女「額に鉄板入れてみた」(36)

女「だよー」

男「なにゆえ」

女「ある漫画の影響でね」

男「それだけで納得しろと?」

女「ちょっとー、私の彼氏ならもっと喜んでくれてもいいじゃない」

男「どこの世界に、自分の彼女のデコに鉄板入って喜ぶ奴がいるかよ!」

女「そうは言っても私が鉄板を入れたからには、君には事実を受け入れてもらうわ」

男「そうやって自分の考えを押しつける事しかしないから!」

女「私の彼氏の言う事かぁー!」

男「俺は普通の彼氏だ…普通の彼氏でたくさんだ!」

女「だとしても…君には額に鉄板を入れた彼女をもつ者として彼氏をやるのよ!」

男「言うにことかいて…女のエゴを強化した、化け物めぇぇぇ!」

女「化け物結構!私は化け物よ!」

男「ならその慢心…鉄板ごと撃ち貫くのみ!」

バシュゥゥゥ

男「魂武装【ソウル・ウエポン】…パイルバンカー!」

女「そう、それが君の答えなの…鉄で固めた、その右腕が!」

男「もはや問答無用!」

女「そんな時代遅れの鉄屑に!」

男「当たれば終わる!」

女「当てるなどと!」

バシュゥゥゥ
ザザッ
グワァ サッ

男「くっ、蚊トンボみたいに動いて!」

女「当たらなければいいと言っている!」

サッ

女「諦めて!君には…君だけには認めて貰いたいの、私は!」

男「だからエゴだと言った!」

グワァ

男「捉えた!額のど真ん中!」

バシュゥゥゥ

女「撒いた餌に食らいつく!やっぱり素人だよ、君という奴は!」

サッ

男「なっ、このタイミングを!?」

女「その信念ごと右腕を!」

ザンッ
バキィ

男「ば、バンカー!」

ダラリ

女「もうその右腕は使えない…神経を超振動させ破壊したから」

男「ぐうっ、女ぁ!」

女「私は…ずっと君の気を引きたかったの…髪型を変えたり、服を変えたり、メイクをしたり…でも、君はぜんっぜん、気付いては、くれなかった…」

男「だ、だからって…」

女「だから、よ。さすがに額に鉄板を入れたら、君も気付いてくれるでしょ?」

男「お、俺の鈍さが君を狂わせたのか…!」

女「狂う?いいえ、これが私よ」

男「違う!お前は…少なくとも俺の知っている女って奴は!間違っても額に鉄板なんて入れはしなかった!」

女「!」

男「お前が変わっちまったって言うのなら、俺が…俺が何度だって!」

バシュゥゥゥ

男「だから、俺の右腕よ!力を…力を…貸しやがれぇぇぇ!」

バシュゥゥゥ

女「ば、馬鹿な…もう右腕は!」

バシュゥゥゥ

男「お、お、おおお!」

『魂武装【ソウル・ウエポン】!!!』

バシュゥゥゥ
ガキィィィン

女「嘘…ありえない…一度壊れた魂武装は、二度と戻らない筈!なのに!」

男「言ったろ…何度だって…俺は!」

ガキィィィン

男「ただ、撃ち貫くのみ!」

~BGM:鋼鉄の孤狼~

女「そんな…嫌、嫌よ…男、本当に私の額の鉄板を…撃ち貫くの?」

男「あぁ」

女「私がどうしても嫌だと言っても?」

男「あぁ」

女「貴方に気付いて欲しかっただけなのに?」

男「あぁ」

女「そんな…君は私の彼氏でしょ!?だったら、どうして!私の気持ちを!」

男「なら何故お前は泣いている?」

女「!」

ポロッ…

女「え、私…泣いて…?」

男「俺はお前以上にお前の事を知っているつもりだ…だから、助ける。偽りの言葉の奥底で泣いている…本当のお前を…助ける!」

ガシャコン

男「何度だって言うさ…ただ、撃ち貫くのみ!」

ダッ

男「はぁっ!」

グォッ

女「その踏み込みは!」

男「反応する前に!」

女「見えているなら、かわせる!」

男「それが遅いと、分かれ!」

ガキィィィン

男「額、捉えた!」

女「しまっ…」

ズドォォォォォン!

男「手応え…あり、だ!」

ケムリ モクモク
ボヤ~

男「…!」

デコ ムキズ

女「…」

男「馬鹿な…額が無事だと…!?」

女「ウィークポイントをむき出しのままにする筈がないでしょう?」

男「なっ…」

女「額の表面に、オリハルコン・コーティングを施してあるの…鉄屑ごときで貫ける訳ないでしょ!」

男「オリハルコン…!」

ピシピシッ バキィンッ

男「お、俺のパイルバンカーが!」

女「鉄とオリハルコンがぶつかり合えば、どちらが壊れるかは明白…でしょ?でしょ?」

ボウケン デショ デショ

男「まいったね、こいつは…」

女「さぁ、もはや私の額を貫く方法は無い。男…その身を委ねて…私と一緒になりましょう…ひとつに、なりましょう…」

テ サシノベ…
パシッ

女「!?」

男「ふ、くふふふふ…一緒に?ひとつに?馬鹿いえ…」

チャキッ

女(左手で拳銃を!?)

男「お前となんか」

男「お前となんか」



男「お前となんか、ひとつになれるか」

ぱきゅーん☆

女「ぐふっ…」

バタリ

女「男…男男男!何故!何故君が私を撃つ!?何故!何故何故何故!銃を!何故君が!あ、あああ!」

ノド ガリガリガリ

女「何故何故何故!ぎひぃぃぃぃぃ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

男「ふ、違う。違うよ、お馬鹿な雌豚ちゃん」

女「!?」

男「私はこの体を借りているだけ。だって私の体、さっき貴方が壊しちゃったから」

女「!?」

男「私は、パイルバンカーの宿神【やどりがみ】…入蛮華」

女「宿神…愛を込めて使用された魂武装に宿るといわれる精霊神…まさか実在するとはね」

男「ご主人がピンチだったからね、少し手を出させて貰ったの。発射【だ】したのは鉛弾だったけどね」

女「笑えないジョークをどうも…ぐふっ…」

男「いくら額に鉄板を入れ、表面をオリハルコン・コーティングしていようとも、喉を撃ち抜かれちゃ、死んじゃうよね」

女「確かに…ぐふっ…」

男「依り代を無くしちゃったから、私もご主人の側にはいられない…今回のご主人はけっこう気に入ってたのになぁ…もぅ」

女「ふ、女の恨みっていうのは、本当………ぐふっ…」

男「貴方もそろそろ時間切れね…私も…おな、じ…ね…」

女「…」

男「それ、じゃ、さよな、ら…ごしゅ、じ…」

パァァ

男「…」

・ ・ ・ ・ ・

――風が吹いている――

――あぁ、呼んでる――

――いつか聞いた――

――あの声――



『ねぇ』

『私』

『額に』

『鉄板―――――』

【完】

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