凛「ちょっと寒くないかにゃ?」 (65)
花陽「う、うん……そうだね」
ガタガタ
凛「やっぱりかよちんもそう思う?」
花陽「すごく寒いと思うよぉ……」
ガタガタ
凛「どうしたらいいのかなぁ? 」
花陽「花陽に聞かれてもどうしようもないよぉ……」
凛「何でこんなことになっちゃったのかにゃ……まさか凛たちが雪山で遭難なんて」
花陽「だ、誰か助けてぇぇ……!! 」
凛「誰かに聞こえたかなぁ? 」
花陽「声の届く範囲に人がいるとは思えないけど……」
真姫「もうっ! うるさいわね!! 」
凛「真姫ちゃんには届いてたみたいだにゃ」
真姫「やっと眠りにつけたと思ったのに! また寒い思いしないといけないじゃない!! 」
凛「お姫様は寝起きがあまりよろしくないようだにゃ」
花陽「真姫ちゃん、寝たら死んじゃうよ? 」
真姫「こんな思いするくらいならいっそのこと死んだ方がマシよ!! 」
花陽「あ、諦めちゃダメだよ!! きっとそのうち救助が」
真姫「もうこうなって一週間よ!! 救助なんか来るとしたらとっくに来てるはずよ!! 」
凛「……」
真姫「もうやだぁ~……ぐすっ」
凛「真姫ちゃん、チョコレートあげるから機嫌直すにゃ? 」
真姫「いらないわよっ!! 」
花陽「じゃ、じゃあ花陽がそのチョコ」
真姫「だ、誰もいらないなんて言ってないでしょ!? 」
花陽「えぇ!? 」
凛「真姫ちゃん、チョコレートいるの ? いらないの? 」
真姫「……そ、そこまで言うなら貰ってあげてもいいわよ」
凛「真姫ちゃん可愛いにゃ~」
真姫「……」
モグモグ
花陽「あぁ……花陽のチョコレート~……」
真姫「はぁ……お腹いっぱい食事がしたいわ」
花陽「あ……カレーライス……オムライス……カツ丼……しょうが焼き定食……おにぎり……じゅるっ、ふわぁ~」
凛「か、かよちん!! しっかりするにゃ!! 」
花陽「おにぎり、お腹いっぱい……はむっはむっ」
凛「かよちん!! それはおにぎりじゃなくてただの雪だよ!! 」
花陽「おいしいよぉ~……しゃりしゃりっ」
凛「かよちーん!! 」
花陽「げほっげほっ……!! じゃりっ…… うぇぇ……」
凛「だ、大丈夫!? かよちん!! 」
真姫「も、もう限界よ!! 」
凛「真姫ちゃん!? 」
真姫「私はひとりでも家に帰ってやるわ!!」
凛「ま、真姫ちゃん!! 外は」
ビューッ……!!
真姫「さっむーいっ!! 」
凛「だから言ったのに……はい、凛のマフラー貸してあげるにゃ」
真姫「うぅ……へっくち……!」
ブルブル
花陽「鮭……梅干し……明太子……こんぶ……ツナマヨ、ふわぁ……おにぎりがいっぱぁい……幸せだよぉ」
凛「かよちん! だからそれは雪だって」
真姫「寒い! お腹すいた! 早く家に帰りたい!! もうやだ~!! 」
凛「……世話のかかる二人にゃ」
ボソッ
穂乃果「あー寒かったー!! 」
凛「穂乃果ちゃん、おかえり」
穂乃果「平気だった? 何か変わったことはない?」
凛「うん、凛たちは大丈夫だにゃ。それよりごめんね……穂乃果ちゃんたちばかり大変な思いさせて」
穂乃果「ううん! 平気だよ! 穂乃果たちは先輩だからね」
真姫「そ、それで……何か見つかったの? 救助はまだなの? 」
ブルブル
穂乃果「……ごめん」
真姫「はぁ……」
凛「ねぇ、ことりちゃんと海未ちゃんはどうしたの?」
穂乃果「……」
海未「私ならここに」
真姫「きゃっ!! ちょっと驚かせないでよ、海未ちゃん」
海未「す、すみません」
凛「ことりちゃんは……?」
穂乃果「……やっぱり戻ってきてないんだ」
凛「え? 」
海未「実は辺りを散策してる内にはぐれてしまい……っ、必死で捜したのですが……」
凛「そんな……」
穂乃果「ごめんなさい……」
凛「凛が捜しに」
海未「危険です!! 雪も強くなってきましたし、もう陽も落ちています」
凛「……わかったにゃ」
真姫「ねぇ、さっきから気になってたんだけど海未ちゃんが持ってるのって 」
花陽「はっ……生肉の匂いがします、じゅるっ」
クンクン
海未「えぇ、そろそろ食料が尽きる頃かと思い野性動物を狩ってきました」
穂乃果「……」
凛「海未ちゃん、たくましいにゃ! 」
真姫「お肉が食べられるの!? 」
海未「はい、では火をおこしてもらえますか? 真姫」
真姫「わかったわ! かよちん、お願い 」
花陽「う、うん!! ご飯の為なら頑張ります!! 」
凛「海未ちゃん、そのお肉って何のお肉なの……?」
穂乃果「……」
海未「……羊ですよ、とびきり可愛かった……羊です」
ジューッ……
海未「みんな、焼けましたよ」
花陽「い、いただきます! うわぁ~美味しそうだよぉ」
真姫「こんな美味しい肉、今まで食べたことがないわ! 」
モグモグ
穂乃果「……」
凛「穂乃果ちゃん? 食べないの? さっきから元気ないよね……凛もことりちゃんのこと心配だけど食べないと倒れちゃうよ……?」
穂乃果「穂乃果、ちょっと食欲ないから……みんなで食べて」
凛「……? うん……」
モグモグ
海未「今日の分はこれで終わりです、助けが来るまで残りの食料でくいつなぎましょう」
真姫「え~もっといっぱい食べたいんだけど……」
海未「さぁ今日はもう眠りましょう、身体を冷やさないように」
海未「穂乃果、少し話が」
ボソッ
穂乃果「……うん」
その食料も長くはもたず、救助も来ないまま更に一週間が経過した……
海未「大丈夫ですか? 真姫」
真姫「だ、大丈夫なわけないでしょ !! 何でこの私が海未ちゃんの散策に付き合わなくちゃいけないのよ!! 」
海未「花陽も凛も手伝ってくれていますし、穂乃果に毎日同行させるのも気が引けます」
真姫「だからって何で私!? 今日も凛か花陽を連れていけばよかったでしょ !? 」
海未「真姫、普段は何も言いませんがこうした集団生活の場では」
真姫「何!? その上説教まで? もう勝手にすれば!! 私はみんなのところへ戻るから!! 」
海未「待ちなさい」
真姫「私に命令しないで!! 」
ズルッ
海未「危ないっ!! 」
真姫「きゃ、きゃああぁぁぁぁぁ !!!!」
海未「真姫っ!!」
真姫「痛たた……もうやだぁ……ひぐっ 」
海未「怪我はありませんか? 」
真姫「んっ!! 痛っ……うぅ……」
海未「よく傷を見せてください」
真姫「痛っ!! ちょ、ちょっと乱暴にしないで……」
海未「……」
真姫「ど、どうなの……? 」
海未「私は医者ではないのでハッキリとはわかりませんが、恐らく……折れています」
真姫「え……?」
海未「とりあえず骨折部を固定しなくては……」
真姫「嘘でしょ……? そんな……こんな状況で骨折なんか、私に死ねって言ってるの……!? 」
海未「落ち着いてください!! 安静にしていれば大丈夫ですから」
真姫「こうなったのも全部海未ちゃんのせいよ!! どう責任とってくれるのよ!! うぅっ……ひぐっ……」
海未「……」
真姫「何とか言いなさいよぉ……それとも私をここで見殺しにするつもり…… !? 」
海未「そんなことしませんよ」
海未「……見殺しなんかにしたらせっかくの貴重な食料が無駄になってしまうじゃありませんか」
真姫「え……?」
海未「真姫、貴女は少し勝手すぎました」
真姫「海未ちゃん……?」
海未「みんなの為に死んでください」
真姫「なっ、やめ……えっ……!! まさか……ことりも」
海未「……」
海未「ただいま戻りました」
絵里「遅かったじゃない! あまり心配させないでよ!! 」
海未「すみません、連絡しようにも生憎携帯が圏外で」
希「当たり前やん! ここ雪山なんやから! 」
にこ「にこー……」
海未「ニコ、元気がないみたいですが……」
にこ「当たり前でしょ……もう洞窟生活して二週間よ、何であんたたちそんな余裕な顔してるのよ……」
海未「そんなニコにお土産があります」
にこ「お土産……? また木の実拾ってきてくれたの? 」
海未「いえ、今日は」
絵里「ってこれ、肉!? 」
希「しかもかなり大きいやん!! 」
にこ「お肉!? 」
海未「えぇ、ちょうど弱っている女豹がいたもので」
にこ「女豹……?」
絵里「なかなかやるわね、ハラショーよ海未」
希「鍋の準備できたよー」
グツグツ
にこ「わぁーい! ニコ、豹なんか食べるの初めて~」
海未「元気になってよかったです」
にこ「おいしぃ~幸せニコ~」
モグモグ
希「いけるやん! 」
絵里「……」
にこ「すぅーすぅー……にっこにっこ」
希「幸せそうな寝顔やな、早く助けが来るとええけど」
絵里「海未、ちょっといいかしら? 」
海未「え? はい……何でしょう? 」
絵里「ここじゃちょっと……」
海未「あの……」
絵里「さっきの肉、あれ何の肉だったの? 」
海未「ですから先程も言ったはずですが……女豹の肉だと」
絵里「嘘ね」
海未「え? 」
絵里「だっておかしいじゃない? こんな雪山に女豹が彷徨いてるなんて」
海未「そ、それは……いました!! この目で見ました!! そして射ました!! 」
絵里「はぁ……じゃあこの赤い毛は何? 赤毛の女豹だったのかしら? 」
海未「……っ!! 」
絵里「答えて、海未! 貴女は何を隠してるの? 」
海未「……やはり賢い絵里は騙されてくれませんか」
海未「知らなければ幸せでしたのに ……」
絵里「どういう意味……?」
海未「……私が殺しました、真姫もことりも」
絵里「なっ!? え……それじゃ、他の子たちも……近くにいるの……? 」
海未「えぇ、ここより少し離れた洞窟に」
絵里「みんなは無事なの!? 何で殺したりなんか……嘘よね!? 」
海未「みんなを……穂乃果を守る為なら私は親友だって殺しますよ……」
絵里「な……そんな、どうしちゃったのよ!! 海未!!!! 」
海未「この極限状態で一番弱かったのは私なのかもしれません……」
海未「さぁお喋りはここまで、早く逃げてください! 狐狩りの時間ですよ」
絵里「海未……?何で弓なんか持って ……」
海未「こんなもの枝と弦さえあれば簡単に作れますよ、それよりいいのですか? 逃げなくて」
海未「参……弐……壱……、零」
シュッ
絵里「ぐぁっ!! 」
グサッ
海未「参……弐……壱」
絵里「やめ……助け……っ」
海未「零」
シュッ
絵里「うあぁっっ!! 」
グサッ
海未「苦しいのは嫌ですよね? 私も見たくありません……次で終わりです」
絵里「う、海未……やめて……お願い、 私……まだ死にたく……、いやっ……イヤよ!! 」
海未「……」
シュッ
絵里「きゃああああぁぁぁぁ…………!! !!」
ドサッ
「きゃああああぁぁぁぁ…………!!!! 」
にこ「すぅーすぅー……んっ……希……? 」
希「ん? どうしたん? 」
にこ「今……声が……」
希「声? うちには何も聞こえんかったけど、いつも通り静かな夜よ? 」
にこ「ん……夢……かな? 」
希「うちはにこっちの側におるから安心して眠ってええんよ? 」
にこ「ん……」
希「……」
にこ「すぅー……すぅー……」
希「……絵里ち」
海未「申し訳ありません、遅くなりました」
花陽「……海未ちゃん!!」
凛「海未ちゃん! よかった、無事だったんだね!! 」
海未「心配かけてすみません」
穂乃果「……真姫ちゃんは?」
花陽「あれぇ? そういえば真姫ちゃんの姿が……」
海未「……本当にすみません!! 私が付いていながら……」
凛「え……、え……?」
海未「真姫は……足を踏み外し、崖から転落して……っ」
花陽「そ、そんな……」
凛「ひぐっ……真姫ちゃ……」
海未「あの……狐を……」
凛「また食料取ってきてくれたの?」
海未「はい、みんながお腹すかせてると思って」
花陽「狐なんか食べたことないよ~どんな味がするんだろぉ~」
凛「さっそく準備するにゃ! 」
穂乃果「……」
海未「穂乃果、痩せましたね……顔色も悪い様ですが、ちゃんと食事はとっていますか?」
穂乃果「……」
花陽「穂乃果ちゃん、ここ最近何も食べてないの……」
凛「凛とかよちんが穂乃果ちゃんの分って渡しても全然手つけようとしないにゃ……」
海未「それはいけませんね、食欲なくても何か口に入れないと」
花陽「鍋、煮えたよ~」
海未「ほら、穂乃果」
穂乃果「……いらない」
海未「駄目ですよ、無理にでも食べなくては」
穂乃果「……いらないって!! 友達の肉なんか食べたくないよ!! 」
凛「へ? 友達……?」
花陽「ほ、穂乃果ちゃん……何言ってるの? 」
穂乃果「そっか、食べてて気づかなかったんだ……そうだよね、想像もできないもんね……海未ちゃんが持ってきたお肉が人間の肉だなんて」
凛「に、人間の……」
花陽「肉……?」
海未「……っ!! 」
凛「そ、そんなわけないにゃ……」
花陽「そうだよ……人間の肉だなんて……」
穂乃果「本当だよ、最初に海未ちゃんが持ってきたのがことりちゃん……」
穂乃果「そして今二人が食べてるのは多分、真姫ちゃんだよ……」
海未「ち、違います!! これは絵里の肉です!! 」
凛「おぇぇぇっ……!!」
ビチャビチャッ
花陽「げほっ……!! げほっ……!!」
穂乃果「そっか、絵里ちゃんまで……」
海未「はっ! しまった……!! 」
穂乃果「やっぱり近くにいたんだね……」
海未「ぐっ……」
穂乃果「海未ちゃん、最低」
海未「最低です!! 貴女は最低です !!」
穂乃果「え? 」
海未「ことりを殺したこと黙ってるって約束したじゃないですか!! なのに ……」
穂乃果「……うん、今まで二人に本当のこと黙ってた穂乃果も悪いよ」
凛「穂乃果ちゃん……」
穂乃果「だから海未ちゃん、一緒に死のう? 」
海未「な、何を言って」
穂乃果「もう嫌だよ……海未ちゃんの手が血で染まっていくのなんて……」
海未「わ、私は貴女の為に……」
穂乃果「わかってる、ありがとう。海未ちゃん、でも……もう終わりにしよ? 」
海未「ほ、穂乃果……」
穂乃果「ごめんね、海未ちゃん」
グサッ
海未「かはっ……ほ、ほの……!! 」
ドサッ
凛「穂乃果ちゃん……それって……」
穂乃果「ことりちゃんの骨だよ、ごめんね……ことりちゃん、また痛い思いさせちゃって」
穂乃果「穂乃果たちももうすぐそっちに行くからその時、謝るね……」
海未「」
ズルズル……
花陽「穂乃果ちゃ……そっちは崖……」
穂乃果「ごめんね、助けてあげられなくて」
凛「穂乃果ちゃぁぁんっっ!!!!」
穂乃果「ばいばい、かよちゃん……凛ちゃん……」
海未「」
ヒューンッ……
花陽「あ、あぁ……っ」
凛「うっ、うぁぁぁんっ!! 」
希「また星が一つ……いや二つ、散っていったみたいやね」
にこ「にこー……?」
希「何でもあらへんよ……」
凛「これからどうしたらいいのかなぁ ……?」
花陽「さっき穂乃果ちゃんと海未ちゃんが言ってたことが本当なら……」
凛「え? 」
花陽「絵里ちゃん……はもう死んじゃったみたいだけど、絵里ちゃんがいたってことは……」
凛「希ちゃんとニコちゃんも近くにいるってこと!? 」
花陽「多分、そうだと思う」
凛「行こう! かよちん! 」
花陽「えっ……? でも怖いよ……」
凛「大丈夫! 凛がついてるにゃ! 死んでいったみんなの為にも絶対に二人を助けよう!! 」
花陽「うんっ!! 」
凛「よーしっ! 突っ走るにゃー!! 」
花陽「ま、待ってぇぇ!! 」
凛「はぁ……はぁ……!! 」
花陽「ここ……?」
凛「凛たちがいたとこと同じような洞窟だにゃ、奥に行ってみよう」
花陽「だ、誰かいますかぁぁ!! 」
凛「……」
花陽「……」
凛「先へ進むにゃ」
花陽「うんっ! 」
凛「あっ……」
花陽「ニコちゃん!? 」
にこ「」
凛「冷たい……、ニコちゃん!! ニコちゃん!! 」
花陽「ニコちゃん!! しっかりして !!」
にこ「んっ、にこー……」
花陽「よかった……衰弱してるだけみたい」
凛「でもまだ予断は許されないにゃ」
にこ「あれ……? 凛ちゃん……かよちん……?」
花陽「ニコちゃん! 気がついたんだ !!」
にこ「希……ちゃんは……?」
凛「凛たちが来た時にはいなかったけど……」
にこ「そう……」
それから一週間以上経っても希ちゃんが戻ってくることはなかった
にこ「にっこにっこにー☆ 」
花陽「ニコちゃんもすっかり元気になったみたい」
凛「でも凛たち一生ここで洞窟暮らしなのかなぁ? 」
花陽「住めば都っていうけど出来ることなら東京に帰りたいよね」
にこ「ねぇ、何か聞こえない? 」
バリバリバリバリ……
凛「こ、これはラーメンの匂い!? お腹すいたにゃ……」
花陽「違うよ、凛ちゃん! ヘリコプターの音だよ!! 」
にこ「やっとニコたちを救助しに来たのね! 」
凛「あれ? でも遠ざかっていくよ? 」
にこ「みんな! 大声出してニコたちの存在をアピールするのよ!! 」
にこ「にっこにっこにー!!!! 」
凛「にゃんにゃんにゃー!!!! 」
花陽「ダレカタスケテェェェェ !!!! 」
【雪山遭難編 end】
このSSまとめへのコメント
作者、貴様は死刑決定
これで終わりだと?
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