【Aqours】梨子のお話【怖い話】 (15)
・短編
・少しホラー要素あり
・作者及び友達の実体験が元なので怖くないかも
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梨子「これは私が東京の小学校に通っていたときの話だよ。確か小学3年生の頃だったかな」
梨子「当時、仲が良かった友達の1人が結構高級なマンションに住んでたの。A棟、B棟、C棟の3棟からなるマンションで、それぞれの棟の間には駐車場と小さな公園があった」
梨子「その日、学校から帰った私は、もう1人の別の友達を連れて、そのマンションに遊びに行ったんだ」
梨子「マンションに住んでいる友達は、やっぱりちょっとお金持ちで、玩具なんかもたくさん持ってた。だから普段なら家の中でゲームをしたりして遊ぶんだけど、その日はたまたま外で遊ぼうってことになったの」
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梨子「外で遊ぶって言っても、マンションの公園には1人用のブランコと小さな滑り台、あとは砂場くらいしかない」
梨子「小学3年生の私たちからしたら、遊ぶには物足りない感じだったから、駐車場でキャッチボールとか、その延長で野球の真似なんかをして遊ぶことにしたの」
梨子「...えっ? 友達の性別? 千歌ちゃん、それはこの話にはあんまり関係ないよ? ...それでも気になる? ...2人とも男の子だったけど」
梨子「え? それなら安心? それ、どういう意味?」
梨子「もう...。話を続けるね?」
梨子「私がボールを投げる番のとき、やっぱり投げた球が遅かったせいなのかな? 友達が打った球がすごく勢いよく飛んで、B棟3階の部屋のベランダに入っちゃったの」
梨子「その部屋のベランダは周りよりもずっと大きくて、お金持ちの人が住んでるんだろうなあ、なんて思ったけど、友達はどうやらその部屋に住んでる人は知らないらしかった」
梨子「どうやってボールを取ろうかなってみんなで考えてみたけど、結局その部屋に行って、謝って取ってもらうしかないって結論になった」
梨子「けど迷惑がられたり、怒られたりするかもしれないから、3人でじゃんけんをして、負けた人が罰ゲームでその部屋に行くってことになった」
梨子「...もう、ダイヤさん。先に当てちゃダメですよ。はい、その通りです。負けたのは私だったんですよ」
梨子「唯一の女だった私が行くのもおかしい気がして、ちょっと腹が立ったけど、負けたんだからしょうがない。薄情な友達を駐車場に残して、私はその部屋に向かった」
梨子「意外とスムーズに目的の部屋は見つかった。けどその部屋には表札がかかってなかったの。インターフォンを押すけど、中からの反応はない。鍵も当然かかってる」
梨子「ああ、ここは空室なんだって直感した」
梨子「けど、そうなると話がややこしい。A棟に住んでる管理人のおじさんにお願いして、事情を話して鍵を開けてもらわないといけなくなるからね」
梨子「一旦、友達のところに戻っても良かったんだけど『ボールを持って帰るのが私の使命!』みたいな変な責任感が出ちゃって、私はそのままA棟に向かった」
梨子「A棟の管理人室に着いて、私は前から知っている管理人のおじさんに話しかけた」
梨子『おじさん、B棟とC棟の間の駐車場で遊んでたんだけど、ボールが人のいない部屋に入っちゃったんです』
梨子「おじさんはいつものように、笑顔で聞き返してくれた」
『そうなんだ、どこの部屋に入っちゃったの?』
梨子「その質問を聞いて、私はしまったと思った。せっかく部屋の前まで行ったのに、部屋の番号を覚えてくるのを忘れてたから。だから狼狽えながら、分かってることだけ、おじさんに伝えた」
梨子『へ、部屋の番号は忘れちゃったけど、B棟の3階のベランダがすごく広い部屋です!』
梨子「その瞬間に、おじさんの顔色が変わったのが分かった」
『B棟3階のベランダが広い部屋...。本当にそこで間違いない?』
梨子『はい』
『なら、そのボールはもう取れないから、新しいのを買ってあげるよ』
梨子「意外な答えだった。もう取れないって意味がわからなかったし、いつもは優しいおじさんの雰囲気が違うのが、ちょっと怖かった」
梨子『で、でも今友達と遊んでて...! 鍵を開けて取ってくれませんか?』
『ごめんね。それはできないんだ。諦めてくれるかな? ボールが欲しいなら、今すぐにでも新しいのを買いに行こう?』
梨子「話は平行線だった。だけど、ひとつだけハッキリと感じることがあった」
梨子「おじさんは、あの部屋に入りたくないんだ、って」
梨子「しばらくお願いを続けてみたけど、おじさんはやっぱり、頑として言うことを聞いてくれない」
梨子「そうこうしているうちに時間も結構経っちゃって、仕方ないから1度友達のところに戻って、どうしたら良いか聞こうかな、なんて考えていたときだった」
『おい、梨子! こんなところで何してるんだよ!』
梨子「駐車場で待ってるはずの友達だった。きっと待ちきれなくてここまで来ちゃったんだなって思って、すぐに謝った」
梨子『ご、ごめんね? けど、まだボールが取れなくて...っ』
『...はあ?』
梨子「友達は不思議そうな顔で私を見て、こう言ったの」
『ボールなら、さっき梨子が投げてくれただろ?』
梨子「え? とだけ声が漏れて、しばらく何も言えなかった」
梨子「だってそんなわけがない。私はずっとあの部屋に入るためにここで話をしていたんだから」
梨子「でも、私がそう伝えるより先に友達が持ってるボールが目に入ってしまった。確かに、あのベランダに入ったはずのボールだった」
梨子「友達が言うには、私がボールを取りに行ってしばらくした後、ベランダから私が顔を覗かせて、ボールを投げて寄越したんだそうだ」
梨子「けれど、ボールを取ったはずの私がなかなか戻ってこない。もしかして部屋の人に怒られてるのかも、と部屋に行ってみるも鍵がかかっていて開かない。だから、管理人室に来たんだ、と」
梨子「...多分、あのとき生まれてはじめて血の気が引くって感覚を味わった」
梨子「私が震える声で『それは私じゃない』って言っても、友達は全然信じてくれなかったよ」
『これで分かっただろう? そのボールも、もう捨ててしまったほうが良いよ』
梨子「黙っていたおじさんがそんなことを言った。おじさんは全部知っていて、だからあの部屋に入りたくなかったんだ」
梨子「当然その日はもう遊ぶなんてできるわけなくて、すぐに家に帰って、ずっとお母さんに引っ付いてた」
梨子「次の日、教室で友達が話しかけてきた。どうやら、帰った後に家族に聞いたらしい。あの部屋のことについて」
梨子「結果的に言うと、あの部屋はそのマンションでは有名な部屋だったの。幽霊が出るってね。怖がらせたり、変に興味を持たせたりしないように、子供には教えてないみたいだけど」
梨子「あの部屋は、前に住んでた家族が一家心中してから、誰も借り手が見つかっていなかったんだって。亡くなったのは3人家族で、若い夫婦とそのときの私たちと同じくらいの年齢の女の子...」
梨子「あの日から、私はそのマンションに近づけなくなった。C棟にある友達の部屋に行くには、絶対にあの部屋の前を通るから」
梨子「もしそのとき、ベランダに私がいたりしたらどうしよう? 姿を見ないようにしても、背中に視線を感じたらどうしよう? なんて思うと、どうしてもね...」
梨子「そういえば...」
梨子「あの部屋は、家賃がほかの部屋の10分の1まで下がった今でも、まだ借り手は見つかってないらしいよ」
梨子「私の話は、これでおしまい」
終わりです。
怖い話と書いてますが、よくよく考えれば不思議な話の方が多めでした。とりあえずこのままやります。
以前書いた作品
ルビィ「私、本当は『悪い子』なんです」
千歌「Aqoursのみんなにドッキリをするよ!」
ダイヤ「夕暮れ、千歌さんとふたり」
千歌「果南ちゃん、私たち、別れよっか」
曜「梨子ちゃんの制服...」
梨子「寝取られた!!」
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【Aqours】果南のお話【怖い話】
ありがとうございました。
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