モバP「卒業式の思い出」 (133)

P「……」

P「(なんか最近暖かくなったよなぁ…)」

P「(…もう春が来てるんだな)」

P「(春眠暁を覚えず…)」

P「(…使い方合ってるのか?)」

杏「…ボーっとしてるなんて珍しいじゃん」

P「ん?」

P「おぉ、杏か…」

杏「睡眠が足りてないんじゃない?」

杏「寝不足は仕事の効率が悪くなるよー」

杏「こういう時こそプロデューサーは杏と一緒にお休みするべきだと思うな~」

P「んー…」

P「確かにそんな誘いに乗ってしまいそうな気分ではあるな…」

杏「えっ!?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457182734

杏「ど、どしたの…?マジで体調悪いの…?」

P「いや…そんな深刻そうな顔をされても困るんだが…」

杏「だ、だってさー…いつもならこのタイミングで次の仕事の話とか振ってくるじゃんか…」

P「振った方が良いか?」

杏「ううん、まだいい」

P「そうか…」

杏「…ホントに大丈夫?なんか調子狂うな~…」

P「確かに少し眠気はあるんだが…」

P「…なぁ、杏?」

杏「ん、なぁに?」

P「杏は春って聞いたら何を思い出す?」

杏「春?」

杏「心理テストかなにか?」

P「いや、ただの世間話だ」

杏「そうなの?」

杏「そしたら杏は昼寝!って言いたいとこだけど…」

杏「思い出すものって言われると、なんか違うよね」

P「ははっ、杏らしいといえばらしいけどな」

杏「思い出すものかー」

杏「…あー、こういうのってあれかな」

杏「入学式とか卒業式って言えば良いのかな」

P「おっ…?」

杏「ていうか、杏は早いとこアイドルを卒業したいんだけどね!」

P「おいおい…」

杏「まぁ、アイドル卒業はまだ置いといても良いけど…」

杏「入学式に卒業式かー」

P「杏はどっちの方が思い出深い?」

杏「んー…中学の卒業式はわりと思い出深かったかも」

P「お?良かったら聞かせてくれよ」

杏「いや、期待してもらってるとこ悪いけど杏の思い出だよ?」

杏「卒業式が始まる前に屋上で昼寝してて…」

杏「目が覚めたら卒業式終わってた」

P「…それは、思い出深いと言っていいのか?」

杏「ちょっと甘酸っぱい思い出だったねー」

P「寝る前にレモン飴でも舐めてたのか…」

杏「おお!流石、わかってるー♪」

P「ブレないな、杏は…」

P「(卒業式で、屋上で昼寝とは恐れ入った…)」

P「(でも…)」

P「(ちょっと角度を変えると本当に甘酸っぱい思い出にもなりそうな…)」

杏『ねぇ、P』

P『ん?どうした?』

杏『杏たち、入学してから今日までさ』

杏『どれだけ二人で屋上でサボったりしてたかな?』

P『難しいな…』

P『たまに保健室でもサボってたからな…』

杏『やーい、不良ー♪』

P『それはお前もだろ』

杏『杏は勉強出来るもーん』

P『うぐっ…』

杏『でも、内申点はボロボロだったからちょっと受験は苦労したけどねー』

P『それでも俺からすれば立派なとこ受かったじゃないか』

P『俺なんか二次募集でギリギリだったぞ』

杏『だけど、中卒直後にニートならないで良かったじゃん♪』

杏『あと、勉強だけが全てじゃないって!』

P『それを杏に言われてもな…』

杏『……』

杏『うん…そうかもしれないね…』

P『…?』

杏『なんでPと違う高校を受験しちゃったのかな…』

P『杏…?』

杏『同じ高校なら、また一緒にこうやってサボったりすることも出来たのに…』

杏『もう、出来なくなるんだよね…』

P『…なに、柄にもなくしんみりしてるんだよ』

P『ほら、もうすぐ卒業式始まるぞ』

P『最後ぐらいは…』

杏『杏、卒業式出たくない』

P『…出たくないってお前』

杏『出たくないっ』

P『どうしたんだよ…』

杏『P…一緒にお昼寝しよ?』

杏『お願いだから…』

P『…卒業式に出るのは前から約束してたじゃないか』

杏『してたけどっ!!』

杏『でもっ…!』

杏『卒業式に出ちゃったら本当にこれっきりになっちゃうから…』

杏『もう二度とPに会えない気がして…』

杏『そんなのは、いやだよ…』

杏『だって杏、Pのことが好きだから…』

P『杏…』

杏『ぐすっ…ひぐっ…』

P『……』

P『…あー、もうこれ卒業式に間に合わないな』

杏『…P?』

P『しょうがない…終わるまで昼寝でもするか』

杏『え、えっと…』

P『好きな子が隣にいるなら…』

P『卒業式に出るより、もっと良い思い出になるだろ』

杏『あ…』

P『違う高校に行ったって、二度と会えなくなるわけじゃない』

P『今日も…そしてこれからもつくっていこう』

P『二人だけの思い出をさ』

杏『…!』

杏『…うんっ!!』

杏『これからもずーっと…』

杏『杏と一緒にだらだらしてねっ♪』

P「……」

P「(こんなところだろうか…)」

杏「むにゃ…ぐー…」

P「ぬお!?」

P「(人が仮初めの思い出に浸ってる間に、こいつ寝やがったぞ!)」

杏「すぴー…」

P「……」

P「(でもまぁ…)」

P「(俺も今日はそんなにやる気がないからな…)」

P「(このまま一緒に昼寝させてもらおうかな…)」

こんな感じでPがアイドルの卒業式の思い出話を聞いて、妄想で自分を登場させるSSです

あと何人か書きたいなと思ってるので、良かったら↓5までアイドルの名前を1人お願いします(小学生組は小学校の卒業式を迎えた場合の妄想になります)

ありがとです
安価把握しました

また明日からの投下になると思いますが全員きっちり書くつもりなのでのんびり待っててください

幸子「―――それで、お昼休みが終わっても杏さんと一緒に惰眠を貪っていたと」

幸子「それはちひろさんも怒るでしょう…」

P「怒るよな…」

幸子「全く…」

幸子「ボクと一緒の時は、ちょっとは頼りがいのあるプロデューサーなのに…」

幸子「ボクがいないとホントにダメダメなんですね、Pさんは…」

P「今回の件に関しては、言い訳出来ないな…」

幸子「だけど、ボクはカワイイだけじゃなく心も広いので…」

幸子「今回のPさんの失態を許してあげます!」

幸子「感謝してくださいねっ?」

P「…一応ありがとうって言っておくよ」

幸子「どういたしまして♪」

幸子「さて…ボクの優しさでPさんの罪を浄化したのは良いんですけど」

幸子「ちょっと気になりますね…」

P「気になる?何がだ?」

幸子「そんなのPさんと杏さんのことに決まってるでしょう?」

P「…?」

幸子「ぼ、ボクには知る権利があるんですよ!」

幸子「お、同じ部屋で一緒に眠るぐらいの仲のお二人が普段どんな会話をしているのかとか…!」

P「あぁ…」

P「(もしかしてヤキモチ妬いてるのか?)」

幸子「むー…!」

P「(なんて…流石に言葉には出来ないな…)」

P「まぁ杏とは仕事以外じゃ、たまに世間話をするぐらいだよ」

幸子「…そうなんですか?」

P「うん」

P「眠る前にしたのも、卒業式についての話だったし」

幸子「卒業式…ですか?」

P「ほら、もう春だから卒業式とか入学式とかそういうの連想するだろ?」

幸子「あ、あぁ…そっちの方でしたか…」

幸子「てっきり杏さんがアイドルを卒業するお話かと…」

P「本人はまだなんとかやってくれるらしい」

幸子「そうですか…びっくりした…」

幸子「……」

幸子「冷静に考えると、学校の卒業式についてお話している杏さんというのも結構驚きなんですけど」

P「そうだよな、普段は飴くれしか言わないしな」

P「杏がさ、中学の卒業式の思い出を話してくれてな」

幸子「おお…なかなか興味深いじゃないですか…」

P「屋上で昼寝してる間に卒業式終わっちゃったってさ」

幸子「……」

幸子「なんというか…杏さんはその頃から杏さんなんですね…」

P「あぁ、まるでブレていない」

P「幸子はどうだ?卒業式の思い出ってなにかあるか?」

幸子「ボクの思い出ですか?」

幸子「教えてあげても良いですけど、ボクの思い出話は高く付きますよ!」

P「今なら言い値で買おうじゃないか」

幸子「…このボクに対して良い度胸ですね」

幸子「良いでしょう!」

幸子「その度胸を買って、今回だけは特別に無料でお話してあげますよ!!」

P「おっ、それは嬉しいな」

幸子「…フフン♪」

幸子「さて、卒業式の思い出話ってことですけど」

幸子「決して小学校での卒業式のお話をするわけじゃありませんよ?」

P「ん?どういうことだ?」

幸子「わかりませんか?まだ寝坊助さんみたいですね!」

幸子「中学1年生の時でも、先輩のお見送りで卒業式を経験するってことですよ!」

P「おお、なるほど…」

幸子「まぁ…正直良い思い出とは言い難いんですけどね…」

幸子「ボクぐらいカワイイ女の子でも、当時は憧れの先輩って人がいたんです」

P「(なかなかの意外性で攻めてきたな…)」

幸子「それでやっぱりボクもカワイくも優しい女の子の一人なので、卒業式はその先輩の第2ボタンを貰ってあげようと思ったわけだったんです」

幸子「しかし、なんということでしょうか!」

幸子「その先輩は第2ボタンはおろか、ボクの為に一つもボタンを残していなかったんです!!」

P「あー…」

幸子「酷いとは思いませんか!?」

幸子「普通はボクが遅れてくることも予測して、一つはボタンを残しておくべきでしょう!」

幸子「これには流石の慈悲深いボクでも彼を許すことはできませんでした…!」

幸子「まぁ、でも…」

幸子「憧れというだけで、恋愛感情そのものでは無かったので今となってはどうでもいい思い出はありますが…」

P「…一つ聞いて良いか?」

幸子「なんです?」

P「そもそも、その先輩と幸子は面識あったのか?」

幸子「もちろんありません!」

幸子「でも、ボクが認識してあげてるんだから向こうもカワイイボクのことを認識していて当然でしょう!?」

P「……」

P「(幸子も全くブレてないな…)」

P「(さて、この幸子にとっての苦い思い出…)」

P「(妄想でなら甘い思い出に変えてやることも出来そうな…)」

P『(卒業式も終わっちゃったな…)』

P『(あとは仲良かった奴と適当に話して帰るだけか…)』

P『……』

P『(なんだか少し虚しい気もするが…)』

P『(中学の卒業式なんてこんなもんだろう…)』

P『(そもそも中高一貫校だし、卒業したところで大きな変化があるわけでも…)』

ちひろ『あ、あのっ…!』

P『…んっ?』

ちひろ『……』

P『……』

P『(誰だ、この可愛い女の子は!?)』

ちひろ『その…私のことなんか知らないと思うんですけど…』

ちひろ『私、ずっと先輩のことを見てましたっ!』

P『(俺か?俺に話しかけてるのか!?)』

ちひろ『良かったら制服のボタン、貰っても良いですか…?』

P『……』

ちひろ『…ダメですか?』

P『…俺ので良いなら、全部あげるよ』

ちひろ『ええっ!?』

P『(こんな可愛い子にボタンをねだられるなんて…)』

P『(俺の中学3年間…無駄じゃなかったんだ…)』

ちひろ『5つ全部なんて、そんな…!』

ちひろ『4つも貰えたら、もう十分ですっ!』

P『(意外とがめついな…)』

ちひろ『…ありがとうございました♪』

ちひろ『高等部でも頑張ってくださいね!』

ちひろ『私、先輩のこと応援してますからっ!』

P『うん、ありがとう』

ちひろ『それじゃあ、私…そろそろ行かないと…』

P『そっか…じゃあ、またいつか』

ちひろ『はい♪またいつか…!』

ちひろ『失礼しますっ!』タッ…

P『……』

P『(…あれ?)』

P『(そういえば俺、あの子の連絡先って聞いて無くね?)』

P『(そもそも名前すら…)』

P『……』

P『(おいこれ、俺の人生を大きく切なく変えてるんじゃないのか!?)』

P『(くそっ…!今ならまだ間に合うか…!?)』

幸子『はぁはぁ…!』

P『(でも、中高一貫校だしまた偶然会うことも…)』

幸子『あ、あのっ…!』

P『……』

P『えっ?俺?』

幸子『そ、そうです…!』

幸子『そこの呆けた顔をしている、あなたですっ…!』

P『……』

幸子『……』

P『(誰だ、この若干生意気だけどカワイイ外ハネの女の子は!?)』

幸子『そ、その…当然まだ残ってますよね!?』

P『の、残ってるってなにが…?』

幸子『可哀想なのでボクが全部…!』

幸子『……あっ』

P『ど、どうした?』

幸子『ボタン…全部無くなって…』

P『えっ?』

P『…あ』

P『(そういや、さっきの子に全部あげるつもりだったから…)』

幸子『そ、そんな…ボク、せっかく急いで…』

P『…えっとさ?』

幸子『ぐすっ…な、なんです…?』

幸子『慰めの言葉なんて…』

P『俺の勘違いだったらホントに申し訳ない』

P『ボタン…1つだけ残ってるんだけど…』

幸子『えっ…』

幸子『こ、これ…ボクの為に…?』

P『あー…なんていうかその…』

P『もし良かったら貰ってやってくれないかな…?』

幸子『先輩が、ボクの為に…』

幸子『…うれしいです』ギュッ…!

P『……』

P『(なんか凄い喜んでくれてるし、これはこれで…)』

幸子『……』

幸子『…ふ、フフーン!』

幸子『先輩もやり方が回りくどいですね!』

幸子『こんなサプライズで、カワイイボクが動揺するとでも思いましたかっ!!』

P『……』

P『(いや、そもそもお前は誰なんだ)』

幸子『でも、気持ちはわからなくはありません!』

幸子『相手はこんなにもカワイイボクなんですから…』

幸子『やっぱり愛の告白の仕方も、それ相応のものにしたいと思うのが当たり前でしょう!』

幸子『その気持ちも評価に入れて…今回は及第点ってところですかね♪』

P『……』

P『(どうしよう…)』

P『(思ってたよりも、ずっと中身が濃い女の子だった…)』

P『(なんか今更、キミは誰?とか聞けない空気に…)』

幸子『ところで先輩?』

P『は、はい?』

幸子『先輩は今日この瞬間からボクだけの先輩なんですから…』

幸子『高等部に行っても、ちゃんと週に8日はボクの顔を見に来てください!…ねっ♪』

P『……』

P『(まぁ、これだけ中身の濃いカワイイ子なら…)』

P『(そのうち名前もわかるだろう…カワイイし…)』

P「……」

P「(こんなところだろうか…)」

P「(面識が無い状態から、いきなりハッピーエンドに持っていくって難しいな…)」

P「(まぁ、多少強引だけど良いだろう…幸子だし…)」

P「……」

P「…あれ?」

P「(その幸子の姿が見当たらない…)」

P「(…む。俺のデスクに書置きが)」

『門限が近いので帰ります。声をかけてあげたのに無視されて頭にきたんですが、書置きを残して帰るボクってやっぱりカワイくて優しいですよね! 幸子』

P「ぬお!?」

P「(人がせっかく綺麗な思い出に塗り替えてやったのに、あいつ帰りやがったぞ!)」

P「……」

P「(俺も帰って酒でも飲みに行こうかな…)」

P「(この時間なら、まだ誰か捕まるだろうし…)」

幸子編おしまい

次の楓さん編まで今しばらくお待ちを

P「―――それじゃあ…乾杯」

楓「はい、乾杯です…♪」

楓「…うふふっ」

P「ん?どうしました?」

楓「あ、その…」

楓「こうしてプロデューサーに飲みに誘っていただくなんて久しぶりですから…」

楓「嬉しい気持ちで心がいっぱいで…」

P「あー…確かに俺の方から誘うのって久々かもしれませんね」

楓「急にどうしたんですか?熱燗で、きゅうっとしたくなりました?」

P「んー…確かに飲みたい気分ではあったんですが」

P「どうせなら誰かと一緒に飲みたいなって思って」

P「そんな時に真っ先に思い浮かんだのが楓さんでした」

楓「……」

楓「そういう台詞を不意に言うのはずるいです…」

楓「…キザですよ♪」

P「(意識して言ったわけじゃないんだけど…そういうものなのかな…?)」

楓「でも、本当に嬉しいです」

楓「お仕事が忙しくなってからは、もう全然誘ってもらえてませんでしたから」

P「まぁ…仕事以外じゃなかなか二人きりっていう状況が作れませんからね」

楓「私、適度に構ってくれないと拗ねちゃいますよ?」

P「拗ねちゃうんですか?」

楓「はい…ぷくーっってなっちゃいます」

P「……」

P「(一々可愛いなこの人は…)」

P「じゃあ今日は楓さんが今後拗ねたりしないように、飲んで語り明かしましょうか?」

楓「…はい♪」

楓「今夜はもう…帰しませんからね?」

楓「でも、本当に二人きりなんて久しぶり…」

楓「話したいことはたくさんあるはずなのに…」

楓「いざ話そうと思うと何から話せば良いかわからなくなっちゃいますね…」

P「それならまず、俺の方から楓さんに質問が」

楓「あ、是非。そういう風に話題を提供していただけた方が嬉しいです」

楓「私、なんでも答えます」

P「まぁ、楓さんにとっては少し前の話題になるんですが…」

楓「…?」

P「学生時代の楓さんってどんな感じだったのかなーって」

楓「学生時代の私…ですか?」

P「ほら、もう卒業式や入学式の季節じゃないですか」

P「そういったイベントでの思い出話とかあったら聞いてみたいなーなんて思ったんですけど…」

楓「卒業式…」

楓「……」

P「…あ、もちろん話したくなければ無理に話してもらわなくても」

楓「…あっ、ごめんなさい」

楓「ちょっと思い出していたら…浸ってしまって…」

楓「話しづらいとか、そういうわけでは無いですよ?」

P「そうですか…?」

楓「はい」

楓「むしろプロデューサーには聞いていただきたいです」

楓「こういう私がいたんだ…ってことを」

楓「今となっては、良い思い出の一つですから…」

P「じゃあ…聞かせてもらっても良いですか…?」

楓「はいっ」

楓「プロデューサーも知っていると思いますけど、昔の私は自分を伝えることが苦手で…」

楓「高校時代の時も、そうだったんです」

楓「最初はみんな、私の瞳の色とかに興味を持って近づいてきてくれるんですが…」

楓「それに対して、私は上手に受け答えをすることが出来なくて…」

楓「そしてただでさえ、ボーっと考え事をしてしまうことも多いから…」

楓「気づいたら私はクラスでは浮いた存在…一人ぼっちになっていました」

P「……」

楓「それでも良かったんです」

楓「私は、一人で静かに考え事とかをしてるのが好きでしたから」

P「(楓さん…)」

楓「でも、高校3年生になった時に少し変化があったんです」

楓「3年生の時の担任の先生は今まで私が出会ってきた人とは少し違いました」

楓「当時は30代そこらだったかしら…?そこまではもう覚えていませんけど…」

楓「話し下手で、いつもボーっとしていて何を考えているのかわからない私…」

楓「だけど、彼はそんな私をイヤにならないでいつも笑顔で話しかけてきてくれました」

楓「最初は私の瞳の色に興味津々なだけな人なのかなって思っていたんですが…」

楓「彼の笑顔や話し方に触れているうちに…」

楓「ああ、この人は私の外見だけじゃなく内面も見て接してくれているんだ」

楓「私は、初めてそういう風に考えることが出来ました」

楓「少しづつでしたが、彼に対しては私も伝えたいことを伝えることが出来ていたと思います」

楓「彼に気持ちを伝えることが楽しくて…嬉しかったんです…」

P「…良い先生だったんですね」

楓「…はい」

楓「そして…いつしか私は、彼のことを好きになってしまいました」

楓「ふふっ…今思い出してみると私の初恋でしたね」

楓「好きだって気持ちもそうですが、何よりも感謝の気持ちを伝えたい…」

楓「そう考えた私は、卒業式が終わったあとに彼に告白をしようと決めたんです」

楓「結果は…可も無く不可も無くって感じでしたけどね」

P「可も無く不可も無く…?」

楓「ありがとうは言えたけど…好きだって気持ちは伝えられませんでした…」

楓「だって彼にはもう、奥さんもお子さんもいたんですから…」

P「あ…」

楓「だけど、これだけははっきりと言えます」

楓「彼を好きになったこと…今も後悔はしていません」

P「楓さん…」

楓「…はい。これで私の学生時代のお話はおしまいです」

P「……」

P「(もしも…)」

P「(もしも、その先生に奥さんもお子さんもいなかったのなら…)」

P『……』

P『(卒業式も、最後のHRも終わっちゃったな…)』

P『(何度か経験はしているが…)』

P『この最後のHRの後の、もぬけの殻になった教室っていうのは未だに慣れないもんだ…)』

P『(けど、4月になればまた新入生たちで賑やかになる)』

P『(感傷にふけてないで気持ちの切り替えをしていかないとな…)』

P『(さて、俺もそろそろ帰るかな…)』

ガラッ…

P『…ん?』

楓『……』

楓『…先生』

P『高垣?』

P『どうしたんだ、高垣?』

P『何か忘れ物でもしたのか?』

楓『忘れ物…』

楓『…そうかも、しれませんね』

P『?』

楓『高校生活の最後の思い出を…』

楓『私は、取りに戻ってきたのかもしれません』

楓『その思い出を忘れたままだと…』

楓『きっと私はこれからも、先生と出会う前の私になってしまうから…』

P『それって…』

楓『だから、先生…』

楓『私の忘れ物探しに、少しだけ付き合ってもらっても大丈夫ですか?』

P『…うん。わかった』

楓『…ありがとうございます』

楓『まず、思い出と言っても…』

楓『私の高校生活の思い出は…全部あなたとの1年間でした』

P『……』

楓『誰とも打ち解けられなくて、一人だった私に…』

楓『先生はこの1年間…いつも私に話しかけてきてくれましたよね』

楓『私が伝えたいことを上手く伝えられない時もイヤにならないで…』

楓『ずっと…聞いていてくれました』

楓『本当に嬉しかったです』

楓『だから…ありがとう、先生』

楓『私、先生のクラスの生徒になれて良かった…』

P『高垣…』

P『…いや、お礼を言うのは俺も同じさ』

P『高垣との会話はいつも楽しかったよ』

P『確かにボーっとしていて、何を考えているのかわからない時もあったけど』

P『ちゃんと話してみると、結構ユニークな子で…』

P『そして、とってもいい子なんだなっていうことが伝わったよ』

P『だから俺にとっても、高垣がいた1年間はかけがえのない思い出だったよ』

P『こちらこそありがとな』

楓『先生…』

楓『……』

楓『う…くっ…』

楓『…ひ、ぐっ』

P『…よしよし』ぽんぽん…

P『頑張ったな、高垣…』

P『最後はちゃんと伝えたいことしっかり伝えられたじゃないか』

P『これで胸を張って、次のステージに進めるな』

楓『うぅ…っ』

楓『……』

楓『…い、いえ』

P『…ん?』

楓『私にはまだ…もう一つだけ伝えたいことがあるんです…』

P『そうなのか?』

楓『はい…』

楓『聞いて、くれますか…?』

P『あぁ、もちろん』

P『なんでも言ってくれよ』

楓『……』

楓『じゃあ…今日だけは…』

楓『今日、この日だけは』

楓『私、少しだけ大胆になっちゃいますからね?』

P『お、おう…?』

楓『私…』

楓『私は…あなたのことが好きです』

P『…!』

P『高垣…それは…』

楓『年上への憧れとかじゃ、ありません』

楓『私の人生を変えてくれた大切な異性として…』

楓『あなたのことが、好きです』

P『……』

P『そうか…』

P『…これからは会える時間はグッと減るぞ?』

楓『我慢します』

P『俺、もう結構いい歳だぞ?』

楓『年齢は関係ないです』

P『これからの人生、まだまだ色んな人と出会うと思うぞ?』

楓『あなたがいないと意味がありません』

P『俺、若い生徒に浮気とかするかもしれないぞ?』

楓『めっ』

P『……』

楓『……』

P『…うん、なら俺の負けだ』

楓『…!』

楓『それじゃあ…?』

P『高垣のいない教室…』

P『俺を呼ぶ高垣の声…』

P『もう…それともお別れだなって思った時に俺も気づいたんだ』

P『ああ…俺は高垣のことが一人の女の子として好きだったんだなって』

楓『先生…!』

P『んー…』

P『これからは、そういう呼び方じゃなくなるのかもしれないな?』

楓『えっ?』

P『…楓』

楓『…!』

楓『はいっ…』

楓『Pさん♪』

P「……」

P「(こんなところだろうか…)」

P「(楓さんを呼び捨てにする俺に思わず嫉妬してしまうな…)」

P「(まぁ、妄想での話だから良いか…)」

P「(…ん?なにか視線を感じる…)」

楓「じーっ」

P「ぬお!?」

P「(俺が全力で妄想してたら、この人は全力で俺を見つめてたぞ!?)」

P「か、楓さん…?」

楓「はい?」

P「なんでそんなに俺のことを見つめてるんですか…?」

楓「あ、えっと…」

楓「何か考え事をしていたみたいだったので…」

楓「ジャマしちゃいけないと思って、見つめていました」

P「……」

楓「うふふっ」

楓「とっても真面目な顔で…ステキでしたよ?」

P「……」

楓「…プロデューサー?」

P「(あぁ…これはヤバい…)」

P「(妄想も相まって本気で楓さんに惚れそうだ…)」

P「(初恋の人も罪深いよな…いや妻子持ちなら仕方ないんだけどさ…)」

楓「……」

楓「(私は後悔していません)」

楓「(高校時代、先生のことを好きになれたからこそ…)」

楓「(今、私の目の前にいる大切な人のことを好きになれた…)」

楓「(そう思えるから…)」

楓さん編おしまい

次回ユッキ編はまた後日に
今しばらくお待ちください

友紀「―――あのねー、プロデューサー?」

友紀「あたしだってね、ただの野球大好きゆっきーじゃないんだよ?」

友紀「仲良くお酒を飲んで、おしゃべりするのも大好き!ってわけ!!」

P「……」

友紀「コラー!聞いてるのかー!?」

P「…あの、友紀さん?」

友紀「やん!そんな他人行儀は呼び方はやめてよーっ!」

友紀「いつもみたいにー…ユッキって呼んでっ♪」

P「…友紀、ちょっと質問してもいいか?」

友紀「つれないなー…もー…」

友紀「で、なぁに?」

P「今更聞くのもなんだと思うんだが…」

P「なんで俺たち、事務所内で缶ビール飲んでるのかな?」

友紀「んー?」

友紀「なーに?楓さんとは二人きりで飲んだのに…」

友紀「あたしとは、飲めないって言うのー!?」

P「いや、そういうことを言ってるわけじゃないんだ」

友紀「じゃあ、どういうこと?」

P「いくら仕事終わりとはいえさ…」

P「プロデューサーとアイドルが事務所内で酒盛りっていうのはいかがなものかと」

友紀「そう言いながらも、二本目に手を伸ばすプロデューサー…」

友紀「あたしは…好きだよ…?」

P「……」

P「…一仕事終えた後のビールの味は格別だからな」

友紀「えへへ、そうだよねぇ~♪」

友紀「んくっ…ぷはーっ!こののど越しは直球ど真ん中…!」

友紀「……」

友紀「だから、そうじゃなくってさー!」

友紀「なんで飲みに行くなら、あたしも誘ってくれなかったのー!?」

友紀「…ってことを、あたしは聞きたいの!」

P「なんでって言われるとなー…」

P「…その日の気分?」

友紀「ガーン…!」

友紀「そんな理由で、あたしは二軍落ちになっちゃったんだ…」

P「二軍ってお前…」

P「ていうか、どうしてそもそも俺と楓さんが飲みに行ったことを知ってるんだ?」

友紀「だって楓さんが嬉しそうに話してたもん」

P「(…結構お喋りだよな、あの人も)」

P「(まぁ…やましいことがあったわけでも無いし、隠すようなことでもないんだが…)」

P「(その結果、友紀がヤキモチを妬いたのか、缶ビールを持って事務所に突撃してくるということになったわけだ…)」

P「……」

P「(いや、ホントにやましいことなんか無かったぞ)」

友紀「そりゃさー…あたしは楓さんみたいに綺麗じゃないけど…」

友紀「プロデューサーと、色々とおしゃべりしたいなーっていつも思ってるんだよ…」

P「…!」

P「友紀…」

P「……」

P「…すまなかった」

友紀「…どうして、あやまるの?」

P「そんな風に考えさせてしまう時点で、俺はちゃんと友紀と向き合えていなかったな…」

友紀「……」

P「正直に言えば、その日は楓さんと二人で飲みたかったっていうのが事実だ」

P「けど…だからと言って、俺の中で友紀が楓さんに劣っているわけじゃない」

友紀「でも…」

P「俺にとって、アイドルのみんなは同一に大切な存在だと思ってる」

P「なのに、それを伝えてやれずに嫌な気持ちにさせてしまって…」

P「本当に…ごめんな」

友紀「プロデューサー…」

友紀「…ほんとに、あたしのことも楓さんと同じくらいに大切…?」

P「あぁ、間違いないよ」

友紀「じゃあ、証明してみせてほしいな?」

P「証明か…どうすればいいかな…」

友紀「そんなの簡単だよ!」

友紀「その日、プロデューサーが楓さんにしたことを…」

友紀「あたしにも…して…?」

P「…うん、わかった」

友紀「それじゃあ……んっ…」

P「…なんで目を閉じてるんだ?」

友紀「えっ?」

友紀「だって、ちゅーぐらいしたんじゃないの?」

P「いや、してないから!」

友紀「えー!うそだー!」

P「そういうやましいことは何もしてないって…」

友紀「むぅ~…」

友紀「今のは、あたしなりの全力投球だったのに~…」

P「と、とにかくだ…」

P「キスは出来ないが、今日は朝まで友紀と付き合うつもりだし…」

P「楓さんとした会話は、友紀ともしようと思ってるから…」

P「それじゃあ、駄目か?」

友紀「うーん…それでいっか!」

友紀「ごめんね!なんかしんみりとした空気にさせちゃって!」

友紀「それじゃあ…バッチコーイ♪」

P「……」

P「(さっきのキス発言は、酔った勢いか…?)」

P「まず…その日の楓さんとの最初の話題は、卒業式についてだったな」

友紀「卒業式?それって学校の?」

P「うん。季節で言えばちょうど今ぐらいだろ?」

P「そこで、楓さんに卒業式の思い出話を聞かせてもらってな」

友紀「なるほどー。春と言えば…ってことかー」

友紀「うんうん!春と言えば、選抜高校野球か!卒業式か!だよね!!」

友紀「つまりこの流れだと、あたしも卒業式の思い出話をした方が良いのかな?」

P「おっ?思い出深い話があるなら是非聞かせてくれよ」

友紀「それにはまず、その頃のあたしを語る必要が出てくるんだけど…」

友紀「我ながらさー、可愛かったと思うんだよねー」

P「そんな感慨深くなるほど昔のことでも無いだろ」

P「それに友紀は今でも十分かわい…」

友紀「小学生の頃のあたしって!」

P「すまん、ちょっと昔の話だったな」

友紀「あたしの初恋ってさ、お兄ちゃんだったんだよね」

P「お兄ちゃんって…友紀のお兄さんか?」

友紀「うんっ!」

友紀「あたしが野球を好きになったきっかけを作ってくれた偉大なお兄ちゃんだよ!」

P「へぇ…お兄さんがきっかけで…」

友紀「一緒にキャッチボールをしたことから始まって…」

友紀「お兄ちゃんの野球の試合を応援しに行ったりもして…」

友紀「あ!お兄ちゃんは野球少年だったの!!」

P「ホントにお兄さんのことが好きだったんだな」

友紀「…うん♪今でも自慢のお兄ちゃんだよ!」

友紀「で、この前置きがどうやって卒業式につながるのかっていうと…」

友紀「お兄ちゃんが見に来てくれたんだよね、あたしが小学生の時の卒業式を!」

P「ほうほう…」

友紀「プロデューサーが小学生の時には無かったかな?」

友紀「あたしの小学校での卒業式は、卒業生が一人ずつ壇上に上がって…」

友紀「自分の将来の夢についてみんなに語ってから卒業証書を貰うんだ!」

P「あー、俺もやった記憶があるなそういうの」

P「当時は漠然と有名になりたいとか、そんなこと言ってた気がするな…」

友紀「あははっ♪でも、ある意味夢は叶ってるよね!」

P「今じゃ有名になりたい側じゃなくて、有名にしてあげたい側になってるけどな」

友紀「えへっ…あたしのこと有名にしてねっ♪」

P「あぁ、まかせとけ」

友紀「ありがとー!」

友紀「…で、あたしの話に戻すんだけど」

友紀「あたしの小さな頃の夢は野球選手だったんだ」

友紀「でも、卒業式を迎える頃には無理だって気づいちゃってさぁ」

P「…友紀」

友紀「あ、でも今はこうしてアイドルをやって、大好きな野球の仕事も出来て…」

友紀「すごく楽しいよ!」

P「そうか…」

P「そう言ってもらえるなら俺も嬉しいよ」

友紀「えへへ…♪」

友紀「けど、小学生の時はアイドルなんて考えたことも無かったし…」

友紀「将来の夢…なんて言おうか何も考えて無かったんだよね…」

P「結局、その時の友紀はなんて言ったんだ?」

友紀「お兄ちゃんのお嫁さん!」

P「……」

友紀「いやー!ちょうど壇上からお兄ちゃんの姿が見えてさー!」

友紀「つい…うん…」

P「お前、それが許されるのは卒業式じゃなくて卒園式だろ…」

P「(まぁ、微笑ましい思い出ではあるが…)」

P「(でも、それを言われたお兄さん本人はなんて思ってたんだろうな…)」

ちひろ『わたしの将来の夢は、スタミナドリンクの販売員です!』

P『……』

P『(…俺が卒業する当時もあったよなぁ)』

P『(卒業証書を貰う前に将来の夢を語るっていうやつ)』

P『(この風習は今も変わらないんだな…)』

ちひろ『できれば、エナジードリンクも売りたいです!』

P『(さて…今日は学校も部活も休みだし、妹の卒業式の様子でも見に行ってみるかと思ったのは良いが…)』

P『(うちのかわいい妹の出番はまだか?)』

P『(母校の風習を懐かしむ為にわざわざ来たんじゃないぞ)』

ちひろ『そして…いずれは自分だけの超得ショップを開店したいです!』

P『(…まぁ)』

P『(こうやって色んな子の将来の夢を聞いてるのも、なかなか楽しいもんだけどな)』

P『(俺は、この時プロ野球選手になりたいって言ってたよな)』

P『(実際にその夢を追いかけて今も野球をやってるけど…)』

P『(友紀は、どうなんだろうか)』

P『(今でこそ、女子プロなんて言葉が出てきているけど…)』

P『(実際のプロ野球だと、女の子じゃ通用しないこと…)』

P『(アイツ…ここ最近気づき始めてるみたいだし…)』

P『(だけど友紀には今もこれからも、変わらずに野球が好きでいてほしいって思う…)』

P『(野球の話をしている時が、やっぱり一番楽しそうなんだよな、友紀は)」』

P『(だから将来の夢も…プロ野球選手になることは諦めても…)』

P『(野球が大好きだから野球に関わる仕事がしたい!)』

P『(…そう思っててくれたら良いんだが)』

『…姫川友紀!』

友紀『はいっ!』

P『おっと…』

P『(そんなこんなで友紀の出番か)』

友紀『……』

友紀『…えーっと』

友紀『あ、あたしの、将来の夢…』

友紀『将来の、夢は…』

P『…!』

P『(友紀…やっぱりプロ野球選手になりたいって夢を諦めきれてないのか…)』

P『……』

P『(…それならそれで、良いんじゃないか?)』

P『(周りがなんて思おうが…)』

P『(叶わないとわかってしまっても…)』

P『(それでもそれが今一番の…友紀が純粋に願っている夢なんだ)』

P『(だったら…!)』

P『…友紀っ!!』

友紀『…えっ!?』

友紀『お、お兄ちゃん…?』

P『迷うな!』

P『お前が一番好きなもの…』

P『お前が一番なりたいものを堂々と言ってやれ!』

P『他の誰が応援しなくても…』

P『俺だけはずっと応援してやるからなー!!』

友紀『お兄ちゃん…』

友紀『…うんっ!!』

友紀『…あたしの将来の夢』

友紀『将来の夢は!あたしが一番大好きな野球…』

P『(うん…それでいいんだ…)』

友紀『…をやってるお兄ちゃんのお嫁さんになることです!!』

P『……』

P『…えっ?』

友紀『あたしは野球とお兄ちゃんが大好きです!』

友紀『つまり野球をやってるお兄ちゃんの姿が一番好きです!!』

友紀『だから、おにいちゃーん!!』

友紀『大きくなったら、あたしと結婚してねー!!』

友紀『…えへっ♪』

P『……』

P『(…ああ、うちの妹は)』

P『(俺が思っていたよりもずっと…)』

P『(純粋な子だったみたいだ…)』

P「……」

P「(こんなところだろうか…)」

P「(ていうか、これって俺を友紀のお兄さんに置き換えたら…)」

P「(妄想じゃなくて、ただの実話じゃないか?)」

P「(…おや。二本目の中身も無くなってしまったか…)」

P「(それじゃあ、もう一本…)」

友紀「うぃー…ちょっとピッチ早すぎたぁ~…」

P「ぬお!?」

P「(俺が当時のお兄さんの気持ちを振り返ってたら、コイツ缶全部空けやがったぞ!)」

P「え、ユッキさん?もうこれで全部?」

P「俺、まだ全然酔ってないんだけど?」

友紀「むにゃ…ぐー…」

P「おーい!?流石に寝るには早すぎるぞ!?」

P「(まぁ、友紀はソファーの上で寝かせといて良いとしてだ)」

P「(飲み足りない)」

P「(かと言って、友紀一人残して買い出しに行くというのも気が引ける…)」

P「(一体どうしたものか…)」

P「……」

P「…そうだ」ピポパ…

P「……」

P「…もしもし、菜々か?」

P「うん…ちょっと緊急でな…」

P「タクシー代は持つから急いで事務所の方まで来てくれないか?」

P「あぁ、あと…適当に酒とつまみも買ってきてほしいんだ」

P「なんでって…」

P「これから飲むからに決まってるだろ?」

ユッキ編おしまい

次のウサミン編まで今しばらくお待ちを

菜々「―――じとぉー…」

P「…どうした、菜々?」

P「そんな顔してたら、美味しいお酒たちが台無しだぞ?」

菜々「こんな顔にもなっちゃいますよっ!」

菜々「なんですか!?いきなり連絡が来たから、なにかのトラブルにでも巻き込まれたのかと思いきや…」

菜々「お酒とツマミを買ってこいと!」

菜々「仮にも永遠の17歳って設定のアイドルに、なんてことを頼むんですか!?」

P「…仮とか設定とか、自分で言って良いのか?」

菜々「自分で言わなきゃ、コンビニの年齢確認ボタンなんて押せませんからねっ!」

P「おお、鮭とば。センスあるなぁ、菜々」

菜々「えへへっ♪日本酒にはやっぱりコレが無いと!」

菜々「……」

菜々「もぉー!ナナになんて物を買わせてるんですか、Pさんはっ!」

P「いや、コレと日本酒を選んできたのは他でもない菜々だろ」

菜々「ぷんぷん!」

菜々「それにそれにー…!」

友紀「くかー…すー…」

菜々「ソファーで横になっている友紀ちゃんは何事ですか!?」

菜々「こんなにも飲ませて、どうするつもりだったんです!?」

P「いや、友紀に関しては俺が考え事してる間に勝手に…」

菜々「…ホントですか?」

P「本当だよ」

菜々「ナナの目を見ても言えますか…?」

P「嘘じゃない」

菜々「……」

P「……」じっ…

菜々「…あ、うぅ」

菜々「そ、そんなに見つめられると…ナナ、恥ずかしいです…」

P「…俺も恥ずかしくなってくるじゃないか」

菜々「はぁー…もういいです…」

菜々「話相手にナナを選んでくれたってことで、前向きに考えることにします…」

P「すまんが、今回はそういうことにしておいてくれ」

菜々「ナナ、遠くはるばるウサミン星からやってきたんですから…」

菜々「さすがに数時間でお開きってことは無いですよね?」

P「それは当然さ」

P「夜は長い。たまには二人きりで朝までっていうのも良いだろ」

菜々「二人きり…」

菜々「……」

菜々「ふへへ…イイかも…」

友紀「うにゅー…」

菜々「…ハッ!?」

菜々「そうでした…」

菜々「友紀ちゃんが寝てるし二人きりと言うには…」

菜々「……」

菜々「今のはちょっとズルいと思いますっ!」

P「…なんの話だ?」

菜々「なんでもありませんっ!」

菜々「こほん…気を取り直しまして…」

菜々「Pさん、最初はどれから飲みましょう!」

P「凄いな…」

P「鬼ころし、月桂冠、大関…」

P「3つが並んでるの、俺コンビニでしか見たことないよ…」

菜々「3つ並んでるのが良いんですっ♪」

菜々「日本酒とウサミンは、ひとりぼっちにしちゃいけないって言いますからね!」

P「もちろん、菜々をひとりぼっちになんかさせないさ」

菜々「えっ?」

P「一緒にトップになるって…ずっと前から約束してるんだから」

P「今更それを破ろうなんて気は微塵も無いよ」

P「これからもよろしくな」

菜々「Pさん…」

菜々「…もう」

菜々「そういうところも…ズルい…」

菜々「…でも、ステキなんです♪」

P「よし、最初は鬼ころしだな」

菜々「ナナ、今のは聞いてて欲しかったなぁー!」

P「鮭とば、開けていいか?」

菜々「あ、ハイっ!」

菜々「今夜は日本酒と鮭とばで、ウサミンシークレットナイトです♪」

P「じゃあ、俺達しか知らない長い夜の時間に…」

菜々「かんぱいっ!」

P「…さてと、菜々」

P「今夜の酒の肴に出そうかと思っている話題があってな」

菜々「むむっ!さっそく、ナナ達しか知らない秘密のお話が…」

P「季節も春になって…思い浮かぶは卒業式や入学式…」

P「だから最近アイドルのみんなから、卒業式の思い出話を聞かせてもらってるんだよ」

菜々「卒業式…懐かしい響きですね…」

菜々「ナナは今も現役JKではありますが…当時を振り返ると色々な思い出が…」

P「そのリアル現役JKの時の、卒業式の思い出を是非聞かせてもらいたいんだ」

菜々「…まさにPさんとナナが二人だけの時じゃないと出来ないお話ですね」

P「もはや隠す気も無い、ありのままの菜々が俺は好きだよ」

菜々「えへへ…17歳のナナもそうですけど…」

菜々「やっぱりPさんには、そのままのナナも好きになってほしいから…♪」

P「ふぃーっ…鬼ころし…コイツは効くなぁ…!」

菜々「ナナ、今のも聞いてて欲しかったなぁー!!」

菜々「では…ここでしか聞けない安部菜々の…」

菜々「リアル現役JK最後の日…!」

P「ゴクリ…」

菜々「さて、永遠の17歳と言うだけあって…」

菜々「実際に今でも17歳で通用するんじゃないかというぐらい、ナナは童顔で背もちっちゃいです」

菜々「そんなナナは、やはり現役JK時代でもJKに見られないくらいのあどけなさ…」

菜々「あまりのあどけなさに、これには地球もウサミン星も珠美ちゃんもびっくり!」

菜々「だけど時の流れは残酷なもので…」

菜々「どれだけあどけなくても月日が過ぎれば卒業式というイベントがやってくる…」

菜々「あの日、若葉ちゃんが卒業した時のように…」

菜々「物語はここから始まるのです…」

P「珠美がびっくりするほどのあどけなさは凄すぎるだろ…」

P「(だが胸に関しては…いや、当時を知らないから何とも言えないか…)」

P「(ついでに若葉よりも菜々の方が背が小さいっていうのも結構驚くところだな…)」

P「……」

P「(もう、これだけで妄想のネタには充分な気もしてくる…)」

菜々「ナナが高校の卒業式を迎えたあの時も…」

菜々「やっぱりナナはあどけない18歳でした」

P「ついに当時の年齢を言っちゃったか…」

菜々「名前を呼ばれて、壇の上へと足を運ぶナナ…」

菜々「卒業証書を受け取って、自分が大人へと一歩近づいたんだいう喜びを噛み締める…」

菜々「わずかな時間だけど、記念すべき日…」

菜々「…だけど」

菜々「その考えが、ウサミン焼きよりも甘かったんです…」

菜々「ナナが壇を降りようとした、その瞬間…」

菜々「―あの子、在校生じゃなくて卒業生だったんだ」

菜々「―いきなり在校生の送辞が始まるのかと思った」

菜々「―あれが噂のウサミン星人か」

P「ウサミン星人って、その頃から存在してたのか…」

菜々「数々の罵詈雑言がナナを襲いました…」

P「罵詈雑言の使い方、合ってるのか?」

菜々「そして…その日からナナの時間は止まってしまったのです…」

菜々「17歳だったあの時から…」

P「……」

P「卒業式を境にしたんだったら…」

P「永遠の18歳でも良かったんじゃないか?」

菜々「…確かにPさんの言うことも、もっともだと思います」

菜々「けどけど…」

菜々「18歳という数字だけだとJKだかJDだかわからないという不具合が…」

P「あー…」

菜々「せめてナナが3月生まれなら…卒業式の日だと、まだ17歳って言えたんですけどね~…」

P「(…まぁ、まとめると)」

P「(菜々の現役JK時代は、今よりももっとラブリーな17歳だったせいで…)」

P「(卒業式で卒業できたという実感が湧かなかったという切ない思い出か…)」

P「(うーん…)」

P「(これをどうやってハッピーエンドに持っていけばいいのか…)」

P『……』

P『(今日で、この高校で過ごした3年間ともお別れか…)』

P『(なんだか3年間、あっという間だったな…)』

P『(まぁ何はともあれ、無事に卒業できるのは良いことなんだろう)』

P『(だけど…)』

菜々『Pくんっ』

P『菜々…』

菜々『えへっ♪卒業おめでとうございます!』

P『あ、ああ…ありがとう…』

P『…それを言うなら菜々の方こそ』

菜々『……』

菜々『…ダメですよ?』

菜々『それ以上は、言わないでほしいです』

菜々『最後は笑顔で、お別れしたいから』

P『…っ』

P『どうしても…この先には一緒に行けないのか?』

菜々『…はい』

菜々『ごめんなさい…』

菜々『だって、ナナはまだ17歳で…』

菜々『ウサミン星人、ですから』

菜々『あの日、あの時…最初の卒業式から今日まで…』

菜々『そして、これからもずっと…』

菜々『ナナは永遠に17歳だから…』

菜々『これからもJKでいなければならないのです』

菜々『卒業生ではなく、在校生なのです』

菜々『だから…』

菜々『あなたと一緒に卒業は、できないんです…』

菜々『本当に…うぅ…ご、ごめんなさいっ…!』

P『…菜々』

P『…ひとつだけ。ひとつだけ教えてほしいんだ』

菜々『は、はい…なんでしょう?』

P『この高校生活で…』

P『俺と菜々が過ごした時間は本物だったのか…?』

菜々『……』

菜々『えへへ…』

菜々『もちろん本物でしたよ』

菜々『何度目かわからない17歳の誕生日も…』

菜々『一緒に歩いた通学路や、クリスマス…』

菜々『Pくんと一緒にいた私は、間違いなく本当の安部菜々でした』

P『…そっか』

菜々『だからどうかお願いです』

菜々『ナナのこと、忘れないでください』

菜々『ウサミン星人は、確かに存在したのです』

菜々『Pくんとナナの高校生活はもう終わっちゃいますけど…』

菜々『Pくんがナナのことを覚えていてくれれば、またいつか会えます』

菜々『だってウサミンは…』

P『…心で通じ合うんだよな?』

菜々『…!』

菜々『…はいっ!!』

P『また会えるなら、ちょっとの間だけお別れしたって平気かな?』

菜々『きっと平気ですよ!』

菜々『さみしくなんかありませんっ♪』

P『……』

菜々『……』

菜々『ふぇ…ひっぐ…』

菜々『ふえぇぇん…!さみしいよおぉ…!』

P『…菜々っ!』

P『もう…もういいじゃないか…』

P『一緒に卒業しようっ…!』

菜々『む、無理ですよぉ…』

菜々『ナナはあの頃から、顔も身長もそのままなんです…』

菜々『だから、卒業式に出る自信なんてありませんっ…!』

P『でも…胸はちゃんと成長してるじゃないか!』

菜々『む、胸はその…少しは大きくなりましたけど…』

P『なら…!』

菜々『そ、それでも…』

菜々『ナナは未だに17歳以下に見られることもしばしば…』

菜々『それに今更実年齢をPくんに教えるのも…』

P『菜々が何歳に見られようが…実は何歳なんだろうが関係ないっ!』

P『俺は菜々と…好きな子と一緒にこの学校を卒業したいんだっ!!』

菜々『…!!』

菜々『Pくん…』

菜々『…Pくんは』

菜々『壇上にいるナナのことを…』

菜々『―在校生の送辞かな?』

菜々『…なんて、煽ったりはしませんか?』

P『するわけないだろ』

菜々『卒業した後の進路を一緒に考えてくれますか…?』

P『もちろん。何なら菜々の人生ごとプロデュースさせてくれ』

菜々『ナナ、Pくんが思ってるよりもずっと良い歳してますよ…?』

P『じゃあ、もう結婚するか!』

菜々『あ、あわわ…!?』

菜々『さすがに、学校を出てすぐに結婚は今後絶対苦労しますよ!?』

P『それは確かに…』

菜々『……』

P『……』

菜々『…でも、いつか』

菜々『ホントにナナのことをお嫁さんにしてくれますか…?』

P『…!』

P『ああ。必ず迎えにいくよ』

菜々『Pくん…』

菜々『…ありがとうございますっ♪』

菜々『じゃあ今日からナナは、Pくんだけの専属メイドさんに永久就職ですねっ!』

P『それじゃあ…』

菜々『はい…』

菜々『ナナ、卒業式に出ますっ!』

菜々『Pくんと一緒にこの学校を卒業しますっ!!』

P『菜々っ!』

菜々『Pくんっ!』

P『もう…離さないからな…』

菜々『…うん。離さないでくださいね』

菜々『少しでも離れたら…』

菜々『ウサミンはさみしくて…死んじゃうんだから…♪』

P「……」

P「(こんなところだろうか…)」

P「……」

P「(つまりどういうことだ?)」

P「(この妄想の中の菜々は自主留年を繰り返しているってことで良いのか?)」

P「(それとも、呪いかなにかファンタジー的な要素で卒業出来ないままになっていたのか?)」

P「(卒業をする自信が無いから、学校に今も留まっているという設定したのは良いが…)」

P「(無理矢理にでも卒業させてハッピーエンドにしないと収集つかなくなるところだったな…)」

P「(我ながら、恐ろしい妄想だった…)」

友紀「ん…んぐっ~…」

菜々「つんつん…友紀ちゃん、お肌モッチモチです…」

P「ぬお!?」

P「(俺が自分の妄想に恐怖してるのをよそに、この子友紀のほっぺたをつついてたぞ!)」

P「……」

P「俺もつついてみて良いかな?」

菜々「Pさんはダメですよぉ!セクハラですっ!」

P「えー」

ウサミン編おしまい
遅くなって申し訳ない

次の藍子編まで今しばらくお待ちを

P「―――ふぁーあ…」

P「(朝まで事務所で飲んで、帰って速攻で寝て…)」

P「(そして、昼に起きたが予定は無い…)」

P「(我ながらなかなか有意義なオフの過ごし方だな…)」

P「……」

P「(良い天気だ…)」

P「(暖かいし…絶好のお散歩日和ではあるが…)」

P「(ひとりだと、ちょっとさみしくないか?)」

P「(誰かを誘いたいところだけど…)」

P「(…友紀や菜々は、今頃は二度寝してる時間か)」

P「(今日、他に誰かオフの子といえば…)」

P「……」ピポバ…

P「……」

P「…あぁ、藍子?」

P「いやいや。俺も今日オフでさ…」

P「時間があれば、これから付き合わないか?」

藍子「―――ふふっ♪」

P「ん?どうした?」

藍子「あっ、その…」

藍子「なんだか…幸せだなって思って」

P「幸せ?」

藍子「はいっ」

藍子「こうしてお互いが休日の時に、一緒にお散歩が出来ること…」

藍子「何気ないことかもしれないですけど、この時間は私にとってはかけがえのないものです」

藍子「だから…今日は誘ってくれて本当にありがとうございますっ!」

P「藍子…」

P「…こちらこそありがとな」

P「いきなり誘ったのにも関わらず、わざわざ来てもらって」

P「こんな天気の良い日に藍子と散歩が出来るなんて、俺も幸せだなって思うよ」

藍子「Pさん…」

藍子「…くすっ」

藍子「なんだか…良い雰囲気ですね?」

P「えっ…?」

藍子「…なんて」

藍子「たまには、ちょこっとだけ勘違いしても良いですか…?」

P「あ、藍子…」

P「…えーとだな」

藍子「……」

P「(これは…藍子からのアプローチなのか…?)」

P「(だとすると…プロデューサーとして、なんて返してやるのが…)」

パシャッ…!

P「…ぬお!?」

藍子「…うふふっ♪」

P「(俺が珍しく真剣に考えてたら、写真を撮られたぞ!)」

藍子「ごめんなさいっ!」

藍子「ちょっとイタズラしちゃいました♪」

P「い、イタズラ…?」

藍子「Pさんの真剣に考えている時の1枚…ありがとうございます!」

藍子「また素敵な思い出が増えちゃいましたっ♪」

P「……」

P「お、おお…」

P「まさかこんな風に藍子にからかわれる日が来るとは…」

藍子「ホントにすみませんっ」

藍子「でも…今日ぐらいは許してもらえるかなって…」

P「許すも何も…新鮮な藍子を見せてもらえて逆にお礼を言いたいぐらいだよ」

P「こんな一面もあるんだなぁって」

藍子「ふふっ、なら良かったです!」

藍子「…でも、イタズラ心は言い訳だったり」

P「(…今のは聞こえなかったフリの方が良いのかな)」

P「ていうか、さっきの写真はどうなるんだ?」

P「もしや、藍子の思い出のアルバムの1ページを飾るのか?」

藍子「思い出のアルバム…良い響きですね…」

藍子「私としては、Pさんの写真集のつもりだったんですが…」

P「いや、そこはアルバムにしてくれ。写真集はさすがに恥ずかしい」

藍子「ふふ、わかりました♪」

藍子「じゃあ、Pさんアルバムということでっ!」

P「結局メインは俺になるのか…」

P「……」

P「(アルバム、か…)」

P「なぁ、藍子?」

藍子「はい?」

P「やっぱり藍子って中学生の時は、卒業アルバム制作委員とかに入ってたのか?」

藍子「えっ?」

P「あぁ、すまん…唐突だったな」

P「ほら、藍子って写真が好きだからさ」

P「卒業アルバムに載せる写真とかを選んでたのかなーって」

藍子「確かに、私は写真は好きですけど…」

藍子「こうピンポイントに卒業アルバム制作に関わってたって話が出てきて…」

藍子「ビックリしちゃいましたっ」

P「お、やっぱり入ってたんだな」

藍子「…あ、そっか」

藍子「もう卒業式や入学式のシーズンですもんね…」

P「そうそう」

P「最近、卒業式の思い出を他の子たちと話しててさ」

P「もし良かったら、藍子の思い出話も聞かせてほしいんだ」

藍子「卒業式の思い出、ですか…」

藍子「私の思い出ってなると、やっぱり中学生の卒業式になりますね」

藍子「ちなみに私、卒業アルバム委員ではあったんですけど…」

藍子「写真じゃなくてクラスページの制作がメインだったんですよ」

P「そうなのか?」

藍子「写真とかは学校側が撮ったものを載せるので…」

P「あー、ああいうのって学校側で全部やっちゃうのか」

藍子「あはは…私もてっきり自分で撮った写真を載せられるのかなって思っちゃってましたっ」

藍子「文化祭に修学旅行…」

藍子「載せたい思い出はたくさんあったんですけどね…」

P「藍子…」

藍子「でも、クラスページを作るのも楽しかったですよ?」

藍子「一緒になった子たちとも記念撮影をしたりして…」

藍子「みんな笑顔で…今でも思い出せます…」

P「…そっか」

P「周りの子たち…みんな、良い子だったんだな」

藍子「はいっ!」

藍子「あ、ごめんなさい…卒業式のお話でしたよね」

藍子「思い出と言えば、最後は仲が良かった子たちとの記念撮影ですね」

藍子「私、カメラを持ってきて…たくさんの写真を撮りました」

藍子「2ショットだったり、個人で撮らせてもらったりもして…」

藍子「三年間の思い出に負けないぐらいに、たくさんの思い出をまた新たに作ったんです…」

藍子「泣いちゃった子もいたんですけど、やっぱり最後にはみんな笑顔で…」

藍子「最高の一日だったなって…そう思えます」

藍子「…ごめんなさい。なんだか普通過ぎるお話ですね」

P「…いや、そんなことないよ」

P「三年間じゃ足りないくらいの思い出を、友達ともっと作りたかったんだよな」

P「仲の良い友達がいて…最後までその子と新しい思い出をまた残したいって思うことが出来て…」

P「ああ…藍子は充実した中学生活を送ってきたんだなって、そう感じられた」

P「凄い良い思い出を聞かせてもらえたなって思うよ」

P「ありがとう」

藍子「そんな…」

藍子「でも…そう言ってもらえてうれしいな…」

P「(さて…写真に残らない思い出の時間だ)」

P「(藍子の思い出に俺を登場させるなら、もちろん…)」

P『……』

P『(もう、最後のHRも終わってしまったな…)』

P『(みんながみんな…別れを惜しんでる…)』

P『(…卒業、したんだなぁ)』

ちひろ『Pくんっ!』

P『おっと…?』

P『…千川さん?』

ちひろ『一緒に写真を撮りませんか?』

P『写真?』

ちひろ『はいっ♪』

ちひろ『藍子ちゃんがカメラを持ってきてくれたんで、良かったら!』

藍子『どうですか?今なら無料で思い出作りのお手伝いを!なーんて…♪』

P『高森さんも…』

P『んー…無料ならお願いしようかな?』

ちひろ『そうこなくちゃ♪』

藍子『任せてくださいっ!』

藍子『じゃあ、ちひろちゃんとPくん…並んでください』

P『2ショット…なんか照れくさいな…』

ちひろ『まぁまぁ、今日ぐらいは良いじゃないですか』

藍子『ふふっ、二人ともお似合いですよっ♪』

ちひろ『やっぱりそうですか?』

P『おいおい…』

藍子『それじゃあ、撮りますよ?』

藍子『二人とも、良い笑顔を見せてくださいね?』

藍子『はい…3、2、1…!』

P&ちひろ『ガチャが一番♪』

パシャ…!

藍子『…うん!二人とも最高の笑顔でしたっ!』

ちひろ『えへへ、ありがとうございましたっ♪』

P『いやいや、こちらこそ』

ちひろ『じゃあ、次はPくんと藍子ちゃんですねっ!』

藍子『えっ?』

藍子『えっと…わ、私は…その…』

藍子『みんなの笑顔の撮影係っていうか…』

ちひろ『なに言ってるんですか!』

ちひろ『…好きな人の笑顔だけで満足ですか?』ぼそっ…

藍子『…!』

ちひろ『その隣に自分もいたいって思いませんか?』

藍子『ちひろちゃん…』

P『えーっと…』

P『無理強いは良くないんじゃないかな…?』

P『高森さん、あんまり乗り気じゃ無さそうだし…』

藍子『あ、あのっ…!Pくんっ!!』

P『は、はいっ!?』

藍子『私も…2ショットを撮ってもらっても良いですか…?』

藍子『と、隣に並んで…』

P『…う、うん』

P『俺で良ければ…』

ちひろ『ではでは、撮影は私に任せてくださいっ!』

藍子『えっと…ここのボタンを押してもらえれば…』

ちひろ『了解です♪』

ちひろ『…あ、PくんPくん』

P『ん?なに?』

ちひろ『…男の子なら、ここで肩でも抱いてあげるところですよ♪』ぼそっ…

P『…へっ!?』

ちひろ『それじゃあ、撮りますよーっ♪』

藍子『お、お願いします…!』

P『え、ちょっと待っ…!?』

P『(肩を抱けって…ダメだろ…!?)』

藍子『……』

P『……』

P『(もしかして…)』

P『(良いのか…!?)』

ちひろ『はい…!』

ちひろ『3…』

P『(いやいや、さすがに千川さんも冗談で言ったんだろう…)』

ちひろ『2…』

P『(けど…もしもホントに肩を抱かれても良いって高森さんが思ってたら…)』

ちひろ『1…!』

P『(もう考えてる時間が無い…!)』

P『……』

P『(ええい!どうとでもなれ…!)』

藍子『え、えいっ…!』ぎゅっ…!

P『…!?』

パシャ…!

ちひろ『…あらあら♪』

ちひろ『よしっ!じゃあ、そのままでもう1枚撮りましょう♪』

ちひろ『二人とも今度はとびきりの笑顔でお願いしますねっ!』

藍子『は、はいっ…!』

P『……』

P『(俺が高森さんの肩を抱くよりも前に…)』

P『(高森さんが俺の腕にしがみついてきた…!?)』

藍子『ね、ねえ…Pくん…?』

P『あ…な、なにかな…?』

藍子『…その』

藍子『イヤじゃ、ありませんか…?』

P『……』

P『…どちらかと言えば嬉しいかな』

藍子『…!』

藍子『…私も、うれしい』

P『……』

P『(…うん)』

P『(あとで告白しよう…)』

ちひろ『それじゃあ、もう1枚!』

ちひろ『3…2…1…!』

パシャ…!




                   ___|:./:./: |:.:|:゙|ハ\
               _. <_.─:.:.:.:.:.:.:⌒\)_)_)Yi\\
               /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. \:.:.:.:)_)//)_) )) ))
            ./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: \:.:.:. \:.)_)//)_) 〃
            /:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ :. \:.:.:゙\:.:.:.:∨)_)_)人
          ′:.:.:゙|:.:.:.| | \\:\ :.: \:.:.\:.ハ  ))
            |:.:.:.:.:.:|.:.:.:| |   \<:.\:.:.:.\:.:.\|
            |:.|l:.:.八: ├     >  .(卞、:.:. \ーr─
            |:八:.:.:.: 芥.      ィ==z |:.\「ヽ: |
            \:八ィ=z      : : :/:.:.:.:.|ノ)ノ
                |\\: : '    ./:.イ:.:. |\
              ノ:.:.: 人  r  フ  . 八:.き ))
             /:.:.:.:/_ >  __. イii/:.:/):.:.\
          〃/:.:.:.:.|: //゙) ノ//} 〈:.:〈(.:.:.:.:.:.:)\
          {{|:.:.:.:.|//ノ(  | |    \:.:):.:.:.:/  )
             人:.:.:.:.V(   )| |ヽ  _/:.:.:/ )(  〉〉、



P「……」

P「(こんなところだろうか…)」

P「(いやもう、これは中学男子なら瞬間で恋に落ちるだろう)」

P「(なんていうか…)」

P「(良いなあ…藍子って…)」

P「(思わず自分の妄想にときめいてしまうな…)」

藍子「……」ぎゅっ…

P「……」

P「ぬお!?」

藍子「きゃっ…!?」

P「(妄想の中で俺の腕にしがみついてきた藍子が、現実でも俺の腕にしがみついてきたぞ!)」

P「ど、どうしたんだ…?」

藍子「え、えっと…」

藍子「春になったとはいえ…まだ少し風が冷たいなって思って…」

藍子「変装もしてるし…少しぐらい甘えても大丈夫かなって…」

P「……」

藍子「…やっぱり、ダメですか?」

藍子「そうですよね…アイドルだし、もしもバレたら…」

P「…まぁ、今日ぐらいは良いんじゃないか?」

藍子「…えっ?」

P「うん…結構、嬉しいしさ」

藍子「…!」

藍子「そう言ってもらえたら…」

藍子「私も、うれしいな…」ぎゅっ…!

P「……」

P「(…なんていうか)」

P「(良いなあ…藍子って…)」

杏「―――そして、杏のところにまた戻ってきたわけだけど」

P「結構楽しかったぞ、みんなの卒業式の思い出話を聞くの」

杏「それはなによりだよ」

杏「杏もアイドルを卒業する時は、今度こそ内容のあるものにしたいなってちょっとだけ思うよ」

P「いや、杏の卒業式で昼寝してたって話もなかなか捗ったぞ」

杏「捗ったって…なにが?」

P「……」

杏「……」

杏「…当時の制服姿を妄想しちゃうって結構やばいんじゃない?」

P「…制服姿だけなら良かったんだけどな」

杏「えっ…?それ以上があるの…?」

P「その思い出も…ってことだよ」

杏「…?どういう…」

P「まぁ、簡単に言えば答えはこれだ…杏、あーん…」

杏「飴?一応貰うけど…」

杏「あーん…ん…んく…」

杏「……」

杏「…甘酸っぱい」

これで全員分おしまい
時間はかかりましたが今日まで読んでくれてありがとうです
またそのうち何か書けたらまたよろしくです

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