【ガルパン】杏「バレー部復活の嘆願書が来ているんだけど」みほ「却下で」 (78)




~ 大洗女子学園・生徒会室 ~



杏 「いきなりバッサリいったね… 西住ちゃん、ひょっとして磯辺ちゃんたちのこと嫌い?」

みほ 「そんな事あるわけないじゃないですかッ!」

みほ 「アヒルさんチームの皆さんは好きですし、戦車道の仲間としてとても頼りにしています。」

杏 「それじゃあ、バレー部復活の件なんだけど ──── 。」

みほ 「握りつぶしてください。」

杏 「こいつはひでぇ。」

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杏 「西住ちゃん、なんでそんなにバレー部復活に反対なのさ?」

みほ 「戦車道を辞めてもらっては困るからです。」

みほ 「砲の貧弱さから敵車両を撃破することは少ないですが、その卓越した操縦技術によって」

みほ 「戦場を縦横無尽に駆け回り、常に勝利に貢献してきました。」

みほ 「西住十字勲章を授与したいくらいです。まぁ、そんなものはありませんが。」

杏 「評価高っかいなぁ…。」



                                               タンカスロン
みほ 「知波単学園の皆さんと仲が良かったり、最近では奉納戦車試合で 強襲戦車競技 にも出場したりと」

みほ 「学園の外とも繋がりが多く、今や大洗戦車道チームのエースであり看板です。」

みほ 「バレーボールに専念したいから辞めます、などと言われたらもうお終いですよッ!!」

杏 「あー、奉納試合ね。あったあったそんなの。」

杏 「あれは結局、引き分けになったけど西住ちゃん的にはそこらへんどうよ?」

杏 「おしりぺんぺん案件とかじゃない?」

みほ 「いえ、目標を達成したという意味では完璧な勝利です。」





みほ 「お祭りの成功とは、つまり盛り上げることです。」

杏 「うん。」

みほ 「だからこそ正面からの一騎打ちを挑まれた時、もしも拒否して狙撃なんかしたら ─── 。」

杏 「あ~、ちょっと白けるかもねー。」

みほ 「はい。相手の挑戦を受け、派手に撃ち合って、遺恨の無い形で終わる。」

みほ 「お祭りの締め方としては最高の展開でした。」

みほ 「アヒルさんチームの技術は序盤で見せつけたので、引き分けでも評価が下がることはないでしょう。」

杏 「勝利とは、ただ勝つことではないってわけだ。」

杏 「磯辺ちゃんたちはそこまで理解して挑戦を受けたのかな?」

みほ 「どうでしょう…。単に面白いから受けたような気がします。」

杏 「だよねー。」




杏 「でもさ、もう廃校の危機は去ったわけで。無理に戦力を整えなくてもいーんじゃない?」

杏 「バレー部がいなくなっても。最強じゃなくてもそれなりに、って感じでさ。」

みほ 「ダメです。」

杏 「おぉぅ…。今日の西住ちゃんはツッコミ激しいなぁ…。」

みほ 「そもそも、大した実績がないからこそ文科省に目を付けられて廃校という話が持ち上がり」

みほ 「実績があればいいだろうということで、戦車道で優勝を勝ち取りました。」

みほ 「一度優勝しただけで、後は結局弱小校へと逆戻り、では」

みほ 「後からどんな難癖を付けられるかわかりません。」

みほ 「むしろ来年以降は優勝と言わずとも、それなりの結果を出せる体制を整えなければならないのですッ!」

杏 「ぐう正論。」




みほ 「そんな大事な時期にバレー部がバレーするから脱退なんて、考えただけでも恐ろしいですよ!」

みほ 「ただでさえ3年生が卒業してしまうというのに…。」

杏 「でもさ、うちは2年生が中心になったチームだからそんなにダメージは無いんじゃない?」

杏 「他の学校なんて隊長、エースがごっそり抜けて大変だよー。」

みほ 「大洗は卒業する人数は少なくても、体制が根本からひっくり返る問題があります。」

みほ 「…自動車部が三名、いなくなります。」

杏 「oh…。」

杏 「つまり、予備車両も無いのに常に万全の状態で戦えるというアドバンテージがごっそり消えるわけで…。」


                 アハト・アハト
みほ 「さらに、大洗で唯一 88mm砲 を搭載した、いわば最強の車両が置物同然になります。」

杏 「さすがにツチヤちゃん一人に何もかも押し付けるわけにはいかないしねー。」




みほ 「いっそのことポルシェティーガーを売って、新しい戦車を購入しようかと提案したところ」

みほ 「優花里さんにガチ泣きで反対されました。」

杏 「うん、やると思った。絶対そうだろうなって思ってた。」

みほ 「足にすがりついて『あれはいいものですから!』と叫ぶ姿に、私も撤回せざるを得ませんでした…。」

杏 「マニアにとってのレア物とはそういうものだよ。」

みほ 「そういうものですか。」

みほ 「さらに『足の裏を舐めますから!』と言われて、全力で止めました。」

杏 「それは秋山ちゃんの個人的な趣味じゃないかな。」

みほ 「そうですね。」



みほ 「状況を整理するためにも、一度書き出してみましょうか。ホワイトボードお借りしますね。」キュッキュッ

杏 「スラスラと名前が出てくるあたり、さすがだなぁ…。」





カメさんチーム

 角谷 杏
 小山 柚子
 河嶋 桃

レオポンさんチーム

 ナカジマ
 スズキ
 ホシノ

カモさんチーム

 そど子

アリクイさんチーム

 ぴよたん






みほ 「… … …。」

杏 「… … …。」

みほ 「会長、留年のご予定は?」

杏 「無いよ。」



みほ 「うあぁぁぁぁぁぁぁ!なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

杏 「西住ちゃん落ち着いて、落ち着いて、どうどう。」

みほ 「ハァハァ… まず、現生徒会の皆さんが卒業してしまうので、ヘッツァーはがら空きになりますね。」

杏 「そこは新入生に期待だね。あれだけ大活躍したから、来年はドカンと人が集まるんじゃない?」

杏 「大洗は選択科目を1年ごとに選ぶタイプだから」

杏 「新3年生や新2年生からも入りたいって人は来るだろうし。」

みほ 「それはそうですけど… 敵陣に乗り込んで獅子奮迅の活躍をした生徒会の皆さんがいなくなると」

みほ 「やっぱり辛いです。」

杏 「おっと、軍神殿からお褒めの言葉をいただけるとはありがたいねぇ。」

みほ 「その軍神っていうのは止めてください、恥ずかしいですから…///」

杏 「なーに言ってんの。西住ちゃんは大洗の生徒だけじゃなくて」

杏 「この学園艦に係る人、全てにとっての英雄だよ?」

杏 「調子に乗れとまでは言わないけど、もうちょっと胸を張ってもいいんじゃない?」

みほ 「そうでしょうか…。」

杏 「う~ん、功績に対してこの小動物感。」

杏 「直接会ったことのない人からは、西住ちゃんのイメージはすごいことになっているんだろうなぁ…。」



杏 「人員の補充については、新しく入る人を見ないと何ともいえないからさ。」

杏 「残るメンバーについて考えようよ。」

杏 「これだけいなくなる、じゃなくて。こんなに頼もしい奴が残ってくれるんだーって。」

杏 「例えばカバさんチームとか、西住ちゃんから見てどうよ?」

みほ 「どんな試合でも安定して1輌以上撃破してくれるトンデモ集団です。」

杏 「やっぱりそういうのって、指揮する側としてはありがたいもん?」

みほ 「最高です。特に黒森峰や大学選抜といった強敵相手にそれぞれ2輌撃破。」

みほ 「いつもギリギリの戦いだからこそ、安定してキルレシオを稼いでくれるチームは本当にありがたいです。」



杏 「攻撃力の高い三突だからこそっていう面もあるよね。」

みほ 「むしろ、三号突撃砲でよくぞここまでできるものだと驚いています。」

みほ 「あれは細かい分類上、戦車ですらありません。履帯のついた砲です。」

みほ 「砲塔が回らないので、左右に調整するときは車体ごと回さなければなりませんし」

みほ 「待ち伏せとなると、敵の進軍ルートを見極めたうえで射程に入った瞬間を捉えなければなりません。」

みほ 「それだけの名人芸を偶然ではなく、安定してやってのけているのです。」

杏 「気合の入った歴女ってスゲー。」

みほ 「全員2年生なので、そっくりそのまま残ってもらえるのは本当に嬉しいですね。」

みほ 「走行のアヒルさん、火力のカバさん。大洗が誇る二枚看板です。」



杏 「それじゃあ次、ウサギさんチームの評価も聞きたいね。」

杏 「来年度、再来年度を支える重要なポジションだと思うけど。」

みほ 「はい。試合を重ねることに成長を見せてくれる、まさに次代を担うチームです。」

杏 「いい機会だから、もうぶっちゃけたこと聞くけどさー」

杏 「聖グロ戦で逃げ出したこと、根に持っていたりしない?」

杏 「あいつらは肝心なところで信用できねー、みたいな感じで。」

みほ 「いえ、まったく。逆に戻ってきてくれたことで評価が跳ね上がりましたね。」

杏 「へぇ、理由を聞いてもいいかな。」

みほ 「会長、戦車道について改めて冷静に考えてみると」

みほ 「年頃の女の子が鉄と油にまみれて大砲撃ち合っているなんてまともじゃないですよ。」

杏 「うわぁ… 言い切りやがったよこの娘。言うてはならんことを…。」



みほ 「誰もが覚悟完了したうえで戦車道チームに入っているはずの黒森峰でさえ」

みほ 「途中で辞めていく人は大勢いました。それも当然だと思っています。」

みほ 「ですが、ウサギさんチームの皆は戦車の怖さを知ったうえでなお、戻ってきてくれました。」

みほ 「真摯に謝罪し、もう一度やらせてほしいと願う姿を見て確信しました。彼女たちは伸びる、と。」

杏 「うん、その後の活躍については誰もが認めるところだね。」

杏 「マジノ、サンダース、アンツィオ、プラウダ、黒森峰、エキシビジョンマッチに大学選抜…と。」

杏 「色々と失敗もしたけど、それ以上に大活躍してくれたよ。」

みほ 「特に黒森峰戦でのエレファントとヤークトティーガーを撃破したことは今でも語り草ですね。」

みほ 「何がいいって、自分たちで作戦を考えて実行したというところが素晴らしいです。」

杏 「そういえばあれって西住ちゃんの指示でやったわけじゃないんだってね。」

みほ 「はい。作戦立案から実行まで、すべて彼女らの実力によるものです。」



みほ 「強豪、黒森峰の重戦車に対して実力で勝った。そう考えると恐ろしいまでの成長速度ですね。」

杏 「相手が油断していたってこともあるけどねー。」

みほ 「油断をするというのは、要するに相手の力量も見極められなかったということです。」

みほ 「王者の戦い、完全なる勝利を掲げる黒森峰で」

みほ 「 『油断したからであって、負けてはいません』 なんて言ったら大問題ですよ?」

みほ 「正座で説教くらいなら軽いもので、下手をすれば西住流に伝わるあんなことやこんなことに…。」

杏 「oh…。」

みほ 「次に戦うことがあれば、相手は一切の油断をせずにかかってくるでしょう。」

みほ 「ですがハッキリ言えることは、あの日の勝負は紛れもなくウサギさんチームの勝利です。」

杏 「本人らの前で言ってあげたらきっと喜ぶよ。調子にも乗るだろうけど。」

みほ 「調子に乗ったあとで、反省もできるチームです。」

杏 「溺愛してるなぁ…。」




杏 「それじゃあ、ネトゲオタチーム… もとい、アリクイさんチームとかどう?」

杏 「試合参加数が少ないから評価が難しいかもしれないけど。」

みほ 「ゲームとリアルに差があるなら自分たちが戦車兵の肉体を手に入れてしまおうという発想。」

杏 「うん… うん?」

杏 「言いたいことはわかるけど、何を言っているんだろうね。」

杏 「いつの間にかマッシヴな体つきになっていたけど、あれは西住ちゃんの指示では ─── 」

みほ 「ないです。」

杏 「そうだよね。」




みほ 「黒森峰戦では、身を挺してフラッグ車を守るという比類なき功績をあげているわけですが」

みほ 「あくまで偶然の産物であって、実力によるものではないと悩んでいたのでしょうか。」

杏 「開始早々に戦線離脱だからね。誰も文句は言わないどころか褒めたたえているけど」

杏 「当人らにとっては悔しいだろうねぇ。」

みほ 「その悔しさをバネに、これから活躍するためにはどうすればいいかを話し合い」

みほ 「自分たちで体を鍛えると決めて、黙々と励んでいたのでしょう。」

杏 「極インドア派があそこまで鍛えるのは相当辛かっただろうなぁ。」

みほ 「仲間同士、励ましあいながら乗り越えた。本当にいいチームですね。」

杏 「で、エキシビジョンでも大学選抜戦でもしっかりと敵を撃破して、その成果を見せてくれたわけだ。」

みほ 「これから先、大洗を代表するチームとなって活躍する… はず… だったのですが…。」

杏 「?」





みほ 「ぴよたん!おのれぴよたぁぁぁんッ!!誰の許可を得て卒業なんかしやがるんだッ!?」

杏 「学校。」

みほ 「そうですね!ペッ!」




みほ 「あーもう、あと1年だけ居てくださいよー。ぴよたんさーん。」

みほ 「三人ともすごく仲がいいからしばらくの間、全員2年生だと勘違いしていました。」

杏 「ネットを介した人間関係はわかりづらいねぇ。」

みほ 「アリクイさんチームはいいなぁー。戦車に乗るたび、ぴよたんさんのぴよを揉み放題なんだろうなー。」

杏 「西住ちゃん、テンションおかしい…。」

みほ 「私は至って冷静です。」

杏 「しらふでそれなら、さらにヤバいよ。」




杏 「ねこにゃーちゃんも、ももがーちゃんも、戦車内でいかがわしい行為はしていないと思うよ。」

杏 「三式中戦車内が濃厚な百合空間ってことは無いよ。」

杏 「私だって小山っぱいをどうこうしているわけじゃないし。」

みほ 「え、していないのですか?」

杏 「していないよー。」

みほ 「桃っぱいも?」

杏 「とりあえず揉むという発想から離れよう、ね?」

杏 「西住ちゃんだって、あんこうチームの仲間を揉みしだいたりしていないでしょ?」

みほ 「スタイルがいいという意味では華さんがいますが、巨乳というカテゴリではないので。」

杏 「そう… うん、そうだね。」

みほ 「カバさんチームはおりょうさんと日本の夜明けを迎えたりしているのでしょうか…。」

杏 「してないよ。レズはカエサルだけだよ。」

みほ 「その発想もどうかと。」




杏 「話が脱線しちゃったね、次は風紀委員チーム!カモさんチームいってみよう!」

みほ 「単独での活躍よりも、連係をとって光るチームですね。」

杏 「ヘッツァーの上に乗っけて俯角を付けたりとかやったなぁ。」

みほ 「戦車道はあくまで団体戦であり、どのチームとも協力ができる、連携の要となれるチームは貴重です。」

杏 「撃破数とか、そういう表に出る数字以上の活躍はしているね、確実に。」

みほ 「戦術を支える名アシストとして活躍を期待している… の、ですが…。」

杏 「そうだよねー。ここもなんだよねー… ハハハ」







みほ 「そど子ぉぉぉぉぉぉぉぉッ!行かないでそど子さぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」

みほ 「重装甲でオールマイティに活躍できるルノーB1bisを置いてどこへ行こうというのかッ!?」

杏 「大学。」

みほ 「そうですね!ペッ!」



杏 「風紀委員は沢山いるから、そこから一人回してもらって補充するのがいいんじゃないかな。」

杏 「後に残るゴモ代ちゃんとパゾ美ちゃんが指導してくれれば、すぐに動けるようになるでしょ。」

みほ 「そうなんですけどねー…。風紀委員のリーダーはそど子さんというイメージが固まっちゃってて。」

杏 「うーん、慣れるしかないね。」




杏 「じゃあ最後にあんこうチーム… の、活躍についていまさら語るのもなぁ。」

杏 「ちょっと趣向を変えて、西住ちゃんがチームの中で一番評価しているのって誰?」

みほ 「みんな最高のチームメイトだと思っていますので、順位をつけるような真似はちょっと…。」

杏 「ま、そんな深く考えないで。ただの言葉遊びみたいなもんだよ。」

杏 「例えば、こいつがいなくなったらチーム存続の危機だー、みたいな人はいる?」

みほ 「チームがまとまるのに絶対に必要と言えば、沙織さんですね。」

杏 「おっ、ここで通信手を出すのはちょっと意外かな。」

みほ 「会長… 戦車は、怖い乗り物ですよ。」

杏 「うん?まぁそうだろうね。」

みほ 「装甲一枚を隔てて砲弾が飛び交う、というのはあくまで外的要因です。」

みほ 「狭くて薄暗い戦車の中に女が数人…」

みほ 「これで、車内に険悪な雰囲気が漂っていたらどうなると思いますか?」

杏 「ヒェッ」




みほ 「だからこそ物怖じせずに誰にでも話しかけられて、仲良くなれる沙織さんの才覚は重要です。」

みほ 「戦車道に限らず、どんな組織でも人間関係の調停役は大事ですよ。」

みほ 「そしてこれは訓練すれば誰にでもできる、という技能ではありません。本当に感謝しています。」

杏 「うん。」

みほ 「抱かれてもいい。」

杏 「うん?」

みほ 「沙織さんムッチムチやぞ。」

杏 「だから何だ。」




杏 「あんこうだけじゃなくて、他のチームにもよく話しかけたり相談に乗ったりしているからねー。」

杏 「特にウサギチームからの慕われ方はすごいね。」

みほ 「ウサギママ、といったところですね。」

杏 「念願の結婚もせずにママ呼ばわりは本人からするとどうなんだろう。」

みほ 「沙織さんとウサギさんチームを見ていると、シルバニアファミリーを連想します。」

杏 「つぶらな瞳のウサギが戦車を囲むシーンを想像するとかなりシュールだよ…。」

みほ 「可愛いじゃないですかッ!」ムフーッ

杏 「可愛いの基準がわからない。」

みほ 「可愛い!じゃ!ないですかッ!!」

杏 「いかん、変なスイッチ入った。」




杏 「西住ちゃんは本当にチームの皆のことが大好きだねぇ。」

みほ 「愛しています。」

杏 「お、おぅ… 言い切ったか。」

みほ 「言うなれば運命共同体。」

杏 「うん。」

みほ 「互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。」

杏 「うん?」

みほ 「一人が五人の為に、五人が一人の為に。だからこそ戦場で生きられる。」

杏 「西住… さん?」

みほ 「分隊は兄弟!分隊は家族ッ!」

杏 「それ以上いけない。」




杏 「ひとつ気になったんだけど、西住ちゃんにとって『自分で考える』ってのは重要項目?」

杏 「ウサギやアリクイを褒めるときなんか特に強調していたように思えたけど。」

みほ 「訓令戦術、というほどではありませんが。少なからず意識はしています。」

みほ 「大洗の強さは、誰もが独立した指揮官であるというところにあると思うんですよ。」

みほ 「詳細な指示がなくとも、その場で最適な行動を考え、即座に実行する。」

みほ 「だからこそ、市街地などでタイマン張ったとき、無類の強さを発揮するのです。」

杏 「市街地に入ると、格上の車両相手に普通に勝っているからねぇ。」

杏 「ゲームっぽく言えば、指揮範囲を外れても能力値が下がらない、みたいな感じかな。」

みほ 「そんな感じです。」




杏 「最近、黒森峰でも訓令戦術を取り入れようとしているらしいね。」

みほ 「…私に言わせれば10年遅いです。」

杏 「わーぉ、辛辣。やっぱりまだ、黒森峰に対しては割り切れないものとかある?」

みほ 「… … …。」

杏 「あ、ごめん。言いたくないならそれでいいんだけど…。」

みほ 「…いえ、聞いてください。私が黒森峰を去ることになったあの事件、多くの人から色々言われました。」

みほ 「その場にいなかった奴、その場にいながら何もしなかった奴が、どいつもこいつも勝手なことを…ッ」ギリッ

杏 「あかん、怖い。」




みほ 「一番言われたことが『なぜフラッグ車を放り出して助けに行ったのか』」

みほ 「『他の隊員に指示するべきだったのではないか』、ということですね。」

杏 「まー、そりゃ確かに気になるよね。」

みほ 「黒森峰の隊員は優秀です。ですが逆に、訓練したことしかできません。」

みほ 「お姉ちゃんの作戦を正確に実行するためには、誰もが自ら機械になりきるしかなかったんです。」

みほ 「だからこそ、他の誰かに車両を放り出して救助に向かえなどと言えば混乱して」

みほ 「『救助は運営がやってくれるのではないか』『一両行動不能になるがそれでいいのか』」

みほ 「『隊長の指示を仰ぐべきではないのか』…などなど、こうした質問が返ってきたことでしょう。」

みほ 「目の前で仲間が流されている一刻を争う状況で、いちいち答えて納得させてやる暇なんかありません。」

みほ 「その後、『なぜ一人で勝手に飛び出したのか』という問いに対して私は」

みほ 「『つい無我夢中で』とか『よく覚えていません』と、ある意味無責任な返答を繰り返しました。」

みほ 「…言えるわけないですよね、『お前らが信用できなかった』なんて。」




杏 「なるほどねぇ…。ただ、黒森峰がそうなった気持ちもわからないでもないなぁ。」

みほ 「え?」

杏 「隊長、副隊長に西住姉妹。ついでに逸見エリカ。上官の言うことを聞いていれば何もかもうまくいく。」

杏 「勝手な行動をして作戦に穴をあけてしまってはいけない。むしろ自分の考えを差し挟む奴は悪!」

杏 「…みたいな空気が広まっていたんじゃないかなぁ。隊長が優秀すぎるのも考え物だねぇ。」

みほ 「…そうですね、そういった雰囲気はあったと思います。」

みほ 「お姉ちゃんもそこを危惧して、信じることと崇拝することは違うと常々言っていましたが。」

みほ 「結局、隊内の空気を変えることはできませんでした。」

杏 「崇拝されている本人が言っても難しいだろうね。」




みほ 「私自身、あの日のことを全て割り切れたわけではありません。」

みほ 「だからこそ、黒森峰戦で流されそうになるウサギさんチームを助けに行こうか悩んでいる時」

みほ 「背中を押してくれた沙織さんたちには本当に感謝しています。」

みほ 「ある意味、私が皆の為にも絶対に勝とうと覚悟を決めた瞬間でもありました。」

みほ 「私は大洗戦車道チームの皆を愛しています。」

杏 「私も?」

みほ 「はい。」

杏 「いやぁ…照れるなぁ。それで、小山も?」

みほ 「はい。」

杏 「河嶋も?」

みほ 「… … …はいッ。」

杏 「うん?」




杏 「西住ちゃんの皆に対する愛情はわかった。それで、バレー部復活を認める書類に、サインをだね…」

みほ 「その紙、いい加減捨てましょうよ。」

杏 「oh…。」

みほ 「そもそも!どうして会長はそんなにバレー部復活にこだわっているんですかッ!?」

みほ 「今まで適当にあしらってきたのに!」

杏 「それがねぇ… バレー部が戦車道を始めるとき、約束しちゃった… らしいんだよねぇ。口約束だけど。」

みほ 「…らしい?」

杏 「直談判に来たんだよね。戦車道で優秀な成績を収めたらバレー部を復活させてくれ、と。」

みほ 「そ、それで… 会長は何て答えたんですか…?」プルプルッ

杏 「『んん?い~んじゃなぁ~い?』って… よく覚えていないけど、言ったような気もする…。」

みほ 「何てこと言ったんですか貴女はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」




杏 「仕方ないでしょぉぉぉ!あの時はバレー部がエースになるだなんて思いもしなかったし!」

杏 「そもそも、何で優勝できたのかいまだにわからないよ!ちょっとホワイトボード使うよ…」カキカキ




 『 これが本年度優勝の最強チームだ! 』

 西住流

 生徒会

 バレー部

 歴女

 なかよし一年生グループ

 風紀委員

 ネトゲオタ

 自動車部





みほ 「… … …なにこれ。」

杏 「… … …うん、なんだろうね。まともに戦えそうなのが西住流と自動車部しかいないんだけど。」

杏 「これで全員、どこへ出しても恥ずかしくない練度の隊員なんだよねぇ。」




杏 「さらに、一番有力なあんこうチームも細かく分類するとこうなる。」カキカキッ



 西住流 ┬───車長・戦車道家元の次女

        ├───装填手・戦車マニア
        ├───操縦手・天才低血圧
        ├───砲手・華道家元の娘
        └───通信手・ゼクシィ



杏 「最初の三人はいい。戦車道に詳しい、戦車そのものに詳しい、天才肌だから何でもできる。」

杏 「後ろの二人がわからないッ!確かに家元だろうけど、華道と戦車道に何の関係があるのッ!?」

杏 「それが今では高校戦車道を代表するスナイパーときたもんだ!」

みほ 「華さんは集中力がありますから。芸達者は何事にも通ず、ですね。」

杏 「限度ってもんがあると思うんだけどねぇ…。で、最後の結婚願望の強い女の子も」

杏 「西住ちゃんの話を聞く限りではものすごーっく重要なポジションだと。」

みほ 「最高のチームです。」

杏 「そうだろうけど、こうして字で表すと本当にわけがわからないよね…。」




杏 「とにかくさ、発足当時は目の前の勝利を一つ一つ重ねていくことに精いっぱいで。」

杏 「来年度の人材囲い込みなんてまったく考えていなかったんだよねぇ。」

みほ 「く、口約束だし…。」プルプルッ

杏 「口約束は約束だよ。紙ではなく、己の信用を担保にした約束だよ。」

杏 「何が!努力はしましたご理解ください、だ!ご理解できるかおんどりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

みほ 「ヒィッ」

杏 「私がッ!どんな思いで戦車道を始めたか!私たちがどんな想いで優勝したかッ!」

杏 「それをあのクソ野郎!『はぁ?知らねぇよ。そんなことよりプロリーグだ』って態度で!」

みほ 「」

杏 「西住ちゃん。」

みほ 「ハイッ!」

杏 「約束は大事だよ!」

みほ 「ハイッ!!」




杏 「ハァハァ… で、私の軽はずみな約束が原因で申し訳ないんだけど。」

杏 「ここはひとつ、バレー部の皆と話をしてみてくれないかな?」

杏 「西住ちゃんは戦車道チームの皆のこと好きなんだよね?」

みほ 「はい、愛しています。」

杏 「で、自分たちで考えるという形を大事にしたいと。」

みほ 「私の理想とする戦車道です。」

杏 「それなら、隊長が皆の意見を聞くことも、皆に意見を伝えることも大事だと思うんだ。」

杏 「西住ちゃんがどれだけアヒルチームを必要としているか、頼りにしているかを伝えれば」

杏 「向こうからも何らかのアクションが返ってくるはずだよ。」

みほ 「例えそれが、自分の意に添わぬ形であったとしても… ですか?」

杏 「人間関係そんなもんよ。まずは本気でぶつかってみないと。」

みほ 「…そうですね。わかりました、磯辺さんに伝えます。戦車道を続けてほしいって。」

杏 「うんうん、それがいい。」





みほ 「会長。」

杏 「何かな?」

みほ 「ありがとうございます。」

杏 「ちょっとは先輩っぽいこと言えたな?」

みほ 「はい、最高です。」

杏 「んふふ~///」




~ 30分後… ~



杏 「…と、いうわけなんだ。」

みほ 「お願いします、磯辺さん。来年度も私たちと戦車道を続けてください!」

典子 「私たちをそこまで評価していただいていたとは感激です。」

典子 「それに、最初から来年度も戦車道を履修するつもりだったんですよ。」

みほ 「そうだったんですか。でも、正式にバレー部が復活するとして、両立は大変じゃないですか?」

典子 「そこは何とかします。」

杏 「どうやって?」

典子 「根性で!」

みほ 「」

杏 「磯辺ちゃんたちなら本当に根性でなんとかするんだろうなぁ。」

典子 「大変ではありません。青春を二倍楽しんでいるだけです!」





典子 「では、そのぅ… バレー部復活の手続きのほうを…。」ソワソワ

杏 「ちょちょいっとサインして… 一応、コピーの方を渡しておくよ。」ピラッ

杏 「口約束だと、後々面倒だからね。」

典子 「隊長、ここは笑ってもいい場面なのでしょうか…?」

みほ 「いいんじゃないかな。」




典子 「バレー部復活の確約きたぁぁぁ!」

典子 「いやっほぉぉぉう!最高だぜぇぇぇぇ!!」

杏 「あくまで来年度からだからねー。今すぐだとコートの使用権とかいろいろ面倒だから。」

典子 「充分です!ありがとうございましたッ!」




~ 翌年 大洗女子学園・生徒会室 ~



典子 「部員が確保できませんでしたッ!」



華 「」



妙子 「体験入部者と一緒に軽い練習をしたのですが…。」

忍 「翌日になったら誰も来ませんでした。」

あけび 「どうしてでしょうか…?」





みほ 「…だめだこりゃ。」






バレーボール同好会は今日も元気です
                                   【 おしまい 】


以上になります。

『直接会ったことのない人が西住みほに抱くイメージ』は
リボンの武者を参照、どうしてああなった

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