あれ?今日何曜日だっけ? (189)

友「でさー、そいつがつまようじで、コウよ!」グイッ

男「ブッハ!ww マジかよ!」

友2「馬鹿だよな~w相変わらずw」


ガラッ


教師「おーい、もう閉めるぞー」


友「あーい。おいあの公園行こうぜ!」

男「分ーかってるって」


教師「おい、お前もさっさと出ろよ?」


女「…はい」


男「…」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459513813

高校生活もあと少し

あっという間ってこういうことを言うのか

昔に比べて友達もたくさん出来たし、それもあるんだろう


男「そーいやさ、今日何曜日だっけ?」

友2「あ?あー、たしか火曜かその辺かな?」

友「おまえらw もう卒業だからって学校来なさすぎなんだよww」

男「うっせwマジメちゃんは大人しく学校通っとけば良いんだよw」


女「…」


男「…なあ」

友「ん?今日は金曜日だぞ?」

男「いや、あれってうちのクラスの…」

友2「へ?どこ?」

男「バカ、そんな探してる感出すなよ!」

友「んー、でも公園は俺らしかおらんぞ?」

男「あぁ?何言って…」


男「…あれ?」



友2「あれって、うちのクラスの…w」キリッ

男「ックソ!黙れい黙れい!」

友「まったく…暇人は脳みそまで暇になるのか」

男「はあ?何だよそれ。バカにしようとしてるのか?」

友2「プッww やーい脳みそひまじーんww」

男「んだぁ?よーし、暇人を怒らせるとどうなるか…思い知れ!」ダッ

友「ちょww何でオレww」

男「テメェに帰れる権利はネェ!」



明日のことなんて明日にならなきゃ分からない

時間に追いかけられることなく生きる

めちゃくちゃ楽しい


女「…!」


サッ


男「…(あいつ、何してんだ?)」

ジリリリン!!ジリリリン!!


男「…んぁ…」

男「…うっせ!!」バン!


男「…んぁれ、今日…何曜日だっけ?」

男「…まぁいっか、また昼過ぎに友にメールだな」

男「…(もう一眠り…)」


「ちょっとー!!、もう家出る時間じゃないのー!?」


男「んぁー、もう!…んだよ!今日学校ねぇんだよ!!」


「何言ってるの!!今日は金曜日でしょ!!」


ガチャ!


母「明日から休みなんだから!今日くらい行ってきなさい!!」


バタン!


男「…あれ?今日は…?」


男「まあ…いっか」

男「…しゃーねぇ、友たちと昨日の話の続きでもするか」


ガラッ


男「うーす」

友2「あれ?珍しいじゃん。朝から来るなんてよ」

男「どの口が言うんだ、どの口が」

友「まあ今日は金曜日だし、大した授業ないからダベってよーぜw」


男「あぁ…。なあ、そーいやさ」

男「昨日って、何曜日だっけ?」


友2「はあ?お前今、友が金曜日っつったろw」

友「そうか…お前にとって俺は、その程度の存在なんだな…」

男「あぁ?今日は金曜日だから、授業楽勝だって言ったんだろ?」

友2「じゃあ昨日は何曜日だよww」


男「…あ」


友「…ブハッwwハハハハww」

友2「お前ww脳みそ暇人化現象、深刻だなw」

男「うるせー!ちょっと考え事してたんだよ!」


友2「お?それってもしかして…」

友「友2よ。無粋だぞ」

友2「おっ、そうだなw」


男「はぁ?ちげーよ。そんなんじゃ…」チラッ


女「…」


男「…はっ!」

友2「おぉ、高校生活もあとわずか。綺麗な花を咲かせたまへよw」

友「うむうむ」


男「だから、ちっげーつってんだよ!!」

別に俺から知ったわけじゃない

ただ、よくこっちに目線を向けてきてる

それで気になってただけだ



教師「えー、よってこの様に…」カツカツ

友2「クソッ、今日は楽チンセンコー休みかよっ」


男「…(それをあいつら…)」チラッ


女「…!」


バサ!


女「あっ」

教師「んー?なんか質問かー?」


女「あ…いえ…」


教師「そうか。そしたらここは…」カツカツ


男「…(この授業でも、ちゃんとノート取ってるんだな)」


友2「なあ」コソッ

男「ん?」

友2「今絶対お前見ててノート落としたよな」コソッ

男「はあ?」


教師「何だ。何かあるなら言ってみろ」


男「いや、あの…」

友2「プックック…」


教師「まったくお前は。授業はサボり気味、オマケに授業妨害か?」

男「いや…すんません」

教師「お前の様に、卒業が決定してる者以外もここにはいるんだぞ?」

友2「まったくだ。静かにしとけよ?」


教師「友2、お前は担任から何か言われてないか?」

友2「はい!卒業したければ、残り授業は毎日来いとのことです!」


教師「だったら大人しくしとけ」

友2「はい!」

友「…ハァ…」



ハッハッハ…


キーンコーン カーンコーン


男「おい友2」

友2「何だね男よ」


男「お前、何勘違いしてるか知らんが、女は俺とは何の関係もないからな?」

友2「そうだね。プロテインだね」

男「テメェ!この!」ゲシゲシ


友「おーい。飯買いにいこーぜ」

男・友2「おー」


女「あ…」


男「ん?」

友「何だ?」


女「あの…男さん、今、いいですか?」

友「はいはい。どうぞどうぞ」


男「おい、友までっ」

友2「まあまあ、お昼は俺が買ってきといてやるから、ホラ!」


女「…っ…」モジモジ


男「…少しだけだぞ…」

女「あ、は、はい!」



女「…」

男「…(屋上とは何とベタな…)」


男「で、話ってのは?」



なんてカッコつけてるけど、内心ドキドキだ

何かこう、大切な事を打ち明けて来る感じ

タイミング的にも、それっぽいし



女「あ、はい!あの…」

男「ん…」


女「男さんは、いつまでも……」


男「コホン…いつまでも?」


女「いつまでも…こんな日々、送れたらいいなって、思います?」

男「…ん?」


男「こんな生活…って、高校生活ってこと?」

女「いえ、あの…」

男「んーと…?」



正直、質問が来ると思ってなかった

何かのお願いを、期待してたのかもしれない

でも、質問をするその顔は、真剣そのものだ



女「…もし、もし自分が生きてる目的があるとして」

男「…うん」

女「それが、今の人生とは遠くかけ離れてるとしたら」


女「男さんは、そんなこと忘れて、『こんな生活』を『日々』を」

女「いつまでも続ける方が、いいですか?」

男「…あ、そ、そうだなぁ…うーん」


男「いつもの日々も続いて欲しい…けど」

男「何かすべき事、目的があるのなら、それに向かって進むことも大事…かな」


女「…それって…」

男「あ、あぁ、質問の答えになってないか…えーと」


男「今は遠いと思っていても、いずれその目的は向かいあわなきゃならない…だから」

男「そういう事を忘れるのは、よくない…と思う」


女「……」



自分なりに上手くフォローしたつもりだ

彼女なりの『お願い』の方法なのだと

勘違い甚だしくても、やらずに後悔はしたくなかった



女「そう…ですよね。そうですよ、ね…」


女「あなたには…あなたの世界の目的が、あるんですよね…」


男「え…えーっと?」

女「でも…だからこそ…男さん!」


男「は、はいっ!」


女「私は、私はあなたの事が好きです!」

男「…!」


女「だから…ごめんなさい…っ!」ダッ



ガチャ…バタン!

トントントントン…


男「…あれ?」


友2「なあ、どうだったよ?なあなあなあ!」

男「え、あぁ、何か…告白されて…」

友「おうおう。で?どうしたよ?」


男「…ごめんなさいって…」

友2「はぁ!?お前振ったのかよ!?」

男「ち、違う!…あっちがそう言ったんだ」


友「…?どういうこった?」

男「こっちが聞きてぇよ…」

友「んー…」


友2「…まあ、よくわかんねーけど、お前はまだ俺たちと友達だな!」

男「俺らの友情薄っ!紙切れかよ!」


友「当然だ。彼女持ち人間など、友人に値しない」

男「ひでぇひがみだなw」

友2「ホントw 性格悪っww」

友「おいコラww」



男「変な質問されて…変な解答したら」

男「告白されて…振られた…」


男「(それに、あなたの世界だの何だの…)」

男「『女』って奴は、よくわからんな…」


「男ー!ご飯できたわよー!」


男「あーい!今いくよー!」

男「うじうじ悩んでても仕方ない。明日ちゃんと聞いてみるか…」

男「…でも、好きです!とか言われた人に、直接はなぁ〜」


「ご飯冷めちゃうわよー!!」


男「わーかってるよ!うるさいって!…ったく」


ジリリリン!ジリリ

男「うっせい!」バン!


男「…今日は起きれたな…って、あ…」

男「…今日休みじゃん!!」


男「(女に言う事しか考えてなくて、すっかり忘れてた)」

男「なぁんだよ、早起きは三文の損ってやつか?」


男「…寝よ」



「男ー!!まだ起きてないのー!?」


男「あー!?何で!」


ガチャ


男「うわっ、何だよ」

母「あんた、学校は最後まできちんと行かないと、後で後悔するよ?」

男「はぁ?今日は休みじゃんかよ」


母「…ハァ。まったくあんたは」

母「今日は何曜日ですか!」


男「そんなの土曜日に決まっ…」


男「…っえ?」

男「何言ってんだよ!?今日は土曜日だろ!?」

母「なーに寝ぼけてんの。休んでばっかで曜日感覚おかしくしたんでしょ」


男「…は?え?」

母「とにかく、朝ご飯食べて、明日から休み何だし今日は学校行きなさい!」



バタン!



男「…友に電話で確認してやる」



トゥルルル トゥルルル



男「いくら曜日感覚ないっつっても、昨日は絶対に金曜日だったろ…」

男「そもそも昨日が金曜日ってのも…あ、もしもし?」




「なんだよ、朝っぱらから」


男「なあ、今日は暇だよな?どっか遊びいこーぜ?な?」


「バカ言うなよ。俺は授業最後までやんねえと、マジヤベェって言ったろ?」

男「いやいや、授業てw 学校は今日はないだろ?」


「は?今日祝日とかないだろ?」

「普通の金曜日じゃん」


男「…え…」


「わり、もう家出るから切るな。お前ちゃんと学校来いよw じゃ!」



ツー ツー…



男「何だよ…これ…」

朝のニュースも

新聞の日付も

全部、全部間違ってる



男「(どうなってんだよ…)」

男「日付は…変わってるのか」


男「あいつら…昨日のことは、曜日以外全部ちゃんと覚えてんのに…」



教師「ふわぁ…ねみぃ…」


友2「センセー寝不足〜?」

教師「んあぁ、昨日飲み会でよぉ、なかなか帰されなくてな…」

友2「休んでいいよ!休んで!」


教師「ん〜、じゃ、自習にすっかな」



「「イェェエイ!!」」



男「…」


友「男?どした?」

男「いや…ちょっとな」

友「お前さ、昨日の女ちゃんのことで、ちょっと頭追いついてねぇだけだって」


男「で、でも、昨日テレビで金曜日の番組やってたし…」

友「お前らしくねぇな〜。昨日のことは気にすんな!今に生きろよ!な?」


男「…はぁ。そういや女は?」

友「やっぱ気になってんじゃねぇか。今日は来てないみたいだな」

男「そう…だな」キョロキョロ


友「恋煩いもここまでとはな、お大事に」


男「…うっせ」

おもしろくて震える

会いたくて会いたくて震える

>>21
>>22
ありがたくて震えるよ
よかったら続きも見てってね

男「…」キョロキョロ

男「…いや、ちげーって!」


男「(一人で何やってんだ、オレ)」


友2「よ!時をかける少年!」


男「うるせぇ。忘却の番人」

友2「なぁ、明日休みなんだし、せっかくだから友とどっか行かね?」


男「あ、あぁ…」

友2「あ、そうか!お前にとっては明日はもう月曜日なんだっけな!w」


男「んな!お前はホント人を馬鹿にしまくりやがって!」


友2「ハハハw ま、元気出せ!」

男「テメェのせいで落ち込んでんだよ!」


友2「おっと、センコーに呼び出されてんだ。じゃ明日、あの公園に昼くらいにな!」ダッ


男「あいよ!クソッタレ!」


男「」

ミスった
>>23

男「」→男「また明日…な」

ミスった
>>24

男「友は図書室でお勉強、友2は呼び出しか…」


男「(一人で帰るのも久しぶりか?)」

男「…コンビニで菓子でも買って帰るか」


グワン


男「ん、んん?」フラフラ

男「やば…何これ…眠気…?」フラフラ

男「おっと!」ゴツン

男「イテテ…電柱に起こされるとは」


男「(疲れてんな、オレ)」


男「…さっさと帰るか」

男「お家に帰ろ、でんでん、でんぐり返…し…」


女「…」


男「お、お前!何で俺ん家に」

女「ごめん…なさい」ヒック


男「な、何だよ。昨日のことか?だったら…」

女「…っ…あなたはこれから、とても辛い目に合う…」ヒック


男「…よく分からんが、別に平気だよ。お前の方が辛そうじゃねえかw」


女「そんなことじゃない!!」

男「っ!?」


女「私には…あなたしかいない…だから…許して…」グス


男「え…あ…」


グワン


男「(眠い…てか、寝たい…)」



「…めん…なさ…」


また震えるんだが

>>30
書き溜めてないの
まだ寒いから風邪ひかないように


ピッ…ピッ…ピピッ


男「ん…あ…」

男「ここは…どこ…だ」ムク


研究員「お、男さん!大丈夫でしたか!?」


男「…へ?」


研究員「いや、記憶は残ってるかわかりませんが、この間の研究ですよ!」

研究員「脳波のサンプリングから、実際の出力!」

研究員「いや〜、バーチャルの中に、正体不明のウイルスが入り込んでたみたいで…」


男「……」

研究員「男…さん?」


男「…あんた、誰?」



白衣のヤツれた男が、難しい単語を並べている

何だこいつ、研究?サンプリング?

早くこの夢から覚めたいもんだ



男「…で、その研究の被験者に、自分で志願したと」

研究員「そうです!思い出しましたか?」


男「いや、あんたの説明を確認しただけなんだが…」



医者「むむ…あまり無理はさせないで、焦らず思い出しましょう」

男「なあ、便所どこだ?さっきっから我慢してたんだ」


研究員「この部屋を出て右に、突き当りを左に行ったとこですよ。…覚えてないのですか?」


男「あぁ…どうもね」

男「左に…あったあった」


男「しっかし近未来的な夢だな。妙にリアルだし」

男「…!?っあぁ!?」



トイレの入り口の鏡

そこには少し太めの中年男性が、口を開けて驚いている

何て悪夢だよ、まったく



男「…は、ははは…ひでぇな、こりゃあ」

男「(早く覚めねぇかな…これ)」


男「覚めたら…覚めたら…?」


男「…」


男「金曜日…土曜日」


男「まさか…!」



仮想世界で、自分で設定した高校生活を送る

データで作られる世界

もし、もし何らかのエラーって考えると




研究員「そのウイルスは、前々から侵入してたみたいだね」

研究員2「突如動き出し、バーチャルの曜日システムをループさせたようです」

研究員「それによりセキュリティは、少しだけ手薄になる」


研究員「その隙に男さんの現実の記憶を、バーチャルの記憶信号で強制的に塗り替えた…そして」

研究員2「現実の記憶データを、どこかへ持ち出したようですね…」


研究員「うーん、ウイルスねぇ…」

研究員2「実際には検知されていませんが、明らかに誤動作の範囲ではないかと」


研究員「何にせよ、バックアップごと無くなると、男さんが元に戻らない…まいったな」



男「……」


研究員「男さん…ご飯食べないと、倒れちゃいますよ?」

男「…あぁ、はい」


研究員「…大丈夫です!そのうちバックアップを取り戻して、また」

男「俺は」

研究員「っ…はい」


男「俺の人生は…みんなまがいもんだったのか…?」


研究員「…男さん」

男「この見事に運動しなかった、オヤジの腹」

男「手で触ってもわかる、顔のシワ…」


男「これ…本当にホントなのか…?」

研究員「…貴方は、男さんはこう言って被験者になりました」


研究員「『どんな世界、どんな相手でも、等しく価値はある』」

研究員「『たとえバーチャルに行ったとして、そこで今の人生の時間を無駄にしたとは思わない』」


男「……」


研究員「…現実の記憶があると信じますか?」

男「…いや…でも…」


研究員「今ここにないものは仕方ないです。だからせめて、あるもので頑張って下さい」


男「…分かりました」

研究員「フッ…最初みたいにタメ口で話して結構ですよ、それが我らが男さんですから」


男「…分かっ…た」


研究員「じゃあ後は研究員2が来る…って覚えてないんだった」

研究員「私にも仕事があるので、後輩のものを来させます」


男「…すまない」

記憶が戻るまでの間、ひたすらカウンセリング

まるで病気の人みたいだ

似たようなもんか



ウィーン…


研究員2「…こんにちは、気分はいかがですか?」

男「(うぉっ、随分綺麗な人だな)」


男「あ、はい。だいぶ落ち着きました」


研究員2「…ぶっ、フフッ…アハハハハ!」

男「へ?…あの…」


研究員2「いえ…フフッ…あの、申し訳ありません…」

研究員2「いつもあんなに威厳があられたのに、何だか新人のようで…プッ」


男「な…し、静かにしたまえ!」


研究員2「…グッ、アハハハ!そんな偉そうじゃないですよ」

研究員2「私たちのリーダーで、いつも先を見てる、優しい人です」


男「…この見た目でか?」

研究員「ええ、男さんは私たちの自慢のリーダーですよ」


自分ってのが、どういう奴か

ヒョロヒョロと美人さんの、良きリーダー

正直信じられない




男「よく分からんけど、タメ口の方がその…いいのか?」


研究員2「はい。そちらの方がやり易いですので」

男「わ、分かった…」


研究員2「はい。では改めて、しばらくの間研究員と交代で様子を伺いに参ります。研究員2と申します」

男「いつもは、そんな感じなのか?」


研究員2「はい。こちらの方が落ち着くので…」


男「ふーん…」


男「(綺麗な人だけど、変わってるな)」

研究員2「何か聞きたいことがあれば、遠慮なく」


男「んー、そうだな…そもそもバーチャルってのは誰が作ったんだ?」

研究員2「ハードウェアは他の場所へ依頼を出しましたが、ソフトウェアは男さんがお作りになられました」


男「お、オレ!?」


研究員2「プッ…え、ええ、そうですよ」

男「…笑うか真面目になるか、どっちかにしてくれ」

研究員2「申し訳ありません」


男「…まあいいや、ソフトって具体的には?」

研究員2「登場人物の中に、AIを参入させ、それのデータ観測もしたいと」


男「AIって、人工知能か?」

研究員2「はい。実際にはかなりの深度まで、アクセスを許可していたようです」


男「ア、アクセス?」

研究員2「コンピュータの中にあるソフトは自由に使える、と言えばお分かりでしょうか」


男「んー、確かにヤバイ感じはするな」



話が難しい割に、意外とすんなり入ってくる

自分で作っただけあるな

何にも覚えてないけど



男「とにかく、記憶のバックアップデータとやらが来るまで、大人しくここにいろってこと?」


研究員2「はい。そもそも今回の実験自体、あまり安全とは言えませんでした」

研究員2「明日のことは考えない…。男さんらしさなのでしょうね」


男「お、おう…」



『お前らしくねぇな〜。今に生きろよ!』



男「……」


研究員2「…どうかなさいましたか?」

男「…いや、なんでも…」


男「もう…大丈夫だ」


研究員2「…ご無理はなさらぬよう」

男「ああ…。あ、一つ聞いていいか?」


研究員2「何なりと」


男「今日は何日…いや」

男「今日は、何曜日だ?」


研究員2「…?何か気になることがおありですか?」

男「あぁ、いや…ちょっとね」


研究員2「…今日は金曜日です」


研究員2「明日は土曜日になりますね」



ドクッ



男「…分かった、ありがとう」

男「仕事とやらは大丈夫なのか?研究員とかいう奴が忙しそうだったけど」


研究員2「…いいえ、寝る間もないくらいです」

研究員2「なので…早めのお戻りを期待しています」


男「……」




男「ああ…疲れたな」


男「やっぱこの歳くらいだと、体も弱くなるのかな…」


男「…」




明日、目を覚ましたら

もし、また『あんなこと』になったら

この体が、もしまがいものだったら



男「何が本当で、何が嘘なんだか…」

男「…まあ、いいか」


男「寝よう…」



ウィーン…


「…ぃ、起きてください。男さん」


男「…んん…あぁ…」

研究員「よく眠れましたか?」


男「あ…?ああ…メガネメガネ…って、ん?」

研究員「…!お、思い出しましたか!?」


男「…メガネなんて俺、してないのに…」


研究員「そうですよ!最近メガネをやめて、コンタクトに変えたんです!」

研究員「だから、メガネはもう」

男「も、盛り上がってるとこ悪いけど、記憶が戻ったわけじゃないんだ…」


研究員「そう…ですか」

男「悪いな…メガネ探すのは、癖だったのか?」


研究員「え、ええ。寝ぼけてる時は、まだメガネを掛けるのが習慣だったみたいで…」


男「何か視界がぼやけると思ったら、目が悪かったのか…俺」


研究員「…持ってきましょうか?」

男「ん?」


研究員「直ぐに持ってきますよ、メガネ」

ウィーン…



研究員「はい。どうぞ」

男「ん…メガネと、これは?」


研究員「ああ、携帯ですよ。携帯」

男「へぇ〜、こんな薄っぺらいのが?」


研究員「男さんが作ったソフトウェアは、自分の学生時代の記憶を元にして作ったみたいですね…」

男「うん、あっちじゃ見たことないよw おー、軽い軽いw」


研究員「(相変わらず、新しい機械を見ると子供のようですね)」


研究員「それは、男さんが使ってた物ですよ」

男「へ?」


研究員「退屈でしょうから、それで気を紛らわせては?」

男「…ああ、そうするよ」





研究員「何やら色々連絡が来てましたよ。いつもは研究所宛に来るのに…」

男「そんなこと言われても、ここでの記憶はないしなぁ」


研究員「確かに…。まあ、下手に返さない方がいいでしょうね…と」

研究員「そろそろ結果が出るな…じゃあ、これで」

男「ん、ありがとう」



ウィーン…ガコン



男「どれどれ…おぉ、よく見える!」

男「携帯は…ん?パスワード…?」


男「(そっか、そりゃあそうなるわな)」

男「ん…?待てよ…」


男「こりゃタッチすりゃいいのか…?ホイ、ホイと…」

男「お、通った通ったw」


男「(ま、こういうのは大体自分の誕生日を入れるもんだしな)」


男「よーし、大体使い方はわかったぞ…てか、何となく分かるって感じだが」

男「この数字のマークは何だ…うわっ、開いた」


男「メール…なのか?」


男「研究員と研究員2からしか来てないじゃないか…ん?」


男「アドレスがメチャクチャだ…開くのは、タッチだろ!」

男「お、行けたか…な…」


男「…へ…え?」



【ごめんなさい。私のせいでこんな目に合わせてしまって…。

忘れてほしくなかったの…あの時あなたが、『これから恋人になるんだよ』って言ってくれたから。
そして、その本当の意味を知ってしまったから

あなたがもし、『学生生活』に戻りたくなったら、来てください。いつでも待っています。

この記憶と共に、あなたを待っています】



男「女…より…って」


乙乙、好きなやつだわ

>>51
サンキュ
また来てね

まさか

同じ名前、そして口調

そして何より



男「この内容…女って…」


『登場人物の中に、AIを参入させ…』


男「いや…そんな…そ、そうだ!」

男「カレンダーは…どこだ、どこだよ」


男「(きっとこれも夢なんだ…だとしたら、エラーが起きてる…!)」


男「…は、ははっ…」

男「土曜日…だってよ…」


男「てか、そもそもデータの話とか、ここに来てから知ったんじゃねぇか…ははっ…」


男「…クソッ…なんだよ…もう」

男「…研究員…あいつ、何か知ってるのかな…」






男「待てよ…メール、ってことは返せるのか?」

男「えっと…これか?宛先が…これで」


男「(なんて、送ろうか…)」

男「…いやそもそもこれ、信じていいのか?」


男「…てか、信じたくない…でも」



研究員たちの話が本当だとしたら

記憶を取り戻すのが、最優先だ

頼れるのは、あの世界から今までの記憶だけだ



男「研究員たちに言うべきかな…」

男「そうだ、そのことを送ってみよう」

男「(他の奴らに話していいか、そっちの世界はどうなっているのか…)」


男「…何か、冷静に考えるとバカみたいなことしてんな、オレ」

研究員「…ん?これは…」

研究員2「どうされました?」


研究員「男さんのバーチャルのソフト、起動停止したよね?」

研究員2「はい。男さんを、こちらに強制的に返すために停止したはずです」


研究員「うーん、じゃあこのログは一体…」

研究員2「男さんがデータの観測を行っている、AIの仕業では?」


研究員「なるほど、確かにあれの権限はかなり深いからね…」

研究員「まぁ、所詮はAIだ。テスト途中ということもあるし、そこまで大きな動作もしないはず」


研究員「男さんが作ったってところはあるけど…どうしたもんか…」

研究員2「…本人に聞いてみますか?」

研究員「ええ?…まあこの際、止めても止めなくても変わんないか…」


研究員2「では、男さんに聞いてまいります」

研究員「ああ。くれぐれも、過度なストレスは与えないようにね」


男「…」



ピロン



男「来た!」

男「……!」


男「なっ…」



ウィーン…



男「っ!」サッ


研究員2「…?どうかなさいましたか?」

男「な、何でもないぞ?」


研究員2「…記憶は思春期とはいえ、体はそのお歳です」

男「…へ?」


研究員2「ほどほどに、お願いいたします」


男「(何か、いやーな勘違いをされてるけど、今は仕方ないか)」

男「い、いやー。そ、そんなんじゃないってー、やめてくれよー」


研究員2「男さん。少しご相談があります」

男「あ、はい」

止めるも止めないも上しだいって、儚すぎる乙

>>57
ありがとう
同じ人かな?
続きも良かったら見てね

研究員2「男さんは、AIのお話は覚えていらっしゃいますか?」


男「っ!…あ、あぁ、どうだったかなぁ…」

研究員2「そのAIの話なのですが…」



【私の存在を、話してしまっても構いません…ですが】



男「…あぁ、それが何か…その、しでかしたのか?」

研究員2「…やはり、作った本人だけありますね。お察しの通りです」



【もしそれで、私の強制停止、削除が行われれば】



男「あ、えぇー、マジかぁ…。さすがオレだぁ」

研究員2「しでかした…と言っても、ウイルス化した訳ではありません。」


研究員2「今は男さんの回復までは、なるべくコンピュータ内をいじられて欲しくないので…それで」

男「きょ、無理やり…止めるのか?」



【現実でのあなたの記憶は、二度と戻ることはありません】

研究員2「強制的に、ということでしょうか?」

男「あぁ、あるいは…その、消したり…するのか?」


研究員2「…何か、気がかりがおありですか?」

男「あ、いや…別に、そういうわけじゃ…」



この世界での記憶

俺の本当の人生

取り戻すチャンスは見えてきた



男「(けど…これじゃあ、全部なかったことになっちまう!)」


研究員2「…男さんは。あの時の男さんは…」

男「…?」


研究員2「毎日話しかけて、まるで子供のように愛でていらっしゃいました」


男「…そ、そっか。じゃあさ、好きにさせてあげてよ」


研究員2「…!」

男「俺がその時どうなふうに、そのAIの事思ってたか…そりゃわかんないよ」


男「でもさ、機械だろうとプログラムとかだろうと、ここに生まれてきた以上はさ」


研究員2「人と同じ…生きている。でしょうか」

男「え?、あ、あぁ…まあそんなとこ」


研究員2「…男さんは、やはり男さんなのですね」

男「お、おおよ。いつでも俺は優しい人間代表だ!ハハハw」


男「(ふぅ、何か勢いで言った気がするけど、誤魔化せたのかな?)」


今わかっているのは

記憶の鍵は、バーチャルの『女』が握っている事

そして女は恐らく



男「AIってやつなんだろう…それも、開発者は…オレだ」


男「何てことしてんだよ…俺は…」

男「研究員たちは、AIをそんな悪者だとは思ってない…」


男「大ボスだよ!ボス中のボスだよ!」


男「(クソッ、自分に苦しめられるとは…)」

男「研究員たちに相談しようにも、信じてはくれんだろうな…」


男「いや、信じたとしても…」


男「(下手に女を刺激したら、記憶もろとも消えていくだろうな…)」

男「はぁーあ…」

男「俺のせい、俺のせい…か」


男「…俺って、どんな人間だったんだろう…」

男「(研究員も研究員2も、不思議なくらい慕ってくれてる…)」


男「バーチャルが…女がどういうつもりで、こんな事したのか」

男「好きだから…?よく分からん。そんなら記憶を返してくれってんだよ」


男「…よし、行こう!」


男「もう一度会って、問いただしてやる!」

研究員「ええ!?バーチャルにまた入りたい!?」

男「ああ、どうしてもやりたい事があったんだ」


研究員2「……」


研究員「そりゃあ、今男さんの記憶はあっちの世界が基準だし、不安なのは分かりますけど…」

男「…別にあの世界でずっと暮らしたいとか、そういうんじゃないよ」


男「もういい加減目も覚めた。けど…これをやらない事には、この世界に戻っては来れないんだ」

研究員「し、しかし…」


研究員2「…男さん。何か、隠していらっしゃいませんか?」

男「…これは、俺の問題だ。二人に話して、それで解決する事じゃないと思うんだ」


研究員2「事情が理解できない限り、お貸しする事は出来かねます」

男「っ…。頼むよ…」


研究員2「……」


研究員「…分かりました。いいでしょう」

男「おお…!ありがとう、助かる」


研究員2「しかし今は、男さんは記憶が不安定なデータな上、元のバックアップもどこにあるか不明です」

研究員2「非常に不合理に思えます。どうかお考え直しを」


研究員「まあ待って…。男さん、ただし条件があります」

男「…今回の事については説明しないぞ?」


研究員「それは、帰ってきたらにしてもらいます」

研究員「男さんには…今僕たちが知っている『男さん』について、話を聞いてもらいます」


男「…?」


研究員2「なぜそれが、バーチャル利用の承諾条件になるか、理解しかねますが」

研究員「…これはある種の『保険』です」

研究員「仮にバーチャルに行き、そこの記憶すら無くしてしまったとしても」


研究員「ここで記憶を少しでも残しておけば、最悪、記憶が無くなって起こるであろう『錯乱状態』は防げますからね…」


男「そうか…ここの記憶のデータは…」

男「(きっと女が持っている…帰ってくる保証はない)」


研究員2「…私は反対です。実に…実に不合理に思えます」

研究員「今この提案の決定権は僕にある。責任は取るよ」


研究員2「責任など…!…もう、結構です」

研究員2「失礼します」


ウィーン…ガン…


男「…良かったのか?アレは」


研究員「…ふぅ。久々に緊張しました」

研究員「彼女は良いんですよ。それに…」


男「ん?」


研究員「(前の男さんの前では、あんなに怒った事なかったのに)」

研究員「いいえ、彼女は元々怒りっぽいので…」


男「ふーん…よく分からん奴だとは思ってたけど、よく分かんねぇな」


研究員「それ…本人の前では言わないでくださいね?」

男「分かってるよ。高校も卒業するし、その辺のモラルはわきまえてるつもりだよ」


研究員「ああ、ハハハ…そうでしたね。」


研究員「と言いましても、僕も昔から男さんを知っていたわけではありませんし…」

研究員「それと、今回の事に関連が強いものに絞って話そうと思います」


男「何でだ?記憶は多いほうが良いんじゃないか?」


研究員「記憶に自我を保てるだけの強さが必要です。たくさんあっても、邪魔になってしまう」


男「…よく分からんが、それでバーチャルに行かせてくれるなら、ちゃんと聞くよ」

研究員「ありがとうございます。これから話す事、他人事ではないですからね?」


研究員「ちゃんと自分の事のつもりで、聞いてくださいよ?」


男「まあ、その通りだな」


研究員が何でこんな事をするのか

理由を聞いても、正直理解はできなかった

研究員はただ、本当の俺に伝えたかった事を言ってるんじゃないか、なんて思った



研究員「ちっとも理由を言ってくれなかったんですよ?まったく…」

男「あぁ、すまんな」


研究員「実験をするなら、まずは内容と目的を明確にすべきです!」

男「なるほどなぁ…」

研究員「AIを導入するというのも、研究員2づたいに聞いた事ですし」


研究員「あの時はさすがに、男さんへの信頼を無くしかけましたよ…」


男「うん…」

研究員「普段からあまり喋らなかった男さんですけど、僕は尊敬してますよ」

研究員「見えないところで、僕達の為に、それは必死になって…」

男「なあ?」


研究員「は、はい?」

男「まだ…あるのか?」


研究員「うっ…ま、まあこの辺で良いでしょう」

研究員「しかし男さん。記憶がないとはいえ、またしても理由を説明せずに行くと言います」


研究員「今回のも、男さんのソフトウェア制作のフローチャート、レポートから何とか目的を把握したんです」


男「え?マジで?」

研究員「大真面目です。ですから、次からは必ず我々に説明してしてからにして下さい」


男「あぁ、分かった…でもこれ、前の記憶が戻ったら忘れないか?」

研究員「その時はまた、その時の男さんに言うので、ご心配なく」


男「ハハッ、そりゃどうも」


研究員「…では、行きましょうか」

ブゥゥン…ピピッ…


男「……んっ…」

男「…またここに来たのか」

男「(なんか前より…静かな気がするな)」


男「俺の家…こんなに小さかったっけ?」


女「おかえりなさい…ずっと待ってました」

男「…なあ、どうしてこんな事したんだ?」


女「聞きたい事、たくさんありますよね…」

女「…少し、観光しながら話しませんか?」


男「…こんな夕方からか?」


女「では…少し明るくしましょうか。お昼の2時くらいが丁度良いでしょう」


スゥゥ…



男「…本当に、データの世界なんだな」


女「……」


男「……」


女「あっ、ここ。友さん達とよく寄ってたコンビニですよね?」

男「…あぁ、そうだな」


女「…怒ってますか?」

男「…自分で始めた事だし、文句は無いよ」


女「そう…ですか」


男「……」

女「……」


女「ここは、男さんの小学校ですね」

男「ああ、覚えてるよ」


男「よく遊んで、よく怒られて、欲張ってばっかりだった」


女「…ええ、その通りです」

男「…ん?」


女「男さんのその記憶。99%が本物の記憶です」

男「え…? 何言って…」


女「データの再現が、細かく出来なかった事を除けば、全ての過去は現実です」

男「じゃあ…俺の記憶は、全部が嘘じゃ…なかったんだ」


女「そうですよ。全部は…ですけどね」

男「…自分で設定した高校生活、か?」


女「……」

男「そして、お前というAIをここに組み込んだ」


女「正確には…少し違います」

女「自分の『理想の設定』の高校生活に」


女「ある記憶データで、擬似的に人間的感情を持たせた私を組み込みました」


男「何でだ?元から感情があったんじゃ無いのか?」

女「男さんのAIは、『データの孤有化』という名目で私を作りました」


女「男さんからのデータのみでは、せいぜい能の無い使用人程度でしかなかったのです」

女「とても高校生活などに溶け込むのは、不可能でした」

男「そのために…その、そこら辺の人達の記憶を取ってきたのか?まったく俺は…」


女「…男さん…本当に、そう思いますか?」


男「……」


女「男さん…私は」

女「男さんの…貴方の記憶です」


男「…だ、だから何だ?仕方がなかったんだろ?」

男「研究するのに自分のを使う。そんなにおかしな話じゃ…無いだろ」


女「…分かりました」

女「今から、少しずつ、男さんの記憶をお返しします」


男「…え?」


女「何で私が、現実世界の記憶を奪ったか、ここでの記憶を残させたか」

女「ちゃんと『お話し』します…」


そして帰りの電車
以外と帰してくれた
ちょっと書いてく


男「…っ!?今のは…!」


女「それは男さんの、入学式の記憶です…」

男「そうか…何か、思い出すっていうより、他人の記憶って感じだ…」


女「それは…今ある記憶が、まだ男さんに染み付いているからでしょう」

男「そうなのか…(なんか夢でも見てたみたいだったな)」


女「じきに思い出すはずです。自分の記憶だと」


男「分かった。頼むよ」

女「…そこから男さんは、そのクラスで学ぶことになりました」


女「ところが……」



《よろしくー》

《お、よろしくな〜》


《マジで?元小そこにいたんだけどw》



男《……》


男《(みんな、地元から上がってきたのがほとんどなんだ)》


教師《はーい、静かにー》

教師《一応全員来てるか確認しますねー…あれ?名簿がねぇな》


教師《悪ぃけど、しばらく喋くっててくれ》


《ハハハハ…》


《それがさ〜…》


《お、それ知ってるぜ〜》


友《おい…》

男《……》


友《おいってば!》


男《…!な、何!?》

友《あ、いや…ブレザー椅子から落ちてるよって…》


男《あ、それは…どーも…》


友《お、おう。良いっていいってwそーいえばさ》

友2《おーい!友!》


友《何だよ。お前自分のクラスに友達いないのか?》

友2《うるせw 騒ぎすぎてうるさい扱いされて来たわw》

友《お前、まだ2カ月もたたんうちにw》


男《…(授業の準備しないと)》ガサゴソ

男「…友、友2も…」

女「男さん、友さんとはいつ頃から知り合っているか、覚えていますか?」


男「…あのブレザーの時、名前を聞かれたんだ」

男「あいつ『いや、知ってるけど』とか言ってきて…」


男「それで…バカにしてんのかって…初めて俺で笑ってくれて…」


女「そう。それが今の男さんの記憶」

女「男さんは…あのとき後悔していたんです」

女「なんで素直に『ありがとう』って言わなかったのか」


女「なんで友さんと、友2さんに話しかけなかったのか…って」


男「そ、そんなの…分かるわけねぇだろ」

女「…もう少し、先をお話しします」

教師《この間のテスト、返すぞ〜》


《きたきた!》

《私結構自信ある〜》


教師《因みに100点は…》


《……》


男《…》

教師《…男。一人だけだ》


《……》

男《…あ…はい》


友《うっわマジか。俺自信あったのに》

教師《お前の図太さには、100点をくれてやってもいいぞ》


《ハハハハ》


男《…》


男「…何だよ、何してんだよ。俺」

男「喜べよ…せめて気の利いた一言くらい出せよ」


女「……」


男「何だよ、あ、はい…って」

男「みんな気まずいじゃんかよ…先生も言って良いのか迷ってたしよ…」


女「…大丈夫ですか?」


男「…あぁ、平気だ」

男「(100点とか、取ったことねえし…みんなを楽しませてやれるチャンスじゃねぇか)」


女「…(男さん…)」



女「まだ…見ますか?」


男「あぁ。続けてくれ」

女「辛かったら、やめても構わないんですよ?」


男「別に辛さは感じない。ただ、何だかこいつを見てるとイライラする」

男「だからこそ、知っておきたい」


男「今の世界を求めただけの理由に、まだなってる気がしないんだ」


女「分かりました…行きます」




《クラスの出し物どうする?》

《今年も休憩所で良いんじゃない〜》


《いやいや、流石に3年だぞ?なんか決めよう!》


友《あ、あれは?喫茶店》


《他のクラスと被るかもよ?そしたら抽選だし…》

友《取り敢えず応募してみようぜ!宝くじは買わなきゃ当たらんぞ!》


男「(大げさな…)」


《まあ確かに、やってみる価値はあるだろう》

《友のやつ第一候補ね〜》


男「(…流石、人望が違うな)」

《この板あっちな》

《マジかよ!まだこんなにあんの?。だりぃー》


友《文句言い過ぎなお前!…ってか、お前も女子のメイド服姿みてえだろ?》コソコソ

《だからこんなやる気ない感じ出してんの!察しろ!》コソッ!


男《(見たくないのもあるけどな)》

《男子〜。買い出し行ってくるから、あと壁張り頼んだよ〜》


《あいよ〜。…よし、少しサボってようぜw》

友《お前、そこは終わらせて女子に良いとこ見せるのが…》


ガラッ!


友2《お〜い友〜、暇だよぉ〜》

友《テメェ、またお化け屋敷の装飾で遊んでて追い出されたろ》


友2《げげ!?なぜそれを…》


友2《な?良いじゃん少しぐらいさ》

友《ん〜、まあ女子も買い物には時間かかるだろうし、1時間くらいなら…》


友2《よし!サッカーしようぜ!》


《マジで!?俺もやりてぇ》

《俺も俺も!》


ガヤガヤ


男《……》ペタペタ


友2《このクラスノリ良いよな〜。よし行こう!》


ドタバタ…


《おい、俺らもサボンね?》

《せやな〜》


ガラッ



男「…じゃねぇの」

女「男さん…」

男「バッカじゃねぇの!?」


男「何だよ…陰でみんなの役に立って、それで満足かよ…」

男「かっこ悪ぃんだよ!」


女「…何か感じませんでしたか?」

男「…何か、ね」


男「…なんかさ」


男「胸の真ん中がキリキリして、油断してると涙が出そうだった」

女「それは…『辛い』という感情ではないのですか?」


男「ああ、記憶を思い出してる時はな」

男「…ただ、今は怒りがこみ上げてきてる」






自己嫌悪はシュワの言葉でだいぶ克服したなぁ…
まぁ、TRだと偽の記憶が勝っちゃうけど苦笑

>>110
トータルリコール面白いよね
新しい価値観ができた

見てる人ありがとう
分からんことあったら聞いてくれ
ネタバレ(?)以外は答えるよ〜

女「…男さん、まだ先を知りたいですか?」


男「…」


女「まだ、本当の自分に戻りたいですか?」

男「…あの胸の痛み。苦しいな」


女「…はい」

男「他の奴らは、気づかなかったのかな…」

男「だとしたら…寂しいな」


女「…はい」


男「なあ、楽しい記憶は無いのか?人生楽しいこともあるだろ?」

女「…私が受け取ったのはデータの中でも『普段よく思い出す記憶』つまり、強い信号がほとんどです」

女「他の記憶は、ノイズと同等の信号でしかなく、記憶としての判別は…」


男「そっか…いつもいつも、あの寂しさを感じて…」

男「他の記憶が埋もれてしまうぐらいに…強く…」

女「…私は、私も辛かったんです」

男「…?」


女「たくさんの記憶に触れて、感情のようなものが出来てきて…」

女「あらためて、男さんの記憶を受け止めました」


男「…」


女「…とっても、苦しかったんです」

女「なんかのウイルスかなとか、データのエラーかなとか思いました…でも、私思ったんです」


女「これは男さんの記憶ではなく『感情』そのものを受け取ったんじゃないかって…」

男「感情…本当の俺の…」


女「ええ、男さんの感情の、その根幹だと思っています」

女「それから色々考えました。この苦しさから、どうやったら逃れられるか…」

女「この感情の持ち主、その人を救いさえすれば…」


男「それで、俺の記憶を…」

女「…それには、ある操作が必要だったんです」

女「プログラムでは、高校生活を送ったらそのまま『ある過程』を経て、ソフトウェアの終了となっていました」


男「過程…?」


女「いや、もうそれは良い…だから」


女「私は…男さんを救うために、いいえ…」

女「…私自身を救うために、男さんの記憶を返すわけにはいかないんです」


>>112
乙、あれ評論家がいうほどディック感損ねちゃいないと思うな
シュワは他ラストアクションヒーローとか意外とユニークなやつ多いよね

個人的にわからないとこはないけど、女とか研究員2のルックスが気になる、髪とか。だが他の読者にわるいので聞かないことにするよ

>>116
ありがとう
そんな酷評貰ってるのかあれ
現実と夢の微妙な感じよく出てると思うけど

聞きたいことってのは、専門用語的な事とかかな
ググれば一発で出てくるけど
あんまり余計なレスしないほうが良いか

男「…それで、元の記憶を返さないなら、どうするつもりだ?」


女「…今の男さんは、あの苦しみがない、前向きな心を持ってると思っています」

女「だから、現実の世界に戻って、新しい生き方を見つけて欲しいんです」


男「高校生までの記憶だけでか?もう30歳はいってるかもしれない…」

女「…ここから先の記憶は、返せません」

男「どうしてだ。今更辛いのが嫌ってことは…ない」


女「…これ以上記憶が戻れば、『ここの世界』の記憶と現実の記憶が混ざる、あるいは…」

女「男さんが信じた方が、本物の記憶として定着します」


男「…今の記憶が消えるかもしれない…ってことか」

男「…あの二人は」


女「…はい?」

男「あの、今一緒にいる二人の記憶もあるんだろ?」


女「…ええ、あります。研究員さん達ですよね」

女「…これも辛いものばかりです。二人のために色々手まわししたり、仕事の準備をしたり…」


女「でも二人とも、気づいてくれないんです。男さんの優しさや、苦しさを…」


男「…へ?」

女「誰かに感謝されたくて、それでもどうすれば良いのか分からなくて…」

男「そんな事…」


女「え…?」


男「そんな事…ない…!」

女「な、何でそんな事が言えるんですか?」


男「二人は俺の目が覚めた時、メチャクチャ心配してくれた」

男「自慢のリーダーだって…言ってくれた」


女「そんなの、記憶が無かった男さんへの慰めに決まってます!」

女「人間は、不安を抱えてる人に優しくするんですよね?私、男さんから全部受け取ってる…」


女「今の男さんへの『気持ち』とは、違うものです!」

男「それでも!!」

女「っ!」


男「その人の事、本当に知らないと、そんな言葉は出ない…」



男「…俺の記憶だってそうだ」


男「勝手に一人で頑張って、誰かが見える形で感謝してくれるなんて思ってる…」

男「自分の価値観だけで、誰も優しさをくれないなんて…」


女「で、でも!」

男「もしかしたら!…俺の知らないところで、分かってくれている人がいるかも知れない」


男「あの『二人』みたいに…」


女「何で…そんな…」


男「誰も理解してくれないんじゃない」

男「俺が、俺自身を…理解してなかったんだ」

無茶苦茶に吐き出した。何も考えてない

でも、この気持ちは『本物だ』

偽物の記憶だって、気持ちあるんだ


目の前の『彼女』が、そう教えてくれた



女「……」


男「ふぅっ…スッキリした」

女「男さんは…本当に『前向き』な人になっちゃったんですね…」


男「…あぁ、よく分かんないけど、本当の自分が帰りたがってる…。そんな気がしたんだ」

男「あの二人の声を聞いて、寂しくなったのかも知れない…」


女「…っ…だって男さん…ずっと一人で…っ…私に話しかけて……」


男「…(泣いてる…のか?)」

女「だから…一緒に…っ…『時間』を忘れて、時間を過ごそうって…!」



男「…ごめん。俺、元の世界に…帰りたい」


女「…今の…今ある記憶が」

女「楽しかった記憶が全部、消えちゃうんですよ?」


男「どっちが消えるか分からないんだろ?」

女「今の男さんにとって、どっちが大切かなんて…分からないと思いますか?」


男「んー…いや、正直どっちも大切だ」

女「…!」


男「ただ、記憶を取ったのは君だ」

男「俺は、記憶を返して欲しい。そう思ってるだけだよ」


女「…ズルいですよ、そういうの」


男「まあな、この世界では上手に生きてるつもりだし」

女「…(私の事…忘れちゃうんですね)」


男「なあ、一つ聞いていいか?」

女「…」コク


男「…その、俺が言ったっていう『これから恋人になるんだよ』って、どういう意味だったんだ?」


女「っ!…それは…」

男「聞いちゃ…マズかったか?」


女「…いいえ。それも含めて、記憶をお返しします」

男「そっか、ありがとな」


女「それで、その…もう少し、近づいてくれませんか?」

男「こうか?」ススッ


女「そう…そのまま…」トスッ


男「お…!おい…」



不意に体を預けられた

悪い気はしなかったが、何だか不自然に軽い

これもデータの世界だからなのか



女「こうすると、人は落ち着くんですよね?」

男「まあ、時と場合によれば、緊張も…その…」


女「…私は、落ち着きます」


男「そっ…か…」クラッ

男「(ああ、とうとうこの記憶とも、おさらばか)」


男「楽し…かっ……た…な」

【平成◯◯年 ◯月×日
title 脳波のデータ化による、人体への影響

データ化に成功したものの、どうやら形としては不完全だ

コピーを行ったが、とても記憶データとして扱える信号ではない

さらにデータ自体も、強い部分と弱い部分のムラがある。恐らく下記のソフトもその影響で、この仕様になったと思われる

ソフトウェアも、どうやら『あの時』の記憶の周辺しか、再現できなかったようだ。運命とも言うべきか

これを『彼女』に渡すとなると、少し不安が残る。少し人間としては、偏りがちなものになるだろう

しかし、『彼女』の成長には、これが一番d】



女《おとこさん。なにを、しているのですか?》


男《…ん?レポートを書いているんだ》


女《2じかんと、5ふんまえも、していましたね》


男《あぁ、その通りだ》

【また、人体の記憶の一時的保管、それに削除を行う

非常に危険を伴うが、やってみる価値はある】



男《…いや、ここの部分は…ダメだ。前の文も訂正しておかないとな》


【サンプリングを行った脳波については、かなり精度が高いと言える

コピーはできないが、一時的保管においては、98%の復元率を出している】



男《あとは、削除して…と》カタン



【一時的保管において、バックアップという形で残しておく

今回の実験の目的は
〈現在の記憶の脳波サンプリング、及び実際にソフトウェアを、一通り終えたあとの記憶の出力〉
である

なお、自作のAIのソフトウェアのアクセス許可。それについてAIへの影響も、観測するものとする】



男《よし、あとはこれを…》カタカタ


女《おとこさん。このファイルは、なんですか?》


男《ん?…女が成長するためのものだよ》


女《おとこさん。このソフトにわたしはなぜアクセスするのですか?》


男《…(彼女への影響も含めて、ソフトに細工をしたが、果たしてうまくいくかな)》

男《これからな、『恋人』になるためだよ》


女《こいびと?ヒトにちかづくんですか?》


男《そうなると…いいな》


男「……っ……」


女「苦しいですよね…」

女「…私もです」


男「……っ…」ギュッ


女「この記憶を返したら、私は…人の心を…」


男「……」


女「…」

〔苦しい…ですか?〕



「どうして…誰も…気づいて…」



〔気づいてますよ…みんな〕


「あの時…なんで……」




〔私の…私だけの記憶〕


〔男さん…あの二人は…ちゃんと知ってます〕


〔…さようなら〕



研究員2《…レポート、後で見よう》


女《研究いん2さん、なにをしてるんですカ?》


研究員2《…また後でね》


女《りょうかい、しました》



ウィーン



女《…アクセス》

女《じっけんしつ…カメラ…スタンバイ》


女《かんりょう、起動》


ウィーン…



研究員2《…?》


研究員2《もうほとんど片付いてる…》


研究員2《男さん…なんでいつも…》



女《(……あの『ひょうじょう』は、わかります)》


女《(カナしみ…おとこさんが、おしえてくれた)》



研究員2《…ありがとうございます。男さん》




ツカツカ…ウィーン…




女《…カンシャ…感謝…なぜ?》


女《またひとつ、おとこさんに聞くことがふえました》



ウィーン…



研究員《ふぁ…あぁ》


研究員《さて、片付け片付け…?》


研究員《…男さん、またこんなやり方で》


研究員《素直じゃないなぁ…ホントに》



研究員《…ありがとうございます》




女《(また、ありがとう…?)》




研究員《…研究員2がやった事にしておいてやらんと、男さんの面目が立たないかな?》




ウィーン…




女《…?めんぼく…?》

男「っ!?…今のは…?」


女「わたしの…キ、記憶です。おとこさんへの、送りモの…」


男「なっ、そんな事したら、今までの思考能力や知識能力、それに『感情』だって!!……え?」

男「なんだよ…これ、何を知ってるんだ、俺は」


男「あれ…?ここは…どこなんだ…?」


女「もう…だいぶ…戻ってきテ…ますね」

女「これで…ぜんぶ…」


男「や、やめろ!ダメだ!君は僕の…!クソッ、何だよこれ!」


女「…」ニコッ




綺麗な光が上がった

何だろう。何をしてたんだっけ

夢…なのか?



夢っぽいし、せっかくだから言っておこう



男「君は僕にとって、大切な『人』なんだ!!」



ウィーン…



男《…ただいま》


女《おかえりなさい、男さん》


男《発音、だいぶ良くなったな》

女《おはなし、たくさんしてるので》


男《あぁ、俺も…》


女《…どうしました?》


男《…いや。それより、今日は聞きたいことは見つかったか?》


女《こんどつかう、ソフトウェアの事につイて、ききたいです》


男《おお、そうかそうか。…どこから話そうか》


男《それじゃあ、始めるよ》


女《はい》


男《インストール…開始》



男《……》



男《女?…少し処理が重いか》



男《…返事を…してくれ》



男《(…いや、大丈夫だ。明日の実験でそれを証明してみせる…!)》




ウィーン



男《……よし》


研究員2《男さん…こんな時間から実験ですか?》


男《…仕事は片付けた。夜までには終わる予定だ》


研究員2《レポートの方、目を通させていただきました》

研究員2《…本当に、危険では無いのですね?》


男《…ああ、そうだ》


研究員2《…AIの方だけでも、控えて頂けませんか?》


男《……》


研究員2《AIぐらいであれば、また間接的な方法で…》


男《…『彼女』は生きている、人と同じだ》


男《間接的では、限界がある…》


研究員2《…はい》


男《研究員に、これの事を伝えておいてくれ。簡単でいい》

研究員《…承知…しました》


男《…(いよいよ、だな)》


男《(女…きっと君は本物になれる)》


男《(唯一、僕の事を理解してくれる君なら…)》




ピピ…ピッ……ピピ…



男「……」


研究員「…」チラッ

研究員「(もう8時間になる…体への負担的に、もうそろそろ…)」



ピピ…ピッ…



研究員「…!このログは!」


男「……ん…」

研究員「男さん!大丈夫ですか!?」


男「…研究員…か」


男「…ん?大して時間が経っていない…?」


研究員「お…男さん?」

男「研究員2から聞いていないか?実験を行った…と」


研究員「お…男さん!戻ったんですね!」


男「…?」



ウィーン ガンッ


研究員2「ぃたっ……男さん、お体のお加減はいかがなさいますか?」


男「…日本語、おかしいぞ」


研究員2「…申し訳ございません」

男「研究員。戻ったとは、どういう意味だ?」


研究員「あれ?前の記臆は消えてしまってるんですか?」


研究員「と言うか、そもそもどうやって記臆のデータを…」


研究員2「…男さん」

男「…ん?」



バシッッ!!



男「っ!!?なっ…何だ!」


研究員2「危険では無いと…おっしゃっていたのに…」

研究員2「…一体どういうおつもりですか!!!」


研究員「ヒッ」


男「…いや、その…」


研究員2「私は…私たちは、男さんに何かあったら、どう感じると思っているのですか?」

男「…仕事が…大変になる…か?」


研究員2「何ですって!!!??」


研究員「ヒィッ」

研究員2「…どんなに心配したか…」


研究員2「…もう…知りませんっ」ダッ



ウィーン ガンッ



男「…すまんが、説明を頼む」


研究員「あ、はい」



説明を聞く限り、研究員2が怒った理由はこうだ


実験中にトラブルがあった

記憶を失い、代わりにソフトウェア内のデータとすり替わった

自らの意思で、もう一度バーチャルに行き、記憶とともに生還




研究員「こんな所ですかね」


男「…迷惑をかけたようだな」

研究員「医者に悟られないように説得するのも、一苦労でしたよ」


男「……うむ…」


研究員「…少し、面白かったですけどね」


男「ん?」

研究員「男さんが、全然いつもの男さんじゃなくて、何だかとっても『男らしく』見えたんです」


男「でも、それは俺じゃないんだろう?」


研究員「いいえ、あれは…男さんでした」

研究員「心配で心配で仕方がなかった私たちを見かねて、自分の立場なりに考えて、元気付けてくれた」


研究員「優しくて、強くて、気遣いばっかり…」


男「…何を言ってる事やら…」


研究員「ふふっ。あ、でも前向きな所は違ったかな?」


男「…それじゃまるで、俺がいつもはネガティヴ丸出しみたいじゃないか」

研究員「プッ…いえいえ、そこまでは言ってませんよ?」


男「まったく…コイツめ」フッ


研究員「…(少し、後遺症があるみたいですね)」

男「?」


研究員「いえ、何でも…」

研究員「それにしても、一体何が原因なんですかね」


男「…やはり、データ自体の不安定性が原因か、あるいは外部からのウイルスか…」

研究員「まさかAIの影響じゃ…」


男「そんなはずは…っと、そうだ、AIの様子を見に行かないと」


研究員「…男さん」

男「……そうだな」


男「引っぱたかれたまま、引き下がるわけにも行かないか…」


研究員「多分、私以上に心配していましたよ?」

研究員「勿論、私も心配してましたが」


男「行ってくるよ。どうせ仕事部屋だろう」



ウィーン



研究員「…戻ってきたんですね…本当に」


ウィーン



研究員2「……っ…」


男「その…」


男「…悪かった」


研究員2「…私は…っ…男さんを信じて、許したんです…」


男「…すまなかった」


研究員2「裏切られたんです…私の心は」


男「…ごめん」



男「でも、ありがとう」


研究員2「…!」


男「俺の事を心配してくれて。そして…」

男「記憶をなくした俺への怒りを我慢して、俺を助けてくれて」


研究員2「そんな言葉を言われるなんて…驚きです」

研究員2「…男さん。変わられました」


男「…言わない理由がなかった。それだけだな」



いつもならこんなセリフ、言えない

それが、テンプレートかのように出てきた

何だろう。寝ぼけてるのだろうか




男「変な夢を見てたんだ…」


研究員2「バーチャルの世界の事では?」


男「いや、その部分はほとんど覚えてないんだ」

男「『ここ』で起きて、何かを話して、また眠った」


男「その時、何だか胸がスッとした気がしたんだ」


研究員2「そう…ですか…」


男「この言葉を言わないと、スッキリしなさそうだったんでな」


研究員2「(あの時の記憶…少しだけ残ってるんですね)」


男「それと、あのプログラムは本当は危険だったこと、これも言いたかった」

研究員2「ええ。その様ですね…実際に大変なことになりましたし」


男「申し訳ない…」


研究員2「…フフッ」

男「…?」



研究員2「…(何だか、あの時の男さん。少しだけ残っているみたいですね)」


研究員2「…何でもないです」

ウィーン…



研究員「あ、お帰りなさい」


研究員2「取り乱してしまって、申し訳ありません」


研究員「ま、仲直りできて良かったんじゃw」


研究員2「…」ギロ

研究員「ヒィ…怖いよそれ」


男「……」


研究員「どうされました?」

男「いや…何だろうな、懐かしいような…」


研究員「そう言えば男さん、昔はどういう感じだったんですか?」


研究員2「…」


男「昔…か。昔は……」


《…ーい、男ぉー…》


《…す、男さ…》




男「…!」


研究員「…?」


男「昔は…よく、覚えてないな」

男「ただ、今みたいに無愛想だった。それくらいだ」


研究員2「バーチャルの世界を覗いてみては?」


男「データが不安定すぎる。再現には現在の記憶を一度…」



《…男さん!》



男「…っ…」


研究員「少し休まれては?」

男「…」


研究員2「…男さん」


男「…AIの様子だけ、見させてくれないか?」



カタカタ…カタ



男「…」


研究員「応答ありませんね…どうしたんでしょう」

男「実験開始から、様子はおかしかった…」


研究員2「記憶データ…ですか」



カタ……



男「…俺は、あいつの成長を為を思って行った…」

男「今までもこれからも、そうして行くとそう誓ってな」

男「…だが、今は後悔している」


研究員「なぜです?」


男「全ては…俺の身勝手だからだ」

男「…寂しかったんだ」


研究員2「…」


男「一人でいることが…一人が寂しくないことが」


研究員「…」


男「…こいつになら、俺の心をぶつけても、深く傷つかない」

男「こんな独りよがりを、許してくれる存在だと…そう、思ってた」


研究員「…男さんは」
男「俺は」

研究員「っ」


男「優しさを貰えれば心を満たせる…そんな勘違いをして」

男「二人がこんなに心配してる中、無茶をしてまで」


研究員2「…」コク


男「『彼女』を縛りつけ、重りまで付けてしまった…」




研究員2「男さんは、理想が高すぎるんです」


研究員2「優しくなければいけない、何でも分からなければいけない…」


研究員2「不平不満を、私たち部下に言ってはいけない」



研究員「それを、男さんらしさだと、僕たち自身も勘違いをしてましたしね…」


研究員2「確かに…その通りです」


男「…まったく。今までの苦労が、バカみたいだな」

男「記憶をなくしてまで、この場所から離れようだなんて…」


《俺が…俺自身を理解していなかっただけなんだ!》


男「(ああ、その通りだ…)」


男「…だからこそ」


男「俺はこの場所に」
《俺はこの世界に》


男「帰ってこれたのかも、知れないな」
《帰ってきたいと、願ったんだ》

ピッ…ピピ…



女「…ぁ…ぃ…っ…」


研究員「お!応答したかな?」


研究員2「少し不安定ですね…なぜ…で…」


男「……」ポロポロ


研究員「…男さん…?」


男「…ん?何だ、これは…」ポロポロ



画面がボヤけて見える

鼻が少し詰まってきた

何だか胸が、痛い



女「…ぅ…っ……」ザザ


男「…あぁ、ごめん。ごめんな」ボロボロ


女「……ッ!」



ピッ………



女「こんにちは。おとこさん。研究員さん。研究員2さん」

それからしばらく、俺は泣いていたと言う

ただ、ごめんとありがとうを繰り返しながら

女については、特に変化はなく、実験は失敗


俺は、それでもいいと思った



ー数ヶ月後ー


男「…スー…スー……」


ウィーン



研究員「男さん!今日は会見ですよ!大丈夫ですか?」


男「…んぁ…?」

研究員「また泊まり込みで、しかも実験したまま寝てるじゃないですか」

研究員「研究員2に怒られますよ?」


男「…スー……」


研究員「あ!まったく…」

研究員「先に資料とか用意しておくんで、早く起きてくださいね!」



ウィーン



男「…んん…?」


男「…あれ?今日何曜日だっけ?」



女「おはようございます。きょうは土曜日です」



男「あぁ…会見、今日だったか」


女「そのように予定されています」


男「そうか…ありがとう」


こんな微妙な距離

でも、少しずつ言葉を覚えている

無理やり縛り付けた記憶じゃなく、今の記憶を



男「…あの夢、何だったんだろうな」


女「男さんが、ないていた事ですか?」


男「ああ、それだ」

男「誰に向けた言葉で、誰が言おうとしてたのか」


女「…私は…あのときのことば、とてもすきです」

男「ごめんなさいがか?」


女「いいえ…」


女「…ありがとう」


男「…ありがとう、か」



男「こちらこそ」



ーーー“fin”ーーー


何だか変な終わり方になってしまった

取り敢えずここでおしまい

見てくれた&レスくれた人に感謝を

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom