アクア「ジャプニカ暗殺帳?」カズマ「ひぃぃっ!」 (28)

「えーと、これか?」
「ううん。違うわ」
「それにしても本が多いな……」
「紅魔族って勉強家みたいね。まるで私みたい」
「はぁ?お前が?」
「こう見えても私は下界の事を勉強していたのよ。色んな漫画を読んだわ」

 それはとある昼下がり。俺とアクアはめぐみんの部屋で探し物をしていた。

「もうっ。めぐみんはどこに直したのよ!『すいません、急な用事があって出かけますので、部屋に取りに行って貰えませんか?』っていうから、わざわざ来たのに!」
 最近、アクアとめぐみんとダクネスの女3人で交換日記をやっているらしい。
「これで交換日記しましょう!乙女の嗜みよね!」
 『乙女』という単語を強調して、意気揚々とアクアが買ってきたのだ。
 ったく、この世界では紙は高級品だというのに……。

 ……最近、アクアをババア呼ばわりしすぎたかな。
 今度からおばさんぐらいに留めておこうと、俺が反省しているとアクアが本棚を眺めながら。

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「えーと……楽しい家庭科・初級編。違うわね。
 爆裂魔法の有用性。違うわね。
 ドMの仲間をこき使う方法&ドMが嫌がる事。……違うわね。
 セクハラ上司を社会的に抹殺しよう♪……違うわね」

 色々やばい本が見つかっているような気がするが、たぶん気のせいだ。いや絶対に気のせいだ!
 というか……セクハラしている俺、抹殺されるの?


 色んな本のタイトルを読んでいたアクアの手が止まって、一冊の薄い本……いや、ノートを取り出した。
「なにこれ?ジャプニカ暗殺帳?」
「----はい?」


 そこには、何かとてつもなく不吉なモノが-----


「ふーん。日記帳みたいね。へぇー。めぐみんって日記書いてたのねー」
 こいつ何も感じることはないのか!?すごく禍々しいのに!

 アクアがパラパラとノート……日記帳のページを捲っていく。
 見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。
 危険だ!この日記帳は絶対に危険だ!
 この先は見てはいけない気がする!

 ○月○日 晴れ 
 今日の出来事。
 私が夕ご飯を用意した。
 カズマが美味しいと言ってくれた。嬉しかった。
 次も頑張ろうと思う。

 いつも通り空気が読めない女神様は朗読していく。
 って、あれ?普通の日記だな。


 ○月○日 雨 
 今日の出来事。
 雨の中の爆裂魔法。
 点数が75点だった。
 雨だからと言い訳にはできない。
 反省しよう。


 ○月○日 晴れ ☆
 今日の出来事。
 アクアが私とお酒を飲もうと誘ってきた。
 だが、カズマに邪魔された。
 「お前にはお酒は早い」との事。
 あまり子供扱いしないでほしい。

 ○月○日 晴れ ☆☆
 今日の出来事。
 カズマが酔っぱらって帰ってきた。
 玄関に迎えに行くと、私に抱き着いて眠ってしまった。
 私の服は臭くなるし、カズマを部屋まで連れていくのも大変だし、本当に勘弁してほしい。



「はぁ……。カズマ。そんな事してたの?まったくお酒は飲んでも飲まれるなよ。今度から注意しなさいな」
「……正論なんだが、お前に言われるとムカつくな」

 アクアは日記を読み進める。
 いや、もうやめろ!他人の日記を勝手に読むな!



 -----と、頭では思っているが、どうしても日記の内容が気になって……

 ○月○日 晴れ ☆☆☆
 今日の出来事。
 今日はアクアと二人っきりだ。
 朝ごはんを二人分用意したが、ちょっとトイ……ちょっと部屋に戻っている間にアクアが全部食べてしまっていた。
 アクアには困ったものだ。


「おい!」
「は、反省してます」


 ○月○日 晴れ ☆☆☆☆
 今日の出来事。
 アクアが掃除当番なのに掃除をしなかった。
 「私は女神だから」と言い訳した。
 ちょっとよくわからない。


 ○月○日 晴れ ☆☆☆☆
 最近ダクネスが自重している。
 すごくいいことだと思う。
 今日の出来事。
 カズマが食事中にゲップをする。



 ん?あれ?なんかやばい。よくわからないが、やばくなってる気がする。
 頭でわかっていても……やめられない。
 この日記帳は俺たちに魅了の魔法でも掛けたかのように、俺とアクアが違う所を見るのを許さない。

 ○月○日 晴れ ☆☆☆☆
 今日の出来事。
 アクアがお酒を一滴残す。


 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆
 今日のカズマ。
 私と一緒に歩いている時に、他の女ばかりを見る。どうかと思う。


 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆
 今日のアクア。
 待ち合わせ時刻に1分遅れる。次はないと思う。


 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆
 今日のカズマ。
 本を読みながら私の料理を食べた。許せない。


 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆
 今日のアクア。
 涎をたらして椅子で寝ている。許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日のカズマ。
 朝帰りした。すっきりした顔だった。許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日のカズマ。
 『美味しい』を言ってくれない。許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日のアクア。
 レタスを1枚、残した。許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日のアクア。
 ソファーで寝ている。とにかく許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日のカズマ。
 ダクネスのおっぱいばかり見ている。とにかく許せない。

 ○月○日 晴レ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今日のカズマ。
 靴下を左から脱いだ。許せない。許せない。許せない。




今日のカズマ(許せない) 今日のアクア(許せない) 今日のカズマ(許せない)
  今日のアクア(許せない)  今日のカズマ(許せない)  今日のアクア(許せない)
今日のカズマ(許せない) 今日のアクア(許せない) 今日のカズマ(許せない)
  今日のアクア(許せない)  今日のカズマ(許せない)  今日のアクア(許せない)


「-------」

 アクアが顔面蒼白で俺を見る。
 普段こんな時、空気が読めないこいつだが……今回ばかりはヤバいと気付いたようだ。
 というか、本当に怖い。

「アクアー。交換日記のノートは見つかりましたかー?」
「「!?」」

 1階からめぐみんの声が聞こえてきた!帰ってきたのか!?
 や、やばい!!べ、別にめぐみんに何かされたりはないだろうが、とにかくやばい!

「アクア!逃げるぞ!」
 全力で部屋から逃げようとすると、アクアはへなへな~と座ってしまった。
「なにしてるんだよ!早く行くぞ!」
「腰抜けちゃった……。どうしよう。カズマ……うぅ……怖いよぉ」
 あーーーーもう!泣いてる場合じゃねーだろ!

「アクアー。いるのですかー?アクアー?」

 声が近づいてくる!ど、どうする!?

「か、カズマぁ……」
 アクアが泣きながら、どうにかしてくれとすがるように言ってくる。
 一体どうしろと……というか、俺も泣きたくなってきた。

 

---ギィギィ---


 どうやら、めぐみんはもうすぐそこに来ているようだ……。俺は観念して----


 ん?よく考えたら、観念する必要なんてない。
 俺は日記帳をすぐに元の場所に戻した。
 「アクアいいな。俺たちはあの日記帳を見ていない。知らない。いいな?」
 「う、うん」
 これでいいんだ。俺たちが日記帳の事を知らないなら、めぐみんも何も言わない。
 そもそも交換日記のノートを探してくれと頼んできたのはめぐみんだ。
 部屋にいるのは何も悪くない。そう何も悪くない。

 

--ガチャッ


 「あれ?いるじゃないですか。どうです。ノートは見つかりました?」
 めぐみんは普通に声をかけてきた。
 ああ、普通だ。普通。とてもじゃないがあんなノートを書いた人間には見えない。
 そう、こいつがこんなことさえ、言わなければ----




「ごめんね!めぐみん!もうレタス残さないから!ソファーで寝ないから!待ち合わせに遅れないように頑張るから!お酒だって一滴も残さないから!掃除当番もさぼらないから!
だからだから、許して!お願いめぐみん」



 あっ、終わった。


 

「日記を勝手に見ましたね。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない----」

「アクア!なんで言うんだよ!見ていない事にしようって言ったじゃねーか!!」

「だ、だってーーーー。めぐみんが怖くてーーーーー」

「もう泣いても許さないぞ!絶対に許さないからなこの駄女神が!」

「あぁー!またカズマが駄女神って言ったーーー。駄女神ってーーーーうわあああああん」



「カズマ?『見ていない事にしよう』とはどういう事でしょう?」

 めぐみんが恐ろしいほどの笑顔で俺に……。あっ、俺の人生終ったっぽい。
 エリス様今度はこんな恐ろしい仲間がいない世界に転生させてください----。


「許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない」



 めぐみんの目が真っ赤に光って。



-------許せない-------



「うわあああああああああ!」
「きゃあああああああああ!」

 俺たちの断末魔が屋敷中に響いた。


 

  *  *  *



「!?」

 夜……。もう夜!?
 ここは俺のベッド……。あれ?今日何をしていたか思い出せない。
 いや、あの後、走って逃げて俺の部屋に隠れた事は覚えているのだが、忘れていることにしよう。うん。何も覚えてない。


「……腹減ってきた」


 そういえば、なにも食ってないな。飯でも食べるか……。
 …………め、めぐみんは台所にいないよな?ちょっと会いたくないし。


 俺は潜伏スキルと千里眼スキルの暗視を使って慎重に台所に向かう。
 いませんように。いませんように。いませんように。いませんように。


 すると、暖炉の方から何か声が聞こえてきた。
 ん?ダクネスとめぐみんの声か?
 正直めぐみん怖いからやりすごすとするか。めぐみんとは明日話し合えばいいし。ああ、それがいいな。『明日やればいい』って言葉考えたやつ天才だな。

「ふふふふっ。カズマのあの驚きようはありませんでしたよ」
「まったく……。最近調子に乗っているアクアに反省して貰うための作戦だったのに、カズマも巻き込むとは……」
「いいじゃありませんか。カズマも反省して欲しい点が多いですし」
「まぁ、そうだな。あいつも最近朝帰りが増えてきているし、反省した方がいいな」
「そうです。一応、カズマの事も書いておいて正解でし…………た」

「ん?どうかしたのか?めぐみ………ん」

 俺の方を向いた、めぐみんとダクネスが固まった。









「カズマ!?その謝るのでスティールは勘弁を!」

「や、やめろ!私の下着で……おい!なぜ捨てる!?被ったりしないのか!?」

「あああああああああああ!!!!匂わないで!匂いわないでください!!!お願いします!謝りますから!いい匂いがするって言わないでーーーーーー!!!」







       終わり

これにて終わりになります。
読んでくれてありがとうございました!
また機会があればよろしくお願いします!

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