モバP「みく、ポッキーゲームしようぜ」 (23)
みく「えっ!?」
P「何驚いてるんだ。ポッキーならあるぞ」
みく「え、だってポッキーゲームって……」
P「チョコでいいよな」
みく「あ、うん……」
P「どうした、みく。顔が赤いぞ?」
みく「だって……Pチャンとポッキーゲームなんて……」
P「なんだ、怖いのか?」
みく「怖くなんかないにゃ! なんでPチャンはそんなに余裕なのさ!」
P「そりゃあ自信があるからな」
みく「自信ってそんな……だって顔があんなに……」
P「顔? 何の話だ。まぁいいか。みくとは初めてだったな」
みく「ん? みく『とは』? それってどういう……」
P「俺はコレでいいか。それじゃあみく。好きなのを『抜け』よ」
みく「ポッキーの袋差し出してきて、抜けって一体なんなの……」
「待ってください」
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P「ありすか。どうしたんだ?」
ありす「みくさんはポッキーゲームを知りません」
P「え、だってさっき知っている風だったけど」
ありす「おそらくみくさんが知っているのは一本のポッキーを二人が両端から食べていく
という一種のパーティゲームタイプのほうかと」
P「なんだ。そうだったのか」
みく「ふ、普通そっちにゃ!」
P「でも俺はそっちをやってもいいんだぞ?」
みく「え……」
P「さぁみく。俺とポッキーゲームしてチュッチュナウ」
みく「Pチャン……」
ありす「意味不明な茶番はやめてください。みくさん、Pさんの言っているポッキーゲームとは
二人の剣士がポッキーを武器に戦うゲームのことです」
みく「ありすちゃんの説明のほうが意味不明にゃ」
ありす「あっているのですが……実際に見たほうが早いですね」
P「お、じゃあありすやるか?」
ありす「いえ、私ではPさんの相手は力不足です。出来れば……」
ガチャ
凛「プロデューサー。いる?」
P「お、ちょうどいいところに」
凛「今日が何の日か、わかってるよね?」
P「無論」
凛「じゃあ……『始めようか』」
P「いいだろう。お前の成長を見せてみろ」
ありす「これは好カードですね。みくさん、よかったですね」
みく「え? そうなの?」
ありす「なにせどちらも世界クラスの達人です」
みく「えぇ……」
P「開封。一本選びな」
ありす「まず試合では最初に自分のポッキーの選出を行います。
野良試合ではジャンケンで選出する順番を選びますが
今回はお互い世界ランク持ちなのでランクの低いほうから選びます」
みく「それはルールなの?」
ありす「はい。ポッキーゲーム世界試合でも採用されている国際ルールです」
凛「私はこれでいくよ」
P「じゃあ俺はこれで。ありす」
ありす「お互いの選出が済んだら余ったポッキーは観客が食べながら観戦します」
みく「それはルールなの?」
ありす「はい。ポッキーゲーム世界試合でも採用されている国際ルールです」
みく「えぇ……」
P「審判を……ありすはみくに解説だし誰に頼むかな」
「わたくしが承りましょう」
P「桃華」
桃華「その試合。わたくし、櫻井桃華が審判いたしますわ」
みく「桃華チャン、ルール知ってるの?」
桃華「ええ、熟知しておりますわ」
みく「そっかぁ……」
桃華「では両者、位置に付き、構え」
凛「……ふぅ」
P「……よし」
桃華「始め!!」
凛「最初から本気で……行くよ!」
みく「速い!」
ありす「一気に距離を詰めましたね」
凛「やっ! はっ!」
P「よっ、ほっ」
みく「Pチャンの防戦一方にゃ」
ありす「ええ、凛さんの攻撃速度は世界でも五本の指に入ると言われています。
故に多くの試合では開始三十秒で勝負がつきます」
P「おっと」
ありす「Pさんの体勢が崩れた! 大技が来ます!」
みく「えっ」
凛「蒼の剣を受けよ! アイオライト・ブルー!」
みく「ポッキーが青く光ったにゃ!」
P「来たな!」
ありす「凛さんが繰り出した必殺技をPさんが防御する! でもこれは……」
桃華「決着ですの!」
みく「どっちが勝ったにゃ!」
ありす「ポッキーゲームの勝敗条件は三つ。
一つは選手が行動不能になった時。
二つ目は選手が降伏を宣告した時。
最後に武器としたポッキーが四分の一以上欠けたと審判が認定した時」
桃華「勝者……P選手ですの!」
P「残念だったな。凛」
凛「くっ……やはり私では勝てないの……?」
みく「凛チャンのポッキーが半分に折れてるにゃ……。
でも大技を放ったのは凛チャンなんでしょ?」
ありす「ポッキーゲームの強さは力では決まりません。
ある程度の筋肉があれば最高の威力は出せるようになりますから。
そうなると多くの選手はより早くポッキーを振るうことに重点を置きます」
みく「確かに筋肉モリモリのマッチョマンになってもポッキーの強度が追いつかないにゃ。
でも速度の速かった凛チャンが負けたにゃ」
ありす「ええ。ポッキーゲームの強さはさらにその先があります。
それは目です」
みく「目?」
ありす「はい。目と言っても人体における目とは違います。
物にはその一点を突くだけで簡単に破壊出来る場所が存在すると言われています。
古くから物を作る熟練者はこの点を見極めることが出来るそうです」
みく「つまりPチャンは……」
ありす「ポッキーゲーム世界ランキングの上位十人はそのポッキーの目を見る事が出来る達人
なんです。故に彼らは一般人とは次元の違う強さを持っています。
人々は尊敬と畏怖の念を込め、彼らを『ビックテン』と呼んでいます」
みく「なんだかすごい話になったにゃ。ちなみに凛チャンは……?」
ありす「凛さんは現在世界ランキング十一位です。まだ目を見ることは出来ないそうなので
一般人における最強と言えます。先ほどの戦いは凛さんの攻撃をPさんが凌ぎながら
目を探し出し、大技へのカウンターという形でポッキーを折った、という展開です」
みく「なるほど。わからんにゃ」
ありす「Pさんは世界ランク七位。主に防御とカウンターを主とする戦闘スタイルですね。
『不動』という二つ名で呼ばれています」
P「ま、そういうことだ。残念だったな、凛」
凛「いつか必ず勝ってみせるから。私は諦めないよ」
P「ああ、いつでも待ってるさ」
みく「でもそんなすごいっぽい人が身近にいるなんて思わなかったにゃ」
P「俺以上の世界ランカーがこの事務所にいるぞ?」
みく「えっ?」
ガチャ
珠美「おはようございます!」
P「お、噂をすれば」
みく「珠美チャンが世界ランカーなの?」
珠美「む、何の話ですか?」
P「ポッキーゲームだよ」
珠美「ああ、なるほど。いかにも! わたくし脇山珠美は世界ランク三位です!」
みく「でも確か剣道では補欠って……」
珠美「ポッキーゲームは体格にあまり左右されませんからね。
力も必要ありませんし、要は技術次第ですから」
みく「なるほど。納得……出来るにゃ」
P「実はみくがポッキーゲームを知らなくてさ、今凛との試合を見せたところなんだ」
珠美「凛さんは強いですからね。目が見えるようになればプロデューサーも危ういですよ」
凛「でも目が見えるようになるにはどうすればいいのかわかんないんだよね」
珠美「珠美は毎日ポッキー十箱開けて一本ずつ強度を調べてましたね」
みく「えぇ……」
凛「今度やってみようかな」
ありす「丁度いいですし、目が見える選手同士の試合も見たいですね」
桃華「審判は引き受けますわよ」
珠美「いいですね! やりましょう!」
P「珠美かぁ……珠美は強いからなぁ……」
凛「みくだって見たいよね?」
みく「え゛っ!? まぁ、み、見たいかにゃあー……」
P「仕方ない……。珠美、胸を借りるぞ」
珠美「どのくらい成長したか見てあげますよ」
桃華「では新しいポッキーを開封しましょう」
ありす「いい試合が見れますね。『不動』対『一刀』の試合なんてまるで
公式の世界試合ですよ」
みく「あ、珠美チャンにも二つ名あるのね……」
桃華「では両者、位置につき、構え」
P「……来い」
珠美「……いきますよ」
桃華「始め!!」
P「……」
珠美「……」
みく「さっきの試合と違って始まっても両者動かないにゃ」
ありす「いえ、よく見てください。珠美さんがじりじりと近づいています」
みく「あ、本当だ。構えも両手で剣道っぽく持って……あれ? 構えって自由なの?」
ありす「ええ。ポッキーを体の前に出す以外は決まりはありません。
Pさんは防御しやすいように半身前に出してますし、凛さんも似たスタイルでしたよね」
みく「フェンシングの構えみたいにゃ」
珠美「……ふぅ」
みく「あ、構えが変わったにゃ。あれは……居合?」
ありす「あれが珠美さん本来の構えです。攻撃の射程に入れば一太刀で折られます」
みく「だから『一刀』なのね。でも目を探すには撃ち合う必要が……」
ありす「ありません」
みく「それは」
ありす「既に珠美さんには目が見えているんです。つまりまだ発見出来ていないPさんが
圧倒的な不利な状況です」
みく「そんな! 一太刀で受けて折られるなら勝てるわけがないにゃ!」
ありす「まともに受ければ、です。Pさんの最善の手は来るであろう最初の居合を
表面で受け流し、目を探し当てて、二発目でカウンターをいれて折る。
おそらくこれしかないかと」
みく「そんなことが出来るの……?」
ありす「……ポッキーを自分の体より後ろにしていい時間は十秒。
もう……決まります」
珠美「……一刀!」
P「ッ!!」
ありす「なっ……!!」
桃華「決着!!」
みく「え? 何が起きたの?」
ありす「信じられない……。石突を突いたんだ……」
みく「石突?」
P「まさかそんな手で来るとはな……」
珠美「ふふふ。修行が足りませんね」
凛「石突って言うのは簡単に言えば先端。剣先とは逆のね」
ありす「先ほど私が言った通り、おそらくPさんは居合が横切りだと読んで
ポッキーを横に構えたんです。それを珠美さんはさらに読み
指先で持っていたポッキーの石突を弾いた……。剣道であれば小手ですね」
桃華「ポッキーゲームにおいて、選手同士の接触はポッキー同士のみと定められていますの。
つまり通常ならば小手を狙おうものなら手にあたり、審判に判定を取られますわ」
P「だが俺の手にはポッキーのチョコの跡が……」
みく「ない……」
桃華「つまりこの勝負、珠美さんの勝ちというわけですの」
珠美「剣道もこのぐらいうまくなればいいんですけど、なかなかうまくいかないものです」
みく「……すごい世界にゃ。まさかこんな世界があるなんて……」
ありす「みくさんやりましょう、ポッキーゲーム。そして世界を目指しましょう」
凛「これだけ強い珠美ですら未だに三位。これ以上の強敵がいるなんてわくわくするよね」
P「みくの戦いはここから始まるんだ」
みく「……やるにゃ! みくもポッキーゲームを!」
こうしてまた一人、ポッキーゲームの魅力にとりつかれた人間が生まれた。
この先、みくの未来に何が待っているのか。それはまた別のお話。
以上
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