皇帝「不老不死を目指す」側近「バカですか、あなたは」(17)

皇帝「側近よ」

側近「なんでしょう?」

皇帝「最近、朕は死というものが恐ろしくなってきた」

側近「これはこれは、陛下らしからぬ高尚な悩み。いったいなぜ?」

皇帝「宮殿のあちこちに隠しているエロ本、死後あれが皆に見つかったらと思うと……」

側近「バカですか、あなたは」

側近「そんなに気になるのなら、今すぐ回収してはどうです」

皇帝「いや、あまりに隠しすぎて、どれをどこに隠したか分からなくなってしまったのだ」

側近「まあ最悪、見つかっても陛下のものとは分かりゃしませんよ」

皇帝「全部、朕の名前を書いてしまってあるのだ」

側近「バカですか、あなたは」

皇帝「というわけで、不老不死を目指す」

皇帝「側近よ、おぬしに命じる」

皇帝「天下から、不老不死になれる方法を持って参れ!」

側近「ははーっ! かしこまりました!」

……

側近「どうぞ」ドサッ…

皇帝「うわっ、すごい薬の山」

側近「不老不死の妙薬求む、とお触れを出したところ、こんなに届きました」

側近「もちろん、いちいち毒味なんかしていません。いかがいたしますか?」

皇帝「もちろん、全部飲むよ!」

皇帝「うえっぷ……」

側近「大丈夫ですか?」

皇帝「さすがにこれだけ山盛りの薬を全部飲むってのはキツイものがあるな」

側近「でしょう? かえって体に悪いですよ。ここらでやめておきましょう」

皇帝「しかしだな、フードファイターとしての朕の誇りが……」

側近「いつからフードファイターになったんですか、あなたは」

皇帝「せめて、煮たり焼いたり、味付けしてくれればもっと頑張れるんだけど」

側近「バカですか、あなたは」

……

側近「こちらをご覧ください」ゴロン…

皇帝「なんだ、この七つの球は」

側近「タイガーボールという、どんな願いでも叶えてくれる球です」

皇帝「ほぉ、ものすごくパチモンくさいな」

側近「おっしゃるとおりですが、とりあえず虎を呼び出してみましょう」

側近「出でよ神虎、そして願いを叶えたまえ!」

神虎「どんな願いでも一つだけ叶えてやろう」

側近「出ましたよ! さぁ、願いを!」

皇帝「うむ」

皇帝「ギャルのパンティおくれ!」

側近「バカですか、あなたは」

パサッ……

皇帝「明らかに男物のブリーフが出てきたんだけど」

側近「しょせんパチモンですからね」

側近「不老不死なんて願ってたら、もっと悲惨なことになったかもしれません」

側近「で、どうしますか? そのブリーフ」

皇帝「せっかくだし、これからはブリーフ一丁でいこうと思う」

側近「バカですか、あなたは」

……

皇帝「なんだそれは?」

側近「水銀です」ドロ…

皇帝「ほぉ~、キレイだな。なんとも美しく、キレイで、美しい」

側近「無理しないで下さい」

側近「遠い遠い異国の皇帝には、これを不老不死の妙薬と信じて飲んだ者もいるそうです」

皇帝「薬なのか?」

側近「猛毒です。我が国にも中毒者が多数出ています」

皇帝「よし、飲む」グビグビ

側近「あっ……」

皇帝「良毒口に苦し、というしな」

側近「バカですか、あなたは」

皇帝「ううう……」

側近「大丈夫ですか?」

皇帝「気持ち悪いけど……わりとなんとかなりそう」

側近「なんとかなるものなんですか。明らかに致死量でしたが」

皇帝「おしっこが出た」チョロチョロ…

側近「なんですか、いきなり!?」

皇帝「これを水銀中毒で苦しんでる人々に飲ませれば、かなり効く気がする」

側近「バカですか、あなたは」

側近「意外や意外、あの尿が全国の水銀中毒で悩まされている患者を救いましたよ」

側近「陛下をバカ呼ばわりした非礼をお許しください」

皇帝「許してやろう」

側近「ははーっ!」

皇帝「では今度は朕が皆の小便を飲む番だな」

側近「バカですか、あなたは」

……

……

……

皇帝「こんなことをやっていたら、時間はどんどん過ぎていき……」

皇帝「えぇと、朕が不老不死を志してから、どのぐらい経った」

側近「ざっと5000年ぐらいですかね」

皇帝「そうか」

皇帝「朕たちだけ、ずいぶんと長生きしたものだ」

側近「まったくですな」

皇帝「死ぬ気が全くせん。これが不老不死というものなのか」

側近「おそらく、そうでしょうな」

側近「ところで最近、不老不死になるコツのようなものがようやく分かってきました」

皇帝「申してみよ」

側近「それは、バカであることです。それもちょっとやそっとでなく、とてつもなく」

皇帝「ほぉ」

側近「理由は色々考えられます」

側近「バカすぎて死という終着点にたどり着けないとか、あの世から拒否られてるとか」

皇帝「なるほど」

側近「なるほどで済ませるのですか。やはりあなたはバカですね」

皇帝「うむ、しかしそうなると疑問も残る」

皇帝「朕はともかく、なぜおぬしまで不老不死状態になっておるのだ?」

側近「それはそうでしょう」

側近「陛下のようなバカに飽きずに従う私もまた、立派なバカということです」





― 完 ―

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