杏「はぴはぴでいず」 (15)

もしこんなドラマがあったらなっていう話。

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智絵里「私たちは恋をしていました。」

かな子「じんわり甘くて幸せな恋。」

杏「それはまるでキャンディーみたいで。」

智絵里「幸せで。」

かな子「幸せで。」

杏「そんな日々だった。」

キーンコーンカーンコーン

智絵里「き…起立っ。礼…。着席。」

杏「ふぃー…やっと終わったー…。もう帰っていい?」

智絵里「だ、駄目だよっ!まだ午後の授業があるんだからっ。」

杏「むー委員長はお堅いなあ…。杏はもうへとへとだよ。」

かな子「でもやっとお昼ご飯の時間だよー。杏ちゃんも元気出して?」

智絵里「そ、そうだよ。少しでも食べたら元気出るかも?」

杏「食べるのもめんどくさい…。うえ、相変わらずの『お弁当』だね…。」

かな子「ふえ?」

智絵里(お菓子しか入ってない…。)

杏「栄養バランス偏るよー?ていうかすでに偏ってるけど。」

かな子「美味しいから大丈夫だよー。」

智絵里「は、花より団子…?」

杏「ていうより色気より食い気ってやつでしょ、かな子は。」

智絵里「色気…。」

杏「また断ったんだってね。」

かな子「なんで知ってるの!?」

杏「ふっふっふー。結局かな子のお眼鏡にかなう…いや、かな子の口に合う男子は現れなかったかー。」

かな子「えーそんな言い方に変えないでよー!」

智絵里(三村かな子ちゃん。お菓子が大好きな女の子。可愛くて男子にも人気があるけど、告白は全部断ってるみたい。)

かな子「そういえばノートのここ。さっきの授業でわからないとこがあったんだけど…。」

杏「んー?これはこうしてここにこれを代入して、こうしたら。」

かな子「うわー!わかりやすい…さすが杏ちゃん。」

智絵里(双葉杏ちゃん。めんどくさがりやですぐ帰りたがるけど成績はトップクラス。ほんといつ勉強してるんだろ…。)

杏「委員長?どうしたの?」

かな子「大丈夫?」

智絵里「え…?ううん、なんでもない。」

智絵里(緒方智絵里。クラス委員長をしているけどそれ以外は平凡な高校三年生。)

杏「なにか考え事?」

智絵里「ううん、もうすぐ高校生活も終わりだなあって。」

かな子「そうだねー。寂しくなっちゃうね。」

杏「進路、どうするの?」

智絵里「私は大学に行けたらいいなあって…。」

かな子「私はパティシエになりたから、それの専門学校かなー。」

杏「みんなしっかり考えてるんだね。」

智絵里「杏ちゃんは?」

杏「特に何にも。この際歌手にでもなって印税で暮らそうかなー。」

かな子「すごく杏ちゃんっぽい…。」

私たちはまだ未熟で、幼くて。でも背伸びしたくて、新しい世界が見てみたくて。

杏「世界がひっくり返る出来事でも起こらないかなー。」

そんなことを心のどこかで思ったりしていて。

ここまで考えたけど酒で頭が回らん。誰か頼む。

SIDE かな子

キーンコーンカーンコーン

智絵里「やっと終わったねっ…。」

杏「だねー…。帰りどこかよってく?」

かな子「ごめんね、私は先に帰るよー。」

智絵里「そっか!…なにか用事?」

杏「もしかして男?なーんて。」

かな子「ち、違うよ!!近くに新しいクレープのお店ができたから寄っていこかなって!」

杏「…そっか。じゃあ行ってらっしゃい。」

智絵里「え?じゃあ私も…。」

杏「委員長は私に勉強教えてよ。」

智絵里「わ、私が杏ちゃんに教えることなんて…。」

杏「そういうことだから。ばいばーい。」

かな子「う、うん。さよなら…。」

―校門―

かな子「お待たせ!」

男子「本当に待った。」

かな子「ご、ごめんね。」

男子「別にいいよ、待つの嫌いじゃないし。」ニコッ

かな子「っ…!」

男子「ん、どうした。行くよ?」

かな子「う、うん。」

かな子(まただ…。不器用な笑顔、さりげない優しさ…。)

男子「それでさ、その時友達が…。」

かな子「ふふっ。」

男子「な?笑えるだろ?」

かな子「そうだねー。あ…。」

男子「もう分かれ道か、じゃあまた明日。」

いつもこれの繰り返し。
小学校からだっけ。私はいつでも仲のいい幼馴染で。

かな子「う、うん!また明日!」

男子「あ!来週バレンタインだから!期待してるぜー。」

かな子「え、あ、うん!任せておいてよー。」

男子「じゃあまたな!」ニコッ

いつも君と会う前は前髪だってチェックしてるし、おめかしだってさぼってないのに。

かな子「うん…じゃあまた明日。」

なにも気づいてくれない。

かな子「はあ…。」

私とあなたってみんなにはどう見えてるだろうね。そんな風に尋ねてみたいけど。
私にはそんな勇気はなくて。

―三村家―

かな子「高校最後のバレンタイン、かー。」

夜、自室で読んでいたファッション雑誌のバレンタイン特集が目に入る。

『今まで言い出せなかった気持ちを!愛しの男子にあげる本命チョコ特集!』

かな子「う、うーん。こういう本気っぽいのは…。さすがに気づかれちゃうよねー…。」

そこまで口に出してふと思った。

かな子「気づかれなきゃだめなのに、なんで避けてたんだろ。」

そうだ、私の気持ちは気づかれなきゃ意味がないんだ。

かな子「よーし、そうと決まれば…頑張っちゃうよー!」

夜は秒速で過ぎる。
智絵里ちゃんや杏ちゃんはどうやって過ごしてるのだろう。
そういえば二人は恋ってしてるのかな。

もし誰か引き継いでくれるなら引き継いでくれ…。

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