咲「久」 久「お姉ちゃん」 (31)
久「今日の部活はここまで。明日はお休みにするから各自やることをやってから休日を楽しむのよ」
「はい」
久「あ、咲は話があるから少し残ってて」
久「それで……用件って、この間の事でいいのよね?」
咲「あ、はい」
久「さあ、それじゃあお願いを聞こうかしら」
咲「そ、その前に……何でもいいんですよね?」
久「え、ええ……出来る事ならね」
咲「じゃ、じゃあ……」
久「……」
咲「今日だけ、私に甘えて下さいっ!」
久「……へ?」
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―――――
久「甘えてって……咲が私に甘えるんじゃなくて?」
咲「はい!」
久「えっと……理由を聞いてもいいかしら」
咲「それは今はちょっと……」
久「そう……うーん……まあ分かったわ、そのお願い、聞きましょう」
咲「本当ですか!?やったあ」
久「それで、具体的にどうしたらいいのかしら?」
咲「えっと、色々考えてきたんですけど……今出来る事なら」
―――――
咲「頭を撫でる」
久「フム……はい、どうぞ」
咲「あ、はい」ナデナデ
久「……」
咲「どうですか?」ナデナデ
久「これは……そうねえ……恥ずかしいわね///」
咲「じゃあ慣れるまでもう少し……よしよし」
久「///」
―――――
咲「抱きしめる」
久「え、それは……」
咲「部長」ギュ
久「うぅ……///」ドキドキ
咲「よしよし」ナデナデ
咲「何か足りないような……部長も抱き付いてください」
久「うぇっ!?む、無理無理出来ないわよ!」
咲「むー……はい、分かりました……」
久「あっ……」
―――――
咲「膝枕」
咲「ベッドに行きましょう」
久「あ……え、ええ」
咲「さあどうぞ、これなら平気ですよね?」ペチペチ
久「あ、膝枕……ええ、気持ちいいわ」
咲「それは良かったです」
久「本当に、気持ちいいわ……目を瞑ったらすぐにでも寝てしまいそう」
咲「寝てもいいですよ」
久「いや、でも……」
咲「ほら、目を閉じてください……気持ち良いですよ」ナデナデ
久「あ…………」
―――――
久「咲……?」
咲「……」ペラ
久「咲……」
咲「……あ、おはようございます、部長」
久「おはよう……ごめんなさい、本当に寝ちゃうなんて」
咲「いえ」
久「それじゃあそろそろ帰りましょうか」
咲「部長、今晩私の家に泊まってください!」
久「えっ」
―――――
咲「お泊り」
咲「早速行きましょう」
久「一度、着替えとか用意するから家に帰ってもいいかしら?」
咲「着替えは私の分を使えばいいし日用品はお客様用のがありますよ」
久「え、えっと……母親に伝えて、あと夕飯も済ませて」
咲「連絡は、まあ……でも夕飯はごちそうしますよ」
久「そうねぇ……まあ連絡は電話でもいいかしら。じゃあこのまま行きましょうか」
咲「はいっ」
久「じゃあ案内お願いね」
―――――
咲「手を繋ぐ」
久「こっちの方は普段行かないから新鮮ね」
咲「そうですね。私は見慣れてますけど」
久「それでも、毎日通っている道でそういう事がない?」
咲「あ、あります。ふと気が付いたら花が咲いてたり、木の葉の緑とか、霜とか、空が綺麗だったりして」
咲「なんだか嬉しくなっちゃいます」
久「ええ……そうね」
咲「部長、少し寒くないですか?」
久「ちょっとね」
咲「じゃあ手を繋ぎましょう」
久「いいの?冷たいわよ」
咲「体や心が寒かったら、姉妹は温め合うものみたいですよ」
久「あら、それじゃあ咲は我慢して私の手を温めないといけないわね」
咲「我慢なんて。私は嬉しいです」
久「えっ」
咲「うん、冷たい」ギュッ
久「……」
咲「これが部長の手かぁ」ニギニギ
久「///」
―――――
咲「ただいま」
咲「着きました」
久「ここが咲の家ね」
咲「はい。それに、今日と明日は部長の家です」
久「私の……」
咲「寒いし入りましょう。ただいま」ガチャ
久「お邪魔します」
咲「部長」
咲「ここは部長の家でもあるから、『ただいま』です」
久「え、ああ。じゃあ改めて。ただいま」
咲「お帰りなさい」ニコッ
久「、」
咲「部屋はお姉ちゃんのを使って下さい、案内します」
久「……」キュッ
咲「部長?」
久「……もう一度、いいかしら」
咲「?」
久「『お帰りなさい』って」
咲「はい。お帰りなさい」
久「た……ただいま」
久「ただいま……咲」
咲「お帰りなさい、久さん」ニコ
久「うん……」
―――――
咲「ご飯」
咲「服は大丈夫ですか?少し大きい上着を用意したんですけど」
久「ええ、大丈夫よ」
咲「良かった。晩ご飯作りますけど、苦手な食べ物はありますか?」
久「特に無いわ。料理手伝うわよ」
咲「いえ、下準備とかはやっておいたので。くつろいでてください」
久「そう。じゃあ適当に過ごしておくわ」
咲「晩ご飯出来ましたよ」
久「あらそう」
咲「それ、議会の書類ですか?」
久「そうよ。普段は家じゃしないんだけど、他にやることも無かったしね」
咲「そうなんですか」
咲「そこの食器棚から取皿を出して下さい」
久「どれがいいかしら」
咲「小さいものと普通ぐらいのが」
久「はいはい」
咲「お茶碗とお箸はこれを使ってください」
久「あら、可愛らしいのね」
咲「はい。似合ってますよ」
久「そ、そうかしら」
咲「はいおまちどうさまです」
久「わお、すごく豪華ね。美味しそうだわ」
咲「ちょっと頑張りました。さあ食べましょう」
久「ええ、そうしましょう」
「いただきますっ」
久「ごちそうさまでした」
咲「お粗末様でした」
久「いやあ、本当に美味しかったわ」
咲「もう、何度も聞きましたよ」
久「どれも美味しくて自然と言っちゃうのよ」
咲「そうですか」
久「食器洗いなら任せて、これでも結構慣れてるのよ」
咲「でも……」
久「何もかもお姉さんがやらなきゃいけないわけじゃないわ。妹も仕事をしなきゃ」
咲「……そうですね。それじゃあ」
咲「二人でやりましょうか」
―――――
咲「お手伝い」
咲「私が洗うので」
久「私が拭けばいいのね」
咲「はい」
久「随分綺麗に洗うのね」
咲「そうですか?」カチャカチャ
久「お皿の裏まで丁寧に洗うなんて、ちょっと意外だわ」
咲「あはは、意外ですか……まあ、何となく気になるから」
咲「それに、奇麗に洗い終わって拭いた後のお皿の手触りが好きなんです」
咲「新品みたいで光ってて、また、まだ、ずっと使えるんだ、って」
咲「お皿やコップがそうある、そうでいられるっていうのが……」フッ
久「……」
久「……確かに、奇麗ね」
久「あ、もしかして自分がお皿を洗う役をしたのって、私に洗わせたくなかったから!?」
久「私そんなに大雑把だと思われてるの!?」
咲「え!?いや、そんなことは……」スッ
久「ちょっと!?」
―――――
咲「お風呂」
咲「お風呂に」
久「一緒に入るのね?」
咲「え?」
久「え?」
咲「一緒に入りたいんですか?それなら」
久「え、あ、いや……てっきりそう言うのだと思って」
咲「でも折角だし、それなら一緒に入りましょう」
久「い、いや別でいいんだけど」
咲「わあ、肌スベスベだ~」
久「ま、まあお肌には気を使ってるから……って、くすぐったいわ!」
咲「えー」ゴシゴシ
久「もう……」
咲「……昔、たまにこうしてお姉ちゃんと入ったなあ」シャカシャカ
久「お姉さん……照とはあの後、どう?」
咲「たまに電話しますよ」
咲「私、まだあんまり扱い慣れてないからメールの返信が遅くて」
咲「夜は私もお姉ちゃんも途中で寝ちゃうんで、それから電話しよう、って」シャカシャカ
久「ふふっ、機械音痴も相当ね」
咲「でも最近は美穂子さんと練習を兼ねてメールしてるんですよ。絵文字付けたり」
久「あらそうなの?それはお互いに良い事ね」
咲「はい。流しますよ」
咲「結構恥ずかしいですねこれ……」
久「やる側は楽しいわね」ゴシゴシ
咲「でもちょっと、嬉しいです」
久「……」
咲「お姉ちゃんがどんな気持ちでいたのか分からないけど……こんな気持ちだったら良いな」
久「きっとあなたが……いや、それこそメールで聞いたらいいじゃない」
久「電話だと恥ずかしくてまとまらない言葉でも、文章なら大丈夫でしょう」
咲「……そうですね」
久「……無理があるわ」
咲「そうですね……」
久「しかもものすごく恥ずかしいわ」
咲「返す言葉も無い……」
久「向かい合うのよりはマシかもしれないけれど、大差無いわよ、これ」
咲「なんていうか……人間椅子の事が理解出来そうな」
久「お願いだから変な扉を開かないでね?」
―――――
咲「お手入れ」
咲「髪、サラサラですね。いいなぁ」
久「癖っ毛だものね。私もボサボサなのはイヤだわ。手入れしないとすぐ跳ねるし」
久「良かったらファンデーションとかシャンプーのいいのを紹介するわよ」
咲「本当ですか?」
久「ええ。あ、じゃあ今度一緒に買いに行きましょうか」
咲「あ、そうですね」
久「ちなみに今使ってるのは?」
咲「これです」
久「これだけ?」
咲「はい」
久「……ちょっと、肌、見せなさい」
咲「え?はい」
久「……くっ」
咲「あ、あああの、私、ちょっと肌が敏感だから少し高いの使ってて。今使ってるのが」
久「ゴートミルク?ああ、これ確か……」
咲「え?」
久「よし、いいのを見つけましょう」
咲「はい?」
―――――
咲「呼び方、話し方」
咲「少しの間でも私がお姉ちゃんになります」
久「ええ」
咲「なので呼び方と話し方を改めます」
久「そうね」
咲「私は『久/久ちゃん』と呼びます」
久「久ちゃん!?」
咲「それと敬語も今からやめます」
久「ま、まあそれはいいけど、でも久ちゃんって!」
咲「じゃあまずは久でならしていこう、久ちゃん」
久「ふぇっ///」
咲「私の事はお姉ちゃんって読んでね、久」
久「うぅ……」
咲「遠慮しないで、大丈夫だから」
久「……」
咲「久」
久「お…………おねえ……ちゃん………………」
咲「よく言えました」ナデナデ
久「……///」
咲「今だけでも、久は可愛い妹だよ」
久「うん……」
―――――
咲「抱きしめて頭を撫でて膝枕してなでなでして甘えさせる」
久「今悪寒が」
咲「さあ、学校でやったこと、またやろう」
久「学校の……」
咲「ここなら誰も見てないよ」
久「あれを……」
咲「いくらでも出来るんだよ」
久「……じ」
久「じゃあ……お願い」
咲「うんっ」
久「……」
咲「こっちに来て、久」
久「う、うん」ススッ
咲「いらっしゃい」ギュッ
久「おっ、おじゃまします」
咲「すごく緊張してる、ドキドキしてるのが分かるよ」
久「お姉ちゃんだって」
咲「久が可愛いからだよ」
久「かっ可愛い?」
咲「とっても可愛いよ」
久「あぅ……///」カァァ
咲「久ちゃんは可愛いなあ」
久「もう、咲ってば」
咲「……」スッ
咲「久、私の事は何て呼ぶの?」
久「お、お姉ちゃん……」
咲「……」
久「あ、あの……」
咲「そうだね」
久「あっ」
咲「どうしたの?」
久「お……怒ったのかなって」
咲「こんな事じゃ怒ったりしないよ。でもね」
久「でも……?」
咲「お姉ちゃんって呼ばれると、嬉しい」
久「っ……私も」
久「私も、お姉ちゃんって呼んだら……気持ちいい」
咲「それはもっと嬉しいな」
久「私も……」
咲「そっか」
久「……」
咲「耳かきしてあげる」
久「え、い、いいよ」
咲「ほら、横になって」
久「う、うん……」ゴロン
咲「怪我すると危ないから動かないでね」
久「ん……」
咲「よーし」
咲「こんな所かな」
久「お、終わった……?」
咲「じゃあ反対側をやるから、こっち向いて」
久「うん……ねえ」
咲「どうしたの?」
久「変な声出てたけど、その……」
咲「可愛かったよ。それが?」
久「う、ううん……それならいいの」
咲「そう?」
咲「はいおしまい、起きていいよ」
久「あ、うん」
咲「もう少しこうしてたかったら、このままでもいいよ」
久「……じゃあこのままもうちょっと」
咲「うん、いいよ」ナデナデ
久「んふふ……」
咲「気持ちいい?」
久「うん、とっても」
咲「私もこうして頭を撫でてるといい気分になるよ」
―――――
咲「お休みなさいを言う」
咲「久、久」ユサユサ
久「んん……」
咲「疲れてるならもう寝よう。一回起きて」
久「うん……ふぁ……」
咲「歯を磨こう。私はベッドを整えてから行くから。洗面所は分かるよね?」
久「うん……」
久「んー……」ボー
咲「どうしたの?」
久「歯磨き粉は……?」
咲「そこに出してあるよ」
久「あー……」
咲「もう、しょうがないなあ」
久「ごめんなさい……」
咲「口開けて、磨いてあげる」
久「あー」
咲「電気消すよ」
久「はーい」
咲「寒くない?」
久「ん……ちょっと寒い」
咲「そう、じゃあ」
久「お姉ちゃん、抱きついていい……?」
咲「ふふ、いらっしゃい」
久「やったっ」
咲「もしかして、目が覚めた?」
久「えへへ」
咲「じゃあちょっとお話しよう」
久「うん」
咲「あ、そうだ……あるところに女の子がいました」
咲「その本が好きな女の子はある女の人と知り合いました」
咲「その人と自分はほんの趣味や境遇がどこか似ていて、気になっていました」
咲「ある時、何かの拍子に女の子はその人の本当の姿を知りました」
咲「いつもは大きくて強くて、宝石みたいに輝いて見えていたのに」
咲「でも本当は小さくて脆くて、ガラスみたいに透き通った心を持った人だったのです」
咲「その人はずっと強く、輝くように見せていただけの頑張り屋さんでした」
咲「そしてとても寂しがり屋さんで、優しかった」
咲「その人が自分のためにしてくれたこと、その優しさに、女の子はどうやってお返しをしたらいいか考えました」
咲「そして女の子はある考えにたどり着きました」
咲「それは、彼女に甘えてもらうこと、そして毎日の疲れを少しでもいやす、というものです」
咲「頑張って無理をして、そうして大人になった彼女、本当はまだ甘えたい女の人に」
咲「たった一晩でも子どもに戻って楽しんでもらう……そうして恩返しをしようと思いました」
咲「女の子は年上の……ん」
久「スー……スー……」
咲「寝ちゃったかな」
咲「実は不器用な年上の女の人は甘え方が分からないから……私が甘えさせないとね」
咲「私も寝ようかな……おやすみなさい、久」チュッ
久「んん……おねえちゃん……」
―――――
咲「またおはようって言って」
久「んん……」
咲「あ、部長。おはようございます」
久「おはよう……」
咲「朝ごはん出来てますよ」
久「ん……んん……?」
咲「じゃあ下で待ってますから」
久「ちょっと待って」
咲「はい?」
久「昨日のは、もう終りなの?」
咲「はい、一日だけでしたから」
久「そう……」
咲「はい、それじゃ
久「咲」
咲「はい」
久「今日だけ私のお姉ちゃんになってください」
咲「……はい」ニコッ
以上です、久たんイエイ~
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