミカルカオスキュートラジオ??」 - SSまとめ速報
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――第5回収録当日 346プロダクション敷地内のとある喫茶店――
宮本フレデリカ「フンフンフフーン♪
フレ「待ち合わせの時間より1時間も早く着いちゃったから、お気に入りのカフェでお茶しよっと。あ、待ち合わせじゃなくて打ち合わせだった。どっちでもいいか~。マスター! コーヒーひとつ! ミルクと佐藤……じゃなくて砂糖たっぷりで!」
喫茶店のマスター「あいよ。お嬢さんは一人でも楽しそうじゃな」
フレ「毎日いろんなことがあって楽しい!」
喫茶「そりゃうらやましい。ワシみたいに老いぼれると楽しみに疎くなってのう」
フレ「そんなことないよ~。生活の中に新しいことを見つければいいんだよ~!」
喫茶「新しいことを見つけることが楽しいのかね?」
フレ「世界中でこんなことが起きたよって毎日ニュースで流したり、SNSにアップするよね~? みんな見るからニュース番組もSNSも無くならない。新しくなる世界を見つけることが楽しいんだよ」
喫茶「ほほう、面白い価値観を持ってるのう。それじゃ、さっきの答えは『自分の楽しみとして、ニュースにならないような新しい変化を見つける』ということかの?」
フレ「マスター、グッドアンサー! 座布団一枚! 座ってないけど!
フレ「例えば『あ! なんか変わった!』って気付けないと、自分の中で勝手に『いつもと同じだ~。つまんない~』ってなっちゃうでしょ?
フレ「毎日通る同じ道でも時間帯で全然違う景色になるし、平日か祝日かでも変わるし、季節でももちろん変わるし~。どんな些細なことでも、世の中は常に変化してるよね~。
フレ「些細な変化もあたしは楽しむの。目に映るもの全てを楽しみたいんだ~」
鷺沢文香「面白い話をしていますね。私も混ぜてください。フレデリカさん」
フレ「フミカちゃんだ~! 居たんだったら声かけてくれればよかったのに~!」
喫茶「そっちのお嬢ちゃんはコーヒーのお代わりいるかの?」
文香「はい。お願いします」
喫茶「あいよ。それにしてもお嬢ちゃん珍しいのう。いっつも指定席で本読んで動かないじゃろう。こっちのお嬢ちゃんの話が琴線に触れたかの?」
文香「ええ。そうです。フレデリカさん、先ほどの話。新しい変化を求めてラジオ番組を始めたんですか?」
フレ「えっ? あれはシキちゃんの思いつきだよ~」
文香「志希さんの……思いつき。では、ありすちゃんをゲストに呼んで、……あのひゃっはー、だとか過激な音楽に触れさせたりはしないんですよね」
フレ「えっ? ゲストに引っ張り込んで、メタル曲のレビューして、一緒にメロイックサインして、写メとって、あたしのありとあらゆる機器の待ち受け画面にするんだよ~」
文香「なっ……(クラッ)」
フレ「あ! ゲストで思い出した!」
文香「ちょっと待ってください。先ほどの話の続きを……!」
フレ「次か、その次くらいにゲストを呼びたいんだけど、引き受けてくれる人が居ないんだー」
文香「…………。メロイックサインでひゃっはーとなると……なかなかハードルが高いですね。私たちアイドルですから……」
フレ「それもあるけど、シキちゃんが『こっちからオファーするんじゃなくて、相手からアクションしてもらう』って言っててねー」
文香「プロデューサーに人選を任せるのではなく、アイドルが自ら出たいと言ってもらうのですか。高かったハードルが更に高くなりますね」
フレ「あたしはシキちゃんを手伝いたいんだけど、どうしようかな~って」
文香「そう……ですね。まずは、ポスターでも作ってみたらどうでしょう?」
フレ「ポスター? 『有限実行 質実剛健 才色兼備 宮本フレデリカ』みたいな?」
文香「総選挙ポスター風なんでしょうけど、そのチョイスはいかがなものかと……」
フレ「フミカちゃんにも考えてあげようか?」
文香「遠慮します」
文香「ラジオのゲスト募集ポスターですね。友情出演というのもなんですし、インセンティブを用意しましょう」
フレ「インデペンデンス・デイ? さすがのフレちゃんでもハリウッド映画の役は用意できないな~」
文香「インセンティブというのは報酬ということです」
フレ「任せて! フレデリカ風勲章をデザインして3Dプリンタで出力すれば良いんだね!」
文香「例えば『アピールタイム3分間』ですね」
フレ「うーん、フレちゃんの魅力を3分間で伝えきれるかな~?」
文香「フレデリカさん分かりましたか?」
フレ「うん! ばっちり! ありがとうフミカちゃん! まずは親しみやすいゆるキャラを考えてみるよ!」
喫茶「おぬしらホントは仲悪いじゃろう?」
フレ・文香『そんなことないよ~・そんなことありませんよ』
フレ「じゃあ~、早速さらさら書いてみようかな~。フフーン♪」
文香「その大きなカバンの中には、スケッチブッグまで入ってたんですか」
フレ「フレちゃんはデザイン科の短大に通ってるからね。良さそうなデザインが思い浮かんだら、すぐ書けるようにいつも持ち歩いてるんだー。こういうとき役立つし(サラサラサラー)」
文香「!!?? なんですか……? その……奇抜な容姿の植物は……」
フレ「これ? 真っ白な紙と向かい合って心を落ち着けた先に見えたもの……かな。えへへーちょっとアーティストっぽかったかなー?」
文香「マスター、今日はマカロン有りませんか?」
喫茶「あるよ」
フレ「えっ、このお店マカロンあるの?」
文香「常連さんだけの隠しメニューですけど……、フレデリカさんになら教えてもいいでしょう? マスター」
喫茶「うむ」
フレ「わーい、フミカちゃん、マスター、ありがとう! ちなみに味は何なの?」
文香「日替わりなんですよ。その時々でマスターが気ままな味で作るんです」
フレ「へぇ~、じゃあ『キママカロン』だね!」
文香「フレデリカさんらしいネーミングですね」
フレ「キママカロン、3つ! テーイクアウトで!」
喫茶「あいよ」
文香「3つということは、これからラジオですか」
フレ「うん、これから……。ってあれ? もうこんな時間? 集合時間ギリギリだー!」
文香「あらあら」
フレ「マスター、 マカロンできた? おっけー。キママカロンゲットだぜ! ごちそうさまでした! またきまーす! フミカちゃんもまたねー!」
文香「お気をつけて。またお会いしましょう」
喫茶「いつでも待っとるよ」
(バタバタ、ガランガラン)
文香「フレデリカさんは騒々しくて、いつも楽しそうで、飽きない人ですね」
喫茶「お嬢ちゃんもいつもより楽しそうだったのう。ほい、キママカロンひとつ」
文香「ありがとうございます。いただきます
文香「んっ、今日は当たりの日ですね。とってもあまーい……チョコレート味」
――第5回収録当日 346プロダクション休憩所――
松尾千鶴「う~ん」
千鶴「なんでボーカルレッスン上手くできないのかな……。表情が固いって言われても、言うこと聴かないのよ。ちょっと気分転換しよっと(ガサゴソ)」
フレ「あれ~? なんで休憩所でイベント入るの? 次のシーンはスタジオで待ってくれてるシキちゃんとショーコちゃんのはずなのに~!? ……んんっ? あれは……?」
千鶴「……平……常……心……っと。うん、いい出来ね」
フレ「すごーい! 習字上手だね! 筆ペンだけど」
千鶴「わぁっ! み……宮本……フレデリカさん……?」
フレ「呼ばれて飛び出てフレデリカ! だよ~。呼ばれてないけど。らびゅー! チヅルちゃん、字上手だね~!」
千鶴「はい、おはようございます。習字は小学生の頃から習っていたので」
フレ「あ! フレちゃん良いこと思いついた! ねぇねぇ、ちょっと一筆頼んで良いかな、良いかな~?」
千鶴「……? 私にできることであれば……」
フレ「わぁい、ありがと~! 君にはポスターの題字を代筆してもらいたいのだ~!」
千鶴「?? はい、よく分からないですけど、いいですよ」
フレ「ありがと~! これに……これくらいの……てきとーなかんじで……」
千鶴「アルファベット……! まぁ、それっぽく書くとします……(スラスラ)……できました」
フレ「ありがと~! ハッ……もうこんな時間! 急いでるから行くね! 本当にメルシー! またね~!」
千鶴「はい、また…………まるで台風みたいな人ね。あ……休憩時間おしまい。はぁ……どうして上手くいかないのかな……。
千鶴「……それにしても、宮本さんのあの絵……なんだったんだろう。……赤い花びら……チューリップ? ふふっ、まさかね」
――第5回収録当日 某スタジオ――
一ノ瀬志希「ふにゃー。フレちゃんまだかな、まだかなー」
星輝子「ふふ……電車が遅れてる……のかな……」
志希「そーだ! 今日はまだアロマ炊いてなかった! 今日は何にしようかなー(ガサゴソ)」
輝子「志希ちゃんの白衣……四次元ポケットみたい……」
志希「あたしのは特別製だよー。ちょーっとだけフレちゃんに改造してもらって、たくさんポケットに入れれるようにしてるんだー」
輝子「志希ちゃん専用白衣……。かっこいい」
志希「にゃははー、いいでしょー」
輝子「アロマ……前わたしがもらったラベンダー使っていい?」
志希「いいよ!」
輝子「よーし……スイッチ……オン」
志希「うんうん。良い香りー。ラベンダーは癒される香りだよねー」
輝子「ケガしてないけど、癒される……」
志希「ラベンダーはアロマテラピーで最も広く使われるエッセンシャルオイルのひとつで、ひじょ~に古く昔からケガの治療にも使われているんだー。
輝子「ほほう」
志希「その昔は消毒作用を利用して浴槽に入れて沐浴して、創傷を洗ったりしてね。実際、英語のラベンダーの語源になったラテン語lavareは『洗う』の意味があるんだよ」
輝子「さ……さすがドクター志希ちゃん」
志希「ふふーん。でーもー物理的な傷もあるけど、精神的な傷っていうのもあるよね」
輝子「ストレス……とか?」
志希「イグザクトリィ。香りは精神的な傷にこそ真価があるんだよ」
輝子「心の傷は……香りで癒すのか?」
志希「傷がふさがるのは時間が必要かもしれないけど、痛みを和らげる効果はあるんだ。自分の心は自分で労わってあげなくちゃダメなんだよ」
輝子「自分の心ってなんか、わからない……」
志希「心が磨耗していると、周りのことを気遣えなくなっちゃう。優しくできなくなっちゃうんだ。いつも誰か、何かに苛立っちゃうの」
輝子「んー。ない……な」
志希「健康な心でよろしい。でも覚えておいてね。そんな心のとき香りは癒しになるんだって」
輝子「……うん。勉強になった」
志希「輝子ちゃんの場合は溜め込む前に発散しちゃう?」
輝子「そ……そうだな。仲のよさそうな、か……カップルとか見ると……つい……。で……でも最近はそこまでひゃっはーしなくなった……ようにも思う。ラジオの……おかげかな」
志希「ラジオのおかげ?」
輝子「うん……。メタルのことを……安心して話せるところ。メタルのことを話していると……胸の中のモヤモヤが晴れていくかんじがする」
志希「そっかー。……あはは。なんかうれしい」
輝子「ふふ……志希ちゃんちょっと顔が赤い」
――バタバタ!! ガチャ!
フレ「おまたせー! 遅くなってごめんねー!」
輝子「おはよう、フレちゃん」
志希「おっそーいー、なんてね。打ち合わせ時間ギリギリ間に合ってるからいいけどねー」
フレ「あれ!? 三〇分くらい遅れちゃったよ?」
志希「集合時間は打ち合わせ開始の三〇分前にしてるのだー。時間があってもみんなで話していれば、すぐだしね」
輝子「今日は志希ちゃんと……たくさん、お話した」
フレ「シキちゃんとショーコちゃんの絆レベルが上がっている……!」
輝子「フレちゃんは何で遅刻しちゃったんだ?」
フレ「ギクリ。べべべ別に大したことじゃないんだよ?」
志希「あやしい。その、カバンに何かあると見た!」
フレ「シキちゃんの勘の良さが『昼ドラの旦那さんを獲られかけてる本妻』並……! (ガサゴソ)はい!」
志希・輝子『スケッチブック?』
フレ「いぐざくとりー! このラジオのゲスト募集広告を書いて事務所に貼ろうかなって! どうかな、どうかな~?」
輝子「おぉ……!」
志希「グッドアイディーア! でーもー、カオスポイントは遅刻の件でプラスマイナスゼロねー」
フレ「あらら、世の中って世知辛い……。まぁ、フミカちゃんから助言もらったんだけどね」
輝子「し……社会の風は、冷たい」
フレ「その台詞、なんかロックだね!」
輝子「ふふ……一部のハードロック・ヘヴィメタルが反社会的な表現をしているから、その印象が強い……」
フレ「あたしの言うロックって反社会的まで行かなくても、自分のルールで突き進むってイメージかなー」
志希「なーるーほどー。だから社会を斜めに見た輝子ちゃんの台詞にロック感じちゃったんだね~」
フレ「そそ! ビビッと、ギュィ~ンっと感じちゃったんだよ!」
輝子「ふふ……あたしのロックはハードロックだけどね」
フレ「おお~、かっこいい!」
志希「輝子ちゃんは自分の道を突き進んでる感が強いよね」
輝子「そう……か? わたしはわたしが進みたいと思った方向に進むだけ……かな。もちろん、たまには違ったこともやる。それはそれで……楽しい」
フレ「なんか……ほんと~にショーコちゃんってロックだね!」
志希「そーんなフレちゃんは、ロックロックって李衣菜ちゃんみたいだね~」
フレ「ガーン! キャラが被っちゃうー!」
志希「キャラがぶれてるフレちゃんに、修正の機会を与えよう~」
フレ「ははーっ。ありがたやー!」
輝子「おぉ……、志希ちゃんが崇められている」
志希「そのスケッチブックの中身を見せるのだー!」
フレ「途中で見せるの恥ずかしいけど、キャラのためなら仕方ない……! 短大でデザインを学んでいるフレちゃんの実力をお見せしよーう!(バッ)」
志希・輝子『…………』
フレ「あれ? どしたの? 二人してぽかーんとお口あけて。飴欲しい? 龍□散のど飴あるよ~」
志希「あ、飴は大丈夫……。その絵ってな~に~?」
輝子「……メタルでCDデビューする時のジャケットにするのか?」
フレ「残念ながらメタル転向予定はまだ無いんだー。これはね~。植木の精霊『うえきちゃん』なんだよ~。植木だけど、なーんとチューリップなんだよ~。すごいでしょ! でもでも~植木だから、しゃべられないし、動けないの! ざ~んねん~」
フレ「なーんと、うえきちゃんのストーリーも考えたよ!」
フレ「元はチューリップの精霊だったんだけど、仲良しだったスギの木が五百年の寿命を迎えて死んでしまう運命にあると分かったの。何とかして一緒に生きたかったチューリップの精霊は精霊の王様に聴くの。どうしたら一緒に生きられるのかって。
フレ「王様の答えは『スギの木と同化してチューリップのように植木鉢で育てられるけど、スギの幹を持ち、チューリップの花からは育ててくれる人間たちを苦しめる花粉を放って、くしゃみを誘発させてしまう哀しき生命体になってしまうこと』だったんだ。
フレ「チューリップの精霊は運命に悩むの。スギの木と生きたい。だけど人間たちを苦しめるのは嫌だと。そして、運命の日が訪れてしまったの。少しづつ、だけど確実に生気が失われていくスギの木。それを見つめることしか出来ないチューリップの精霊。
フレ「スギの木は最後の力を振り絞って言うの。『君と出会ってから見える景色が変わった。色鮮やかだった。最後に君の美しい赤い花びらを見ながら土に還ることができて、ボクは本当に幸せだ。ありがとう。君の今後に幸多きことを願って……』
フレ「その言葉を聴いて、チューリップの精霊は決断したんだ。『あなたの居ない未来に幸せなんて無い! わたしはあなたと一緒に生きていく! たとえ人間たちから忌み嫌われる存在になってしまったとしても!』
フレ「……チューリップの精霊はスギの木にキスをするの。そして世界が光に包まれる。光が収まった世界にはスギの木もチューリップの精霊も消えて、植木鉢とスギの幹とチューリップの花を併せ持った植木の精霊『うえきちゃん』が産まれたんだ……
フレ「名付けて『うえきちゃんファンタジー・エピソードゼロ』」
志希「ハッピーエンド~! 植木鉢は二人を繋ぐ絆になったんだ~」
フレ「ショーコちゃんも感想言ってくれて良いんだよー、ってあれ?」
輝子「……ち……チューリップとスギの木まで……イチャイチャと……! 君の名は? って運命感じちゃって……ヒャッハァアアアア! そんなに聴きたければ教えてやろう! 我が名は――」
志希「はいストーップ、続きはラジオでね。さすが輝子ちゃん感情表現もロックだね」
輝子「……すまん。つい……リア充な空気を感じてしまった……」
志希「物語はやっぱり大円団で〆だね。メディアミックス行けちゃうかもー?」
フレ「フレちゃん劇場もアニメ化かな!」
輝子「そういえば……フレちゃん、文字上手……」
フレ「あ~、これはさっきチヅルちゃんに書いてもらったんだ~」
志希「ちづるちゃんって……松尾千鶴ちゃんだね~。真面目そうな子!」
フレ「そうそう、あたしに似て真面目そうな子だよー」
志希「さっきのうえきちゃんとゲスト募集って関係あるの?」
フレ「字だけの募集じゃ寂しいかなって思って、マスコットキャラクターを考えたのだー
フレ「筆がのっちゃってついつい時間を忘れちゃった! ごめんなさい!」
志希「このポスターに免じて許してあげよ~う」
フレ「はは~~。ありがたや~」
輝子「ふふ……志希ちゃんが良く崇められる日だ」
志希「輝子ちゃんも崇めていいんだよ~。ドクター志希ちゃんの香りを嗅ぐと崇めたくなっちゃうよ~?」
輝子「くんくん……そんな気がしてきた……。ははーっ」
フレ「ん? そういえば今日はラベンダー?」
輝子「フレちゃん……正解」
フレ「ショーコちゃん……ンフンフー♪ たまには遅く来るのもいいかな~」
志希「フレちゃん、どうしたの? ニヤニヤしちゃって」
フレ「なーんでもなーいよー。ねぇねぇ、みんなでこのポスター完成させちゃおうよー」
志希「いいよ!」
輝子「わたしも……キノコ書く……」
~~一時間後~~
志希・フレ・輝子『か~んせ~い!』
フレ「途中でキャラクター創作お絵かき大会になったときはどうなることかと思ったー」
志希「わたしの『ドラッグキャット』かわいいのにー」
輝子「その猫かわいい……ちょっと目が旅に出てるけど……」
志希「薬漬けでトリップしてる設定ー!」
フレ「不治の病に罹った猫が痛みを和らげるために薬にどんどん溺れていくんだけど、その薬は希少品で手に入らなくなっちゃう。薬を牛耳っているのは裏世界の巨大組織。禁断症状と病の痛みに耐えながら薬を追い求めて、組織にケンカを売ってしまうドラッグキャット。ピンチに陥るたびに自分自身の限界を超えたり、ちょっぴり運に恵まれながら、巨大組織を成敗していく少し不思議な世界観のお話が見えた……!」
輝子「フレちゃん劇場は止まるところを知らないな……」
フレ「出来上がったポスター、事務所の目立つところに貼っておくね~」
輝子「あ、わたしが貼る」
フレ「そう? じゃあ、お願いぷり~ず」
輝子「うん。任せて」
志希「じゃ、ラジオ始めよっか!」
フレ・輝子『お~~!』
~~ON AIR~~
輝子(シイタケ):「わたしはシイタケ。友達のタケノコ君と学校帰りの帰り道。将来の夢について話していたときのこと」
フレ(タケノコ):「シイタケちゃん、将来は何になりたいんだ?」
輝子(シイタケ):「私は……筑前煮。タケノコ君と一緒に美味しく召し上がられたいの。タケノコ君は? 私はタケノコ君とならどこへでも……」
フレ(タケノコ):「オレは立派な竹になって竹林一団の一員になるんだ!」
輝子(シイタケ):「えっ……どういうこと?」
フレ(タケノコ):「今までだましててごめん……オレはタケノコだ……キノコじゃないんだ……」
輝子(シイタケ):「タケノコ……お前……キノコじゃなかったのか~~~!!」
志希「ざんねん~! キノコじゃなかった~!」
フレ「タケノコって収穫せずにそのままだと竹になるんだね~」
輝子「ノコって部分が一緒だったから……勘違いしちゃったシイタケちゃんの心温まるお話……」
志希「ほにゃららノコって名前は他にもあるし、次も小芝居スタートかな? ね? 大作家フレちゃん」
フレ「ギクッ! あたしのぽきゃぶらりーが試されている……!」
志希「リスナーのみんなは輝子ちゃんの『PANDEMIC ALONE』聴いてくれたかな? 楽しい曲だよね! それでいてカッコいい!」
フレ「うんうん~。AメロとBメロで曲調変わって楽しいよね~。一番と二番の間できっちり休符あるからエンドレスに聴いちゃう~」
輝子「ふひひ……ありがとう……うれしい」
志希「そんな輝子ちゃんの新曲をオマージュした小芝居でした!」
フレ「楽しんでくれたら嬉しいよ~」
輝子「そろそろタイトルコール……派手に決めるぜ! ヒャッハァァアアアアア!」
志希「ある時はシュールなロジカル!」
フレ「またある時はキュートにコミカル!」
輝子「そしてまたあるときはぁぁあ! メタルなソウルをお届けぇぇえ!」
志希「今日のケミカル実験はどんなカオスを生み出すのか~!?」
志希・フレ・輝子『fragrightのケミカルカオスキュートラジオ! はっじまるよ~!』
志希・フレ・輝子『はい、拍手~! パチパチパチ~!』
志希「タイトルコールすると、ラジオ始まった~って感じがするー!」
輝子「……ふふ……二ヶ月振りの気がする」
フレ「ショーコちゃん……! シーッ!」
輝子「おっと……すまん」
志希「リスナーのみんな~! ラビュー! ケミカル担当一ノ瀬志希でーす。次フレちゃん」
フレ「キュート担当の宮本フレデリカだよ~。みんな~らびゅ~! 次ショーコちゃん!」
輝子「ヒャッハァアアアア! ……っていうのはあとにしておいて。メタル担当の星輝子……です。み……みんな、よろしく……」
フレ「この番組はシキちゃんショーコちゃんフレちゃんの三人で勝手に作ったユニット、fragright(フレグライト)がリスナーの悩みに答えたり~、メタルな曲の紹介したり~、わちゃわちゃ小芝居してみたりするよー」
志希「早速二ヶ月振りの一つ目! 『カオスレター』のコーナー! リスナーのみんなから頂いたカオスな悩み・意見・日米情勢・明日のお天気などに答えていくコーナーでーす」
フレ「いつの間にか守備範囲広くなったね~」
輝子「おぉ……オールラウンダーだな……」
志希「一通目のお便り。カオスネーム『時……それは全人類平等に与えられた楔……』さんからです。サンキュー! 『ボクは十四歳の中学二年生です。低血圧で朝起きるのが苦手です。苦痛です。なぜ人は朝目覚めなくてはならないのか、目を覚ますたびに考えます。そして時計を見て現実に引き戻されます。朝、爽快に目覚める方法を教えてください』だって。カオスレベルは平均点五! ……答え、みんな思いついた?」
フレ「おっけー!」
輝子「うん。おっけー」
志希「せーので答え合わせしよ~。せーのっ」
志希・フレ・輝子『PANDEMIC ALONEをアラーム音に設定する!』
フレ「満場一致のベストアンサーだったね!」
志希「Aメロがいい感じに音量絞ってて、 Bメロで驚いて飛び起きて爽快な目覚め間違いなし!」
輝子「ふひひ……ひとりぼっち夢の世界から賑やかな現実へご招待」
フレ「ショーコちゃん、そのキャッチコピーカッコいい!」
輝子「ふふ……ありがとう。次はわたしが読むね。カオスネーム『眠り……それは全人類平等に与えられた癒し……』さんからです。さっきと同じ人か? ありがとう。『ボクは中学二年です。昼間とても眠たくなってしまいます。低血圧なので。これを書いている数分前にも先生に居眠りしているところを怒られてしまいました。眠たいのは仕方ないです。低血圧なので。低血圧でも昼間に眠くならない方法ありませんか?』とのことです。志希ちゃんカオスレベルは?」
志希「ざんねーん、ランクダウンで三~。低血圧なので~」
フレ「シキちゃんも低血圧?」
志希「あたしはプラス夜型なんだ~。まだ時差ボケなのかも~」
輝子「でもこのラジオの中では一番時間守ってる……よね?」
志希「気のせいだよ? きっと次回は遅刻する!」
フレ「自信満々に言い切った! 新たな遅刻の形だね!」
輝子「ただの遅出……?」
志希「答えは決まったかな~?」
フレ「おっけー!」
輝子「わたしもおーけー」
志希「せーのっ」
志希・フレ・輝子『夜は早く寝る!』
フレ「シンプル・イズ・ベスト~」
志希「フレちゃんは寝付き良いほう?」
フレ「うん! ベッドに入って羊を十匹数える前に寝ちゃう!」
輝子「おぉ……日中フル活動してるんだな」
志希「そういう輝子ちゃんも寝付きよさそうだよね~」
輝子「キノコたちにおやすみを言って、キノコと共に眠るイメージをしてるといつの間にか寝てる……」
志希「自己催眠かな? 自分がリラックスできる環境をイメージするんだね。参考になるかも」
フレ「シキちゃんは夜更かししちゃってそう~。そんなシキちゃんの安眠法は?」
志希「あたしはアロマ~。最近作ったのは、スイートオレンジとプチグレンとラベンダーを調合したの。オレンジとプチグレンのフレッシュな香りとラベンダーのフローラルな香りが重なって落ち着く~」
フレ「さっすがシキちゃん! その香りの中だったらあたし、羊三匹数える間に寝ちゃいそう」
輝子「それは○び太くん並……」
志希「輝子ちゃんお待ちかね次のコーナー行こ~」
輝子「ヒャッハァアアアアアア! 人は誰もが孤独。だが集え! 我が元に! あたしの歌がみんなを繋ぐ絆になる! 我が名は星輝子だぁああああああ! カァァアアアオスミュゥゥゥジックコォォォオオナァァァアア!」
フレ「相変わらずココでも名乗るの?」
志希「本人たっての希望で!」
輝子「ふふ……今回は自作。今回のリクエストはカオスネーム『それは雪のように』さんからです。ありがとう。メッセージがあるので読む。『輝子さんシャッス! 輝子様のデスポイズンマッシュルームレジェンド毎日聴いてます! マジリスペクトッス! マジぱねぇっす! 人生のテーマソングです! そんな私がリクエストするのは『TEARS OF TRAGEDY』の『Spring Memory』です。春の記憶が懐かしいと思ってリクエストしました。最近雪降って寒いですね。体調に気をつけて頑張ってください。』……だって。正しくは毒茸伝説だぞ。でも聴いてくれるならどんな名前で覚えてくれても……うれしい」
フレ「確かに最近ほんっと~寒い~! 家帰るとコタツに直行だよ~。コタツにミカンだよ~」
志希「コタツいいよねー。あたし~、一旦入ると、出られない~」
フレ「コタツは日本を象徴する文化……文明と言っても過言ではない! コタツはいい文明!」
輝子「ヒャッハァァアアア! 曲流すぜぇえええ!」
志希・フレ『雑談してすみませんでしたー! はい! どうぞー!』
~~視聴開始~~
志希「イントロがゆったりしたピアノメロディから、ギターが入ってくることで疾走感がでて良い感じー」
フレ「明るくてアップテンポでノリがいいね~」
志希「ボーカルとピアノ音が高音域でキレイ~。このあたりの雰囲気が春っぽいかな」
輝子「ピアノ音の跳ねる感じが、アップテンポ感と疾走感を両立させてるね」
志希「なーんか、桜の香りがしそう……って歌詞で言ってたー」
輝子「短いながらも印象的なギターソロ……良いね」
フレ「明るい感じなのに、どこかせつない感じもするー」
輝子「あ……哀愁感だね」
志希「歌詞が哀愁感を醸し出してるかな? リピート~」
~~二週目~~
フレ「うーん、登場人物は二人で、故郷に帰ってきた人のお話っぽい」
志希「ラストのサビは故郷からまた離れるって感じかなー?」
輝子「『帰郷』と『時の流れ』と『出立』。哀愁感が出る選択……だね」
~~視聴終了~~
志希「では輝子ちゃん、総括をどうぞ~」
輝子「歌詞の解釈は人それぞれ。想像するのも楽しみのひとつ。別のアーティストが言っていたことだけど、曲が先に出来ている場合、歌詞はその曲に似合う服飾選びをするようなもの……らしいんだ。そのパターンでこの曲も出来ているようなので、どんなモチーフでこの歌詞を書いたんだろうって想いを馳せるのも、楽しい」
フレ「なんか深いね~!」
志希「その台詞は浅いねー」
フレ「シキちゃん、そこは『軽い』、だよー」
志希「そっかー、そうだった! にゃはは」
輝子「わたしたちが話したことが正解じゃない……ので、みんなも自分なりの解釈を見つけて、曲を楽しんでくれたら……うれしい。以上。カオスミュージックコーナーでしたぁぁぁああ!」
志希「あっという間にエンディングのお時間でーす」
フレ「本当にあっという間だねー!」
輝子「……始めて全部居た気がする」
フレ「ショーコちゃん! シーッ!」
輝子「……す……すまん。でもあっという間。楽しかった」
フレ「そっかそっか~。よかったよかった~!」
志希「ポスター作ったから、ゲストさん呼べるかな~?」
フレ「シキちゃん気が早いよ~。けど、フレちゃん作のうえきちゃんの魅力でゲストざっくざくだよ! このスタジオに九人くらい入れちゃうよ!」
輝子「それは……いくらなんでも無理じゃないか……わたし机の下はいる」
志希「五人が限界かな~? 前の輝子ちゃんみたいにワンポイントのゲストでもいいけど、やっぱりずーっと一緒に居てしゃべりたいよね」
フレ「シキちゃん……フフーン♪ そうだね~。いろんな子たちと楽しくおしゃべりしたいよ~。そ~だ。穴場のお店見つけたからあたしマカロン買ってきちゃうよ~!」
輝子「おぉ、フレちゃんが三割増しでご機嫌な笑顔。マカロンパワーだ。前のカフェテリアとは違うのか」
フレ「いぐざくとりー! し・か・も、そのお店のマカロンは裏メニューなのだー!」
フレ「そしてそのお店のマカロンを買ってきましたー!」
志希・輝子『おおー!』
フレ「フレグライト揃って始めから最後までラジオするのを祝いたくてね。一個づつだけど」
輝子「さすがフレちゃん」
志希「も~、またひとりでカッコつけて~。ラジオ終わったらマカロンパーティだね」
フレ「お~~! ということで今回はここまで! 宮本アンドレ・ザ・フレデリカと!」
志希「締めるの早い~。一ノ瀬トリスメギストス志希と~」
輝子「あ……なんかミドルネームつけるのか。うーん、星パンデミック・マッシュルーム輝子でした」
フレ「宣伝大事!」
志希「それじゃあ、みんな~」
志希・フレ・輝子『ば~いば~い!』
~~OFF AIR~~
志希「フレグライト初(?)仕事お疲れ様でした~!」
フレ「おっつかれさまー!」
輝子「ふふ……おつかれ……さま」
フレ「じゃあ、みんなで事務所で打ち上げだー!」
志希「マカロンパーティーだー!」
輝子「おぉ……マカロン……なに味かな……」
フレ「そ・れ・は、フレちゃんも知らないのだー!」
志希「なにそれー! おもしろーい! すっごく楽しみー!」
フレ「マカロンフレーバークイズ開催だよ~!」
輝子「そ……それは、楽しそうだ……キノコ味は……あるかな……」
志希「はやくはやく~、事務所行こ~!」
フレ「ゴーゴー!」
――数日後 346事務所 早朝――
千鶴「おはようございます」
千鶴「あれ……誰も居ない。このプロデューサーの机の真後ろに貼ってあるポスター
千鶴「『fragrightのケミカルカオスキュートラジオ! ゲスト大募集』
千鶴「へぇ……ラジオのゲスト募集、宮本さんの代筆はこれだったのね
千鶴「『参加資格 ①キュートであること ②少女であること ③アイドルであること』
千鶴「美○年探偵団シリーズのパクリ……?
千鶴「『要するに、誰でもおっけーだよー! 我こそはと思う人は一ノ瀬志希、宮本フレデリカ、星輝子の誰かに声かけてね! プリーズミー!』
千鶴「連絡先は……?
千鶴「……おしゃべりの仕事……ボーカルレッスン上手くできなかったのに……」
千鶴「でもラジオ番組……面白そう」
輝子「……じゃあ……出てみる?」
千鶴「わぁっ! い……いつのまに後ろに居たんですか!?」
輝子「ふひひ……細かいことは気にするな……。ラジオ……出る?」
千鶴「……! …………い、いえ、私今からレッスンあるんで、失礼します(バタバタ、ガチャン)」
輝子「……ふーん。どう思う? シイタケちゃん。
輝子「(声色変えて)脈あり! けど不安もあるみたい……。
輝子「(声色戻して)そうだね。わたしもそう思うよ。
輝子「――教えてあげようか。本当の机の下ってヤツを……!!」
(第6回へ続く)
【引用作品紹介】
・ALBUM CD『Continuation Of The Dream』TEARS OF TRAGEDY
・CD『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 06 Love∞Destiny』
・CD『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 026星輝子』
・美少年探偵団シリーズ 西尾維新 講談社タイガ文庫
【参考文献】
『アロマテラピーのレシピ12か月 池田書店 監修 佐々木薫』
『アロマテラピーのための84の精油 フレグランスジャーナル社 ワンダ・セラー著 高山林太郎訳』
【あとがき】
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次回の構想もありますので、気長にお待ちいただけると幸いです。
以上
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