海未「『女神隠し』?」 (144)
数日置きに、書き溜めたものをガーッと投下します
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ーーー音乃木坂、アイドル研究部部室ーーー
ガチャ
雪穂「あ、海未さん」
海未「あぁ、雪穂、亜里沙。まだいたのですか」
亜里沙「どうされたんですか? ……あ、そうか、今日はμ'sの同窓会でしたっけ」
海未「はい。部室を使うことを承諾していただき、ありがとうございます」
雪穂「あはは、海未さん、固っ苦しいなあ。もともとはμ'sのものなんだから、なんなら許可なんていりませんよ」
亜里沙「にこさんも何も言わずに来たりしますし」
海未「遊びに来る程度ならそれでもいいのかも知れませんが、やはり皆で集まって飲み食いするとなると許可は取るべきです」
雪穂「んん……お固い……」
海未「というかにこはまだそんなことをしているのですか……」
雪穂「まぁ、海未さん達がいた頃と比べるとめっきり減りましたけどね。芸能人ですもん、やっぱり」
亜里沙「この間もにこさんテレビ出てましたよね~! 最近結構見ます」
ことり「あれ……ドア、開いてる……あ、雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん。それに海未ちゃん! 早いねー」
海未「ことり」
雪穂「お久しぶりです、ことりさん。じゃあ、私達、下校時刻も過ぎてるので、帰ります」
亜里沙「あっ、本当だ。海未さん、ことりさん、さようなら」
海未「さようなら」
ことり「じゃあね~」
バタン
ことり「海未ちゃん、いつから来てたの?」
海未「ついさっきですよ。余裕を持ちすぎました。ことりはどうしてこんなに早く?」
ことり「一応リーダーだったんだよ? 一番に来なきゃ格好つかないよ。……つかなかったけど」
海未「なんか……すいません」
ことり「あはは、別に謝らなくてもいいよ。大体、実際は海未ちゃんがリーダーみたいなものだったし」
海未「それでも、ことりがμ'sを創ったんです。紛れもなくリーダーはことりだと思いますよ、私は」
ことり「えへへ……ありがとう……」
タッタッタッ…
海未「……誰か走ってきますね」
バン!
凛「一番乗りにゃーーーっ!! ってあぁ! ことりちゃんと海未ちゃんがもういる! 三番乗りだぁ……」シュン
ことり「そんな本気で落ち込まなくても……」
花陽「凛ちゃん、廊下は走っちゃ駄目だよ」パタン
凛「かよちん、それは生徒に適用されるルールであって、今の凛達はそれに縛られる必要はないんだよ!」
花陽「うーん……一理ある……、かな?」
海未「まぁ……正しいと言えば正しいですが。人もいない訳ですし。でもやめなさい、凛」ギロッ
凛「こわっ」
花陽「ことりちゃん、何も持ってこなかったんだけど、本当に良かったの?」
ことり「うんっ。なんかね、にこちゃんがお野菜持ってきてくれるんだって。飲み物は海未ちゃんが持ってきてくれたし、絵里ちゃんと希ちゃんも持ってきてくれるって」
海未「つまむものは宅配で。みんなの希望を聞いてから頼みます。……そういえば学校に宅配って、しても良いものなのでしょうか」
ことり「大丈夫じゃない? ん、メールだ……真姫ちゃん遅れるかもだって」
凛「えーっ」
ガチャ
にこ「にっこにっこにー!」
凛「……にこちゃんって成長しないね」
にこ「うるさいわね……『矢澤にこ』の挨拶といったらこれでしょ? テレビとか見ないわけ?」
花陽「テレビでもよくやってるよね。にこちゃんが出てる番組は全部録ってるんだ。えへへ」
にこ「やっぱ花陽は分かってるわねぇ~!」ナデナデ
凛「にゃーっ! かよちんをなでるのやめるにゃー! かよちんの頭部は凛のものだよ!」
海未「花陽のものです」
ことり「あはは……」
絵里「騒がしいわね。廊下に響いてるわ」
花陽「絵里ちゃん、希ちゃん」
希「お待たせー。丁度ぴったりになっちゃったね。早めに家を出たつもりだったんやけど」
絵里「あ、これジュースとお茶」ガサ
ことり「ありがとう」
ことり「じゃあ真姫ちゃんはあとからくるし、食べ物も頼んで、とりあえず始めよっか」
ーーーーー
ことり「では、これよりμ'sの同窓会? でいいかな? ……を始めまーすっ。かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
にこ「ふふ。にこにー特製バーニャカウダよ!! 食らいなさい!」ドンッ
希「おー」
海未「早い……!」
にこ「もともとソースは作ってあったから野菜切っただけだしね」
凛「ポリッ ……普通」
にこ「特に何も考えずに言ってるでしょアンタ」
絵里「美味しいわ! さすがにこね」ポリポリ
にこ「そんな褒められるのも怖いんだけど……。特製っつったものの割と普通のソースだし」
ことり「そうなの? わっ、この人参甘ーい!」
にこ「ふっふっふ……色々とツテがあるのよ……。美味しい野菜を手に入れることくらい、わけないわ」
希「庶民派アイドルやね」
真姫「お待たせー」ガチャ バタン
ことり「あ、ごめん、先に始めちゃった」
真姫「良いのよ。私こそ遅れてごめん」
凛「どうして遅れたの?」
真姫「あぁ……。出た後にコレ忘れたのに気がついたの」
にこ「あっ! 新曲出来たのね~。ありがと!」
絵里「新曲?」
花陽「あれ、絵里ちゃん知らないの? にこちゃんの曲は全部真姫ちゃんが作ってるんだよ」
真姫「全部っていっても四曲だけどね。それ入れて五曲」
にこ「そして作詞はこの私。テレビとかで歌う時に作詞作曲出るはずだけど、……え? 絵里、私の出てる番組見てくれてないの……?」
絵里「み、見てるわよ。ただそんなことよりにこがテレビに出て歌ってることに感動しちゃって、そんなところにまで目がいかないわ」
凛「確かに、知り合いがテレビに出たりするとテンション上がるよねっ。街頭インタビューとかでもそうなのににこちゃんは芸能人なんだもん! テンションMAXにゃ!」
にこ「みんなにこに魅了されてるってわけね」ドヤァ
希「それはちょっと違うんやない?」
ブロロロロ…
ことり「ん、宅配来たみたい。行ってくるね」
海未「私も行きます」
絵里「行ってらっしゃい」
真姫「ふぅ」カタン
花陽「はい真姫ちゃん。トマト」
真姫「ありがとう。……待って、普通いきなりトマト渡す?」カプ
希「でも食べるんやね」
花陽「だって好きでしょ?」
真姫「……花陽だったら暑い中歩いてきて、いきなり水とかじゃなくおにぎり渡さ
花陽「嬉しい」
真姫 れたら……即答ってレベルじゃないわね」
絵里「確かにまだ暑いわよねー。もう九月だっていうのに」
真姫「相応って感じもするけどね。残暑っていうか」
にこ「あーでも去年より暑い気もするわね。温暖化ってヤツのせい?」
希「にこっち、温暖化なんて知ってるんやね」
にこ「なに唖然としてんのよ! 馬鹿にしすぎでしょ!?」
絵里「じゃあにこ、温室効果ガスである二酸化炭素の化学式は?」
にこ「常識よ。H2O」
「「「……」」」
にこ「え……何……何なのよ……」
海未「お待たせしました」
ことり「おつまみだよー」
絵里「あら、おつまみ? じゃあ当然お酒もあるんでしょうね?」
海未「ありません。学校ですし、未成年もいます。言葉の綾です」
絵里「ケチ」
海未「ケチじゃありません」
真姫「今日は飲み会ってわけじゃないんだし、別に良いでしょ」
絵里「……言ってみただけよ」
ことり「じゃ、改めて始めよっか」
ーーー2時間後ーーー
絵里「あー確かに、アレはすごかったわよね」
海未「ふふっ、そんなこともありましたね」
希「その後凛ちゃんがラーメン10杯食べたりしてね」
凛「そんなこともあっ……。……いや無いにゃー!! 適当なこと言わないで!」
真姫「凛なら出来そうな気もするけどね」
凛「そんなこと……や……10杯……それなら」
花陽「いや無理だよ凛ちゃん!?」
ことり「あれ? そういえばにこちゃんがいなくない?」キョロキョロ
海未「そういえば……そうですね」
希「ほんとだ……あれやない? 神隠し」
絵里「何言ってるの希。あるわけないわ、そんなこと」キリッ
真姫「でも……音もなく消えたわね」
花陽「ま、まさか本当に?」
凛「音乃木坂の幽霊に食べられちゃったとか!」ガタン
絵里 ビクッ
絵里「……急に立ち上がるのはやめなさい、凛」
希「そうだ、神隠しといえばこんなの知っとる? 『女神隠し』」
海未「なんですかそれ?」
希「こないだ絵里ちに聞かせるためにオカルト話を一日ずっとネットで漁ってたんやけどな」
真姫「何してんのよ……」
絵里「本当に何してるのよ!!!」
希「それでその時見た中で結構面白めな話に『女神隠し』っていうのがあってな。あ、残りの面白そうな話は絵里ちだけのものやから安心して」
絵里「何にどう安心しろっていうのよ」
希「もう絵里ちは無視して行くでー
絵里「ちょっと」
希 みんな神隠しは知ってるよね?」
ことり「うん。なんか……人が消えちゃうんだよね」
希「そう、それ。そういう事例が世界各地である。親が目を離した一瞬で子供が消えた、とかね」
希「それで本題やけど……まぁすごく掻い摘んで話すけど、『女神隠し』にはいわゆる神隠しとは全く違う点が二つあるんや。なんだと思う?」
花陽「『女神隠し』っていうくらいだから……女の子だけ……とか?」
希「鋭い! さすが花陽ちゃん! そう、『女神隠し』は女の子だけに起こる、とされる現象……」
希「そしてもう一つ。こっちのほうが重要。……その人は消えるんや、完全に。無かったことになる」
凛「……? どういうこと? 同じじゃないの?」
希「まぁ落ち着いて。神隠しはな、その人が消えるだけ、なんや。だけど『女神隠し』は……」
希「その人の軌跡、具体的に言えばその人に関わった全ての人の記憶、物事に及ぼした影響等々……全てが、消えるんや」
海未「それは……怖い、ですね」
真姫「いや、待って。それじゃ……その話、完全に嘘じゃない」
ことり「どうして?」
真姫「だって記憶が残らないんでしょ? 伝わるわけないじゃない。矛盾してるわ」
花陽「あっ」
希「ふっふ。所がね真姫ちゃん。より近しい人はね、何か強いきっかけがあると思い出すことが出来るらしいんよ。証拠に、5人程度の『女神隠し』被害者の周りの人間が思い出してるんよ」
真姫「たった5件ねぇ……それも真偽も不明」
希「まぁまぁ。オカルト話ってそういうもんやろ? そんなんじゃ人生楽しめんよ?」
海未「楽しい話題ではないと思うのですが……」
凛「それで、その5人は帰っては来れなかったの?」
希「帰ってきたという事例はないんよ……そして5人だけじゃなくて、『女神隠し』自体は多分、もっと多く起こってる」
希「もしかしたら、あなたも、あなたの隣にいた人を忘れているかも……ね」
にこ「なかなか綺麗に落ちたわね」
花陽「ぴゃあっ!?」ガタッ
海未「にこ!? ……どこに行っていたのですか? というか音もなく出入りしないでくださいよ……」
にこ「え、えーっ? にこ、ずっとここにいたけどぉー?」
真姫「トイレでしょ」
にこ「と、トイレ? なんのことかわからないにこー、アイドルはトイレなんていかないにこっ」
ことり「あ……うん、そう、そうだよね」
にこ「ちょっと! 割と本気で引かないでよ!!」
絵里「ねぇ、終わった?」ミミセンハズシ
希「今怖さのピークやで」
絵里「……」ミミセンツケ
海未「なんで耳栓なんか常備してるんですか」
凛「ねえ、そろそろお開きにしようよ。二次会行こうよっ! ねっ! カラオケ行きたいにゃ!」
ことり「いいよ。でもその前に片付けなきゃね、みんなも手伝って」
凛「はーい」
希「えいっ」ポンッ
絵里「わっ、な、何!? ……急に耳栓外さないでよ希!」
海未「絵里、ふざけてないで片付けましょう」
絵里「別にふざけてるわけじゃ……って、片付け? 終わりにするのね」
花陽「うん、二次会だって」
凛「カラオケーっ!」
絵里「みんなで行くのは久しぶりね。……ところで、ことり、理事長にここ使わせてもらったこと、やっぱりお礼をした方がいいと思うんだけど……」
海未「そうです、ことりは『お礼なんてしなくていい』なんて言ってましたけど」
ことり「ううん、いいの、いいの。あぁでもその代わり……出来たら……でいいんだけど、お母さんが……その……」
真姫「何? はっきり言ってよ」
ことり「あの……使わせてあげた代わりに、文化祭で踊ってほしい、って」
絵里「いいんじゃない?」
海未「まぁ」
希「別にそんな交換条件じみたこと提案されなくてもやるやん」
花陽「でもちゃんと出来るかな?」
凛「ちょっとやれば思い出すよ! 凛たまに踊るもん」
にこ「にこはそもそもゲストとして呼ばれてるわよ?」
真姫「オトノキの文化祭ポスターの『本校出身! 今話題のアイドル』って、やっぱりにこちゃんのことだったのね」
ことり「……ふふ。実はみんなならそう言うと思ってましたっ。二週間後なんだけど、それまでにまた集まれるかな?」
希「まあ……なんとか」
絵里「同じく」
真姫「大丈夫よ」
にこ「3日くらいなら一日空いてるわ。文化祭当日ももちろんね」
花陽「うん、結構空いてる」
凛「凛も!」
海未「大丈夫です」
ことり「じゃあ、カラオケ屋さんで文化祭ライブまでのスケジュールつめよっか」
真姫「それ出来る?」
ことり「多分」
ーーーーー
ワイワイ ガヤガヤ
凛「なっに歌おっかなー」
にこ「私は自分の歌いくわ! 目指すは100点!!」
希「100点って出るん?」
海未「……」
海未(みんなはさして気にもとめてないようですが……さっきの希の話……『女神隠し』……)
海未(……何かが、気にかかります……)
今日ここまでです
こっちにします
>>2
音乃木坂じゃなくて音ノ木坂でした、すいません
ーーー翌日・園田家ーーー
海未「ん……」モゾ
海未「……はっ」ガバッ
海未「……」チラ
海未(すっかり寝坊してしまいました……私としたことが、六時とは……たるんでますね)
海未(とはいえ、今日は何の予定もなし)
海未(お習字でもしましょうかね……)
海未(……いや)
海未(『女神隠し』について……調べてみましょう)
ーーーーー
海未(朝食をとったあと、しばらく調べてみましたが……特に希が言っていた以上の情報はありませんね)
海未(……)カチカチ
海未(……はぁ……なんだか馬鹿らしくなってきました……何をやっているのでしょう私は)
海未(……何に、引っかかっているのでしょう)
海未(なんだか落ち着かないですね……お茶でもいれますか)
ーーーーー
海未 ズズ…
海未「ふう」
海未(……忘れましょう)
海未(きっと気のせいです)
海未(……明日の練習の準備でもしましょう)
ーーー翌日・文化祭ライブ練習ーーー
ことり「んー、初日の今日は……四人、かぁ」
凛「かよちん、今日はバイトだって」
真姫「まぁ、急なことだしね」
海未「二週間のうち一日だけでも全員集まれればいいのですが」
ことり「こんなことなら『来られる日は来て、二人以上来られたら練習』なんて適当なこと言わないで、ちゃんと日を決めた方が良かったかなあ」
真姫「このやり方でいいと思うけど。来られる時に来て練習したいし」
凛「凛もさんせーい」
ことり「そう? 良かったぁ」ホッ
海未「では始めましょうか。曲は一昨日決めた三つで決定でいいですね?」
ーーーーー
海未「はいっ! 一旦休憩しましょう」パンッ
真姫「~はぁっ! 疲れた……」ゼーゼー
凛「真姫ちゃん運動不足じゃない?」ハァ ハァ
真姫「……そうかも」ゼーゼー
ことり「ちゃんと水分とってねー」ゴクッ ゴクッ
ーーーーー
海未「それでは、今日はここまでにしましょうか」
凛「にゃー……疲れた……、真姫ちゃんラーメン食べに行こう!」
真姫「馬鹿じゃないの?」ゼーゼー
凛「ひどい!」
ことり「すっごく疲れたぁ……久しぶりだねこの感じー」アセフキ
海未「そうですね。独特の疲れです。……剣道のお稽古などともまた違います」ゴク
ことり「海未ちゃん一緒に帰ろっ。これも久しぶりだね!」
海未「はい……そうですね」
ーーー帰り道ーーー
ことり「……だから衣装もちょっと手直ししなきゃなんだー」
海未「そうですか……私も手伝いますよ」
ことり「ううん大丈夫だよ! 私だけで充分できるから」
雪穂「あれっ、海未さんとことりさん」
海未「雪穂。部活帰りですか?」
雪穂「はい。……海未さんたちは、お菓子を買いに?」
ことり「ううん。あのね私達、実はぶんかっ……!?」ガシ
海未「ことり! 『サプライズで』という話なのでしょう!?」コソコソ
ことり「あっ! そうだった……」コソコソ
海未「と、ところで雪穂? なぜ私達がお菓子を買いに出ていると?」
雪穂「え、だってうちに向かってるじゃないですか」
海未「え」
海未(言われて周りを見てみると、確かに私達は穂むらに向かう道にいました)
雪穂「でも、うち、もうやってないですよ? 海未さんなら営業時間くらい把握してるじゃないですかー、しっかりしてくださいよ」アハハ
海未「はい。そうですよね……」
海未(なぜ。私達は、ここに……無意識に……?)
ことり「なんでだろ……帰ろうと思ってたのに……あ、じゃあね雪穂ちゃん」
雪穂「さようならー」
海未(……っ)
じゃ、また明日ねー! 海未ちゃん、ことりちゃん!
海未(……!?)
海未(頭が……痛い……)
海未(なんですか……これは……)
海未「……すいません、ことり……一人で帰ります」
ことり「えっ!? うん……じゃあね……」
海未「……」テクテク
ことり「……海未ちゃん……?」
今日ここまでです
出来るだけ毎日投下したいと思ってます
ーーー園田家ーーー
ドサッ
海未「……」
海未(さっきのは、誰の声……? やはり忘れている……?)
海未(確か、思い出すにはきっかけが必要)
海未(っ、……覚えていないのに、きっかけなんてわかるはずありません……)
海未(……)
海未(夕飯まで……時間がありますね。少し落ち着くために外の空気を吸いに行きましょうか)
間違えました
ーーーーー
海未(うぅ……半袖ではやはり肌寒いですね……)テクテク
海未(……)テクテク
海未(……そういえば、『その人と自分にとって縁のある場所』もきっかけになるかも、なんてことも書いてありましたね)テクテク
海未(あとは『縁のあるモノ』……ですか)テクテク
海未(まぁ……さっきもひとりごちたように、分かるわけないんですけれど)テクテク
海未(まして偶然になんてそんな奇跡は……)テクテク
海未(ん)
海未(この公園……たしかここで私はことりと出会ったんですよね)
海未(……)
海未(どのように?)
海未(……え?)ズキ…
海未(……まさか……。まさか奇跡が起きてしまったんですか)
海未(……いや)
海未(奇跡は必然、です)
海未(やはり私は……思い出さなくてはならないようですね)
海未(その人は多分、私にとって……この世界にとって、とても……大事な人)
海未(思い出して、みせます……)
とても短いですがとりあえず書いたので投下しました
ーーー南家ーーー
ことり「海未ちゃん……どうしたんだろう……久し振りのダンス練習で疲れたのかな?」
ことり「剣道とかとは違うって言ってたからなぁ……」
カチャ
ことり「ただいまー」
ことり「……あっ」
ことり(この時間じゃ、まだお母さん帰ってないか)
ことり(ご飯買って帰れば良かったなあ。何かあったかな?)
ことり(その前に荷物置いてこよっと)
ーーーーー
海未(ここ……)
海未(この木の裏で、私は遊ぶことり達を見ていて、そしたらことりが遊びに誘ってくれて……)
海未(それが出会い)
海未(……だと、思っていました)
海未(だけど今はそれに強烈な違和感を覚えてしまう)
海未(それがことりとの出会いであることには変わりない。しかし、……ひょっとして、……ひょっとしたら私に手を伸べたのはことりではなく、私が忘れてしまった人その人だったのではないでしょうか)
海未(この仮説が正しいとすれば、その人は、ことりにとっても、いや、あるいは、ことりの方が近しい人物なのでは?)
海未(……ことりに相談してみましょうか)
海未(……いや、やめましょう。ことりはそんなことしないでしょうが、人に話したら一笑に付されるような馬鹿げた話です)
海未(せめて、その人の名前くらいは思い出せたら、それから相談しましょう)
ーーーーー
ことり(カップ麺あったかなー)ゴソゴソ
ことり「んー……、ん、あった!」
ことり(塩味にしよ)
ことり(あ、お湯ないな。お湯沸かさなきゃ)
カチャ カチャカチャ
キュッ ジャーッ…
キュッ
カチャン
カチッ シュボッ
ことり(……はぁー……)
ことり(今日は楽しかったなぁ)
ことり(まさか、またμ'sのみんなでステージに上れるなんて思ってもみなかったな。しかも講堂に)
ことり(スクールアイドルってわけじゃないけど、一日限りの『μ's』復活。まだ練習だけどね)
ことり(あれ? スクールアイドルじゃないから、μ'sってなんなんだろ?)
ことり(……)
ことり(OGの結成したダンスグループ……かな……)
ことり(それとももっと単純に、『元スクールアイドル』?)
ことり(……なんでもいっか)
ことり(そういえばにこちゃん、「全員が卒業したらもう一回くらいμ'sとして踊りたいわねー」なんて言ってたな、現実になっちゃった)
ことり(みんなも、『一回なら』ってそんな気持ちなんだろうな。私も一回で充分かな)
ことり(きっちり解散しちゃったわけだし)
ことり(復活ライブかぁ)
ことり(……あぁ~っ! 復活ライブ……なんかかっこいい響き♪)
ことり(でも復活ライブってなんか大層だなぁ)
ことり(でもでも、廃校を阻止したし、ラブライブも優勝したんだし、少しくらい調子乗っても良いよね)
ことり(……本当は、そんなところまで行けるなんて思ってなかったんだけどね)
ことり(最初は……最初は少しでも何か出来たらと思って、スクールアイドルを海未ちゃんと初めて)
ことり(『μ's』になって)
ことり(花陽ちゃん、凛ちゃん真姫ちゃんが入ってくれて)
ことり(にこちゃんが入ってくれて)
ことり(絵里ちゃんと希ちゃんも入ってくれて、八人になって)
ことり(色んなことがあったな)
ことり(本当に毎日楽しかった)
シューッ カタカタカタ
ことり(あ、沸いたかな)
ーーーーー
海未(試しに、木の裏に立ってみますか)
海未 コソッ
海未「……」
海未(いや何をやっているんですか私は)
海未(こんなことに意味があるわけ……いや……やれることはやりましょう)
海未(私は、こうやって、木から顔を出して……)
ねぇ、一緒に遊ばない?
海未(……あっ……!?)ズキ
海未(やってみるっ……ものですね……!)
海未(今……うっすらと、うっすらと姿を思い出した)ズキ…
海未(あと一つ、何かが、あれば……名前くらい、思い出せそう、なのに……!)
海未(誰ですか……あなたは……!?)
海未(あぁ……頭が痛い……!)
海未(でも、思い出すのです、海未……)
ヒュー…
海未(わっ)バサ
海未(な、なんですか!? ああ……風でゴミが……これはチラシ?)
海未(あ、穂むらのですね……)
海未「……」
海未「……!」
海未「????っ!!!」
海未(……あなたは、そうだ、あなたは! 思い出しました!)
海未(忘れてしまっていた、何故? あなたは、私の大切な、幼馴染み、友達????)
海未「『穂乃果』……!!」
?
ねぇ、一緒に遊ばない?
海未(……あっ……!?)ズキ
海未(やってみるっ……ものですね……!)
海未(今……うっすらと、うっすらと姿を思い出した)ズキ…
海未(あと一つ、何かが、あれば……名前くらい、思い出せそう、なのに……!)
海未(誰ですか……あなたは……!?)
海未(あぁ……頭が痛い……!)
海未(でも、思い出すのです、海未……)
ヒュー…
海未(わっ)バサ
海未(な、なんですか!? ああ……風でゴミが……これはチラシ?)
海未(あ、穂むらのですね……)
海未「……」
海未「……!」
海未「ーーーっ!!!」
海未(……あなたは、そうだ、あなたは! 思い出しました!)
海未(忘れてしまっていた、何故? あなたは、私の大切な、幼馴染み、友達ーーー)
海未「『穂乃果』……!!」
ーーーーー
ことり(三分、と)ピッ
ことり(……)カタン
ことり(……)
ことり(『八』人?)
ことり(八人……あれ、八人、だっけ?)
ことり(海未ちゃん……花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、にこちゃんに絵里ちゃん、希ちゃん、私)
ことり(八人。あってる。でも……何か変……?)
ことり(気のせい、かな)
ことり(……ううん)
ことり(おかしいよ……なんで、今までおかしいと思わなかったんだろう? 考えてみれば最初からおかしい。だって、私がスクールアイドルなんて始めるかな)
ことり(海未ちゃんを強引に引き込んで、周りを巻き込んで、どんどん先へ進んでいって)
ことり(ことりが、そんな、まるで、まるで……?)
ことり(……『まるで』)
ことり(誰のように?)
ことり(なんか変だな、疲れちゃったのかな、……)
ポーン
ことり(あ、LINE……誰からだろ)
ことり(……海未ちゃん)
スッ
園田海未[ことり、『高坂穂乃果』この名に聞き覚えはありますか]
ことり「え?」
ことり(『高坂』……『穂乃果』……)
ことり(……)
ことり(……『穂乃果、ちゃん』……?)
>>48は無視して下さい
ことり[うん。聞き覚え、あるよ]
園田海未[この名を聞いてどう思いました?]
ことり[なんていうか……とっても、懐かしい気持ち]
ことり[でも顔とか思い出せないんだ]
ことり[誰だっけ? 小学校の頃の友達かな]
園田海未[『高坂穂乃果』は、私たちの幼馴染みで、ずっと傍にいた友達です]
ことり[どういうこと?]
園田海未[それが事実だったのです]
園田海未[そんな大切な存在を私達は忘れてしまっていたのです]
ことり[よくわからないんだけど……]
ことり[そんな人のこと、忘れちゃうかな?]
園田海未[『女神隠し』です]
ことり[それって希ちゃんが言ってた?]
園田海未[そうです。その人は、消えてしまったのです]
ことり[なんだか信じられないけど、海未ちゃんがそんなことを言うってことは、何か確信があるんだよね]
園田海未[はい]
園田海未[単なる思い込みでは、この胸の痛みは片付けられません]
園田海未[彼女の名前を思い出した時、様々な感情が絡み合って、涙がこぼれました]
園田海未[ですがまだほとんど名前しか思い出していません]
園田海未[顔はおぼろげで、その人と過ごした日々、思い出などは思い出せません]
園田海未[信じてもらえますか? この荒唐無稽な話を]
ことり[うん]
ことり[海未ちゃんの言うことだもん]
ことり[信じるよ]
ことり[なんとなくだけど、『穂乃果』ちゃんは、とっても大事な人、って思うんだ]
園田海未[私もそう思います]
園田海未[最後にことりにお願いがあります]
ことり[なに?]
園田海未[名前を思い出したことで、他のことについても思い出しやすくなると思います]
園田海未[何か思い出したら私にも教えてください]
ことり[わかった]
園田海未[では]
ことり[また明日ね]
園田海未[あ、すみません。言い忘れてました]
園田海未[明日行けません。バイトを入れてしまってて……]
ことり[大丈夫だよ! 私だって毎日行けるわけじゃないし!]
園田海未[それでは]
ことり[じゃあねー]
ことり「……」
ことり「『穂乃果』ちゃん……」
ことり(なんだか突飛な話だったけど)
ことり(不思議とすんなり受けいれられたな)
ことり(『穂乃果』ちゃん、か)
ことり(……この名前を思ってみると、なんか、胸がじんわり暖かくなる)
ことり(海未ちゃんを疑ってるわけじゃないけど、確かにこの人は私の大切な存在なんだと思える)
ことり(……思い出したいな)
ことり(『女神隠し』……)
ことり(そういえばちゃんと覚えてないなぁ。少し、調べてみよう)
ことり(……?)
ことり(何か、忘れてるような)
ことり「……あっ!」
ことり(タイマーなってない!?)
カップ麺「」フニャア
ことり「ああぁぁぁ~……」
ーーーライブ8日前・練習ーーー
海未「1、2、3、4」パン パン
海未(練習は順調。みんな少しやるだけですぐに思い出して、これなら、あの頃と寸分違わぬライブが出来そうです)
海未(しかし、名前を思い出して数日経ったのに、依然として『穂乃果』のことはほとんど思い出せないまま……)
海未「5、6……花陽! 遅れてますよ!」
花陽「はいっ!」
海未(……?)
海未「1、2、3、4、5、6、7、8……はいっ!」パンッ
海未「……みんなもう動きは完全に思い出したようですね。そろそろ休憩にしましょうか」
絵里「ふぅ」ゴクッ
絵里「……にこはまだ一回も来てないわよね? 大丈夫かしら」
ことり「お仕事の合間に練習してるって言ってたよね。イメージで」
希「イメージトレーニングだけでどうにかなるとも思えんけど」
花陽「でもにこちゃんならなんとかなっちゃう気がする……」
真姫「私はそんな気しないけど……まぁちょっと練習すれば大丈夫なんじゃない? スーパーアイドル矢澤にこサマは」
ことり「お仕事の方のダンスと混ざっちゃったりしないかな……」
海未「ことり」
ことり「ん?」
海未「少し話があります」
ことり「うん」
海未「……こっちへ」
ことり「え? あ。わかった……」
スタスタ
希「どうしたんやろ」
絵里「さぁ……」
ことり「何? 海未ちゃん」
海未「……『穂乃果』のことなのですが」
ことり「! ……何か、思い出したの?」
海未「いえ……、ただ、さっき、ふと思ったんです」
ことり「さっきって、練習のとき?」
海未「はい。もしかしたら、『穂乃果』は、μ'sのメンバーだったのではないかと」
海未「なんとなくそう思ったんです」
ことり「……!」
ことり「あの、ね。海未ちゃん。それ、合ってると思うよ」
海未「……ことり?」
ことり「多分、『穂乃果』ちゃんが、μ'sのリーダーだよ」
海未「!」
海未「まさか……そんなこと」
ことり「実は、『穂乃果』ちゃんって名前を聞いたあの日にもう考えてたんだ」
ことり「μ'sって、希ちゃん、ギリシア神話の女神からつけたって前言ってたよね?」
ことり「調べてみたんだけど、ミューズって、九人の女神なんだ。だからもしかして……本当は、私達は、九人なんじゃないかって」
海未「……!」
海未「……ミューズが九人の女神だと言うことは知っていました。なのに、そのことになんの疑問も抱かなかったとは……」
海未「『女神隠し』とは、恐ろしいものですね……」
海未「……リーダーだと思ったのは、何故です」
ことり「私じゃ、ないから」
海未「だから、何故?」
ことり「海未ちゃんから『穂乃果』ちゃんの名前を聞いた時、丁度思ってたんだ」
ことり「なんか変だなって」
ことり「考えてみて海未ちゃん。私が、スクールアイドルで学校を救うなんてこと考えると思う?」
ことり「みんなを集めて、その中心を担うなんて、出来ると思う?」
海未「それは……」
ことり「思わないよね。私は、自分から前に出てったりしないで、どちらかと言えば、海未ちゃんの影に隠れるようなことの方が多いと思う」
ことり「『穂乃果』ちゃんなんだよ、きっと。μ'sを作ったのも、みんなをまとめたリーダーも」
海未「……」
ことり「それに気づいた時、ごめんね、って思った」
海未「どういう……」
ことり「だって、……だって!! ……もしそうなんだとしたら、『穂乃果』ちゃんが築き上げたもの、全部、全部、ことりが、奪っちゃったってことなんだよ?」
ことり「そんなの……そんなの」ツー…
ことり「……あれ、なんで、泣いてるんだ、ろ。私」
海未「ことり……」
ことり「顔もわからない、一緒に何をしたのかもわからない。なのに、なのになんで!」ポタ
ことり「こんなに、会いたいんだろう」
ことり「……『穂乃果』ちゃんに……!」ポタ ポタ
ことり「会いたい、よ……『穂乃果』ちゃん……」ポタ
ことり「……うっ、くっ……」ポタ ポタ
海未「……っ」
絵里「どうしたの……?」
海未「っ! 絵里!? どうして……!」
絵里「ことりが大声上げてるのが聞こえたから、何かあったのかと思ったんだけど……」
花陽「どうして、ことりちゃん泣いてるの……?」
海未「花陽、真姫、希……」
希「喧嘩した、ってわけじゃなさそうやね。一方的に何か責め立てたわけでもなさそうやし……」
海未「……すみません。私とことりは、今日は早退させていただきます」
真姫「……何か、突っ込まれたくないような二人だけの重要な話だった? 違うわよね。そうなら、練習の合間に話すわけない。始まる前なり、終わった後なりにするはず」
真姫「μ'sに関係のある話のはずよ、違う?」
海未「流石、鋭いですね真姫は……。ですが、ごめんなさい。今は話せません。私もことりも、まだ整理がついていない状態なので」
絵里「……そんなに、深刻な話なの?」
海未「……確か、明日はみんなが揃うことが出来るはずですよね。明日話します」
海未「……ことり、大丈夫ですか?」
ことり「うん……」
海未「……では、失礼します」
ーーーーー
絵里「帰っちゃったわね……」
花陽「なんの話だったのかな……」
希「『穂乃果』ちゃんって子が関係してるみたいやけど……μ'sにそんな子はいないのは勿論のこと、心当たりもない……。やっぱりμ'sには関係ない話だったんやない?」
真姫「でも、明日揃った時に話すってことは、関係があるってことよ。どちらにせよ明日には分かるけど」
花陽「『穂乃果』ちゃん……か……。なんだか、聞いたことある気がする」
絵里「私も。誰だったかしら……」
希「……明日を待つしかないね」
ーーー夜・西木野家、真姫の部屋ーーー
真姫「……」ペラ
真姫「……」
真姫(『穂乃果』……)
真姫(何故だかわからないけど、この名は、愛してるばんざーい! を連想させる……)
真姫(……聞いてみたら、何か分かるかもしれない)パタン
真姫(……)カチカチ
真姫(……再生)カチッ
…アイシテル、バンザーイ! ココデーヨカーッター…
真姫(……『穂乃果』)
ーーーすごいすごいすごい! 感動しちゃったよ!
ーーー歌上手だねぇ! ……ピアノも上手だねぇ!
真姫「!?」
真姫(何……今の)
真姫(……誰かにいわれた覚えがする。誰だっけ……)
真姫(……もしかして……)
真姫(……『穂乃果』?)
ーーー希のマンションーーー
希「んー……」ゴロン
希(『穂乃果』ちゃん……なんとなく分かる。うちはこの人を知ってる)
希(ただ、どこであったのか……どういう間柄なのか……)
希(友達なら忘れるわけないはず……)
希(……)
希(とにかく、知ってるのに思い出せないっていうのは気持ち悪いなぁ……)
希(寝付けない……)
希(……『穂乃果』ちゃん……)
ーーーμ'sは、……おしまいにします!!
希(……。……なんで今、こんなことを思い出したんやろ……?)
希(ことりちゃんの……解散宣言……)
希(……あれ……でも……今のはことりちゃんの声じゃ……)
ズキ
希(……なんやこれ……記憶に、ノイズが混じってるみたいな……)
希(……まさか、今のが……)
ーーー小泉家、花陽の部屋ーーー
花陽(……そろそろ、二人とも大丈夫かな)
花陽(あ、し、た……)スッ スッ
小泉 花陽[明日、海未ちゃんが何か大切な話をするそうです]
りん[なんの話?]
小泉 花陽[わかんないけど、今日、ことりちゃん泣いてた……]
りん[重たい話なのかな……]
小泉 花陽[うーん]
にこにー[なんでこのグループでそんな連絡?]
りん[あっ!!! 矢沢先輩!!! おはようございます!!!!!]
にこにー[なんなのよそのキャラ……名前間違ってるし]
りん[ほんとだ。ごめんね]
にこにー[そこは素なんかい!!]
小泉 花陽[今日来てなかったのにこちゃんと凛ちゃんだけだから、にこりんぱなで連絡したほうが早いかなって思って]
にこにー[ふーん]
小泉 花陽[連絡はそれだけだよ。二人とも疲れてるでしょ? おやすみー]
にこにー[アンタだって疲れてるでしょ。おやすみ]
りん[凛はゲームするよ]
小泉 花陽[あんまり遅くまでやらないようにね、凛ちゃん]
りん[はーい]
花陽(……『穂乃果』ちゃん)
花陽(知ってる気はするんだけど、分かんないなぁ)
花陽(……分かんないこと考えても仕方ないかな。スクールアイドルの動画でも見よう)パカ ポチ
花陽(人気のアイドルを見るのも良いんだけど……やっぱりまだ世間に知られてない子達を発掘するほうが……)カチカチ
花陽(……うーん)
花陽(あっ、ラブライブ歴代優勝者メドレーだって)
花陽(始まりのライブ特集かぁ……μ'sの始まりは……僕らのLIVE君とのLIFEかな? ううん……八人の始まりはそれだけど、μ'sの始まりの始まりは…… )カチ
花陽(やっぱり! そうだよね……二人のSTART:DASH!!……懐かしいなぁ)
花陽(あのライブは凄かったな……堂々としてて、かっこよくて、可愛くて……)
花陽(まさにアイドルって感じだった)
花陽(あの時に私の人生が変わった。『始まった』。)
花陽(……思い出したら見たくなっちゃったな。見よう!)カチ
花陽「~♪」
…アイセーイ! ヘイ! ヘイ! ヘイッスタートダッシュ!!…
花陽(……)
…キミモカンジテールヨーネ ハジーマリーノコドウー
花陽(あれ)
花陽(ここ、ことりちゃんだっけ……)
花陽(違ったような……)
花陽(……最初から……)カチカチ
花陽(……)
花陽(……おかしい。……全体的に、何か違うような……)
花陽(だって、ほら、あの頃何回も聞いた。今だって頭の中で再生できる……)
ーーー君も感じてーるよーね 始ーまりーの鼓動ー
花陽(……え……)
花陽(誰……?)
花陽(ことりちゃんでも海未ちゃんでもない……一瞬だけ思い出した今の、声は……)
花陽(……なんでそう思うのか、分からないけど……)
花陽(……『穂乃果』ちゃん、なの……?)
ーーー絵里のマンションーーー
エリーチカ[『穂乃果』って知ってる?]
絵里(ーーーと、LINEをにこに送ってから、二時間がたった)
絵里(やっぱり、忙しいのかしらね……)
絵里(……ん)
絵里(あ、返信)
にこにー[知らないけど、誰?]
エリーチカ[知らないならいいわ]
にこにー[いや、ちょっと待ちなさいよ]
エリーチカ[何?]
にこにー[気になるでしょうが、なんなのよその『穂乃果』って]
にこにー[なんとなく初めて聞いた気がしないのよその名前]
エリーチカ[にこも? 私もなの]
にこにー[だから誰なのよその人は]
エリーチカ[なんか、今日、海未とことりがその人のことについて話してたみたいなんだけど]
エリーチカ[その人はμ'sに関係があるみたいなの]
エリーチカ[でも聞き覚えはあるけど誰だかわからない]
エリーチカ[にこは知ってるかな、と思って]
にこにー[あぁ]
にこにー[なんかことりが泣いてたみたいね]
にこにー[花陽が言ってたわ]
エリーチカ[私より花陽の連絡を先に確認するのね……]
にこにー[何言ってんのあんた]
にこにー[とにかく私は知らないわ]
にこにー[聞いたことある気はするけど思い出せない]
にこにー[海未が明日話すって言ってんでしょ?]
にこにー[その時分かるでしょ。私寝る]
にこにー[おやすみ]
エリーチカ[おやすみなさい]
絵里「フー……」バフッ
絵里「誰なのよ……『穂乃果』って……」ボソ…
…ソレゾレガスーキナーコートーデガンバレールナラー…
絵里「……ん?」ガバッ
絵里「……」パタパタ
絵里「亜里沙?」コンコン
亜里沙「ゴールだねー♪」
絵里「亜里沙ー」ガチャ
亜里沙「わっ! お姉ちゃん!? ……ノックしてよ」
絵里「したけど」
亜里沙「……ごめん、うるさかった?」
絵里「いや……大丈夫よ。外には聞こえないくらいだったし、私は別に気にしないわ。それよりなんで……」
亜里沙「あのね、文化祭でμ'sの曲やろうってなったんだ! それで僕今に決まったの!」
絵里「僕今?」
亜里沙「あっ、僕らは今のなかでの略だよ」
絵里「へ、へぇ……」
絵里(被った……!)
絵里「へ、へぇー……。頑張ってね……」
亜里沙「うん! けどもう今日は寝るよ」
絵里「そう。……おやすみ」
亜里沙「おやすみなさーい」
絵里(僕らは今のなかで、か……)バタン
絵里(ラブライブ決勝の、アンコールで歌ったのよね……本当に最後だと思って、全力で歌った……)
絵里(その後も、まあ色々あったけどね)クス
ーーーラストライブ! 全力で飛ばしていこう!!
絵里(なんて、言ってたっけ……)
絵里(……えっと、誰が……?)
絵里(ことり、じゃない……他の誰かでもない……)
絵里(……)
絵里(なんの根拠もない。なんの証拠もない。だけど……ごく自然に、思う)
絵里(……あなた、なのね? 『穂乃果』……)
ーーー矢澤家、リビングーーー
にこ(『穂乃果』ねぇ……)
にこ母「早く寝なさいよ、にこ」
にこ「うん……ってママ、もう子供じゃないんだから。まだ10時半よ?」
にこ母「でも寝不足はお肌の大敵っていつも言ってるじゃない」
にこ「う……」
にこ「……わかった。寝る。おやすみ」
にこ(明日はμ'sのライブの練習……正直できるか不安ね……)カチャ
にこ(いや! イメトレは完璧……問題はないはずよ……)バタン
にこ(μ'sか……)
にこ(そういや、かなり強引に入れられたのよね……)
にこ(……ふふっ、今思い返すと笑えるわね。あいつら暗い部屋で私が来るの息潜めて待ってたのかしら? くく……)
にこ(今は、感謝してるけどね)
にこ(センター争ったりもしたわね……。こっちが有利になるようにしてんのに軽々と張り合ってきて、なんなのあいつら? 凄すぎ)
にこ(……ほんと、凄すぎ。リーダーなしとかみんながセンターなんて、私には考えつかないし、それがなきゃμ'sはμ'sになれなかったと思う)
ーーーじゃあいいんじゃないかな、なくても
にこ(ホント衝撃的な一言だったわねー、聞いた瞬間は『こいつ何いってんの?』って思ったわ)
にこ(……で、誰が言ったんだっけ)
にこ(海未ではないわよね……口調が違う。口調で言うならことり花陽に凛あたり……凛はちょっと違うか)
にこ(でもことり、花陽でもない気もする……)
にこ(いやいや……じゃあ誰よ……)
にこ(まさか……)
にこ(いや、ありえないでしょ。そんな誰かも分からない奴……)
にこ(だけどなんでか分からないけど、妙に納得できる)
にこ(まさか、本当に)
にこ(『穂乃果』だとでもいうの……?)
ーーー星空家、凛の部屋ーーー
凛「にゃー……」ポチポチ
凛「……ん、んんっ! んー!!」カチャカチャ ポチポチ
凛「ん~!」ポチポチ
凛「!」
凛「……やっ……た……!!」
凛(やったぁー! ついにステージクリア! ここのラスボス一個前と違いすぎるよ……強すぎ……)
凛(まぁ凛の方が強いんだけどね!!)フフン
凛(……)
凛(はぁー)
凛(……海未ちゃんの大事な話ってなんだろ……気になるなあ)
凛(そういえば昨日の朝、海未ちゃんとことりちゃん、なんか深刻そうに話してたな)
凛(ちょっと聞こえちゃったけど、確か、海未ちゃんが『『穂乃果』について何か思い出しましたか?』とかなんとか言ってたような……)
凛(凛が『何話してるの?』って聞いたらなんでもないって言われた……)
凛(……『穂乃果』ちゃん……どっかで聞いたことある気がするんだけどな……思い出せないや)
凛(ま、いっか)
凛(あー……一週間後にはライブかぁ……楽しみだなぁ)ゴロン
凛(ライブ久しぶりだな……って、まだ半年ぶりくらいか)
凛(凛がこんなふうになるなんて思ってもみなかったなぁ……高校入った時も、陸上部入って、そこそこの成績残せたらいいなぁくらいにしか考えてなかったもん)
凛(それが、スクールアイドルなんて……入学式の日の凛に言っても、きっと信じてくれないよ)
凛(かよちんに連れられてライブを見て……すごいな、って思って、でも凛には絶対こんなの似合わないなって思ってた……)
凛(でもμ'sに入って)
凛(みんなに会って)
凛(少しは凛も、変わることが出来て)
凛(気がついたらラブライブ優勝なんてしちゃってて)
凛(……言い表せないよ)
凛(やってよかった……本気で思うよ)
凛(……同じようなこと誰か言ってたなー。誰だっけ? μ'sの誰かだと思うんだけど……)
ーーーこんな気持ち、初めてなんです。やってよかったって、本気で思えたんです。
凛(あぁ、そうだ、ファーストライブの時に、……えっと……誰かな……)
凛(……海未ちゃんかことりちゃんのはずなんだけど……なんか……)
凛(……『穂乃果』ちゃん?)
凛(……!)
凛(……そうだ……そうだよ……)
凛(『穂乃果』ちゃんだ……)
今日ここまでです
ーーーライブ一週間前ーーー
にこ「ふあぁ……」ノビー
にこ「……ん」
絵里「遅いわよ、にこ」
にこ「いや集合時間前なんだけど……あぁ、もうみんないるみたいね」
真姫「随分眠たそうね?」
にこ「んー……なんとなく眠れなくてね」
真姫「そう。……私も」
海未「みんな揃いましたね」
海未「……今から、話があります」
絵里「……それは、『穂乃果』に関係のある話?」
海未「!」
ことり「!!」
ことり「絵里ちゃん! 『穂乃果』ちゃんのこと、知ってるの!? 覚えてるの!?」
海未「ことり! 落ち着いてください!」
ことり「……あ、ごめん……ちょっと驚いちゃって」
絵里「……よくは知らない。覚えてない。……覚えて?」
花陽「覚えてるのって、どういうこと? 『穂乃果』ちゃんは誰で、どうなっちゃったの?」
海未「ちょっ……ちょっと待ってください。まさかみんな、『穂乃果』を知っているのですか?」
凛「うん。μ'sの一人……そうでしょ?」
真姫「私に無理矢理作曲させた人」
にこ「馬鹿」
希「お日様みたいな子」
花陽「すごい人」
絵里「みんなを引っ張る力を持った子」
海未「え、えぇ……? 私やことりより思い出してるじゃないですか……」
花陽「でも、分からないんだ。……なんていうのかな……氷山の一角っていうか、『穂乃果』ちゃんって人の一部分しか分からない。全体的なふわっとしたイメージしか」
真姫「氷山の一角っていうのは、なんか違うと思うけど……私も同じ。その『穂乃果』ってのに会った時のことは結構はっきりわかるんだけど」
真姫「肝心のその人のことはほとんどわかんないのよ……。すごく気持ち悪いわ」
海未「……すごく断片的に思い出している、ということですか」
凛「で、誰なの? どこに行っちゃったの、その人?」
海未「……『女神隠し』です」
海未「私達は、『女神隠し』によって『高坂穂乃果』が消滅したと考えています」
真姫「……は?」
絵里「『女神隠し』って……」
海未「あ、ごめんなさい……。絵里は聞いてなかったですよね」
絵里「あぁ、希に聞かされたわ。別に怖い話じゃなかったわね」
海未「そうですか」
にこ「一応言っとくと私は聞いてたわよ」
真姫「……まさか、海未がそんなオカルティックな思考の持ち主だとは思わなかったわ」
海未「……そうとしか考えられないのです」
海未「μ'sのリーダーである『穂乃果』は、『女神隠し』によって消えてしまった。そう考える他ないのです」
真姫「海未……自分が言ってる事の自覚ある? 狂ってると思われても仕方ないわよ?」
花陽「真姫ちゃん! 言い過ぎだよ……!」
海未「自覚はあります。狂人だと思われても仕方ないことを言っていると思います」
海未「ですが真姫……他のみんなも、少しでも……欠片だけでも思い出したのなら、そうとしか説明がつかないのは感覚的に理解しているはずです」
海未「不鮮明でつぎはぎにされた記憶、思い出すのを阻害されるかのような感覚、……自覚した今、言いようのない気持ち悪さを感じているはずです」
にこ「わかるわ……なんか違うって感じよね」
希「どこか決定的に間違ってるんやけど、それを合ってると思い込まされてる……みたいな? ああもう、うまい言い方が見つからんわ」
凛「洗脳……って感じ?」
海未「洗脳とは似て非なるものだと思いますが……とにかく、それぞれに感じているはず。わざわざ言葉にする必要もないでしょう」
絵里「ねぇ海未……さっき『μ'sのリーダー』って言ってたわね? それは本当?」
海未「はい。憶測の域をでませんが……限りなく確信に近いです」
絵里「ことりも? ことりもそう思うの?」
ことり「うん。……っていうか、私が言い出したことだもん」
絵里「……そのことについて、あなたはどう思うの?」
ことり「……謝りたい」
ことり「『穂乃果』ちゃんに会って、私が全てを奪っちゃったことを謝りたい」
花陽「奪っちゃったって……」
ことり「だってそうでしょ? 『穂乃果』ちゃんから見てみれば、私は最低だよ。μ'sを、『穂乃果』ちゃんのμ'sのリーダーとしての全てを奪っちゃったんだ」
凛「だけど、そんなの、ことりちゃんは悪くないし、『穂乃果』ちゃんだって悪くないよ。ただの偶然だよ……」
ことり「でも、もしまた会えたなら、謝りたいの」
ことり「それで、もとのμ'sになって、もとのみんなになって、もとの世界で、『穂乃果』ちゃんが笑ってる世界で」
ことり「……また、九人一緒に、笑いあいたい」
花陽「ことりちゃん……」
絵里「ことり……」
にこ「……」
にこ「……そんなこと言うアンタが湿気た顔しててどうすんのよ」
ことり「え……」
にこ「よく覚えてないけど、『穂乃果』はいっつも馬鹿みたいにヘラヘラ笑ってたわよね? そうよね?」
海未「そんなイメージはありますが……」
にこ「ねぇ、そんな奴がこんな暗い雰囲気の私達見て喜ぶと思う? みんなお通夜みたいに神妙な顔して俯いて、こんなとこ見て嬉しいと思うの!?」
にこ「笑顔にさせたいなら笑顔になりなさいよ!! 泣きそうな顔見せても誰も笑ってくれないわよ! もちろん『穂乃果』も!!」
にこ「『穂乃果』に帰って来てほしいんでしょ!? こんなんじゃ帰ってくるに来られないわよ!」
にこ「……だから、笑いなさいよ。みんな……」
真姫「にこちゃん……」
海未「そうですよね……こんなの、私達らしくありません。μ'sらしくありませんよね」
にこ「まぁいきなり笑えってのもアレだから全世界ナンバーワンアイドルのにこちゃんが笑わしてやるわ」ヘンガオ
凛「ぷっ……あはは! にこちゃん! 顔、変~!!」
にこ「ちょっと! それじゃあにこの顔が元々変みたいじゃない!!」ツネ
凛「にこひゃんいひゃい……」
花陽「あはは……」
絵里「ふふ。……久しぶりに私達らしくなってきたわね。思えばここ数日、海未もことりもなんか暗かったし、全体的に笑顔が少なかったものね……」
希「さすが部長やね」
ことり「うん……ごめんね、暗い雰囲気にしちゃって」
にこ「いいわよ別に。実際なってないから言えたもんじゃないけど……私だってあんたの立場になったらそんな感じになると思う」
凛「えー、にこちゃんが?」
にこ「どういう意味かしら?」ツネー
凛「いひゃいいひゃいいひゃい!!」
真姫「で、どうやったら『穂乃果』が帰ってくるのよ」
にこ「それは……わかんないけど」
真姫「……さっきはかっこよかったのに……その辺がにこちゃんがにこちゃんたる所以ね」
にこ「なんか前より私に当たり強くない?」
希「どうしよう……黒魔術とか? ……いや、割と真剣に」
海未「それについて、私に作戦があります」
海未「やはり私も『穂乃果』に会いたいです。……一晩考えていました、彼女を再びこの世界に呼び戻す方法を」
絵里「その方法って……?」
海未「……大勢の人に『高坂穂乃果』の存在を、事実だと刷り込みます」
凛「あの……凛が馬鹿なだけかもしれないけど、全然意味が分からないんだけど……」
花陽「どういうことなの……?」
海未「例えるなら、そうですね……凛、これ何に見えます?」ヒョイッ
凛「スポーツドリンク」
海未「では、私がこれをお茶だと言ったら?」
凛「何言ってんの、って思う」
海未「正直ですね……。なら、この場にいる、凛を除いた全員がこれをお茶だと言い張ったら?」
凛「え? えー……と……もしかしたら、本当はお茶なのかな、って思っちゃう」
絵里「……なるほどね」
海未「分かって頂けましたか」
絵里「つまりはその延長をやろうってわけね? 何もないところに『高坂穂乃果』を共通認識させて、それを現実にする、と」
ことり「何が『なるほど』なの……」
希「いや……言ってることは分かる……分かってるつもりやけど、流石にスピリチュアルすぎるやろ……」
にこ「まるっきりアニメや漫画の世界じゃない……」
真姫「まぁ……その超理論に賛成はしたくないけど……人が一人消えるなんていうファンタジーが現実に起こったわけだし、さらにそれを復活させちゃおうって言うんだから、少しでも希望があるなら縋るしかないわね」
絵里「私もそう思うわ。やれることはやりましょう……私もことりと同じ、『穂乃果』に会いたいもの」
花陽「うん。私も会いたい……」
凛「凛も!」
希「当たり前やん」
にこ「……にこもよ」
真姫「私だってそう」
海未「……異論はないみたいですね」
ことり「うん」
海未「では……これより、作戦の概要を説明します」
多分、次で終わりです
ーーー文化祭当日・講堂ーーー
にこ「はぁっ、はぁっ、……間に合った?」
絵里「お疲れ様、にこ。着替えるの速いわね……まだ始まってないわ」
にこ「そう……」
海未「良いステージでしたよ」
花陽「可愛かったよ!にこちゃん!」
にこ「ふっ。当たり前でしょ? 誰だと思ってんのよ」
真姫「ちょっと、凛……。起きなさいよ」ユサユサ
凛「うにゃ……?」
にこ「まさかそいつ私の出番の時から寝てたわけじゃないわよね……」
真姫「まさか。終わってから急に寝だしたわ」
花陽「凛ちゃん、昨日バイト終わったあと家で遅くまで練習してたみたいだから……」
ことり「すごいね……凛ちゃんもう完璧だったのに」
希「……ん、始まるみたいやね」
『続いては、アイドル研究部の発表です』
~♪
マッスグナーオモーイガーミーンナヲムスブー
ーーーーー
雪穂「ご覧頂き、ありがとうございましたっ!!」
「「「ありがとうございましたっ!!!」」」
パチパチパチパチ…
ことり「凄かったねーっ」
海未「はい……私達がいた頃より洗練されてます」
凛「ふっふ。そりゃー凛がダンスの極意を叩き込んだからね……」
希「凛ちゃんが?」
凛「うんっ! 今の1年生はもちろん見てないけど……海未ちゃん達が抜けたあとは凛がコーチやってたんだよ!」
絵里「すごいじゃない!」
にこ「穂乃果の代わりにリーダーやってた時はあんなんだったのにねぇ」
凛「えへへ……」
花陽「凛ちゃん、踊り教えるのすっごく上手なんだよ?」
凛「海未ちゃんと絵里ちゃん超えたかも!」
海未「言いますね……凛」ニコッ
絵里「今度ダンス勝負でもしてみる?」ニコッ
真姫「ねぇ、そろそろ準備しないとじゃない?」
ことり「そうだね……行こう、みんな」
ーーー1週間前ーーー
海未「要は、『そこに『高坂穂乃果』って人がいるのか』……あるいは『いたのか』と思わせれば言いわけです」
海未「やる事自体は単純です。一週間後のライブで、『穂乃果』がいると仮定します」
海未「もし九人いたとしたら……その仮定のもとでダンスも歌も構成します」
真姫「そんなことができるの? 歌詞のパート分けとか」
海未「多分出来ます。『穂乃果』がいた頃も私がしていたと思いますし」
絵里「ダンスもまぁ……いけるわよね」
海未「みんなには少し頑張ってもらうことになりますが……」
花陽「全然! 大丈夫だよっ」
絵里「あ、そうそう。……亜里沙達が、僕らは今のなかでを発表でやるらしいわ」
ことり「えっ……」
絵里「やっぱり、まずいわよね」
海未「確かに……同じものをやるのはちょっと……」
海未「……やめるというのも……三曲くらいはやりたいですね……」
凛「じゃあ他のにしようよ! 凛、START:DASH!!がいい!」
花陽「あ、私も……」
海未「うーん……」
海未「……この一週間で三曲、見せられるレベルには出来てますから……確かに、あと一週間あるなら充分いけますね……」
海未「では、僕らは今のなかでをやめて、START:DASH!!にしましょう……そうと決まれば、とにかく練習です! ほら! 行きますよ!!」
「「「はい!!」」」
ーーー現在ーーー
海未「もうすぐ、ですね……。ことり、何か言うことはありますか?」
ことり「そうだね……、うん、ライブを成功させるのはもちろんだけど」
ことり「『穂乃果』ちゃんはここにいた……ううん、いるんだって、この世界に叩きつけてあげよう!」
ことり「私達九人が、μ'sだって!!」
ことり「2!」
海未「!」
海未「……3!」
真姫「4!」
凛「5!」
花陽「6!」
にこ「7!」
希「8!」
絵里「9!」
「「「μ's……ミュージック、スタート!!!」」」
ーーーーー
雪穂「なんだろうね、アイドル研究部だけ待機って」
亜里沙「うん……しかも理事長じきじきに『ここで待ってて』なんてね」
雪穂「なんか怒られるのかなー」
『只今の部活をもちまして、講堂での発表は終了ですーーー』
雪穂「終わりかぁ……ん、司会の人と理事長が話してる?」
『ーーーし、失礼しました! 最後に、本校卒業生の発表があります!!』
亜里沙「え?」
ザワ ザワ
ブーーー
雪穂「え、あれって……」
亜里沙「もしかして……」
ゆきあり「「μ's!?」」
キャーーーーーッ!!
ウソ! ホンモノ!?
ザワザワ ザワザワ
ことり「……私達は、この学校の元スクールアイドル、μ'sです」
ことり「最初に、伝えたいことがあります」
ことり「私達は、今、八人しかいませんが……本来は九人なんです」
ことり「そのもう一人の名前は、『高坂穂乃果』」
ことり「彼女が再び私達と歌ってくれることを願って、信じて、私達は今から歌います」
雪穂「『高坂穂乃果』……?」
亜里沙「そんな人いた? ……雪穂の名字も高坂だったよね、知ってる?」
雪穂「知らない……多分……」
ーーー1曲目、START:DASH!!ーーー
~♪
…アイセーイ! ヘイッ! ヘイッ! ヘイッスタートダッシュ!
ことり「うぶげのことりーたちもー」
凛「いつか空に羽ばたくー」
ーーーーー
亜里沙「やっぱり……すごい! ね、雪穂!」
雪穂「うん……でも」
雪穂「……こんなものじゃない……そんな気がする」
雪穂「まだ……『μ's』じゃない……」
ーーーーー
「ねぇ……なんかおかしくない?」
「うん。歌ってないとことかあったし……それに、ダンスもおかしいよね」
「うん……すごいスペース空いてるよね」
「そう、そう! 一人入れるくらいのさ!」
「……『高坂穂乃果』って人の分、なのかな?」
「でもさぁ、私μ'sのファンだったんだけど、そんな人知らないよ?」
「うーん……だけどさ、いる気がするよね」
「あー、分かる。『高坂穂乃果』があそこにいれば……なんでか分かんないけど完璧になる気がする……」
ザワザワ… ザワザワ…
ーーー2曲目、Dancing stars on me!ーーー
~♪
海未(『高坂穂乃果』の名前を出したことで、もとのμ'sを知っている人なら、私達ほどじゃないにしろうっすらと彼女のことを思い出してくれるはず)カガヤーキノーソーラーヲー
海未(そして、μ'sのことを知っている人は、自画自賛するわけじゃないですがかなりいるはず!)メザソウ! メーザーソー
海未(作戦は順調です……このまま、この場の大勢が、うっすらと、うっすらとだけでいい! できるだけ多くの人が『穂乃果』を思い出してくれれば……)モットモットオードラセテー ミンナミンナトーマラナイー
海未(この世界に、『穂乃果』という存在が認識されれば……!)キョーウダケマホーウツカイ
ーーーーー
雪穂「欠けてる」
亜里沙「え?」
雪穂「欠けてるよ……違う、μ'sじゃない。いない……」
亜里沙「雪穂……?」
雪穂「いないじゃん……なんで私、忘れてたの……?」
雪穂「『高坂穂乃果』……私の、お姉ちゃん……!」
ーーー3曲目、Snow halationーーー
~♪
希・海未「不思議だね……今の気持ち……」
希・海未「空から降ってきたみたい」
絵里・にこ・花陽「特別な季節の色が……ときめきを見せるよ」
絵里・にこ・花陽・ことり・真姫・凛「初めて出会った時から、予感に騒ぐ心のmelody」
希・海未「止められない止まらないーーー」
「な・ぜ」
「届けて、切なさには……名前をつけようか、"Snow halation"」
「想いが重なるまで……待てずに、悔しいけど……好きって純情」
「微熱の中、ためらってもダメだね」
「飛び込む勇気に賛成ーーーまもなくStart!!」
海未(ことりに担当してもらっていたこの後のソロパート……もし『穂乃果』がリーダーだったとしたら、私は『穂乃果』に任せていたと思う……)
海未(だからそうした)
海未(帰ってきて下さい……『穂乃果』!)
ーーーーー
「やっぱり、『穂乃果』ちゃんっていたよね……」
「『穂乃果』さんって確か生徒会長やってなかった?」
「『穂乃果』ちゃんって人μ'sにいた気がする!」
「μ'sって九人だったような……」
ーーーーー
亜里沙「どうしたの、雪穂……?」
雪穂「いたんだよ! 『高坂穂乃果』! μ'sのリーダー!」
亜里沙「μ'sの、リーダー……『高坂穂乃果』、さん……」
雪穂「そう! 私のお姉ちゃん!」
亜里沙「ああ……いた気がする……じゃない、いた。……うん! いた! そうだ……μ'sは九人! 1人足りない……!」
ーーー『高坂穂乃果』が、いない
絵里(『穂乃果』)
希(……『穂乃果』ちゃん)
にこ(『穂乃果』……)
花陽(『穂乃果ちゃん』……)
凛(『穂乃果ちゃん』)
真姫(……『穂乃果』)
海未(『穂乃果』……!)
ことり(『穂乃果』ちゃん……!)
ことり「……ぁ」
…スゥ
穂乃果「……届けて、切なさにはーーー」
「「「ーーー!!!」」」
海未「……穂乃、果ーーー!!」
穂乃果「名前を、つけようか? "Snow halation"」
穂乃果「……ほら、みんな歌わないと」ボソッ
海未「は、……はいっ!」
「……が重なるまで、待てずに……悔しいけど、好きって純情」
「微熱の中、ためらってもダメだね」
「飛び込む勇気に賛成ーーーまもなくStart!!」
ーーーーー
ーーーーー
ことり「ーーーい、以上で、私達の、発表を……終わります!」
「「「ありがとうございましたっっっ!!」」」
パチパチパチパチ
海未「あ、あの……穂乃果」
穂乃果「んー? 何、どうしたの海未ちゃん?」
穂乃果「あ……そうだ」
穂乃果「みんな……、ただいま!」
海未「~~~っ!」
海未「……はい」
海未「おかえりなさい、穂乃果!」
終わり
なかなかに滅茶苦茶な文になりました……。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
すみませんやっぱりあともう一回だけ続けようと思います
ーーー数日後ーーー
穂乃果「ん……」モゾ
穂乃果「……」チラッ
穂乃果「九時……まだいいか」
穂乃果「……」モゾ
雪穂「起きろ!!」バァーン!
穂乃果「うわぁ!? ……そんな思いっきり開けないでよ! びっくりするじゃん!」
雪穂「今日遊びに行くんでしょ!? 九時って言ってなかった!?」
穂乃果「……」
穂乃果「あーーーっっっ!!?」
ーーーーー
海未(穂乃果が帰ってきてから数日……穂乃果は何事も無かったかのように生活している)
海未(それもそのはず、みんな一年半の『穂乃果がいなかった世界』の記憶が、『いた世界』の記憶に書き変わっていたのです)
海未(……μ'sの九人を除いて)
海未(理由はわかりませんが、私達だけは穂乃果がいなかった時間──つまり私、ことり、穂乃果が高校を卒業した直後から数日前まで──の記憶をそのまま保持していたのです)
海未(……そう、穂乃果が消えたのは卒業の直後。そしてそれ以前の、消える前の記憶は私達も含めちゃんと思い出せました)
海未(穂乃果自身は一年半の間のことは何も覚えていないと言います。ただ自分がこの世界にいなかったという自覚だけはあると)
海未(眠っているみたいだった、とも。目が覚めた時、自分は寝ていたという自覚はあるけれど、しかし寝ている間のことはほとんど覚えておらず、そして時間はきっちりと進んでいる……)
海未(そういうことを言いたいのだと思います)
海未(……穂乃果の存在を思い出して改めてあの頃を思ってみれば、私達はなんと大切な存在を忘れていたのだろうか、と涙が溢れました)
海未(ねぇ、穂乃果)
海未(あなたがいなければ、μ'sはなかった)
海未(あなたがいなければ、この九人が揃うことは無かった)
海未(……今回は一年半もかかってしまいましたが)
海未(もしもあなたがまた消えてしまったとしても──私達は必ずあなたを見つけます)
海未(もちろん、他の誰でも)
海未(……あなたが繋いだこの奇跡は、きっと、いつまでも消えない)
海未(消えることはない。あるはずがない。……消えさせはしない)
海未(ずっと──)
穂乃果「お待たせー!」タッタッタッ
にこ「遅い!」
絵里「寝坊したの?」
穂乃果「うん、あはは……」
希「本当にー? 忘れてたとかやないの?」
穂乃果「えっ……なんで分かったの」
真姫「呆れた……」
ことり「穂乃果ちゃん……」
凛「凛でも忘れてなかったのにー」
花陽「でも凛ちゃん、寝坊はしちゃったよね」フフ
凛「ちょっ……もー! なんでばらすの!」
にこ「くくっ、十歩百歩ね……」
真姫「……五十歩百歩って言いたいわけ?」
絵里「ぷっ……」
凛「ぷっ……」
にこ「う……ちゃ、ちゃんと言ったわよ!」
穂乃果「いやぁにこちゃん……今のは言い逃れできないよ……」ニヤニヤ
希「確かに」ニヤニヤ
にこ「……そ、そう! ほら! 穂乃果が遅刻したこと、これでみんな忘れたでしょ? 感謝しなさい穂乃果!」
穂乃果「おおっ! 流石にこちゃん!」
ことり「でも、今のでみんな思い出しちゃったよね……」
穂乃果「あ。……にこちゃん! 嘘つき!」
にこ「べー」ベー
穂乃果「もーっ!」プンスカ
海未「……ふふ」
海未(いつもの風景。私達が望んだ、九人の笑っている世界)
海未(大丈夫。私達がバラバラになって、元に戻らないなんてことはない。九人の笑顔が曇って、二度と晴れないなんてことはない)
海未(──きっと、ずっと──)
海未(ずっと)
本当に終わりです
初めて書いたss、このような稚拙な文を最後まで読んでくださり、ありがとうございました
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