騎士「姫 コチラです!!」(24)

〔魔王城近くの海辺〕

 勇者から貰ったマント… 海の潮の匂いに交じって優しい匂いがする…。

 そう、私は一人じゃない…。 大好きな勇者がそばにいる…。


姫「騎士… 勇者様は一人で大丈夫なのでしょうか?」




 私は今 囚われていた姫を連れて魔王城から逃げている…。 姫を光の国に連れ帰るためだ…。




騎士「大丈夫です! 勇者は必ずや魔王を倒し帰って来るはずです! さぁ…コチラの方へ!!」


 私は魔王城に幽閉されていた 姫の救出を勇者に命ぜられたのだ…。




騎士「姫、早く!! 振り返っている暇はありません!」


姫「あぁ、女神様… どうか勇者様をお守り下さい!」


騎士「勇者は絶対に大丈夫です! 信じて下さい!!」ニコッ


姫「どういうコトですか?」


騎士「勇者は不死身の体を持っているのです!」


姫「勇者様は不死身なのですか?」


 勇者は不死身フェニックスの血を飲んだコトがある…。

 そう私の愛する勇者は絶対に死なない…。




騎士「姫! 信じて下さい!」


姫「分かりました…。 勇者様…どうか御無事で… 姫は城で帰りを待っています。」




 姫が羨ましい… 私だって、王族に産まれてくれば勇者に愛して貰えたかも知れないのに…。


騎士「姫… この海辺では、魔王の放つ魔素が強い為、転移の魔法が封じられて使えないんです…。」


姫「えぇ… 分かっております… 転移の魔法が使える場所まで逃げないと…。」


騎士「えぇ! 早くこの場所を離れましょう!」


 この海辺沿いを 進んで行けば仲間の魔法使いがいる。


騎士「この先で仲間が待っています!」


姫「仲間?」


騎士「そこまで行けば、魔王の魔素を中和できる魔法使いがいるのです!」


姫「魔王の魔素を中和なんて出来るのですか?」

騎士「はい! そこまで行けば光の国に帰れます!」ニコッ


 本当は、姫を連れて戻りたくはない…。

 …が、愛する勇者の頼みだ聞くしかない…。



姫「えっ!? ちょっと待って 騎士…… 海の方から何か聞こえない?」


騎士「ハッ…!? 海辺に渦潮が!?」


 くっ! 流石 魔王城に近いだけはある…。既に追っ手が…。


騎士「マトモに戦えば不利ですね…。」


姫「騎士どうするの?」

 
  ザッパァーン!!


 くっ!? クラーケンか!? だが、まだ敵との距離が遠い… チャンスだ!! 我が弓技… 見せてくれる!!


騎士「無数の矢じりよ螺旋の渦を巻きあげ 望む敵を射て! 望射突螺舞!!」ギリギリギリィ


  シュパパパアアァァ!!


姫「ボウイヅラブ… 無数の矢が敵めがけて飛んでいく…。」

   ドスドスドス!!

    ギャアアァァァ……


姫「凄い…! 大きなイカの化物を弓矢だけで倒してしまった!!」


騎士「姫… 先を急ぎましょう… 嫌な予感がします!」


姫「嫌な予感?」


騎士「はい、この海辺には《洋上の悪魔》が出るとも噂されています!」


姫「洋上の悪魔?」


騎士「はい、目を合わせた者に難解な謎解きをして、問い掛けに間違えると 一瞬で命を奪ってくる悪魔がいるそうなんです。」


姫「そうですか、何か恐ろしいですね?」


騎士「えぇ! 早くここを離れましょう!」

―――
――

〔合流地点〕

騎士「約束では、ここに魔法使いがいるはずなのに…。」


姫「どうしたのです? 騎士?」オロオロ




 「くくくくっ… 待ったぜ!」



騎士「なっ!? オークの群れに囲まれている? 待ち伏せか!?」




 これは、チャンス到来!!

 ここで、このクソ姫が死ねば 全責任を 待ち合わせに遅れた魔法使いの責任に出来る!!


騎士「姫! 私の後ろに!!」




 姫を護るフリをして奴等に殺させるか…クックックッ…




姫「うぅっ…」




 昔、同じ方法で勇者に想いを寄せる僧侶を殺したコトがある… 楽勝だ…。

オーク長「姫には手出しはしない…。 魔王様からの命令だ…。 大人しく投降しろ!」


 ちっ… ならオークを皆殺しにして、ついでにコノ小娘を殺すまでだ!!


騎士「くっ、勝負だ!!」


 愛する勇者をこの娘に汚される前に殺さなければ!!


姫「貴方一人では、危険です!」



 お前なんかに心配されたくない!!
 オークを皆殺しにして、お前もブッ殺す!!



騎士「私は、一人ではありません!!」



 そう、勇者から貰ったマントの匂いがある…。
 私は勇者と共に戦うんだ…。


騎士「いざ尋常に勝負!」スラアアァァ… ダダダダ…


  ガキィィイン!!


オーク長「フム! 強い……が、オークの長である私には、効かんよ…。 無駄な抵抗はせず投降せよ…。」


騎士「おのれぇ!!」ガキン!! カキン!! バキン!!


オーク長「せいっ!!」


   ガパァンッ!!


騎士「オゴっ!? 顔面だとぉ?」フラフラッ!?


オーク長「スマン、お前が強かったから手加減出来なかった…。」


騎士「ぐうっ…脳震盪…か?」カラカラン…


オーク長「勝負…ありだな… 命を無駄にするな…投降せよ…。」


騎士「ぐうぅ…。」


オーク長「人間の村を1つ焼き滅ぼすよりは、骨があったぞ? これでもオマエを認めているのだ…。」




   無様だ死にたい!!

  騎士「くっ… 殺せ!!」







    ドスウゥゥッ!?


騎士「がっ… ゲエェェ!?」ブルブルガクガク!!?




幼女「ふえぇ… 刀で人を刺すの たのしいよぅ…。」グリグリグリィ…

オーク長「えっ!?」

姫「えっ!?」

幼女「ふえぇ…!?」


オーク長「ど、どこから湧いて出た!? な、なぜコイツを刺した?」


幼女「だって、今 殺せって言ってたよぅ?」シュバッ!!


  スパアァァン!!

    ポーン…… キラアァン!!



幼女「ふえぇ… 体ゴト飛んでっちゃったぁ…。」


オーク長「け、剣圧でフッ飛んだだと?」


幼女「ふえぇ… 加減が難しいよぅ…。」


オーク長「み、皆 何をして………。」ハッ


幼女「ふえぇ…… もう全部… 終わってるよぉ?」


オーク長「我が隊が…… 全滅!? 人間の国を3つも滅ぼした精鋭揃いなんだぞ!?」


姫「ひいぃぃ!!」




オーク長「姫ぇ! 俺の後ろに隠れろぉ!! コイツはヤバいぃ!!」


幼女「ねぇ?」

オーク長「な、なんだ?」


幼女「私ねぇ… 豚さん 大好きだよぉ?」

オーク長「は、えっ… はぁ?」





幼女「うん! だって美味しいもん!!」パアァァッ!!

姫「う、う~ん…」パタリッ…

オーク長「ひ、姫?」ワタワタワタ…


幼女「ふえぇ お腹すいたよぅ…。」グウゥゥ…


オーク長(姫を護れるのは、私しかいない…。)


幼女「ねぇ?」

オーク長「な、何だ?」タジッ…


幼女「カレー 好きぃ?」ニコッ

オーク長「はぁ? あ、あぁ…。」


幼女「本当!?」パアァァァッ!!

オーク長「お、おう…。」


幼女「じゃあさぁ? じゃあさぁ? 鳥さんのカレーと豚さんのカレーどっちが好き?」


オーク長(俺の好きなビーフカレーが選択肢にない…。)


幼女「ねぇ? どっち?」ニコニコ


オーク長「どちらかと言うと… チ、チキンかな?」









幼女「ふえぇ…… ハズレぇ…」


オーク長(えっ? ハズレって何!?)


幼女「ふえぇ… 魔王がアッチで待ってるよ?」ズアアァァァ…
―――
――

姫「う、う~ん…」ハッ!?


幼女「あっ! おはよー! お姉ちゃん!!」ニコッ


姫「んひいぃっ…」


幼女「うんしょ うんしょ… ふえぇ、この風呂敷 重いよぅ…。」ズリズリズリ…



姫「風呂敷? そ、それ… 騎士のマント…じゃない?」

幼女「ふえぇ?」


姫「騎士は? さっきのオーク達は?」

幼女「ふえぇ… 知らないよぅ?」ゲェプッ



姫「その血の滲んでるマントの中には、何が入ってるんですか?」ガタガタブルブル

幼女「ふえぇ………… 知らないよぉ?」


姫「あ…あ… あく…ま…」ブルブルガクガク



幼女「ねぇ? お姉ちゃん?」

姫「ひいぃぃ…」



幼女「お姉ちゃんはカレー 好きぃ?」ニコッ

姫「へ…えっ…!?」フルフル


幼女「お姉ちゃんは 中辛と激辛どっちが好きぃ?」ニコニコ


姫(私の好きな甘口が…選択肢に…ない…。)


幼女「ねぇ? どっち?」ニコニコ

姫「ひいいぃっ!! ま、まさか? 貴女が 洋上の悪魔……いえ…幼女の悪魔!?」


幼女「ふえぇ… 殺し足りないよぅ…。」ジイィ…


姫「い、いや… 来ないで… 来ないでぇ…。」


幼女「お姉ちゃんも… 勇者様が好きなんだよねぇ?」ジイィィィ…


姫(ハッ!? 風呂敷の中からはみ出してる あの糸は…… 騎士の髪の毛の色と同じ!?)


幼女「勇者様の匂いのする この風呂敷に包んであげようかぁ?」ニコニコォ


姫「んひいいぃぃ!!」ジョロッ…ジョロジョロジョロォ…


幼女「ふえぇ… バッチいよぅ…。」ヒキッ


姫「う…う~ん…」パタリッ
―――
――

 「姫! 姫! 大丈夫でございますか?」ユサユサ


姫「ん…う~ん…」ハッ!?




魔法使い「大丈夫でございますか?」


姫「魔法使い?」


魔法使い「えぇ、ここに来るまでに少し手間取りまして、遅れて申し訳ございません…。」


姫「い、いえ… 大丈夫よ…。」



魔法使い「騎士はどうしました?」

姫「あ…あ… あぁ…」ガタガタブルブル


魔法使い「そうですか… 勇者が魔王を倒したと言うのに… 残念です。」


姫「うぅ… こわい… こわいよぅ…」ブルブルガクガク


魔法使い「さぁ、城で王様がお待ちです! 帰りましょう…。」


姫(あぁ、私は助かったの? 早く お父様と勇者様に逢いたい…。)


魔法使い「勇者様も既にドレスを身に纏ってお待ちですよ?」


姫(今日から勇者様をユリユリしい同性愛の世界に引きずりこまなきゃ!! お風呂で洗いっこが た・の・し・み!!)ジュルッ!


  「ふえぇ…。」


姫「んひいぃぃぃ!?」ジョロッ


   ―おわり―

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