京太郎「一日一万回、感謝のツモ切り」 (260)
須賀京太郎 15歳 春
己の雀力に限界を感じ悩みに悩みぬいた結果
彼がたどり着いた結果(さき)は
感謝であった
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469950459
京太郎「なぁ、咲」
咲「何?」
京太郎「もしさ……俺が麻雀やってなかったら、今頃自分はどんな感じだったと思う?」
咲「え? どうしたのさ、いきなり急に」
京太郎「いや、ふと気になってな」
咲「うーん……そうだねぇ……」
咲「とりあえず、京ちゃんは勿論、私も麻雀部には入ってないことになるのかな」
京太郎「俺が連れてきたわけだしな」
咲「てことは和ちゃんや優希ちゃん、部長や染谷先輩のこともよく知らなくて……」
京太郎「うんうん」
咲「……中学の頃と似たような変わらない感じ?」
京太郎「それってさ、今とどっちが楽しいと思う?」
咲「それはもちろん、今だよ!」
京太郎「そっか……なら、やっぱ麻雀には感謝しないとな」
咲「それにしても、変なこと聞くね。何かあったの?」
京太郎「なんかさ、申し訳なくなったんだ。麻雀に」
咲「え?」
京太郎「ほら、俺って麻雀弱いだろ?」
咲「まぁ、初心者だし……」
京太郎「俺たちさ、麻雀のおかげでこうして皆と出会って、楽しくやってるわけだ」
京太郎「それなのに、俺はこんなに弱いじゃん。何か麻雀に、申し訳なくなってさ」
咲「……京ちゃん、変なものでも食べた?」
京太郎「俺は真面目な話をしてるんだっつーの!」
咲「よくわからないけどさ、弱いのが嫌なら、強くなればいいんじゃない?」
京太郎「そんなホイホイ強くなれれば苦労しねーよ」
咲「プロの人たちだって、最初はみんな弱かったんだよ」
京太郎「と言われてもな……」
咲「それ以外にも、感謝? を示したいなら、色々あるんじゃない?」
京太郎「例えば?」
咲「うーん……卓を拭くとか、部室の掃除をするとか……」
京太郎「それ、いつもやってるわ」
咲「あ、ありがとう……ごめん……」
咲「ま、まぁ、京ちゃん初心者なんだから、これからどんどん伸びるよ!」
咲「ほら、私も協力してあげるからさ」
京太郎「伸びる……か。でもなぁ……」
『リンシャンツモ。70符2飜は1200・2300』
京太郎(どれだけ鍛えても……)
京太郎(ああは、なれるとは思えないんだよなぁ)
・
・
・
京太郎(お、トップ……初心者卓だけど)カチカチ
京太郎(へへへ……やっぱ楽しいよなぁ、麻雀って)
京太郎(和や優希、部長、染谷先輩……友達もいっぱいできたし)
京太郎(これも全部、麻雀のおかげだよな……)
京太郎(…………)
京太郎(やっぱ、少しでも恩を返したい)
京太郎(咲たちはきっと、次の県大会でも優勝して、全国に行くだろう)
京太郎(でも、俺は全国とかそんな力はない)
京太郎(俺に、やれることは……何か……)
京太郎(……………………)
京太郎は考えた。
悩みに悩んだ。
そしてしばらく後、麻雀マットと牌を部屋に持ってきた。
京太郎(よし……明日は休日だな。やるぞ!)
自分自身を育て、最高の仲間たちとも出会わせてくれた、麻雀への限りなく大きな恩
自分なりに少しでも変えそうと思いたったのが
一日一万回 感謝のツモ切り!
気を整え 拝み 祈り ツモって 切る
一連の動作を一回こなすのに当初は5~6秒
一万回ツモ切り終えるまでに初日は18時間以上を費やした
和「須賀君、どうして机の中にタオルを敷いてるんですか?」
京太郎「授業中に牌の音を出したら、まずいからな」
和「?」
ツモ切り終えれば倒れる様に寝る
優希「京太郎、何ニヤニヤしてるんだじぇ?」
京太郎「いや、麻雀への感謝の示し方を見つけてな」
まこ「……京太郎、疲れとるのか?」
久(雑用押し付けすぎたのかしら……)
起きてはまたツモ切るを繰り返す日々
一ヵ月が過ぎた頃 異変に気付く
京太郎(…………!)
京太郎(どういう……ことだ……!?)
一万回ツモ切り終えても 日が暮れていない――――――――――
今日はここまで。
予定では6~7回で終わります。ちなみにシリアス展開は全くありません。
荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」
↓
信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」
↓
鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋
↓
信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」
↓
>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの鰹節をとってくれ」
ハート「チェイス、そこの鰹節をとってくれ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469662754/)
余談
7 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします sage 2016/07/28(木) 09:06:48.44 ID:10oBco2yO
ターキー肉チーッスwwwwww
まーたs速に迷惑かけに来たかwwwwwwwww
9 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします sage 2016/07/28(木) 09:12:33.84 ID:LxY8QrPAO
>>7
はいNG設定
この速さである
相変わらずターキー肉くん=>>1という事を隠す気も無い模様
31 ◆xmciGR96ca4q sage saga 2016/07/28(木) 12:50:19.79 ID:g6WSU+sH0
昨夜寝ぼけてスレ立てミスったんで憂さ晴らしも兼ねて久々のロイミュ飯でした。書き溜め半分残り即興なんで色々アレかもしれませんがアレがアレなんでアレしてください何でもシマリス(熱中症
建てたら荒れると判ってるスレを憂さ晴らしに建てる
つまり>>1は自分の憂さ晴らしにs速を荒らして楽しんでる
うーん、いつも通りのクズ>>1で安心するわー
『決まったぁーっ! 長野県代表は、清澄高校!』
県大会が終わる頃 完全に羽化する
京太郎(……9998、9999、10000!)
感謝のツモ切り 1時間を切る!!
久「よーし、全国出場おめでとうパーティー始めるわよ!」
優希「おー……って京太郎、何してるんだじぇ?」
京太郎「祈ってる」
和「最近の須賀君、どうしたんでしょうか……」
咲「個人戦も『いま俺自身が大変でそれどころじゃない』とか言って出なかったしね」
まこ「そっとしておきんしゃい……」
かわりに 祈る時間が増えた
そして
久「……それじゃ、そろそろ暗くなってきたし、今日の部活は終わりにしましょう」
和「そうですね。じゃあ皆さん帰りましょうか」
優希「うむ……って聞いてたか? 今日もそこで祈ってる犬」
京太郎「…………」ツカツカ
咲「京ちゃん?」
タンッ!!
京太郎「…………」
まこ「どうしたんじゃ、京太郎? いきなり牌を切ったりなんかして」
京太郎「……ああ、すいません。そうですね、帰りましょうか……」
京太郎「ふ、ふふふふ……はははは……」
咲「きょ、京ちゃん……?」
まこ「もしかして今度の合同合宿、久にハブられたからおかしくなっとるんじゃ……」
久「そ、そんな! だって連れてくわけにもいかないでしょ!」
優希「そもそも京太郎がおかしいのは、ここずっとだじぇ」
和「…………」
和(いま……須賀君が打った後で、牌の音が聞こえたような……)
和(気のせい、ですよね……)
京太郎の打牌は 音を置き去りにした
・
・
・
京太郎(…………)
京太郎(俺の雀力は、相変わらず最低レベルのままだ)
京太郎(だが、もしあの手が使えれば……誰にも負ける気はしねぇ)
京太郎(確かみんなが行ってる合宿所は、県外に出てすぐそこだったな)
京太郎(……試して、みるか)
合宿所
文堂「うわ、あの卓すごい」
蒲原「入りたくないなー」
咲「…………」
衣「…………」
靖子「あと一人」
久「じゃあ私が入って、久しぶりに本気……」
スッ
京太郎「お願いします」
咲「きょ、京ちゃん!?」
衣「む?」
靖子(……誰!?)
久「す、須賀君!? 何でここにいるの!?」
京太郎「え? いや場所は聞いてましたんで、普通に来ました」
久「そういうこと言ってるんじゃない!」
靖子「おい、誰なんだこの少年は?」
咲「え、えっと……一応、うちの部員で……」
京太郎「清澄一年、須賀京太郎です。咲、天江さん、藤田プロ。ぜひ俺を加えてください」
久「いやいやいや、ちょっと待ちなさい須賀君!」
ニャニャ!オトコガイルシ!
ワハハ、ソウイエバキヨスミハキョウガクダッタナー
アー、オレアイツ、プールデミタコトアルワ
オトコハカエルッスヨ、シッシッ!
京太郎「何か騒がしいですね」
久「誰のせいだと思ってんの! 男子がここに来ちゃダメでしょ!」
京太郎「別に合宿に参加させろってわけじゃないです。一局打つだけですよ」
久「あのねぇ……須賀君は初心者でしょ。あの3人と打ってみなさい、瞬殺されるわよ」
京太郎「大丈夫です。でも今の俺は負ける気がしません」
久「そんなわけないでしょ。今すぐ帰りなさい」
衣「うむ、見たところお前からは何も感じない。衣の相手になるとは思えぬ」
靖子「……まぁ、度胸は認めてもいいけど、初心者が入れる卓じゃない」
京太郎「……確かに俺には、才能は無いかもしれません」
京太郎「ですが、そんなものに頼る必要なんかなくなったんですよ」
衣「ほう、では何を頼るというのだ?」
京太郎「……力、ですよ」
京太郎「才があろうとなかろうと、関係ない。圧倒的な力でねじ伏せる」
京太郎「今の俺には、それができると確信してます」
久「須賀君、ちょっといいかげんに……」
靖子「わかった、須賀君だったかな。そこまで言うなら一局だけ打とうか」
久「えぇ!?」
靖子「少し強くなった初心者が、調子に乗るのはよくあることだ」
久「いや、そもそも彼、ここ一ヵ月以上も打ってる姿さえも見てなくて……」
靖子「久の後輩でもあるし、一度現実ってものを教えてやるのもいい」
京太郎「ありがとうございます! 咲と天江さんも、よろしいですか?」
衣「構わん。だが、衣の麻雀に凡夫が耐えられるとは思えんがな」
咲「きょ、京ちゃん、本気?」
京太郎「よろしくお願いします」
久「はぁ……須賀君、気を失わないようにね」
透華「」ポツーン
京太郎「その前に一つ。俺の後ろに、何か見えますか?」
咲「え? 後ろ?」
衣「……?」
靖子「いや、特に何も。観戦者はいるけど」
京太郎「そうですか……いや、変なこと聞いてすみません。始めましょう」
衣(……この男は、凡夫。それは間違いなきこと)
靖子(だが……虚勢にも見えない、この自信はどういうことだ……?)
咲(京ちゃん……一体どうしたの?)
この場にいる、誰もが見えていなかった。
京太郎の背後の、観音像を。
東1局
靖子「リーチ」
咲(早い……これはオリかなぁ)
衣(さて、お手並み拝見といくか)
靖子(七対子の一索待ち……河に四索がある、ひっかけだ)
靖子(さて、どう出る? 少年)
京太郎「……」タンッ
靖子(なっ……ド真ん中の無筋だと!?)
京太郎「……通し、ですよね?」
靖子「あ、あぁ……」
・
・
・
靖子「テンパイ」
咲「ノーテンです」
衣「ノーテン」
京太郎「テンパイ」
衣「……えっ?」
咲「一索単騎の、形式テンパイ……?」
京太郎「これが当たると、思ったんでな」
靖子(馬鹿な、そんなビタ止め……偶然か?)
京太郎「確信しましたよ……この麻雀、俺に負けはありえないって」
靖子「な、何!?」
東2局
衣「さて、そろそろ御戸開きといこうか」ゴォッ
靖子(始まったか……衣の支配)
咲(一向聴地獄……大会の時も思ったけど、やっぱり手ごわい……)
靖子(しかも、このまま行くと海底は……)
京太郎(…………)
京太郎「……リーチ」
咲(え? ラスト一巡でリーチ?)
靖子(衣の支配を突破したか……しかし)
衣「無駄だ。海底をツモるのは衣、有象無象に和了れはせぬよ。リーチだ」
京太郎「へぇ……じゃあ、試してみましょうか」
衣「ふん……何をしようと、この海底で終わりだ」ツモッ
京太郎「…………」
衣「……な……!?」
靖子「どうした?」
咲「衣ちゃん……もしかして、和了れなかったの!?」
衣(馬鹿な……確かに海底は、七筒を感じていた……)
衣(なぜ、七筒ではないのだ!?)
衣「ぐ……」タンッ
京太郎「それです、天江さん。メンピン河底……裏々。満貫ですね」
衣「そ、そんな馬鹿な!?」
靖子「衣が海底で和了れないばかりか、振り込んだ……だと……!?」
京太郎「……いつから……」
衣「……!」
京太郎「いつから『海底は自分だけのもの』と、錯覚していたんです?」
衣「……!?」
京太郎「さぁ、まだ東二が終わっただけです。次いきましょう」
東3局
衣(そんな……なぜ、和了れなかった……)
靖子(手が進む……さっきの衝撃で、衣の支配が弱くなっている……?)
咲「ポン」
靖子(……! 今度は、こっちか……!)
京太郎(咲がポンか。ということは、おそらく……)
咲「カン」
京太郎(やはり、加カン!)
咲(嶺上牌は、四萬。これで、和了る)
京太郎「…………」
咲「……え……そんな……」
衣「……どうした、咲?」
靖子「まさか、お前まで!?」
咲「嘘……なんで、和了り牌じゃないの……」タンッ
京太郎「それだ、咲。タンピン三色ドラドラ、跳満」
咲「なっ……!」
靖子(ぐ、偶然なんかじゃない……この少年は……)
京太郎「さぁ、この親番で決めるとするか」
東4局
衣「うぅ……馬鹿な……」
咲「…………」タンッ
京太郎「咲、その牌……カンだ」
咲「……え……」
京太郎「咲も天江さんも、一つ大きな勘違いをしている」
衣「……なに……」
京太郎「確かに、天江さんは海底、咲は嶺上牌を支配しているのかもしれない」
京太郎「だが……その支配は、絶対的なものではないってことだ」
靖子「……どういうことだ……?」
京太郎「圧倒的に強大で、抗いようのない強さ……牌の神様ですら屠るような力」
京太郎「そんなモノと戦っても、その支配力は維持できるのか?」カシッ
咲「……! カンドラ、モロ乗り……!」
衣「ま、まさか……」
京太郎「見せてやるよ。これがその力……神をも滅ぼす力だ!」
京太郎「ツモ! タンヤオ、嶺上開花……ドラ4! 親っ跳ね、18000!」
京太郎「咲……責任払いで、トビだ」
咲「…………」ボーゼン
衣「……な、何者なんだ、お前は……」
靖子「まさか、君も……牌に愛された子なのか?」
京太郎「いえ、俺に才能はありません。凡夫なのは間違いないでしょう」
京太郎「でも……そんな凡夫でも、力があれば勝てる」
京太郎「たとえ相手が、牌に愛された子……麻雀の神様を味方につけた相手でも」
京太郎「だから、俺は牌に愛された子じゃない。言うなれば……」
京太郎「『神殺し』須賀京太郎……とでも、呼んでください」
須賀京太郎、15歳。
まだまだ厨二病が抜けきっていない年齢であった。
今日はここまでです。
次回はこの対局の、京太郎サイドからの回想みたいな感じになります。
まだ全部書きあがってはいませんが、予定ではあと4回で終わります。
京太郎「いや~、あんなうまくいくなんてな」
京太郎「他校の女の子の連絡先もいっぱいゲットできたし、行ってよかった」
京太郎「今のところ俺の最強モテモテ計画、絶好調だ!」
京太郎「本当に麻雀には感謝の言葉もないぜ」
一週間前
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東一局
靖子「リーチ」
咲(早い……これはオリかなぁ)
衣(さて、お手並み拝見といくか)
靖子(七対子の一索待ち……河に四索があるひっかけだ)
靖子(さて、どう出る? 少年)
京太郎(藤田プロからリーチか……うーん、とりあえず筋だし一索でも切りたいけど……)
京太郎(ここで、須賀式観音・参乃掌!)
須賀式観音・参乃掌は
相手の手牌を引き寄せ 即座にもとに戻すという 危険牌の察知等に有用な掌
靖子の手牌を確認し戻すまでの間 0.1秒を切る
京太郎(ふむふむ……って、一索当たってるじゃん! あぶねーあぶねー、別の牌切っとこ)
京太郎(そうだ、せっかくだから無筋を切った方がかっこいいな)タンッ
靖子(なっ……ド真ん中の無筋だと!?)
京太郎「……通し、ですよね?」
靖子「あ、あぁ……」
京太郎(よーし、次は壱乃掌だ。ツモられちゃ終わりだしな)
須賀式観音・壱乃掌は
山や王牌にある牌をめくり確認し戻す 最もシンプルな掌
都合の悪い牌なら そのまま別の牌にすり替えることも可能
京太郎(ふんふん……げ、藤田プロ次で一索ツモるじゃん。隣の牌と入れ替えとこ)ヒュンヒュン
京太郎(さて、どうしよう。ツモ牌操作すれば俺が和了ることなんて余裕なんだけど……)
京太郎(ここは一発、当たり牌のビタ止めでビビらせときますか!)
0.1秒って普通に見えませんかね…
靖子「テンパイ」
咲「ノーテンです」
衣「ノーテン」
京太郎「テンパイ」
衣「……えっ?」
咲「一索単騎の、形式テンパイ……?」
京太郎「これが当たると、思ったんでな」
京太郎(てゆーか、手牌見たから当たり前なんだけど)
靖子(馬鹿な、そんなビタ止め……偶然か?)
京太郎「確信しましたよ……この麻雀、俺に負けはありえないって」
靖子「な、何!?」
京太郎(いける……須賀式観音は、誰の目にも追えてない……)
京太郎(ならば俺に、負けはありえない!)
東2局
衣「さて、そろそろ御戸開きといこうか」ゴォッ
靖子(始まったか……衣の支配)
咲(一向聴地獄……大会の時も思ったけど、やっぱり手ごわい……)
靖子(しかも、このまま行くと海底は……)
京太郎(うわー、これが噂の一向聴地獄か。確かに全然張れないな)
京太郎(ま、俺には関係ないんだけど。はい壱乃掌)ヒュンヒュン
京太郎(ふむふむ、次順ツモは西か。いらないな……)
京太郎(あ、次の咲のツモ三索じゃん。これ欲しいから俺の西とすり替えとこ)ヒュンヒュン
京太郎(えーっと、このままいくと海底は天江さんか。やっぱ和了るのかなぁ)
京太郎(ふっふっふ……皆の驚く顔が楽しみだぜ)
京太郎「……リーチ」
咲(え? ラスト一巡でリーチ?)
靖子(衣の支配を突破したか……しかし)
衣「無駄だ。海底をツモるのは衣、有象無象に和了れはせぬよ。リーチだ」
京太郎「へぇ……じゃあ、試してみましょうか」
京太郎(壱乃掌! なるほど海底は七筒で……次は参乃掌!)ヒュンヒュン
この間 0.1秒を切る
京太郎(うえっ、本当に七筒で和了ってるよ! まったく、牌に愛された子ってマジでチートだな……)
京太郎(だがしかーし! 王牌に俺の和了り牌、二萬があるのは確認済みだ!)
衣「ふん……何をしようと、この海底で終わりだ」ツモッ
京太郎(今だ! 海底と王牌の牌をすり替える!)ヒュンヒュン
衣「……な……!?」
靖子「どうした?」
咲「衣ちゃん……もしかして、和了れなかったの!?」
衣(馬鹿な……確かに海底は、七筒を感じていた……)
衣(なぜ、七筒ではないのだ!?)
京太郎(すんません、俺がすり替えたからっす)
衣「ぐ……」タンッ
京太郎「それです、天江さん。メンピン河底……裏々。満貫ですね」
京太郎(本当は裏は乗ってなかったんだけど、せっかくだしすり替えておいた)
衣「そ、そんな馬鹿な!?」
靖子「衣が海底で和了れないばかりか、振り込んだ……だと……!?」
京太郎「……いつから……」
衣「……!」
京太郎「いつから『海底は自分だけのもの』と、錯覚していたんです?」
衣「……!?」
京太郎「さぁ、まだ東二が終わっただけです。次いきましょう」
京太郎(き、き、き、気ン持チイイイイイイイイ!!!!!!!)
東3局
衣(そんな……なぜ、和了れなかった……)
靖子(手が進む……さっきの衝撃で、衣の支配が弱くなっている……?)
京太郎(うーん、いまいちだな……テキトーにツモをいい牌にすり替えとくか)ヒュンヒュン
咲「ポン」
靖子(……! 今度は、こっちか……!)
京太郎(咲がポンか。ということは、おそらく……)
京太郎(カンが、来る!)
京太郎(壱乃掌! 嶺上牌は四萬か……次は参乃掌!)ヒュンヒュン
京太郎(……四萬頭待ちか。ったく、ほんとにとんでもない連中だな)
京太郎(うんうん、この手牌だと二索は浮くな)
京太郎(対面の山の、左から4番目の上の牌が二索なのは壱乃掌で確認済み……)
京太郎(そして俺は、二索できっちり和了れるようにツモを操作していた)
咲「カン」
京太郎(やはり、加カン!)
京太郎(加カンできないように咲のツモ牌を操作することも、勿論できたが……)
京太郎(俺は、もっとカッコよさを求める!)
咲(嶺上牌は、四萬。これで、和了る)
京太郎(この瞬間、嶺上牌と二索をすり替える!)ヒュンヒュン
咲「……え……そんな……」
衣「……どうした、咲?」
靖子「まさか、お前まで!?」
咲「嘘……なんで、和了り牌じゃないの……」タンッ
京太郎「それだ、咲。タンピン三色ドラドラ、跳満」
咲「なっ……!」
靖子(ぐ、偶然なんかじゃない……この少年は……)
京太郎「さぁ、この親番で決めるとするか」
京太郎(やっべええええええ須賀式観音最高おおおおおおおおお)
東4局
衣「うぅ……馬鹿な……」
京太郎(よーし、最後は俺も嶺上開花で決めるとするか! 悪いが咲、トんでもらうぜ!)
京太郎(ん、配牌で二筒が対子か。なら参乃掌! 全員の手牌を確認!)ヒュンヒュン
京太郎(よし、誰の手牌にも二筒はない。じゃあ残り2枚は山か王牌のどこかに……)ヒュンヒュン
京太郎(あった! 1枚を俺がツモるようにして……)ヒュンヒュン
京太郎(あとは、咲に二筒回りを引かせないようにして……これでオッケー!)
京太郎(よし、張った! タンヤオのみのテンパイ!)
京太郎(そしてあとは、咲のツモに二筒を送り込む! すると……)ヒュンヒュン
咲「…………」タンッ
京太郎(来た!)
京太郎「咲、その牌……カンだ」
咲「……え……」
京太郎「咲も天江さんも、一つ大きな勘違いをしている」
衣「……なに……」
京太郎「確かに、天江さんは海底、咲は嶺上牌を支配しているのかもしれない」
京太郎「だが……その支配は、絶対的なものではないってことだ」
靖子「……どういうことだ……?」
京太郎「圧倒的に強大で、抗いようのない強さ……牌の神様ですら屠るような力」
京太郎「そんなモノと戦っても、その支配力は維持できるのか?」
京太郎(ここで新ドラ表示牌を、一筒にすり替える!)ヒュンヒュン
咲「……! カンドラ、モロ乗り……!」
衣「ま、まさか……」
京太郎「見せてやるよ。これがその力……神をも滅ぼす力だ!」
京太郎(嶺上牌を、場所確認済みの俺の和了り牌にすり替える!)ヒュンヒュン
京太郎「ツモ! タンヤオ、嶺上開花……ドラ4! 親っ跳ね、18000!」
京太郎「咲……責任払いで、トビだ」
咲「…………」ボーゼン
衣「……な、何者なんだ、お前は……」
靖子「まさか、君も……牌に愛された子なのか?」
京太郎「いえ、俺に才能はありません。凡夫なのは間違いないでしょう」
京太郎(実際、須賀式観音がなかったらボコボコにされてたわけだし)
京太郎「でも……そんな凡夫でも、力があれば勝てる」
京太郎「たとえ相手が、牌に愛された子……麻雀の神様を味方につけた相手でも」
京太郎「だから、俺は牌に愛された子じゃない。言うなれば……」
京太郎「『神殺し』須賀京太郎……とでも、呼んでください」
京太郎(決まったああああああああああっ!)
靖子「…………」
咲「…………」
衣「…………」
観戦者一同(((((神殺しはないでしょ…………)))))
久「ま、まぁ、ともかく……凄いわね、須賀君」
ゆみ「おいおい久。こんな強い一年がいるなんて、教えてくれてもよかったじゃないか」
久「いや、私が知ってる須賀君は弱々だったんだけど……」
和「須賀君、一体何が……ゆーき、何か知りませんか?」
優希「私も何が何だかサッパリだじぇ……地獄の底で悪魔と取引でもしてきたのか……?」
美穂子「須賀君……でしたっけ。今度はぜひ私とも打ってくれないかしら?」
ゆみ「ふむ……それほど強いなら、ぜひ鶴賀にも一度来てほしいところだな」
桃子「ええっ!? ダメっすよ、男は狼っすよ!」
智美「ワハハ、連絡先交換しとこかー? 須賀君」
透華「きーっ! 私より目立つなんて許しませんわ! 倒してさしあげます!」
靖子「……まいったな、とんだ化け物がいたもんだ」
衣「うむ……これほどの力を持ちながら、全く強そうな気配を持ち合わせていないのが更に恐ろしい」
咲「京ちゃん……凄いや……」
ワイノワイノ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
オカルトはいわば「牌に愛されている」で片づけられる天然イカサマだからな
そんなイカサマと努力の末に会得したイカサマなら、麻雀に深く感謝してる方が勝つのも道理
京太郎「来てる……俺の時代、完全に来てる……」
京太郎「この調子で、全国でも活躍し、テレビ中継とかされれば……」
和『素敵です須賀君! 抱いてください!』
美穂子『ああんもう、抜け駆けしちゃだめよ!』
桃子『先輩一筋だったっすけど……その、京さんのことも、ちょっといいかなって……』
智紀『須賀君……好き……』
まだ見ぬ巨乳雀士A『あの……私のこと、あったかくしてくれたらなって……』
まだ見ぬ巨乳雀士B『京太郎さん、神社の入り婿とか興味ありませんか?』
京太郎「うへ……うへへへへ……」
京太郎「ありがとう麻雀……感謝、感謝……」
京太郎「待ってろ、全国! 神殺しが大暴れしてやるぜ!」
今日はここまでです。
明日はもしかしたら、もうちょっと遅い時間になるかもしれません。
>>79
実際0.1秒を切るのはテレプシコーラで、百式観音はそれよりも速いから
まぁ視認するのは不可能レベルだと思ってくれれば……
乙。
しかし本来「この形になったら必ずこうなる」はずのオカルトをこんな形で崩されたら
何かしらの反動がありそうだよな……世界の法則が乱れるみたいなのが
全国大会
恒子「決まったぁーっ! 決勝進出は、清澄高校と、臨海女子!」
恒子「清澄は初出場ながら、先鋒の須賀選手の圧倒的リードを保ったまま、余裕のトップ通過!」
健夜「5人とも良い選手ですけど……やはり一番恐るべしは、須賀選手ですね」
健夜「あの圧倒的な支配力、まるで全ての局を意のままに操っているかのようです」
健夜「その力は牌に愛された子と名高い、神代小蒔もまるで勝負になりませんでしたから」
恒子「『神殺し』の異名は、伊達ではないということですね」
健夜「対戦相手は口々に『全く強そうには感じなかった』というのがまた凄まじいです」
健夜「あれほどの力を、完全に隠せるほどに……彼の真の力は一体どれほどなのか、私にもわかりません」
まこ「よっし、これで決勝進出じゃのう!」
久「ふふふ、覚醒した須賀君を先鋒に置く私の作戦が、うまくハマったわね」
咲「一回戦なんか、京ちゃんのところで3人まとめてトばしちゃったもんね」
京太郎(あれはちょっとやりすぎたな……)
和「こんなに楽な大会になるとは、考えもしてませんでした……」
京太郎「あ、新タコス係。腹減ったからタコス買ってきてくれ」
優希(補欠落ち)「じぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
京太郎「ふぅ、食った食った。お、あれは……」
イイオモチダッタノデスノダ!!
デネー、ハルチャンガー
ノドカトアソブンダ!!
京太郎「阿知賀女子……そういえば、まだ『触って』なかったな」
京太郎「適度に離れて……須賀式観音!」サワサワ
宥「きゃあ!」
玄「な、ななななな!?」
灼「ん? どうしたの?」
憧「だ、誰!?」クルッ
穏乃「え?」
憧「も、もう、シズ! ビックリさせないでよ!」
穏乃「何の話?」
宥「いま、お尻を触られたんだけど……」
玄「めっ、なのです!」
穏乃「えええええ!? 知らないよ!?」
憧「だって、後ろにいたのはシズじゃん!」
灼「私、別に触られてないけど……」
京太郎「次は、こっちだ! 須賀式観音」モミモミ
宥「きゃああああああっ!」
玄「こ、こら! おもちを揉んじゃいけないのです!」
憧「シズ! いいかげんにしなさいよ!」
穏乃「ぬ、濡れ衣だぁーーーーーっ!」
灼「みんな、何やってるの……」
京太郎「うむ、いいお尻、いいおもちだった」
京太郎「須賀式観音は、もはやカメラのスロー再生でも追えはしない速度。負ける要素は一切なし!」
京太郎「気力の充電もできたことだし、さっさとホテルに戻って寝るか」
翌日
恒子「さぁ、ついに始まります、決勝戦!」
恒子「制するのは、チャンピオン宮永照を擁する白糸台か!」
恒子「強豪臨海女子か! ダークホース阿知賀女子か!」
恒子「それとも、今大会一番の大活躍『神殺し』須賀選手の清澄か!」
恒子「王者の座をかけて、対局開始だぁーっ!」
京太郎(ふっ……俺の華々しい伝説の、生贄となってもらうぜ!)
玄「よ、よろしくお願いします!」
照「……よろしく」
智葉(何で男なんだ)
京太郎(チャンピオンに、前回3位、そして阿知賀のドラゴンロード……)
京太郎(まともにやったら歯が立たないだろうが、須賀式観音の前では塵も同然!)
京太郎(さぁいくぜ! まずは軽く壱乃掌でツモを見て……)ヒュン
バチィ!!!!!
京太郎(っっっっっ!?)
心滴拳聴(しんてきけんちょう)と、呼ばれる現象がある。
真の強者同士がぶつかり合う瞬間にはよくある、時間感覚の矛盾だ。
「死ぬ」という瞬間に時間がスローになり、自分の人生を振り返る……それに近い。
だかこの場合、自分ではなく相手がその時思っていたことを聞き取るのである。
京太郎(ば、馬鹿な……)
京太郎(壱乃掌が、叩き落とされた……!?)
須賀式観音で牌を見て、戻す。
それに要する時間は、何者にもとらえられぬ、まさに刹那の瞬間。
だが、京太郎はその狭間、確かに聴いた。
『それは、なしだよ。君』
震えながら顔を上げたその先は――――――――――
対面。京太郎を射抜く、チャンピオンの瞳。
今日はここまでです。
明日も遅くなりそうですが、日付が変わる前には投稿したいです。
何とかあと2回で完結はできそう。
前日
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菫「……と、これが向こうのブロックの準決勝の映像だ」
淡「へぇー、なかなか面白そうじゃん。特にこの先鋒の男子、やばすぎでしょ」
誠子「みんな手ごわそうですけど……やっぱりその中でも、飛び抜けてますね」
尭深「……昨年個人戦3位の、辻垣内智葉をも圧倒する力」
菫「どうだ、照? 彼を見て」
照「……今のところ、もう一回巻き戻せる?」
菫「ん、構わんが」
照「…………」
照(おそろしく速いすり替え。私でなきゃ見逃しちゃうね)
照(ていうか、できても普通やる? この大舞台で)
菫「勝てそうか? 照」
照「……これがMAXの速度かどうかはわからないけど、大丈夫」
照「多分、私の方が速いから」
菫「早和了りなら負けない、か。なら心配ないな」
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照「それほどの力を磨きあげたのは褒めてもいいけど、やってることは褒められない」
京太郎「まさか、宮永……照、さん。あなたも……」
照「そう。私も君と似たような力がある」
京太郎「……俺だけの、力じゃなかったってわけか……」
照「私もびっくりした。他の人のを見るのは、初めてだったから」
照「でも、それは不正行為ってやつ。フェアにやらなきゃ」
照「そうじゃなきゃ、真面目に取り組んできた人たちの本気と覚悟に対して、失礼でしょ」
京太郎「くっ……正論すぎて反論のしようがねぇ……」
※圧縮された時間の中での会話なので他の人には聞こえません
照「その能力、いつ身につけたの?」
京太郎「えーっと、かくかくしかじかで……」
照「なるほどね、麻雀への感謝から……って、やってることはむしろ冒涜じゃない?」
京太郎「いや、大会で活躍してモテモテになりたくて……」
照「モテモテって……そういえば、ちょっと小耳に挟んだんだけど……」
京太郎「何ですか?」
照「知ってる? この会場に妖怪がいるって噂」
京太郎「妖怪って、牌に愛された子とか、そういうのですか?」
照「いや、そういうのじゃない。本物の妖怪」
照「選手の女の子たちが、何人も被害に遭ってるみたいなんだけど」
京太郎「どんな妖怪なんです?」
照「なんでも突然、胸とお尻をなでくり回される感触があったとか」
京太郎「…………」
照「うちの尭深と淡も被害に遭ったみたい」
京太郎「…………」
照「……須賀君」
京太郎「そういえば、照さんの能力ってどんなです?」
照「誤魔化し方が強引すぎるけど……まぁいいや、教えてあげる」
ズズズ・・
照「紹介しよう。マジカルエステのサッキィちゃん」
京太郎「うおっ、びっくりした……って、これ……咲!?」
照「咲の写真をずーっとただ眺めたりとか、ペロペロしたりとか……」
照「あと何百枚何千枚と咲を写生してたら、出せるようになった。ついでに身体能力も向上した」
京太郎「変態じゃないっすか!」
照「変態じゃない。ていうかバレないことをいいことに、痴漢を繰り返す君に言われたくない」
京太郎「このサッキィちゃんとやらは、何ができるんです?」
照「性感マッサージとか、オーラをローションにしてのローションプレイとか……」
京太郎「やっぱ変態じゃないっすか!」
照「変態じゃない。ちょっと妹が好きなだけの姉だから」
京太郎「限度がありますよ!」
照「まぁ、痴漢に関してはもう許してあげるから、不正はなしの方向で」
京太郎「……須賀式観音・九十九乃掌!」シュババババ
照「無駄だってば」バシバシバシ
京太郎「ぐぅっ……」
照「速さに特化した能力だし、もっと鍛えれば私よりも早くなるかもしれないけど、今はまだ無理」
照「普通に打とうよ。別に弱いわけじゃないんでしょ?」
京太郎「いや、滅茶苦茶弱いです。何度咲たちに飛ばされたことか」
照「そ、そうだったの……まぁ、自業自得だと思って諦めて」
京太郎「くそぅ、この大会で伝説に残る雀士になって、モテモテになるはずが……」
照「モテたいなら、まっとうな手段で頑張って」
玄(なんだろう……何か濃密な会話が繰り広げられてるような気がするよ)
智葉(なんか知らんが清澄の男子、準決勝よりえらい弱くなってるな……)
恒子「さて、南場に突入! トップは宮永照、そして須賀選手はどうしたことか、ハコ割れ寸前だ!」
健夜「あれぇ……? なんか彼、普通に初心者レベルのような……あれぇ?」
京太郎(駄目だ……ヒラ打ちでなんか、勝てるわけねぇ……)
京太郎(ここまで、なのか……俺の力は……)
京太郎(もう、どうしようもないのか……?)
京太郎(……俺には……何が足りなかった?)
『でも、それは不正行為ってやつ。フェアにやらなきゃ』
『そうじゃなきゃ、真面目に取り組んできた人たちの本気と覚悟に対して、失礼でしょ』
京太郎(……考えてみれば、俺、全然真面目に麻雀やってなかったな)
京太郎(須賀式観音で、牌をすり替えまくって、楽して勝つばかり)
京太郎(最後にガチで打ったのって、何ヶ月前だっけ……?)
京太郎(でも、やっぱり勝ちてえよ、俺)
京太郎(『神殺し』須賀京太郎の伝説は、最後にボコボコに負けて、終わりました)
京太郎(そんなんじゃ、カッコつかねえもんな……)
京太郎(卑怯でも、何でもいい。絶対に勝って、フィニッシュしたい)
京太郎(……そうだ。俺に足りなかったものは、本気と覚悟)
京太郎(この力で、絶対に勝てると思って……安心の上に、あぐらをかいていた……)
京太郎(必要なのは、そう。この対局で、絶対に勝つために……)
京太郎(これで終わってもいいという覚悟!)
その瞬間、京太郎の体が光った。
轟音と共に、爆風が弾ける。
玄「きゃあっ!」
智葉「な、何だ……!?」
照「……!」
「This way……」ゴゴゴゴゴ・・
照「なっ……!」
智葉「」パクパク
玄(あれ? 清澄の男の子、急に老けたような……気のせいかな?)
そこにいたのは、全身の筋肉が膨れ上がり。
髪を大きく逆立たせた、大男であった。
控室の咲たちも、実況も、大勢の観戦者たちも。
誰もが、その異様な光景に呆然としていた。
状況を理解できたのは、ただ一人。
照(方法はわからないが、強制的に成長したんだ……)
照(私を倒せる年齢(レベル)まで!)
以上です。次回が最終回です。
ちなみに、すこやんとかは別に能力者ではないです。
強い人が発現するなら京ちゃんが念使えるのはおかしいし。
京太郎「……南1だ」
照「くっ……」
京太郎「さいしょは、北……」タンッ
ヒュンヒュンヒュン
京太郎「……ツモ。倍満」
照(……! 観音の腕が、捉えられない……!)
照(雀力は大して変わってなさそうだけど、やっぱり能力の向上が半端ない!)
照(駄目だ……止められない……!)
京太郎「ロン。跳満」
もう これで 終わってもいい
京太郎「ロン。倍満」
だから ありったけを
京太郎「ツモ。倍満」
照(すり替えを、追いきれない! 速すぎる!)
京太郎「ロン。跳満」
玄(こ、これが『神殺し』の本気なの……!? 強すぎるよ……!)
京太郎「ツモ。三倍満」
智葉(普通の麻雀させてくれ……)
京太郎「ツモ。跳満」
照(この一局に、持ちうる才能と資質をすべて投げ出した)
京太郎「ロン。倍満」
照(生涯にわたって、麻雀を打てなくなってもいい)
京太郎「ツモ。跳満」
照(それほどの覚悟をもって……!)
京太郎「ツモ。純正九蓮宝燈……終わりだ」
恒子「な、なんと、先鋒戦で須賀選手が、他3人を飛ばして終了!」
恒子「これが、須賀京太郎! これが、神殺し! 強い、圧倒的に強い!」
恒子「優勝は、清澄高校だぁーっ!」
玄「」チーン
智葉「」チーン
京太郎「…………」
照「……やられたよ。君の覚悟を、甘く見ていたね」
照「おめでとう。これで須賀君は、伝説を作った」
京太郎「…………」
照「でも、それほどまでに力を使い切っちゃったら、もう能力は使えないね」
京太郎「…………」
照「そんな体になってまで……君は本当に、それでよかったの?」
京太郎「…………」
照「……須賀君?」
智葉「……おい、まさか……」
玄「……えっ?」
智葉「こ、こいつ……」
「死んでいる……」
一年後
久「何とか、晴れてよかったわね」
まこ「そうじゃのう。雨の墓参りってのも、それはそれで風情あるかもしれんが」
咲「……もう、一年になるんだね。あの時から」
和「今でも、昨日のことのように思い出します……」
優希「えっと、京太郎の墓は確か……」
久「あのへんだったわね……あら? 誰か先客がいるわね」
照「……ん、咲?」
咲「お姉ちゃん!?」
久「あら、宮永プロも須賀君の墓参りに来てくれたの?」
和「確か、大会の解説を担当していたのでは?」
照「私の担当分はもう終わったから……だから帰省ついでに、ちょっとね」
咲「そうだったんだ……」
まこ「宮永プロは、京太郎とあの一局を打ったんじゃからな……しかも地元となれば墓参りにも来るか」
照「それもあるし……彼は私にとって、特別な存在だったから」
優希「じぇじぇっ!?」
咲「お、お姉ちゃん、まさか京ちゃんのこと……!?」
照「いや、それはない。断じて」
照「ただ……特別な力を持ちあった仲だから。もしかしたら、世界で唯一……ね」
咲「……?」
照「そういえば、大会……惜しかったね」
咲「うん。残念だけど、一歩及ばなかったよ」
咲「でも、正直ちょっと安心もしたんだ。あんな優勝なら、もう二度とゴメンだから」
優希「咲ちゃん、すごい勢いでワンワン泣いてたもんなー」
咲「ゆ、優希ちゃんだって……ていうか皆、そうだったじゃん!」
和「まぁ、負けたおかげで、こうして須賀君の命日に来れましたしね」
まこ「わしらも頑張ったんじゃが……やはり、埋めきれんかったのう」
まこ「久と……京太郎の、抜けた穴は」
久「あはは、須賀君と並べられると、私はおまけにもならないわよ」
照「…………」
えり『準々決勝、終了です。前年度優勝の清澄高校、ここで姿を消しました』
咏『ん~、今年の清澄も強いは強いんだけど、やっぱ須賀君がいればって思っちゃったねー』
えり『須賀選手……去年の団体の話題は、彼一色でしたね』
咏『そりゃもう、あれほどまでに圧倒的だったんだから、そうもなるさ」
咏『彼の雄姿は、きっと見てた人全員が、一生忘れない』
咏『この大会に永遠に残り続ける、伝説になるだろう』
えり『……そう考えると、今後の選手たちは、ある意味厳しくなりましたね』
咏『そうだねぃ。どんだけ活躍する選手が今後出てきても、どうしても言われちゃうだろうさ』
咏『「強いけど、須賀京太郎には及ばないだろう」……ってね』
淡『あーあ、清澄負けちゃったか。テルーの妹と打つの、楽しみだったんだけどな』
誠子『こらこら、まだ私たちが決勝に行けると決まったわけじゃないぞ』
菫『でも、残念は残念だな。特に照はそうだろう』
照『咲をなぐさめるついでに、イチャついてくる』
尭深『相変わらずですね……』
淡『……須賀君がいれば、きっと勝ってたのにな……』
照『……!』
誠子『おい、淡』
淡『だってぇー、亦野先輩もそう思うでしょ。化け物みたいに強かったんだもん』
誠子『まぁ、それは否定しないけど』
淡『ついでにカッコいいって、私の学年では人気だったんですよ』
尭深『あ、私の学年でも、一緒に打った宮永先輩を羨ましがってた子いました……』
菫『生きていれば、どれほどの雀士になったんだろうな……正直、神殺しって二つ名はどうかと思うが』
誠子『ほらほら、それよりも次の相手の研究だ。先輩方が応援にきてくれてる前で、みっともない試合するなよ』
淡『あー、去年の準決勝の亦野先輩みたいな?』
誠子『なんだと!』
照(…………)
『くそぅ、この大会で伝説に残る雀士になって、モテモテになるはずが……』
『モテたいなら、まっとうな手段で頑張って』
照(須賀君、君の願いは叶ったよ)
照(一年たっても、みんなが君の噂をしてる。みんなが君を覚えてる)
照(今の君は、空の向こうで、笑顔でいられてるのかな?)
ビュオオオッ!!
照「ん……」
和「きゃあっ!」
久「!」
優希「じぇっ!」
咲「……ふぅ、びっくりしたー。いきなり凄い風が吹くんだもん」
和「……今の……ただの風、ですよね?」
まこ「それ以外に何かあるんか?」
和「あ、あの……気のせいかもしれませんが……その……」
優希「和ちゃん、どうしたんだ?」
和「……胸とお尻を、その……撫でられたような……」
久「え、和も!?」
照「…………!」
咲「私は、ただの風としか……」
優希「私もだじぇ」
まこ「二人の勘違いじゃないんか?」
久「う、うん……そりゃそうよね……」
優希「……いや、これはきっと天国の京太郎が、風に化けてエロエロなことをしようとしたんだじぇ!」
咲「あはは、まさか」
和「そんなオカルトありえません……」
優希「そうとは限らんじぇ。何せここは、あのエロ犬の墓前だからな! エロエロの霊がいるじぇ」
まこ「そんな霊、おったとしたら、あの世で仏罰を食らうぞ」
照「……いや、そうかもしれない」
咲「お姉ちゃん?」
照「世の中にはいろんな人がいるんだし、きっとあの世にもいろんな人がいる」
照「だから、もしかしたら、女の子の胸やお尻を触るのが大好きな、ちょっとエッチな神様」
照「……いや、仏様だっているかもしれないよ」
照「空の向こうの須賀君も、もしかしたら、そんな感じかも」
久「えらい煩悩にまみれた仏様ね……」
まこ「少なくとも、御利益はなさそうじゃのう……」
優希「でも、もしそうなら、触ったのは和ちゃんと竹井先輩だけってわけか」
優希「……って、くぉらー! 私をスルーするとはどういうことだ、京太郎ー!」
咲「ぷっ……あはははは!」
まこ「やれやれ、いてもいなくても騒がせてくれる奴じゃのう、京太郎は」
まこ「さて……じゃあ、そろそろ帰るとするかの」
久「私はちょっと、大学の方に寄ろうかしら」
和「インカレでも活躍中ですからね、竹井先輩は」
優希「咲ちゃんのお姉さんは、どうするんだじぇ?」
照「とりあえず、咲と一緒に実家に戻ろうかなと」
咲「お父さんも喜んでたよ。久々に照に会えるって」
照「よし、咲。姉妹水いらずで、一緒にお風呂でも入ろっか」
咲「お、お姉ちゃん……なんか目、怖いんだけど……」
優希「よし、それじゃあまたなー! 京太郎!」
和「また来年の今日、お会いしましょう、須賀君」
まこ「おいおい、それじゃ大会負けてる前提になるぞ」
和「そ、そうでした……」
久「ふふ、須賀君なら数日遅れでも許してくれるわよ」
咲「じゃあね、京ちゃん!」
照「…………」
ねぇ、須賀君。
君は麻雀に出会えて、幸せだったかな?
何度も何度も負かされて、挫折して、苦しんで。
そして、一瞬の栄光と引き換えに、命を落として、それでも満足できたのかな?
今となっては、私には分からないけど、一つだけ言えることがあるよ。
須賀君、君のことは誰もが忘れない。
清澄高校一年『神殺し』須賀京太郎。最強の雀士として、みんなの心に残り続ける。
それだけは、間違いないよ。
照(60年先か、70年先か……いつか私も、そっちに行くからさ)
照(そうしたら、また一緒に打とうか。もちろん、ズルはなしでね)
咲「さっ、行こう。お姉ちゃん」
照「……うん、いま行く」
最後に、くるりと墓へ振り返る。
照「またね、須賀君」
応えるように、ふわり、と。
一陣の風が、胸を撫でていった気がした。
END
以上です。ありがとうございました。
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