「艦娘として、生まれて」 (42)
艦これSSを2話投稿予定です。
特にその2話に繋がりなどはありません。
ひとつ(不知火)は今から、もうひとつ(日向)は3月中には投稿します。
よかったらお時間下さい。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1458455107
提督「……不知火」
不知火「おや、司令。お疲れ様です」
提督「なにをしていたんだ?」
不知火「いえ。海を見ていました」
提督「海を? 出撃で飽きるほど見てるだろう」
不知火「ええ、まあ。しかし、陸から見る海は、また違うのですよ」
提督「そういうものか?」
不知火「そういうものです」
提督「そうか。提督になると、海に出ることがめっきりなくなったな」
不知火「司令も以前は、海に?」
提督「ああ、まあな。海自だったから」
不知火「では、連中が出る前ですか」
提督「そう。おまえたちが就役する前」
不知火「……提督は、陸から見る海に、何か感じませんか?」
提督「いや。俺にとって、海は恐怖の象徴でしかないからな」
不知火「それは不知火も同じです。出撃の度、死を覚悟して海に出ています」
提督「お揃いだな。俺もおまえたちを失うのが怖くて仕方がない」
不知火「……しかし、不知火にとって、戦いの海と、陸から見る海は、違います」
提督「どういうことだ?」
不知火「それは……艦娘として生まれて、嬉しかったことがみっつ、あるのです」
提督「嬉しかったこと?」
不知火「はい。ひとつは、この日本が、未だあること」
提督「日本がか」
不知火「ええ。『不知火』の最後の記憶は、早霜乗員の救助に失敗し、船員も、この身も、すべてを失った記憶です」
提督「……」
不知火「その後、守るべき国が、いったいどうなったのか、不知火には知る由もありませんでした」
不知火「艦娘としてこの世に生まれ、敗戦を知ったとき――涙が止まりませんでした。守るべき国が、守るべき民が、蹂躙されたのだと」
提督「不知火」
不知火「不知火の、帝国海軍の、力が及ばなかったばかりにです」
提督「おまえのせいじゃない」
不知火「いいえ。不知火のせいだけではないかもしれません。しかし、不知火に責任の一端があることは事実です」
不知火「しかし同時に、日本が、あの頃からは信じられないほど繁栄を遂げていることを、嬉しく思いました」
提督「……そうだな。俺は大戦を知らないが、その頃からは想像もできないだろう」
不知火「はい。これがひとつめです」
提督「ふたつめは?」
不知火「司令は、海自にいらしたのですね。では御存知と思いますが、海自の艦の名です」
提督「ああ。艦娘と同じ名を持つ艦も多いな」
不知火「残念ながら、『しらぬい』はいませんが。妹の『くろしお』を始め、『ゆうばり』、『あたご』、『こんごう』……多くの名が、受け継がれています」
提督「そうだな。俺の乗っていた艦もそのひとつだった」
不知火「名は体を表す、と言いますが、不知火たちが戦ったことが、無意味ではなかったのだと。私たちが守ろうとしたもの……その思いは受け継がれているのだと、実感できます」
提督「当たり前だ。おまえたちの過去が、無意味なわけがあるものか」
不知火「ふふ。司令はお優しいですね」
提督「いい上司だろう?」
不知火「まったくです」
提督「それで、最後のひとつは?」
不知火「ああ、最後のひとつですか」
提督「みっつ、あるんだろう?」
不知火「ええ。みっつめは当然―――」
不知火「―――再び、守るべきもののために、戦えることです」
不知火「もう二度と、負けはしない。……ああ、そうだ、陸から見る海の話でしたね」
提督「そういえば、そうだった」
不知火「こうして陸から海を見ると、守るべきものが見える」
提督「守るべきもの」
不知火「不知火の背中には日本の民が、日本の大地が、日本人の誇りがある。ここから先へ行かせてはならぬと、想えるのです」
提督「そうだな。俺たちが、守らねばならん」
不知火「ええ。司令、よろしくお願いします」
提督「任せておけ」
不知火「……はい。不知火は、司令を信じておりますよ」
以上です。
陽炎型では不知火が一番好きです。
ありがとうございました。
どうもです。投稿します。
2話予定だったのですが、もう1話投稿しようと思うので、これを投稿した後、そのうちもう1話投稿します。
提督「ん、日向か」
日向「ああ、提督……」
提督「なにをしていたんだ?」
日向「……提督は、私たちをどう思う?」
提督「なんだ、藪から棒に」
日向「艦娘をだよ。いったい、私たちは何のために戦っているのだろうね」
提督「そりゃ……深海棲艦から日本を守るためだろう」
日向「では敵艦隊は? 何のために攻めてくる?」
提督「さあな。連中、恨み言ばっかりで、ろくに会話もできやせん」
日向「私はいつも思うんだ。何のために戦うのか、何のために争うのか」
提督「なんだ、日向には守りたいものはないのか?」
日向「もちろんある。伊勢だって、提督だって、死んで欲しくはない」
提督「それでいいんじゃないか? 俺だって、何だかわからんが攻めてくるから、相手をするだけだ」
日向「……まあ、そうなのだがな。しかし不思議なものだよ」
提督「なにが」
日向「提督は、艦娘の艤装についてどう思う?」
提督「あんなクソ重いもんよく背負える」
日向「そうだな。私も伊勢の艤装を背負おうとしたとき、重くて1ミリも動かせなかった」
提督「なんだ、そうなのか?」
日向「ああ。『日向』以外の艤装を背負おうとすると、私たちの力は、一般女性のそれと変わらない。姉妹艦でさえね」
提督「自分のだと違うのか」
日向「不思議だろう? 『日向』の艤装だけは、私は自分の手足のように扱える」
提督「それが、『在りし日の艦艇の魂』ってやつなんだろ」
日向「……魂か。随分とあやふやなものだよ」
提督「艦娘がわかんねーのに、俺らにわかるもんかね」
日向「『艦娘』について、わからないことが多すぎると思わないか?」
提督「だが戦える。それで充分だろ」
日向「それはそうだが……妖精にしか作れない艤装――艦艇の魂を持たねば扱えない。こんなわけのわからないものに、国家の命運を託しているんだ」
提督「……何が言いたい?」
日向「いや、別に何も。私が言いたいのは、わからないことが多すぎる――それだけだよ」
提督「そうだな。大本営だって、艦娘のすべてがわかってるわけじゃないだろう」
提督「だが、戦える。そんな力に頼らなくちゃいけないくらい、切羽詰ってるんだ」
日向「……そうだな」
-----------------------
日向「金剛、大丈夫か?」
金剛「ちょっとやられましたネー! 日向も艤装、ボロボロになってマース」
赤城「艦載機も限界ですね……今回はこのあたりで撤退でしょうか」
龍驤「んー……あ、提督から通信。撤退やって」
大淀「あら……では、撤退ですね」
日向「……そうか。進路変更、帰投する。私が殿を務めよう」
金剛「Yes……了解しましター」
日向「……ん?」
深海棲艦「……」
日向「さっきの戦闘の……まだ生きているが、虫の息か」
深海棲艦「……ュ、ァ……」
日向「!」
深海棲艦「……ヒ……ゥ……」
日向「おい。なんだ」
深海棲艦「……ヒゥ、ガ」
日向「……おい。待て。なんと言った」
深海棲艦「……」
日向「……ちっ……だめか。もう死んでるな」
金剛「日向ー? なにしてるですカー? 置いてっちゃいますヨー?」
日向「いや、なんでもない。すぐ行く」
大淀「……」
----------------------
日向「伊勢、いるか?」
伊勢「んー? なにさ日向、お風呂?」
日向「いや、今日は入渠があったからもう済ませた。今日の出撃のことなんだが……」
伊勢「あ、そうなの? おつかれさん。撤退だったんだってね」
日向「ああ。それはそうなんだが……伊勢、深海棲艦と喋ったことはあるか?」
伊勢「……は?」
日向「会話じゃなくてもいい。声を聞いたことはあるか?」
伊勢「いや、声って……唸り声みたいなのは聞いたことあるよ。あとはまあ、上位種の連中はちょっとは喋るかな……なに、日向、どうしたの?」
日向「……今日の撤退の際、死にかけの深海棲艦を見た。別に何があったわけでもなく、そいつを見ていたら……そいつが、『日向』、と言ったんだ」
伊勢「名前を呼ばれたってこと? そんな馬鹿な……聞き違いじゃない?」
日向「いや、あれは確かに……」
伊勢「だってねえ……そもそもあいつら、日向の名前なんて知らないよ。偶然じゃない?」
日向「……そうか。そうだな」
日向(あれは……偶然なんかじゃない。確かにあいつは、私を見て……日向、と言った)
日向(私を知っていた……?)
深海棲艦『……ヒゥ、ガ』
日向(私を……違う。あいつは、私を見て、じゃない……私の……『艤装』を……)
日向(他の『日向』を知っていた……?」
大淀「独り言ですか、日向さん?」
日向「!!」
大淀「え、どうしました……そんなに驚いて……」
日向「ああ、いや……すまない、声に出ていたか」
大淀「ええ、まあ。『他の日向』がどうかしましたか?」
日向「……大淀は、大本営にいたのだったな」
大淀「そうですね。1年ほどですが」
日向「私以外の日向を、見たことはあるか?」
大淀「もちろんありますよ。何度か南方へ遠征したこともありますから、国内外問わず……そうですね、日向さんを含めて4人、会ったことがあります」
日向「それでは、この横須賀に、私以外の日向がいたことはあるか、わかるか?」
大淀「……さて……横須賀に、ですか。すみません、わからないですね」
日向「……そうか……変な質問をしてすまないな」
大淀「いえ。そうですね……資料室か、大本営……提督でも御存知かもしれません。長く横須賀にいらっしゃいますから」
日向「そうだな。他を当たってみよう。ありがとう」
大淀「いえ」
大淀「……」
大淀「ええ、大淀です。彼女、気付いたかもしれません。何がきっかけかは不明ですが……」
大淀「もしかすると、記憶の残る個体と遭遇したのかも。ええ……そうですね、真相に気付くのも時間の問題です」
大淀「そうですね……解体してもいいのですが、艦娘は限りあるものですから。せっかくですから、使いましょう。頼みましたよ――明石」
明石『ええ、お任せ下さい。大淀』
横須賀鎮守府資料室
日向「……ア、カ、サ……ハ……ヒ……あった、日向」
日向「これは……私か。随分と……なんというか……無表情、だな」
日向(……あった!)
日向(私が着任する一年前……現在の所属は……)
日向「轟沈……」
日向(やはり、あれは……前の『日向』を知っていたのか……?」
日向(遺体、艤装ともにサルベージされず……)
日向「む……これは……」
日向(当時の艦隊の集合写真か……日向は……これだな。私というよりは……伊勢に似ている)
日向(隣にいるのが伊勢か……今いる伊勢とは別人だな)
日向(提督は変わらないな。提督の横に、いる……のは……)
日向「大――!!」ドゴォ
日向「ぐっ……あ……!!」
日向(ばかな……奴はは『わからない』と……!)
???「おや、丈夫ですね。さすが戦艦」
日向「おまえ……!!」
???「大丈夫ですよ、ちょっとだけ……」
明石「記憶を失って、性格が変わるだけですから」
日向「……フゥー」
金剛「オーゥ!Congratulation!日向、ナイス改造ですネー!」
大淀「おや……日向さん、改造だったんですね。航空戦艦ですか」
日向「ああ……清々しい気分だ……まるで新しい艤装を装着したばかりの正月元旦の朝のようにな……」
日向「歌でもひとつ歌いたい気分だ……そう……」
日向「瑞雲を讃える歌を」
金剛「えっ」
大淀「えっ」
明石「どうですか、日向さん! 航空戦艦になった気分は!」
日向「明石か! 実にいい気分だ……あとで瑞雲を奢ってやろう」
明石「や、いらないですけど」
日向「なんだ、遠慮をするな……間宮もどうだ?」
明石「本当ですか!? やった、今日の仕事は早く終わりそうですよ!」
大淀「明石」
明石「あ、大淀。どうです、注文通りですよ」
大淀「違うわ」
明石「えっ」
大淀「違う」
明石「えー……」
航空戦艦日向「ああ……瑞雲……いいなあ瑞雲……瑞雲12型(六三四空)欲しいなあ……」
ありがとうございました。
嫁は伊勢です。改二来てから結婚したいのでlv99でずっと待ってます。
伊勢型改二が瑞雲12型(六三四空)を持ってくると信じてます。
次回の投稿は3月中、初月と瑞鶴の話です。艦娘の喫煙描写があるので苦手な方はすみません。
片鱗がビラビラってなんかエロいですね。
投稿します。先にも書きましたが喫煙描写あるので、苦手な人はお気を付け下さい。
瑞鶴「あ、初月」
初月「おや、瑞鶴」
瑞鶴「あんた、いつ来てもいるわね、喫煙所」
初月「そうかな。駆逐艦寮から近いのがここくらいしかなくてね」
瑞鶴「ふーん……去年までは、そこら中にあったんだけどね、灰皿。あたしもわざわざ空母寮からここまで来てるわよ」
初月「そうなのか? もう鎮守府内で吸えるのはここと……運動場と……執務室の近くにひとつあったか。あとは食堂の手前にもあったな」
瑞鶴「実は軽巡寮と潜水寮には喫煙室があるわ」
初月「差別だな」
瑞鶴「ま、建物の構造的に仕方ないわ。こっちは工廠寄りだしね」
初月「ああ……火器厳禁」
瑞鶴「そうよ。明石が死にそうな顔で工廠から出てくるもの。ちょうど礼号が始まる前かな……上がクリーンだ分煙だなんだ言い出してから、どんどん減っちゃった」
瑞鶴「執務室なんて凄かったんだから。執務机なのに書類より灰皿が多かったわよ」
初月「大淀と明石だろう? あの二人はひどいな」
瑞鶴「まったくねえ……ま、あたし達が言えた義理じゃないけど。明石の仕入れには助かってるし」
初月「それは確かに。金鵄を置いてくれるともっといいが」
瑞鶴「金鵄て……ゴールデンバットって言うのよ、今は……というかあんた、あんなの吸うの?」
初月「吸えればなんでもいいんだよ、僕は。安ければ安いほど助かる」
瑞鶴「変わってるのね……大淀なんて、買いだし担当がソフトとボックス間違えただけで私にくれるけど。銘柄一緒だから間違えろっていつも祈ってるわ」
初月「売店に置いてある一番安いのがこれなんだよ。どうせならもっと安い金鵄を置いてほしい」
瑞鶴「エコーでしょ。神通がエコー好きなのよ。古株だから、昔から置いてあるみたい」
初月「明石に聞いたよ。僕と神通くらいしか買わないらしい」
瑞鶴「でしょうね……美味しいの、それ?」
初月「さあ?」
瑞鶴「さあ、ってあんた……なんで吸ってんのよ」
初月「瑞鶴は美味しいから吸ってるのか?」
瑞鶴「まあ、一応……出撃終わりとか、何よりも先に吸いたくなるわね」
初月「報告より?」
瑞鶴「それはもともと行きたくないわよ」
初月「それもそうだ。そうか、美味しいから吸ってるのか」
瑞鶴「なに、あんた。違うの?」
初月「……まあ、違うな」
瑞鶴「なんで吸うのよ?」
初月「……こんな話、瑞鶴にする話じゃないが」
瑞鶴「いいわ。聞かせてよ」
初月「煙草を吸うときに、火を着けるだろう」
瑞鶴「そりゃね。そうしなきゃ吸えないわよ」
初月「吸い終わったら、火を消すだろう」
瑞鶴「いつまでも燃えてる煙草があるなら、1本欲しいわね」
初月「それがいい」
瑞鶴「は?」
初月「……こんな風に、簡単に火を消すことができたなら、ってさ」
瑞鶴「……ああ、なるほどね」
初月「それだけだよ。ああ、なんというか、女々しいな、我ながら」
瑞鶴「いいんじゃない。むしろサイコーよ、吸う理由として」
瑞鶴「仲間を失った記憶なんて、簡単に消えるものじゃないわ。たとえ在りし日の記憶だったとしてもね」
初月「……そうかな」
瑞鶴「そうよ。きっとね」
初月「……ああ、もうひとつあった」
瑞鶴「吸う理由?」
初月「ああ」
瑞鶴「なによ」
初月「贅沢してる、って感じがするだろ?」
瑞鶴「……ふふ、なにそれ」
初月「案外、これが大きいかもしれないな」
瑞鶴「葛城が吸うのもそのせいね」
初月「間違いない。贅沢を本能が求めているんだ」
瑞鶴「ねえ、じゃあ、もっといいの吸いなさいよ」
初月「一理ある。せっかく、今度はお金を自由に使えるわけだしね」
瑞鶴「ザ・ピースでも買おっか」
初月「いいな。値段が4倍だ」
瑞鶴「4倍長く燃えるのかしらね?」
初月「いや……きっと、すぐに消えてくれるさ」
瑞鶴「そうね。そのほうが、ずっといいわ」
ありがとうございました。
私はメビウスのプレミアムメンソール5mgを吸ってますが、値上げされますね。つらい。
HTML化依頼出してきます。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません