二宮飛鳥「へくちっ!」 (10)

飛鳥「………」ズズーッ

P「………」

P「……なあ飛鳥」クルッ

飛鳥「何だい」

P「今の可愛いくしゃみはもしかしてお前か?」

飛鳥「…………気のせいじゃないかな」

P「そうか。風邪には気をつけろよ」

飛鳥「理解(わか)ってるさ。体調管理もアイドルの……し、しごっ、ふっ、ふぇっ…………」

飛鳥「…………~っ!」グッ

飛鳥「………仕事のひとつだからね」

P「ああ、そうだな……」

P(さて、どうしたものか)

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P「……暖房の温度、上げるか?」

飛鳥「ボクはどちらでも構わないけれど、キミの方が仕事上の立場はボクより上なんだろうし、もしキミが寒いと感じるならそうするべきなんじゃないかな」

P「いや、飛鳥が寒いかなと思ったんだが、まあ平気ならこのままでいいか」

飛鳥「…………ま、待ってほしい」

P「ん?」

飛鳥「確かにどちらでもとは言ったけど、ひょっとしたら無意識のうちに、この環境に抵抗しようとしてしまっている、という可能性もあるかもしれない。環境も、『世界』のうちだといえるだろうからね」

P「…えーっと、つまり?」

飛鳥「……ボクではなく、キミ自身がどうしたいかでいいってことさ」

P「じゃあ上げるわ」

飛鳥「うん、きっとそれがいい」

P(すげえ長ったらしい言い訳で誤魔化しちゃいるけど、間違いなく風邪だよなコレ……)

P(今日は特にすることもないし、帰って安静にしててもらったほうがいいんだが……)

P(……ていうか)

P「……飛鳥、お前って今日、なんか予定あったっけ?」

飛鳥「無い、かな。少なくともボクはそう記憶してるけど」

P「何しに来たの…」

飛鳥「強いて言うなら、キミとの親睦を深めるため、ってところかな」

P「え、マジで?めっちゃ嬉しいんだけど」

飛鳥「パートナーとの関係は重要。そうだろう?」

P「……でも、いいのか?折角の休みなのに」

飛鳥「休日に家でゆっくり過ごすなんて、ありきたりだろう?……フフ、ちょっとした抵抗ってやつさ」

P(いや、風邪に抵抗してくれないかな……)

P「いや、でもさ、こんな所にいて体冷やしたりしたら、元も子もないだろ?だから、まだ暗くならないうちに帰った方がいいんじゃないか?」

飛鳥「大丈夫だよ。寒いか寒くないかの判断くらい、ボクだって出来る」

P「うーん、まあ、そうなんだけどさあ……」

飛鳥「……ボクがいると、迷惑、かな……」シュン

P「あ、いや、違う!そういうことじゃなくて!えーっと……もうめんどくさいから言っちゃうけど」

P「お前、風邪引いてるだろ?」

飛鳥「…………」

P「俺もさ、帰れ、とか言いたくないけど……でも心配なんだよ」

飛鳥「……今日は、ここにいたい気分なんだ」

P「なんでまた……」

飛鳥「今日は親がいなくて、家にいても一人きり、だから……」

P「寂しかった、のか」

飛鳥「……」コクッ

P「……まあ、そうだよな。しゃーないな、好きなだけいていいぞ」

飛鳥「!」

P「その代わり」

P「毛布くらい羽織っとけよ」バサッ

飛鳥「……うん」

P「よしよし、いい子だな」ワシワシ

飛鳥「んっ………た、担当アイドルとはいえ、女子の頭を急に撫でるというのは、どう……うぁっ、ふぁっ……!」

飛鳥「……くしゅんっ!」

P「…………えーっと」

飛鳥「…………」

P「……やっぱり、可愛らしいくしゃみするな……?」

飛鳥「その回答は不正解だよ」

P「だぁーっ、だめか!」

飛鳥「……キミは何も見たり聞いたりしなかった。それで平和に事が済む。いいね?」

P「へいへい」

P「そんで、他に何か……ああ、温かいもんでも飲むか?」

飛鳥「あ、いや、そこまでしてくれなくても……」

P「うーん、そうか。んじゃまあ、俺はコーヒー淹れてくるわ」スタスタ

飛鳥「…………」

飛鳥「……暖かい」

P「いやー困った困った」スタスタ

飛鳥「どうかしたのかい?」

P「間違えてコーヒー2杯淹れちまったー。飛鳥、1杯飲んでくれないかー?……なんつってな、ははは」コトン

飛鳥「あ………」

P「いらないなら残してくれてもいいからさ。ちょっとでも暖かい物、飲んどいた方がいいだろ?」

飛鳥「……まったく。ずるいな、キミは」

P「こんなひねくれた大人にだけはなるなよー?」

飛鳥「そうかな。キミみたいな愉快な大人は、嫌いじゃないけどね」

P「褒められてんのか?それ」

飛鳥「フフ、どうかな」

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