北条加蓮「藍子と」高森藍子「秋染め?」 (45)

――おしゃれなカフェ――

高森藍子「ごちそうさまでした」テヲアワセ

北条加蓮「ごちそうさまでした」テヲアワセ

加蓮「ふぅ。……あはは、ちょっとお腹いっぱいかも」

藍子「いつもの定食なのに、ご飯、大盛りでしたよね」

加蓮「だよね」

藍子「……あっ! 見てください加蓮ちゃんっ。ここ、皿の隅っこ!」

加蓮「んー? わ、紅葉がある。ちっちゃな紅葉」

藍子「ちいさな紅葉、可愛い……♪」

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――まえがき――

5分間くらい高笑いをしていたら喉が潰れました。

レンアイカフェテラスシリーズ第34話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

~中略~

・北条加蓮「藍子さんと」高森藍子「7月25日のカフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「暑い日のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「また同い年になって」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「ラテアートを注文しながら」

藍子「すみませーん。レモンティーをおひとつ、お願いしますっ。加蓮ちゃんも何か飲みますか?」

加蓮「んー……んーん、いい。ホントにお腹いっぱい」

藍子「じゃあ、レモンティーだけでっ」

……。…………。

藍子「ごくごく……」

加蓮「藍子が飲んでるの見るだけでもお腹いっぱいになるよ……」オナカヲサスル

藍子「本当に大盛りでしたよね。そういえば……気のせいか、加蓮ちゃんがちょっぴり丸く見えるような?」

加蓮「嘘っマジ!?」ガバッ

藍子「きゃっ。あ、あはは、きっと気のせいですよ。さっきいっぱいご飯を食べてたからそう見えちゃっただけですっ」

加蓮「そ、そっか。もー。藍子も言うね」

藍子「ごめんなさい~。でも加蓮ちゃん、モバP(以下「P」)さんからいっぱい食べるようにって言われていましたよね。だから、ちょうどいいかなぁ、なんて……」

加蓮「それは藍子もでしょ? だいたい私は食べたくてもそんなに食べられないし」

藍子「食欲の秋だーっ、って、ここのところPさんがいっぱい食べちゃってます」

加蓮「メタボ一直線だよー、って言っても笑って流されるし」

藍子「Pさんを見ていると、私までお腹が空いてきちゃって……」

加蓮「藍子の方こそ体重増えたんじゃない? ほら、ほっぺた辺りがなんとなく丸く――」

藍子「そう言われると思ってっ」

加蓮「お?」

藍子「昨日、試しに体重計に乗ってみたんです。ぴったり42kgでした!」

加蓮「そっかー。そういえばみんな、最近は体重計が怖くなったとか言ってたなぁ。……加蓮ちゃんは輪の外だ」

藍子「みなさん、加蓮ちゃんを羨ましがっちゃいますね」

加蓮「こんな不便な身体ならいつでも代わってあげるってばー」

加蓮「体重はどうせ増えてないんだろうけど、さっきのご飯、ホントに多かったなぁ」

藍子「店員さん、いっぱい食べてくださいって顔をしてました」

加蓮「まぁたぶん……アレだろうね。いつの間にか内装に追加されてる」

藍子「大きな文字で、『食欲の秋!』って」

加蓮「トレンドなのかなぁ、食欲の秋」

藍子「ふふ、びっくりマークまでついてるっ」

加蓮「アレ絶対自作だよ。あんな……掛け軸? じゃなくて……えーっと……とにかくあんなの絶対に市販じゃないよ」

藍子「すごく手書きっぽい字ですよね」

藍子「私も、今度何か書いてみようかな……? ふふ、お正月の書き初めみたいを思い出しちゃいました」

加蓮「秋だとなんて言うんだろうね。秋初め? ……秋染め?」

藍子「紅葉みたいっ」

加蓮「紅葉染め」

藍子「カフェがぜんぶ紅葉色になっちゃったら、きっとすてきな光景になりますね」

加蓮「目に痛いよ、それ」

藍子「……加蓮ちゃん、夢が無いです」プクー

加蓮「ごめん」

藍子「事務所に戻ったら、秋染め、やってみますか?」

加蓮「マジで秋染めで行くんだ。いいけど藍子、何書く?」

藍子「そういうのは内緒にしちゃいましょう。先に教えてもらってたら、楽しみが減っちゃいます」

加蓮「それもそっか。私は何書こっかなー? ……って、秋染めってどういうことを書けばいいの?」

藍子「……そういえば」

加蓮「書き初めは抱負とか目標とかだよね。秋に書くことと言ったら――」

藍子「食べたい物の名前?」

加蓮「やっぱりトレンドなんだね、食欲の秋」

藍子「美味しい物がいっぱいあって、どれから食べようか悩んじゃいますっ」

加蓮「藍子も42kg同盟から脱退する日が来ちゃったかー」

藍子「そんな同盟があったんですか?」

加蓮「せめて155cm同盟からは抜けないでよね」

藍子「はーいっ。って、そっちの同盟も聞いたことないですよー。そんなのがあったんですね」

加蓮「いや私がでっち上げただけだけど」

藍子「実際に作っちゃいましょうか」

加蓮「リーダーは藍子で。……いや、やっぱ誰かに押し付けちゃおう。藍子ばっかり疲れるのは不公平だよ」

藍子「え? 別に、そんなに疲れていませんけれど……」

加蓮「だってこういうのがあったらいつもまとめ役でしょー? 藍子は。たまには人に押し付けちゃえ」

藍子「……それなら、誰かに譲っちゃおうかな? でも気がついたらまたお手伝いしちゃってるかもっ」

加蓮「じゃ私は手伝う藍子を手伝うってことで」

藍子「それなら私は、手伝う私を手伝う加蓮ちゃんを手伝うことにしますね」

加蓮「……無限ループになるから以下略にしちゃえ」

藍子「手伝う私を手伝う加蓮ちゃんを手伝う私を手伝ってくれる加蓮ちゃんを――」

藍子「……あぅ、目が回っちゃいました」

加蓮「なんで見えてる泥沼にダイビングしていくかなーこの子は」

加蓮「何の話だっけ。えーと、秋染め? 書初めっぽく何かを書くって話だったよね」

藍子「食べたい物……はいっぱいあって悩んじゃいますから、じゃあ、相手に食べて欲しい物の名前っ」

加蓮「激辛ラーメン」

藍子「……食べられません」

加蓮「何かの番組の企画かな? こう、料理を書き合って……、……それただの某食わず嫌いだ」

藍子「あの真剣な雰囲気、いつもハラハラしちゃいますよね。見ているだけなのに汗をかいちゃって、いつもドキドキしちゃいます」

加蓮「分かる分かるー。また今度見てみよーっと」

加蓮「……いっそ出たいってPさんにねだってみるのもアリかな」

藍子「ケーキ、クッキー……ハバネロ…………カラムーチョ?」

加蓮「いい具体に2対2になって案外バレなさそう。あと、私別に辛い物ならどこまでもいけるって訳じゃないからね?」

藍子「加蓮ちゃんは演技がとっても上手いから、勝負ごとになっても勝てちゃいそうですね」

加蓮「どーだろね。ガチになってもPさんに見透かされたりするし」

藍子「そうなんですか?」

加蓮「たまーに。それだけ見てくれてるってことなら……それなら……すっごく嬉しいけど」

藍子「……ふふ♪」

加蓮「何その顔ー」グニグニ

藍子「まだ何も言ってませんよ~」

加蓮「顔がもう言ってる」バッ

加蓮「っていうかさー、なーんか藍子にすら勝てない気が……。そーだ。ちょっと試してみよっか」

藍子「試す?」

加蓮「どーせ秋染めって何って段階なんだし、テキトーに作ってみてもいいよね」ガサゴソ

加蓮「カバンからー、ノートの切れ端とペンを用意しましてっと」

加蓮「よし。私は今から、この紙に"今、私が欲しい物"を書きます」

藍子「ふんふん」

加蓮「…………」

藍子「……?」ジー

加蓮(…………よし)カキカキ

加蓮「書いたっと。これを伏せて、テーブルの上に置いて……」

藍子「もしかして、私がそれを当てるってことですか?」

加蓮「そうそう。あ、先に言っとくけどPさんでもないし藍子でもないから」

藍子「えー、ちょっぴり予想したのにっ」

加蓮「高森藍子って書かれた紙を?」

藍子「そっちじゃなくて、Pさんのほうっ」

加蓮「実は藍子が期待してたことに期待してたんだけどね、私」

藍子「ええと……私が期待していたことに加蓮ちゃんが期待……? うぅ、ややこしくなっちゃいました」

加蓮「あはは」

藍子「私の名前が書いてあったら、きっと正解できないで終わっちゃいますから……加蓮ちゃん、そういうズルみたいなことって嫌いですよね?」

加蓮(……………………)

加蓮「…………うん、マジで勝てる気がしなくなってきたんだけど……」

藍子「?」

加蓮「でも負けっぱなしとか嫌だもんね。藍子には特に。……藍子には特に」

藍子「なんで2回も言っちゃったんですか」

加蓮「大事なことだから?」

加蓮「さーて藍子、勝負しよっか。回数も時間も制限はないよ。藍子が諦めたら私の勝ち、言い当てられたら私の負けだね」

藍子「それ、加蓮ちゃんに随分と不利になってしまうんじゃ……」

加蓮「ふふっ。じゃー、質問どうぞ」

藍子「あ、はいっ!」

藍子「じゃあ――おほんっ」スワリナオシ

加蓮「お、気合入れてくるね」

藍子「なんだか背筋が伸びちゃって。加蓮ちゃんとの勝負って意識したら、ちょっとドキドキしてきちゃいました」

加蓮「あはは。いーから質問どうぞ。時間無制限って言っても、さすがに閉店までしか付き合わないよ?」

藍子「い、急がなきゃ! ええと……そ、それは食べ物ですか?」

加蓮「違います」

藍子「それなら……やっぱりアイドルのこと?」

加蓮「……違いません」

藍子「じゃあ――って違わないんですか!?」

加蓮「辿り着くの早すぎない? 一応、アイドルのことではあるよ」

藍子「うふふ。加蓮ちゃんって言えば、やっぱりアイドルですから」

加蓮「同じアイドルがなーに言ってんだか」

藍子「でも……一応、って?」

加蓮「さあ。どういうことだろうね」

藍子「うーん……?」

加蓮(…………)チラッ


加蓮(今は……1時5分くらい? 勝ち負けがどうでもいいってのは本音だから時間無制限にしたけど、んー)

加蓮(……目標は2時ってことにしとこうかな。2時までに"それ"を隠し通せたら、後でジュースでもねだっちゃお♪)


藍子(加蓮ちゃん、時計を見ている……? 時間のことで何かあるのかな……。それとも、もしかしてヒント?)

藍子(ひょっとしたら、勝ち負けなんてっていうのは強がりで、加蓮ちゃんなりの目標があったりするのかな……)

藍子(…………)

藍子「もしかして……ヒントは時計?」

加蓮「うぇ!?」

藍子「ひゃっ」

加蓮「え、あー、いやいや、違う、違うよ? 時間なんてなーんにも関係ないよ?」

藍子「あは……加蓮ちゃん、さすがにそれは私でも分かっちゃいますよ?」

加蓮「うぐっ……。ま、まぁまだ当てられた訳じゃないし……。うん、まだ当てられた訳じゃない……私はまだ負けてない……」

藍子「……?」

加蓮「あー、えー……」スゥー

加蓮「……よしっと」

藍子「あ。もう冷静になっちゃった……」

加蓮「こ、この加蓮ちゃんを揺さぶって答えを引きずり出そうなんて藍子もやるねー。でもま、そういう分野なら藍子に負けるつもりはないかな」

藍子「私なりに頑張ってみますね。うーん、でも時計かぁ……」

加蓮「……。時間って言えばさー、最近Pさんが撮影の前に変な空白時間を入れたりするんだ」

藍子「空白時間?」

加蓮「ほら、待機する時間とかってあるじゃん。スタッフさんを待つ間の」

加蓮「でも最近はそれが変っていうか、明らかに時間すっごく空いてるんだよねー。藍子ってそういうことない?」

藍子「うーん……あんまり意識したことがないんです。空き時間は、Pさんやスタッフさんとお話したり、スタッフさんのお手伝いをしていて……」

藍子「いつの間にか撮影の時間が来ている、ってことが多いですから」

加蓮「そうなんだ。……あれ、私何もしてないんだけど。いいのかな」

藍子「お手伝いは私が好きでしていることですし、Pさんも気は遣わなくていいって言ってくださって」

藍子「でも、スタッフさんからありがとうって言われるの、最近のマイブームなんです!」

加蓮「へぇ……。私も今度やってみよっかな。ポカンとされちゃったらどうしよ」

藍子「ふふ。Pさんもびっくりしちゃいますね」

加蓮「んー? それどういう意味かな?」

藍子「……あはは」サッ

加蓮「あ、目ぇ逸した。今目ぇ逸した。何が言いたかったのかなー? んー?」

藍子「そ、そんなことより今は加蓮ちゃんの欲しい物当てクイズですっ」

藍子「……あ! もしかして加蓮ちゃん、そうやって話を逸らそうとしたんですか? それはズルいですよっ」

加蓮「乗っかったの藍子だし。別に私は逸らそうと思ったんじゃなくて、ちょっと話が途切れそうになったから振っただけだし」

藍子「もー」

加蓮「ってのは半分冗談。さて、ここで藍子に1つ……んー……試練? を授けようか」

藍子「……試練?」

加蓮「うん。元々この欲しい物当てクイズ……じゃなくて秋染めだ。秋染めって、演技力がどーこーって話から始まったんだよね」

加蓮「つまり今の私は演技をしています。はいネタバラシおしまい。頑張ってねー藍子ー」

藍子「はあ。……今の加蓮ちゃんは、演技をしている……? 演技……」

加蓮「ホントは苦手なんだけどねーこういうの。あ、すみませーん!」

藍子「加蓮ちゃんの苦手なこと……」

加蓮「コーヒーください。藍子もコーヒーでいい?」

藍子「苦手な――」

加蓮「……うん、いいみたい。頭が働くように砂糖もつけてあげてね。お願いします。ふふっ」

藍子「演技……って、もしかして……」

加蓮「ホント、気付くの早いね。ヒント出しすぎちゃったかな? ……それとも、私はやっぱり期待しちゃっていいのかな?」

藍子「――嘘をついているんですか!?」

加蓮「時間無制限、質問回数も無制限。藍子に有利なんだから、これくらいいいでしょ?」

藍子「な、ならっ、そんなの当てられる訳ないじゃないですか!」

加蓮「嘘を見破るところまで含めてこのゲーム――いや、"秋染め"だよ」キリッ

藍子「かっこいいのに言ってることがひどすぎますよ!?」

加蓮「しょうがないなぁ。じゃ追加ルール。"秋に誓う"って言ったらそれはホントのことだってことにしよっか」

加蓮「なんたって秋染めだからねー。人間、絶対に嘘をついちゃいけないことはあるんだー、なんて言ったらちょっとシリアス入れられそうかも?」

加蓮「あとさすがに言い当てられたら正解だって認めるよ。そうじゃないとゲームにならないし」

藍子「秋に誓ったら、本当のことなんですね?」

加蓮「うん。別に勝っても負けてもなーんにもないけど、ま、頑張れー」

藍子「うううっ……や、やってみますね……!」

加蓮「ヒントをもう1つ。私はすっごく大きな嘘を頑張ってつきました。1つだけね苦手なんだけどねー、こういうの」

加蓮「……あぁ、これは秋に誓ってホントのことです。……やっばい、自分で作ったルールなのにもう忘れそうになって、」

藍子「嘘をみやぶる方法……加蓮ちゃんの嘘をみやぶる……」ブツブツ

加蓮「聞いてない」

……。

…………。

>>20 1行目の加蓮のセリフ後半を一部修正させてください……。
誤:「~1つだけね苦手なんだけどねー、こういうの」
正:「~1つだけね。苦手なんだけどねー、こういうの」



(数十分後)

藍子「」ツップセ

加蓮「ふわぁ……。いっぱい食べた後だし、藍子はなーんにも話しかけてくれないし。眠たくなってきちゃったよ……」ゴシゴシ

藍子「」プスプス

加蓮「んー……」ノビ

加蓮「それじゃ視聴率取れないよー? もっとこう、駆け引き! とか、探り合い! とかしなきゃ」

加蓮「1人でブツブツ言ってるだけじゃ次からゲストとしても呼ばれなくなっちゃうよー?」

藍子「今はオフだからいいんです……」プスプス

加蓮「でもなーんか藍子だとさ、そこに立ってるだけで絵になりそうでズルいなぁ。なんにも喋らなくてもオファーかかりそうだし」

藍子「それは加蓮ちゃんもじゃないですかぁ……」プスプス

加蓮「……とりあえず、煙を吹きながら突っ伏せるのやめといたら? 店員さんが何か心配そうな顔してこっち見――」

加蓮「あ、なんか店員さん私の方を見た。あ、ジト目だ。ジト目してる。ジト目だよアレ。アレ絶対ジト目だよ」

藍子「それは本当のことですか……?」プスプス

加蓮「……そんなことで騙して何になるのよ……。はいはい、秋に誓います。店員さんは今ジト目を向けてきています。私に」

加蓮「ってことで、藍子? 藍子ちゃーん? そろそろ起きてくれないとまた私が悪者になるからさ、ほら。ね?」ユサユサ

藍子「…………」ヨロヨロ

加蓮「うっわ、すごいやつれてる……。どしたの? そんなに悩むことあった?」

藍子「加蓮ちゃんの……ついている嘘が何かなって、ずっと考えてたら、何が何だか分からなくなっちゃって……」ドヨーン

藍子「加蓮ちゃんって……加蓮ちゃんでしたよね……?」

加蓮「う、うん。そりゃ私は藍子じゃなくて加蓮だけど……」

加蓮「相当重症だねー。ちょっと気分転換しよっか。すみませーんっ。……何食べる?」

藍子「ちーずけーき」

加蓮「はいはい。チーズケーキと……私はいいや。うんと甘くしてあげてね」

……。

…………。

加蓮「あーん」スッ

藍子「あーん……」モグ

加蓮「甘い?」

藍子「あまいです……」モグモグ

加蓮「はいよく噛んでー、飲み込んでー」

藍子「もぐもぐ、ごくん」

加蓮「もう一口いっとく?」

藍子「……」アーン

加蓮「はい」スッ

藍子「……」モグモグ

加蓮「……あ、ヤバ、これちょっと楽しいかも。藍子の目が死んでなかったら楽しいかも」

藍子「……」ゴクン

藍子「甘くておいしい……」

加蓮「藍子の目がふわってなった! ちょっとだけだけど」

加蓮「はい、あーん」スッ

藍子「あむ」モグモグ

加蓮「もひとつ」スッ

藍子「あむあむ」モグモグ

加蓮「ついでにもっかい!」スッ

藍子「あむあむあむ」モグモグ

藍子「……ふうっ。落ち着けました。ありがとうございます、加蓮ちゃん」

加蓮「どういたしましてー」

藍子「加蓮ちゃんが元気をくれたから、私、もうちょっと頑張れそうです!」

加蓮「……って加蓮ちゃんが対戦相手なんですけれど」アハハ

加蓮「私だって、藍子と対戦してるのに藍子を応援してるんだもん。でもたまにはこういうのもいいよね」

加蓮「どっちが勝っても別にいいや、って思えるヤツ。アイドルとしてステージに立ってる時には絶対味わえない感覚」

加蓮「……でも藍子には絶対負けたくないけどね」ボソツ

藍子「やっぱり負けず嫌いなんじゃないですか~」

加蓮「そだよー」

藍子「もうっ。……ふふ、加蓮ちゃんらしい」

加蓮「藍子もやってみる? 紙に何か書いて、って」

藍子「加蓮ちゃんにならすぐにバレちゃいそう。それに今は、私が加蓮ちゃんの書いた物を当てる番ですから。同時に、っていうのは、ちょっと難しそう……」

加蓮「それもそっか」

加蓮「心理ゲームってことで流行らないかなー、秋染め。あ、でも、これをなんで秋染めって言うのか聞かれたら困っちゃうなぁ」

藍子「どうやって説明しましょうか」

加蓮「秋に……こう、染まる……とか……?」

藍子「紅葉みたいですね。ムキになったら顔が真っ赤になっちゃいそうだから、秋染め?」

加蓮「うーん、ちょっと遠い気がする」

藍子「じゃあ……勝ったら相手の顔に落書きできるってことにしちゃいましょう。相手の顔が落書きに染まっちゃうから、秋染めなんです!」

加蓮「それ元旦の羽根つきじゃん」

藍子「あ、そうでした」

加蓮「秋染めって名前がそもそも書初めのパクリみたいなものだし、それくらいでいいのかな?」

加蓮「あれ? ってことは私、勝ったら藍子の顔に落書きし放題――」

藍子「……!!」サーッ

加蓮「……顔を青ざめるほどのこと言ってないんだけどね、私」

藍子「ぜ、絶対に言い当てなきゃ……!」

加蓮「顔を青ざめるほどのこと言ってないんだけどね私!?」

藍子「ここで加蓮ちゃんに負けちゃったら私、もう事務所に行けなくなっちゃう……!!」

加蓮「アンタの中で私はどういう人間になってるの!?!?」

……。

加蓮「……ところで藍子さ。さっき言ったじゃん。私が何の嘘をついているか分からなくなって煙を吹き出したって」

藍子「あ、そうですっ。どのお話が嘘なのかも分からなくて、混乱しちゃって……」

加蓮「別にこれ嘘を見破らなくても勝てるゲームだからね? 私が何を欲しがってるのか当てればいいだけなんだから」

藍子「でも……そのためには、加蓮ちゃんのお話を聞かなきゃ分かりませんから」

加蓮「そう? 案外当てずっぽうでもいけるかもよ?」

加蓮「別に予想を何回言ってもいいんだし。数撃ちゃ当たるー、って感じで」

藍子「うーん……」

加蓮「……?」

藍子「どうせなら、偶然当たるんじゃなくてしっかり当てたいんです」

加蓮「ふうん……。そこにこだわるんだ」

藍子「だってその方が、当たった! って気がするじゃないですか。その方がきっと楽しいかなって……」

藍子「加蓮ちゃんだって、偶然で負けちゃったら、こう、モヤモヤってしちゃうと思いますよ?」

加蓮「確かにそうかも」

藍子「私、それなら1回勝負でいいです。1回言って、もしそれがハズレちゃったら加蓮ちゃんの勝ちってことにしちゃいませんか?」

加蓮「いいの? 私が勝ったら落書きの刑が待ってるんだよ?」

藍子「!? ……そ、それは……ええと…………」アセアセ

加蓮「……いやさっきも言ったけど落書きってだけでなんでこんなに怯えられないといけないんだろ」

藍子「そこは……ほ、ほらっ、加蓮ちゃんは本当は優しい子だって信じてますから!」

加蓮「ずるーい。そういうこと言われたら簡単に済ますしかなくなっちゃうじゃん」

藍子「とにかく1回勝負ですからっ」

加蓮「はーい」

藍子「…………」ウーン

加蓮(…………)チラッ

加蓮(1時55分。……藍子は絶対に"外さない"。なんとなく分かるんだ)

加蓮(ううん、こういうのは「期待」って言うのかな)

加蓮(期待、か。……ふふ、テキトーなお遊びだったのになんだかマジになっちゃった。しかも私、勝負する相手を応援しちゃってるし)


藍子(……加蓮ちゃんは本当は優しい子で、本当に真面目だってこと、私は知っています)

藍子(ちょっとしたことでも、勝負になったら手を抜くことはない)

藍子(もし本当に……私に絶対勝ちたかったら、もっとあれこれやってくるハズ。さっきみたいにお話を逸したり、いじわるをしたり)

藍子(そうじゃないってことは――)

藍子「時計……」

藍子「やっぱりあの時計のお話をした時の、加蓮ちゃんの反応、ちょっと不思議な感じでした」

加蓮「へぇ? 具体的には?」

藍子「それはぜんぜん……。ただ、なんとなく違うなって感じだったんです。……あはっ、何が何と違うかも分からないんですけれど」

藍子「でもきっとそこに答えがあるだろうって。……加蓮ちゃん、確認していいですか?」

加蓮「ん」

藍子「それは、アイドルに関することですか?」

加蓮「……。一応は、ね」

藍子「…………」

加蓮「…………」

藍子「…………時間」

藍子「時間……アイドルとしての、時間」

藍子「最近、待ち時間が多くなったって、加蓮ちゃん、言いました」

藍子「……もっと……好きなことをやれる時間が欲しい……。……ですか?」

加蓮(……………………)

加蓮「60点。……いや、70点でいいや」

藍子「へ?」

加蓮「正解はっぴょー」(紙をめくって渡す)

藍子「……あ」(受け取る)


『時間 藍子とかPさんとかとの』

加蓮「完璧じゃないけど正解ってことでいいと思うよ。だから藍子の勝ちー。おめでと、藍子」

藍子「…………」ジー

加蓮「…………えーと……あんまりマジ顔でじーって見られても照れるんだけど、な……?」

藍子「……加蓮ちゃん」

加蓮「いや、そんなに、その、私の顔とかその紙とか見ても何にもないと思うけどー……」

藍子「…………」

加蓮「……ほら、深い意味はないっていうか、別に今が足りないとかワガママって訳じゃなくて……いやワガママかもしれないんだけどさ……」

加蓮「いやそうじゃなくて、ほら、なんとなく、なんとなくだからね!?」

加蓮「こう、欲しい物! って考えた時にパッと浮かんだのがこれって言うだけで、ホントそれだけなんだって!」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……マジ顔禁止! その……そうだったんだねーみたいな生暖かい顔禁止! ほら、もう藍子の負けでいいじゃん! 私の勝ち!」

藍子「……、…………、……当てましたよ?」

加蓮「アンタが言ったのはこう"アイドル活動的な時間"って感じでしょ!? 私はそういうんじゃなくて、」

藍子「そういうんじゃなくて?」

加蓮「…………」

加蓮「……じ、実は裏ルールがあったの! 2時までに当てられなかったら私の勝ちって密かに決まってたルール、」

<ぼーん、ぼーん……

藍子「今2時になったみたいです」

加蓮「……はい」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」

加蓮「……パッと浮かんだだけっていうのはホントだけど……別にいーじゃん、高望みしても」

藍子「……ダメ、なんて言ってませんよ」

加蓮「せっかく今ここにこうしていられるんだし……ワガママ言うのって、そんなに駄目なこと?」

藍子「だから、ダメ、なんて言ってませんっ」

藍子「私だって……幸せな時間、あなたと過ごせる時間、いっぱい欲しいですから」

藍子「私だって加蓮ちゃんとおんなじですからっ」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」コクッ

藍子「……」

藍子「……そういえば、加蓮ちゃんの言っていた"嘘"って、一番最初に言ったことだったんですね」

藍子「Pさんや私の名前は書いていない、っていうこと。あれが嘘だったんですか?」

加蓮「ん、そうだよ。……正直あの時すっごいドキドキしてた。しかも藍子がさ、藍子の名前を書いてたら当てられる訳ないからとか言い出して」

加蓮「ちょっぴり泣きそうになってたんだよ?」

藍子「泣きそうだったんですか!?」

加蓮「罪悪感的なのとか、こう……」

藍子「ふふ。私、ぜんぜん分かりませんでした。やっぱり加蓮ちゃんには演技じゃ勝てそうにないですっ」

加蓮「やめてその別のことなら楽勝みたいなの」

藍子「えぇ!? そんなつもりじゃ――」

加蓮「ぁー……やっぱ秋染めは流行らなくていいや。なんかすっごい気まずくなりそうだし、ってか恥ずかしいしこういうの……」

藍子「残念っ。次は私が書いて、加蓮ちゃんが当てる番だって思ってたのに」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……どーしても藍子がやりたいっていうなら、今から逆にしてやろっか」

藍子「! はいっ。じゃあ、その次はまた加蓮ちゃんの番ですね」

加蓮「私はもういいよ、ホント恥ずかしいだけだからこんなの……」

藍子「えー。じゃあ……食べ物限定にしてみるとか。それなら当てられてもそんなに恥ずかしくありませんよね?」

加蓮「……それなら、まぁ」

藍子「じゃあ、私も食べたい食べ物にしちゃいますね。ノートノート……」カキカキ

藍子「はい、書きました! ……ごほんっ! じゃあ加蓮ちゃん、当ててみてくださ――」

加蓮「チーズケーキのお代わり」

藍子「……!?」

加蓮「あれ、ビンゴ?」

藍子「……あ、あはは」コクッ

加蓮「…………」

藍子「…………」

加蓮「……たはは」

藍子「ふふっ」

加蓮「よし、加蓮ちゃんの黒歴史生産タイム終了! 次こそは藍子に完全勝利するよ! 秋に誓って、もう私が当てる番は回ってこない!」

藍子「わ、私だってやられっぱなしは嫌です。秋に誓って当ててみせますからっ」



おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。

5分間くらい高笑いをしていたら喉が潰れました。
その後に「注目のアイドル」のことを思い出して、30分間くらいずっと大泣きしていました。ありがとうシンデレラガールズ。

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