響「ごめんなさいと」春香「ありがとう」 (11)
---なんでだろう?
嬉しくて、暖かくて、でも寂しくて、冷たくて、
心の中がぐちゃぐちゃで、そのぐちゃぐちゃしたものが涙となって溢れ出てくる。
「feel 感じるまま、好きなメロディーでいい。それを心と呼ぼう。」
my songを歌う春香は、千早は、亜美は、真美は、伊織は、あずさは、真は、凄くキラキラしていて、
舞台袖のモニタ越しでそれを見ている自分とそのステージは近いはずなのに、なんだか遠く感じてしまう。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1467410493
セットリストを見たときには、わくわくしたんだ。
このメンバーで、この曲で、絶対に忘れられない一曲になるぞ!って。
765プロ初の、記念のドームライブ。
ずっとずっと夢見てた舞台。
ライブに出れないメンバーはいるけれど、始まりのメンバーで、特別な曲を歌う。
...961プロから移籍した自分が歌えないのは仕方がないよね、これは「おめでとう」のライブで、
何より1番「おめでとう」なのは、春香達だって思ったから。
だから自分は自分のできることを、完璧にしよう。
大丈夫、自分は完璧さ!って。
もちろん、自分は全力でステージをやりきった。「行ってこい」って、春香達を送り出せた。
誰にでも、今日の自分は完璧だったと誇ることができる。
悔いなんてひとつもないはず。
...なのに、「おめでとう」って暖かい気持ちに混じって、「悔しい」って冷たい気持ちが止まらない。
あぁ、やっぱり、あそこで、一緒に歌いたい。
みんなの特別な時間を、みんなで分かち合いたい。
その資格を持ってる春香達が羨ましい...。
こんなの、全然完璧じゃないぞ...。
ごめん、みんな...。
---
スタッフ「マイソン組みはけましたー!次のシフトお願いしまーす」
my songのあとのMCが終わり、次の卯月ちゃん達にバトンタッチできました。
千早ちゃんも、亜美も真美も、伊織も、あずさんも、真も、そして私も、みんな涙でメイクがぐちゃぐちゃです。
舞台袖にはけた私たちを、涙目の貴音さんと響ちゃんが待っていてくれました。
貴音「皆、まことよきステージでした」
千早「...ぐすっ...ありがとう、ございます」
亜美「うあうあ→おひめちーん」
真美「おひめちん→泣かないでよ→もう真美たちの涙腺限界だよ→」
あずさ「もう少し余韻に浸りたいけど、今は、ね」
真「うあー、メイク直さないと、次の曲にいけないよー」
感動の場面も、ドタバタと次のスケジュールに圧されちゃいました。はやく、メイク直さなきゃ。
メイクを直していると、響ちゃんがちょこちょこっと近づいて来ました。
春香「どうしたの響ちゃん?もう、スタンバイしなきゃな感じかな?」
響「いや、ちょっとさ、謝りたくて...」
春香「謝る?何を?」
響「さっきのさ、my songのとき、自分、少しだけ悔しいって、嫉妬しちゃって」
響「春香達の、おめでとうの曲なのにさ、なんていうか、おめでとうばっかじゃなくて、ごめん」
今にも泣き出しそうな響ちゃん。
その純真さ、真っ直ぐさに、私が答えるべき言葉。
春香「そっか。じゃあ、私もごめんなさい」
響「へ?」
春香「私もね、響ちゃんに、がんばれーって思わないといけないときに、悔しいって思ったことあるから」
―――
あれはどれくらい前だっただろう?
961プロから移籍した響ちゃん、貴音さんを加えた新生765プロでの大きなライブ。
響ちゃんがソロで歌ったのは「太陽のジェラシー」だったよね。
私の曲。だから、私は誰よりも響ちゃんにがんばれって応援しなきゃいけなかった。
だけど、できなかった。
響ちゃんの歌声はとても凄くって、ダンスもとても綺麗だった。
私には、とてもできないステージだった。
歌うことが好きで、でも上手く歌えなくて。いろいろ悩んでた時期だったなぁ。
それで、響ちゃんのステージを前にして、あんな凄いステージ私にはできない、私には無理だ、悔しい。羨ましい。妬ましい。そう思っちゃったんだ。
---
春香が話してくれる、春香の思い。真っ直ぐな思い。
響「自分、全然知らなかったぞ。あのとき春香がそう思ってたなんて」
春香「うん、誰にも話さなかったからね」
春香「でも、多分、あのときの悔しいがあったから、ここまでこれたんだと思う」
春香「悔しい、負けないって、がんばれたから」
春香「だからね、私は、ごめんなさいよりありがとうを響ちゃんに言いたいな」
そうか、春香は乗り越えたんだな。だから、そんなに強くなったんだ。
自分も、そうなれるかな?
春香「きっとね、みんなそれぞれ悔しいって気持ちがあって、それを周りにぶつけるんじゃなくて、上にー上にーってやっていけたから、765プロになったんだと思うんだ」
真っ直ぐ自分を見つめる春香の瞳に、すごく自信をもらえた気がした。
響「春香、ありがとね」
そうなれるかな?じゃなくて、そうなりたい、だな。
そのためには、次の曲をビシッと完璧に決めるさ!
響「よしっ!自分気合い十分だぞ!スタンバイだ、春香」
春香「よーし、私もがんばるぞー...っととと、うわぁ...」
ドンガラガッシャーンといつもの春香。
起き上がる春香に手を差し伸べる。
握ったその手の温もりは、なんだか妙に心地よかった。
SPとか、アイマスタジオ205回とか、10thオーコメとかにインスピレーションを受けたものをオマージュしました。
終わりだよ~(○・▽・○)
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