澪「もう終わりや…」
澪「鬱だ、氏のう」ツルツル
紬「澪ちゃん待って!!」
澪「ムギか……邪魔しないでくれ、私にはもう希望が無いんだ」
紬「落ち着いて澪ちゃん、話を聞いて!」
澪「いいんだ、わかってるから……ムギも心の中では私のことを嘲笑しているんだろう」
紬「澪ちゃん!!」
澪「……ごめん、ムギはちっとも悪く無いのに」
紬「いいのよ、神経質になってしまうのも当然だわ。 でもね、悲観するのはまだ早いわよ」
紬「私のお父さんもね、少し前まで禿げに悩まされていたの」
澪「少し前……まで?」
紬「そう、正確には一年前ね。 お父さんは育毛剤の開発に多額の財産を注ぎ込み、ついに完成させたわ」
紬「見る見るうちに髪が生える、魔法のような育毛剤を」
澪「!?」
紬「ふふ、どう? 生きる希望、湧いてきたでしょう?」
澪「……ああ、一条の光が見えてきたよ」
紬「今はまだ販売できる段階に到っていなくて、生憎プロトタイプしか無いのだけれど、お父さんに頼めばきっと貰えると思うわ」
澪「……ありがとう」
紬「親友の悩みは私の悩みよ、私は自分のしたいことをするだけ」
澪「ほんと……ムギには足を向けて寝られないな」
紬「今日お願いしてみるから、明日まで待ってね」
澪「うん、わかった」
翌日
紬「澪ちゃん、どうぞ」
澪「これで、私の髪が生えてくるのか」
紬「ええ、十二時間でりっちゃんくらいには伸びると思うわ」
澪「ありがとう……本当に、感謝しきれない」
紬「親友だもの、当然よ」
澪「親友だけど、お金はきちんと払わさせてもらうよ」
紬「そんな、別にいいのに」
澪「金銭に関してはきちんとしておきたいんだ、親友だからこそ」
紬「わかったわ、少しずつでいいからね」
澪「ああ」
澪「これは塗ればいいのかな」
紬「ええ、私がやってあげる」
澪「何から何まですまない」
紬「気にしないで、一度やってみたかったの」ペタペタ
澪「はは、それは嘘だな」
紬「うふふ、どうかしらね」ペタペタ
紬「よし、これで大丈夫なはずよ」
澪「十二時間、だったか」
紬「ええ、あっという間よ」
澪「そうか、なんだか緊張するな」
紬「あ……そうだ、この薬には少し副作用があるらしいわ」
澪「そうなのか?」
紬「うん、といっても一ヶ月くらいのものだそうよ」
澪「い、痛かったりするのか……?」
紬「安心して、そういうのじゃないから」
澪「そっか……」ホッ
紬「ちょっとばかりホルモンバランスが崩壊して、えっちな気分になるだけだから」
澪「」
澪「え? え?」
紬「あ、少し生えてきたわ!」
澪「ちょ、ちょっと待って。 え?」
紬「すごいわ、どんどん伸びてる!」
澪「ねぇ、ちょっと話を……」
紬「あ、ごめんなさい……澪ちゃんの頭は見世物なんかじゃないわね。 念のため今日は安静にした方がいいわ、それじゃあまた明日!」
澪「え、えぇー……」
再び翌日
澪「…………」ハアハア
澪(確かに、もう髪は腰の位置まで伸びた)ハアハア
澪(そしてムギの言う通り、今朝から身体の様子がおかしい)ハアハア
澪「うぅ……ムズムズする」ハアハア
澪「……そろそろ出ないと、遅刻してしまうな」スタッ
澪「行こう……」ハアハア
澪「くっ……はぁ……」テクテク
澪「一歩歩くごとに……振動がっ……!」ハアハア
澪「んっ……くぅ……んん……やっ……あぁ……ひっ」ハアハア
澪「だ、駄目だ……腰に、力が」ヘナヘナ
澪(立てない……)
澪「いや……今立ち止まったら……確実に遅刻だ」ヨチヨチ
澪「這ってでも……辿り着いてみせる!!」ハアハア
澪「ふぅ……ふぅ……」ヨチヨチ
澪「やっと……門の前まで来れた」ハアハア
唯「澪ちゃん!?」
澪「ああ……唯か、どうしたんだ?」ハアハア
唯「それはこっちの台詞だよ! 澪ちゃんどうしたの!?」
澪「いや、少し体調がな……」ハアハア
唯「具合が悪いなら休まなきゃ! 無理して学校来ても意味ないよ!!」
澪「だよな……思考もまともに働かなくて」ハアハア
唯「ほら、おんぶしてあげるから」
澪「……恩に着るよ」ハアハア
唯「親友だもん、当たり前のことだよ」ニコッ
澪「…………」ムラムラ
唯「うーん、保健室閉まってるねぇ」
澪「……唯、部室に」ハァハア
唯「そだね、部室なら横になれるし」テクテク
澪「…………」ハァハア
唯「澪ちゃん、大丈夫?」
澪「大丈夫だ……問題ない」ハァハア
唯「それにしてはすごく辛そうだけれど……あんまり無理しちゃ駄目だよ」
澪「ああ……肝に命じておくよ」ハァハア
唯「よいしょっと、到着ー!」
澪「…………」ハァハア
キンコーンカンコーン
唯「やば、もう一限目始まっちゃった!?」アタフタ
澪「唯」ハァハア
唯「ごめん澪ちゃん、私忙なむぐっ!?」
澪「…………」チュー
唯「ん……ぁ……」チュー
澪「…………ぷはぁっ」
唯「……み、澪ちゃん?」
澪「ごめん唯、もう我慢できない」ハァハア
唯「や、やめ……んんっ」ガクンッ
澪「唯……唯……」ジュルッ
唯「そん……なっ……なめちゃ……あっ」ゾクッ
澪「唯……唯!!」ニュプッ
唯「あふっ……やっ……んっ……ひぁっ……んぁっ!?」
澪「唯! 唯!!」ズッズッ
唯「やっ……ぁぁ……ひんっ……あっ……いやぁぁぁぁっ!!」ビクンッビクンッ
澪「誠に申し訳ございませんでした!」ドゲザ
唯「責任、とってくれる?」
澪「うっ……うん」
唯「あはは、冗談だよ」
澪「唯……」
唯「そういう事情なら仕方ないよ、私も嫌じゃなかったし」ニコッ
澪「……ありがとう」
唯「それじゃ、私は授業があるから」
澪「ああ、頑張って」フリフリ
唯「澪ちゃんはしっかり休んでてね、隣にエリザベス置いとくよ」
澪「うん」
澪(唯との交わりを終えて、少しは収まったかと思ったけれど)
澪(駄目だ、また変な気分に……)ハァハア
澪「……寝てしまえば、何とかなるのかもしれないな」
澪(問題は眠れるかどうかだが、一体どうしたものか)
澪(うーん……)
澪(……………)
澪「…………ぐぅ」スヤスヤ
――
澪「ん……ここは、私の家?」
澪「……どうして私はバニースーツを身に纏っているのだろうか、ご丁寧にウサ耳まで付いてる」サワサワ
澪「部室で寝ていたはずだけど、一体いつの間……に!?」
ウサギ「…………」
澪「これは、私のぬいぐるみ……だよな」
澪「……それにしては大きい、軽くニメートルはありそうだ」
ウサギ「…………」ズイッ
澪「ひぃ!?」
ウサギ「…………」ガシッ
澪「うぐっ!!」
澪(ぬいぐるみの大きな巨体に、押さえ込まれてしまった)
澪(ファンシーな見た目に相反して、何とも力強い)
澪「なんて、冷静に検分してる場合じゃ……!?」ピトッ
澪「な、なんだ? ぬいぐるみなのに、固い所が……」サワサワ
澪「ま、まさか……!」
ウサギ「…………」ムクムクッ
ウサギ「…………」スリスリ
澪「駄目だ……そんな、やめて……んっ」
ウサギ「…………」ミチミチッ
澪「ひぎぃっ!?」
ウサギ「…………」ズッ
澪「いやっ! ふ……あっ! あっ!!」ビクッ
ウサギ「…………」ズプッ
澪「あひぃぃぃんっ!!」ビクビクッ
ウサギ「…………」ズッズッズッ
澪「んっ! やっ! はぁんっ!」ビクッビクッ
ウサギ「…………」パンパンパン
澪「あひん! あひっ! はひん!」ビクッビクッ
ウサギ「…………」パンパン
澪「らめっ! ひっ! あっ! あっ!!」ビクッビクッ
澪「んぅぅぅぅぅっ!!」ビクンッビクンッ
――
澪「んん……?」
澪「部室、か……」キョロキョロ
澪「さっきのは、夢だったわけだな」
澪「そして、こんな夢を見てしまった原因は恐らく」
澪「今現在私にのしかかっている、エリザベスに他ならないであろう」
澪「……なんて、冷静に分析しとる場合じゃないっちゅーに」
澪「これじゃあまるで、エリザベスに襲われてるみたいだな」ハハハ
澪「!?」ゾクッ
澪(不覚……余計なことを考えたら、再び降臨してしまった)ハァハァ
澪「エリザベス……」クチュ
澪「んんっ……はぁ……エリザベスぅ!」クチュクチュ
澪「エリザベス! エリザベスぅぅ!!」クチュクチュ
澪「くぅぅぅぅぅぅん!!」ビクンッ
梓「」
澪「はぁ……はぁ……」
澪「つい、体が動いてしまった」
澪「これからは、気をつけないとな……ん?」
梓「」
澪「」
澪(な、何で梓がここに……!? いや、そんなことよりも)
澪(梓に、見られた!)
澪(私がエリザベスとの行為に耽っていた所を、見られてしまった!!)
澪(それは何とも興奮する……否! まずい、非常に不味い!!)
澪(かくなる上は……)この間わずか二秒
澪「梓確保ぉぉ!!」ガシッ
梓「にゃっ!?」ビクッ
梓「むぐぅぅぅぅ!!」ジタバタ
澪「ふぅ……なぜか部室にあった縄とタオルで、梓を縛り上げてしまった」
梓「むーっ! むーっ!」ジタバタ
澪「ごめんな、梓。 今すぐに縄を解……」
澪「いや、今なら梓を好き放題できるんじゃ……」ハァハァ
梓「!?」
澪「ふふ、梓……」ハァハァ
梓「むぐー!!」ジタバタ
澪「お、今日の下着は薄緑色か」ペラッ
梓「むぐぅぅぅ……」ウルウル
澪「さて、次は生えてるかどうかのチェックをするとしよう」ズルズル
梓「むぐぅぅぅ!!」ジタバタ
ガチャッ
律「ちーっす! ってあれ、澪来てたん……だ?」
梓「むぐー! むぐー!」
澪「律か、授業お疲れ様」
律「あ、ああ……いや、ちょっと待て」
律「何これ、今どういう状況?」
澪「さあ、わからないな。 今とは何時、『じょうきょう』とはどのような漢字を当てるんだ?」
律「そこからわからないのかよ! ってかそれパクリ!!」
梓「むぐむぐっ! むぐーむぐっ!」
律「んん……うん、なるほど。 澪が出し抜けに襲いかかってきて、成すがままに縛られてしまったと」
澪「よくわかったな」
律「ああ、まあ……梓とは、アレだからな。 いや、それはともかく」
律「とりあえず、梓の縄を解いてやれ」
澪「断る」
律「は、はぁ!?」
澪「断ると、そう言ったんだ」
律「いやいや、何でだよ!」
澪「話せば長くなるが、それでもあえて説明するならば」
澪「梓と交尾がしたいからだ!」キリッ
律「」
梓「」
澪「梓と交尾がしたい身体!!」ヌギヌギ
律「待てぇぇい!!」ガシッ
澪「何だ?」
律「『何だ?』じゃない、服を着ろ」
澪「着たままヤれと言うのか?」
律「違う、するなと言っているんだ」
澪「私と梓による愛の育みを、邪魔する権利が律にあるとでも?」
律「あたしには無いかもしれんがな」スルスル
梓「ぷはぁ!!」
律「梓にはあるだろ、個人の意志を尊重しろ」
澪「むぅぅ」プクー
梓「りつー!」ギュッ
律「よしよし、怖かったな。 それと先輩を呼び捨てはやめろ」ナデナデ
律「それで、澪。 お前は授業も出ずに、一体何をやっているんだ?」
澪「実は、かくかくしかじかで」
律「……いや、そんないかにも省略されてますよ的な言葉を使われてもわからないから」
澪「ちぃっ」
律「舌打ちすんな」
澪説明中
律「なるほど、中々信じ難い話ではあるが」
澪「…………」ハァハァ
律「……どうやら、本当みたいだな」
澪「すまん、副作用で仕方ないとはいえ、梓には乱暴なことをしてしまったな」
梓「い、いえ! 私なら大丈夫です」
澪「そうか! なら今からでも私と」
律「…………」ゴツン
澪「痛い」サスサス
梓「りつー!」ダキッ
律「呼び捨てはやめろ」ナデナデ
澪「実はな、今もなおムラムラしているのだが、意志の強さをもってして抑えているんだよ」ムズムズ
律「とても抑えているようには見えなかったけどな」
澪「だけど梓が房事をしたくないというのであれば、仕方がない」
澪「私も既に大人料金を払っている身だ、ここは引こう」
律「おお!」
澪「ただし、交換条件がある」
律「おお……?」
澪「私のお尻を叩いてくれ」
律「」
澪「聞こえなかったか?」
律「いや、聞こえた。 できれば聞こえて欲しくはなかったが、遺憾にも聞こえてしまった」
澪「そうか、では頼む」フリフリ
律「……一回でいいか?」
澪「いや、ドラムスティックで軽快にリズムを刻んでくれ。 曲目はそうだな……定番のふわふわ時間で」
梓「り、りつー!」ブルブル
律「あ、ああ……怖いよな、あたしも怖い。 それと呼び捨てはやめろ」
澪「どうした? 早くしてくれ」フリフリ
律「い、嫌だ」
澪「はぁ?」
律「断る、と言ったんだ」
澪「断るのはいいが、すると勢い余って私が梓に襲いかかってしまう可能性も否めないぞ」
律「くっ…………わかった」
梓「り、りつぅぅ!!」
律「背に腹はかえられんからな、致し方ない。 そして呼び捨てはやめろ」
澪「では、頼んだぞ」フリフリ
律「い……いくぞ!」
澪「うん、よろしく」フリフリ
律「…………」ペチッ
澪「んんんっ!!」ビクンッ
律「!?」ビクッ
澪「ふぅ……はぁ……どうした?」
律「い、いや……何でもない」タンッ
澪「ひぁんっ!!」ビクンッ
梓「りつぅぅ! りつぅぅ!!」ブルブル
律(地獄絵図だ……)
律「ええい、ままよ!」パシッ
澪「ひぃぃん!!」ゾクッ
律「…………」タタッタタタッ
澪「やんっ! あはぁん! ふぁっ!」ビクッビクッ
律「…………」タタタッタタタッタタタッ
澪「ひぃっ! あっ! あふっ! うにゅぅぅぅぅん!?」ビクンッビクンッ
律「…………」タタタタタタタタタッ
澪「あへぇ…………」ビクンッビクンッ
律「…………」タタッタタタッタタタッ
梓「りつ! りつ!!」ガシッ
律「な、なんだ? 別にやましい気持ちなんかないぞ?」
梓「そうじゃなくて、澪先輩……気絶してる」
澪「」ビクンッビクンッ
律「これは……つまり、終わった……のか?」ヘタリ
梓「りつぅぅ!!」ダキッ
律「はは、はぁ……疲れた」ナデナデ
その頃、音楽準備室。
紬「satisfaction......」ウットリ
紬「できることなら、梓ちゃんやりっちゃんともドッキングをして欲しかったのだけれど……ううん、そこまで高望みするのも野暮よね」
紬「唯ちゃんとは結合してくれたし、一晩かけてカメラを設置した甲斐があったというものだわ」ウフフ
唯「へえ、カメラなんてあったんだ?」
紬「ええ、キーボードや食器棚、机の下から窓にエアコンまで、あらゆる所にカメラを…………え!?」クルッ
唯「…………」ニコニコ
紬「あわわわわ」ガクブル
――
純「というのが事件のあらまし、といっても梓が澪先輩や唯先輩から聞いた話を又聞きしたものだから、実際に起きたこととは多少の差異があるだろうけどね」
菫「……それで、その後はどうなったんですか?」
純「うん、それから一ヶ月もの間紬先輩は、澪先輩のはけ口に宛行われたそうだよ。 自業自得という言葉が合致する事象なんて、実際に起こり得るものだったんだね」アハハ
菫「長年お仕えしてきた身としては、かなりショッキングな話です」
純「こないだ箝口令が解かれたんだよ、本題へ移る前置きとしてこの話題に触れざるを得なくてね」
菫「随分と長い前置きですね」
純「まあね……さて、ここからが本題。 今の話を通じて、スミーレに聞きたいことがあるんだけど」
菫「は、はい……」ゴクリ
純「癖毛が一昼夜で直る薬とか無い?」
菫「ありません」キッパリ
-fin-
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