提督「いじめ…ねぇ」
明石「はい」
提督「まあ女所帯だしこっちが認識できないレベルのものがあっても驚かないけど…」
明石「そんなちょっとしたいたずらって程度のものじゃないみたいです。その子の話を聴くには」
提督「その子?」
明石「…すいません。この話が誰かに聞かれてないとも限らないので」
提督「でも、なんでわざわざ明石に相談したんだ?」
明石「わたしって直接戦闘に関わるわけじゃないですし、基本工房にこもってますから」
提督「中立で他人に漏らす心配もなく、2人だけになれる状況を作れるってことね…了解。明石はそのまま、通報した子の話とかを聞いてみて。俺は俺で探りを入れるけど望みは薄いだろうなぁ…」
明石「わかりました。今のこの話はどうします?」
提督「改修の話をしてたとでも吹いとけ…はぁ、なぜ転勤まであと二ヶ月前だってのにこんなことになるかね」
明石「大本営に行く前にキズはつけたくなかったですか?」
提督「まさか…そんな単純な話じゃないさ」
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提督「しかしなぁ…」
ワーキャー
提督「とてもじゃないがそんな雰囲気は見えん…もう少し明石から話を聞けばよかったか…?」
提督「まあ可能性としては…明石が『その子』って言ってたということは戦艦や空母ではないな。ってことは数の多い駆逐、日常的に出番の限られる軽巡…ウチではなぜか脳筋ばかりの重巡組は可能性は低めか…?」
提督「まだガキの駆逐っ子なら時期にボロが出るだろうし数が多いだけに首謀者も共犯も絞れない…まあ話聞くなら軽巡の…こう言うのとは無縁そうな…でも機微に敏いやつだな」
球磨「何の用クマ?」
提督「少し聞いておきたくてな。お前の発言で軽巡駆逐の立場が変わるかもってことだ」
球磨「それは…また穏やかじゃないクマ」
提督「まあそう構えるな。聞きたいことは一つだけでな…ここ最近お前の周りで変わったことや気づいたことはないか?」
球磨「…球磨が把握してるのは昨日また羽黒と加古が殴りあったことぐらいクマ」
提督「また面妖な組み合わせだな」
球磨「加古のプロテインを誰かが勝手に飲んだらしいクマ」
提督「なるほど分からん…まあそっちは勝手に解決するだろうな」
球磨「したクマ。長門が犯人だったクマ」
提督「もう捕まってるならなおさら出しゃばるわけにもいかん」
球磨「…多分提督が聞きたいことは球磨より天龍とかの方が詳しいクマ。なぜそっちに聞かないクマ?」
提督「…あいつは優しいが不器用すぎる。今回のようなことには向いてないだろう」
球磨「そうかクマ…」
提督「邪魔したな」
球磨「クマ~」
提督「球磨であれなら少なくとも軽巡ではないな」
明石「…ここでその話をして大丈夫ですか?」
提督「青葉に設えてもらった部屋だ。安心しろ」
明石「青葉さんに話したんですか!?」
提督「あいつはジャーヤリストとかいってパパラッチ紛いの事をしてるがそれでも馬鹿ではない。言いふらしていいことかどうかはわきまえてるよ」
明石「…それで、なぜ軽巡ではないと?」
提督「お前に相談してきたのは駆逐艦。それも主犯でも共犯でもなく第三者だ」
提督「理由としては二つ。球磨の態度とお前の言葉…まあ今の所持ってる情報がそれだけというだけだがそれで十分だ」
提督「球磨には軽巡全体の取りまとめを頼んでる。天龍と龍田には駆逐のお守りがあるからな」
明石「それで、球磨さんはなんと?」
提督「あらかじめ『軽巡駆逐の立場』と前置きをしたにもかかわらず話したのは重巡の話だった。これは言外に球磨が処理できる範囲内のことしか起きていないことを指している」
明石「それだけですか?それでは流石に…」
提督「今回俺が考えていた可能性はこれまた二つ。駆逐艦の集団いじめか、軽巡の個人的いじめ」
提督「さらに軽巡だった場合は被害者が木曾だと考えていた。球磨が妹の変化に気づかないわけがないだろう?」
明石「別に他の人の可能性だって…名取さんとか」
提督「名取が被害者なら本人でもない限り長良や五十鈴の方に話しに行く可能性が高い。そもそもお前に相談しに来ないだろうさ。それにその口ぶりだ。間違いない」
明石「その本人の可能性も」
提督「被害者の言葉ってのは想像以上に重みがある。俺に話をする前に青葉にでも証拠集めを頼んでるだろうさ。それくらいの行動力はあるだろう?俺に話をしたってことは扱いに困ったってことだ」
明石「…」
提督「イエスノーで答える必要はない…というのは今更か」
明石「…ですね。相談に来たのは」
提督「朝潮だろう?」
明石「えっ…」
青葉「失礼しますよ」
提督「お、早かったな」
青葉「そうですね…司令官のやな予感が当たってしまったので」
提督「やはりそうか…」
明石「やな予感…?」
提督「悪魔ってのは悪魔の顔をしてないから悪魔なんだよ」
~一ヶ月後~
球磨「クマー…戻ったクマ」
天龍「戻ったぞ…」
提督「どうだ?あれから」
球磨「今の所はギリギリ持ってるクマ…」
提督「そうか」
天龍「なあ、なんだよあれは」
提督「まだいうか…」
天龍「あれじゃいじめの対象が変わっただけじゃねえか!」
提督「そうだ。朝潮たちをいじめの対象にさせた」
球磨「球磨もあれに意味があるとは思えないクマ」
提督「そうだな。だが朝潮を処罰するだけでは意味がない。被害者の心の傷も癒えないまままた新たにいじめが起きるだけだ」
天龍「新たないじめが起きるって、現に今もそうじゃねえか!何が違うんだよ!」
提督「こちらが被害者を把握できる。生きるか死ぬかのこの地で大切な団結力を作らせることも出来る。敵意…悪意の矛先を操作しただけだ。かのアドルフ・ヒトラーのようにな」
球磨「最低だな…クマ」
提督「だが効率的だ。今までやってきたことのしっぺ返しも食らってる。事の重大さを理解するには十分だ」
球磨「それでも、あの子達はあのままだと自ら命を絶つクマ」
提督「そのためにお前らには被害者の監視をして貰ってるんだ」
天龍「ハッ、血迷いそうになったら止めろってか?」
提督「違う。その5歩手前で俺に教えろ」
天龍「…は?」
提督「最後の仕上げだ」
ー三週間後ー
天龍「おい!クソ野郎!」
提督「とうとう提督とすら呼ばれないのか」
天龍「どういう事だよ…あいつらが死んだってのは!」
球磨「説明するクマ!」
提督「わかっている…が、これは軽巡までで留めて欲しい。その上で軽巡全員に話して欲しいんだが…」
天龍「これが仕上げってんなら俺はてめえを殺す!」
提督「落ち着け。まず、あいつらは死んでいない。内地にある精神療養所で治療を受けさせに行った。終われば別の鎮守府か警備府あたりに再転属だ」
球磨「…どういうことクマ?憲兵の話では遺書があったと…それも朝潮の筆跡でクマ」
提督「俺があいつらに書かせた」
天龍「どういうことだ」
提督「謝罪の手紙って事でな。『私達は自らが犯した罪の重さを痛感し、この身をもって償うことにしました。本当に申し訳ありませんでした』だったかな」
球磨「まさしく遺書クマ」
提督「これから行くところは刑務所みたいなもんだと説明してこれを書かせたからな」
球磨「…それをどうするクマ?」
提督「遺書として駆逐艦どもに聞かせる」
球磨「…そういうことかクマ」
提督「ああ。しばらく遠征は出来ないな」
天龍「…チッ」
提督「さて、そろそろ俺も行くかな」
天龍「逃げんのかよ」
提督「タイムリミットだよ。安心しろ。次の提督は元精神科の医者だとよ」
球磨「…今まで球磨は提督のことを優秀で優しい人だと思ってたクマ」
提督「そうか。お眼鏡に叶わず申し訳ないな」
球磨「クソ提督…クマ」
少尉「お待ちしておりました。大佐」
提督「おお、待たせた。君も着任は来週だろう?」
大尉「はい。ですが引き継ぎのこともありますし」
提督「…そうか。わざわざすまないね」
大尉「いえ…」
提督「さ、行こう。少尉、車を出してくれ
少尉「はい…おや?あれは…」
提督「明石…」
明石「はあっ…はあっ…」
提督「どうした?何か伝え忘れでもあるのか?」
明石「このっ…」
パアンッ!
提督「…」
少尉「貴様、大佐に何をしている!」
提督「構わん」
少尉「ですが…」
提督「構わんと言っている」
少尉「は、はい…」
提督「行くぞ」
明石「あなたは…あなたはクソ野郎です!」
提督「…なあ」
大尉「なんでしょう」
提督「お前には俺がどう映る?」
大尉「…素晴らしいお人かと」
提督「世辞はいらん」
大尉「はあ…では、随分とお変わりになられたなと。随分と堅苦しくなられた」
提督「そうか?」
大尉「少なくとも二ヶ月前にお会いしたあなたは…この海軍を変えてくれる。そう予感させるような方でした」
提督「はは…買い被りだよ」
大尉「ですが今のあなたは、あのとき感じられたオーラのようなものが感じられない」
提督「もし…本当に君にそう見えたなら…それは私が自覚したからだろうね」
大尉「自覚ですか…?」
提督「ああ。自分が無能だとね」
提督「…あとは任せたよ」
大尉「…はい」
おわり
乙
少し解説がほしいけど、そういうのは野暮か?
これにておしまいです。朝潮提督の方々ごめんなさい。
いじめというデリケートなテーマをいかに陰鬱に、かつ残酷に伝えられるかを考えた結果こうなりました。色々梳いてます。
普段は艦娘たちにイチャイチャさせたり野球やらせたりしてます。真剣だったりふわふわだったりとこれとは全く逆の雰囲気なのでこれがダメでも良かったらチラ見だけしてってください。
では、また何か思いついたら
乙
何を書きたかったのか判らなかったな
ある程度想像は出来るけど、それを固める素材が少なすぎる
このSSまとめへのコメント
いじめの現場の裏側を描いたのかな。でも情報が少ないから突然終わったという印象を受けたよ、少しは現場も描写してくれたらね。