ほたる「あの……地図アプリ使いますね」

藍子「お願いします」

ほたる「……」ｽｯｽｯ

藍子「……」

藍子「………あっ、気球」ﾊﾟｼｬﾘ

ほたる「えっ？ ………あっ、ホントだ」

藍子「おーい、おーい」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

ほたる「手を振っても、あの高さだと見えないんじゃあないでしょうか……」

藍子「うーん残念」

ほたる「………えーっと、私たちが向いている方向が東南東みたいです」

藍子「と、いうことは……沖縄行きですか？」

ほたる「そうみたいです」

藍子「なるほど。……そう言えば、雪乃さんと雪菜ちゃんと、あと雪美ちゃん、が沖縄でライブするって言ってました」

ほたる「あ、そう言えば言ってましたね……もしかしたら、さっきの飛行機に乗ってたかも」

藍子「……手、振っとけばよかったかな」

ほたる「多分見えないと思います……」

ｵﾏｴｰﾉﾅｷｸﾞｾﾊｰ ｳﾏﾚﾂｲﾃﾉ

ほたる「……メールだ」ｽｯｽｯ

藍子「今のメロディーは……」

ほたる「谷龍介さんの“しあわせ尋ねびと”です」

藍子「演歌、好きなんですか？」

ほたる「最近はよく聞きます。藍子さんは？」

藍子「私はあんまり……オススメとかありませんか？」

ほたる「“幸せとんぼ”とか、“倖せ通りゃんせ”とか……」

藍子「………えーと」

ほたる「曲名の縁起がいいので、好きです」

藍子「あ、あはははは………こ、今度聞いてみますね」

ほたる「もちろん、歌詞もいいですよ。……メールの差出人……………礼子さんから……？」

藍子「えぇっ？ れ、礼子さん？ 何の用事でしょう……」

ほたる「………………。………あの、飲み会のお誘いみたいです…………」

藍子「！？ れ、礼子さん、一体どうしたんでしょうか？ そんなことする人じゃあなかったと思うんですが……」

ほたる「……………あっ、すみません、カーボンコピーですね、このメール。多分間違えたんだと思います……」

藍子「えっ？ あ、ホントだ。ほっ、よ、よかった……」

ほたる「……………あっ、菜々さんのアドレスも、カーボンコピーに入ってます。礼子さん、結構おっちょこちょいというか……」くすくす

ｵﾏｴｰﾉﾅｷｸﾞｾﾊｰ ｳﾏﾚﾂｲﾃﾉ

ほたる「あ、礼子さんからまたメールです。……やっぱり間違えだったみたいです」

藍子「一応、菜々ちゃんにも送っちゃってますよーって返信しておきませんか？」

ほたる「あ、そうですね」ｽｯｽｯ

藍子「それにしても、大人の皆さん、お酒好きですよね。そんなにいいものなんでしょうか？」

ほたる「送信、っと。えい。……うーん、味が想像つかないですよね……」

藍子「ねー」

ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻｯ

藍子「……あっ、ほたるちゃん見てください！ 鳩さんです！」ﾊﾟｼｬﾘ

ほたる「わあ、あんなにいっぱい……」

藍子「クッキーを砕いて、あげてみましょう。はーとさん、ぽっぽー、くるっぽー♪」ぱらぱら

てちてちてち つんつん

藍子「はぁ、かわいい……」ﾊﾟｼｬﾘ

ほたる「かわいい………あの、私もやってみたいです」

藍子「やります？ はい、どうぞ♪」

ほたる「ありがとうございます。………は、鳩さーん、鳩さーん。ぽっぽっぽー、はぁとぽっぽー……」ぱらぱら

ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻｯ ｶｧｰｶｧｰ

ほたる「あ…………」

藍子「あ…………」

ほたる「………鳩さん、みんな飛んでっちゃいました……代わりにカラスがたくさん………」

藍子「………そ、その………蘭子ちゃんとか、飛鳥ちゃんとか、多分カラスの方が好きなんじゃあないでしょうか？」

ほたる「………そう、でしょうか………」ｽﾞｰﾝ

藍子「あ、あはは……ど、どうでしょうね？」

ｵﾏｴｰﾉﾅｷｸﾞｾﾊｰ ｳﾏﾚﾂｲﾃﾉ

ほたる「…………礼子さんからです」ｽｯｽｯ

ほたる「………菜々さんにも間違えたって、メール送ってくれたみたいです」

藍子「ほっ、よかった……きっと菜々ちゃん、大慌てだったでしょうね」

ほたる「はやめに気づいてよかったですね」

ﾃｨﾛﾘﾝ

藍子「あ、事務所のLINE……」ｽｯｽｯ

ほたる「……みくさんが写真を……今日は菜々さん、幸子さんと一緒にロケだって言ってましたね。……わあ！」

藍子「こ、こんなにいっぱい鳩さんが！みくちゃんたちに近寄って……！」

ほたる「あ、これ、もしかしてさっきの気球………？」

藍子「と、いうことは、この鳩さんたちはさっきの……」

ﾃｨﾛﾘﾝ

ほたる「完全防護でパラシュートを背負った幸子さんの手に、鳩さんが乗ってる………！」

ﾃｨﾛﾘﾝ

藍子「何故か疲れた表情をした菜々ちゃんの頭に、鳩さんが乗ってる………！」

ほたる「………う、羨ましいです……」

藍子「確かに……はあー、私も居合わせたかった……」

ほたる「…………。……なんていうか………私は不幸ですけど、巡り巡って、誰かを幸せに出来てるんですよね……？」

藍子「うんうん、そうですよ、ほたるちゃん。だから気に病むことありませんよ。服は洗濯すればいいんですから」

ほたる「……落ちるでしょうか、ペンキ………」

ﾋｭｰﾊﾞｻﾊﾞｻｯ

ほたる「わぷっ！？」

藍子「ほたるちゃんの顔に張り紙がくっついて……えーっと、“ペンキ塗り立て注意、座るな”………」

ほたる「…………」

藍子「…………」

二人「「遅い！」」

はははははははははは

藍子「あはははは……なんだか、一周回って、笑っちゃいますね」

ほたる「あははは……。………えーっと、はやめに帰りましょうか？」

藍子「そうですね、ちょっと苦労しそうだし………せーので立ちますよ！」

ほたる「はい、いっせーの……！」

藍子「せっ！」ｶﾞﾀﾝｯ

ほたる「………ベンチ、くっついちゃってますね……」

藍子「ち、ちょっと重いかな……呼吸を合わせないと、歩けそうにありませんね……」

ほたる「そうですね……ゆっくり行きましょう」

藍子「はい、それじゃあ１、２で行きましょう！」

ほたる「はいっ！」

藍子「いっち……」よろよろ

ほたる「にぃ……！」よろよろ

藍子「いっちい……！」よろよろ

ほたる「にいいぃ……！」よろよろ

藍子「………つ、疲れたので休みましょう………」ぜーはーぜーはー

ほたる「そ、そうですね……」ぜーはーぜーはー

すとんっ

藍子「……疲れたらすぐ座って休めるのは便利ですね」

ほたる「あ、それは確かに……」