暗い。まばたきをしているはずなのに周囲が真っ暗だ。地に足がついている気もしない。浮翌遊感。
ふと視界に色が戻ってくるのがわかる。私は青空にぼんやり浮かんでいたようだ。
辺りを見わたしても太陽はなく地上も見えない。それなのに、どうして私はここを青空と思ったのだろう…。
ああ、そうか。この果ての見えない青に大きな霧がたくさん漂っているからだ。
只、雲がただようだけ。
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霧のように透けた白。
あるものは両手で抱きしめられそうな丸いもの。あるものは私なんかすっぽり飲みこんでしまう大きいもの。
一糸纏わぬ私を白いカーテンがひんやりと包んで、肌に雫をこぼして去る。その雫をそっと指で広げては生まれた光沢を眺めてみる。
かすかに私がうつっている……気がする。人影が見えただけ。やがてわたしの体温に触れ続けたからだろう、光沢はしゅくしゅくと縮こまり消えていった。
私は只、宙にたゆたうだけ。この夢がさめるまで。
そう、これは夢だ。私だけのとくべつな世界。こんなメルヘンチックな空間が現実にあるはずがない。そうさ、私はこの素敵な世界の主人公。なにをするのも私の自由さ。
見わたす限り蒼白。地平線がどこかもわからない。そうだ、夢が覚めるまでにこの世界を探検してみよう。一人で広大な空間に取り残されたような、そんな孤独感を感じなくはない……この気持ちをごまかしたい。
……あれ、前に進もうとしても進めていない。宙に浮いてるのだから足をうごかしてもムダなのか。
そうして私が駄々をこねる赤ちゃんのように自由に身体をばたつかせていると、青空の遥か向こうからイルカが数頭、宙を泳いできた。
目を丸くしていると、私を囲うように彼らがその身体を寄せてくる。撫で回したくなるほど艶やかな肌が光沢を放つ。
どうしたものか、私が話しかける言葉を探していると。
一頭のイルカが身をひねり、私の股下に割って滑りこんできた。私はこの背にまたがる形をとらされることとなった。
突然のことに慌て赤面する私をよそに、イルカたちはどこかへ一斉に泳ぎはじめた。私は気持ちだけその場に置いてかれた。
どこへ向かっているのか、イルカは教えてくれない。白のカーテンを次から次へと切り開いていく。キミたちはどこへ行くの?わたしの話を聞いてほしいなあ、なんてつぶやいても何も変わらない。
だけれどいつしかイルカたちの航行は楽しむ自分がいた。さきほどの不安は霞んで散っていた。
イルカは速く、けれど私を怖がらせないように気を使っていることに気づいたから。
右へ左へ青い身体をくねらせ、上下に弾んで私を軽快に揺さぶる。この旅に飽きないようイルカが抑揚をつけてくれている。
周りのイルカたちは一体となり鮮やかな泳ぎで舞い踊ってくれる。ありがとう、みんな。
最初こそ私はイルカの気遣いに気づかず恐怖で背にしがみついていた。それが今じゃイルカに跨り子供のようにはしゃぐ私がいた。
白雲のカーテンに突っ込めば、ときおり奪われる視界すらも興になり。
すっかり水浸しになった身体から風が体温をうばってゆく。それでも身体が熱いのは私の興奮がとめどなくあふれているからだ。
自分でも信じられない歓声を上げ続けていた。
すっかり息が荒く肩で息をするようになったころ、その人は居た。
なんでここに居るのかはわからない。たぶん夢だからなんでもありなのだろう。実際、今こんなに胸がどきどきしてやまない。私の無意識が彼女を呼んだにちがいない。
その人は私と同じようにイルカにまたがっていた。おたがいの顔が確認できると無邪気な笑顔でもって迎えてくれた。
唯「——へ〜ここが澪ちゃんの夢のなかか〜」
遊園地に連れてってもらえた子供のように感動してるところ悪いけどおまえも夢の中の存在だぞ、とは言わないでおこう。私だったら唯にそんなこと言われたら泣いてしまう。
唯「んふふー?ふふーん。ほぉ〜♪」
澪「ひ、ひとの身体をジロジロみるな!!///」
唯「いーじゃんいーじゃん減るもんじゃないし。合宿でも見てるんだし」
澪「それとこれとはちがーう!///」
夢の中の唯はなんだかいじわるだった。
今度は唯もいっしょにイルカたちとの航海を楽しんだ。唯はノリノリで行き先を指さして、イルカも唯の声に素直にしたがっていた。
私は唯の楽しむ様子を眺めているだけで満足していた。本当は唯の身体をチラリズムすることで満足していた。唯の身体は私なんかよりずっとスタイルがよくてうらやましい。普段も部活もぐうたら過ごしてるのにその引き締まったお腹はいったい…。
唯「澪ちゃん!見て!うしろ!うしろ!」
澪「へ?」
直後私の身体が陰に覆われる。ハッと上を見上げるとなにか大きな生き物が通り過ぎるところだった。
おもわず乗っているイルカに全身でしがみつく。息苦しかったらごめんなさいイルカさん、でも私がまんできないの。こわくて。
唯「澪ちゃん?こわくないよ、シャチだよシャチ!」
澪「…ふえ?」
唯に励まされ恐る恐る見上げると、そこにはたしかにシャチっぽい生き物の腹が泳いでいた。どうやら私のイルカと並走しているらしい。もっとハートに優しい登場をしてほしいな…。
唯「新しい仲間が増えたね!やったね!澪ちゃん!」
シャチも加えた航海はさらにエキセントリックになった。イルカたちの美声が蒼の空間に響き渡る。
さすが私の夢だ。動物たちが私の作った歌詞を唄ってくれる。じつは将来の夢は動物さんたちと合唱することなんだ。こんな形でかなうなんて夢のようだ……ここは夢だった。
こんなにたくさんソプラノで唄われると、緩い歌詞のふわふわ時間が神々しく思えてしまう。
澪(心地いいや……このまま眠ってしまってもいいかな……)
まるで天使の歌声だ。唯の声は天使そのものだ。今なら天からお迎えがきても驚かない。
お迎えの天使も唯だったらいいな。
唯「みおちゃん危ない!」
澪「うわあ!?」
私のおしりが、乗っていたイルカの背中を滑った。どうやら姿勢が前のめりすぎたらしい。
イルカの背中をお腹からすべっていく。無我夢中でイルカの背中にしがみつこうともがくと、なんとか背びれをつかんだ。それでも今にも落ちてしまいそうで恐ろしい。
唯の笑い声が聞こえる。
唯「澪ちゃんってひょっとして私よりドジっ子?♪」
澪「唯にだけは言われたくない!!」
唯「それじゃみんな!澪ちゃんは無事だったからスピードあげていこー!」
澪「えっ!?ちょっと待て!私が背に乗り直して…ひぇ!!」
唯の指揮に従順なイルカたちがケラケラと笑った。私の夢の産物が私で遊ぶことをおぼえたようだ……。
……そもそも落ちたら危ないのか?この空間で?
そういうことか。唯たちめ……。
空間が刻々と朱く染まっていっていた。どうやら夕暮れが訪れているようだ。
私たちは目的地のない航海を終え、空間をなにをするでもなくぼんやりと漂っていた。
イルカたちが朱く照らされている。唯の白い肌もほのかに朱く、びっしょりと水滴にまみれたまま。
その姿がとても煽情的で見惚れてしまう。肌を重ねてみたい。舐めてみたい。そういう欲望が内からこみあげてくる。
唯「わあ…すごい汗まみれだよ澪ちゃん…」
澪「汗…?くんくん……これ汗だったんだ」
唯「わたしも汗びっしょりー。ぺろっ。…ふふ、しょっぱい♪」
澪「っ!///」
なんて目に毒なことを見せつけてくれるんだ。やっぱり夢の唯はいじわるだ。
唯「私たちもイルカたちみたいに泳げたらもっと楽しめるんだろうなー」
澪「そ…そうだな///」
唯の乗っているイルカがささやく。唯になにか語りかけてるのだろうか。
唯「えっ何なに?ふんふん、お〜!」
澪「なんだって?」
唯「いいこと思いついちゃった」
そう言う唯は妖しい笑みを浮かべている。ちょっぴり小悪魔チックだ。そうだな…おしりから小悪魔の尻尾を生やしたりして……あっヤバイ。わたし今、顔が熱い。
唯「えへへ、ありがとうね」
イルカとともに唯が隣へ寄ってくる。視線が唯の汗ばんだ裸へついつい向かってしまう。それでひとつ解った。唯の肌が朱いのは空間の色だけじゃない。
澪「な…なにが///」
唯「澪ちゃんが来てくれなかったら、こんなに楽しいことできなかったもん。一人でぼやーって浮かんで、一匹だけ来てくれたイルカと遊んで、それだけでおしまいだった」
澪「それなら私だって!唯がいてくれなかったらここまで楽しいこと出来なかった…///」
唯「そういってもらえると嬉しいな」
唯が微笑んだ。今度は小悪魔チックじゃない、優しいママのような微笑み。やられた。胸がとても切ない。
恥ずかしさでうつむいても唯の裸が視界を埋める。桃色の乳に汗のおおきな滴が浮かんでいる。乳首が物欲しそうにぷっくり膨らんでいた。
鎖骨から汗がしたたれ胸の谷間を濡らし光沢を残していく。そのままお腹へ向かってちいさなおへそへ到達し吸い込まれていった。
もったいない。汗のひとしずくでも味わってみたい。おへそに舌をねじこんでみたい。
唯「どこ見てるのもう…///」
澪「ご…ごめん///」
そう言いながらも唯の声からは不快感は感じず、むしろ嬉しそうだった。
不意に唯の身体がブルリと震えた。そのしぐさでさえ愛おしい。全身で抱きしめてあげたい。……してしまいたい。
唯「あ、あのね…だからお礼がしたいなあ」
お礼?お礼ってさっきしたよ?
唯はまたがっていたイルカの背に腰かけなおした。慌てて私も腰をかけ唯と向き合う体勢になる。それだけの行為なのに太ももがイルカの肌と肌が擦れて気持ちよくなってしまった。
思わず太ももを擦り合わせてしまう。そんなことしてもよけい気持ちよくなってしまうのに。唯の前で気持ちよくなってしまう。
……あっ。唯も太ももをすり合わせている。それだけじゃない、その動きにあわせて唯の腰がいやらしくくねっていた。私をさそっているようにしか思えない。
唯の肌は舐めまわしたくなるほど艶めかしくて、その表面を流れていく大きな汗粒があまいあまい飴玉に見えて…。
おそってしまいたい。唯ならゆるしてくれる。きっと。
唯「だからその……ね…」
なにか言いよどんでいるところわるいけど、そのはにかむ笑顔は私のなかの獣を呼び覚ますには十分だった。
澪「ゆい!!」
ひゃいっ、だなんておかしな声を唯が上げた。私がイルカから降りて唯の両肩をつかんだからだ。
唯の顔があまりにも近い。おたがいの鼻息がかかる距離。唯の顔から熱を感じ取れる。私の顔も熱い。
唯の顔はリンゴのように真っ赤に染まっていた。さっきまで私をいじめていたくせに急に女々しくなりやがって、強がってたのか?唯のくせになまいきだ。
澪「わたしも唯にお礼しなきゃな?」
唯「え…だ、だめ…最初はわたしが…」
澪「かわいいよ唯……」
唯「あぅ……///」
唯の肩に置いていた両手をぬるりと首元へ滑らせて柔らかいほっぺたへ持っていく。その間唯と私は見つめ合いながら。
ああ…わたしはとうとう夢をかなえられるんだ…その小刻みにふるえる小さな唇に唇をかさねて…そのあとは……どうなるんだろう…。
直後、視界がぐるりと回った。
なにがおきた?
どうしてわたしは唯から手をはなしているんだ?唯の顔が目の前にあるのはかわらないけど、どうしてわたしが仰向けにされているんだ?どうして唯がわたしを見下ろしているんだ?
これじゃあまるで、わたしが唯にせめられているみたいで…。
唯「あぶなかったぁ…///」
澪「ゆ…い…?」
唯「澪ちゃんったら急にかっこよくなるんだもん…胸がきゅんきゅんした…///」
そう唯ははにかんでみせるけど、恥じらいとは裏腹にわたしの頬をなでてくるし、そもそも仰向けに横たわるわたしに全身で覆いかぶさってるし。空中なのに唯の重みがダイレクトに伝わってくるし。
どちらかが微かに動くたび、唯の汗ばんだ肌が私の汗ばんだ肌が擦れるたびに水音が鳴る。全身くまなく唯の体温を感じる。唯の吐息や汗が私の顔にたどりつくたびに胸が際限なく高鳴る。
下半身のうずきがやまない。まちがいなく恥ずかしい液体があふれているはずだ。唯も同じだろうか。もしそうなら唯の恥ずかしい液体が私の恥ずかしいところにしたたっているにちがいない。
澪「んん……///」
唯「や…澪ちゃんそれは反則…///」
反則なんてしてない、唯の足を私の足ではさんでやっただけだ。このまま唯にせめられつづけるくらいならわずかな抵抗ぐらい許してよ唯?
唯の両足をはさんだまま自分の足を擦り合わせるように動かしつづけてやる。気持ちよくなってくれたようだ。唯がせつなそうな声をだらしなく漏らした。
唯「みおちゃあん…はなしてよお…すごく気持ちよくてわたし……ぁぅ///」
澪「はなせないい…こうでもして…ないと…お股がせつなくて………///」
実際、わたしたちの股のあたりはすっかりびしょびしょで、わたしが足を小刻みにうごかすたびグチュッグチュッといやらしい音を発していた。それに合わせてわたしたちの口からだらしない喘ぎ声が漏れた。
まるで、わたしたちというひとつの楽器が奏でるように。
唯「だめぇ…ほんとなら澪ちゃんにぁっ…乗っ…て…この世界を探検しようと……んんんっ///」
澪「よくわからないけ…ど…あきらめるんだ…な…///」
わたしたちはいつまでもそうしていた。快楽と切なさ、体温と汗が、涎と愛液がわたしたちの欲望の動力でありつづけた。
やがてわたしは挟んでいた足をだらしなく広げた。疲労で足をもう動かせない。いいぞ唯、わたしにはもう唯のせめに抵抗する気力がない。やるならやってくれ。
唯「みおちゃん…」
チュッ、とわたしの唇に唯の唇が重なった。顔中涎と汗まみれのわたしたちはその瞬間まで水音を鳴らした。
澪「ゆい……」
唯「こんどこそほんとうに、ありがとう…」
澪「うん…!わたし…唯のこと……好き」
唯「いまさらだよぉ……でもね」
澪「…?」
唯「わたしの好きは大好き、だから…澪ちゃん大好き♪」
澪「…ずるい。後出しだ」
唯「えへへ…」
澪「大好きよりもっと好き。唯がもっと好きって言ったら、私はそれよりもっと…好き♪」
唯「よくばりだねえ」
いまさら何を言ってるんだ。いつまでも、いつまでも肉欲にしたがっていたくせに。
でもささいなことだ。唯がわたしを好きだと言ってくれた。わたしも唯が好きだと伝えた。相思相愛で恋人同士で……。
そして唯もわたしも今、すっかり発情してしまって。
だからわたしは……わたしを唯に捧げる。唯にわたしの身体をあずけるんだ。覚悟はきまった。生涯をともにする相手はキミにしたい。
澪「ゆい…………わたしを、もらって」
唯「……ありがとう!」
見れば唯の顔はくしゃくしゃで、それなのに懸命に笑顔を作ろうとしていた。
ほんとうに心からうれしそうだった。
やがて唯ともういちど唇を重ねようとしたそのとき
視界が暗転した。
澪「いいところだったのに目が覚めた…」
澪「って違う違う!!なんて夢みてるんだわたしは!!///」
澪「い、いくら唯が好きだからってあんなハレンチな……///」
澪「…あっダメ。疼きがとまらない…トイレ…///」
こんにちは、秋山澪です。
わたしは唯の家にお泊りにきました。もちろん軽音部のみんなや和もいっしょです。クリスマスイヴを過ごす集まりです。
去年は唯の家で年を明かしました。今年は私があることを明かそうと胸に誓い、それにふさわしい夜をとうとう迎えました。
この日のためにいろんな人に励ましをもらった。ときに呆れられ、ときに怒られたり慰めてもらったりもした。今日、すべてが報われるんだ。
目の前に唯の顔がある。唯は私の顔をいつもの可愛い目で覗き込んでいた。
どうして唯が覗き込むような状況になっているかというと、私が緊張でうつむいてしまったからだ。唯の正面を向いて話さなきゃいけないのにまた逃げてしまっている。
ところが私がうつむいていることで唯のほうから顔を間近へ寄せてきたので、かえって唯の顔との距離が近くなるとは考えていなかった。赤面していた私の顔がこれ以上ないほど紅潮していくのがわかる。
言わなきゃ。告白しなきゃ。みんなの励ましに応えるためにも明かさなければいけないんだ。
だから……
だか…ら…
澪「やっぱりムリーーーーー!!!///」
律「こらー!また逃げんのかバカ澪!」
澪「どーせわたしはバカだー!!」バタン!
律「おいこら!トイレは引きこもるためにあるんじゃねえ!出てこい!」
澪「ぜったい変な子におもわれた!もうおしまいだ!今までありがとう!!あとごめん!頭を冷やしにアイスランドまで行かなきゃいけなくなった!」
律「元から変だろ!アホかおまえはーー!!」
梓「はあ…ここにきてヘタレましたか…」
紬「澪ちゃんったら、じらし方が下手だわ〜」
梓「ええとってもイライラしてきました。私たちの苦労を返せです」
唯「え…えーと…?どゆこと?澪ちゃんは?」
憂「どうしたんだろうねー?澪さんに直接聞いてきたら?♪」
和「ムダよ、ああなったら澪は誰の話もきかないわ…ほら唯、澪のケーキ食べていいわよ。澪はダイエットしてるからケーキはいらないみたいよ」
唯「いいの?いっただきまーす」
和(ほんとに唯の人生を澪に任せてだいじょうぶかしら…)
憂(澪さんの食べかけを…今の澪さんが聞いたら卒倒しそう♪)
おしまい!
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