比企谷八幡と材木座義輝は愛 (140)

※注意点

・地の文ありですが、話の性質上わかりやすくするために台詞の前に名前をつけてます
・その名前は見た目、外見準拠です
・シリアスでもイチャイチャでもホモでもないです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449844270



ある日の奉仕部。

そこにはいつもの光景が広がっている。

姿勢正しく静かに本のページをめくる雪ノ下。お菓子をつまみながらぐでーっと机に突っ伏して携帯とにらめっこする由比ヶ浜。そして目だけを動かして本を読む俺。 

一色は生徒会で用があるのかマネージャー業に勤しんでいるのか今日は来ていない。

なんてことはない、奉仕部の日常だ。

その日常に飽きたのか、暇を持て余したのか、由比ヶ浜が突然突拍子もないことを口にする。

「ねーゆきのん、ポッキーゲームしない?」

由比ヶ浜的には唐突でもないのかもしれないが、言われた雪ノ下と同じ場にいる俺は何言ってるのこの子と思わざるを得ない。

「嫌よ」

「即答!?いいじゃんゆきのん、やろうよー暇だよー」

何言ってんのとは思ったものの、美少女同士でくんずほぐれつ的な展開は見たくないわけではない。少し言い換えると露骨に見たい。

百合ヶ浜さん、もうちょっと頑張って!

心の中で熱いエールと期待の目線をバレないように慎重に送る。

「別にキスしようってんじゃないんだからさー。ほらほらゆきのん、チョコの方あげるからー」

由比ヶ浜は持ち手であるチョコのついていない方をくわえて、口で上下にポッキーを動かしている。

「そもそも何故そんなことをしなければならないの」

「えー?練習?」

「そんなことをする機会、私には一生ないわ」

「じゃあ一生に一回ぐらい体験しとこうよ。何事も経験だって!」

なんでそんなにやりたいのかはわからないが、由比ヶ浜は引く気はないらしい。

俺が見ているからやらない、という結果に終わると癪なので、部室にいないものとして扱われるよう気を消す。

サイヤ人の末裔が出る本を読んだことのある俺には造作もないことだ。サイヤ人と俺なにも関係なかった。

由比ヶ浜は椅子から腰をあげて前屈みになり、座ったままの雪ノ下へ顔を近付けている。

あの、由比ヶ浜さん、あまり前屈みになるとスカートが……。

「ほらーゆきのん、食べて食べて」

「はぁ……」

雪ノ下は溜め息をついてからポッキーの先をくわえると、まるでリスやハムスターのように小さくガジガジし始めた。

む……。これはこれで可愛いな……。

世界に対して優しくなれそうな穏やかな気持ちになっていると、雪ノ下の体がだんだん後ろに反っていく。

雪ノ下はほとんど進んでいないが、もう一方から由比ヶ浜が迫ってきているようだ。

「んー……」

由比ヶ浜は呻きながら順調にポッキーをかじり、体を目いっぱい伸ばすように雪ノ下に迫っていく。

雪ノ下はなおもそれを避けるように体を反らす。

おいおい、椅子も後ろに傾いてきてるじゃねぇか、危ねぇぞ。

そう思った瞬間、雪ノ下の椅子はバランスを崩し、同じく支えをなくした由比ヶ浜もろとも部室の床にすっ転ぶ。

大丈夫かよ……と思いながら床に転がる二人に目を向けると、由比ヶ浜のスカートが完全に捲れ上がりパンツが丸見えになっていた。

パンツ!薄い青!意外!いやそうでもねぇな。

雪ノ下のは由比ヶ浜に乗っかられているので見えない。クソッ!クソッ!

「なにをやってんだ……。大丈夫か」

顔を背けながら声をかける。だが貴重な由比ヶ浜のパンツは視界の端に入れたままである。心と脳と目といろいろなところに焼き付けておかねばならない。

「あいたた……ゆきのんごめんー……」

「はぁ……由比ヶ浜さん……。まったく、酷い目にあったわ」

よかった、二人に怪我はないみたいだ。

…………あん?

「ひ、ヒッキーあたしのぱ……見たでしょ!最低!」

そう言って雪ノ下は怒りながらスカートを直そうと手を下に伸ばす。ん?

「ちょっと、いつまで上に乗って……ない、わね。え?」

これは由比ヶ浜。いやお前雪ノ下の上でパンツ丸出しだけど。隠さないみたいだからもうちょいじっくり見とこう。

………………いや、なんかおかしいぞ。

「ゆきのん重いー、早くどい……ん?なんであたし、え?」

「…………一体、どういうことなの、これは……」

「ええええーーーー!?」

雪ノ下が由比ヶ浜のような驚きの叫び声をあげる。

こうして奉仕部のささやかな日常は終わりを迎えた。


一一一



この状況は一体なんなのか……。とても理解が追い付かない。

当人達の慌てようは俺以上で、何を言っているのか全然わからない。いやわかる。わかるけどわからん。

雪乃「え、え、なんであたしがいるの!?あたしは?ゆきのん!?えー!?」

雪ノ下が雪ノ下らしからぬ慌てようで、自分の体と目の前の人物を見比べている。

結衣「何故目の前に私がいるのかしら……。私は……誰?ここはどこ?」

由比ヶ浜は落ち着きながら慌てて記憶喪失みたいになっている。

八幡「おい、俺にはお前らがコントやってるようにしか見えねぇんだけど。何を言ってるんだ?」

結衣「私にも何がなんだかわからないわ……」

雪乃「あ、あのね!あたしがゆきのんで、ゆきのんがあたしなの!」

八幡「すまん、わかんねぇ。というかお前雪ノ下だろうが。なんで由比ヶ浜みたいな喋り方してんだ?」

雪乃「いやだからあたしが由比ヶ浜なんだってば!ゆいゆい!ガハマさん!」

どう見ても雪ノ下である。なんというか、違和感がとてつもないことになっている。

いつもの落ち着き払った雪ノ下の声ではなく、それより一オクターブ高い声で由比ヶ浜だと騒ぎ立てる姿を見ていると非常に落ち着かない。

可愛くないわけではないが……なんだ。雪ノ下の姿をした別の何かに見えてくる。

人って思ったよりも見た目だけに頼ってなくて、その立ち居振舞いでも人を認識してるもんなんだな。

そんな新発見をしたところで不自然な状況はなにも変わっていない。二人はお互いに目をきょろきょろさせながら騒いでいる。なんなんだこれは……。

八幡「ちょっと落ち着けお前ら、話すの一旦止めろ。確認させてくれ。雪ノ下」

結衣「なにかしら」

俺から見たらどう考えても由比ヶ浜の人物が返事をする。

八幡「由比ヶ浜」

雪乃「なに?ヒッキー」

雪ノ下が答える。というか雪ノ下にヒッキーと呼ばれて超ビビる。

八幡「…………一応。俺をからかってんじゃねぇよな」

雪乃「そんなわけないじゃん!」

結衣「あなた、私がそんなことを出来ると思っているの?」

由比ヶ浜の声で言われたのが癪だが、まさにその通りだ。

由比ヶ浜に雪ノ下の真似がかろうじてできたとしても、雪ノ下に由比ヶ浜の真似ができるとは思えない。雪ノ下が羞恥や遺憾の意を示さずヒッキーと呼ぶなんて考えられない。

ということは、だ。

八幡「……入れ替わってるとか言うつもりか?お前ら」

結衣「そうみたいね。体がというか、性格がというか……。とにかく私は雪ノ下雪乃で、彼女が由比ヶ浜さんよ」

雪乃「どどど、どうしよ、ヒッキー……」

また雪ノ下風の女の子にヒッキーと呼ばれて心臓が跳ねる。いや違う、こいつは由比ヶ浜らしい。俺も落ち着け。

八幡「どうしようと言われてもだな、俺が知るわけねぇだろ。つーかそんなの簡単に信じられるかよ……」

二人でスッ転んだら性格が入れ替わるとか、そんなファンタジーあってたまるか。それなら俺だって舞空術使えたっておかしくねぇだろうが。

……もしかして、いつの間にかそういうのが使える世界に迷い込んでしまったのか?

よし、少し試してみるか……。漫画のキャラを自分の意識とシンクロさせる。

オッス!オラ八幡!

オラ、絶対働きたくねぇ。

仕事とか世界から消滅しねぇかなぁ。

朝起きたらベッドが札束になってねぇかなぁ。

カメハメ波ーッ!

出ねえな。

筋斗雲ーッ!

来ねぇ。

駄目じゃねぇかやっぱり。なんでもできるファンタジー世界に迷い込んだのかと思ったがそうでもないらしい。

結衣「信じられないなら、何か試してみたらどう?」

八幡「試すってどうすんだよ」

結衣「私……雪ノ下雪乃と比企谷君だけが知っていることを私に聞けばわかるでしょう。由比ヶ浜さんと比企谷君だけが知っていることを彼女に聞いてもいいわよ」

八幡「なるほど。でも、そんなこと何があんだ……」

雪乃「あたしとヒッキーだけが知ってること……。あ」

八幡「ん?」

雪乃「ヒッキー、ちょっと耳貸して」

言うと、雪ノ下もどきが背伸びして俺の耳に顔を寄せる。

うぉぉ!近い、こそばゆい、いい匂いがする!雪ノ下とこんな距離になったことねぇんだけど!

そして空気を吐き出すような囁き声が耳に届く。

雪乃「……あのね、ヒッキーが今度ディスティニィーシーに行こうって言ってくれた場所、覚えてる?」

…………俺は由比ヶ浜に言ったんだけどな。というかあれはそれほど明確な誘いではなかったというか、いやはっきり言ってないだけでそう言ってるも同然か……。

え、えーと。とりあえず雪ノ下がそれ知ってるとは思えねぇな。由比ヶ浜もさすがにそこまでは言わんだろうし。

八幡「お、覚えてる」

雪乃「パンさんのグッズ売り場、だったよね」

その情景を思い出したのか、雪ノ下、いやもう由比ヶ浜だなこれ……。その雪ノ下風由比ヶ浜は照れ臭そうな顔をして離れていった。

八幡「…………マジか」

雪乃「マジなんだよねー……。どうしたらいいんだろう」

結衣「一応、念のため私も証拠を聞かせておくわ」

今度は由比ヶ浜風雪ノ下が恥ずかしそうに俺の肩に手を乗せて背伸びをする。

あー、言われるとあれだな、照れ方が由比ヶ浜と雪ノ下って違うんだな。

結衣「……あの、比企谷君と二人で、その、買い物に行ったときにあなたからもらったもの、覚えているかしら」

八幡「あー、あれか。小町が途中で消えた時か……」

結衣「ええ。あなたに……、あなたにと言ってもいいのかしら?まぁとにかく、パンさんのぬいぐるみ、貰ったわよね」

…………間違いない。雪ノ下だ。パンさん好きをあんなに隠そうとしていたのだから、いくら由比ヶ浜相手でも伝えてはいないだろう。

今でこそパンさん好きを隠そうとしてはいないが、負けず嫌いのあいつが俺から施しを受けたことを話すとは想像し難い。

八幡「……参ったな。疑って悪かった」

信じたくはないが間違いなさそうだ。この二人は人格?自我?のようなものが入れ替わっているらしい。

結衣「……いえ、こんな常識外のこと根拠もなしに信じられるならそっちのほうがどうかしてるわ」

雪乃「だねー、あたしも自分じゃなかったら絶対あたしを騙そうとしてるんだって思うよね」

結衣「ふぅ、どうしたものかし……、…………?」

もう断定するが、由比ヶ浜の見た目をした雪ノ下が椅子に座りかけて途中で止め、驚愕の表情に瞳を見開く。

数秒、だろうか。目線を下ろし何かを確認していたかと思うと、自分(由比ヶ浜)の胸をまじまじと眺め、唐突に寄せたり上げたりし始めた。

八幡「えっ」

雪乃「ちょっ、なにやってんの!?ゆきのん!?」

結衣「な、何よ、これは……。足下が見にくいじゃない」

雪ノ下はおもむろに胸元のボタンをもう一つ開けると、両手で。胸を。おっぱいを。ぽよんぽよんと。楽しそう……ではないな、忌々しそうに、揉みしだく。というか、弾けさせる。

揺れる由比ヶ浜のおっぱい。おっぱいがいっぱい。

結衣「えいっ、えいっ」

雪乃「ちょあー!ゆきのんやめー!もげる!」

結衣「もいでるのよ」

雪乃「えぇー!?」

結衣「邪魔でしょうこんなもの」

雪乃「べ、別に邪魔だなんてことは……もう慣れたし。…………あ、そういえば今、なんか肩が軽いかも」

結衣「…………せいっ!とりゃっ!」

雪乃「ぎゃー!」

結衣「くっ、なかなかしぶと……ちょっとあなた、なんでニーソックスを脱いでるの!?」

雪乃「え、暑くて……蒸れるし。ゆきのんよくこんなの平気だねー」

揺れる魅惑のお椀型脂肪に目を奪われていると、雪ノ下の白く細くそれでいて適度に肉のついた艶かしい輝きを放つ生足が露になっていた。

蒸れるという理由で由比ヶ浜はニーソックスを足首までずり下げており、なんか黒いルーズソックスみたいになっている。

その黒と生足のコントラストが眩しすぎておもわず目を細めてしまう。蒸れる……。

やべぇ。この部屋やべぇ。傍から見たらこの二人の行動はどう考えても痴女がいいところだ。

目の前で繰り広げられる光景は刺激が強すぎ、なんか身体中の血液が下半身の一部位に集まりつつあるのを感じる。

結衣「はしたないからきちんと履いてもらえるかしら、由比ヶ浜さん」

雪乃「ゆきのんこそ人の胸わしゃわしゃするのやめてよ!」

由比ヶ浜はがるるーっという威嚇の声を発しているが、雪ノ下の声なので今まで聞いたことがなくて超可愛いなにこれもっとやれ。

あ、いやまずい。とりあえずこの二人にも落ち着いてもらわねば……。こんなことで関係に亀裂が入るのは御免被りたい。若干もとい割と露骨に前屈みになりながら口を開く。

八幡「で、どうすんの?」

結衣「どうするって……戻るに決まっているでしょう」

八幡「どうやって?」

結衣「知らないわよ。これはあなたの担当案件でしょう。常識外はあなたの担当よ、あなた自身常識外みたいな存在なのだし」

呆れて言葉が出なくなった。由比ヶ浜の顔ってこんな冷たい表情にもなるのか。ビックリするほど雪ノ下である。なんかえらい語呂いいな、ビックリするほど雪ノ下。

八幡「案件て、依頼された覚えがねぇよ」

結衣「なら今からするわ。私たちをなんとかしなさい」

雪乃「あたしからもお願い、ヒッキー。このままじゃなんかいろいろ……困る」

なんとかしろと言われてもだな、知らんよこんな現象……。あとそれは依頼じゃなくて命令じゃないですかねと言いたくなったがそこはスルーしておいた。

漫画なんかではよくあるけど、これも同じに考えていいのかしらん。王子様のキス……は違うか、あれは眠りからの目覚めだな。

関係ないけどそういえば、二人と一色がなんとか姫とかいうとこのバイトでなんとか姫だとか呼ばれて持て囃された挙げ句、王子だ王子様だ言わされてるらしいという噂を聞いたことがある。

……なんだそれけしからんどこのイメクラだ。王子って誰だよ俺のことか?いや絶対ちげぇな。

いかん、現実味がなさすぎて真剣に考えられていない気がする。正直ちょっとだけこの事態は楽しいが、当人同士はそうもいくまい。

といっても正解などわかるわけもないので、思い付いたことをいろいろやってもらうか。

八幡「んじゃ二人でもっかいスッ転んだら?見る限り原因あれなんだし」

雪乃「えー、ヒッキー適当に言ってない?」

八幡「適当っちゃ適当だけどよ、俺だってどうすりゃいいのかわかんねぇよ。常識外の事態だけど常識で考えるなら病院行きだな」

結衣「そんなことをしても私たちの頭がおかしくなったと思われるのがオチね……。神経外科や脳外科じゃなくて行き先は精神科だわ」

八幡「……違いねぇな。で、どうする?スッ転ぶ?」

雪乃「うーん……。痛いけどやってみる?ゆきのん」

結衣「いえ、由比ヶ浜さんわかっていないの?おそらく原因はそれでは……」

雪ノ下が話している途中で部室の扉が勢いよく開き、がぁん!という大きな音を響かせる。

なんだこの大変な時にと三人が入り口に目を向けると、狼狽しきった海老名さんが壁に手を突きながら叫んだ。

姫菜「結衣ぃ!た、大変!助けて!」

珍しい。海老名さんがこんなに慌てる用事っていったいなんなのだろうか。だがこちらも異常事態発生中なのでなんとかお引き取り願いたいところだが……と、そこでようやく気付いた。

海老名さんが助けを求めるや否や由比ヶ浜目掛けてすがり付いているが、そいつの中身は雪ノ下なのだ。

おかしなことになっていることを迂闊に喋って事態が好転するとはあまり思えない。

雪ノ下はどう対応するのだろうか。そう考えていたのに、今の状況を忘れたのか由比ヶ浜が普通に返事をする。

雪乃「ひ、姫菜?そんなに慌ててどうしたの?」

姫菜「は?あーし結衣に言ってるんだけど。ってか、なんで雪ノ下さんが姫菜呼ばわり?」

雪乃「え、あ、そうだった。ごめ……ごめんなさい、ひ……海老名さん。……あれ?」

ふぅ。どうやら事なきを得たようだ。入れ替わっていることには気がついて………………え?

結衣「え?あ、えーと、えび……姫菜?ど、どうしたの?」

雪ノ下もしどろもどろながら、由比ヶ浜のように喋るよう務めている。でもたぶん、もうあんま意味なさそうだな……。頭がおかしくなりそうだ。

優美子「こんにちはー、優美子早いよー。私そんなに速く走れるんだねー。結衣にはもう話した?」

雪乃「え?優美子?姫菜?」

姫菜「だからさ、さっきからなんで雪ノ下さんが名前呼び捨てにしてるわけ?」

うわぁ。眼鏡っ娘でもその顔こわぁ。

結衣「ちょっと、あなたたち……。もしかして三浦さんと海老名さんも……?」

姫菜「は?結衣?って、まさか……」

結衣「…………そのまさかよ、三浦さん」

雪ノ下が海老名さん風三浦に告げると、彼女はすがっていたその手を離し、へなへなとその場に力無くへたり込んだ。

優美子「…………ほほー。何やらおもしろいことになってるみたいですなー」

三浦風海老名さんはこの状況を楽しんでいるような節さえある。

そのゴージャスな見た目でそんな言葉遣いをする人物がそこにいることに例えようもない違和感を覚える。異界に迷い込んでしまったような感覚だ。

八幡「マジかよ……」

俺もう帰っていいかな。

もし何もないところに三浦と海老名さんがやってきて入れ替わったとか話したなら、先ほどの雪ノ下と由比ヶ浜の時のように疑って信じようとはしなかっただろう。だが前例があるだけで人は簡単に重ねて信じることができるのだ。

信じたくないけど。

雪乃「え、えぇー!?優美子と姫菜も!?」

結衣「…………いったい何が起こっているの。こんなの夢よ……」

優美子「そーだねー、いったい何が何やら」

姫菜「…………ダメじゃん。結衣も、とか……。あーし、どうしたらいいのよ……」

まさかの事態にまさかの事態が重なって、なんかもうこれ普通に起こり得ることなんじゃないの?俺が知らないだけで日常的に発生してるとか。

そんなわけないですね。

奉仕部の日常が光の速度で遠のいてゆく。

そして事態はさらに混迷を極めていくのだった。


一一一

ここまで

危ない投下中に寝てしまうところだった
そんなに長くはならない予定です

またそのうち

雪ノ下が由比ヶ浜で、由比ヶ浜が雪ノ下で、海老名さんが三浦で、三浦が海老名さん。

現状を整理するととりあえずこうなる。自分でも何を言っているのかよくわからない。

雪乃「ね、ねぇ優美子。なんで、いつそうなっちゃったの?」

姫菜「えーと……」

さらに面倒なことになったのも事実だが、同症例のケースが一つ増えたことには意味がある。共通点や類似性から現象について何かが見えてくるかもしれないからだ。

こんなふざけた現実に何故、どうしてという理由の解明にあまり意味はない。理由はわからなくとも、理解できなくとも、それに対応する術を見つけ出せばよい。

見つかる気がしないけど。

優美子「いやー、別に変なことはしてないんだけどねー」

姫菜「そーそー。あーしが階段でバランス崩しちゃってさ、下にいた姫菜の上に乗っかるみたいにして転んだら、なんでかこんなことに……」

雪乃「あー、あたしたちと同じ、なのかなぁ……」

結衣「え?本当にそうなの?海老名さん」

姫菜「あーし今は三浦なんだけど」

結衣「え、ああ、そうね。ややこしいわね……」

優美子「うん、それだけだよ、雪ノ下さん」

おお、海老名さんはもうこの状態に慣れたようだ。俺は全然慣れる気配がない。

結衣「おかしいわね……」

雪ノ下は顎に手をやり、思案する素振りを見せた。

おお、雪ノ下っぽ…………くねぇな。どう見ても由比ヶ浜だ。ただ、由比ヶ浜だと見られないポーズではある。

八幡「なぁ、雪ノ下。何が引っ掛かってんだ?」

結衣「そうよね、比企谷君にはわからないわよね。……由比ヶ浜さん」

雪乃「ほえ?」

その姿でほえ?とか言うのやめろ。可愛いけど笑えてくるだろ。実際三浦が海老名さんの顔でにやにやしてるし。

結衣「……こほん。倒れた時のことをよく思い出してみて。あなたが私の上にのし掛かるように倒れた後、そのときには入れ換わっていたわけだけれど、その前。傾いたその瞬間、あなたは床を見ていたの?天井じゃなかった?」

ん?どういうことだ?と思うが口は挟まずにおく。

雪乃「…………あ。あたし天井が見えてたかも!」

結衣「そうよね、私は床が見えたから。つまり、倒れる前にはもう入れ換わっていたということになるわ」

雪乃「え、じゃあ、だとすると……なに?」

結衣「覚えていないの?倒れるほど傾く前に、その、あなたの唇と……」

雪乃「あっ!そうだ!あたし、ゆきのんと……キスしちゃったんだ……」

八幡「えっ」

姫菜「えっ」

優美子「やーだー。結衣ー、やらしいー」

なんだと……。ポッキーゲームの末にそんな百合百合しいことになってたとは……。

そしてなんだその恥じらいようは。こいつまさか、本当に百合っ気があるのでは……。

結衣「……一応弁解しておくけれど、事故よ、事故。唇がぶつかっただけ。あんなものファーストキスにカウントされないわ」

雪乃「いやゆきのん、女の子同士は別にカウントしなくてもいいと思うよ……。てか、あたしはカウントしない!まだ初めて!」

結衣「……忘れましょう、お互いに。まぁそういうわけだから、私たちが入れ換わったのはそれが原因だと推測しているわけだけれど……。三浦さんと海老名さんはしていないの?」

姫菜「はぁ?してるわけ……」

葉山「ヒキタニくーん!やべーヤベーよマジやっべーって!」

戸部「おい、戸部……。あんまり大きい声で喋るなよ……」

八幡・結衣「うわぁ……」

おもわず溜め息と共に、もういい来るなという思いが声となって漏れた。言わなくてもわかる。ある意味変化の度合いがこの中で一番酷い。

雪ノ下さんが俺よりも誰よりも一番ドン引きしていらっしゃったのが印象的だった。

姫菜「は、隼人ぉ!?まさか、戸部と……」

戸部「ん?姫菜?…………まさか」

八幡「……さすがに勘がいいな。そのまさかだ」

葉山は隼人と呼び捨てにして慌てる海老名さんを見て気がついたようだ。自分がそうなることがあるなら、他にいてもおかしくないとすぐに切り換えられるあたり、なかなかに優秀な奴だ。

ただ、その気付きは何ももたらしはしないのが悲しいところである。

葉山「なになに?どういうこと?海老名さん、なんか雰囲気違わね?」

戸部「……君は、大丈夫なのか?」

八幡「ああ、こん中じゃ無事なのは俺だけだな」

戸部「ということは、雪ノ下さんも……?」

結衣「そういうことよ。もう逃げ出したいわ……」

葉山「あんれぇー?なんか結衣も変じゃね?」

姫菜「戸部ぇ……あんたいい加減気づきなよ。みんなあんたと同じようになってんの」

葉山「え、海老名さん?優美子?…………えぇー!?マジ!?」

たぶん戸部は、戸部ぇ……で気がついたのだろう。ドス効いてたし。

いやー。なんなんだろうなこれ。葉山と戸部も追加されて三組になった。華やかだなー。

現実逃避したい。早急に。

八幡「なぁ、俺帰っていい?」

結衣「駄目よ」

雪乃「絶対ダメ」

優美子「だめー」

姫菜「はぁ?帰れるとか思ってんの?」

戸部「帰すわけないだろ」

葉山「ヒキタニくんハクジョーすぎね?」

総勢6名からの駄目だしをくらう。

八幡「なんでだよ……。俺関係ねぇだろが。俺健常者だし、後は当人達でなんとかしてくれよ……」

結衣「こんな状態でまともに考えられるわけがないでしょう。戻るまで帰さないわよ。そのつもりでいなさい」

雪乃「そうそう。毒を食わば毒までだよ」

なんかもういろいろ違う。毒しか食ってねぇよそれ死ぬ気か。

姫菜「ぷっ、くくっ……」

戸部「くくっ……」

雪ノ下の姿であまりにアホなことを言うものだから、三浦と葉山が普段とのギャップに耐えきれなかったのだろう。口を押さえながら笑みを溢した。

酷いやつらだな、俺は頑張って耐えてるのに。まぁ、あとから絶対酷い目にあうのわかってるからだけど。

結衣「…………由比ヶ浜さん。喋らないでもらえるかしら。名誉毀損で訴えるわよ」

雪乃「喋っただけで名誉毀損!?」

八幡「で、戸部。と葉山。お前らはなんでそうなったんだ?」

結衣「……まさか、キスしたんじゃないでしょうね」

優美子「!?マジで!?キマシタワーコレ!」

戸部「姫菜、来てないから。何も」

葉山「なんかよくわかんねーんだけどさー、練習してて隼人くんとハイボール競り合って頭ぶつけて、地面に落ちたらこうなってたんよ」

そういえば二人とも練習着のままここに来ている。なんでここに助けを求めにくるんだと聞きたくなるが今はやめておこう。

戸部「そうだな。二人でヘディングしようとしてぶつけたらこうなった。まったく意味がわからないが……。結衣たちと、優美子たちはどうしてなんだ?」

雪ノ下と由比ヶ浜はおそらくキスが原因であること、三浦と海老名さんは階段から転げ落ちたことが原因であることをそれぞれが話す。

由比ヶ浜は唇を真一文字に引き結んで喋るのを我慢していた。…………健気だな。

戸部「……イマイチ共通点がないな」

八幡「だな……。雪ノ下と由比ヶ浜も転げ落ちたのが原因ならわかりやすいんだが。もっかいスッ転んでみたらいいし」

結衣「サンプルがもう少し欲しいわね……」

八幡「いや勘弁しろよ。これ以上増えても面倒になるだけだろ」

そこで、またも部室の扉が勢いよく開き、新たな人物が飛び込んできた。

沙希「あーいたっ!せんぱぁい、ヤバいですヤバいですほんとにマジでヤバイんですー」

うおお、川崎が俺のことを上目遣いで先輩と甘えてくるだとぉ!?可愛いじゃねぇか!けどあざとい。

八幡「…………一色か」

沙希「え?なんでまだ言ってないのにわかったんです?」

わからいでか。なんで同級生に先輩って呼ばれねばならん。一瞬俺留年してたのかと思ったじゃねぇか。

八幡「お仲間がいっぱいだからな。喜べ」

沙希「は?何言って……って、おぉ。なんですかこの大所帯は……」

一色は俺しか見えていなかったらしく、そこで始めていつもの二人に加えて珍しい人物に驚きの声をあげる。俺はそんなことより敬語を話す川崎の姿が不穏で仕方ない。

戸部「いろはもか……」

結衣「一色さんまで……。それで、もう一人は?」

雪ノ下ももういい加減慣れてきたのか、川崎の見た目をした人物を一色と断定して話を進める。

沙希「はい?戸部先輩?結衣先輩も……?」

いろは「ちょっと、はー、あんた……。はー、この体すっごいトロいし疲れるんだけど……」

沙希「し、しっけーなっ。わたしの体はそんなに運動音痴じゃありませんよっ」

はぁ……。やっぱこうなってんのか。

優美子「おー、サキサキ。ちんまくなっちゃったねー」

いろは「ん?三浦?」

優美子「うんにゃ、海老名だよ」

いろは「は?え?」

沙希「……先輩、何がどうなってるんです?」

八幡「……こっちが聞きてぇよ」

これで四組目だ。どこまで拡大するんだ?何が起こっている?これもなんちゃらズゲートの選択なのか?

姫菜「なんかさ、これ……ヤバくない?」

雪乃「……ヤバいよね。ほんとに戻れるのか不安になってきた……」

一同の顔に不安の色が広がる。ここで思ったのは、当事者じゃなくてよかったー、ということ。やだ、俺割とクズっぽい。

結衣「ではそろそろ落ち着いて話し合い……」

雪ノ下が騒がしく状況確認する皆をなだめ、仕切り直そうとしたその時、またも扉が開く。あ、俺知ってる。これまた誰か来るパターンだ。

そう思っていると、めぐり先輩がちらと顔だけを覗かせる。

めぐり「む、なんだこの人数は……まあいい。……えーと、比企谷くーん」

八幡「は、はい?めぐり先輩?ですか?」

てっきりまた誰かと入れ換わっているのかと思いきや、いつものめぐり先輩のほんわかとした口調で拍子抜けしてしまう。

めぐり「そーだよー☆えーとねー、ちょっと比企谷くんに用があるんだけど、いいかな……?」

八幡「え?あ、あの、今ちょっと忙しいというか立て込んでまして……」

めぐり「えー、ちょっとだからさー、お願い」

そう言ってめぐり先輩は俺の腕を掴み引っ張る。いつになく強引で違和感はあるが、そのあどけない笑顔に抵抗できない。いや、なんか力強くね……?

雪乃「あ、あの、めぐり先輩。ヒッキーもあたしたちも今はちょっと……」

めぐり「……ヒッキー?雪ノ下……なのか?」

八幡「あんた、めぐり先輩じゃないな。誰だ」

雪ノ下の様子が普段と違うことに驚いたのか、素が出てしまったようだ。その素の言葉遣いはめぐり先輩とは似ても似つかないものだった。

めぐり「ちっ。失敗か」

平塚「もー、先生。なんで逃げるんですかー」

八幡「…………マジ?平塚先生、あんた何やってるんすか」

めぐり「おや、随分と理解が早いな」

異常な事態をすんなりと受け入れる俺を見て、平塚先生は腕を組んで思案し始める。

うーん、眉間に皺が寄るほど悩むめぐり先輩も可愛い。けど中身はあれなんだよなぁ。

めぐり「…………つまり、この連中も、ということなのか」

八幡「ま、そういうことです。つかなんでここに来るんですかみんな……」

平塚「ちょっと先生ー。わたしの体返してくださいー」

全員「………………」

めぐり「いやすまん、ちょっと若返った気がして女子高生を満喫したくなってな……ん?どうした君たち」

めぐり先輩と平塚先生を除く全員が衝撃的な光景を目の当たりにして、一様に黙り込む。目を覆いたくなった。

沙希「いや、どうしたもこうしたも……」

結衣「その、平塚先生の姿でその話し方はちょっと……」

八幡「……なんていうんですかねこれ。キツいっす」

葉山「いやいや、マジヤバいっしょ……。その年でそれは……」

めぐり「葉山、死ねぇっ!」

葉山「ぇぐおっ!?」

戸部「あー!俺の体が……」

内情を理解しているなら、平塚先生が戸部にボディブローを炸裂させただけだ。

だが絵面で見ると、平塚先生の年齢に触れた葉山がめぐり先輩にボディブローをされ、戸部が葉山の体を心配する、というものだ。

あたまがおかしくなりそうです。

八幡「なぁ、もう締め切ろうぜ。これ以上は無理。由比ヶ浜、鍵掛けてきてくれ」

雪乃「うん、わかった」

由比ヶ浜は頷くと、施錠のためそそくさと扉に向かう。

いろは「……もうわけがわからない」

姫菜「あーしもう泣きそう」

葉山「えほっ、っあー。内臓飛び出るかと思った。平塚先生、俺っす、戸部っす」

めぐり「ああ、そう予想してはいたんだが……その見た目だから、ついな」

戸部「つい、で葉山死ねと言われるのはちょっと……」

そこで、由比ヶ浜の持ち物である携帯電話が着信音を鳴らした。雪ノ下は由比ヶ浜と目配せしてから、控え目に通話を始める。ああややこしい。

今由比ヶ浜が出ても雪ノ下の声だから、そうしたほうがいいだろう。…………いや、わざわざ出るなよこの面倒臭い状況で。真面目か。

結衣「もしもし。ゆきの…………ゆ、結衣だよー」

雪乃「あたし、そんな出方しないし……」

結衣「……え?大岡君が?大和君と?ええ、ええ」

これだけで事情を把握できる。やべぇ俺エスパーになっちゃったのかも。

八幡「……雪ノ下、ここには来るなって言ってくれ。もう閉店ガラガラだ」

大岡と大和が入れ換わろうと、俺にはおそらく区別がつかないから割と本気でどうでもいい。

雪ノ下は頷くと通話を再開する。

結衣「そう言われても私にも何がなんだか……。奉仕部は今日は休みだから、みんなのこともわからないわ。ごめんなさい、また、明日!」

雪ノ下は通話を強引に打ち切り、ふぅと溜め息をついた。

雪乃「んー、戻ったら説明しとかなきゃ……」

八幡「心配すんな。あいつらも大事みたいだからそんな些細なこと気にしちゃいねぇよ。忘れてる、どうせ」

雪乃「そ、それもそうだね」

沙希「せんぱーい……。まともな人先輩だけじゃないですか……」

八幡「……みてぇだな。とりあえず状況を整理するか……」

電話に注意している間に、これまで直接会話のなかった面子で情報交換のような会話が行われていた。その度に皆が驚きの声をあげる。

これだけ事例が集まればなんらかの方向性や共通点は見えてくるだろう。大変なのはここからだ。

まずは聞き込みだな。

ここまで

たぶんあと二回で終わりです
またそのうち


八幡「あー。ちょっとみんな、聞いてくれ」

騒がしい会話が徐々におさまり、総勢10名となった視線が一斉に俺に集まる。やだ、こんなに注目集めることなんてそうないから緊張しちゃう。

八幡「何を期待してここに来たのかは知らんが、とりあえず戻る方法を模索するって方向で異論はないな?」

結衣「ないわ」

沙希「ですね」

姫菜「さっさと戻らないと、あーし……」

戸部「これだけモデルケースがあれば類似性も見つかるんじゃないかな」

めぐり「わ、私はもうちょっとこのままでもいいぞ?」

いろは「平塚先生……」

めぐり「な、なんだ……。いいじゃないか別に……。なぁめぐり、もう少しならこのま」

平塚「嫌です」

即答。ていうか割り込んだ。

めぐり「めぐり?」

平塚「絶対に嫌です」

めぐり先輩は笑ってないけど笑顔である。平塚先生にこんな顔されたら、俺なら死を覚悟するな。

めぐり「わ、私の体は力も強」

平塚「死んでも嫌です」

めぐり「む、胸だって……」

平塚「無理」

めぐり「……そんなにか。そうか……。うっ……えぐっ……」

雪乃「マジ泣き!?」

めぐり先輩の目から血の涙を啜り流す平塚先生は置いておいて、話を再開することにした。

八幡「と、とりあえずだ。情報の共有はしておきたい。俺が指名していくから順次説明してくれ、包み隠さず。まずは全員の状況を把握したいから、あんまり途中で口を挟まないようにしてくれると助かる」

雪乃「オッケー。わかったよヒッキー」

結衣「わかったわ。……司会進行役も様になっているじゃない」

八幡「お前が戻すまで帰さないつったからだろ。こんなの早く終わらせて帰りたいんだよ俺は。利害が一致した時ぐらいまともにやるよ」

マジ早く帰らせろ。俺は平穏を求めてるんだ。異常事態はお呼びじゃねぇんだよ。

並んだ顔を見渡すと、俺の発言に頷きをもって返してくれた。一人だけまだ泣いてた。

八幡「うし。じゃあ、雪ノ下と由比ヶ浜。自分達で考えられる原因を話してくれ」

結衣「ええ、私と由比ヶ浜さんは……おそらくだけれど、唇が触れ合ったのが原因、と考えているわ」

沙希「え?雪ノ下先輩?結衣先輩?」

めぐり「……何をしているんだ君たちは」

雪乃「んーとね、ゆきのんとキス、しちゃった……」

……なぜ恥じらう。モジモジする。ドキドキしちゃうだろ。

平塚「え?二人って付き合ってたの?」

結衣「そ、そんなわけないです!由比ヶ浜さん……誤解を招く表現はやめてもらえるかしら。あれは事故というか偶然……」

八幡「あー、雪ノ下、ストップ。次行くぞ」

拗れそうな会話を無理矢理遮ると、三浦と海老名さんに話を振る。

姫菜「あーしと姫菜はー、あーしが階段から落ちて姫菜の上に落ちたのが原因だと思う。つか、それしかないし」

優美子「だねー。一緒に階段から落ちた、って感じかな」

沙希「わたしたちとそんなに変わんないですね」

いろは「……みたいだね」

先にいた奉仕部組は知っていたことだが、まだ聞いていなかった連中がふんふんと頷く。

八幡「んじゃ次、葉山と戸部」

戸部「俺たちは部活中だった。ヘディングで戸部と競り合って、おもいっきり頭をぶつけたらこうなってたな」

葉山「だべ。すんげぇ痛かったわ」

沙希「…………戸部先輩、あんま喋らないでください……葉山先輩に幻滅しそうなので」

戸部「俺に!?」

結衣「理知的な振る舞いすらなくした葉山君に価値は見出だせない、ということよ」

戸部「……酷い言われようだな。戸部、黙れ」

葉山「隼人くん!?」

八幡「あーもう終わり終わり。次行くぞ、一色と川崎」

ここからは俺も知らない。ちゃんと聞いておこう。

沙希「あー、さっきも言いましたけどわたしたちは三浦先輩たちとそんなに変わんないですよ。曲がり角でぶつかっちゃったんです」

いろは「そうだね、出会い頭におもいっきり。凄いビックリしたよ……」

沙希「あー、すいません川崎先輩。ちょっと生徒会室に急いでたから走ってたんですよー。駄弁ってたら遅刻しちゃって……」

八幡「ほーん……。まぁいいや、次で最後か。平塚先生とめぐり先輩はどうしてです?」

平塚「んーとね、平塚先生に跳ねられそうになったの」

八幡「はい?」

俺を筆頭に、皆が眉をひそめる。

めぐり「……いやな、なんかお偉方が来るとかで、こんな厳つい車は目の届かない場所に移動させておいてくれと言われてな。運転してたらめぐりが飛び出てきて跳ねそうになったんだよ」

八幡「…………そうになった?跳ねては、いない?」

平塚「うん。当たってはいないよ、寸前で止まったから。でも凄いビックリしちゃって、危なかったーって思ったらいつの間にか車を運転してたの」

……参ったな。また例外ケースが出てきた。

八幡「それ、車大丈夫だったんですか?すげぇ危ない状況の気が……」

めぐり「……大丈夫じゃない。めぐりがアクセルを踏んでな……。私はなんとか逃げれたんだが、校長の銅像に直撃した……」

平塚「す、すみません平塚先生。でもわたし運転なんかできないですよぅ……」

めぐり「ああ、めぐりを責めるつもりはないよ」

雪乃「そ、それ……。放置して平気なんですか?無傷?」

めぐり「銅像なんぞ多少傾いてもどうでもいいんだが、私の車のバンパーがへこんだ……。くそ、誰に請求すればいいんだ」

結衣「教師らしからぬ発言は今は置いておきましょうか……」

八幡「……だな。異常事態だしな。さて、とりあえず出揃ったわけだが……」

頭を捻る。

まず、原因と思われる事象は大きく分けて2パターン。

物理的な接触を伴うか否か。

最後の平塚先生とめぐり先輩の事例で、物理的な接触はなくとも入れ替わる可能性が存在することが判明した。

だから物理的な接触は必須条件ではなくなった。

そして、物理的な接触の中でも2パターンに分かれる。

強い接触か、弱い接触か。痛みを伴うか否かともいえる。

八幡「むーん……。わかんねぇ。とりあえず可能性潰してくか」

結衣「どうするの?」

八幡「あー、葉山。と、戸部。どっちでもいいからおもいっきり殴ってみろ」

姫菜「は?なんでそんなことするわけ?」

八幡「言ったろ。可能性を潰してくんだよ」

葉山「えー、痛いじゃん。勘弁してほしいわー」

戸部「……一方でいいのか?」

八幡「まぁ同時なら同時でも。両方試すつもりだし」

戸部「……なるほど。戸部、歯を食い縛れ」

葉山は拳を握り締め、肩をぐるぐると回す。

皆は二人の様子を黙って見守る。

葉山「ちょ、隼人くん!?まったタンマ!」

戸部「なんだよ」

葉山「は、隼人くん自分の顔、そんな強く殴れるん?」

戸部「……確かに、無意識に手加減してしまいそうだな」

葉山「だべ?俺っちは隼人くんの体に傷を負わせたくねーわけよ。だからさ、俺がやってみるわ」

戸部「戸部……いい奴だな、お前」

葉山「それほどでもねーって。…………死ねや葉山ぁっ!」

戸部「え、戸部?」

姫菜「戸部止まれぇっ!」

葉山「へぐぉっ!?」

戸部が葉山に殴りかかる寸前、三浦のパンチが戸部を襲った。カウンター気味に入った攻撃は見事に決まり、戸部はもんどりうってのたうつ。

葉山「え、海老名さんに殴られたみたいで二倍キチー……」

そうか、戸部からすればそう見えるんだよな。俺から見たら海老名さんが葉山を殴っただけなんだけど。

戸部「優美子……」

姫菜「それ、やらなくていいから。さっき平塚先生が戸部殴ったじゃん」

八幡「あ、そういやそうだな。ってことは一方的な物理攻撃は効果なしってことか」

姫菜「それに、隼人が痛いのとか……あーしやだし」

と言って殴ったのは葉山ボディである。三浦にとってはどういう扱いになっているんだろうか。

戸部「優美子……ありがとう」

そう言って葉山が三浦に近づくと、三浦はその分だけすっと離れる。

戸部「え?」

姫菜「あ、いやちょっと無理……。やっぱ隼人は隼人じゃないと……」

葉山「俺っちどんだけ嫌われてんのよ……」

戸部「俺も凄くショックなんだが……」

男二人が凹んでしまった。やっぱりこの状態はいろいろよろしくないな……。戻ってからも禍根を残してしまいかねない、余計な軋轢を生んでしまう危険性を孕んでいる。

早く戻すため、やはり皆にはもう少しいろいろやってもらうか。

八幡「もう一つ試しとくのは、えーと……」

集まった当事者達を見渡す。驚いてくれそうなのは、うーん……川崎かな。

はっと今気づいた仕草をしながら、川崎の足元を指差し叫ぶ。

八幡「あっ!川崎!足元にゴキブリが!」

いろは「えっ!?どっ!?ぎゃああああ!」

いい反応だ、凄まじいシャウトだった。これは演技などではありえないだろう。

にしても一色の叫び声って初めて聞いた気がする。これが素なんだろうなぁ……。

八幡「すまん川崎、嘘だ」

いろは「…………殴るよ?いや、殴る。殴らせて」

八幡「あああちょっと待て、今のはただの実験だ。だからほんとすまん、お前が一番いいと思ったんだ。いやお前って案外女の子らしいとこあるしさ、一番素直に驚いてくれそうだなとかいろいろ」

殴られまいと必死で弁解の言葉を重ねる。別に述べた言葉に嘘はないつもりだが。

いろは「ふ、ふーん……。そう。なら、まぁ……殴らないでおいたげる」

よかった、俺の祈りが通じたようだ。

何故か激しく照れる川崎の他に、数名の女子から睨み付ける視線が飛んできたがスルーしておいた。冷や汗は止まらないけど。

八幡「あと、言いにくいことなんだが……」

俺が言い淀むと、由比ヶ浜と三浦が背中を押してくれる。

雪乃「何したらいい?戻るためならなんでもやるよ、あたし」

姫菜「だね、ある程度までなら我慢するよ、あーしも」

八幡「じゃあ、言うぞ。き、キスしろ、お前ら」

沙希「……は?」

いろは「はぁ?」

葉山「はぁぁぁ?」

姫菜「ヒキオ、やっぱ死ね」

今ここに新たなはぁはぁ三兄弟が誕生した。そのあとにあった直接的すぎる罵倒の言葉は聞き流す。嘘やだスゴい動揺してる。

八幡「い、いや、マジで言ってるんだぞ俺は」

めぐり「それは君の趣味ではないのか?」

八幡「ち、違いますよ……。嫌なら殴りあってもらうとか、頭ぶつけ合ってもらうとかってことになりますけど」

結衣「なるほど、そういうことね……」

雪乃「何、どういうことなの?」

八幡「えーとだな、あー、いろいろあるから順に説明しとくか。といってもここまででわかったのは無駄だってことだけなんだけど」

ガヤガヤとした雑談の喧騒が静まるのを待ち、口を開いた。

八幡「まず、当然だけど俺はお前らが何らかの条件を満たす、もしくは何らかの刺激を与えることで元に戻るってことを想定していろいろ試そうとしてる」

姫菜「当たり前だし、そんなの」

八幡「そう一概には言えねぇんだよな。時間経過で戻る、寝て起きたら戻ってる、みたいなこともあるかもしれん。あと最悪のケース。二度と戻らないって可能性は今は排除して話を進めてる。ここまでいいか?」

結衣「ええ、問題ないわ。それは考えても仕方のないことだもの」

沙希「ほんとゾッとするんで言うのやめてください……」

いろは「こ、こっちの台詞だよそれは……」

めぐり「戻らない、か」

平塚「比企谷くん。死んでも頑張ろう」

めぐり先輩の拒否感半端ない。

お、おう。と心の中でだけ返事をしておいて話を続ける。

八幡「で、今さっきのでわかったのが、一方的な物理接触に効果はない。戸部が平塚先生と三浦に殴られたわけだけど、変化はなかった」

葉山「はー、殴られ損じゃんよ……」

八幡「そんなことはないぞ戸部。今は駄目だってわかるだけでも一応前進だ。そしてもう一つ、一人に精神的ショックとか驚きを与えても変化はない。これは川崎のやつな」

いろは「な、なるほど。あんたもいろいろ考えてるんだね……」

八幡「そりゃな、意味なくあんなことはしねぇよ。……怖いし。で、ここでもう一つ知りたいのが、入れ替わる二人に同時に物理的もしくは精神的ショックがあったらどうなるのかだ」

優美子「精神的ショックって?」

八幡「ああ。物理的な接触が必須条件でないことは平塚先生とめぐり先輩の事例からわかった。だから精神的ショックを与える方法として、キスをしてもらおうと提案したわけだ」

戸部「それで嫌なら殴り合えか」

八幡「そういうこと。でも殴り合うってのはあんまりオススメできねぇな」

葉山「まー痛いしなー」

八幡「それはそうなんだけど。お前らからしたら自分を殴ることになんだろ?無意識に手加減するだろうからその加減が判断できん」

葉山「んー、俺っちは平気かも」

八幡「そりゃ戸部がアホだからだ」

葉山「ヒキタニくん、ひでーわ……」

八幡「まぁとにかく、二人が手加減なしでできるって自信がない限りはキスが手っ取り早い。それで入れ替わった事例もあるし、何よりすぐ試せる」

結衣「でも、戻る保証もないわよね?」

八幡「そりゃねぇよ。ただの実験だ。全員にやってもらうのはサンプル数を増やしたいのと、あとはあれだ。公平だろ。もしかしたら全員戻るかもしれんし。…………どうする?」

俺の言葉に総勢10人がそれぞれ二人組に分かれ、顔を見合わせる。

それぞれに葛藤や一悶着、すったもんだがあったものの、背に腹は変えられぬといった具合で全員が承諾した。

姫菜「ヒキオ、絶対こっち見んなし」

沙希「先輩、こっち見たら許しませんから」

八幡「あーはいはい。俺は後ろ向いとくよ」

なんかえらい警戒されているので一人壁に向かう。

互いに見られたくないのか、背後では二人組が部屋の四隅と中央の五ヶ所に位置し見つめあっている。と、思う。俺見えねぇし。

八幡「んじゃ終わったら教えてくれー。変化があったかどうかも」

誰からも返事はなかった。

仕方ないのでおとなしくそわそわしながら待つ。

なんかいろいろ小声が聞こえてくる。超気になる……。

由比ヶ浜と雪ノ下はもとより、一色と川崎とかめぐり先輩と平塚先生とか超見たい。そこはかとなく危ない百合の香りがする。

戸部と葉山は気持ち悪いから気にしない。

悶々としていると、やがて続々と足音が聞こえてきた。机付近に集まっているらしい。

八幡「……終わったら教えてくれつったろ」

振り向くと全員が憔悴しきった顔で互いに目配せし、ふるふると首を振っていた。

戸部と葉山は顔を逸らし目を合わせない。それを海老名さんが目を輝かせて眺めている。ご愁傷さまです。

八幡「駄目だったか……」

結衣「ええ、残念ながら……」

沙希「うぅ、あんな恥ずかしい思いまでしたのに……」

めぐり「私は何年ぶりだったのかなぁ……もう覚えてないなぁ……。ははは……」

姫菜「もう、無理なん……?何が悪いのよ……」

何が悪かったのか。そう、問題はそこだ。

原因となった行動と同じことをしても戻らない、という可能性は当然ある。だがそうなると見当のつけようがなくなってしまう。

だから、発生時と条件を揃えれば戻るものという前提を掲げ、もう一度今の行動を振り返ってみる。

参考とするのは、雪ノ下と由比ヶ浜。

入れ替わった行動がキスならば。かつ、同じような行動をすれば戻ると仮定するならば。

違う点は何か。

八幡「あー、もしかして……」

一つ明らかな違いがあるが……しかし言いにくいな。全員が全員そうとも思えねぇし。

結衣「何か思い付いたらなんでも言って、比企谷君」

雪ノ下は俺の独り言に食い付く。藁をも掴む思いなんだろうな。よし、こいつらもうキスしてるんだし聞くぐらい別にいいだろ。

八幡「……あのな、お前らさ。幼少時とかでもいいんだけど、鏡にキスして自分のキスしてる顔見ようとしたことってない?」

姫菜「は、はぁ?ヒキオ何言ってんの?」

八幡「いや、真面目に言ってるんだ。さっきお前らキスしたけどな、お前らからしたら自分の顔とキスしてるんだろ?だからな、やったことあった場合さほど衝撃的じゃないんじゃないかと」

戸部「衝撃を受ける度合いが足りなかった、ということか。……その推測が正しいなら、どちらか片方でもやったことがあったら駄目なんだろうな」

結衣「な、何故そう言いきれるの?」

戸部「俺はしたことがないから。戸部、したことあるのか?」

葉山「い?え、俺はその……」

戸部「あるんだな」

葉山「……はぁ。そりゃ隼人くんがそんなことするはずねーよな……。あ、ある、小学生の時。みんなするっしょ!?ヒキタニ君!?」

何故俺に振る。まぁあらゆる黒歴史を網羅している俺がやってないはずはないのだが。つーかしてなきゃそんな発想でねぇよ。

八幡「の、ノーコメントだ。けど例が一つじゃ足りんから全員答えてくれ。そういうことをしたことがあるか」

優美子「あ、私もあるよー。キス顔書く練習したことあるから」

姫菜「……や、やっぱりね。姫菜だと思った」

八幡「なるほど、三浦と海老名さんも該当すると。他は?」

残りの面子を見渡すが動きはない。牽制しあっているような空気を感じる。

最初にぽつりと呟いたのは雪ノ下だった。

結衣「……由比ヶ浜さん、あなたでしょう」

雪乃「い!?そ、そんなバカみたいなことあたししないし!ゆきのんじゃないの!?」

結衣「わ、わわ私がそんなことするはずないでしょう!」

沙希「……川崎せんぱーい。白状しましょうよー」

いろは「あたしがするわけないでしょっ!あ、あんたとしか思えないんだけど」

沙希「わ、わたしがそんな虚しいことするはずないですー!」

めぐり「め、めぐり。別に恥ずかしいことじゃないんだぞ?誰しもが通る道だ」

平塚「えー?わたし通ったことないですけど……。平塚先生ですよね」

めぐり「し、失礼なことを言うな」

各自が醜い押し付け合いを始めた。……見ちゃいられないな。

八幡「あー、このままじゃ埒があかねぇな。じゃあ全員目を閉じて手を上げてくれ。俺だけが見るわ」

教師が生徒の中から犯罪者を炙り出す手法である。

雪乃「ひ、ヒッキーが見るの?」

八幡「誰か確認しねぇとわかんねぇだろ……。あ、確認終わった四人も一応目閉じといてくれ。該当するかだけ確認して結果は俺が墓まで持ってくから」

結衣「し、仕方ないわね……」

沙希「はぁ……先輩が見るんですか……」

八幡「いいな、やるぞ?」

合図をして目を閉じてもらい、質問を投げ掛ける。

八幡「この中で自分とキスしたことがある人、挙手を」

ぷるぷると手を震わせながら何本も手が上がる。

……マジか。多い。ってかほとんどじゃねぇか。

葉山とめぐり先輩以外の八人の手が上がっていた。

戸部と三浦と海老名さんはもう確認終わってるから上げなくていいのに……。え、三浦したことあんの?

醜い押し付け合いをしていた由比ヶ浜も雪ノ下も一色も川崎も顔を赤くしながら挙手している。……なんてことだ。なんてことだ。

平塚先生はもうね……。どうせそうだろうなってやる前から胸を痛めてたけど、やっぱりか。

八幡「……おし、いいぞ」

結衣「ど、どうだったの?由比ヶ浜さんでしょう?」

雪乃「ちょ、ゆきのん!」

八幡「それには答えない。けどまぁ結果としては全組が該当してた。少なくとも片方はそういうことをやってるってことだ。どっちなのかは想像に任せる」

ま、ほとんどが両方なんだけど。

八幡「言っとくけど、俺は結果知ってるから押し付けようとしても俺に腹黒さが伝わるだけだからな……」

そう言うと、相手に押し付けようとする動きはピタッと止みやっと静かになった。

八幡「よし。じゃあ続きだ。だからキスは駄目みたいだし、殴り合ってもらうしかねぇかなぁ……。あ、いや、当事者同士やんなくても誰かに殴ってもらえばいいのか」

結衣「酷く不愉快な思いをしないといけないわね……」

雪乃「うぅ、痛いのヤダなぁ……」

戸部「……戸部、やるか」

葉山「隼人くん、マジ?」

葉山は決意したのか、強い目で口を開いた。

戸部「仕方ないだろ。女子にやらせて効果なしは可哀想じゃないか。実験台だ」

葉山「それもそうか……。でもよー、本気で殴り合うん?」

戸部「いや、手加減するかもしれないから比企谷に頼もう。こう、頭をぶつけてもらう」

葉山「マジかー……」

立派な決意だ。

そんなことはやりたいことじゃないが、その決意を無駄にしないために心を鬼にしよう。

八幡「……おもいっきりやるぞ、俺。いいのか?」

戸部「そうじゃないと意味がない。一思いにやってくれ」

葉山「うし、俺っちも覚悟した。ヒキタニ君、おもっきり頼むわ」

そして俺は並んだ戸部と葉山の頭を両手に持ち、勢いをつけるため頭を離す方向に引っ張る。

八幡「……いくぞ。恨むなよ」

葉山「こいやぁ」

戸部「ああ」

八幡「リア充は…………死ねっ!」

気合いを入れるための掛け声とともに、側頭部辺りを全力で衝突させる。ごっ!という鈍い音と嫌な衝撃が伝わった。

沙希「ひいぃ……」

雪乃「い、いたそー……」

戸部「あいたた……」

葉山「いってぇ!超いってぇ!」

痛みに悶える二人の台詞だけで変化がないことを皆が悟り、沈黙が降りる。

八幡「……駄目か」

結衣「絶望的な結果ね……。これには少し期待していたのだけれど」

八幡「ただ、これは現象発生時と若干条件が違う」

雪乃「条件?」

八幡「ああ。それは、今回は覚悟をしていたということ、つまり起こることがわかってた。最初に入れ替わった時の事象には全員に、"不意に起こった"という共通項がある」

優美子「なるほどー、これからやるぞってのがわかってたから、同じことをしても効果がない可能性があるってことね」

八幡「俺はその可能性もあると見てる。総合すると、条件はつまり」

結衣「……入れ替わった二人がいつ起こるかわからないタイミングで、何らかの精神的ないし物理的衝撃が二人に加わること?」

雪ノ下が俺の言葉を先んじる。

八幡「そういうことだな。その条件下で一度何か試してみたいんだが……」

場がしん、と静まり返った。一様に難しい顔をしている。

まぁそりゃそうだな。だって絶望的な予感がするし。

沙希「……それって、結局どうやるんですか?」

八幡「さ、さぁ……」

沙希「えー。そこはノープランなんですか……」

八幡「知らねぇよ俺も。つーか今のだって推論に推論を重ねた根拠も全くないデタラメみたいなもんだぞ。試す価値はあると思ってるけど」

結衣「何か、ないかしらね……」

雪乃「二人でいるときに、急にわーっ!って脅かすとかは?」

いろは「でもさ、そんなこと言われたら、二人でいる時は常に何がくるか警戒しちゃいそうだよね」

めぐり「まぁいろいろ試してみるしかないだろうな……」

材木座「はーちまーんくーん。あーそびーましょー」

全員で頭を抱えていると、唐突に扉の外から間抜けないい声が聞こえてきた。

八幡「んだようるせぇな……。この忙しい時に」

雪乃「あなたのお友達……いえ、同類でしょう」

結衣「中二かー……」

葉山「ザイモクザキくん?」

めぐり「比企谷と同類なら、こんな漫画的状況も受け入れられるかもしれないな。どうだろう、いい知恵もないことだし彼も一緒に考えてもらうというのは」

結衣「彼が役に立つかしら……」

雪乃「さ、さー。あんまり期待はできないような……」

優美子「私はザイハチ見れるかもだし、いてもらってもいいかなー」

やめてくれ勘弁してくれ海老名さん。

戸部「彼は正常と思っていいのかな」

八幡「……さっきの間抜けな台詞と声からしてそうだな。一応確認はしてみる。おかしなことになってたらお引き取り願おう」

鍵の掛かった扉の前に向かい、扉越しに話しかける。

材木座「む……鍵が……。不在か?」

八幡「いや、いる。お前は材木座か?」

材木座「そうだ、我だ。はぁちまん!まさか我の声を忘れたのではあるまいな」

八幡「そうだな、お前の声だ」

はぁちまんが勇者王的な声だった。おかしなことにはなっていないようだ。

八幡「大丈夫そうだ。引き入れるけど、いいな?」

部屋の面子に確認するが、誰も頷いてはくれない。……薄情者め。

仕方ない、ここにいることは伝えてしまったし入れてやるか。これこそ毒を食らわば皿までだ。材木座は毒。

扉の鍵を開け、材木座を引き入れるとすかさずまた施錠する。

材木座「む、なんだこの人数は……いったい何が……。……と、おや八幡。何故鍵を掛けるのだ?」

八幡「監禁されたと思え。解決するまでは誰も出られない」

材木座「か、監禁!?やだ、なんか怖い。我もう帰る」

八幡「駄目だ、諦めろ。まず説明してやるから聞け」

これまでの経緯と状況を洗いざらい説明する。間抜け面で聞いているが本当に理解しているのだろうか。

材木座「な、なるほど……。どこぞの漫画で見たような状況というわけだな」

八幡「理解が早くて助かる。さすがファンタジー世界の住人だな」

材木座「よせ八幡。照れるではないか」

八幡「褒めてねぇよ。で、どうすればいいと思う?」

材木座「そ、そう言われるとだな……。……そこの窓から二人で落ちるとかどうだろうか」

雪乃「いや、死ぬから」

沙希「自殺教唆されましても……」

結衣「ただの心中じゃない、それ」

姫菜「こいつやっぱいらなくない?」

優美子「はぁはぁ」

姫菜「人の顔ではぁはぁすんなし」

めぐり「やはりすぐには思い付かないか」

平塚「どうすればいいんでしょう……このままじゃわたし、死ぬしか……」

めぐり「め、めぐり?」

口々に突っ込みとか罵倒とか愚痴が漏れ始めた。当人たちは慣れない体で過大なストレスを感じているのかもしれない。

材木座「なんという言われようだ……」

八幡「あー、みんな、ちょっと材木座と話し合ってみるから適当にしててくれ」

そう伝え、材木座と二人で作戦を練ることにした。一斉に雑談が始まり部屋が騒がしくなる。

材木座「ほ、本当に入れ替わっておるのだな、信じられんが……」

八幡「俺だって信じたくねぇよ」

材木座「時に八幡、少し思ったことがあるのだが……」

八幡「あ?なんだよ」

何故か材木座は内緒話をするような距離に近づいてくる。やめろ近ぇ離れろ。

葉山「ザイモクザキくんもダメかー。ヤッベー俺らマジヤッ
ベー」

戸部「まぁ仕方ないな。俺たちも思い付かないし」

材木座「ぷくっ、ぷくくくっ」

材木座は手で口を押さえながら、辛抱たまらんといった様子で笑みというか馬鹿笑いを漏らす。

八幡「どうした。気でも触れたか」

材木座「ちがっ……ぶはっ。ぷげらっ!あ、あの葉山某とかいういけ好かん輩、場末のホストみたいなチャラ男になっておるではないかっ!」

八幡「そう言われれば……ぷっ、くくっ」

二人して笑いながら会話を盗み聞きする。

葉山「はー、でも隼人くんの見た目なら俺っちももうちょいモテるんかねー?」

沙希「いや、戸部先輩はそういう問題じゃないと思いますよ……」

葉山「マジで?何が悪いんよ俺……隼人くぅーん」

姫菜「あーそれそれ、そういうとこ。戸部と居ても男らしいとこぜんっぜん感じない。それじゃどうやってもいい人止まり」

優美子「んー、戸部っちは……男の子にならモテるんじゃないかな。ヒキタニくんとかお似合いなんじゃない?ぐふふ」

姫菜「あー!人の顔で鼻血出すなし!」

材木座「ぶふぉっ!あんなお蝶婦人みたいな腐女子がおるわけなかろうっ!ぶはははっ」

八幡「や、やめろ材木座、折角耐えてきたのに……うははっ」

材木座「ぐっはっは、あっちの二人は……」

そう言うと雪ノ下と由比ヶ浜に目を向ける。

材木座「ビッチみたいな毒舌委員長と清楚可憐な馬鹿娘か」

八幡「……く、くくっ、マジやめろ、材木座」

材木座「ある意味斬新ではあるがキャラ付けの方向を間違っておるな。それじゃ作品は売れんですぞー?がはははっ」

八幡「ぶっはははっ!」

材木座「あっちは無愛想で寡黙な見た目ゆるほわ後輩と、あざとい巨乳ロングヘアか……」

八幡「……あり、か?」

材木座「……ありかもしれんな」

八幡「だよな。ありだよな……。別に普段が悪いわけじゃねぇけど、川崎も怖さが減ってるし……」

材木座「あれは唯一の実験成功例かもしれんな……」

八幡「くっ、成功とか失敗とかやめろ、遊んでんじゃ……あっはは」

材木座「最後は……コメントし辛いな、流石に……」

八幡「ああ。めぐり先輩の見た目の平塚先生はともかく……」

平塚「みんなー、戻れるようがんばろー☆」

材木座「なんだろうか。胸が痛いのだが」

八幡「アラサーであれはさすがにキツいなぁ……」

材木座「美人は美人なのだがな……。元の性格も駄目、入れ替わっても駄目ならあの人はどうすればよいのだ。答えろ八幡」

八幡「俺が知るか。あの人はそういう、結婚できない天命を受けて生まれたのかもな」

材木座「哀れ平塚女史。安らかに眠れ」

八幡「くははっ、死んでねぇから」

めぐり「誰が哀れで、何が天命だってぇ……?」

ヒソヒソと話をしながら馬鹿笑いをしてたら、平塚先生がいつの間にか背後に立っていた。

材木座「わ、我は何も言ってなかとです。全部この男が」

八幡「あっ!汚ねぇぞ材木座!お前が最初にくだらねぇこと言い始めたんだろうがっ」

めぐり「随分と楽しそうに馬鹿笑いをしていたなぁ~?」

うおおお!めぐり先輩の姿なのに超怖ぇぇ!

結衣「どうしたんですか?平塚先生」

めぐり「この二人、私たちを元に戻す算段を話しているかと思ったら、入れ替わった私たちをネタにして笑っていたのだよ」

結衣「…………失望したわ、比企谷君」

雪乃「ヒッキー、サイテー」

沙希「先輩、最悪ですね」

いろは「比企谷……」

平塚「やっぱり君はそんな子なんだね」

姫菜「キモ。てか、キモ」

みんな酷い。俺今までかなり頑張ったのに。こんなの全て材木座のせいだ。

八幡「材木座ぁっ!てめぇ……」

材木座「な、なんのことでござるかな?」

めぐり「まぁどっちでも構わん。どちらも殴るから」

材木座「やだ!公平に八幡だけを!」

八幡「それのどこが公平なんだ屑っ!」

めぐり「比企谷、歯を食い縛れ。あと目も食い縛れ」

八幡「目も!?」

めぐり「いくぞ。……結婚できないのが天命とか、ふざけるなぁっっ!」

皆が俺と材木座を睨み付ける中、制裁が始まる。

鬼のような形相のめぐり先輩の姿をした怒れるアラサーが腕を振りかぶり、俺の頬にグーパンチをぶちかます。凄まじい衝撃とともに体が吹っ飛ぶ。

めぐり先輩の体でよかった。平塚先生の体なら死んでた。

八幡「んごぇっ!?」

材木座「ぷげらっ!?」

吹き飛んだ俺の体は突っ立っていた材木座に向かい、二人絡み合うようにして床に放り出される。

目を開けると、材木座の顔が目の前にあった。眼鏡が半分はずれかかっている。

そして、唇が、材木座の、材木座に、ぎぃやあああああ!

八幡「ぐああああーっ!?」

材木座「ふぉおおおおお!?」

全身を衝撃が貫き、クロコダインばりに叫びをあげる。

同極の磁石のように飛び退いて体を離し、床をのたうち回る。

八幡「材木座ぁ!てめ…………おぇっ」

材木座「八幡…………貴様、我のこと……うぐっ」

押し寄せる吐き気に堪えながら唇を擦る。ふざけんなふざけんな、俺の初めてのキスが材木座とか、しかも衆人環視の中とか、マジふざけんな!

姫菜「いやー、いいものが見れたなー」

優美子「いやいやいや、キモいだけだし」

雪乃「おぞましいものを見てしまった気がするわ……」

結衣「ヒッキー……最低だよ」

いろは「先輩、何考えてるんですか……」

平塚「あー……そこまでやるつもりは……。比企谷、すまないな」

八幡「くそ……なんで俺がこんな中傷まで受けないと…………ん?」

葉山「…………みんな、戻ってないか?」

葉山の姿をした人物が手足を動かし、葉山らしい物言いで話す。

そういえば今話した奴等も。

めぐり「も、戻ってるー!」

沙希「ほ、ほんとだ……よかったぁ……」

戸部「うおー!マジだ!」

どうやら全員が元に戻ったようで、それぞれがガッツポーズをしたり安堵の溜め息を漏らしたりしていた。

結衣「で、でもさ、なんで戻ったの?」

そうだ。それだ。何があったんだ?

雪乃「……さっき言っていた条件を満たした、からかしら」

いろは「条件ってなんでしたっけ?」

葉山「ええと、入れ替わった二人がいつ起こるかわからないタイミングで……」

沙希「何らかのショックが」

めぐり「二人に加わること?」

全員「あ」

納得した面々は床に転がったままの俺と材木座を交互に見やる。

優美子「確かに衝撃だったね……」

姫菜「それはもう、凄かったよ!ねー、もっかいやってよヒキタニくん」

八幡「……とどめをささんでもらえますか」

平塚「まぁ何はともあれ戻ったんだ、一件落着だな。…………戻ってしまったか……」

平塚先生だけは少し寂しそうに見えるが、もう一つ気になっている不可解なことがある。

八幡「ちょっと待ってくれ。ならなんで俺と材木座は入れ替わってねぇんだよ」

雪乃「……そうね。さっき私たちがしたキスで戻らなかった理由を当て嵌めるなら……」

結衣「…………ヒッキーと中二は、二人でキスを……」

いろは「経験したことがあるぅ!?マジですか!?」

八幡「ふっざけんな!あるわけねぇだろ!」

姫菜「ありゃ、付き合ってたんだ」

八幡「ねぇよ、ねぇ。材木座、お前もなんか言え!」

材木座「……まさか、あのとき愛してるぜと我に言ったのは……」

八幡「はぁ!?お前それ、文化祭のこと言ってんのか!?あんなの流れで……」

結衣「……言ったこと、あるんだ」

沙希「どんな流れになったら愛してるって男同士で言うんですかね……」

戸部「……察してやんべ、いろはす」

八幡「戸部、いらん気遣いすんな……」

雪乃「…………失望したわ」

沙希「……見損なったよ、比企谷」

八幡「待て待てお前ら、弁解をだな……」

めぐり「よし、無事戻ったし帰るかなー。比企谷くん助かったよー、ありがとねー」

平塚「はぁ……。残念だが私も戻るかな。もう少し女子高生を満喫したかったのだが……」

沙希「はぁ……あたしも帰るよ、疲れた……。比企谷、ま、またね」

簡単な挨拶を残し、川崎とめぐり先輩と平塚先生が去っていった。川崎は涙ぐんでた。俺が何やったんだよ……。

葉山「戸部、俺たちも部活に戻るか。比企谷、助かったよ」

戸部「そだなー、結局ヒキタニくんのおかげだな。あんがとなー」

優美子「海老名ー、んじゃあーしらも行こーか」

姫菜「そだねー。ヒキタニくん、ご馳走さまでした」

みんなうるせぇうるせぇ。

材木座「……八幡。我、帰ってもいい?」

八幡「さっさと帰れっ」

全員が元に戻れたのは材木座のおかげかもしれないが、こいつのせいで俺は酷い目にあった。

そして部屋に居るのはいつもの面々となる。

雪乃「まったく、一体なんだったのかしら……。信じられないこともあるものね……」

結衣「ま、まぁ戻れてよかったよー。新鮮な体験ではあったし……。けどあれだね、やっぱ自分が一番落ち着くね」

いろは「そうですねー、やっぱり自分が一番です。それにしても、なんであんなことになったんでしょうか……?」

雪乃「さぁ……。でもそんなもの考えてもどうせわからないわ。だから忘れましょう。一時的に見た、集団白昼夢だったのよ」

結衣「そ、そだね」

いろは「そうしましょうか……」

八幡「だ、だよな。俺のさっきのもノーカンだよな」

雪乃「……あなたは反省しなさい」

結衣「ヒッキー……うぅっ……」

いろは「先輩にはちょっと幻滅ですかね」

八幡「忘れるんじゃないのか、お前ら……」

ぐれるぞちくしょう。

独り黄昏ようと窓の外を眺める。

すると、下に愛しのマイプリティエンジェル戸塚の姿があった。

そうだ、さっきの記憶を戸塚とのもので上書きしてしまおう。

穢れた唇を戸塚に浄化してもらおう。

気がつくと窓を開け、叫んでいた。

八幡「と、戸塚ぁ!」

戸塚「あ、八幡だー。やっほー。どうかしたー?」

八幡「お、俺と……、俺と、キスしてくれー!」

戸塚「え、えー!?な、何言ってるの八幡!」

八幡「俺は本気だ!今から降りるから待って…………」

背後に殺気を感じる。

雪乃「あなた、いい加減に……」

結衣「ヒッキー、本気で……」

いろは「先輩、マジで」

振り向いた瞬間、衝撃が俺を襲った。

雪乃・結衣・いろは「死ねぇっ!!!」

八幡「あ」

雪乃・結衣・いろは「あ」

八幡「ああぁぁぁーーー!?」

戸塚「は、はちまんー!?」

その勢いで俺の体は校舎から落下した。

幸い木と花壇がクッションになったお陰で死なずには済んだが、足を骨折。入院生活を送る羽目になった。

殺人未遂とも呼べる行為を深く反省したのか、俺の病室では常に三人が甲斐甲斐しく介護をしてくれた。

酷いことをされたとはいえ、彼女たちを犯罪者にするつもりなど毛頭ない俺はその介護を受け入れ、思いの外充実した入院ライフを送ることができた。

どうせこの世界は異常なことも起こり得るファンタジーみたいだしな。細かいことは置いといて、まぁいいか。これで。

あ、とりあえずあれからはぶつかったりしても入れ替わったりなんてことは起こらなくなったらしい。どうやら入れ替わる現象が発生したのはあの日の極短い時間の間だけだったようだ。

俺と材木座が入れ替わらなかったのもそのせいだ、絶対。そうに決まってる。キスなんかしたことないし、愛し合ってもいない。…………ないよね。

とにかく、怪我も癒え明日で退院だ。ようやくいつもの奉仕部の日常が戻ってくる。

やはりファンタジーなんか俺には不要なものだ。平穏で、刺激も何もない生活が一番。そう再確認させてくれる不可思議な出来事だった。

なんか忘れてる気がするけど、忘れてるってことはどうでもいいことだよな、うん。

完結ー
一気に投下して終わらせちゃいました

チャンチャン、って感じのお話です
何が書きたいのかは自分でもわからないけど思い付いちゃったから仕方ないですね
書き初めてからこれまで書きたいものを書き連ねる日々です、需要とかよくわかりませんし
次はシリアスルミルミかゆきのん同棲生活のどちらか予定です

というわけで、読んでくれた方レスくれた方超感謝です愛してる
あでゅー

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月15日 (火) 12:04:11   ID: SMMK2biZ

どういうオチになるのか超期待してる

2 :  SS好きの774さん   2015年12月21日 (月) 20:12:24   ID: Cms7FIGf

オチが弱いというか、登場人物が多すぎて薄味になってるというか
全員八幡とキスしてラブコメ修羅場エンドでいいじゃない(葉山含む)

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