神谷奈緒「傘」 (27)
神谷奈緒ちゃんのSSです。
地の分が多いです。
物語視点で書くの初めてだったので、読みにくいかもしれませんがよろしくお願いします。
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事務所から少し離れた公園。奈緒は一人で雨宿りをしている。
雨は激しく降っていて、当分事務所に戻れそうになかった。
奈緒は少しだけ後悔していた。
一年前まで、奈緒はアニメが好きな普通の女子高生だった。
普通に、学校に通い、放課後は友達と遊んで、夜は家でアニメを見る。
そんな毎日を送っていた。
「アイドルになりませんか?」
アニメのグッズを買いに街に出かけた時、奈緒はプロデューサーと出会った。
彼はたった一言で、平凡だった奈緒の生活をまるで別のものにした。
煌びやかな衣装やステージ。夢をともに追いかける仲間たち。
奈緒はそれこそ、アニメの主人公のような日々を送るようになった。
それはまるで、魔法をかけられたシンデレラのようだった。
アイドルの生活にも慣れてきたころ、奈緒はふと気づいた。
アイドルを始めたころは綺麗な衣装を着ることに楽しみを感じていた。
最近は綺麗な衣装を着た時のプロデューサーの反応を見るのを楽しみに感じていると。
シンデレラだと思っていた自分が実は人魚姫だったことに気づかされたとき、奈緒は悩んだ。
このまま、アイドルとプロデューサーの関係を貫くのか、それともこの気持ちを彼に伝えるのか。
悩みに悩んだが、結局奈緒に答えは出せなかった。
今日も事務所で奈緒は悩んでいた。
ぼーっとしながら、テレビを見る。
「夕方からにわか雨が降るので、外出の際は傘をお持ちください。」
気象予報士の資格をとったというアイドルが晴れやかな笑顔で言っていた。
傘か… 奈緒は傘立てをチェックする。
傘立てには大きな男性ものの傘と何本かのビニール傘が立ててあった。
プロデューサーが傘を持っていくのを忘れて出かけて行った時があった。
「奈緒。傘持って行ってあげなよ。」
親友で同じユニットのメンバーでもある北条加蓮にニヤニヤしながら、そう言われた。
「なんであたしが。」
条件反射とはいえ、物事をなんでも否定から入ってしまうのが奈緒の悪い癖だった。
「奈緒がお迎えしたら、プロデューサーも喜ぶと思うよ。」
「誰が行くか!」
仕事に向かう加蓮にツッコミを入れた後、
プロデューサーさん。喜んでくれるかな。そう!これは仕方なくだから!
自分に言いわけをしながら. 奈緒は傘を届けに行った。
それ以来、傘を忘れたプロデューサーに傘を届けにいくのは、奈緒の役目になった。
「プロデューサーさん。また傘忘れただろ。 まったく... 毎回持ってくるこっちの身にもなってくれよ。」
「あぁ ごめんな。 わざわざありがとう。じゃあ帰ろうか」
2人で傘を差し、歩きながら話をする。
「仕事辛くないか?」
「ううん。大丈夫。プロデューサーさんこそ、あんまり無理しないでよ。倒れられても困るから。」
「心配してくれているのか。ありがとな。」
傘を持っていくたびに、このような会話をした。
奈緒はこの時間が好きだった。
事務所にいるときは、他の人の目が気になり、素直になれない奈緒だったが、
この時間だけは、素直になることができた。
ふと、私が傘を忘れたら、プロデューサーは迎えに来てくれるだろうか。
そんなことを奈緒は思った。
迎えに来てくれたら、この気持ちを伝えよう。
奈緒は決心した。
「ちょっと公園まで出かけてくる。」
加蓮にそう言って、奈緒は事務所を後にした。
もちろん傘は持っていかなかった。
「やっぱり、こんなことすべきじゃなかったかなぁ。」
奈緒は一人、呟いた。
雨が降り始めてから30分。公園についてから1時間ほど過ぎていた。
最初の方は静かな気持ちで待っていられたが、時間がたつにつれ、奈緒の心も大雨になっていった。
奈緒はプロデューサーが絶対に迎えにきてくれるものだと信じていた。
街の人ごみの中であたしを見つけ、魔法をかけてくれたプロデューサーさん。
そんな彼なら、一人ぼっちで雨宿りをしているあたしを見つけるくらい簡単なことだろう。
と思っていた。
しかしプロデューサーはなかなか迎えにきてくれなかった。
雨が降り始めて1時間ほど経過したとき、
プロデューサーのことを必死に探していた奈緒はとうとう下を向いてしまった。
「プロデューサーさんのばか。」
いじけるようにそんなことを言った。
「誰がばかだって?」
振り返ると、見慣れた大きな傘があった。
「なっ!プロデューサーさん!? いきなり!?なんで?」
「いや。奈緒下向いてて、気づいてなさそうだったから、驚かそうかと思って。
奈緒にばれないように近づいたんだ。」
「そこは普通にきてくれよ!プロデューサーさん!」
「悪い悪い。それで俺の事ばかって言ってたけど、何かしたか?」
顔を覗き込むようにプロデューサーが奈緒のことを見た。
「なっ、べ、べつに何もしてねぇよ。 迎えに来るのが遅いと思っただけだ。」
「そうか。遅れてごめんな。帰ろうか。」
差し出された傘を受け取り、奈緒は事務所までの道を歩き始めた。
「なぁプロデューサーさん。」
少し前を歩くプロデューサーに、奈緒は呼びかける。
「どうした?」
好きだ。
そう伝えるだけ。
人魚姫とは違い、奈緒には声がある。
プロデューサーに気持ちを伝えることは簡単だった。
「あのさ…. その….」
奈緒は声を出せなかった。
関係が変わってしまうことが、やっぱり奈緒には怖かった。
「っ・・・ううぅ…」
好きな人に気持ちを伝えることができない自分が情けなくて奈緒は泣きだした。
「おい奈緒。大丈夫か?」
「プロデューサーさんに…言いたいことが….あって…ぐすっ..
言おうと…思ったのに..ぐす… 言えなくて…怖くて..」
泣きながらも奈緒は、この思いを伝えようとするが、ちゃんとした言葉にはならなかった。
言葉は出ないが涙はポロポロとあふれた。
「奈緒!」
突然、大きな黒い傘の中に奈緒は吸い込まれた。
「ずっと待ってる。いつまでも待ってるから」
「うん…うん..」
泣きながら奈緒はうなずく。
「だから奈緒が言えるようになった時にまた話してくれ。ちゃんと聞くし。 …返事もするから。」
奈緒の涙が止まるまで、2人は抱き合った。
「もう大丈夫か。」
「うん。ごめんなプロデューサーさん。心配かけて。スーツも濡れちゃったし」
「それくらい気にするな。それに奈緒も濡れてるじゃないか。ほら傘。」
そう言いながらプロデューサーはビニール傘をさしだす。
「濡れちゃったし。もう必要ないかな。」
濡れてはいたが、奈緒は温かさを感じていた。
「そうか。ならこのまま帰るか。」
「うん。」
一つの傘の下、奈緒はプロデューサーと事務所までの道を再び歩き出す。
雨はもうじき止み、虹がかかるだろう。
以上です。
物語視点だと、どこまでを書いて、どこを書かないかが難しいなと書きながら感じました。
率直な感想お待ちしてます。
感想ありがとうございます。 句読点等の使い方をもう少し勉強してからまたリベンジしようと思います。その時はまたよろしくお願いします ではでは。
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