男「……幼馴染。調子、どう?」(65)
幼馴染「おぉ、男じゃないか。調子はばっちりだよ。」
男「そうかそうか、良かった。ほら、お前の読みたがってた小説、買って来たぞ。」
幼馴染「やった、流石男! ありがとう!」
男「ははっ、お前が本当に元気そうで何よりだよ。」
幼馴染「や、やだなぁ、男。照れちゃうよ。私はいつでも元気だよ?」
男「まぁ、そうだな。」
幼馴染「……男も元気? 学校は変わり無い?」
男「元気元気。学校も、特別変わった事は無いな。三年の卒業式が有るけど。」
幼馴染「まぁ、二年の私達には関係無いもんね。あっ、でも、準備とかさせられるんじゃない?」
男「あぁ、うん、させられる。まぁ、面倒だろうけど、そんなに大変でも無いと思う。」
幼馴染「そっかそっか。……卒業、ね。私も卒業出来るかな。」
男「……あぁ、大丈夫だ。一緒に卒業しよう。」
幼馴染「……うん。」
男「……おっ、梨が有る。剥こうか?」
幼馴染「うん、剥いて。……男が梨食べたいだけでしょ?」
男「ばれたか。」
幼馴染「ばれるよ。」
男「でも幼馴染も梨好きだったはず。」
幼馴染「好きだよ。でも、林檎はあんまり。蜜柑が一番。」
男「全部同じだ。」
幼馴染「全部、小さい頃によく一緒に食べたよね。懐かしいな。」
男「俺のだけいつも小さい奴だった様な。」
幼馴染「な、何の事かな。ちょっと分かんない。」
男「まったく。」
幼馴染「じゃあ今回は剥いてくれたお礼に! 大きい方をあげよう!」
男「ふはは、残念だったな! 俺はお前みたいに一個、一個、形が違うなんて事は無い!」
幼馴染「そっ、そんなっ! 男がそんなに家庭的だったなんて!」
男「言うが、お前みたいに皮は残さないし、でこぼこにもしないし、綺麗に種も取れる!」
幼馴染「……」
男「ふはははは!」
幼馴染「ぐすんっ……」
男「ごめん……」
幼馴染「良いよ……」
男「……よし、剥けた。ほら、皿取ってくれ。」
幼馴染「ほい。……梨って美味しいよね。」
男「まぁ、美味しくない梨も有るけどな。これはきっと美味しいだろ。高いだろうし。」
幼馴染「そうだよね。」
男「よし、やっぱり一個一個同じ大きさに切れるな。」
幼馴染「……ぶーっ。……男の意地悪。」
男「ごめんごめん。よし、全部切れた。ほら、食べな。」
幼馴染「えっ? 勿論、食べさせてくれるんだよね? ね?」
男「いやいや、自分で食べろし。手とかちゃんと動かせるんだろ?」
幼馴染「うぅ……男が食べさせてくれないと泣いちゃう……」
男「泣けば?」
幼馴染「むーっ! 男の薄情者! い、良いじゃん、別に減るものじゃないんだし……」
男「……」
幼馴染「もう良いよ。男なんて嫌、えっ?」
男「口。開けな。」
幼馴染「……お、男って優しいね。あーん。」
男「別に……」
幼馴染「えへへっ、照れてるの? あぁ、ごめん! 怒らないで、もう一個頂戴。」
男「待て待て、俺も一個だけ食べるから。むぐむぐ。よし、ほれ。」
幼馴染「……ぁ、お、男。」
男「どした? 顔赤いぞ?」
幼馴染「な、何でも無いよ! は、早く口に入れて。」
男「? ほれ。」
幼馴染「むぐむぐっ、ほ、他の女の子に梨、剥いちゃ駄目だから……」
男「いや多分、梨を向く機会なんてもう殆ど無いと思うけど……」
幼馴染「良いから…tね」
男「……まぁ、分かったよ。ほれ。」
幼馴染「待って。そんなに早く食べられないよ。男も、別にもっと食べても良いんだよ?」
男「そうか? じゃあ、貰うかな。むぐむぐ。美味しい。」
幼馴染「……えへへっ。」
男「もう、食べれるか? ほれ。」
幼馴染「むぐむぐっ。……ねぇ、男。……あのさ。」
男「ん? どした?」
幼馴染「私、小説が書いてみたい。ど、どう思う?」
男「国語がニだった幼馴染が、か? 痛い! 痛いっ!! 叩くなって……」
幼馴染「も、もう。ふざけないでちゃんと答えてよ。」
男「まぁ、良いとは思うけど。どんな話?」
幼馴染「男みたいな格好良い主人公が、囚われの、誰とは言わないけど、私みたいな可愛いお姫様を助ける話?」
男「俺は格好良く無いし、誰とは言ってるし、……ありがち過ぎないか?」
幼馴染「えぇ、良いと思うんだけどな。女の子はリアリストだけど、実は白馬に乗った王子様も憧れてるんだよ?」
男「まぁ、もうちょっとリアルな話でも良いと思うけど、それが良いって言うなら何も言わないよ。」
幼馴染「じゃあ通り魔が私を殺そうとして、男が救えない話?」
男「いや、リアルすぎるだろ……」
幼馴染「男は私の事、助けてくれないの?」
男「え? あ、いや……」
幼馴染「にやにや。」
男「にやにやするな。まぁ、助けるけどな……」
幼馴染「……え、えへへっ! じゃあ、さっきの話は無しだね。」
男「でも、いきなりどうしたんだ? 前から小説好きなのは知ってたけど、どうして急に。」
幼馴染「……気分?」
男「まぁ、幼馴染って昔から気分屋だもんな。」
幼馴染「そうかな。まぁ、確かに思いつきで行動する事はよくあるけど。」
男「何もしないよりは良い事だと思うぞ。……そうだ。頭良いんだし、推理小説とか良いんじゃないか?」
幼馴染「おぉ、いいねぇ。犯人はお前だ!」
男「そうそう。よく推理小説とかも読んでるし。」
幼馴染「うーん。でも推理小説って、頭の良し悪しじゃないよね。才能が……」
看護婦「失礼します。あっ、面会時間、そろそろ終わりですよ。」
幼馴染「あっ、もうそんな時間なんだ……」
男「みたいだな。じゃあ、また来るよ。それまでに小説、考えておけよ? じゃな。」
幼馴染「うん! えへへっ……」
看護婦「点滴替えますね。……お兄様ですか?」
幼馴染「いえ。友達です。」
看護婦「ふふっ、仲が良いんですね。」
幼馴染「小さい頃からの幼馴染で、長い間一緒にいますから……」
男「……」
男「はぁ……」
男「何であいつが……」
男「……」
男「くそっ……!」
男「……」
男「本屋に寄るか……」
男「……」
男「あいつが喜びそうな本……」
男「ん。『小説入門書』か。……あいつ本気で書こうとしてるのかな。三日坊主にならないかな。」
男「……」
男「まぁ、良いか。買ってやっても。暇だろうし。」
男「他には……」
友「……男? あぁ、やっぱり男だ。」
男「おぉ、友。よっす。こんな所で会うなんて珍しいな。」
友「まぁね。……その本、小説でも書くの? 男の書く小説、読んでみたいな。勿論、ヒロインは私だよね。」
男「いや、俺じゃなくて。幼馴染の奴が書きたいって言うからさ。なんか参考になるかな、なんて。」
友「……」
男「友?」
友「……あ、いや。……仲、良いんだね。羨ましいよ。」
男「そうか? まぁ、昔からの幼馴染で、長い事一緒にいるからな。」
友「……私も本探してるんだ。勿論、付き合ってくれるよね?」
男「え? あぁ、良いけど。何探してるんだ?」
友「sm教本。」
男「何探してるんだ……」
友「どんな趣味だろうと、人の趣味に口出しするのは頂けないな。」
男「趣味なんだ……」
友「男は勿論、ドmだよな?」
男「違う!」
友「じゃあドsなのか? そうか、でも、まぁ、苛められるのも、き、嫌いじゃないよ。」
男「何言ってるんだ……」
友「ふふっ、元気なさそうだったからね。男は元気が一番似合うよ。」
男「そ、そうか。ありがとな。」
友「じゃあ、さて、探そうか。そして一緒に実践しよう。」
男「探さないし、しねーよ!」
友「じゃあ、今日はありがとう。また明日。」
男「おう、じゃな。また明日、学校で。」
男「……」
男「寒っ……」
男「……」
男「帰ろう……」
男「……」
風邪気味だから今日はもう終わる。
閲覧感謝。また、明日。
男「失礼します。幼馴染、起きてるか。」
幼馴染「おっ、男。今日も良い男だね。」
男「いきなりどうした。ほら、お前の為になりそうな本、買ってきたぞ。」
幼馴染「……昨日くれた本もあるのに。……お金返すよ。」
男「家に財布忘れてきたから返してもらえないわ。一回ポケットに入れて洗濯した事もあるし。」
幼馴染「……良いの?」
男「良いよ。」
幼馴染「えへへっ、ありがとね。あっ、そうだ、小説の事だけど。」
男「小説にも関係あるから、本、開けてみ。」
幼馴染「え? あっ、ありがとう! 私、頑張るからっ!」
男「お前が書いたの、一番最初に見せてくれよ?」
幼馴染「えへへっ、勿論だよっ!」
男「それで? 小説の事だけど?」
幼馴染「うん。男探偵のお話にしようと思うんだけど。」
男「俺の名前を使うのは止めてくれ。何かむずむずする。」
幼馴染「えー、やだよ。男の名前が良い。格好良いし?」
男「……まったく。まぁ、良いけどさ。それで?」
幼馴染「それでね、男探偵は何でもできて超格好良いの! もう惚れ惚れしちゃう! あ、ごめんね。ふふっ。」
男「むずむず……」
幼馴染「でね、でも、その男探偵はちょっと抜けてて、六つ、六つだけミスを犯すの。」
男「……おぉ、何か面白そう。それでそれで?」
幼馴染「ふふんっ! それでね。そのミスって言うのをお話にしたいんだけど、今、考えてる。」
男「……そうだな。探偵のミスって言うと推理ミス?」
幼馴染「それも良いんだけど、できれば、全部のミスを一つのお話にできれば良いかな、って。」
男「初めて書くのに随分と長くなりそうだな。大丈夫か?」
幼馴染「賞を狙ったり、小説家になりたいってのでもないし、気分だよ、気分! 国語二だし!」
男「まぁ、そうだな。って、ごめんごめん! 一緒に考えてやるから。それで、いくつかミスは決まった?」
幼馴染「いや、一つ目のミスも、まだ考えられてないんだ。ははは……」
男「でも、一日でそれだけ考えられたんなら凄いよ。もしかしたら幼馴染には才能が在るかも知れないな。」
幼馴染「わぁ、やった! よし、じゃあ一緒に考えよう? えへへっ。」
男「おう。そうだなぁ……何でもできる探偵がミス……」
幼馴染「……」
幼馴染「……男。……あのさ。」
男「ん? どうした?」
幼馴染「……」
幼馴染「……ううん、やっぱり何でもない。……男って素敵だね。」
男「い、いきなりどうした、そんなに顔赤くして。恥ずかしいなら、言うなよ……俺も恥ずかしいし……」
幼馴染「……男。」
男「……お、幼馴染。」
幼馴染「……ん。」
男「……え、あ、う。」
看護婦「失礼します。そろそろ面会時間終わりますよ。あら。」
男「も、もうそんな時間ですか。にやにやしないでください。じゃあ、俺、帰るな。」
幼馴染「う、うん。ま、また、明日ね。」
看護婦「にやにや。」
幼馴染「……もうっ! にやにやするのやめてくださいっ!」
看護婦「そうかそうか、あの子は彼氏だったのか。」
幼馴染「ち、違いますからっ! 幼馴染ですからっ! も、もうやめてくださいっ!」
看護婦「顔紅くして。にやにや。」
男「……」
男「……幼馴染、元気そうだな。」
男「医者も、治らないって言ってるわけではないし。」
男「……これから。」
男「これから何事もなければ……」
男「……」
友「男っ♪」
男「お、おぉ、友。いきなり後ろからとか、驚かさないでくれ。びっくりした。」
友「ふふっ、わざと驚かしたんだよ。それで、こんなとこで何してたの? また、本屋?」
男「いや、幼馴染が入院したの知ってるだろ? それで、お見舞いに。」
友「……へぇ。あの子、入院してるんだ。ふーん、そう。」
男「えっ? 入院してるの知らなかったか? 学校で入院したこと、話してたけど……」
友「うん、知らなかった。休んでたかも。……それで、何号室? 今度、お見舞いに行くよ。」
男「あっ、えっと。302号室。今日は、もう、面会時間終わってるからな。」
友「……分かった、ありがとう。それじゃあ、私はもう帰るね。また明日。」
男「ん。じゃな、また明日。」
友「……」
友「……す。」
友「男に近寄る屑は……」
友「……殺す。殺す。殺す。殺す。」
友「男の事は私が一番好きだし、男も私が一番好きなのに……男は騙されてる……」
友「男……」
友「男は私と友達になってくれたよね? いじめられてるとこを助けてくれたよね?」
友「私の事大好きなんだよね? 私も大好きだよ……ふふっ……」
友「だから勿論、悪いのは全部、幼馴染とか言う屑なんだよ? 男は何にも悪くないよ?」
友「ふふっ……男の驚いた顔も、呆れた顔も、嬉しそうな顔も、楽しそうな顔も。」
友「泣いてる顔も。」
友「全部、大好きだから、私が受け止めてあげるからね? 男が壊れても。ふふっ……」
男「……」
男「! ……何か寒気がした。……風邪かな?」
男「……」
男「今日のご飯、何だろうな。シチューって言ってた気がするけど。」
男「……」
男「幼馴染……」
男「……」
幼馴染「あっ、男。今日も来てくれたんだ。」
男「まぁ、多分、毎日来るよ。調子はどうだ?」
幼馴染「良い感じだよ! お医者さんも、助かるってさ。……えへへっ!」
男「嬉しそうだな。」
幼馴染「……男は嬉しくないの?」
男「嬉しいに決まってるだろ! うりうり!」
幼馴染「ぁ……あ、頭撫でないでよ、もう子供じゃないんだから。……恥ずかしいよ。」
男「嬉しいに決まってるだろ……」
幼馴染「えっ? あっ、男、泣いてるの? ちょっと、助かるんだよ?」
男「助かるから泣いてるんだろ……幼馴染……」
幼馴染「ちょ、ちょっと、私まで涙が出てきちゃった。……ほら、泣かないで。……男。」
男「……幼馴染も泣いてるし。」
幼馴染「……先に泣いたのは男の方だし、私は良いの。」
男「幼馴染……良かった……ほら、探偵のミス、考えよう。」
幼馴染「あっ、そのこと……っ。」
男「幼馴染?」
幼馴染「……っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ。お、とこ……」
男「幼馴染!? お、おい、幼馴染!?」
幼馴染「はぁ、はぁ、ナースコール、はぁ、はぁ……っ!」
男「ナースコール、これか……! おい、しっかりしろ、幼馴染!」
幼馴染「……はぁ、はぁ……男……はぁ、はぁ……」
医者「うん、まぁ、発作みたいなもんだよ。安心して生命になんら問題はない。」
男「……ふぅ。そうですか、良かったです。」
医者「や、ただ、まぁ、明日手術をしないと危ない。と言うより、明日手術を必ずしなければならない。」
男「えっ?」
医者「発作の所為で幼馴染さんの体は随分と弱ってる。まぁ、手術に耐えられるかは微妙だが、発作の頻度も多くなってきているし……」
男「……次に発作が起きると……まずい?」
医者「まぁ、そう言うこと。」
男「幼馴染は、大丈夫なんですか?」
医者「まぁ、そう難しい手術でもないし。全力は尽くす。だから、手術前に発作さえ起きなければ、言っちゃ駄目なんだけど、確実と言えるよ。」
男「発作は起こりそうなんですか……?」
医者「まぁ、それに関しては何とも。……神様に祈るしかないね。」
男「幼馴染……」
医者「安心しなさい。不安になるのは、手術をする私の仕事だ。笑顔を見せるのが君と、幼馴染さんの仕事だ。」
男「先生……ありがとうございます……」
男「……」
男「明日の昼……手術前の面会……」
男「……明日は学校を休もう。単位は足りてるし、って足りてなくても行くだろうけど。」
男「……幼馴染。」
男「大丈夫だよな……?」
男「……」
男「……帰ろう。」
友「こんばんは。素敵な個室だね。」
幼馴染「……えっ、あれ、友ちゃん? こんな時間に、何で? 夢でも見てるのかな?」
友「夢じゃないよ。」
幼馴染「じゃあ。」
友「さよなら――」
『男君? 急いで来て!』
男「幼馴染のお母さん? 幼馴染がどうかしたんですか!?」
『……取り敢えず、急いで来てあげて! 幼馴染、あなたを待ってるわ。』
男「……切れた。くそっ!」
男「そんな、嘘だろ、幼馴染……?」
男「発作が起きたのか……?」
男「くそっ……! 急がないと……!」
医者「男君……」
男「はぁ……! はぁ……! 幼馴染は……?」
医者「……生きてはいる。けど、もう、虫の息だ。」
男「はぁ……何で、……何でですか? はぁ……発作が起きたんですか……? 幼馴染は……?」
医者「夜の間に誰かが幼馴染君の点滴を外したのか、もしくは外れたのか。今朝には点滴が外れていてね。看護婦が言うには最後の見回りの時には外れていなかったらしい。」
医者「幼馴染さんの部屋は三階で、窓からの侵入は不可能だし、廊下に監視カメラもあったが、誰も写っていなかった。だから事故――」
男「俺はそんなこと訊いてない!!」
医者「……」
男「あっ……すいません……」
医者「いや、良いんだ。」
男「……幼馴染は、助かるんですか?」
医者「……すまない。」
男「――!」
医者「……もう長くは持たない、早く行ってあげてくれ。……男君。……本当にすまない。」
男「……頼む。頼むから。……誰か嘘だって言ってくれっ!」
幼馴染母「男君……」
男「はぁ……はぁ……幼馴染!」
幼馴染「……男。」
男「なぁ、嘘だろ? お前が死ぬわけないよな……? 小説だって書いてないじゃないか……!」
幼馴染「……男。」
男「おい! 俺だけじゃあ、小説、書けないよ! お前の事、馬鹿にしたけど、小学校の頃、俺国語一だったんだぞ?」
幼馴染「……男。」
男「俺はここだよ……! 何か言ってくれよ、馬鹿にしてくれよ……!」
幼馴染「……」
男「待てよ……待っ。」
幼馴染「……男……あの……ね……」
男「! あぁ、どうした?」
幼馴染「男探偵が……犯した……ミスは……」
男「……」
幼馴染「……じつは……ななつ……め……があって……」
男「幼馴染……!」
幼馴染「……おとこたん……ていの……おかした……ななつめのみすは……」
男「嫌だ……行かないでくれ……幼馴染……」
幼馴染「……とある……少女に……好きになられて……しまったことなんだよ……」
幼馴染「男……大好……き……だ……ょ……?」
男「待ってくれ! 幼馴染……! 俺も……! 俺も……お前の事が――
記者「先生。今回の新作は、前作、前々作に続く主人公の、もう一つのミス。と言うことで。」
「はい。」
記者「一作目から大反響を呼び、二作目、そして新作と、順調ですが。やはり今回は、一つのミスをピックアップすることで大きな変化を?」
「そうですね。」
記者「また、今回はまた一風変わった推理小説、と言うことで。主人公に春の予感。」
「ははっ、まぁ。」
記者「主人公の探偵が少女に好かれてしまった。それが今回のミスだと言うファンもいますが、実際のところは……?」
「おしいですね。」
記者「あー、やはり違うんですか。しかし、おしい、と?」
「……今までの作品でミスの明言は避けてきたんですが、今回の作は特別です。」
記者「では、今回のミスは?」
「はい。勿論、少女が探偵を好いてしまったことはミスなのですが。」
「今作での探偵の最大のミスは――」
男「探偵も、少女の事を、愛してしまった事です。」
end
終わり。閲覧支援超感謝です。
次回作をお楽しみに。
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