的場梨沙「父の日のプレゼントはアタシ!」 (24)
飛鳥「」ブーッ
梨沙「うわ!? なによ急にコーヒーこぼして! そんなに苦かったの?」
飛鳥「いや……そうじゃないけど」
心「………」ツンツン
梨沙「ん? なに、ハートさん」
心「梨沙さん。『プレゼントはアタシ』とはどのような意味なのでございますですか」
梨沙「……なんでそんなカチコチなしゃべり方?」
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梨沙「どういう意味って言われても、そのままの意味よ」
心「そのまま! すべてを脱ぎ去った裸の自分!? アタシポンコツアンドロイド!?」
梨沙「なんの話なのよ……」
梨沙「アタシが言いたいのは、最高にオシャカワな感じにおめかしして、一日中パパとデートするってこと!」
梨沙「途中で服屋さんに行って、パパにお似合いの服を選んであげるの。それをその場でプレゼント♪」
心「……それだけ?」
梨沙「それだけとは失礼ね! これでもいろいろ考えたのよ。ただプレゼントを贈るだけじゃなくて、その場でいろいろ選んであげたほうがいいかなって」
心「あ、うん。そこをどうこう言ってるわけじゃないから……ほっ」
飛鳥「………ふぅ」ズズッ
梨沙「いよいよ父の日の本番も明後日だし、楽しみね!」
P「気合い入ってるみたいだな、梨沙は」
梨沙「トーゼンよ! なんてたってパパをお祝いする日だもん!」
P「飛鳥は、父の日は何か贈るのか?」
飛鳥「あぁ……一応、ネクタイを用意したよ。当日に届くよう発送済みだ」
P「ネクタイか。いいなあ、俺もそろそろ新しいのが欲しいよ」
飛鳥「キミには……そうだな。誕生日まで待ってもらおうか」フフ
P「おお、楽しみだなあ」
P「心さんはどうするんです? 父の日」
心「はぁともプレゼントを実家に贈ったぞ♪ 梨沙ちゃんと違って、当日には会えないからねー」
P「プレゼントは何にしたんですか?」
心「えっとね……ネクタイ」
飛鳥「ボクと同じか――」
心「と、時計と、財布と、カバンと……」
梨沙「ストップストップ! 多すぎでしょ、それ全部買ったの!?」
飛鳥「凄いな……」アングリ
P「日頃はあんまり言わないけど、26からアイドルやらせてもらえたことにはすごく感謝してるみたいだからな」
梨沙「あ、アタシも負けられないわ。服だけじゃなくて、えっと」
P「こらこら。梨沙はまだ小学生なんだから、そうアレコレ買って一度にお金を使うもんじゃないぞ」
梨沙「でも」
P「パパと一日一緒にいられるんだから、物のプレゼント以外にも感謝の伝え方はたくさんあるだろう?」
梨沙「……それもそうね」
梨沙「よーし、日曜日は本気の本気でオシャレに決めちゃうんだから!」
P「その意気だ」
心「がんばれ、梨沙ちゃん♪」
飛鳥「うまくいくよう、祈るだけはしておくよ」
翌々日 父の日
心「今日は梨沙ちゃんお休みかあ」
飛鳥「父の日だからね。前々からの宣言通り、父親とのデートを満喫するんだろうさ」
心「笑顔満面なのが簡単に想像できるな♪」
心「はぁとも昔は、あれくらいパパにべったりだったのかも――」
バタン!
梨沙「た、助けてっ!」ゼーゼー
心「って、梨沙ちゃん!?」
飛鳥「なぜここに? 今日は休みのはずじゃ」
梨沙「そうなんだけど! その、ぜー、パパとのデートに向けて、はー、飛鳥に髪型のアレンジ教えてもらったじゃない?」
飛鳥「あぁ。確か一昨日あたり、そんなことをしたような」
梨沙「あれ、やり方がわからなくなっちゃったのよ。だからアンタにもう一回やってほしくて」
梨沙「お願いっ!」
心「なるほど。そのためにわざわざ事務所まで走って来たってわけかぁ……」
飛鳥「とりあえずこっちに来て座りなよ。息が上がっているし」
梨沙「で、でもでも! パパとの待ち合わせまで、そんなに時間残ってないし!」
心「外で待ち合わせしてるの? 一緒に住んでるのに?」
梨沙「デートってそういうものでしょ!」
心「あー、理解る♪」
梨沙「とにかく! なんでもいいから早くして!」アタフタ
梨沙「じゃないと時間が」
飛鳥「梨沙」
梨沙「へ?」
飛鳥「焦ってもしかたがない。急いで髪型を取り繕っても、100パーセントのキミの魅力を引き出せなくなる」
心「そうそう♪ それに、女はちょっと男を待たせるくらいがちょうどいいんだぞ☆」
心「ほら、麦茶でも飲め☆」
梨沙「………」
梨沙「あ、ありがと……」ゴキュゴキュ
飛鳥「さて……お望み通り、一昨日と同じ髪型にしようか」
梨沙「うん、お願い」
飛鳥「………」イジイジ
梨沙「………」ソワソワ
心「梨沙ちゃん、まだ体がそわそわしてるぞ♪」
飛鳥「小刻みに震えられると、手元が狂ってやりづらい」
梨沙「わ、わかってるわよ! でもしょうがないじゃない」
心「こういう時は、おしゃべりでもしたほうが落ち着けるよ♪」
梨沙「おしゃべり……ね」
心「そ♪」
心「はぁとはちょっとプロデューサーのところに行かなきゃいけないから、飛鳥ちゃんあとはヨロシク☆」
飛鳥「……あぁ」
飛鳥「………」
飛鳥「しかし、いつ見ても綺麗な髪だね。これだけ長いと手入れも大変だろう?」
梨沙「まーね。でも、パパとお揃いの色だし。アタシ、自分の髪好きだから」
飛鳥「なるほど……」
梨沙「……欲しがってもあげないわよ?」
飛鳥「はは、そんなことはしないさ」
梨沙「飛鳥は、髪伸ばしたりしないの?」
飛鳥「ボクかい? 今のところ、予定も意志もないけれど」
梨沙「ふーん……自分の髪、好きじゃないの?」
飛鳥「どうして? 髪が短くとも、自らのそれを好んでいる人は少なからずいるだろう」
梨沙「そうなんだけどさ」
梨沙「エクステいっぱい持ってるから、地毛の色があんまり好きじゃないのかもって」
飛鳥「あぁ……そういうことか」
飛鳥「これは、そういう意味じゃない。抵抗であり、受容であり、心模様であり、ボクなりの表現の証でもある」
梨沙「……いつも通りわかりづらい」
飛鳥「悪いね。性分なんだ」
梨沙「とにかく、嫌いじゃないのよね? 自分の髪」
飛鳥「そうなるかな」
梨沙「じゃあ……髪で抵抗とか表現とかするつもりがなくなったら、伸ばしたりするの?」
飛鳥「………」
飛鳥「そうだね。もし、その必要がなくなったとしたら……たまには、伸ばしたりもするかもしれない」
梨沙「へえ」
梨沙「飛鳥のロングヘア―かあ」
飛鳥「見たい?」
梨沙「べつに!」
飛鳥「そう」
梨沙「でも、そうね。どうしてもって言うんなら、見てあげなくもないわよ?」
飛鳥「上から目線だね……どのみち、数年は先の話になるよ。きっと」
梨沙「数年~? しょうがないわねー、気長に待ってあげるわ」
飛鳥「………」
梨沙「どうしたのよ」
飛鳥「いや。数年後の未来でも、ボクはキミの近くにいるんだろうかってね」
梨沙「はあ? なによ、どっかいくつもりなの?」
飛鳥「べつに」
梨沙「じゃあいいじゃない。たぶん今と変わらないわよ、たいして」
飛鳥「……そうかな。ふふっ」
飛鳥「………」
飛鳥「さあ、完成だ。鏡で確認してみてくれ」
梨沙「えっと……うん、これよこれ! バッチリ!」
梨沙「ありがと飛鳥! 今度なにかおごるわ!」
飛鳥「べつに、見返りを期待したわけじゃないが」
梨沙「いいから! じゃ、アタシ行ってくる!」タタタッ
廊下
心「お、梨沙ちゃん準備完了?」
梨沙「ハートさん! うん、これからパパのところに行ってくるわ!」
心「あ、ちょいまち!」
梨沙「え?」
心「ほらここ。シャツの裾が変に折れてるぞ♪」
梨沙「あ」
心「……ほい、これでOK♪ じゃ、バッチリ決めてこい☆」
梨沙「……うん! ありがと!」ニーッ
タタタタッ――
心「………」
心「がんばれよ、恋する少女♪」
おまけ
心「もしもし、パパ? ちゃんとプレゼント届いた?」
心「そっか、届いた? ならよかったー♪」
心「とりあえず、パパの欲しそうなものを選んでおいたから……ほかに欲しいものとかあった?」
心「………」
心「はぇ? 婿候補?」
心「ちょ、ま、パパ? いきなりなに言ってんの!?」
心「ま、まったく……ちょっと待ってて」
心「プロデューサー、プロデューサー」ヒソヒソ
P「なんです?」
心「パパがさ、将来の婿候補がいるなら紹介してほしいって」
P「………」
P「いや、なんでそれを俺に言うんですか」
心「………」
心「にぶちんっ」
P「にぶちんって……そんなこと言われてもですね、こっちはさっぱり状況が」
心「そこは……ほら、なんていうか。普段のはぁとの態度からほどよく察してほしいというか……ね?」ポッ
P「いやいやいや……というか、お父さんだいぶ待たせてるんじゃないですか」
心「あ、そうだった!」
心「もしもし、ごめんパパ」
心「………え? 今のひそひそ話を聞いて安心した?」
心「ちょ、それどういう……」
心「切れちゃった」
P「……なんか、お父さんに変な勘違いさせちゃったかもしれませんね」
心「かもね……」
P「近々長野に行く仕事がありますし、その時にちゃんと挨拶に行かないと」
心「だねぇ」
飛鳥「………」
飛鳥(それは余計に勘違いを加速させることになりかねないんじゃ……)
おしまい
おわりです。おつきあいいただきありがとうございます
父の日は実質的場梨沙の日!
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