━━━とある神社の
━御神木の前
少年「ひっく……ひっく……うあああん……」
御神木「どうしたんだい、少年」
少年「……神木さん、あのね、いじめっ子くんが」
御神木「あぁ、また彼にいじめられたのかい?」
少年「うん」
御神木「ごめんね、僕がもっと力のある……神格のある樹木だったら、実体化なり何なりして君を護ってあげられるのに」
少年「……ううん、こうやっておしゃべりできるだけでも、ぼく嬉しいよ」ニコッ
御神木「君は良い子なんだね」
少年「ねぇ神木さん」
御神木「何だい?」
少年「どうやったら強い人になれるのかなぁ」
御神木「さてね、僕は人間じゃないから分からないや」
少年「そっか」
御神木「でも、少年は十分強い人間だよ。体じゃなくて、心が・ね」
少年「ふーん」
少年「心じゃなくて、体を強くしたいなぁ」
御神木「どうして?」
少年「強くなったら、いじめられないから」
御神木「………」
少年「いじめられると、痛いんだ」
御神木「………」
━━━━数ヶ月後
タタタッ
少年「神木さん!」
御神木「やぁ、久しぶりだね少年」
少年「うん、最近これなくてごめんね」
御神木「大丈夫だよ、気にしてないから……おや?何だか体が大きくなったね」
少年「うん!ぼくね、空手を始めたんだ!」
御神木「ほうほう」
少年「力もついたし、痛くても泣かなくなったよ!」
御神木「凄いじゃないか!」
━━━━十年後
青年「ここに来るのも久しぶりだなぁ」
御神木「………ん?」
青年「神木さん」
御神木「君は……あぁ、あの時の」
青年「こんにちは」
御神木「こんにちは、暫く見ないうちにまた大きくなったね」
青年「もう高校生だからね」
御神木「高校生か、君も随分成長したんだね。初めて会ったときはあんなに小さかったのに」
青年「十年もたつんだ。大きくなってなきゃ困るよ」
御神木「それもそうか」
青年「空手を始めたら、忙しくなっちゃってさ、なかなか会いに来れなくなっちゃった。本当はもっと来たかったのに」
御神木「これからまたちょいちょい会いに来ればいいじゃないか」
青年「いや、それは無理なんだ」
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