白坂小梅「終末を迎える私」 (8)
デレステの譜面が途中で止まるギミック()のせいでパーフェクトなかなか取れない。
そんな苦しい環境にガチャから舞い降りたSRハロウィン小梅が。
・短めの作品です
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バタリ と、扉が閉じて……
聞こえていた気がする歓声も、閉じた空間には……届かないね。
これで終わり――少し、物足りない気がするけど、私の舞台はこれで最後。
「……お疲れ様、小梅」
「あっ……プロデューサー、さん……」
思い出すと……数年間だけど、一緒に長く歩いてくれた。
そして……助けてくれた、導いてくれた。
ま、まるでゾンビに囲まれた……危ないヒロインを、助けにきた主役みたい……
だけど、それも……一旦は、終わり。
この日が、私の最後の日だから……
「良かった、かな……?」
「何言ってんだ! 最高で、素晴らしかったに決まってるだろ……!」
プロデューサーが、私に見えないよう……背を向けながら、泣いてる。
こんな風に、表には出そうとしない、けれど……一緒に喜んでくれたり、
と、時には泣いてくれたり……そんなプロデューサーが、好き……だよ?
「……アイドルとしての、最後で最高の舞台に関われた事を誇りに思うよ」
「え、えへへ……で、でも、なんだか……まるでお別れみたいな、空気――」
「おいおいおい」
「俺達の繋がりは終わらないよ。ただ一つ、白坂小梅という人物に区切りがつくだけさ」
日陰の住人……だった。
光を、見たことがなかったかもしれない私に……手を伸ばして、
私自身がこうやって……皆の、光や夢になれるまで、育ててくれて――
と、途中は悪夢だったかも、しれないけど……でも最後は、やっぱり……
私のために……集まってくれる人達も居るほど、う、嬉しい。
「う、うん……そう、だね……」
「アイドルほど華やかじゃないかもしれないけどな」
「他のお仕事……あ、アイドルの時にも、少し……やった」
私は、ちょっと変わってる……かもしれないけど、
ホラー映画とか……そんなのに、興味……あった。
その趣味を……活かした、次のお仕事を……待ってる……
「今後は幸子みたいに女優やモデルでも、輝子みたいにライターなんかも出来るさ、一緒にな」
色々な子と、一緒に舞台にあがったこともある……
その中でも、私は……一番、長くアイドルをしていた、うん……
私が……アイドルを続けた方がいい、って……お願いしたから……
「シンデレラとして登りつめた階段も豪華なら、去っていく降りる階段だって豪華にな? なんでも俺が用意するぞ」
「わ、私は……階段より、怪談の方が、好き……かな……」
「ははは、なるほどな!」
「まずは、何になりたい? 何を目指す?」
最初の私だったら……そもそも、登る階段が無かった。
何かしたいことも、できることも……無かった。
アイドルの時の私でも……選べなかった、と思う……
いつでも、自分から動くことは……無かった、かも。
「プロデューサー……さん……あの、ね……」
「おう」
でも……今は、やりたい事も……出来る事も、多かったはず。
自分で、決められるほどに……なった、でしょ? プロデューサーさん……
「じ、実は……決まってて……」
「そうなのか?」
「う、うん」
「なるほど。既に考えてるくらいなら、尚更急がなきゃな? 早くも次のプロデュースがスタートするぞ!」
もう、早い……次の道に向けて、歩き出すって……良い事、だね。
でも……だからこそ……私が、ガチャリと扉を開けたら……私の役目は終わり。
だって、もう私に聞いてくる私は……い、居ないから……
「ほら行くぞ! 興奮冷めないライブの熱をバックに、な!」
「う、うん……!」
私が、プロデューサーに続いて……部屋を出る。
や、やっぱり……わ、私は、誰かに導かれるのが、いいのかな?
似合ってる、ように見える……いや、プロデューサーさんとだから、かな……?
こ、こうなるまで……長かった、ね……?
次のステップに、私は……いらない……
これでようやく、終わっちゃう……でも――
「…………あれ?」
きょろきょろと辺りを見回してる。
何かを、探して……だけど……目的の子は、見つからないよ?
「居ない……?」
そう、居ないよ。
もう十分……私は、私で歩いていけるところまで、一緒に隣で支えた……
次は……“私”が“私”になって、“私”を支えてね……?
「……どうした? 小梅、急に立ち止まって」
「い、いや…………なんでも、ない……?」
「……そうか? もし疲れてるなら遠慮せずに言うんだぞ?」
「それは、大丈夫……なんだか、不思議……元気……」
「へぇ、小梅の口からは珍しい言葉だな? ファンから貰ったパワーの賜物だ! ……と、いうのもあるだろうけど」
「……なんつーか、憑き物が取れたみたいな」
「それ……私だと……あんまり良くない、かな……?」
「い、いやいや、確かにそうだけどもうホラーなアイドル白坂小梅は完結したんだぞ?」
「どの路線に向かうにしても、気分改めてが大事だからな。その辺を無意識に出来てるあたり、さすが小梅だよ」
「ほ、褒めても……何も、出ない……」
「ははは、いい笑顔だ!」
「……ふふ……そ、そう、かな?」
おわり
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