―カフェ―
男「俺さ、連帯保証人になったよ」
女「……は?」
男「友達からどうしてもって頼まれてさ、保証するぐらいならいいかなって……」
女「アンタ、何やってんの!?」
男「な、なんだよ……いきなり怒鳴るなよ」
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女「とりあえず……どういう流れでそうなったか、説明してくれない?」
男「えぇ~と、少し前の話なんだけど……友の奴が200万だか300万だか借金するらしくて……」
女「正確な額も覚えてないなんて……」ハァ…
男「で、連帯保証人が必要らしいからさ。俺がなってやったわけよ」
女「なんかもう頭痛くなってきたわ……」
女「アンタさ、連帯保証人ってなんなのか分かってるの?」
男「そりゃあれだろ?」
男「コイツは借金踏み倒すような奴じゃないですよ、ってのを保証する感じのアレだろ?」
女「バカ! 全然違うわよ!」
男「え!?」
女「連帯保証人ってのはね……」
女「いってみりゃ、アンタも借金しちゃったのと同じってことよ!」
男「は、どういうこと?」
女「つまり、もし友君が借金返せなかったら、アンタが返さなきゃならないのよ!」
男「なんで!?」
女「そういうもんだからよ!」
女「ていうか、連帯保証人になる時そういう説明受けなかった? 受けたはずだけど」
男「たしかに説明はあったし……書類も見せてもらったけど……」
男「はっきりいって聞き流してたし、流し読みだった……」
女「そんなことだろうと思ったけど……」
男「俺……もしかしてやっちまった?」
女「やっちまったわね」
女「連帯保証人になったせいで、人生破滅した人って結構いるのよ」
女「借金取りに追い回されて、借金に振り回されて、最後は……ってね」
女「せめて友君に頼まれた時に、私に相談してくれれば……」ハァ…
男「くっ……!」
女「ま、これも自業自得ってやつね。人生を適当に生きてきた罰よ」
女「私、借金背負った男なんか危なっかしくて嫌だし、今日で別れましょ」
男「ああ……そうだな……」
女「なんて言うわけないでしょ!」
男「え……!?」
女「ちょっと借金背負ったくらいでなによ!」
女「私だって少しぐらいは貯金あるし」
女「私はアンタとなら、たとえ地の果てまでだって夜逃げしてやるわよ!」
女「二人でノープラン逃避行ってのも、案外オツなもんじゃない!」
男「あ、ありがとう……」
女「だけど、諦めるのはまだ早いわ!」
女「こうなったらいっそ、知り合いみんなに相談するのよ!」
女「私らだけで話しててもいいアイディアなんか浮かびっこないけど」
女「たくさん人が集まれば、きっと道は開けるわ!」
男「そうだな……やれるだけやってみるか!」
―居酒屋―
ザワザワ… ザワザワ…
男「皆さん、俺のために集まってくれてありがとう」
男「こうして借金地獄に陥りつつある俺ですが、どうか皆さんの力を貸して下さい!」
女「お願いします!」
マッチョ「やれやれ、連帯保証人になっちまうとは、お前らしいというかなんというか」
マッチョ「ま、だけどお前のことはオレが守ってやるから安心しろい!」
マッチョ「ヤバイ取り立て人が来たら、片っぱしからブッ倒してやるぜ!」
マッチョ「オレはナイフだろうが拳銃だろうが怖くねえからな!」
男「頼りにしてます、先輩!」
インテリ「連帯保証人など、そう簡単になれるものではありません」
インテリ「あなたに落ち度はあるとはいえ、その手続き方法にも色々と問題はありそうです」
インテリ「もし問題を見つけられれば、連帯保証人の効力を失わせることも可能です」
インテリ「私はそういったところから探りを入れるとしましょう」
男「優秀な知人がいてくれて、感謝するよ!」
探偵「なんだったら、オイラたちが弱みを握っちまうってのもいいな」
探偵「債権者の身辺調査をして、いっそこっちからゆすりをかけるってのも面白え!」
探偵「なあに、悪徳金貸しの可能性もあるし、容赦なんてすることねえ」
探偵「可愛い元助手のためだ。いくらでも力になってやるさ」
男「昔、あなたの事務所でバイトしてた頃を思い出しますね」
老人「ふぉっふぉっふぉ……」
老人「もし、本当に借金地獄に陥ってしもうたなら……ワシに言うがよい」
老人「戦後の闇に埋もれた、XYZ資金を動かしてしんぜよう」
老人「いつだったか、道に倒れていたワシを病院に運んでくれた礼じゃ」
男「ありがとう、謎のじいさん!」
女「みんないざとなったら協力してくれるって! よかったじゃない!」
男「ああ、なんだかワクワクしてきたぜ! 遠足前夜みたいな気分だ!」
女「だけどもし、結局どうにもならなくて、二人で夜逃げすることになっちゃっても……」
女「それはそれで悪くないかも……」チラッ
男(おいおい、コイツがこんな色目を使ってくるなんて初めてだぞ!)
男(なんつうかアレだな。借金まみれってのもいいもんだな)
男(風邪ひいた時みたく、みんなが助けてくれる!)
男(俺って今まで目的もなく生きてたから、借金返すっていう明確な目標ができるのも悪くねえしな!)
男(なってよかった……連帯保証人……!)
――
――
友「借金? あんなのとっくに返し終わったぞ」
男「え……」
友「いやー、お前にも迷惑かけたな! もしかして俺がバックれるんじゃってハラハラした?」
友「ぶっちゃけ絶交されるかなと思ってたのに、快く引き受けてくれてありがとう!」
友「これ少ないけど謝礼を……」
男「テメエ!」グイッ
友「ごっ、ごめ……っ!」
男「なんで返済しちゃったんだよぉぉぉぉぉ!!!」
友「ええええええええええ!!?」
―終わり―
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