隣人「めりーくりすまーす」パンパン(97)

【1】

男「僕の家で何やってんすか」

隣人「クリスマスパーティーだよ、少年」

男「少年ってのやめてください、僕たちそんなに歳変わんないでしょう」

隣人「私はピッチピチだからな」

男「別にそういう意味ではないです。というかさっき使ったクラッカーさっさと片付けてください」

隣人「うーい」

【2】

男「てかどうやって入ったんすか」カタヅケー

隣人「何を言ってるんだい?合鍵をくれたのはキミだろう?」カタヅケー

男「え?は?いつ?」

隣人「先週酔っ払ったとき」

男「覚えてねぇ……」

隣人「まぁそりゃあ私がじゃんじゃん飲ませたからね」

男「故意だろおい」

隣人「滅相もない」

【3】

隣人「というか見たまえ、ほれほれ。これ。サンタ帽。可愛いだろう」

男「そーですねー」

隣人「……キミ、モテないだろ?」

男「美人に合鍵を知らぬ間に奪われ、知らぬ間に押し掛けられる程度にはモテますよ」

隣人「はっはっは、私以外にもそんなやつがいるとは、幸福者だなキミは」

男「ぜってぇ故意だろ」

隣人「何のことかな」

【4】

男「……というかなんすかこれ、こたつの上に料理めっちゃありますけど」

隣人「喜べ。クリスマスにぼっちの少年に、真心を込めたおねーさんの手料理だぞ」

男「なんかめっちゃご馳走並んでますけど。どう考えても暇人の所業ですよねこれ。おねーさんこそクリスマスに暇を持て余してますよねこれ」

隣人「フッ……愛、だよ」

男「重いわ」

隣人「乙女に重いは禁句だぞ、少年」

男「意味が違います」

【5】

男「……ふぁー。まぁありがとうございます。クリスマスだし作るのもなんだかなぁ、夕飯何か買いにいかなきゃなぁとは思ってたので助かります」

隣人「嫁にしたいだろう?」

男「そういう言動がなければ、是非」

隣人「美人デレデレなんだぞ、もっと喜びたまえよ、贅沢だなぁ」

男「冗談と本気の境界が良くわかんないとこが苦手なんですよ」

隣人「全て冗談だ」

男「デレデレの意味を成してねぇじゃねぇか」

【6】

隣人「今日はイヴなわけだが」

男「あっ。このスープ美味しいですね。今度作り方教えてくださいよ」ズズー

隣人「話聞いてるか?今日はイヴだな?……そのスープはまた今度作ってレシピと一緒に差し入れてあげるよ」

男「ありがたいっす」

隣人「ときに少年、明日は空いてるかね?」

男「明日は彼女がバイト休みなんでデートです」

隣人「」

男「冗談です(わかりやすい人だなぁ)」

【7】

隣人「イルミネーションを観に行こう」

男「ベタですね」

隣人「他に何か希望でも?」

男「布団でだらだらしたいです」

隣人「添い寝なら可」

男「いったいどこを目指してるんだ」

隣人「嫁」

男「迷いがない」

隣人「100%冗談と割りきってるのでバンバン言えるな」

男「救いもない」

【8】

男「しかしイルミネーションとかあれですよ、カップルわんさかいますよ。辛くないですか?」

隣人「それは盲点だった」

男「そこ以外にどこが見えていたんですか」

隣人「イルミネーションをイチャイチャしながら眺める理想の私」

男「現実に戻ったときつらいですよねそれ」

隣人「いっそのこと現実に戻らなきゃいいんじゃないか?」

男「ダメだこの人、理想が眩しすぎて他に何も見えていない」

【9】

隣人「ときに少年、あの娘のことはもう吹っ切れたのかい?」

男「いきなりですね」

隣人「私が来たのは、そういうところを心配してだったりするのさ。クリスマスなんてまさに別れた元カノのことを思い出して鬱になってたりしそうだろう?」

男「……誰かさんがかなり励ましてくださったので大丈夫です。しかし、あのときは迷惑をかけてしまいましたね」

隣人「はっはっは。私はやけ酒に付き合うのが好きだから、気にしなくていいんだよ」

男「なんというか、良い趣味してますね」

【10】

男「"辛いものがあるなら見なければいい。必要ならともかく、元カノのことなんて逃避してしまうのが一番だ"」

【10】

男「"辛いものがあるなら見なければいい。必要ならともかく、元カノのことなんて逃避してしまうのが一番だ"って言葉、結構役に立ってますよ」

隣人「"でも、大切な思い出です。忘れられませんよ"って言ったのはどこの誰だったかな」

男「いえいえ、元カノの件に限らず、ですよ。色々なものから逃避することに強く抵抗を感じていたんですけど、なんというか。今ではつまらない意地だったんだなって思えます」

隣人「なんだか私がキミを堕落させているような気がするな」

男「責任とってくださいね?」

隣人「やけ酒ならいつでも付き合うから辛いときは隣の部屋のドアに壊れない程度にストレスをぶつけると良い」

男「あのときの僕のノックそんなにうるさかったんですか……」

隣人「相当」

【11】

隣人「というか、私としては忘れられないとのたまうキミへの"忘れられないなら見方を変えることだ"って言葉の方が役に立ってるんじゃないかと思っていたんだがな」

男「"人は何かの一面だけしか見えていないものだよ。他の面を見たいなら、状況を変えるか、自分の視点を変えるかだ"ですか」

隣人「今思い返すと、やけ酒しながら言うもんじゃないね。もっと慰めるのに徹するべきだったかもしれない」

男「いえいえ、真剣に一緒に悩んでくださってたので、それなりに居心地はよかったですよ」

隣人「それならよかった。じゃあご馳走も食べ終えたことだし、モンハンしようか」

男「先に食器洗いです」

隣人「えー。めんどくさーい」

男「僕が洗うので隣人さんは食器拭いてください」

隣人「……新婚生活みたいだね!」

男「口の横、ケチャップついてますよ」

隣人「舐めとって!」

男「殴りたいです」

【12】

隣人「見たまえ少年、エプロンもサンタ柄だぞ」キュッキュッ

男「少年じゃないです。てかそれ今日一日のために買ったんですか……?」ジャカジャカ

隣人「無論。……いや語弊があるな、来年のクリスマスも使うぞ。たぶん」キュッキュッ

男「……食器洗いより調理風景を見たかったですねその姿」ジャカジャカ

隣人「なんなら今からつまみでも作ろうか?酒なら私の部屋にそこそこあるぞ」キュッキュッ

男「あー。後で良いですよ。まだそんなに夜も更けてませんし」ジャカジャカ

隣人「男くんったら……私を夜までおうちにあげるつもりなのかしら……」キュッキュッ

男「いつも夜まで居座ってるでしょうが」ジャカジャカ

隣人「クリスマスプレゼントは私だからね」キュッキュッ

男「サンタクロースに返品します」ジャカジャカ

隣人「エプロンを見たまえ。私がサンタだ」キュッキュッ

男「その下を見ろ。めっちゃ部屋着だぞ」ジャカジャカ

隣人「裸エプロンにしておくべきだったか」キュッキュッ

男「そういう問題じゃないです」ジャカジャカ

【13】

隣人「あちゃー。レウスめ……別エリアに飛ぶのか……」

男「せっかく罠張ったんですけどね」

隣人「まぁ仕方ない。さっさと追おう」

男「ところで隣人さん」

隣人「なんだね」

男「いまどき2ndGやってるのなんて僕らくらいですよね。きっと今晩クロスを貰える子供多数ですよ」

隣人「私はね、モンハンってシステムとモンスターをコロコロ入れ換えてるだけでどれやってもそこそこ楽しめると思うんだよ。だとしたら一番楽しんだ2ndGにどっぷり浸かっていたい。というか二人だけしかやってないゲームとかそれはそれでロマンがあってよくないかい?」

男「よくわかりません」

隣人「まぁゲームしながらだしな」

【14】

隣人「最近はポケモンもやろうと思ってるんだ」カチカチ

男「へぇ……モンハンもそうですがゲームタイトルだけは結構流行に乗ってる感じはしますが、ポケモンは何をやるんですか?」

隣人「普通に最新作だよ。メガシンカもやってみたいし」

男「わーふっつーですね……」

隣人「ときにキミはルビー派かい?サファイア派かい?」

男「うーん。買うならルビーですかね。昔買ってたのがルビーでしたし」

隣人「じゃあルビーはキミで、私はサファイアを買うことにするよ。」

男「はい……はい?」

【15】

男「そういえば前にやけ酒したときに話を聞いてもらったお礼をするって言ったような気がしますが何もできてませんね」

隣人「……おい男くん!」

男「は、はい?」

隣人「天鱗が出たぞ」

男「あの、話聞いてました?」

隣人「やっと……やっと出たぞ!」

男「いやまぁ確かにここ最近結構レウスばっかやってましたけど」

隣人「うぉおおお!!!」

この書き方、まさか雨宿りの人?

【16】

隣人「そういえば少年、夕方はどこへ行ってたんだ?夕飯などはまた別に買いに行くつもりだったみたいだが」

男「写真を撮りに行ってたんですよ、丁度暗くなった頃でしたし。ほら、駅とは反対方向ですけど高級住宅街があるじゃないですか。あちらの方面にちょっとだけ」

隣人「あぁ、あの辺りはこの季節になると家をイルミネーションでよく飾ってるらしいね」

男「あれ、見たことないんですか?歩いていける距離なのに」

隣人「キミもさっき言ったとおり、駅とは反対だからね、あまりあちらには行かないのさ」

男「むむ。もったいないですね。写真観ます?」

隣人「む、そうだな」

【17】

隣人「キミがカメラ好きなのはいつからか知っていたけれど、キミの撮った写真は初めて見るな」

男「綺麗でしょ」

隣人「うむ……そうだね。綺麗だ。好きだよ」

男「そういえば明日どこかのイルミネーションに行きたいとか言ってましたね。イルミネーション好きだったんですか」

隣人「私は確かにイルミネーションは好きな部類だけど、さっき言った好きだというのはイルミネーションじゃなく、キミの写真だよ。まぁ素人目だけどね」

男「それは……ありがとうございます」

隣人「おや、キミでも照れることがあるんだね」

男「出会った当初は照れっぱなしでしたよ。隣人さん、変人ですから」

隣人「ふふっ、褒め言葉として受け取っておくよ」

【18】

男「そういえば隣人さん、美人なのにクリスマスはひとりなんですね」

隣人「まぁ大学仲間でクリスマスパーティをやるらしいんだけれどね」

男「行かないんですか?」

隣人「うーん。なんというか、片手で足りない人数になるとワイワイするのはちょっと苦手でね」

男「ははぁ、よくわかんないです」

隣人「まぁ、クリスマスというのは込められる感情が楽しみであれ、憎しみであれ、誰にとっても特別な日だ。なにもしないのはもったいないとは思ってるんだけどね」

男「ふぅーむ……」

【19】

『ときに少年、明日は空いてるかね?』

……。

『イルミネーションを観に行こう』

……。

『私が来たのは、そういうところを心配してだったりするのさ』

……。

『私はやけ酒に付き合うのが好きだから、気にしなくていいんだよ』

……。

『辛いものがあるなら見なければいい』

…………。

『人は何かの一面だけしか見えていないものだよ。他の面を見たいなら、状況を変えるか、自分の視点を変えるかだ』

【20】

男(隣人さんのこぼした言葉を反芻、咀嚼する。)

男(僕はクリスマスの"何"が見えていて、"何"が見えていないのか。)

男("何"を求めて、"何"を避けているのか。

男(隣人さんは何故ここにいるのか。何故僕は隣人さんの誘いに乗らないのか。)

男(答えはすぐに出た。)

男(別に僕が賢いわけじゃない。きっと答えが単純だったから。)

男(……いや、違うな。きっと素直に考えられるようになったのは、この人のおかげだろう)

【21】

男「隣人さん。僕、意地を張りすぎてたみたいです」

隣人「……何にだい?」

男「何、何に、ですか。そうですね。僕自身に、ですかね。元カノのこと、吹っ切れてたつもりだったんですが、そんなことなかったみたいです」

男「僕は、元カノとの思い出を上塗りしたくなかっただけで、それだけの理由でクリスマスを避けていたのかもしれません。ずっとあのクリスマスが僕の中のクリスマスにしておきたかったんだと思います」

隣人「ふむ。そうか。なるほど。それは仕方ないことだと思うよ。世の中、きっぱり諦められるものの方が存外少ないものさ。じゃあどうする?今年は

男「待ってください。それ以降は僕の口から、言わせてください」

隣人「……うむ。そうか。聞いておくよ」

男「……色々思うところはありますが。きっと大事なのは結論です。」

男(心臓がバグったみたいに脈を打つ。これは誘うのが億劫だとか、照れくさいだとか、そういうのじゃなくて。)

男(過去を上塗りすることに対しての抵抗が、勇気のなさが、女々しい執着が。心臓を突き動かして口の中をカラカラにする。)

男(全部全部、なかったことにするために。緊張を解すために。僕は大きく息を吸い込む。きっと、これが。)

男「隣人さん、よかったら僕のクリスマスに付き合ってくれませんか?イルミネーション、観たいです」

男(きっと、これが。前に進むための最適解なんだろう)

隣人「奇遇だね、私も明日は暇なんだ。私でよければお付き合いするよ」

【22】

隣人「クリスマスへの憎しみも楽しみも、結局のところ目線の違いでしかないのだよ」

男「楽しみたければ行動を起こすしかない、目線を変えるしかない。でしょう?」

隣人「正直言うと、やけ酒のとき、似たようなことを言ったこと、言うべきじゃなかったんじゃないかって私は結構気にしてたんだ。だから、今回も言おうか悩んでた」

男「気に病まなくて大丈夫ですよ。僕はそれなりに隣人さんと、その言葉に助けられてます」

隣人「視点を変えるべき、なんてのは言うのは簡単だけど、するのは難しいことだからね。変えられなくてもっと悩んだらどうしようと思ってたのだが……いらない心配だったみたいだ」

男(視点が変えられるのも他ならぬあなたのおかげなんですよ……という言葉は飲み込む。そして、代わりに。)

男「ところでそのエプロンいつまで着けてるつもりですか」

隣人「せっかく買ったんだからね!クリスマスが終わるまでさ!」

男「頭が……おかしい……!」

【23】

隣人「……おはよう」

男「隣人さんって何気に朝めっちゃ弱いですよね」

隣人「私は朝を人類最大の敵だと思ってる」

男「隣人さんと結婚しても朝起きたら味噌汁が食卓に並んでる光景なんかは諦めた方がよさげですね」

隣人「安心しろ、徹夜して朝食作ってから寝る」

男「ダメ人間の極みじゃないですか」

【24】

男「ところでここってもうバリバリ外なわけですが」

隣人「確かにそうだな」

男「そのサンタ帽とエプロンはちょっと恥ずかしすぎませんか……?」

隣人「言っただろう!!クリスマスが終わるまで私はこれを着けると!!女に二言はないぞ!」

男「なんというか女さんがクリスマスに一人な理由がさらにわかった気がします」

 勉強のために飲んだエナジードリンクがここに発揮され、やたらめったら筆を進めてしまいました。
 勉強は全く進んでおりません。

 クリスマス嫌いを前向きにする話です。
 とはいえ、もう前向きになったのでこっから先の当日の話は引き続き四コマみたいな適当な感じで進めます。

 終了予定はクリスマスだけに25だったのですが、12+25で37あたりにしようかなと思います。しかしまぁ目安程度で、基本未定です。

 あ、あと申し訳程度ですがTwitterアカウントもありますので、よかったらフォローしてください。そんなにつぶやいてませんけど……!
【@429_snowdrop】

 それでは、引き続きよろしくお願いします。


>>21
そうです。今まで何個かSS投下して途中で筆を投げてますけど、指摘されたのは初めてです。よくわかりましたね。探偵とお見受けしました。弟子にしてください。

【25】

隣人「そういえば少年、そのカメラ。持ってきたんだな」

男「ええ。イルミネーション、また撮ろうかなって。このカメラも実は少し前まで実家に預けてまして。久しぶりなんですけどね」

隣人「別に実家に置いておくもんでもないだろうに、どうしてだい?」

男「こっちに引っ越してきてカメラも一緒に持ってきたんですけど、その後すぐに別れてしまって。景色やらをバックに元カノを撮るのが好きだったのがフラッシュバックしちゃってちょっと辛かったんです」

隣人「確かキミが引っ越してきたのは春先のことだったな。カメラを見なくなったのは……夏前後だったか?」

男「そう思うと最初の挨拶からやけ酒までそんなに長くないというか、僕たちまだ半年ちょっとの付き合いなんですね」

隣人「まぁ仲が良いのは良いことじゃあないか。それじゃあ、今日はイルミネーションをバックに私を撮ってもらおうかな」

男「……そうですね。喜んで」

【26】

隣人「そういえばなんだが、私はそもそもこうやってイルミネーションを観に行ったことは初めてかもしれないな」

男「へぇ、珍しいですね。友達や恋人と行くことはなかったんですか?」

隣人「クリスマスに遊園地や街なんかに出ることはあるし、そこでイルミネーションを目にすることもあるけれど、イルミネーションを目的としてどこかに出向くというのは……記憶にないな」

男「そう言われてみるとイルミネーションを目的に、というのは数えるほどかもしれませんね」

隣人「数えるほど、ということはいくらかはあるのかい?」

男「まぁ、数えるほどですけど。元カノがよく僕を連れまわしたので」

隣人「ふむ。なるほど」

男「そんなあからさまにしまった、なんて表情しないでくださいよ」

【27】

隣人「そういえばうちの押し入れにこんなものがあってね」

男「……隣人さんの写真ですか?」

隣人「例のやけ酒よりさらに前にキミに撮ってもらった写真だよ」

男「あれ、撮ったことありましたっけ?」

隣人「……なんだ。覚えていないのかい?私はそこで撮ってもらったからこそキミにカメラ趣味があることを知ったのだが」

男「……そんなにムスっとしないでくださいよ」

隣人「ぶーぶー」

【28】

男「ところでいよいよもうすぐ駅なわけですよ」

隣人「それがどうかしたかい?」

男「ほんと恥ずかしいんでそのエプロンと帽子そろそろ脱いでください」

隣人「ぶーぶー」

男「さっきからすれ違う人の目線が、目線が痛いです。というか隣人さんがイタいです」

隣人「隣人さんは偉大です」

男「脱がしますよ」

隣人「やだ……えっち……」

男「殴りますよ」

【29】

隣人「ぶーぶー」ヌギヌギ

男「ぶーぶーじゃないです。」

隣人「むー……というか駅まで歩いてきて初めて気がついたが駅でまともに一緒にいるのは初めてだな」

男「すれ違って挨拶する程度ですもんねぇ。おつまみなんかをスーパーまで一緒に買いに行くことはありますが、駅よりは微妙に手前にありますし」

隣人「そう思うと、仲が良いようでやってないことも多々ある、不思議な関係だね」

男「まぁまだまだ付き合いは短いですから」

【30】

男「僕、こうして電車を待つの結構好きなんですよね」

隣人「それはなんというか、奇特だね」

男「僕が消極的故にわざわざ駅に来る用事というのは自発的な、楽しみなものが多いからでしょうか」

隣人「あぁ大学には自転車だっけ」

男「ええ、大学との距離でアパート決めましたし。ついでに言えば高校時代も自転車通学でしたよ」

隣人「隣に住んでるのが私のような美人でよかったな」

男「感無量です」

【31】

隣人「私は駅というものがそもそも苦手な部類でね」

男「そうなんですか?」

隣人「人混みというものをそもそも好かないんだよ、私はね」

男「僕はちょっとした喧騒がある方が落ち着きますけどね。自分自身が日常風景に溶け込んでるような気がして」

隣人「キミはなにかに追われてるのか……?」

男「レポートの山に」

隣人「それは……逃げたいな……」

【32】

ダァーシェリァスゴチューックダサイ

隣人「流石にクリスマスは人が多いな」

男「座れそうにないですねぇ……なんとなく隣人さんって電車似合いませんね。免許とか持ってないんですか?」

隣人「免許は持ってるけどペーパードライバーだよ」

男「なるほど。いつか隣人さんの運転する車にも乗ってみたいものです」

隣人「いいだろう。しかし私は絶望的な方向音痴だからな。私の車に乗ったら最後、人の生息する場所に辿り着けると思わないことだ」

男「この電車が脱線して未開の地に突っ込まないことを願います」

隣人「もうそれは脱線じゃなくて銀河鉄道化かデ◯ライナー化してるだろう」

【33】

ガタンゴトン

男「隣人さんって変わってますよね」

隣人「そうかい?そもそも変わってない人間なんていないだろう?」

男「僕は普通の人間のつもりですけどねー」

隣人「女々しく元カノを引きずる人間は人間らしいが普通かと問われると疑問だよ」

男「もうなんか隣人さん僕の傷口を抉ることに関して吹っ切れてますよね」

隣人「別に責めてるんじゃないさ。人間が真に持つべきは普通さとか正しさじゃなくて人間臭さだと思うよ、私はね?」

男「褒め言葉として受け取っておきます」

隣人「それがいい」

【34】

隣人「そもそも人間生きてるうちに世界の方からねじ曲げられるもんだと思うよ?」

男「僕が隣人さんに励まされてるのもある意味ねじ曲げのひとつなのかもしれませんね」

隣人「どうせねじ曲げられるのなら、自分の望む方向にねじ曲がりたい。私はそう思うからこそ、昔から普通の価値観というのは客観的に物事を見るための道具でしかないと思うことにしてあるよ。変人万歳」

男「隣人さん、友達いなさそうですね」

隣人「失礼だね、キミがいるよ」

【35】

プシャー……ヘノノリカエハサンバンセン……

男「あっ乗り換えですよ」

隣人「人生を乗り換えたい」

男「何言ってるんですか美人の時点で勝ち組でしょ、ほら行きますよ」

隣人「生まれ変わったらサンタになりたい」

男「まさかクリスマスを楽しむためでなくサンタへの憧れであの格好をしていたのか……!?」

コメディとかギャグ入れたいんだけどなんか真面目要素ばかり筆が進んでしまうし37で終わんねぇなこれ(漠然)

おまけNo.1【挨拶】

男「あのー。隣に引っ越してきた男です」

隣人「ん、よろしく」

男「あ、これどうぞ」つニューヨクザイ

隣人「ん、ありがとう」

男「えっと……それでは……」

隣人「何か困ったことがあったら遠慮なく頼っておくれ」

男「了解です。よろしくお願いします」

ガチャンッ

男(めっちゃ美人が隣人とかツイてるなぁ。なんか無口でクールだったし。よっしゃー。……あっでもテンション上げすぎたら彼女に申し訳ないな)

隣人(最後にそれっぽいこと言えたから次第点だな……人見知り卒業も近いぞこれは)

おまけNo.2【差し入れ】

隣人「これ……作りすぎたんだ……」

男「オムライスって作りすぎちゃったりするんですね……ありがとうございます……」

隣人「お皿は洗わなくても構わないから、食べ終わったら返しにきておくれ」

男「了解です……」

バタンッ

男(なぁにこれぇ……!?なんで俺の名前がケチャップで書かれてるんだよ……?絶対余り物じゃないだろこれっ……?)

隣人(これは私、確実に人見知り脱却の道を進んでいるぞ……天才では……)

ネットにどっぷり浸かってきた人生だったので次第点って言葉、普通にあると思ってました。不覚。及第点及第点。

【35】
コンチャースチャースオネシャース

男「さて……えーっと。電車はもう乗りませんがちょっと歩くみたいですね」

隣人「ほう。電車は苦手だから助かるな。……とはいえ流石にカップルが多いな」

男「見るからにしょぼくれないでください。珍しいみたいですしね。この手のイルミネーション祭り」

隣人「そこでパンフレットが配ってあったぞ。"広く参加募集をかけており、様々な団体がイルミネーションで作品を作っている"……とな。ふむ。詳しくはないが、さっぽろ雪まつりのようなものか?」

男「僕も詳しくはないですけど、イメージとしてはそんな感じなんですかね?色々作られてるみたいですよ。しかしさっぽろ雪まつりも色んなものが作られていてすごい人気ですよね。いつか観に行きたいです」

隣人「流石に北海道は遠いなぁ」

男「流石にそこまでは着いてこなくて大丈夫です」

やらかしたー。36だorz

【37】

男「しかしこうカップルに囲まれると気が滅入りますね」

隣人「他人からすれば私たちもそんなカップルの有象無象のひとつだと思うがね」

男「あぁ、確かに」

隣人「そこはもうちょっと照れるとかろじゃないか?」

男「いつもの冗談に慣れすぎたかもしれません」

隣人「反省しておこう」

【38】

男「知り合いが大学のイルミネーションを眺めて"電気を無駄に消費して意味もない照明をギラギラさせて、それを眺めるなんておかしなもんだね"なんてぼやいてましたが、こうやって溢れてる人がみんなそんな無駄を楽しみに来てるんだと思うと不思議なものですね」

隣人「そもそも娯楽のようなものの価値は無意味が故に宿るものだよ。そこに意味があってはならないんだ。無意味だからこそ割りきれ、色々なものから解放されるのさ」

男「世の中、不思議だらけです。無意味なものに浸ってるうちにかけがえのないものになってくんですから」

隣人「無意味だからって無駄ではないさ。無論無価値でもない。無意味なものに価値をつけていく過程そのものが人生の本質なのかもしれない」

男「難しくてよくわかりません」

隣人「まぁ、今はそれでいいさ」

【39】

隣人「おっ。そろそろ街路樹もイルミネーションに染められてきたぞ」

男「なんだかんだで毎年似たような光景を観てますが、観る度にクリスマスの季節なんだなぁってひしひしと感じさせられますね」

隣人「綺麗なのだから一年中光らせておけばいいのにな」

男「夏には花火がありますからね。代わりばんこといったところでは?」

隣人「ふふ。風物詩というものも魅力のひとつかな」

男「そういえば」カチャ

隣人「おや、もう撮るのかい?」

男「出しただけです。近そうですからね」

隣人「そうk(パシャッ)……何故今私を撮った?」

男「なんとなくです」

隣人「なんとなく?」

男「なんとなく」

【40】

隣人「いっそクリスマスを謳歌するなら思いきってサンタセットだけじゃなく髪にイルミネーション巻いてくるべきだったかな」

男「やめてください」

【41】

隣人「入り口もイルミネーションでキラキラだな」

男「ここまでイルミネーションに囲まれるってのもそうないかもしれませんね」

隣人「よし、じゃあここでも一枚撮ろう!」

男「こういうのって定番ですよねー。はいちー「いえーい!!!」カシャ

男「ノリノリですね……あっ」

隣人「ん?……どうした?」

男「……これいわゆるデジイチというやつなんですが、昨日近所を撮りに行くのに家で余ってたSD挿したままなの忘れてました」

隣人「つまり?」

男「撮れてあと二十枚程度ですかねぇ」

隣人「……十分じゃないか?」

男「……ですかね?」

【42】(0/20)

隣人「私がおでんについて語るか、キミが元カノについて語るか、どっちがいい?」

男「なんで最初から話題の最終兵器みたいな二択なんですか。まだ入場券すら手に入れてませんよ」

隣人「ほら、こういう待ち時間って話すこともなくて気まずくなるポイントだろう?」

男「だからって最終兵器召喚するほどでもないです」

隣人「にしてもあれだな。前売り券を買わなかったのが運の尽きだな」

男「まぁ行くって決まったの昨日のことですしね」

隣人「どうせだしこの長蛇の列も撮っとく?」

男「ないです」

【43】(0/20)

男「やっと入れましたね」

隣人「私のおでん愛は十分に伝わったかな」

男「八割聞き流してましたけどね」

隣人「おー。見ろ、雪だるまだぞ」

男「今僕の話を十割聞き流しましたね。雪だるまというかイルミネーションだるまですね」

隣人「イルだるまと名付けよう」

男「浸透しないと思います」

隣人「ぴーすぴーす!」

男「撮られるの好きなんですか?」

隣人「好きじゃない!」

男「どういうことだ……」カシャッ

【44】(1/20)

隣人「私はね、写真を撮られるのが好きなんじゃなくて、写真を撮っているキミの姿が好きなんだ」

男「あー。かっこいー」

隣人「なんだい、適当だな」

男「適当なことを言われたものですから」

隣人「私は普通に言ってるというに。キミはいつもどこかぼーっとしていて、何を楽しんでるのかよくわからなかったからな。そういう明確な趣味というのは……なんというか、見てて安心するよ」

男「なんというか……すみません」

隣人「何がだい?」

男「心配かけっぱなしのような気がして」

隣人「謝るならそうだな、乙女とのデートで浮かない顔をしている今のキミについて申し訳なく思っておくれ」

【45】(1/20)

隣人「あっ。あそこ。クリスマスツリーだぞ」

男「イルミネーションの定番ですね」

隣人「とても大きいから、ビッグイルツリーと名付けよう」

男「絶対に浸透しないです」

……パシャッ

【46】(2/20)

隣人「イルiPh◯neだ」

男「イルミネーションをイルって略すのはもう決定なんですね……何を思ってiPh◯neを作ろうと思ったんでしょうね、これ。画面割れてますし」

隣人「作成者のiPh◯neが割れた悲しみとかが込められてるんじゃないか?」

男「そういえば隣人さんはガラケーですよね」

隣人「このヒンジのところのワンタッチで開くボタンが好きなのだよ」パカパカ

男「ヒンジが壊れますよ……」

隣人「どうせだから私の愛しのガラケーと一緒に撮ってもらおう」

男「悲しみのツーショットですね」

【47】(3/20)

隣人「……少年、少年」

男「少年ではないです。どうかしました?」

隣人「何気なくパンフレットを眺めていたんだが、あと30分ほどでこの辺りからイルミネーションパレードが始まるらしい」

男「そこはイルミネーション略さないんですね。イルミネーションのパレードですかぁ。あと30分、どうします?」

隣人「……お腹が空いたな」

男「そういえばお昼、なんにも考えてませんでしたね」

隣人「デートとしてはナンセンスだな」

男「会場内に食べられそうなとこ、どこかないんですか?」

隣人「えーとだな……いくつかあるな。何が食べたい?」

男「ここには戻ってこなきゃいけないわけですし、近いとこでいいんじゃないですか?」

隣人「そこはこう、クリスマスらしいごちそうだとかをだなぁ」

男「ごちそうなら昨日食べましたよ、とびきりのを」

隣人「確かに」

【48】(3/20)

男「スモークターキーレッグ……なんというか、遊園地に来てる気分になりますね、これ」

隣人「どちらかというとクリスマスクリスマスしてていいんじゃないか?」

男「ここらは他にも色々屋台ありますけど、他に何か食べます?」

隣人「そうだな、おでんを探そうか」

男「デートのデの字もないセンスですよねそれ」

隣人「デートらしさより私達らしさを突き詰めるべきなのさ」

男「手のひら返し尋常じゃねぇ……」

【49】(3/20)

隣人「む。割りと既に人だかりができているな」

男「まぁそもそも人が多いですしねぇ」

隣人「よし、肩車しよう」

男「しません」

隣人「ぶーぶー」

男「あー、ほら、ここならギリギリ見えますよ」

隣人「ぶーぶー」

【50】(3/20)

テンテケテケテケテンテカテカテカ……♪

男「なんですかあのマスコット」

隣人「イルカのイルミカくんらしい」

男「イルミカくん……。なんというか……微妙ですね……。なんで全身にイルミネーション巻いてるんでしょう。というか無理やり着ぐるみにしてますよねあれ。イルカから謎の脚が生えてますよねあれ」

隣人「それなりに可愛いと思うぞ……?」

男「……あ、ほら、後ろにでっかいイルミカくんのイルミネーションもありますよ」

隣人「イルミネーションは台車に乗せて移動させてるのか」

男「脚が生えてなくて安心ですね」

パシャッ

【51】(9/20)
テケテケテンテケテケテケテケテン……♪

男「……今度はクジラですか。迫力ありますね」パシャッ

隣人「カニやイソギンチャクなどが来る度に撮ってる気がするが、容量は大丈夫なのか?」

男「あっ。いつもの癖で」

隣人「あと何枚くらいだ?」

男「……10枚ちょっとですかね?」

隣人「ほう……あっ。今度はわかめだぞ」

男「なんでさっきから海の生き物ばかりの割には魚類を避けてくるんですかね」パシャッ

隣人「それでも撮るのか……」

【52】(12/20)

隣人「なんというか、独特なパレードだったな」

男「なんというか途中から引き込まれましたね」

隣人「絶対今ので容量の大半使ってたぞ」

男「確かに。ずっと立ちっぱなしでしたしまた何か食べながら休憩でもしましょうか」

隣人「んー。そうするか。何がいい?」

男「そうですねぇ……。では、クレープでも」

【53】(12/20)

隣人「いつも思うのだが」

男「何をです?」

隣人「クレープ屋などにあるツナとかウインナーなどのノットデザートな部類は需要があるのだろうか」

男「僕はたまに食べますよ」

隣人「美味しいのか?」

男「んー、まぁ、それなりに?」

隣人「うむむ……」

男「まぁ僕は普通にデザートなクレープの方が好きですけどね。今日はチョコバナナにします。隣人さんはどうします?」

隣人「むー……むむむー……チョコバナナ!」

男「結局デザートにするんですね」

隣人「チョコバナナクレープは美味しいからな!!!」

【54】(12/20)

男「ベンチ割りと空いてますね。一応隅の方のここにしますか」

隣人「なんだかんだでそろそろ日も傾いてきてるからなぁ。微妙な時間帯なのもあるだろう。……あっやっぱり美味しい」

男「冬は日が落ちるのが早いですねぇ。……ほんとだ美味しい」

隣人「……んー。スペース的にはまだもうちょっとあるなぁ」

男「全部見たら帰って家で何か食べましょうか」

隣人「ケ◯タッキーを買って帰ろう」

男「いいですね」

【55】(12/20)

隣人「それにしても…………ふぁー……」

男「…………?」

隣人「…………」

男「…………?隣人さん?」

隣人「…………」トスッ

男「うわ、ちょ、隣人さん?もたれかかっ、えっ……うわ、寝てる」

隣人「…………」

男「……突然だなぁ、もう」

【56】(13/20)

隣人「ふぁー……あ、寝てた?」

男「寝てましたね。30分くらい」

隣人「中々……寝てたんだな……」

男「寝てる間に結構日も傾きましたね。流石冬って感じです」

隣人「申し訳ない……」

男「いいんじゃないですか?ほら、イルミネーションって夜の方が映えますから」

隣人「えっと、ありがとう?」

男「いえいえ。では、観に行きましょうか」

今日中に終わらせねば(使命感)

【57】(14/20)

隣人「サンタだ」

男「キラッキラですね」

隣人「これ、クリスマス終わった後も置いてるのか……」

男「年明けくらいまであるみたいですしね、このイベント」

隣人「まぁサンタさんはいつ来てもウェルカムだし大丈夫か」

男「確かにそう考えると毎日来てほしいですね、サンタ」

隣人「同棲はちょっと照れ臭いかな……部屋片付いてないし……」

男「どういう照れ方ですかそれ。……というか今思うと隣人さんの部屋、数えるほどしか入ったことないですね。本ばっかあるんでしたっけ?」

隣人「今はエビに埋もれてる」

男「エビ!?」

隣人「親からの仕送り。ぬいぐるみだけどな。なんか実家のバイト先のおみやげ屋で売れ残って仕方なかったのが何を血迷ったのか第一弾を破棄してニューモデルを売り出したらしい」

男「なんか壮絶ですね」

隣人「いつもの三倍の大きさの仕送りの箱を期待しながら恐る恐る開いたらエビのぬいぐるみがごっそり入ってたときの私の気持ちがわかるかい?」

男「壮絶だったでしょうね」

【58】(14/20)

男「実家のバイト先って言ってましたけど、兄妹など、いるんですか?」

隣人「なんだ、言ってなかったか?妹がいるぞ。妹は気が弱いし可愛らしいからな。エビを押しつけられるのも納得がいくものだ」

男「なんというか隣人さん一人っ子っぽいので気にしたことありませんでした。妹さんいるなら何かおみやげとか買ってあげたほうがいいかもしれませんね」

隣人「入り口付近にスーベニアショップはいくらかあったし、帰りがけにでも寄ることにしようか」

男「光るエビのストラップとかあるかもしれませんしね」

隣人「妹の部屋もエビですごいらしいぞ」

男「最早妹さんどうやって持って帰ったんですかそれ……?」

【59】(15/20)

隣人「◯ンダムもあるぞ」

男「こういう版権もの?もアリなんですね」

隣人「なんかそういう団体が宣伝目的で参加してたりするんじゃないか?」

男「確かに、バラバラなのが多い中でイルミネーションの色もちゃんと合わせてますしね」

隣人「ここまで揃えられているとイルミネーションというより光る彫刻のようで少しクリスマス感は和らいでしまうな」

男「ビーム◯ーベルは元々光ってるものですし、遠目だとそれっぽくていいと思いますけどね」

隣人「うむ、確かに」

【60】(17/20)
……
…………

隣人「空はもうすっかり暗くなったな」

男「イルミネーションで景色自体はそこそこ眩しいですけど、ここまで結構色々観ましたしねぇ。気づかないうちにもう十八時です。写真も残り……三枚ですかねぇ」

隣人「時間よりカメラの容量の残量の方が終わりって感じがして、寂しいな。残りのイルミネーションもあとちょっとだし」

男「とはいえ大きな作品ばかりの場所はこの先ですから、まだ楽しめそうですけどね」

隣人「それもそうだな。……カメラだ」

男「カメラがどうかしましたか?」

隣人「違う違う。左のほうだよ、ほら」

男「あぁ、なるほど。カメラのイルミネーション」

【60】(17/20)

隣人「少年、カメラを貸してくれないかい?」

男「僕を撮るんですか?」

隣人「むぅ。私が言う前に察するなよ」

男「以心伝心でいいじゃないですか。……使い方わかりますか?」

隣人「まぁ、難しいことはわからないけど基本は大丈夫だよ。私にはカメラ趣味はないんだが、昔の知人がカメラ好きでね」

男「じゃあ、任せます」

……

男「ほんとだ、ちゃんと撮れてますね」

隣人「キミは笑顔がぎこちないな」

男「撮られ慣れてないんですよ」

隣人「キミらしくていいんじゃないか?」

【61】(18/20)

隣人「大型作品ゾーンだから人が多いのかと思ったが他の場所と大差はないな」

男「こちら側はラストにする人ばかりでしょうし、まだ暗くなって一時間程度しか経ってませんから、これから増えてくるんじゃないですか?見てください、タワーですよ、タワー」

隣人「とても大きいな。というか何タワーかな、これは」

男「何タワーでしょう?」

隣人「んー。撮るか」パカッ

男「はい、撮りますかー……なんでケータイ出したんですか」

隣人「キミが私を撮って、私はケータイでキミを撮るのだよ」

男「謎では……」

隣人「言ったろう?私はキミのカメラを構えてる姿が好きなんだ」

男「なんというか、照れますね」

カシャッ
ピロリンッ

【62】(19/20)

男「……」

隣人「……」

男「なんというか、息を呑みますね。この大きさのクリスマスツリーは」

隣人「頂点の星は他の所からも見えてたが……逆に言えば他の場所からも見える高さだからな……」

男「さっきのタワーは頂上まで見えましたけどこれこの近さだと一番上まで見ようとすると結構つらいですね」

隣人「緑が……緑が目に優しい……」

男「着眼点がおかしい」

【63】(19/20)

隣人「ぴーすぴーす!」

男「……はいちー「ぴーすぴーす!」

カシャッ

隣人「撮れたかい?」

男「……えぇ、まぁ」

隣人「……んー。これ、最後なんだよな?」

男「そうですね」

隣人「撮りなおそう!」

男「え?」

隣人「へーい!そこのおにーさーん!すみませーん!」

男「あの……隣人さん?」

【64】(20-1=19/20)

青年「……はい?」

隣人「カメラは使えるかな?私達二人なんだけど、よかったら撮ってくれないかい?」

青年「カメラ……?俺はちょっと……少女、カメラわかるか?」

少女「カメラですか?元写真部の友達がいますから、大丈夫ですよ!」

青年「自信に根拠が無さすぎる……!」

隣人「……じゃあお嬢さん、お願いできるかい?」

少女「大丈夫ですよ!」

青年「じゃあ俺はそこの自販機でジュースでも買ってくるよ」

少女「りょーかいです!」

【65】(19/20)

男「おにいさん呼んでませんでした?」

隣人「ナンパに成功したのさ」

少女「ナンパにひっかかりました!」

男「わけがわからない」

少女「カメラですよね。私にお任せください。カメラより到底わけがわからない謎アイテムも日頃から触ってますから」

男「えっと……お願いします?」

……

少女「はーいもっとひっついてー!入んないですよー!」

少女「はーいもっと笑顔ー!男の人、引きってますよー!

少女「はーい、行きますよー!いちたすいちはー!!!」

少女「にー!!!」

パシャッ

男「めっちゃノリノリやん」

アリガトウゴザイマスー
イエイエーソレデハー

【66】(20/20)

男「あ、でもちゃんと撮れてますね」

隣人「まぁキミが基本的にイルミネーションに合わせて設定してくれているから、撮る側がやることもそこまでややこしくないしな」

男「夜だと手ブレとか顕著だったりするんですけどね。まぁ何はともあれよかったです」

隣人「これで最後だろう?現像したら写真はおくれ」

男「……やっぱりこれ以上は撮れそうにないですかねぇ。写真はそのうち持っていきますね」

【67】(20/20)

隣人「クリスマスは上塗りできたかい?」

男「正直、どうでしょう。すごく楽しいですけど、やっぱり忘れられそうにはないみたいです」

隣人「そんなものだよ。忘れたくないって願った思い出なんてのは忘れたくても、忘れたくなくても、存外忘れないものなんじゃないかな。どう思おうがどう過ごそうが時間で薄れてくだけだよ」

男「新しい思い出で上塗りすることを怖がる必要なんてなかったのかもしれませんね」

隣人「……世の中、元カノのことなんて忘れたがる人間が多いと思うのだけどね。キミは上塗りしたがらず、そうやって思い出を大事にしようとする。変わり者だね」

男「嘘を吐きたくないんですよ、楽しかったものは楽しかったですし、好きだったものは好きだったんですから」

隣人「変わってるとは思うがキミのそういうところは嫌いじゃないよ」

男「まだイルミネーションはありますから、上塗りなんてのは早急な話かもしれませんけどね」

【68】(20/20)

隣人「……お城か」

男「これもめちゃくちゃおっきいですね」

隣人「写真が撮れないのが残念だね」

男「全くもってその通りです」

隣人「キミはさ、純粋に撮ることが好きでもあるのだろうが、カメラで記録することにこだわりすぎてるんじゃないかな」

男「藪から棒ですね」

隣人「忘れたくないならカメラに収めずとも、忘れなきゃいいのさ」

男「それができたら……」

【69】

隣人「じゃあ、忘れられないことをしよう」

男「……はい?」

隣人「目を瞑りたまえ」

男「……」

隣人「……そういえば、肝心の今日は言ってなかったな」

男「えっなn

"メリークリスマス"

チュッ

【70】(21/20)

……

隣人「どう、かな」

男「確かに、忘れられなさそうです」

隣人「男くん。こっちを向いてくれないかい?」

男「……無理です。今僕絶対めっちゃ顔赤いです」

隣人「クリスマスカラーでいいんじゃないか?」

男「……お互い様でした」

隣人「私も赤いかー」

【蛇足No.?】

少女「青年さん青年さん」

青年「どうした?」

少女「この地面に勇者の剣ぶっさしたらこのイルミネーションの光りも無に帰しますかね……」

青年「おそろしいJKだ……」

少女「JKとイルミネーション観にきてる青年さんがおそろしくないですか?ロリコンですか?」

青年「俺達そんなに年齢差ないだろ!?……というかイルミネーションに誘ってきたの君じゃん。ご丁寧にチケット片手にさ」

少女「思い立ったが吉日です」

青年「誘いにきたのが今朝じゃなければよかったんだけどね??電話番号交換したよね俺達??」

少女「数年前に……」

青年「その話は今どうでもいいんだよ!!!」

少女「あの運命的な出会いを……どうでもいいと……!」

青年「勇者の剣ぶっ刺すぞ」

めちゃくちゃ急ぎ足で書きました。すみません。おしまいです。

あと前回の雨宿りですか?でナンバリングが一個抜けてたんであれ関連ひとつだけおまけつけました。蛇足ですが。

まだまだ拙いSSですが、お付き合いいただきありがとうございました。
今度はファンタジーなの書きたいです。

あと素敵なクリスマスを過ごしてるリア充はイルミネーションに絡まって海に流されてください。

そういえばパンパンがエロく聞こえたというのがありましたが、僕も書きながら思いました。クリスマスぼっちなのはそんな心の汚れが所以でしょうか。

ナンバリングは四コマらしさを出したいのと、ただ単に書きやすいってのがあります。

少し読み返しただけで誤字脱字のパレードですがご容赦くだせぇ……(吐血)

どうせなのでクリスマス中の書き込みには少しだけ反応してみますね……。

 予定もあるっちゃありますが、雨宿りもこれも何も考えずなんとなく始めたものなんで完結させられるかどうかは微妙としてもそのうちなにかしらを突発的に書くんじゃないですかね。
 突発的に書き始める方が思い入れなく適当に書き進められていいのかもしれません。


 おすすめSSは色々ありますが、

・ティンカーベルとキモオタがおとぎ話の世界を巡るシリーズ

・後輩女「あなたはわたしと結婚するべきです」男「……そうなの?」

・黒髪娘「そんなにじろじろ見るものではないぞ」

 なんかが好きです。割りと王道かもしれません。

 ……とお気に入りSSのブックマークを振り返っていて思いましたけど「無駄話は好きかい?」シリーズ。
 ナンバリングなどはあれにすごく影響受けてそうです。僕のものと似たような作品をお探しでしたらあのシリーズをおすすめします。

 あとSSとは離れますが、げんふうけいさんがすごい好きです。

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