モバP「カミさんと英語禁止ボウリング」 (32)
モバP「旧姓、神谷奈緒」
モバP「旧姓、神谷奈緒」 - SSまとめ速報
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の続きのような色々吹っ切れた何かです。
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ガコーン! 俺の右手から放たれたボールが10本まとめてピンを吹き飛ばす。
「うっし! ストライク!」
うん、やっぱり決まると気持ちがいいな。ボウリングの醍醐味はストライクを決めることだ。俺はカミさんとハイタッチしようと後ろを振り向くと、ニヤニヤと笑っているではないか。なんだ……あっ。
「はいアウトー!! 今ストライクっていったー!」
「や、やってしまった……ついつい気分が良くなって言ってしまった……」
がっくりと膝から崩れ落ちる。そうだ、今俺たちがしているのは普通のボウリングではない。ある条件のもと、俺たちはやっているんだ。
「やーいやーい!」
「って奈緒。さっきの台詞もっかい言ってみ?」
「へ?」
「いや、俺が失敗した時に煽ったやつ」
「はいアウトー、今ストライクっていったー、ざまぁ見……あぁ!?」
「気付いたか奈緒、お前合計4回も言ったんだ! ほら、罰ゲームだぞ」
「今そっちも言った! ゲームって言った! ってあたしも言ったー!?」
そう、俺たちは英語禁止ボウリングをしているのです。
ことの発端は昨日の夜のことだった。
「なー、明日仕事休みだったっけ?」
「あぁ、そうだけど」
風呂上がりに寝室に入ると奈緒は既にベッドに無防備に寝転がってスマホをポチポチとしている。こっそり覗き見ると、どうやら凛と加連とLINEをしているようだ。そういや凛、今日本に帰って来ていたんだっけ。
「実はさ、今日商店街の福引があたってさ」
「福引?」
「うん。なんかイベントやってて、それであたしも引いたんだけどんっ……」
奈緒の隣に俺も寝転ぶと甘く心地よい香りが鼻をくすぐる。シャンプー変えたのか、なんて思いながら髪の毛を手櫛で梳かしてやる。
「好きだよなー、それ」
「そりゃな」
同棲を始めた当初は奈緒も恥ずかしがったりビックリしたりしていたけど、それなりの時間を一緒に過ごしてきたからか最早それが当たり前のように受け入れていた。たまにちょっとくすぐったそうに身をよじらせるけど。
「ボウリングの無料券貰ったんだ。ほら、駅の方にあるボウリング場の」
「ああ、あそこか」
奈緒が言っているのは駅前にある古いボウリング場のことだろう。俺が生まれる前に起きたブームの時代から続いているらしい古い店舗だけど、この辺では数少ない娯楽施設なので老若男女問わず人気のある場所だ。
そういえば、奈緒と付き合い始めた頃にも何回か行ったことがあった気がする。
「1ゲーム無料で出来るから一緒に行かないかって思って。たまにはボウリングも悪くないだろ?」
「そうだな。せっかくの無料券を腐らせるのも悪いし明日行くか」
「へへっ、やった! 最近旦那様も忙しくて遊べてなかったし、久しぶりのデートだな」
可愛いことを言ってくれるじゃないか。髪をクルクルと弄っていた腕を何となく広げると、そこに心地よい重みが加わる。より近くで、奈緒の体温と息遣いを感じる。
「つーわけだから、明日は楽しもうよ」
「だな」
何となく、目の前の彼女が愛おしくなってそのまま抱きしめる。奈緒も答えるように、腰に腕を回す。ただそれだけで、俺たちは多幸感に包まれていた。
「あっ、やば! アニメの時間だ!」
……色気もへったくれもないけど。
ガコーン! とピンが倒れる音がホールに響く。俺たち以外にも無料券を持っていた客がいたのか、中々の盛況っぷりだ。
「久しぶりだなー、ボウリング。なぁ、勝負しようぜ勝負。負けたほうはジュースおごるってことで」
朝からカミさんはこの調子で大きな子供がついてきたみたいだ。家を出る前もイメトレなのかシャドウボウリングをしていたぐらいだし。
「今日のあたしは調子がいいんだ。なんなら全部ストライクとっちゃうかもなー? どうよ、あたしに勝つ自信ある?」
ただ、普通に勝負するだけじゃあ面白くない。
「それはいいけど1つルールを付けるぞー。ボウリングが始まったら、英語カタカナを一切口にしてはいけない。口にした分ペナルティポイントが貯まって、それが10個溜まると相手の命令を一つ聞く」
「英語ダメって、なーんか聞いたことあるぞそれ。そもそも罰ゲームってそんなのだっけ?」
そう、昔やっていたお正月の番組の名物企画英語禁止ボウリングである。番組では英語を言うたびに罰金だったけど俺とカミさんは夫婦なわけだからペナルティをアレンジしてみた。
「もちろん命令は絶対な。思いっきり恥ずかしい命令してやる」
昨日カミさんがボウリングに行こうと言った時から、俺は準備していたのだ。プロデューサーとして、夫として奈緒の恥ずかしがるツボはちゃーんと抑えている。
「! それが狙いかよ! 嫌だぞあたしは!!」
おや、ノリが良くない。これじゃあカミさんが羞恥に身をよじらせる姿が見られないではないか。
「でも考えてみろよ奈緒。もし俺が5回ミスってしまえば、俺になんでも命令できるんだぞ? ここで素っ裸になれっていうのなら従わざるを得ないんだ」
「いや、しないからね! そんな公序良俗に反する命令しないから!! でも……いつも旦那様に良いように遊ばれてるから、たまには反撃してもバチは当たらないよな? いいぜ、やってやろうじゃねえか! その勝負乗った!」
「さすがマイハニー! 話がわかるー」
「マイハニー! 英語使ったー! ペナルティ2だぜ!」
「まだ始まってないし奈緒も今思いっきり英語使っていたぞ?」
「あーーー!? こ、これはなかなか難しそうだぞ……?」
英語やカタカナというのは日常的に口に出すもので意識して言わないようにしても出てくるものだし、ボウリング場なんてあちこちに英語がある。ボールでピンを全部倒してストライク、外せばガター……。
カミさんで遊びたい一心で提案したのはいいものの、油断をしようものならあっという間に命令されてしまうだろう。
だからその前に、カミさんに英語カタカナを言わせるように動かなければならない。恐らくカミさんも同じことを考えているはずだ。
「いいか、俺がスタートって言ったらもう英語はしゃべれないぞ? 今のうちに思う存分英語とカタカナを口にしておくことをおすすめしておくぞ」
「そっちこそ。あたしのここぞの勝負強さ舐めちゃいけないなぁ?」
「言うじゃないか……それじゃあ行くぞ。スタート!!」
こうして俺とカミさんの仁義なき英語禁止ボウリングが始まったのだった。
「そらっ! ってありゃ?」
大見得を切ってはみたものの、ボウリングなんていつぶりだろうか。投げたボールはレーンを斜めに転がっていき溝へと吸い込まれていく。
「うーん、まだ調子が出ないな」
「やーいやーい、ガターだー!」
「くぅ……」
俺が一本も倒せなかったのが滑稽だったのか、カミさんはケタケタと笑っている。しかしどうやら早速ルールを忘れてしまったようだな。
「なーおー」
「おっ? なんだなんだー?」
「ペナルティ1な」
「……ああっ!!」
言われてカミさんは気付いたのか慌てて口を両手で隠す。そんなことしても言ってしまった事実は隠れないぞ。
「くそー、油断してた……どう呼べばいいんだよあれ。溝落ちって言えばいいのか? それじゃあ鳩の尾って書いた鳩尾になるよな……って待てよ、あたしはちゃんと聞いたぞ!?」
「聞いたって、何をだよ」
「ペナルティって言っただろ!」
「!」
あっ、やっちゃった。うーん、これは下手に煽らないほうがよさそうだな。気がついたら自滅してしまいそうだ。
「これでアンタも1……ってあああ!! あたしのばかー!」
……ものすごい自爆を見てしまった。一度ドツボにはまると抜け出せなくなる。それが英語禁止ボウリングの恐怖なのだ。
「あっと2回! そーれあっと2回!」
「だー! はやし立てるなー! さっさと投げろー!」
「投げるって、何を?」
「玉だよ! たーまー!! 引っかかるかばーかばーか!」
おっ、引っかからなかったか。開始5分もしないうちにペナルティ3となったもんだからカミさんも少々神経質になっているのかもしれない。
「タンタンタン♪タンタンタン♪たま」
「ホっていうかー!! 油断も好きもないなー!!」
ちっ、ハッピーライフハッピーホームタマホーム作戦は失敗か……。
「野々村そらっ! むー、4本か。こっから巻き返さないと」
今回のメインイベントはカミさんで遊びつくしたいというのがあるのでスコアはさほど重要なものでもないが、やはり年上の旦那様としてはこういうところでもイニシアチブを取りたいものでして。
「あたしを煽ろうとするからそうなるんだよーだ。まっ、見ててよ。見事……全倒ししてみせるから。どりゃっ!」
そう言ってカミさんは綺麗なフォームでボールを放つ。まっすぐ転がったボールはピンを心地いい音を立てて倒すも、7番と10番……一番後ろの両サイドが無事という厄介な残り方をしてしまう。たしかこれ、スネークアイとか言われる奴だ。
「うげー、嫌な残り方したなー。えいっ! あー……やっぱダメかぁ。一本倒れてくれたらラ……嬉しいぐらいでいたけど」
「あらま、残念」
右端の10番ピンを弾いて7番を倒そうとしたのだろうが、ボールはそのまま溝に落ちてガターになってしまう。
「投げる方向は悪くなかったんだけどなあ」
「端っこと端っこだぜ? あんな残りかたされちゃ無理無理、素人にはキツいっての。ほら、次は旦那様の番だよ」
とそんな感じで今に至るのだけど――。
「今そっちも言った! ゲームって言った! ってあたしも言ったー!?」
これで俺は3ペナ、カミさんは一気に8ペナ。つまり……。
「くぅ……命令されてしまうのか」
「ふっふっふ、決まりは決まりだからな」
お待ちかねの罰ゲームタイム! この時のために今日を楽しみにしていったといって過言ではない。きっと今の俺はこのボウリング場にいる誰よりも邪悪な笑みを浮かべていたに違いない。
「へ、変な命令するなよ!? ジュース買うとかそういうやさしめーな」
「はい、今ので9回」
「んなー!? せめて罰ゲーム中はノーカウントにしろよ!!」
「しません。10、11、12ー」
「どツボにはまったーーー!!」
そしてカミさんは、ここにいる誰よりも叫んでいて、可愛らしく弄りがいがあるのです。
「さーて、どうしようかなー。2回分あるからきっついおしおきしようかなー?」
「ほんとお願いだから! 一応あたしにも世間体があるんだから! 対魔忍の真似しろとかそう言うのやめてよ!」
「いや、俺だってしないし……そういうのは違うかなーって」
流石にカミさんと対魔忍ごっこは……今度試してみるか。
「今ありかも、って考えただろ? そんなことしてみろよ! 離婚するからな!」
「そ、そんなことないぞー? っとちょっと待ってろよー」
「お、おいー! どこ行くんだー?」
明らかに困惑している奈緒を背に俺は一旦退店する。流石にアレを持ったままここに入ったらバレバレだもんな。
「あっ、戻ってきた。どこいってたんだよ」
「ああ、罰遊戯の準備をしててな」
「罰遊戯って。言いたいことは分かるけど無理くりすぎないかそれ……ってなあ。気のせいかな? アンタが今持っているもの、もんのすごーーーく見覚えが有るんですけど」
「まあ、そりゃそうだろうなぁ。家から持ってきたし。ご奉仕服」
「バーーーーーーーーーーーーーーーーッカじゃねえの!?」
ボウリング場にカミさんの絶叫が響き渡った。楽しく英語を禁止していないボウリングをしていた周りの人もなんだなんだ? とこっちを見ているが、元アイドル神谷奈緒がこんな所にいると思わなかったのだろう。すぐに興味をなくしてボウリングに戻る。
そう、今俺が奈緒に渡したのはかつてアイドル時代にステージで着たメイド服。いやぁ、あの時の恥じらいメイドさんは実に可愛かったなぁ。
「つーかいつの間に用意したんだよこれ! クローゼットの中から出したのか!?」
「はい。英語使ったー、13回」
「だからこういう時は数えるなよー!」
「ちなみに他にもあります」
「準備良すぎだろ!?」
「はっはっは。敏腕営業野郎ですので」
「営業野郎って……伝わるけどさぁ……」
実は昨日の朝、奈緒が寝た隙に昔のアイドル衣装をいくつか持って駅の近くのコインロッカーに隠しておいたのだ。アイドル衣装は別のクローゼットに入れていたので、奈緒もなくなっていたことには気づいていなかっただろう。
「くぅ……そこまでしてあたしを辱めたいのか旦那様は」
「おうとも!」
「即答するなよ! もっと奥さんを大事に扱えよーバカ亭主―!」
顔を真っ赤っかにしてポカポカと叩いてくるカミさんは実にあいくるしい。
「馬鹿言っちゃいけないぞ。この世界中で俺ほど奈緒を愛している人が居ると思うか?」
「お父さんとお母さん」
「お義父さんとお義母さんは除いて!」
それを言われると流石に勝ち目が薄いぞ。
「な、なぁ……本当に着なきゃダメか? あたし、もう25歳だぞ? 四捨五入したら30なんだけど……いや、でもあの人今でも着てるしなぁ」
最後にボソッと付け加えたのを聞き逃さなかったぞ。今もなお17歳を貫くあの人のことでも思い出したんだろうな。
「つべこべ言わず着なさい」
「これ着たの何年前だと思っているんだよー。しかもこんな所でメイド服とか……」
「14回」
「給・仕・服!!! 絶対皆に笑われるって! そりゃあ、2人っきりなら考えてやらなくはないけどさ……って何言わせんだよ!」
「いや、俺は何も言ってないし!」
「はぁ……着ないと色々面倒なんだろうなぁ、分かったよ。着替えてきます」
「っしゃあ!!」
流石にカミさんも観念したのか、恨めしそうにお手洗いに入っていく。ちなみにここのボウリング場は罰ゲーム用なのかコスプレ衣装もいくつかあるらしく、ふと見渡すと女子高生の制服を着た兄ちゃんがストライクを取っていた。メイドさんが1人来たところでそこまで注目を浴びることもないはずだ。
「おお……」
「き、着たぞ……これで文句ないだろ」
着替えを待つこと20分。その間にカミさんの中で葛藤があったに違いないが、約束通りモジモジとした様子で出てきたカミさんはいつか着たメイド服を完全に着こなしている。可愛さを保ちながらも美しい大人になった彼女の放つアンバランスな色気にクラクラとしてきた。
そしてカミさんは、俺を確実に[ピーーー]セリフを吐いたのでした。
「……ご主人様」
「ブ、ブラボー!! 最高だよ奈緒ー!! ラブリーだ!!」
「うわっ! 抱きつくなー! みんな見てるだろー!」
周囲の人達はなんてバカップル! と思っているかもしれないし俺の顔は気持ちわるいことになっていたはずだ。でもね、目の前に恥じらうメイドさんがいて我慢ができるかって話――
「おお……」
「き、着たぞ……これで文句ないだろ」
着替えを待つこと20分。モジモジとした様子で出てきたカミさんはいつか着たメイド服を完全に着こなしており、可愛さを保ちながらも美しい大人になった彼女の放つアンバランスな色気にクラクラとしてきた。
そしてカミさんは、俺を確実に殺すセリフを吐いたのでした。
「……ご主人様」
「ブ、ブラボー!! 最高だよ奈緒ー!! ラブリーだ!!」
「うわっ! 抱きつくなー! みんな見てるだろー!」
周囲の人達はなんてバカップル! と思っているかもしれないし俺の顔は気持ちわるいことになっていたはずだ。でもね、目の前に恥じらうメイドさんがいて我慢ができるかって話――
「ってあれ? 今さっき、言ったよな?」
「ん?」
「いや、あたしが戻ってきて……」
『ブ、ブラボー!! 最高だよ奈緒ー!! ラブリーだ!!』
「……あっ」
完全に忘れていた――。カミさんはさっきまでの恥らいは何処へやら、一転攻勢ニヤニヤとイタズラを思いついた子供みたいに笑っている。ペナルティ5ってことはつまり……。
「そっちも罰遊戯だぜ、旦那様。ざまーみろ!」
「い、いやー。さっきのはノーカン、じゃね? だって奈緒が可愛すぎてほかの言葉が思いつかなかったし……」
「勝負は勝負だろ、旦那様。2つの単語を略しているから今ので7回か? どっちにしても、あたしの命令聞いてもらわないといけないなぁ」
「む、むぅ……」
自分で決めたルールである以上無視するわけにいかない。まぁカミさんの性格からして、ジュース買って来いとかそんなのだろう……。
「命令! アンタも給仕服着ること!」
「……は?」
今この人、なんって言った?
「あたしと同じ格好するんだよ。分かったなら着替えてこいよー!」
「いやいやいやいや! おかしいだろ!?」
思わぬ反撃についつい声を荒らげてしまう。カミさんがメイド服を着るのはよーくわかる。今でも似合っているし。でも30歳の男性が着たらどうなる? 完全に不審者じゃないか! 想像するのも憚れてしまう。
「命令は絶対、だろ? あたしにだけ着させといて自分は着ないとか旦那様、それはちょーっと頂けないぞ? 失望しちゃうなー」
「ぐ、ぐぐぐ……」
結局俺はカミさんに押し切られる形でメイド服を借りて着る羽目になってしまった。
「お、お待たせ……しました、お、お……お嬢様」
「あはははは! 似合ってる似合ってる!」
メイド服を着た夫婦がボウリング場にいる。実にシュールな光景だ。カミさんは心底面白そうに手を叩いて笑っている。俺は全く面白くない!
「く、屈辱だ……」
カミさんを羞恥に悶えさせる為だけに用意はずの罰ゲームだったのに、どうして俺がこんな格好をせなならんのだ……。
「あっ、凛と加蓮にLINEで送っとこ」
「こ、こらやめろぉわぁ! いてて……」
パシャリと写メを撮られてしまいカミさんのスマホを取り上げようとするも足を滑らせずっこけてしまう。するとどうなるか、スカートの中が見えてしまったらしくカミさんは気まずそうな顔を見せる。
「わー、嬉しくないパンチラ……」
「やかましいわい!」
「でもこれであたしが普段あんたにどんな目に合わされてるかわかっただろ? この英語禁止ボウリングは夫婦の相互理解を深めるために必要だったんだよ、うん」
うんうんと一人納得するカミさんと対照的に、そもそもの提案者である俺は不服以外の言葉が浮かんでこない。ほんの数分前まで立場は逆だったんだけどなぁ。
「旦那様に給仕服着せて何がわかったんだよ……」
「弱みをひとつ握れたからなー。もし浮気なんてしてみろ、この写真をあちこちに拡散してやるからな!」
浮気をする心配なんて万に一つもないのだけどカミさんの手元にこの写真があるのは困る……! あっ、そういえば。
「奈緒、罰遊戯の時間だ。さっきの写真を消しなさい」
「おいおい、あたしのことはお嬢様って……えっ?」
「おいおい、さっきから3回ほど英語カタカナを使っていたぞ? まだこの勝負、終わってないからな」
「あーーーー! やってしまったー!」
やっぱりカミさんは攻める側より攻められる側の方が板についているな。
「あっ、でも凛と加蓮にはもう送っちゃった」
「なにしてくれてんの!?」
と、そんなこんなで両方恥ずかしい目にあった英語禁止ボウリングでした。
後日、遊びに来た凛と加蓮に夫婦ともども遊ばれたのは言うまでもないだろう、うん。
終わり
短いですが以上になります。途中でルール変えて申し訳ございません。読んでくださった方、ありがとうございました。それでは失礼いたします。
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