俺ガイル×脳コメのssです。
初投稿で、更新も遅くなりますが、応援していただけると嬉しいです。
エロ要素は排除していきます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442478825
~俺ガイルサイド~
八幡「……ぷっ、くく……」
いやあ、このたまたま書店で見つけた『俺の脳内選択肢が学園ラブコメを全力で邪魔している』、ガガガじゃねぇが面白いな。
学校で読んでたら笑いすぎて引かれるまである。
ここまで純粋に笑えるヤツは……別に久しぶりでも何でもないが、この最新刊超ホワイトテイルだし、他の巻も買ってみるか。
つか、ここまで災難なのに、何でコイツ周りの女子に好かれてんの?
俺なんか選択肢なくても超ぼっちなのに。リア充爆発しろ。
はあ~、続きが気になるが、あいにく金欠だな。もうしばらく待つか。
……ぼーっとしてたら、選択肢とか出てきそうだな。
出てほしいわけではないんだがな……こう、なんというか、主人公に憧れるというかな……あ、やべ、これめっちゃフラグた――
【選べ
1,このまま選択肢が一ヶ月ランダムで発生する
2,このまま選択肢が一年間ランダムで発生する
3,このまま選択肢が一生出続ける
※なお、どの選択肢を選んでも、脳コメの記憶は消える。 】
……おい、うそだろ?
こういうフラグ回収とも言えないようなやついらないんだけど。
~脳コメサイド~
奏「……ぷっ……ははぁっ!」
やっべ、面白い→尾も白い→ホワイトテイル って……
思わず家で爆笑してしまった。
『青春とは嘘であり、悪である』……まさしくその通り。
ショコラ「ふすー……ふすー……」
よかった、ショコラはまだ寝てるみたいだ。
爆笑したせいで起こしたら悪いからな。
しっかし、この『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』ってやつ……あのいいかげんなUOGでもなければ、スニーカーでもないけど、すっげぇ面白い、いやホワイトテイルだな。
これ、主人公かわいそうだな。俺ほどじゃないけど。
今日も学校で……
遊王子「かーなでっち!今日の発明品はこれ!」
奏「一日で一つ制作したのか!?いや、てか、一日に一つずつ今までつくってたか!?そんな急にしてました的なこと言われても……」
遊王子「でねでね!今回のやつはすごいんだよ!名付けて『ドキッ!フルダイブの秘薬~これであなたは二次元の住人~』っていってね!自分が好きな物語の中に入れるんだよ!擬似的で、物語を改編する事まではできないんだけど……かなでっち!ちょっちためしてみて!」
奏「いや、そんなもん誰が――――」
【選べ
1,ドキッ!フルダイブの秘薬~これであなたは二次元の住人~
を飲み干す
2,遊王子謳歌に『アバズレンZ』を飲ませる 】
実質これ1択じゃねえか!
謳歌にアバズレンZを飲ませるわけにはいかねえだろ!
これを知らない人に簡潔にわかりやすく説明すると、媚○だ、アバズレンZは。
奏「わかった、飲むよ……」
そして俺は、栄養ドリンクくらいの大きさビンのなかの液体を飲み干した。
すると、軽くS○Oをやってきた気分になって、疲れた。
↑の字面だけだと、非常にわかりづらいのが難点。○2つだな。
奏「っぶはあっ!!なんてもんつくってんだ!軽くデスゲームしてきた気分じゃねえか!」
謳歌「じゃあ、成功だね!お父さんとこの前テレビ見てて、『こんなゲームしてみたいな』って話したのがきっかけ!」
奏「なんてこと話てんだ!あと、どうせ作るなら本体作れよ!なんでわざわざ薬にしてんだよ!」
謳歌「え~……かなでっち、薬じゃないよ、クスリだよ」
奏「なぜか印象が悪くなった気がする!?」
……という、いつも通りっちゃいつも通りのやりとりがあり。
奏「さて……夕ご飯時は過ぎたけど、軽くなんか作るか」
俺は台所に向かおうとして――
【選べ
1,総武高校に転入する(一年未満。行くときに俺ガイルの内容は記憶から消え、帰って来た時に戻る)
2,海浜幕張高校に転入する(折本かおりにディスられる、行くときに俺ガイルの内容は記憶から消え、帰って来た時に戻る) 】
え、なにこれ?
※なにか選択肢に関してのネタなどあればお願いします。
支援しますよ 選択肢は思いつかんな
④
選べよ
1.権藤大子に結婚を申し込む
2.平塚静に結婚を申し込む
1.元気よく「やっはろ~ゆきのん」と雪ノ下雪乃に挨拶する
2.ニヤニヤしながら「よぉ脇ノ下」と雪ノ下雪乃に挨拶する
~俺ガイルサイド~
……いや、これ、1しかねえだろ。3とか終わってるわ。
一生とかホントに無理ッスから。てか、できるんならなくしてくれませんかね?アマノカミノソラウさん?
というか、脳コメの記憶をピンポイントで、どうやってなくすんだよ。
とここで、頭にとんでもない激痛が走る。
つっ!……これが例の頭痛ってわけか。てか、なんで俺に選択肢降りてんの?この世界って、脳コメじゃないよね?俺ガイルだよな!?
ここで再び、催促の頭痛。
八幡「……ってえ~、しゃあねえ、1だ!」
すると、ぐにゃりと視界が回った。
~ここで合体ルート~
目の前に見慣れた家。のリビング。
そして、美形の高校生と思われる男の姿があった。
逆に。
奏からみると、そこはどこか既視感のある、とあるリビングだっ
隣に顔がある。
つまりは、床に並んで寝ているわけで。
男二人が、床に寝ている。かなりの至近距離で。
八幡(こんなとこ、小町や誰かに見られたら……)
奏(えっと……まずは状況を整理……
【選べ
1,比企谷小町にこの状況を見られる
2,比企谷小町に目撃されるかわりに、比企谷八幡の『呪い』が消える 】 】
奏(整理……したいのになあ……)
泣き顔になる。精神的なものと、頭痛的なものとの両方で。
まず、比企谷八幡と小町って、誰ですか。
頭痛。
奏(やっぱ、呪いは消えた方がいいよな。うん)
2を選び取る。
八幡「ううーん……」
「ごみいちゃん……?」
同時に、リビングの出入り口に、中学生くらいの女の子がいた。
大子さん「奏ちゅわあん、わたしから離れるだなんてひどいじゃない」
八幡・奏「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(以下略)」
比企谷家のリビングに響き渡る悲鳴。
無理矢理なこの世界は、無理矢理の方向転換のために、少し世界観をいじるくらいのことはするようだった。
サイド使いかよwwwwww
どっかで未完の俺ガイル×脳コメ見たが同じ人?
※連休中は投稿できないかもです。
書きためは頑張る神原ので、よろしくです
あ、本編に関係ない作者コメントは、最初に※をつけますね。
つーことで、状況確認。
八幡「お前は天草奏というんだな?」
奏「君は比企谷八幡でいいね?」
八幡・奏「で、なんでこんなことになっているんだ?」
「お兄ちゃん!」
見知らぬ女の子が話しかけてくる。
八幡「どうした、小町」
どうやら、小町ちゃんというらしい。
小町「今日から住んでいる家のリフォームで、うちに一年滞在する天草奏さんじゃない!忘れたの?」
八幡「そうだったか?」
奏(そうだったの?)
小町「そうだよ!作者の無理なせっt……いや、お父さんの仕事の同僚の息子がちょっと家に住めないからうちに泊めるって、昨日言ってたじゃん!もー……ごみいちゃん、ちゃんとしてよね」
とても活発な女子のようだ。
小町「あ、天草さん!わたし、比企谷小町っていいます!これからしばらくよろしくお願いしますね!」
八幡「……そういうことらしいから、よろしくな、天草」
奏「ああ……よろしく。僕のことは奏でいいよ」
小町「はい!奏さん!早速明日から学校ですが、制服はアイロンかけましたから!あと、わからないことがあったら言ってくださいね!わたしも小町でいいですよ!」
奏「うん、ありがとう小町ちゃ――」
【選べ
1,「うわあ、やったね!これから女子中学生と一つ屋根の下で暮らすんだ!」
2,「うわぁ、やったね!こんな可愛い女の子が今日から僕の妹だなんて!」 】
社会的に死んだな、僕。
最高に悪いスタートじゃないか。
迷った末、2を選択。
お願い、神さま!僕を救って!
奏「うわぁ、やったね!こんな可愛い女の子が今日から僕の妹だなんて!」
小町「え!可愛い妹!?ありがとうございます、奏さん!小町、奏さんの妹になった記憶はありませんが、妹扱いしてくださいね!あ、今の小町的にポイント高い!」
小町ちゃんは「ひゃー!」と叫んで階段を駆け上って行った。
八幡「お前、何言ってんの?」
八幡はとても腐った目を僕に向けている。
奏「いや、これは――」
【選べ
1,「いやあ、こんな可愛い女の子と同棲できるなんて嬉しいなと思ってさ!」(朗らかな笑顔で)
2,「実は、僕頭の中に選択肢が浮かんで、選ばないとひどい頭痛がするんだ」(比企谷八幡のみ知らせられる。比企谷八幡が他人に話しそうになったとき、比企谷八幡にも頭痛。ついでに話している間中、ずっと30倍の頭痛)
】
ふざけとるわ!1とか!
まあショコラと同棲してたわけだけども!
というか、今回注目すべきは2の選択肢だ。
頭痛30倍とはいえ、少しでも他人に知らせられるのは有り難い。
というか、それで僕生きていられるのか?そんな頭痛くらって?
とりあえず、2を選択。
すると、とんでもない頭痛が頭をはしり、気絶してしまった。
小町「はい!奏さん!早速明日から学校ですが、制服はアイロンかけましたから!あと、わからないことがあったら言ってくださいね!わたしも小町でいいですよ!」
奏「うん、ありがとう小町ちゃ――」
【選べ
1,「うわあ、やったね!これから女子中学生と一つ屋根の下で暮らすんだ!」
2,「うわぁ、やったね!こんな可愛い女の子が今日から僕の妹だなんて!」 】
社会的に死んだな、僕。
最高に悪いスタートじゃないか。
迷った末、2を選択。
お願い、神さま!僕を救って!
奏「うわぁ、やったね!こんな可愛い女の子が今日から僕の妹だなんて!」
小町「え!可愛い妹!?ありがとうございます、奏さん!小町、奏さんの妹になった記憶はありませんが、妹扱いしてくださいね!あ、今の小町的にポイント高い!」
小町ちゃんは「ひゃー!」と叫んで階段を駆け上って行った。
八幡「お前、何言ってんの?」
八幡はとても腐った目を僕に向けている。
奏「いや、これは――」
【選べ
1,「いやあ、こんな可愛い女の子と同棲できるなんて嬉しいなと思ってさ!」(朗らかな笑顔で)
2,「実は、僕頭の中に選択肢が浮かんで、選ばないとひどい頭痛がするんだ」(比企谷八幡のみ知らせられる。比企谷八幡が他人に話しそうになったとき、比企谷八幡にも頭痛。ついでに話している間中、ずっと30倍の頭痛)
】
ふざけとるわ!1とか!
まあショコラと同棲してたわけだけども!
というか、今回注目すべきは2の選択肢だ。
頭痛30倍とはいえ、少しでも他人に知らせられるのは有り難い。
というか、それで僕生きていられるのか?そんな頭痛くらって?
とりあえず、2を選択。
すると、とんでもない頭痛が頭をはしり、気絶してしまった。
※「失礼、間違えました」
~八幡サイド~
奏はすこし止まり、考えるようなそぶりをしたあと、白目をむいて話し始めた。というか、脳は停止しているのに、勝手に口が動いているかのような印象をうけた。
奏「実は、俺頭の中に選択肢が浮かんで、選ばないとひどい頭痛がするんだ。このことを人に話そうとするといつも頭痛がして、話せないようになってる」
八幡(普通は受け入れられねえが……こいつ、気絶してるのか?頭痛で?
なら、少しは信用してみるか?)
八幡(安価にはたよらねぇ……。様子見、するか)
しばらくすると、奏は目を覚ました。
八幡「なぁ……お前、その……っ!?」
奏に選択肢のことを聞こうとしたのだが、頭痛がしてうまくしゃべれない。
八幡(これが、選択肢の頭痛ってやつか?)
八幡は理解が早かった。
選択肢のことは、奏にすら話せない。
※
奏・比企谷家に居候。記憶はない。
八幡・記憶はない。
小町・作者のてごm……なんでもない
です。
追記・基本奏視点で書いていきます。
八幡「ところで」
奏「ん?」
八幡「明日から2学期始まるんだが……学校とか、大丈夫か?」
そして、翌日。
学校だ。
奏は八幡と同じクラスのようなので、家からクラスまで一緒に行った。
が。
雪乃「」
八幡「」
階段のところで、美少女とすれ違った。
八幡と美少女は、何事か話しているようだが、内容までは入ってこない。
お互いがお互いを知っているからこそ流れる空気。
しかし決して良くない空気に、奏はなにも言えなかった。
そして、クラス。
見知らぬ人の中、やや緊張する。
結衣「あ! やっはろー!ヒッキー!」
八幡「おう」
結衣「え!?それだけ!? まあいっか……
あ、君だあれ?」
やたら明るい、可愛げな少女が八幡に話しかける。
いや、俺にかな?
奏「今日から総武高校に転校してきた、天草奏です。これからよろしく」
結衣「うん、よろしく!優美子-、姫菜、転校生だって-!」
どうやら、早くに溶け込めそうだ。
この後、八幡は平塚教諭(独身)に強制的に文化祭実行委員にされた。
【選べ
1, 自分も文化祭実行委員になる
2, 孤立する 】
……え?
俺もですか?
次の時間、なぜかここFクラスのみ臨時で(平塚先生の担当クラスだからか? あの人は文化祭の教師側責任者だそうだ)もうひとり役員をだすことになり、それが俺になった。
葉山君とかやりそうだと思ったんだけどな。
なにかしら、理由があるのかもしれない。
Fクラスは劇をするそうだが、俺は(海老名さん怖いなにあれショコラの進化形?)なんとかにげ、いや参加しないことになった。
姫菜「とつはやはち……+かな!?」ブファッ
優美子「擬態しろし」
※
昨日なぜか投稿できなかったです、すんません。
ペンネームとかってあった方がいいですかね?
次はいつになるかわかりませんが、書き溜めはあるので早めにできると思います。
※お久しぶりです
投下します
時間はとんで、数日後。
文化祭実行委員会のミーティングにて。
実行委員長を決める段だ。
相模「はーい、わたしやりまーす」
語尾に「w」をつけて話す彼女以外、誰も立候補しなかったので、彼女に決まった。
めぐり「雪ノ下さんがやってくれれば安心なんだけどなあ……」
雪乃「城廻先輩、立候補した人がいるのに、失礼ですよ。それに私は別に……」
めぐり「そうだね、ごめんなさい。
相模さん、よろしくね」
相模「はい!」ww
奏「八幡はしないのか?」
八幡「いや、俺がやっても誰も仕事しないだろ」
雪乃「ええそうね。比企谷くんがリーダーなんて努められるはずがないものね。」
八幡「まあな」
奏(………………)
モブA「……で……」
モブB「うんそうそう……」
会議は進まない。
進行役が全く機能していないのだ。
相模なんとか。
文化祭実行委員長になったのはいいものの、それだけでなにもこの状況を変えようとしない。
そろそろ会議を本格的に始めないと、本番予定に間に合わなくなってくる――
【選べ
1, このまま誰かが動くのを待つ。
2, 自分から積極的に動き、流れを変えようとする。
3, 「あはは! さがみん、ぼくちんも話に混ぜてよぉ!」的なことを 】
よし、2だ。
珍しく即決。
3については、ツッコまないでおこう。
その時間すら惜しい――
雪乃「あの、相模さん。 そろそろ会議を始めてもらえないかしら?
先ほどから始める気配が全くないものだから」
なんと、選択肢による強制を受ける前に一人の女子が行動していた。
よく見れば、新学期初めに八幡となにかあった気の女子だ。
容姿端麗ではあるのだが、その眼光には特筆すべき強さがある。
めぐり「そうだね。相模さん、そろそろ初めてくれるかな?」
相模の隣の生徒会長(だったはず)が話かける。
いや、関係ない話だが……なんかこう、あの人を見ているとほんわかしてくる。
八幡は「めぐりっしゅ☆」とか言ってたような、言ってなかったような……
相模「あ、すみません……
では、これから文化祭実行委員会をはじめまぁす」
語尾に「www」とつきそうな口調で話し始める相模。
こんなんで本当に大丈夫だろうか?
なお、雪ノ下が先に行動したため、俺は行動しなくても頭痛はしな――
奏「イタッ!?」
えぇ!?
この雰囲気を変えろと!?
……しかたない、頭痛止まないし、そういうことなのかな……?
八幡「おい天草、どうした?」
奏「えー、もうちょっと話してよーよーw」
雪乃「天草奏くん、でしたか?
静かに。会議は始まっています」
っこえぇぇぇぇっ!!??
なにこの人!? すごく怖い!
視線だけで人を殺せそう。
なに? 写○眼なの?
まあ頭痛止んだからいいんだけど……
八幡「天草……いくらアレがあったとしても、雪ノ下にケンカを売ることはやめておけ」
ハイ、深く心に刻みました。
俺も死にたくないからね。
モブA「……で……」
モブB「うんそうそう……」
会議は進まない。
進行役が全く機能していないのだ。
相模なんとか。
文化祭実行委員長になったのはいいものの、それだけでなにもこの状況を変えようとしない。
そろそろ会議を本格的に始めないと、本番予定に間に合わなくなってくる――
【選べ
1, このまま誰かが動くのを待つ。
2, 自分から積極的に動き、流れを変えようとする。
3, 「あはは! さがみん、ぼくちんも話に混ぜてよぉ!」的なことを 】
よし、2だ。
珍しく即決。
3については、ツッコまないでおこう。
その時間すら惜しい――
雪乃「あの、相模さん。 そろそろ会議を始めてもらえないかしら?
先ほどから始める気配が全くないものだから」
なんと、選択肢による強制を受ける前に一人の女子が行動していた。
よく見れば、新学期初めに八幡となにかあった気の女子だ。
容姿端麗ではあるのだが、その眼光には特筆すべき強さがある。
めぐり「そうだね。相模さん、そろそろ初めてくれるかな?」
相模の隣の生徒会長(だったはず)が話かける。
いや、関係ない話だが……なんかこう、あの人を見ているとほんわかしてくる。
八幡は「めぐりっしゅ☆」とか言ってたような、言ってなかったような……
相模「あ、すみません……
では、これから文化祭実行委員会をはじめまぁす」
語尾に「www」とつきそうな口調で話し始める相模。
こんなんで本当に大丈夫だろうか?
なお、雪ノ下が先に行動したため、俺は行動しなくても頭痛はしな――
奏「イタッ!?」
えぇ!?
この雰囲気を変えろと!?
……しかたない、頭痛止まないし、そういうことなのかな……?
八幡「おい天草、どうした?」
奏「えー、もうちょっと話してよーよーw」
雪乃「天草奏くん、でしたか?
静かに。会議は始まっています」
っこえぇぇぇぇっ!!??
なにこの人!? すごく怖い!
視線だけで人を殺せそう。
なに? 写○眼なの?
まあ頭痛止んだからいいんだけど……
八幡「天草……いくらアレがあったとしても、雪ノ下にケンカを売ることはやめておけ」
ハイ、深く心に刻みました。
俺も死にたくないからね。
モブA「……で……」
モブB「うんそうそう……」
会議は進まない。
進行役が全く機能していないのだ。
相模なんとか。
文化祭実行委員長になったのはいいものの、それだけでなにもこの状況を変えようとしない。
そろそろ会議を本格的に始めないと、本番予定に間に合わなくなってくる――
【選べ
1, このまま誰かが動くのを待つ。
2, 自分から積極的に動き、流れを変えようとする。
3, 「あはは! さがみん、ぼくちんも話に混ぜてよぉ!」的なことを 】
よし、2だ。
珍しく即決。
3については、ツッコまないでおこう。
その時間すら惜しい――
雪乃「あの、相模さん。 そろそろ会議を始めてもらえないかしら?
先ほどから始める気配が全くないものだから」
なんと、選択肢による強制を受ける前に一人の女子が行動していた。
よく見れば、新学期初めに八幡となにかあった気の女子だ。
容姿端麗ではあるのだが、その眼光には特筆すべき強さがある。
めぐり「そうだね。相模さん、そろそろ初めてくれるかな?」
相模の隣の生徒会長(だったはず)が話かける。
いや、関係ない話だが……なんかこう、あの人を見ているとほんわかしてくる。
八幡は「めぐりっしゅ☆」とか言ってたような、言ってなかったような……
相模「あ、すみません……
では、これから文化祭実行委員会をはじめまぁす」
語尾に「www」とつきそうな口調で話し始める相模。
こんなんで本当に大丈夫だろうか?
なお、雪ノ下が先に行動したため、俺は行動しなくても頭痛はしな――
奏「イタッ!?」
えぇ!?
この雰囲気を変えろと!?
……しかたない、頭痛止まないし、そういうことなのかな……?
八幡「おい天草、どうした?」
奏「えー、もうちょっと話してよーよーw」
雪乃「天草奏くん、でしたか?
静かに。会議は始まっています」
っこえぇぇぇぇっ!!??
なにこの人!? すごく怖い!
視線だけで人を殺せそう。
なに? 写○眼なの?
まあ頭痛止んだからいいんだけど……
八幡「天草……いくらアレがあったとしても、雪ノ下にケンカを売ることはやめておけ」
ハイ、深く心に刻みました。
俺も死にたくないからね。
※あれ?
3つもやってしまった。すみません。
相模「えぇー、本日の議題は……」
雪乃「……スローガンが……」
といったふうに、今日も会議が始まった。
いつも通り、しかしこれでは間に合う気がしない。
でも選択肢でもないので、会議にはきちんと参加。
スローガンを真面目に考える。
でも、転入生の俺が考えてもそんなにじゃあないかな……
八幡「人~よく見れば片方楽してる文化祭~ってのは……」
吹いた。
思わず吹いてしまった。
理由を説明している間も、俺は八幡の隣で笑いをこらえる。
しかし、実際に音をたてた俺より、肩をふるわせて俯いている雪ノ下さんの方に、周囲の目は向いていた。
傍目からでも、笑いをこらえているのがわかる。
ひとしきり笑った後、
雪乃「却下。」
デスヨネ~。
面白かったんだけどなぁ。
陽乃「あっはっはっはっは! さすが比企谷くん、面白いこと言うわぁ!」
先日から、有志ということで(?)参加している雪ノ下陽乃さんが大声を上げて笑った。
雪乃「姉さん、やめてくれないかしら?」
陽乃「ああごめんごめん、雪乃ちゃん。
ついついね……いやあ、笑った笑った。会議続けて?」
雪乃「はぁ……。相模さん、これ以上続けても案は出ないと思うわ。
またスローガンはまた明日にして、今日は他の仕事をしましょう」
相模「あ、はい、そうですね。では、会議を終わります。」
がやがやと人が出て行く。
会議は終わり、しかし作業が終わった訳ではない。
八幡と同じ係(本質的にいまは雑用となっている)に配属され、忙しくする。
と、そこへ
静「なあ天草。お前、奉仕部に入って見る気はないか?」
クラスの担任の先生が話かけてきた。
平塚先生。
奏「奉仕部?」
静「なにも部活はやっていないのだろう? わたしが顧問をしている部だ。なに、あまりクラスになじめていなさそうだったのでな、おせっかいかもしれんが、それが教師だからな。比企谷もいるぞ。どうだ?」
断る理由もないので、
奏「はい、わかりました」
静「うむ。では、比企谷達に声をかけておくから、放課後に職員室に来てくれ」
奏「わかりました」
静「というわけだ、雪ノ下。部室に来てくれ」
雪乃「そんな余裕がないのは先生ならよく知っておいでだと思うのですが……」
静「まあ、そう怒るな。新入部員への部活説明ができないほどではないだろう?」
雪乃「そうかもしれませんが……」
静「では、またな」
静(押し切らないと負けるな)
雪乃「はぁ……」
静「すまないが……」
結衣「いえいえそんな! わああ、新入部員かあ、楽しみだなあ」
静(雪ノ下よりかなり女子高生らしいな……)
※どもです。
見てくれている皆さん、ありがとうございます。
このままこのssは、基本俺ガイル原作にそって(カットしつつ、多少いじって)やります。
次もいつになるのかはわかりませんが、これからもお願いします。
選べ…
A.由比ヶ浜に「胸を揉ませてくれ」と土下座する
B.雪ノ下に「何を食べたらそんな貧相な胸に育つんだ?」と聞く
C.平塚先生に結婚を申し込む
※投下します。
~会議後~
静「というわけで、新入部員の天草だ。」
奏「天草奏です。これからよろしく」
静「雪ノ下、説明してくれ」
雪乃「はい……
天草さん、ここは奉仕部です。
主な活動は生徒達の相談にのり、解決へ導くことです」
八幡「魚をやるのではなく、魚の取り方を教える、だっけか」
雪乃「そうね。腐ったヒキザカナくんはだれもほしがらないだろうけれど」
八幡「だれだよヒキザカナくん。腐っているのは俺でなく俺の目だ」
結衣「ヒッキーのツッコミそこなんだ!?」
奏「ん? 由比ヶ浜さんってFクラスの?」
結衣「うん、そうだよ! 改めてよろしくね、奏くん!」
雪乃「まあ、わからないことがあればそこの二人でなくわたしに聞いてね。やる気がない人と説明がわかりづらい人だから」
結衣「ゆきのんひどいし!?」
八幡「まあ、妥当だな」
結衣「ヒッキーまで!?」
八幡「俺は俺に対する侮辱に妥当だと言ったんだが……」
静「しばらくは文化祭で活動できないが、顔を合わせる機会はあるんだ。親睦を深めるのも悪くないよ」
奏「わかりました」
翌日。
会議の流れは相変わらず悪く、進まない。
ある程度決めてある仕事をするだけで、それ以上の案が出てこない。
そんな中、雪ノ下さんの前に並べられた仕事だけが増えてゆく。
委員長相模さんが自分のクラス、Fクラスに入り浸っているせいで、本来相模さんのものである仕事が副委員長である雪ノ下さんにまわっているのだ。
大変だろう。
限られた時間の中で二人分以上の仕事をこなしているのだから。
そう、二人分以上。
自分のノルマ、相模さんの分、そして相模さん以外にもさぼっている実行委員会のメンバーの分。
さすがにある程度は、事実あまり仕事のない『記録係』である俺と八幡たちに割り振られてはいるのだが、
八幡「仕事したくない……社畜はいやだ……」
それでも雪ノ下さんの負担はかなり大きい。
いつ体を壊してもおかしくない働きぶりをするほどに。
【選べ
1, 「雪ノ下さん、俺が2/3くらい仕事もらおうか?」
2,「雪ノ下さん、俺が全部仕事やってくるよ!」
3,「雪ノ下……お前、最近頑張りすぎじゃね? ……少しは自愛して休めよ」イケメン風に 】
3無茶ぶりかっ!
俺にそんなのできるわけねぇっ!
俺はそんなキャラじゃない!
でも……雪ノ下さんが働き過ぎのような気がするのは確かだしな……
全部はさすがに僕自身ができないけれど、選択肢にあった2/3くらいなら、引き受けよう。
奏「雪ノ下さん。
俺が2/3くらい仕事もらおうか?」
雪乃「……あ、ごめんなさい。なんですか?」
集中しすぎて聞いていなかったようだった。
八幡の『絶対に許さない』ノートには、学年主席・雪ノ下雪乃と書いてあった。
恐ろしく要領のいい人なのだろう。
ノートのことに関しては、悲しいので触れないでおく。
そんな人がこれほどまでに集中しなければならない状況は、おかしいと思った。
奏「よければ僕も手が空いてきたし、その仕事2/3ほどもらおうか?」
雪乃「ありがとう天草くん。
けれど、委員長代理である私がしなければならない案件もあるから、一概に2/3の仕事をあげることもできないの。
気持ちだけは嬉しいのだけれど、後で仕事を割り振るから、その時またよろしくね」
気づいた。
仕事の割り振りという作業ですら、今は雪ノ下さんの負担になっていることに。
※まずい……書き溜めがなくなってきた……
保守投稿になっても、一ヶ月以内にはがんばります……たぶん……
※どうも、凪です。
こ、これは荒れたうちに入るのでしょうか?w
ともあれ、書き溜めできたので投下します。
しかし、言葉は優しいが、ずっと机に視線が向き、なお雰囲気で「余計なお世話」と言われてしまえば、口を開くことはできない。
【選べ
1, 明日から委員会を比企谷八幡とともにサボる
2, 明日から委員会をサボる
3, 委員会で何かがおこる 】
またきたよ……『何かがおこる』。
この前は真夏に雪が降ったっけ。
でも、委員会をサボるわけにはいかない。
なにかなら、他の人に迷惑がかかる可能性が、他の二つよりは低いだろう。
……のはずだ。
3を選択しても、翌日までなにも起こらなかった。
そして翌日。
体調不良で雪ノ下さんが休んだ。
委員会に顔を出さなかった雪ノ下さん。
そこで初めて雪ノ下さんが休んでいることを聞いた。
静「今日は雪ノ下は休みだ。
奉仕部で行ってみてはどうだ?
あいにくと、私は今日は外せない用事があってな……」
結衣「わかりました!
ゆきのんのお見舞い行ってきますね。
ヒッキーも来るでしょ?」
八幡「いや、別に俺は……」
結衣「奏くんは?」
奏「行ってもいいのなら、行きたいけどね」
今、彼女は文化祭実行委員に、ひいては学校に必要な人物だ。
それに、同じ部活の人間として、お見舞いはしたい。
結衣「奏くん、ヒッキー説得して!」
奏「ん? う、うん。
八幡、行こう。
心配じゃないのかい?」
八幡「……」
しぶしぶではあったが、八幡も来ることにさせられ――なった。
そして、下校中。
【選べ
1, 雪ノ下雪乃の寝込みを襲う
2,比企谷小町の寝込みを襲う 】
奏(……)
奏(もう……なにも言うまい……)
※皆さん小町好きすぎませんか……?
投下です。
土曜更新できるように書いてきます。
『妹』(?)との超えてはいけない一線を感じた俺は、仕方なく、1を選択してしまった。
ほんと、他人に迷惑をかける選択肢は選びたくはないけれど……雪ノ下さんならうまくかわしてくれそうだし(その方にかける)、
俺にも一応、考えはあった。
うまく危険を回避するための、策は。
……なんてかっこよく言って、いや思ってみたものだが、どうということはない。
選択肢を実行する前に八幡にあらかじめ「5秒たったら止めて」 と言っておき、ゆ~っくり動く俺を止めてもらう。
八幡は選択肢のことを知っているから、こういう時頼みやすい。
本当にそれだけのことなのだが、思考をのぞけるはずの選択肢が、頭痛を送ってこないということは、つまりOKということなのだろう。
選択肢自体が呆れかえっている、という線も、ないこともないのだが。
一つだけ問題があるとすれば、それは由比ヶ浜さんだが……がんばってどうにかする他ないだろう。
※投下します
で、雪ノ下さんの家。
家にいると駄々をこねる八幡を無理矢理連れ出し、由比ヶ浜さんと合流、雪ノ下さんの住んでいるというマンションについたわけだが。
八幡「でけえ……」
奏「高級マンションだよね、これ……」
結衣「い、いくよ!二人とも!」
エレベーターホールで部屋番号を八幡が入力、雪ノ下さんの反応を待つ。
結衣「ゆきのん遅いね……
寝てるのかな?」
八幡「さあな。もう少しまって来なかったら帰ろうぜ。いや、なんならもうすぐに帰ろう。今すぐに。」
結衣「ヒッキーなんでそんな後ろ向きだし!もう少しまってy」
と、コール音がそこで途絶える。
雪乃「騒がしいのだけれど。なにか用かしら、由比ヶ浜さん、甘草くん、ひき……ひき……くん」
八幡「おい、途中で思い出すのやめないでくんない?わりと傷ついちゃうんだけど」
奏「俺の名前はすぐに出てきたのにな」
雪乃「あらごめんなさい、忘れていたのよ」
八幡「おい……」
結衣「ゆきのん。入れて?」
由比ヶ浜さんが本来の目的を果たそうとする。
口調に強さがある。
雪乃「なぜ?」
結衣「今日学校休んだでしょ?だから、お見舞い」
少し考えて、雪ノ下さんは、
雪乃「開けたわ。入って」
エレベーターは開き、雪ノ下さんの部屋に一行は行った。
ドアチャイムを鳴らして、出てきたのは、温かそうなカーディガンを羽織った雪ノ下雪乃だった。
雪乃「ごめんなさい、こんな格好で。入って」
そこに、確かに調子の悪そうな雪ノ下さんだったが、しかし弱みを見せまいとしているのか、気丈に振る舞っている。
雪乃「お茶をいれるわ」
結衣「だめだよゆきのん!今は寝てなきゃ!わたしがかわりに――」
八幡「いや、頼むからやめてくれ。お茶でも危ない気がする」
結衣「ヒッキー酷いし!?」
奏「あ、じゃあ俺やるよ」
皆が机の周りに座りかけていたところ、俺だけが立ち上がる。
八幡「すまんな、頼む」
雪乃「えぇ……お言葉に甘えさせてもらおうかしら」
※今週はここまでで。
次くらいには、例の選択肢実行かな……
なんか違和感あると思ったらお見舞いの前にスローガン決めが来てたせいか
※>>7
あ、逆でしたか……
今手元に原作6巻がないもので……
スルーでお願いします☆
※上記修正
>>77
※投下です
八幡「おい雪ノ下。お前まさか、学校休んでても文化祭実行委員の仕事やってたんじゃないだろうな?」
座る前のテーブルには、文化祭の資料と思しき紙が広げられていた。
雪乃「ええ、やっていたわ。
そうでもしないと、もう間に合わないのだもの。
仕方ないでしょう?」
疲れたように、どこか諦めたように言う雪ノ下さん。
しかし、奉仕部二人がそれを許すはずもなかった。
結衣「ゆきのん、ちょっと頑張りすぎだよ。ちょっと休んだら?」
八幡「無理してもいいことはないと思うぞ」
そして、由比ヶ浜さんが続けて言った。
結衣「わたし、ちょっと怒ってるんだからね。
ゆきのんにも、ヒッキーにも。」
八幡「おい、なんで俺――」
口を挟もうとした八幡を遮るように、由比ヶ浜さんは続ける。
結衣「文化祭の依頼を受けたときに言ったじゃん、ヒッキー、ゆきのんのこと助けてねって」
八幡「いや、それはだな……」
雪乃「比企谷くんはちゃんと仕事をしてくれているわ。別に助けていないわけでは……」
結衣「それは違うよゆきのん。ヒッキー、ちゃんと助けてたら、ゆきのんこんなことになってないよね。ゆきのんが大変だったってこと、気づいてたんだよね。じゃあ、なんで助けなかったの?」
八幡「……」
雪乃「由比ヶ浜さん……」
二人とも、なにも言い返せずにいた。
俺は、依頼のことなど初めて聞いたし、もちろん、由比ヶ浜さんからの八幡への依頼も知らなかった。
けれど、この微妙に詰まった空気を変えることができたのは、俺だった。
奏「……お茶、冷めないうちに。ね?」
半強制的に、意識をお茶へと向けさせる。
資料で埋まっていた机の上を片付け、温かいお茶の入った湯飲みを置き、みんなで飲む。
お茶を飲んでいる間に、お互いに冷静になれればと思い、時間をつくった。
時間が全てを解決してくれるわけではないけれど、時間でよくなることも、ないっわけじゃあない。
いまこの状況なら、「時間」は俺の切れる最高のカードだった。
奏(はぁ……ところで、選択肢どうしよう。)
と、おかゆを作りながら思う。
自分から志願しておかゆづくりを始めたのは、由比ヶ浜さんに任せられない(俺は知らないが八幡と雪ノ下さんが本当に嫌そうだった)からと、もし足りていない物があったとき、由比ヶ浜さんに買い出しを頼んで選択肢を実行するためだった。
しかし、さすがは雪ノ下さん。
手入れの行き届いた台所は、普段使っているような、使いやすいものだったのだが……。
かけている物が一つもなく、なお必要以上の物もなく、かつおかゆをちょっと豪華にしたくらいではなくならない量の食料がある。
完璧。
俺の策をフイにしてくれる完璧さだった。
ついでに。
料理中ずっと選択肢の鈍痛がして、火にかける時間が短くややお米が固くなってしまったのは、まぁ仕方のないことだろう。
結衣「ゆきのん、ちょっとお手洗い借りるね。」
八幡「由比ヶ浜、女子は『お花を摘みに』って言うんだぞ」
結衣「え、そうなの!? ゆきのん、本当?」
八幡「どんだけ信用無いんだよ、俺……」
結衣「だって、わたしとの約束……」
八幡「すまん、悪かった。俺が全面的に悪い」
結衣「謝るの早いし……。
でゆきのん、本当?」
雪乃「ええ、比企谷くんには珍しく、本当のことを言ったわよ」
八幡「いつも俺が嘘ばかりついているみたいに言うのやめてくれる?」
雪乃「事実じゃない」
八幡「傷つくじゃねえか……」
奏(か、会話に入れない……)
八幡「もうこんな時間か。そろそろ帰るかな。ずいぶんと話し込んでしまったし」
結衣「そうだね~」
奏「そろそろ帰らないと由比ヶ浜さんも危ないし――」
【選べ
1, 自分の目が光り、夜道を照らして安全に帰る
2, 由比ヶ浜結衣と比企谷八幡を二人で帰らせ、自分は前の選択肢を実行する(これを選択しなければ、前の選択肢を実行するまで今までの3倍の頭痛)
】
……言外に「選べよ、2番」って言ってきた。
まぁ八幡なら由比ヶ浜さんも安心だろうし、3倍の頭痛は勘弁だ。
ということで、2を選択。
奏「八幡。外も暗いし、由比ヶ浜さんを送っていったら?」
八幡「そうだな。奏、お前は――」
ここで俺は、意味ありげな目配せ。
八幡(アレ関係か)
八幡もうなずき、了解を示す。
八幡「ん。それじゃあ、俺たち先帰るわ。」
結衣「じゃあね、ゆきのん。ちゃんと寝てなきゃだめだよ?」
雪乃「わかったわ」
八幡・奏(なぜデレる……)
八幡を見送ってから気づく。
奏(……あ、俺を止める人いないじゃん)
突如、この八幡のいないタイミングを待っていたかのように頭痛が強くなる。
奏(ごめん、雪ノ下さん……許してなんて言わないけど、ただ、謝らせてくれ!)
そろり、そろり。
音を立てないようゆっくりと、雪ノ下さんの潜り込んでいる布団に近づく。
頭痛は、収まる気配を見せない。
奏(くっそ! どうにか……!どうにか防がないと……!)
布団に覆い被さった。
そこから気づかないように、布団をめくる――
※今週はこの辺で!
来週は学校の文化祭があるので、更新できないです(そのぶん多く投下。)
※おひさしぶりです。
投下します
次の瞬間。
なにが起こったか、俺には理解できなかった。
とりあえず、気づいた時には俺はだらしない格好で寝そべり、雪ノ下さんはゴミでも見るような目で俺を見ていた。
いや、実際ゴミ(俺)を見ていたのだろう。
雪乃「男子の性欲が強いことは知っているつもりだったけれど、まさか、寝込んでいる女子を襲うとは……」
申し訳ない。
雪乃「思わず投げてしまったじゃない、手加減なんてできなかったから、足を捻っているかもしれないわ」
奏「……いや、元は俺が悪いし、甘んじてそのくらいは受け入れるよ」
なんとか声が出せるようになってきた。
頭痛は止んでいたが、代わりに右足がとてつもなく痛かった。
尋常じゃない捻り方をしたかもしれない。
雪乃「さすがに、泊まっていけとは、私は言えないけれど……
そうね、でも比企谷くんの携帯電話の番号などは知らないし、小町さんに心配をかけるのも悪いわね。
私はこのまま布団で寝るわ。ただし、あなたを縛って動けなくしてから。怖いもの」
奏「……ごめん」
雪ノ下さんはどこから持ってきたのか、俺を太いロープで机の脚に3本(捻った右足以外)くくりつけ、毛布を掛けてから
雪乃「おやすみなさい。……できれば永遠に」
と言って布団に再び潜り、すやすやと寝息を立て始めた。
俺も寝るか、と思ったとき、初めて、今制服のままであること、俺の携帯電話がポケットの中から消えていること(雪ノ下さんが取ったのだろう)に気がついた。
奏(今、こたつに入ってるみたいな絵だな)
※基本、俺ガイルの原作通りにはいきますが……
6巻のクライマックスから、オリ要素いれていこうと思ってます。
翌日。
雪ノ下さんの家で目覚めた俺は、雪ノ下さんが台所で朝ご飯であろう支度をしているのに気づいた。
足の束縛は解けている。
奏「雪ノ下さん、もう調子はいいの?」
雪乃「ええ、昨日のあなたの行動がなければ、本当に万全だったのだけれど」
軽口(そうであって欲しい)を言う雪ノ下さん。
これなら大丈夫そうだ、と荷物をとり帰ろうとする。
雪乃「なにをしているの? 朝食くらい食べて行きなさい。
……その、お見舞いのお礼、よ」
どうやら、雪ノ下さんは昨夜のことは、流してくれるようだ。
さすがに投げ飛ばしたことは悪いと思っているのだろうか。
奏「ありがとう。じゃ、ありがたくいただくよ」
雪乃「ええ、召し上がれ。」
奏「雪ノ下さん」
かなりの腕の雪ノ下さんの朝ご飯を食べて、俺は切り出した。
奏「昨日、机にあった仕事なんだけど……
俺、仕上げておくよ。月曜にまた決済印とか押してくれたらいいから」
本来、その決済印さえも雪ノ下さんの仕事では無いのだが、委員長の相模さんが投げ出してしまっているので、雪ノ下さんがするほかない。
ならば、家まで持って帰ってするほどの仕事量はこなさなくてもいいはずだ。
いままでしていた無茶のツケが、実際回ってきたわけだし。
それに今日は土曜。部活も何もない俺に、いい暇つぶしができたようなものだ。
まあ、ノルマでない文化祭の仕事は、雪ノ下さんだけでなく俺にも回ってきてはいるのだが、かなり仕上がっている雪ノ下さんの残りくらいなら、片付けられる――
【選べ
1,「今以上に目が腐るくらい八幡を強制労働させて仕上げるから大丈夫!」
2,「俺は雪ノ下さんの奴隷だからな!」 】
奏「今以上に目が腐るくらい八幡を強制労働させて仕上げるから大丈夫!」
……あれ? 今罪悪感を感じなかった。
なんでだろ?
雪乃「……比企谷くんまで動員してもいいのかしら?
私、実は彼の仕事の割り振り他の人よりやや多めにしているのだけれど」
奏(雪ノ下さん、やんわりと酷いことをするなあ」
雪乃「聞こえているわ。……まあ、彼にはついやってしまうというか……
でも彼なら、やりきってくれるでしょう? その確信はあるの。
甘草くん。お願いしてもいいかしら?」
奏「もちろん。」
雪乃「ありがとう。
……あなたには感謝しかしていない気がするわ」
奏「気のせいだよ」
雪ノ下さんから仕事をうけとると、俺は比企谷家への帰還を許された。
選択肢が浮かぶようになってから、変人扱いこそされ、感謝されることなどかなり少なかった。
感謝される気分というものを、久しぶりに味わった気がする。
そして、こちらに転校してきてから、選択肢の酷さが緩くなっている気がする(雪ノ下さんのあれを除く)。
これは、何かの前触れのような気がしてならないのだが……しかし、今はどうすることもできない。
【選べ
1, 教室の教卓の上で豚の真似(鳴き声付き)をする
2, 雪ノ下陽乃のまえで「あ~^心がぴょんぴょんするんじゃぁ~^」 】
……おっと。
今週はここまでで!
奈緒「恋人とのほのぼの生活」 有宇「記憶はないけれどね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447485891/)
一つ目が完結していないのに新しいssを書き始めました。
リンクできてるかな?
よければどうぞ。
帰って八幡の机の上に置いてあった『絶対に許さないノート』を適当に開くと、『雪ノ下陽乃』の名前があったので、見てみた直後の選択肢。
ノートには、「強化外骨格。要注意。近くていい匂いで危険」とだけ書いてあった。
八幡が危険というくらいだから、あの雪ノ下さん(姉)は、相当の人物なのだろう。
選択肢の2だけは、なんとしても避けたかった。
けれど……
前の時の二の舞も、正直いやだった。
さて、どちらにするべきか……
と、下の階から声がした。
八幡「奏-、お前2階にいるのかー?」
奏「おう、2階にいるよー」
……ううむ。さて選択肢をどうす――え?
あれ?
選択肢が……消えてる?
もしや。
さっきの「2」階で……とか、ないよね?
ねぇ、ないよね!?
実行するまでは猶予はあると思ったのだが、なぜか俺が教卓にむかう度、まるで「そっちは選ばなかっただろ」とでもいいたげに、選択肢による頭痛がはしった。
そうして、とうとう放課後、雪ノ下陽乃さんのいる文化祭実行委員会が始まった。
ふときづくとテスト期間が始まっていました。
ということで、来週の更新はお休みです。
※お久です
更新します
陽乃さんは、タカタカとパソコンを打っている八幡の方に近づく。
陽乃「ねぇねぇ比企谷くん」
八幡「なんですか雪ノ下さん」
陽乃「そっけないなぁ、比企谷くん。陽乃でいいのに。
で、正直仕事すすんでる?間に合いそう?」
八幡や俺の近くにある山のような仕事を見ながら、陽乃さんは言う。
八幡「正直、本番にぎりぎり間に合うかくらいですかね。まだ終わっていないことは少しありますし、当日が一番不安ですし。というか、俺は仕事手伝わされているだけなんで、俺の仕事では本来ないのですが」
陽乃「ふうん……そっか」
陽乃さんは興味を無くしたかのように見えた。が、突然、
陽乃「そうだ比企谷くん。わたしが手伝ってあげようか?」
陽乃さんの顔はニヤついていた。
八幡「え、いいんですか。でももう少しでノルマ終わるんで、いいですよ」
陽乃「えー、そーなの? 残念。」
雪乃「姉さん……」
陽乃「んー? なぁに雪乃ちゃん。
わたしが手伝うのがそんなにいや? それとも、比企谷くんを手伝うのがいやなのかな?」
雪乃「っ! そんなわけがないでしょう。部外者である姉さんを手伝わせるわけにはいかないもの」
陽乃「えー、だってわたし総武祭参加するよ? 部外者じゃないでしょう?」
雪乃「……」
陽乃「それに、そんなに人手多くないみたいだし。わたしのところ、有志の団体のところくらいはやらせてもらってもいいんじゃない?」
雪乃「…………」
雪ノ下さんが沈黙してしまったとき、がらがらっと、教室のドアが開いた。
隼人「こんにちは。今日も手伝いにきたよ」
おなじクラスの葉山くんだ。
このとても人数の足りているとはいえない実行委員にきて、手伝ってくれている。
先ほどは陽乃さんの言った有志関係のことを一挙に引き受けてくれており、その内容も完璧だ。
陽乃「お、隼人じゃーん、どしたのー?」
隼人「陽乃さん……。陽乃さんこそどうしてここに?」
陽乃「ん? 質問に質問で返すの、隼人? まぁいいや。わたしは、有志の参加の件できたのよ。隼人は何をしに?」
隼人「俺は有志のことでちょっと話して、そこで人手が足りないって聞いたから、手伝いに。」
陽乃「ふぅん……」
と、そこに、
南「こんにちわあっ、みなさんお疲れ様です~」
いつものとりまき二人と共に、名ばかりの実行委員長が来た。
実行委員に委員長が来るのは当たり前のはずなのに、この委員では久しぶりに見かけた気がする。
相模さんが仕事をサボることで、全体のモチベーションは下がっており、人も少なければ委員会に出ている人の仕事のペースも遅い。
なんとか雪ノ下さんのおかげで成り立っているようなものだ。
そこに、いったい相模さんは何をしに来たのだろう?
南「えーっとお、クラスの方も手が空いてきたんで、こっちの方行こうかって話しになってぇ」
見ると、後ろには取り巻き二人が。
南「で、なにか仕事ってある? 雪ノ下さん」
隣の八幡がイラッとした雰囲気が伝わる。
正直、同じ気持ちではあるけれど……
雪乃「ないわ。あなたに手伝えることなんて。」
雪ノ下さんが一蹴した。
※えと、明日も一応更新できます。
したほうがいいですか?
南「……え?」
相模さんが聞き返す。
雪乃「今ここにいる人たちはあなたが実行委員に来ていない間にかなりの業務をこなしたわ。ある程度の慣れや連帯感もある。だから、あなたがすることはないわ。あ、実行委員長の挨拶くらいは考えておいて。」
相模さんが絶句した状態で突っ立っていると、意外や意外、陽乃さんが助け船を出した。
陽乃「いいねぇ、文化祭は準備から楽しまなくっちゃ! 実行委員長が楽しまなきゃ、誰も楽しめなくなるわよねえ?」
このセリフに、再起動した相模さんがのっかった。
南「そ……そうですよね!」
陽乃「ね、そうは思わない? 比企谷くん」
八幡「なんでここで俺に振るんすか……」
陽乃「いやあ、最近出番ないなあって」
八幡「確かに俺は影薄いですが、出番ってどういうことですか」
陽乃「微妙に意味わかっちゃってるじゃない。それより、君はクラスの方にはでなくてもいいの?」
八幡「俺がクラスの方なんかに行ったら、それこそ追い返されますよ。「お前どこのクラスのやつだ」ってね」
雪乃「……」
陽乃「あっはっはっは! さすが、面白いなあ比企谷くんは!
ひねくれてるねえ!」
雪ノ下さ――雪乃さんは沈黙、陽乃さんは大げさに笑った。
あ、えっと……ここまでで。
二週間音沙汰ないときは保守レスおねがいします。
陽乃「……ん、そだ。君は何をしてるの?」
ネタを常時探している陽乃さんが、迷惑なことに――選択肢からしたらまあ妥当だろう――俺のほうに来た。
奏「仕事です」
そっけなく返してやった。
すると、
陽乃「あははっ、君もおもしろいねえ! 比企谷くんもなかなかだけど、君もなかなかだ!」
と言って、わざわざ近くに来て肩をべしべしとたたいた。
……なんか、気に入られてしまったらしかった。
陽乃「お姉さんがかわいがってあげようか?」
頭痛。
雪乃「何を言っているの姉さん」
強い。痛い痛い痛い泣きそうまじでっ⁉
雪乃さんがなにか言ってるみたいだけどほとんどわからない。
陽乃「あっれー? 雪乃ちゃんはてっきり比企谷君かと思ったんだけど、お姉ちゃんの間違いかな? まさかこの子のこと好きなのー?」
雪乃「そんなわけがないでしょう」
陽乃「あーら、かわいそっ」
雪乃「っ……。甘草くんからも、何か言いなさい。黙ったままなの?」
と、急に頭痛が止む。
話の流れは全く分からないけど、ここで言えということなのだろう。
奏「あ~^心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」
完璧に言えた。特にあの「^」の部分。
そう(無駄に)確信すると同時に、あたりが沈黙していることに気付いた。
……俺、なにかおかしいことを言ったのだろうか?
※追記
テスト爆死しました。
陽乃さんが笑いをこらえるのに必死になっていた。
そしてとうとう、文化祭当日だ。
ブブブブ。
とてつもなく大きなバイブが携帯から発せられて、目が覚めた。
開いてみると、着信だった。
久しぶりの神からだった。
『はろはろ~、神で~っすっ!
お久だねー、甘草奏くん?
いやあ、急になかなか連絡がとれなくて焦ってたんだよ。
選択肢の力で他の神の力が届きづらくなってるみたいだね。
この電話もさほど長くできないから、要件を簡潔に書くよ。
その世界のちょうど三月、君は元の世界に帰ることができる。
選択肢も、そこが限界みたいだ。
で、だ。これは個人的な忠告なんだけれど。
その世界には気をt ブツッ』
と、ここできれた。
もう少し時間の調整はできなかったのだろうか? 神だろ?
そして、もう一つのメールが、俺にとっては重要だった。
『ミッション
相模南に、文化祭を完遂させる』。
修正>>129
と、ここできれた。
もう少し時間の調整はできなかったのだろうか? 神だろ?
そして、もう一つ、メールが届いていた
そっちのほうが、俺にとっては重要だった。
めぐり『文化してるかぁーー!?』
観客「「「おおおーーっ!」」」
生徒会長のマイク越しの声に、オープニングセレモニー、まあ言うとこの総武高文化祭の開会式に集まった保護者生徒が吠える。
……吠えているのは生徒だけか。
裏では八幡と雪乃さんが無線で言い争ってて、なかなかに面白かったけれど、一応仕事優先で。
めぐり『千葉の名物、祭りと――!?』
観客「「「おぉどりぃいいいいー!」」」
……そうなのかな?
県外からきて間もない俺はしらないけれども。
めぐり『同じ阿呆なら、おどらにゃ――!?』
観客「「「しんがっそーーーん!!」」」
大丈夫かな、この進学校。
ともあれ、生徒会長あいさつ(?)はつつがなく――
【選べ
1、ステージに上がって奇声を、規制のかかりそうな奇声を発しながら転げまわる
2、雪ノ下雪乃と比企谷八幡の会話に「八幡って影薄いよね」 】
ごめん、八幡。許して。
ステージの上で転げまわるのは、羞恥心がやばい――
奏「っ!?」
頭痛。でも。
やっと今、俺がどういう指針で選択肢を選んでいたか、思い出した!
他人を、傷つけない!
奏「○×△□@ldifuvhcvnlk○△vbfkhbv-――⁉」
八幡「―――」
雪乃「~~~」
いつの間にか、イヤホンからは八幡と雪乃さんの言い争いが大きく聞こえてくるようになっていた。
というか、会場が静かだった。
実行委員B「あの、副委員長。聞こえてます。
それと、あれ、止めなくていいんですか?」
すっかり「あれ」扱いされてた人が、ステージの上にいた。というか、俺だった。
俺をステージ上から取り除いた後、実行委員長挨拶。
南「き――!」
共鳴。ハウリング。
実行委員長挨拶はマイクが雑音を拾うことで発生するあのかん高い嫌な音で始まった。
相模さんの顔は真っ赤だ。
南「ほ、本日は、ま、待ちに待った文化祭です。今日一日、勉強のことは忘れて――」
なんとか、持ち直しはしたけれど、終始顔は恥ずかしさで真っ赤だった。
観客「「がんばれー!」」
観客が呼びかける声も、相模さんには緊張と恥ずかしさが高まる要因の一つでしかない。
相模さんがなんとかやり終え、オープニングセレモニーは終わった。
※ よいお年を~
これを見てくださっている方、どれくらいの人数がクリぼっちだったのでしょう?ww
自分もぼっちでしたよ☆
※親「来月からインターネットきるかぁ」
僕「え?」
ってことで、不定期になるかもしれないので、とりあえず書き溜めてるやつ投下します。
奏「ふわぁ~あ……」
八幡「お前も災難だな……」
八幡が同情する。
時間は、今は11時。
文化祭が始まり、約二時間が経過といったところか。
俺と八幡は「記録係」の本分を全うすべく、校内をうろついていた。
オープニングセレモニーでの奇行で、校内校外とわず有名になってしまった俺は、廊下を歩いているだけでもひそひそ声でささやかれる。
生徒c「あれだよ、あのオープニングセレモニーでの……」
生徒d「ああ、あれが……」
さすがに悲しくなってくる。
でも、自分で選んだ選択肢。後悔はしていない。
さて、ここで記録係についての説明を。
この説明は、主に校内をぶらついているだけの俺たちを正当化するための説明だ。
記録係は、後の世代に学園祭の雰囲気を伝えたり、写真販売で売ったりするときのための写真、記録をとることが仕事だ。
だから、こうして校内を周回し、店や生徒たちの写真を撮っていってる。
結衣「あ、ヒッキーと奏君!」
奏「やっはろー、だっけ? 由比ヶ浜さん」
八幡「おい、無理に合わせなくともいいぞ。バカのすることだ」
結衣「バカってなんだし! バカって言うほうが超バカなんだよ⁉」
八幡「もうその返しがな……」
結衣「ぐぐぐ……」
由比ヶ浜さんと遭遇し、少し話す。
結衣「あ、そうだ、ヒッキー。ハニトー食べよ?」
そういいながらビニール袋からパンを取り出し始める由比ヶ浜さん。
八幡「おい、どこか座って食えるとこ探そうぜ。廊下で立ち食いは汚いだろ」
結衣「あ、それもそっか。じゃあさ、教室行って、そこで食べよ?」
八幡「俺が食うこと確定なのかよ……。奏はどうする?」
由比ヶ浜さんの方を見ると、「お願い! 二人きりにっ! あぁでも、やっぱ恥ずかしい……」みたいな顔をしていた。
奏「いや、いいよ。もう少し見回ってる。八幡はちょっと休んでなよ」
八幡「悪いな」
奏「気にすんなって」
由比ヶ浜さんは顔をやや赤くしながら、「ありがとう」と口の形だけでそう言った。
その場を離れると、すぐに小町ちゃんに会った。
小町「あっ、奏さん!」
奏「やあ、小町ちゃん。来たんだね?」
軽くぴょんぴょんはねながら廊下で話す。
小町「はい! わたしも来年この高校受験しようと思っているので、その下見というか。
あと、ごみいちゃんの様子を見ようかと」
奏「はは、そう。でも、今は行かないほうがいいかもよ? 理由は言えないけど」
と、半笑いにごまかした。すると、
小町「おっ。ということは、結衣さんか雪乃さんですか。でも雪乃さんなら仕事してますかね、ということは結衣さんか。なかなかにやりますね……。」
完全に見抜かれていた。
洞察力が鋭すぎる。
小町「まあここは、奏さんに免じてもう少し待ってみることにします。
では、また~」
奏「うん、また」
で、一時的に別れることになった。
結衣「じゃ、じゃあさ、ヒッキー」
八幡「ん?」
結衣「また今度、ハニトー食べに行こうよ。……ふ、ふたりで」
八幡「ああ、また今度な」
結衣「うん、ありがと」
えっ?
今月限りで終了なんですか?
良ssなだけに悲しい……
>>145
なんとか不定期に更新はしようと思っています(ノパソは使えるので)。
それにまだ全然完結していませんし、個人的に終わらせたくないです。スマホで投稿できれば一番なんですが、できますかね……
※い、いろいろと意見がありますが……
自分の趣味で書いて更新してるので、誰かにどうこう言われる筋合いはないと考えています。
ってことで、今週も更新。
雪乃「あら甘草君。あなたここでなにをしているのかしら? そのカメラはいつ使ったの?」
八幡を待とうと、クラスの周辺の廊下を出店を見ながらほっつき歩いていると、雪ノ下さんに会った。
ここまで〈文化祭実行委員〉の腕章が似合っている人は他にいないと思う。
それくらい凛々しかった。
奏「あ、雪ノ下さん。いくつか写真は撮ってるよ。」
素直にそう返す。
雪乃「そう。ちゃんと職務を全うしているのならばいいわ。
ところで、比企谷君はどこか知らない?」
奏「いいや、知らない」
知っているけれど、由比ヶ浜さんのために。雪ノ下さんには悪いけど。
雪乃「そう……。まぁ、あなたでもいいわ。忘れそうになったけど、一応奉仕部だし。付いて来て」
雪ノ下さんについていくと、普通に出店をやっている教室についた。
奏「ここ? どうかしたの?」
雪乃「ここ、どうやら実行委員に提出している出店の内容と異なることをしているようなの。何をしているか、ちょっと探ってきてくれないかしら?」
そこの出店は、どうやらトロッコを出し物にしているらしい。
奏「あ、うん、別にいいけ……」
といいかけて。
生徒e「おー! ……げっ、実行委員⁉ まぁいいや、乗せちゃえ! 二名様ご案内~」
生徒f「了解~!」
雪乃「え⁉ わ、私は――」
あれやあれやという前に、二人ともトロッコに乗せられてしまった。
ごおおおお……おお……ごとん
トロッコがやがて止まる。
手作り感漂うトロッコだったが、なかなかに楽しかった。
雪乃「はぁ、はぁ……。
文化祭実行委員ですが、少しいいですか?」
疲れ気味の雪ノ下さんが、息を整えながら言う。
生徒f「は、はい……」
すこし怯えたふうな生徒がこたえる。
雪乃「ここは申請とはやや異なる店をしていますね? 直ちに元の店に戻してください」
生徒e「すみませんでした……」
そして、そこから少し離れて。
奏「雪ノ下さん、大丈夫? 顔色悪いけど」
雪ノ下さんの仕事をねぎらって、話しかけた。
雪乃「油断していたから少し気分が悪いわ……。私は少し休んでいるから、甘草君は引き続き巡回してて……」
奏「んー、でも、雪ノ下さん辛そうだし――」
【選べ
1、「まぁいっか。じゃね雪ノ下さん」と言ってこの場を離れる
2、「ずっと這いつくばってろよwwwwww はっwwww」と言ってこの場をを離れる 】
奏「まぁいっか。じゃね雪ノ下さん」
もうちょい気にかけてるのが本心だけど……。
雪乃「ええ……。ありがとう……」
俺にはなんに対してのありがとうなのか、全くわからなかった。
※ここまで!
来週あたりには6巻完結できるかな?
※更新します。
6巻は完結させますが、火曜日も更新して、それで完結ということで。
このss自体はまだ続けます。
話は飛ぶが、もうすぐエンディングセレモニーという時間。
静「うーむ……」
雪乃「困ったことになりましたね……」
体育館では、少々困った事態になっていた。
隼人「どうしたんだい?」
有志のバンドをやっていた葉山君が舞台裏に戻ってきてたずねた。
静「ああ、葉山……。実はな、エンディングセレモニーで挨拶をするはずの相模がいないんだ。もうすぐ集合する手はずになっているんだが……」
結衣「あの……相模さんがいないと困ることってなぁに? 最悪、挨拶は飛ばせば……」
雪乃「店の順位の集計結果を、あの人が持っているのよ。それも後日発表という形はとれなくもないのだけれど、地域とのつながりがテーマのうちの文化祭で、地域賞を後日発表にするのはさほど意味がないから、発表しなければいけないわ」
八幡「そして、今から再び集計をする時間はない。なんとか相模を見つけて、挨拶をするよう説得しなければならない、ってとこか」
由比ヶ浜さんが理解して沈黙する。
八幡「まぁ最悪、誰も結果を知らないし、票数は公開しないんだからでっち上げでもなんとかなるとは思うがな」
結衣「わぁ、ヒッキーすこぶる最低だ……」
平塚先生が八幡の方をしっかりと見て、言った。
静「比企谷、やってくれるか?」
皆がさっと八幡を見る。
ここには、八幡をただのひねくれぼっちだと思っていない人が多くいる。
八幡「確実、とはいいませんが、心当たりならいくつか。それも、時間との勝負っすかね」
隼人「ヒキタニくん……」
翔「ヒキタニ君マジっべぇわ! 頼むぜ!」
奏「俺も手伝うよ」
八幡「おう」
雪乃「私たちは……できるだけ時間を稼ぎましょう」
隼人「優美子、もう一曲できるか?」
優美子「はぁっ⁉ それはちょっときついっていうか……」
隼人「頼むよ」
……イケメンボイス。
優美子「ま、まぁ? 隼人の頼みなら仕方ない…っしょ」
翔「えー、隼人くーん、それはきついでしょーお」
隼人「ほら戸部、あと一曲だけだから」
翔「はぁー……」
隼人「でも、稼げて5分くらいだぞ。どうする?」
急にシリアスモードになって隼人君が聞く。
雪乃「そうね……どうしま」
陽乃「はろはろ~、ゆっきのちゃーん。お困りのようだね~」
雪乃「姉さん……」
結衣「そうだゆきのん! 私たちでバンドしようよ!」
雪乃「え?」
陽乃「ガハマちゃーん、それいいねぇ~」
結衣「ほんとですか!?」
陽乃「静ちゃん」
近くにあった、葉山君たちのバンドが使っていないギターを軽く弾きながら、
静「ふむ。お前とやった曲なら、まだなんとかできそうだ」
と、平塚先生は言った。
高スペックだな……。どうしてこれで独身なんだろう?
陽乃「めぐり」
めぐり「はい! いけます!」
陽乃「雪乃ちゃん」
観念なさい、とでも言いたげに雪ノ下さん(妹)の方を見る
雪乃「……わかったわよ。由比ヶ浜さん、言い出しっぺのあなたも歌うのよ」
結衣「わぁ、ゆきのんがんば……ってえぇ⁉ あたしも歌うの⁉
あたしかしとかうる覚えだよ⁉」
雪乃「それをいうならうろ覚えなのだけれど……今ので少し不安になったわ」
結衣「ひどいよゆきのん! あたしがんばるからぁ!」
雪乃「よろしくね、由比ヶ浜さん。頼りにしてるわ」
結衣「! ……うん!」
雪乃「比企谷君、甘草君」
結衣「ヒッキー……」
八幡「おう。じゃあな」
奏「盛り上げてね!」
こうして、俺と八幡は相模さんを探しに体育館を後にした。
制限時間は、10分弱。
※ 明日に続く。
選べ……
1、「川崎、愛してるぜ」と言って立ち去る
2、「平塚先生、愛してるぜ」と言って求婚する
八幡「時間が時間なだけに、やみくもに探しても見つからん。奏、ちょっと待ってろ」
そう言って八幡は携帯電話を取り出し、どこかへかけ始めた。
義輝『我だ』
八幡が手招きし、俺にも会話の内容が分かるようにしてくれる。フリーハンドというやつだ。
八幡「材木座、おまえがいつも一人で時間をつぶすのはどこだ?」
義輝『ん? むぅ? 我は教室にいても邪魔者だから、昼休みなどは図書館か屋上にいるが?』
八幡「そうか……。おまえちょっと、図書館に相模がいないかみてくれないか?」
八幡は俺の顔を見ながら言ったが、
義輝『おお! この剣豪将軍、材木座義輝に任せろ!』
八幡「お、おお……。じゃ、頼んだぞ。もしいたら、エンディングセレモニーに行くよう言っといてくれ」
フリーハンドモードで材木座君に聞こえていたようで、返事があった。
義輝『ふむぅ⁉ 我に女子と会話しろというのか八幡⁉ そんな、話かけられるかわからな――』
八幡「ありがとな、材木座! 愛してる!」
義輝『おう! 我もだ』
八幡「うるせえ!きめえ!」
ぶつっ、と、そこで会話は終わった。
沙希「あ、比企谷」
八幡「おう、川崎か」
2-Fの教室の前で、川崎さんと会った。
八幡「なぁ、相模を見なかったか?」
単刀直入に八幡が聞く。
沙希「相模さん? そこの階段を上がっていったけど」
奏「本当⁉ ありがとう!」
言うやいなや、俺は走り出す。
そこの階段の上に行けば、材木座君の言っていた屋上だ。
八幡「ありがとよ、愛してるぜ川崎!」
沙希「なっ……⁉」
少しあとからついてきた八幡が何と言ったのか、聞こえなかった。
きいいぃぃ……ときしむドア(立ち入り禁止という紙があったが無視)をあけ、俺と八幡は屋上にでた。
そこにいたのは――
八幡「相模」
探し人だった。
南「なに?」
八幡「時間がない、用件だけ言うぞ。もうすぐエンディングセレモニーが始まる。実行委員長挨拶をしに体育館に戻れ」
南「どうして? 雪ノ下さんがいる。あの人が代わりにやればいいじゃん」
言い争いが始まった。八幡に、少し焦りが見える。
八幡「お前の持ってる投票結果を発表しなきゃいけないんだ。早く戻れ」
南「どうして? じゃあ、この紙だけ持っていけばいいじゃん。どうせ私、最初の時みたいにつっかえるだろうし、それなら紙を持って雪ノ下さんや他の人がやった方がましじゃん」
確かに。
八幡「お前が発表しなきゃ意味ないだろ、実行委員長なんだし――」
そうだ、ミッション!
『相模南に、文化祭を完遂させる』は、こういうことか!
雪ノ下さんに頼ってはいけない、誰かに頼ってはいけない、ただの相模さんが、エンディングセレモニーを完遂しなければいけないのか!
隼人・女生徒A・B「「相模さん(南)!」」
八幡の手が詰まってきたところで、隼人君が来てくれた。
彼らの持つリア力には舌を巻く。
隼人君がここにいるということは、隼人君たちのライブはもう終わっている。
……もう、時間はない。
隼人「さぁ、相模さん、みんな待ってるよ」
南「でも……うち……みんなに迷惑かけて……」
女生徒A「そんなのだれも気にしてないって」
女生徒B「そうそう!」
八幡・俺のペアの時はてこでも動かなかった相模さんの態度がコロッと変わっている。
リア充、恐るべし。
隼人「さ、戻ろう?」
南「ウチ、最低……」
その瞬間。
脳に激痛と文字が走った。
【選べ
1、 比企谷八幡を犠牲にする
2、 相模南を犠牲にする
3、 甘草奏を犠牲にする 】
八幡を犠牲――これは、八幡自身が自分を傷つけるやり方で、『奉仕部への』依頼、相模南の自立を含む文化祭の成功をさせる、ということだろう。
相模南を犠牲――具体的なことはなにも思い浮かばないが、これはなぜか、俺の選択肢のミッションに関わってくる気がする。
甘草奏、つまり俺を犠牲――一番堅実で、それでいて他人を傷つけない選択肢。
これがあるだけ、この選択肢はありがたいと思う。
だれも傷つけずに、問題は解決する。
だから。
なにもしなければ1番になっていたはずの現実は、俺が3を選択することで、かなり変わることになる。
八幡「ああ、ほんっとうに」
奏「うん、本当に最低だね」
八幡・隼人・南・A・B「「「「!?」」」」
屋上にいる全員が息を飲むのがわかる。
八幡でさえも、信じられないという目でこっちを見ている。
ちったあ、俺にも任せろよ。
もちろん、選んだのは3番だ。
なんと言えばいいのか――なぜか、頭の中にすらすらと文章が浮かんできた。
まるであらかじめ知っていたように。
※ また火曜日に。
奏「本当に最低だね。
自分から言い出した文化祭実行委員長の仕事を、最後には自分でやめようとしてるんだから。何がしたいのか、全くわからない。かと思えば、今度は葉山君の言葉には軽~くのっちゃってさ? はぁー、今までの俺たちの苦労は何だったんだって話。だって、俺たちが別に頑張らなくたって、文化祭は成功したんでしょ? 委員長がやらなくていいんだから、俺たちがやってもやらなくてもかわんないじゃん。
相模さん、君、奉仕部に変わりたいって依頼したんだって? 君自身に変わる意思がないのなら、表面上だけ頑張ってきた俺たちって何なんだろうね? 君は聞いてない? 奉仕部はただのボランティア団体じゃない」
よくこんなに詭弁が自分の中から出て来るな、と思いつつも、続ける。
奏「君も知っての通り、世界は残酷で君になんか見向きもしない。オープニグセレモニーのことがチラついているのかもしれないけれど、誰にでも失敗はあるし、なんどでも繰り返してしまう。けど君は逃げようとしてる。葉山君の優しい言葉に甘えて、本当の友達と呼べないような友達に慰められて、君は、どこの誰より君自身から逃げようとしてる。」
それは、俺が選択肢を持っているから、人一倍感じること。
選択肢は、自分にうそをついてはだめだ。
つらい。苦しい。いやだ。
でも。ここで逃げたらダメなんだ!
奏「そうやってずっと逃げ続けてるんだ。君は友達がいるって思ってるけど、本当の友達なの? 友達じゃない、今もこうして糾弾してる俺たちが、一番先に君を見つけたんだ。誰も君を、本気で探そうとはしていなかったんじゃない? 君もホントは心のどこかでわかってるんじゃない? 君が思ってる友達の中で、自分はその程――」
隼人「そろそろ黙れよ」
これが壁ドン! ただし俺が叫びたいことはキャー、でなく、がふっ、だ。
葉山君、きついきつい……。
葉山君が俺を抑えている間に、相模さんたちグループは屋上から出て行った。おそらくは、エンディングセレモニーに向かったのだろう。
女生徒A「なに、あいつ? 転校生?」
女生徒B「何様よ、南泣かせて」
南「ううっ、ううっ……」
女子が出て行ってから、葉山君は俺の壁ドン、もとい拘束を解いた。
隼人「まさか、お前も比企谷と同じことをするとは思わなかった。……すまない」
何を返すこともできず、葉山君は去っていった。
八幡「奏」
奏「……なに?」
話せるくらいには、葉山君のダメージから復活してきた。
八幡「どうして、こんなことをした」
奏「どうしてって……。しなきゃ、八幡がしてただろ?」
八幡「それはそうだが……。学校内ですでにぼっちの俺と、転校したばかりでまだあまり人が定着していないお前とじゃ、傷つきの度合いが――」
奏「オープニグセレモニーでもう十分俺はアウトだよ。それに、それはお前が傷ついていい理由にはならない」
八幡「おまえだって――」
奏「終わったことだよ。それに、俺は俺が傷つくことには慣れてる」
選択肢というもので。
八幡「……」
奏「いこう? もしかしたら、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんたちのライブ、見えるかもしれない」
BGM・Bitter Bitter Sweet
雪乃・結衣「「見つめるーたび ドキドキしーちゃう♪
君にもっと、近づきたいのー……」」
会場は大盛り上がり。
雪ノ下さん(姉)のドラムが全体のリズムをコントロールし。
会長の正確なキーボードが音階を奏で。
平塚先生のベースが荒々しく会場を沸かせ。
雪ノ下さんと由比ヶ浜さんの声が軽やかに響く。
文化祭のラストにふさわしいライブだった。
舞台裏。
女生徒A「おつかれ、南」
南「うえっ、えぐっ……」
女生徒B「あの転校生がなにもしなきゃよかったのにね。
ドンマイ、南」
近くで作業している俺にわざと聞こえるように喋る彼女ら。
片づけ手伝えよ。
静「すまなかったな、比企谷、甘草」
八幡「いえ、どうってことないいっす」
あのあと八幡には、屋上でのことは話さないように口止めした。
彼女らは大げさに、俺のことをけなしまくった言い方で学校に広めるだろうが……かまわない。俺はそういうことをした。
だから、八幡は先生にも屋上のことは話さない。
奏「はい、いやぁ、文化祭なんとか成功してよかったです」
静「そうか。比企谷。甘草。」
平塚先生は、ふっと、柔らかな笑顔になっていった。
静「準備の段階から、君たちの功績は大きかったように思う。最後もそうだ。
しかしだな。他人を救うため、というのは、自分が傷ついていい理由にはならないよ」
八幡「いいセリフっすね。奏に先越されてなきゃ」
静「そうだろうそうだろ……へっ!? 甘草、先に言ってたのか……」
奏「ええと、はい、まぁ……」
静「うう……。まぁーあれだ! お疲れさま」
奏「お疲れさまでした」
八幡「奏、目上にお疲れ様でしたは失礼になるぞ。まぁ他にいい言葉が出てこないのは確かだが」
静「はは、こういう時は素直にお疲れさまって言えばいいさ」
八幡「あんた国語教師だろ……」
なんとなく、八幡の足が部室に向いていたので、俺も一緒に行った。
雪乃「あら、ヒキガエル君。それに甘草君。どうしたの?」
八幡「なぜ奏の名前は間違えず俺にはダイレクトに古傷えぐってくるんだ」
奏「雪ノ下さん、何してるの?」
雪乃「ふふ。……これ、進路希望調査
奏「俺たちも書くやつさっさと終わらせよう。八幡」
八幡「そうだな」
雪乃「なにかあるの?」
奏「文化祭のまとめ。俺たち記録係だから」
雪乃「そう。お疲れさま」
奏「雪ノ下さんも。お疲れ」
八幡「おつか――」
結衣「やっはろー! ゆきのん、ヒッキー、奏君! 後夜祭に行こう!」
部室のドアを勢いよく開けて、由比ヶ浜さんが入ってきた。
八幡「後夜祭?」
結衣「うん!」
雪乃「語感から察するに、前夜祭の逆バージョン、といったところかしら」
結衣「そう! それ!」
八幡「いかんぞ」
奏「俺も」
雪乃「私も」
結衣「なんでこんな時だけみんな意見あうし! 行こうよ~」
八幡「俺が言ってもみんな気ぃつかって楽しめねえだろ」
雪乃「同じく」
奏「俺は……」
【選べ
1、「小町ちゃんに早く帰って会いたいから、行かないよ!」
2、「相模さんに会いたくないから行かないよ」 】
自分から言わないでほしいと言っておきながら2を選択するのはおかしいかな……
奏「小町ちゃんに早く帰って会いたいから、行かないよ!」
八幡「お、おう……小町も喜ぶな……」
結衣「シスコン……?」
雪乃「これはシスコンになるのかしら……。どちらかといえばロリコンのような……」
奏「と、とりあえず! 行かないからっ!」
結衣「ゆきのーん……」
雪乃「……わかったわ。行けばいいのでしょう?」
結衣「やったー! ヒッキーは?」
八幡「はぁ、俺は行かないと」
結衣「ヒッキーは?」
怖
八幡「わかったよ」
結衣「奏くんは?」
奏「俺も行かなきゃだめ?」
結衣「うん!」
奏「わかった」
結衣「よーし! みんなで後夜祭にいこ―!」
相模さんと会わなければ大丈夫……かなぁ……。
大変だったけど楽しかった文化祭。
進まない選択肢の謎。
これから……どうなることやら。
※祝・6巻完結!
次からは7巻、修学旅行編ですが、書き溜め完全になくなった(今日のも最期の方、ぶっつけでかいてるやつ)ので、一週分休んで書き溜めます
charlotteの方は書くので、見ていただければと。
>>183訂正
雪乃「ふふ。……これ、進路希望調査票よ」
八幡「あぁ、あったなそんなの……」
奏「俺達もさっさと書くやつ終わらせよう、八幡」
八幡「そうだな」
文化祭は終わり、体育祭もつつがなく終わり、そして数週間が過ぎた。
俺の悪評はそこそこ広まりはしたが、文化祭実行委員のぐだぐだは割と多くの人が知っていいたことと、葉山君たちのフォローで、なんとかいじめられる様なことには発展しなかった。
未だに相模さんグループからは嫌われているものの、それは想定内だし、どころかむしろ、想定よりかなり甘かったくらいだ。
翔「っつーか、修学旅行か。……っべーなー」
最近の話題は専ら、京都への修学旅行のことだ。
やはり高校の修学旅行という青春イベントは、青春を謳歌するリア充らしい会話だ。
俺には全く理解できない。やっべーなだけで会話を成立させてる彼らの脳はとてもすごいと思う。もはや脳科学研究会に出た方がいいレベル。
結衣「やっはろー」
八幡の正面に立ち、声をかける由比ヶ浜さん。
八幡「おう」
結衣「今日、部活行くよね?」
八幡「ああ」
結衣「そっか。じゃ、また部室で。」
そこで由比ヶ浜さんはちらり、と俺の方を見て。
視線をそらした。
あ、あれ!? もしかして照れてる⁉
と思うはずもなく。
奏(ギクシャクするなぁ……)
まぁ、十中八九、どころか十中十くらいは相模さんのことだろう。
いじめられる様なことはなくても、こういった「なんか接しづらい」という空気はある。
彩加「ねぇ、八幡」
戸塚さん(くん?????)が八幡に話しかける。
彩加「今日のLHR、修学旅行の班決めなんだって。それでね? その……」
なぜか戸塚さん(ほんとにくん????? すっげぇ顔赤らめてるんだけど)が、もじもじと口ごもる。
八幡「……じゃあ、一緒にするか?」
八幡が察して続きを引き取る。
彩加「う……うん!」
八幡「それじゃあ、あと二人か……」
彩加「どうしよう?」
八幡「どっかの二人組とドッキングだろうな……」
彩加「あ、あのさ? 甘草くんは誘わないの?」
八幡「ああ……そうだな。後で聞いてみるわ」
彩加「え? 今聞けばいいじゃ?」
八幡「あいつにも、いろいろあんだよ」
彩加「なにがあるの? ちょっと流れた噂なら、僕気にしてないよ?」
八幡「え? そうなのか?」
え、そうなの?
彩加「だって、あの甘草君が噂みたいなことをするとは思えないもん。たまに変なことはするけど」
教卓の上で豚の鳴きまねとかね。
※ のうコメとうとう最終巻でましたね。
部室にて。
結衣「もー、ヒッキー暗いし……」
八幡「そんなもんだろ、修学旅行なんて。もともと社会を勉強するために行ってるんだ、行きたくない場所でも着いていかなきゃならんことはこれから山ほどあるだろ。なら、この修学旅行で行き先を自分が決めず、他人が決定したルートで行くのも、立派な社会勉強の一つだろ」
雪乃「完全に否定できないのが辛いところね……」
結衣「ゆきのんまでっ! 甘草君は?」
奏「俺? 俺は、他の人と話し合って決めるかな。どうせ行くんならみんなで楽しみたいし」
八幡「リア充の考え方じゃねえか……」
雪乃「話し合う……?」
結衣「えっ!? 普通そうだよね!?」
奏「大丈夫だよ、俺たちはおかしくないから……」
結衣「だよねっ!」
雪乃「比企谷くん。もしかして私たちっておかしいのかしら?」
八幡「ああ、お前はかなりな」
奏「八幡……認めよう……?」
八幡「俺はお前に言われるとかなりおかしなかんじなんだが……」
とんとん。
と、部室のドアがノックされた。
雪乃「どうぞ?」
入ってきたのは、クラスのリア充筆頭、戸部君と葉山君だった。
結衣「やっはろー、めずらしいね、とべっちじゃん! どうしたの?」
翔「おおー、結衣―」
隼人「や」
八幡「葉山か」
八幡(とお調子者の戸部)
奏「………」
雪乃「何をしに来たのかしら? 用がないならかえっていただいて結構よ」
固まった俺と八幡を横目に見ながら、雪ノ下さんが言った。
隼人「あ、いや、用ならあるよ。依頼をしたいんだ」
翔「あー、でもやっぱりぃ? ヒキタニくんとかぁ、転校生に頼めれないっていうかぁ」
隼人「戸部……それは失礼だろ」
雪乃「では、出て行ってくれるかしら?」
八幡「わかったよ……」
奏「じゃ、俺も」
と、俺たちが部室から出ようとすると、
雪乃「どうしてあなたたちが出ていくの? 出ていくのは彼らの方よ。頼む側なのに礼儀の心得もない、そんな輩の依頼をどうして受けなければならないのかしら。さぁ、早く出て行って」
翔「おっ、おうぅ……」
戸部君がなさけない声をだしていたけど、俺も彼の立場なら絶対同じ声を出してた自身がある……。
隼人「すまない、雪ノ下さん。ほら、戸部も。謝って」
翔「雪ノ下さんマジパネェわぁ……。ゴメンな、ヒキタニくん、甘草くん」
奏「あ、うん、いいよ。俺がひどいことしたのは事実だし」
八幡「……で、依頼は?」
結衣「珍しい、ヒッキーから聞いた!」
八幡「いや、面倒そうだからさっさと終わって帰ってくんねぇかなと思って」
結衣「うわぁ……」
隼人「戸部」
翔「うー……わかった……。まぁヒキタニ君には夏に言ってるしな……よし!」
葉山君の一言で覚悟を決めたのか、ぐっと拳をつくる戸部君。
ちらりと名前の聞こえた八幡を見ると、訳知り顔で「ふぅーん……」って顔をしていた。
翔「お、俺さ、海老名さんのこと結構いいな、って思ってて……」
結衣「うんうん!」
由比ヶ浜さんが話に大きく乗っかる。やっぱ恋バナとか好きなのかな?
翔「で……まぁちょっと修旅で決めたい的なことなんだけど」
奏(わかった?)
と八幡に視線を送ると、
八幡(わからん、言っていることが理解できん)
と返ってきたものの、しかし表情はどこか察したような顔だった。どっちだよ。
結衣「マジ!?」
由比ヶ浜さんはキラッキラしてるけど、雪ノ下さんは首をかしげて、なんのことだかわからない、という風だ。
リア充とぼっちの違い……
そんな雪ノ下さんに由比ヶ浜さんが耳打ちして教え、八幡が改めてわかりやすく簡潔に言った。
八幡「つまり、修学旅行で海老名さんに告ってつきあいたいと、そういうことでいいのか」
翔「そうそうそんな感じ。さすがにフラれるとかきついわけ。ヒキタニくん話早くて助かるわー」
雪乃「悪いけれど、お役に立てそうもないわ……」
八幡「俺もだ……」
奏「えっ⁉ どうして?」
結衣「手伝ってあげないの⁉ ゆきのん」
雪乃「つきあうって、具体的にどうすることかわからないし……」
八幡「だな……」
【選べ
1、「手伝おうよー、とべっち可哀そうじゃん」
2、「八幡、とりあえず俺とつきあってみる?」
3、平塚先生と付き合う 】
急に選択肢来るな最近へこみがちだと思ったら!
普通に考えれば1が正解なんだけど、今までとべっちだなんて読んだことないしなぁ……。
2はホモ扱いされる。腐女子大歓喜。以上。
3? 考えるまでもない。
奏「手伝おうよー、とべっち可哀そうじゃん」
結衣「そうだよゆきのん、とべっち困ってるみたいだし」
選択肢は正解。
雪乃「……まぁ、そこまで言うのなら」
八幡「はぁ……やりますか」
翔「まじサンキュー、結衣も雪ノ下さんも」
あ、あれ? 八幡と俺は?
奏「具体的には何をすればいいの?」
翔「や、だからさー、俺が告んじゃん? そのサポート的なこと?」
小さく、
結衣「ひゃー」
と言っているのが聞こえたけれど…
八幡「思いのたけはわかった。逆に言うと思いの丈しかわからなかった」
うん。具体的にって聞いたのになにひとつ具体的なことは言ってない。
八幡「けどな戸部、言っちゃなんだがそれって結構リスキーなんじゃないか?」
結衣「リスキー?」
雪乃「リスク。危険を被る可能性のこと」
結衣「それくらいわかるしっ! ゆきのん酷い!」
奏「どういうリスク?」
八幡「そうだな。海老名さんに告白するだろ? んで振られるだろ?」
結衣「そこ確定してるんだっ?」
八幡「それだけじゃない。告白した次の日からそのことがクラス中に知れ渡って、噂される。それを偶然耳にしてしまい、ちょっぴり傷つくリスクがある」
雪乃「比企谷君……」
結衣「またヒッキーの実話じゃん……」
奏「そうなの? 由比ヶ浜さん」
八幡「おい、そこでなぜ本人でなく由比ヶ浜に聞く」
奏「いや、だって……八幡より由比ヶ浜さんに聞いた方が他の話も聞けるかなと……」
八幡「……」
八幡「リスクならまだあるぞ。親しい人に告ったらその後の人間関係がだな」
親しい人に。親しいと思っている人に告白するリスク、か。
なぜだか、少し懐かしく寂しい気分になる。
隼人「その辺はうまくやるよ」
八幡「……そうか」
葉山君の言葉に、八幡は口をつぐんだ。
隼人「それじゃあ、俺部活あるから、あとは頼むな。戸部も、遅れんなよ」
翔「おー」
翔「っつーわけで、バシッとよろしく」
雪乃「よろしくと言われても……なにをしたらいいのかしら?」
奏「……この中でそういう経験のある人は?」
八幡「俺のは役に立たんだろ。失敗談だしな」
雪乃「私もないわ」
自然と由比ヶ浜さんに視線が集まるが、
結衣「わ、私もないよ!」
奏「じゃ、どうするの」
雪乃「……とりあえず戸部君のアピールポイントを探してみましょう」
翔「……隼人君と友達?」
結衣「さっそく人頼みだし……」
中々に案は出な
結衣「甘草君、何かある?」
奏「いや。俺はまだ戸部君のことそんなに知らないし……」
rrrrrrrrrr
翔「おっとやべ、先輩来るらしいから俺部活いくわ。それじゃ、オナシャス!」
結衣「いってらっしゃーい」
翌日。2-Fでは、ホームルームでの修学旅行のグループ決めがされている。
八幡は依頼のため葉山君・戸部君、あらかじめ約束してた戸塚君(さん?)とグループを作っている。
雪ノ下さんは別のクラス。ここでの話に直接は関わらない。八幡のグループに関して意見はしたけれど。
そして俺は。
静「どうせ余りなんだ、自由にしていいぞ。望ましいのはどこかのグループを5人にしていれてもらうことだがな。お前にとってもそれがいいだろう。3人グループを増やすより私も手間が省ける。比企谷たちのグループに入るか?」
と言われていたので、
奏「じゃ、それでお願いします」
八幡・戸塚・戸部・葉山君グループになった。
いよいよ明日に出発、という日。
奉仕部の部室に集まって、最期の打ち合わせをする。
由比ヶ浜さんが大量の雑誌を持ち込んで
結衣「じゃあ、はじめよう!」
奏「戸部くんのデートプランかぁ……」
結衣「どこがいいかなぁ……」
雪乃「行くときはまだ紅葉の季節だし、そういうところがいいでしょうね」
八幡「具体的には?」
雪乃「嵐山や東福寺かしら」
八幡「詳しいな……」
雪乃「調べたもの」
とんとん。
ドアをノックする音が聞こえた。
結衣・奏「どうぞー」
「失礼しまう」
入ってきたのは、クラスのトップカースト、三浦さんと海老名さんだった。
※
先週更新休んですみません(汗)
結衣「姫菜じゃん、やっはろー!」
姫菜「はろはろ~」
奏「や、やっはろー」
姫菜「腐腐、奏くんもはろはろ~」
海老名さんの笑い方がちょっと不気味なのは気にしない。
雪乃「お久しぶりね。適当にかけて」
椅子に腰かけ、雪ノ下さんが出した紅茶を飲み、一息ついた海老名さんは真剣みを帯びた表情で話し始めた。
姫菜「ちょっと、とべっちのことで相談なんだけど……」
結衣「と、とべっち⁉ なになに⁉」
あからさまに動揺してどうするの由比ヶ浜さん……
海老名さんはカッと目を開き、エキサイトしてこう言った。
姫菜「とべっち、最近隼人君やヒキタニくんと仲良くしすぎてるっぽくて、大岡君と大和くんがフラストレーションッ! 私はもっとただれた関係が見たいのに! これじゃ三角関係がだいなしだよっ!」
……と、エコーがかかりそうな言い方で海老名さんは吼えた。
てかこの人、腐ってたのか。
結衣「でも、ほら。大岡君も大和くんも、男子同士でいろいろあるんじゃないかなー?」
姫菜「男同士の関係……やだ結衣。はしたない」
結衣「あたし、変なこといった!?」
八幡「いや、大丈夫だ」
奏「わぁ……」
ふと、海老名さんは微笑んだ。
エキサイトしているときの表情から、ふっと、その腐った部分が抜け落ちたような笑顔で。
姫菜「でも、今までと違うことは確かだよ。違ったままでいるのはいやなんだ。今まで通り仲良くやりたいもん。
ってことで、ヒキタニくん。修学旅行でも、おいしいの期待してるから」
八幡「おい……」
八幡には悪いけど、心底俺の名前が呼ばれなくってよかったって思った。
姫菜「甘草くんも入ってくれたら、よりただれていいけどね? 腐腐腐……」
訂正。やっぱよくない。
そして、海老名さんは椅子から立ち上がり、教室の出口へと向かった。
姫菜「ヒキタニくん。よろしくね?」
去り際に、そう言い残して。
家に着いてから、八幡の部屋がやけに騒がしかった。
なんだかんだで、修学旅行に浮かれているんだろうか。
小町「奏さん、奏さん!」
階段を下りると、小町ちゃんが話しかけてきた。
流石に一か月も居候していると、俺の呼び方も下の名前になった。
「甘草」より「奏」の方がみじかくて言いやすいらしい。
俺をはじめて「奏さん」呼びした時の比企谷さん(八幡パパ)の形相が、未だに軽くトラウマになっていることは、今はおいておいて。
奏「どうしたの?」
ちなみに、比企谷さん、今でも小町ちゃんの「奏さん」を聞くたびにちょっとピクって反応してるのが怖い。
小町「いやぁ~、ごみいちゃんよりしっかりしてそうな奏さんにちょっと頼みごとがありまして」
奏「なに?」
小町「せっかく京都にいくんですから、お土産買ってきてほしいんですよ~。ごみいちゃんだと別の買ってきたりとかしそうで」
奏「流石にそれはないんじゃないかなぁ……?」
他ならぬ小町ちゃんの頼みを、シスコン八幡が遂行しないはずがない。
小町「ということで、この紙を渡しておきます!」
第三位・生八つ橋
第二位・よーじ屋のあぶらとり紙(ママンの分も)
第一位・発表はCMの後で!
奏「第一位は?」
小町「奏さんやお兄ちゃんの、楽しかった思い出です」
奏「うん……」
修学旅行で選択肢さえでなければ、大丈夫なんだけど……
【選べ
1、「楽しかった思い出? へへ、どんなことでもいいのか?」
2、「いまここで思い出をつくろうぜ」 】
おい。
伏線回収はいらないって何度……というか、早えよ。
奏「楽しかった思い出? へへ、どんなことでもいいのか?」
小町「はい! 笑い方が不気味ですね奏さん……どんな思いで作るつもりですか……」
【選べ
1、「話せないようなことだよ……へっへへ」
2、「今ここで実践してみるかい?」
3、「話せないようなことだよ……実践してみるかい?」 】
ミックスしてんじゃねえか!
しかも最近でてなかったからって流石にですぎだろ選択肢!
奏「話せないようなことだよ……へっへへ」
小町「……甘草さんがそういう人だとは思いませんでした」
誤解……だよっ……!
奏「いや、ちが、誤解――」
呼び方も甘草さんに戻ってるし!
小町「わかってますって。この一か月ほどわたしに全く手を出していないどころかそういったイベントが全く発生していない時点で、甘草さんのことは信用に値すると思ってますから。 ……ちょっとだけ寂しい気もしますが」
奏「なにか、言った?」
小町「いえ、何も。甘草さん、このカメラ渡しておきますので、しっかりお兄ちゃんを監視してくださいね」
奏「……監視って」
小町「言葉の綾ですよ。楽しんできてくださいね?」
そういうと小町ちゃんはふんふーん♪ と鼻歌を歌いながら洗面所へときえていった。
呼び方が「奏さん」になるのは、修学旅行から帰ってきてからのことになる。
とうとう、出発日になってしまった。
比企谷さんが八幡に「これで酒買ってこい」と渡したお金は、俺が「今未成年はお使いでもお酒買えないことになってるんですよ」と言って、比企谷さんに渡した。
八幡は無念そうな顔をしていた……。こいつ、知っててもらおうとしたな?
最寄駅から駅に行く。
時間には余裕をもって家を出たのだが、
【選べ
1、 駅で乗らないホームのベンチに一分座る
2、 切符の購入に手間取る
3、 電車に乗る前にホームでブレイクダンス 】
という選択肢が出て、1を選択。
珍しく朝にマックスコーヒーを飲まずぼーっとしていた八幡と共に、乗る電車とは別ホームのベンチに一分(頭痛が止むまで)座り、それから本来行くべきホームに行ったので、かなりのロスが生じてしまった。
だから、乗るときには結構ぎりぎりになってしまった。
それからしばらく乗り、乗り換えも急いで(これは特に何かあったわけじゃない)すると、電車の中に見知った顔があった。
川崎さん、だったかな。
蒼っぽい黒髪(アニメではほぼ蒼)をポニーテールにした、キツそうだけど実はそうでもなさそうなクラスメイトの女子。
奏「おはよう、川崎さん」
俺の方を完全に無視し、八幡の方はちらりと顔を向けただけで、それから視線をそらしていた。
ただ、八幡から避けた顔が、やや赤くなっているのを、やや斜めから俺は見た。
文化祭が終わったあたりからこの調子だ。どうしたんだろう?
そのまま東京駅に着くまで(選択肢も)無言を通し切り、ものすごい人ごみの中、新幹線のホームを目指す。
新幹線口には見知った総武高の面々が。
義輝「八幡!」
八幡は呼ばれた方を向き、面倒くさげになにか話している。というか、あしらってる?
彩加「八幡!」
八幡「戸塚! おはよう」
さきほどとは打って変わって明るく返す八幡。材木……くんかわいそう。
新幹線に乗り込み、座席を決める。
海老名さんがなにやらエキサイトしかけていたが、とりあえず無視。
で、結局こうなった。
葉山 戸部 川崎
窓 廊下
三浦 由比ヶ浜 海老名
戸塚君(さん? 未だに……)は八幡について行っているし、俺もついて行こう。
【選べ
1、 廊下の真ん中でブレイクダンス
2、 廊下の真ん中でリンボーダンス
3、戸塚彩加の膝の上に乗車 】
最近選択肢はブレイクダンスにハマっているのだろうか。
流石に新幹線の廊下ではスペースがないし、選べない。
戸塚君の膝の上……戸塚君軽そうだから、痛いだろうな……。
リンボーダンスをして、周囲により引かれました。まる。
……いつの間にか寝ていたよう。
八幡と戸塚君は仲良く頭を少しぶつけて寝ている。
……なにも知らない人から見たら、恋人同士に見えないこともないかもしれない。
結衣「……もう、三人とも寝すぎだよ」
廊下を挟んで反対側、由比ヶ浜さんがいつの間にか座っていて、くすりと笑っていた。
奏「ははは……。朝早かったからね……」
苦笑して返す。
ふと、由比ヶ浜さんの方を見る。
由比ヶ浜さんの視線が注がれるのは――
奏「由比ヶ浜さん……八幡のこと、好きなの?」
結衣「えっ⁉ えっ⁉ なんで⁉」
試しに聞いてみると、あからさまに動揺した。ちょっと面白かった。
奏「視線の先がずーっと八幡の方むいてるからさ。もしかしたらそーなのかなーと思って」
先ほどの反応で確信をもったけど、それは内緒。
結衣「うーん……。話さない?」
奏「もちろん」
たとえ選択肢で出ても、絶対にその選択肢を選ばないことをここで誓える。
【選べ
1、 小声で「もちろん、言いふらすよ」
2、 大声で「ねぇー、由比ヶ浜さん実は八幡のことー!」 】
奏「もちろん、言いふらすよ」
大声で言ったら取り返しのつかないことになりそうだし、他のお客さんに迷惑だ。高校生が大勢喋ってるなかで今更だとは思うけど。
結衣「冗談だよね?」
すっごく真剣な顔をして由比ヶ浜さんが聞いてくる。
正直ちょっと怖かった。
奏「当たり前だろ」
そう答えると。
結衣「……奏君。冗談でも、言わない方がいいよ、女の子にとっては」
その通り、だとは思う。
本当に――この選択肢が恨めしい。
奏「……ごめん」
結衣「うん」
奏「……そろそろ富士山とか見えないかな?」
結衣「あー、かもね」
奏「八幡たち、起こしてみたら?」
結衣「え、なんで?」
奏「アピール?」
結衣「だから、、なんでっ⁉」
奏「俺は寝たふりしてるから」
結衣「ちょっとひどいし⁉」
奏「頑張ってね♪」
俺は仲直りの代わり、と言ってはなんだけど、由比ヶ浜さんの応援をちょっとすることにした。
まだ到着までかなり時間がある。八幡を起こしてから、本当にまた寝ようかな?
結衣「わぁ、ちょっと寒いね」
新幹線でちょっとしたアピールをした由比ヶ浜さんが、新幹線を降りてバスへ向かう途中で言った。
確かに、関東と比べると京都は寒いだろう。
雪ノ下さんがちらりと見えたが、きっちりと上着を持ってきていた。準備良すぎだろ。
八幡と顔を見合わせつつぶるっと震えると、身が引き締まった気がした。魚的な意味でなく。
――さぁ、依頼の始まりだ。
最初は清水寺に行った。
これは全体での強制イベントで、集合写真なんかを撮った。
俺は端っこで、八幡は他の人に隠れるスタイルで各々やり過ごした。クラスで浮いている者同士、考えることは似たようなものだ。
その後だ。
結衣「ヒッキー、甘草君」
八幡「どうした」
結衣「ちょっと面白そうなこと見つけたから行ってみようよ」
八幡「面倒だ」
奏「列ちゃんと並んでおかないと。由比ヶ浜さん」
結衣「甘草くん最近ヒッキーみたいだし……。仕事のこと、忘れたの?」
奏「いや?」
八幡「観光のときくらい仕事忘れて集中したいです……」
今度は違った。
結衣「早く! 行こ!」
行った先の胎内めぐりで、二人組がつくれなかった俺は出口のところで待っていた。
ぼっちで待っている間に、「今度ショコラたちと来てみたいな」と思ったりした。
※超かたつむり更新すみません
みんなと合流した後、列に並びなおして清水寺の有名な本殿に入った。
俺たちのような修学旅行生だけでなく、一般の観光客もいてごった返している。
奏「すげぇ人……」
嫌になるくらいに人が多い。
そんな中でも、由比ヶ浜さんがアピール(とは言えないか)をしているのが見えた。
結衣「ヒッキー、写真一緒に撮ろうよ」
八幡「別にいいけどよ……」
思い出づくりかー、いいなぁ。
【選べ
1、大声で牛の鳴きまねをして思い出を作る
2、集合写真に変顔で写り、思い出にする。
3、清水の舞台から飛び降りる 】
社会的に死ぬか物理的に死ぬかの選択を強要されてる……っ!?
いや、運が良ければ清水の舞台から飛び降りても死なないのか……? いや、こんな思考がアウトか……。フラグみたいだ……。
集合写真写真は形に残ってしまう……。あとあとからいじられるネタになるだろう。
その点では牛の鳴きまねも同じだけど、あれは記録には残らないはず……!
奏「ンモォ~ウ」
頭痛。
まだやるのか!?
奏「モ、モォ~ウ」
突如牛の鳴きまねを始めた俺の周りに、やじ馬が集まり始める。
そして、あ、ちょっとやめて! その可能性は考慮してなかった! スマホで動画撮るのはやめてよ観光客の皆さん!
自分の意志でやってるんじゃないんだから! ある意味自分の意志だけど……仕方なくだから!
奏「モォ~ウ……」
そんな心の叫びが通じるはずもなく、結局SNSで拡散されている俺の鳴きまねを、由比ヶ浜さんが拾って後から見せてくれた。……結構俺うまいじゃん、と思ったのは現実逃避だ。
八幡「災難だったな……」
奏「ほんとだよ……」
ホテルへと向かう途中、完全にうなだれた俺を八幡が慰めてくれた。
八幡「じゃ、買ってくるわ」
彩加「いってらっしゃい」
八幡がゲームの罰ゲームで飲み物を買いに行ったあと、俺はなんとなく、謳歌に電話してみることにした。
奏「俺も、ちょっと外出てくる」
彩加「うん、いってらっしゃい」
義輝「うむ。存分に外の風にあたってくるがいい」
奏「はは、ありがとう」
ちょっと苦笑いしつつ部屋を出る。
そして、携帯電話で電話をかけ始めた。
prrrrr……
prrrrr……
『おかけになった番号は、現在使われておりません。……』
え……?
それから二階ほど試してみたが、全て同じ結果だった。
奏(電話変えたのかな?)
そう思い、今度はショコラ……家にかけてみる。
prrrrr……
prrrrr……
『おかけになった番号は……』
奏(あ、そういえばそうか)
俺、引っ越ししたんだった。
ならばと思い、今度はふらのに電話する。
prrrrr……
prrrrr……
『おかけになった番号は、現在使われておりません。』
え……?
どうして、誰にも電話がつながらない……?
そこで、迷惑かもしれないと思いながら、総武高じゃない人の電話を片っ端からかけていく。
『おかけになった番号は、現在使われておりません。』
『おかけになった番号は、現在使われておりません。』
『おかけになった番号は、現在使われておりません。』
『おかけになった番号は……』
っ!
どうして――誰にもつながらない!?
他の人はともかく、チャラ神にも通じないなんて――何かが、絶対におかしい。
電話に出ないのならまだわかる気もする。けど――神が、担当である俺に言わずに番号を変えるなんてこと、ありえるのか!?
そして、気づいた。
気づいてしまった。
どうして俺は、今の今まで。
この一か月ほど。
あれほど仲のよかった人に、電話せず、されなかったのだろう?
終わり?
※ 迷走してきました。今日はここまで。
>>238
ssは続きますよ
そこまで考えて、あと少しでおかしくなりそうになった時ーー俺の意識は、途切れた。
奏「んあ……」
目が覚めると、そこはホテルの自分の部屋だった。
静「ああ、起きたか」
見ると、平塚先生が隣で京都の観光雑誌を読んでいた。俺を見ると部屋の畳に置いた。
外は明るく、曇ってはいるが既に日が昇っていることはわかった。
奏「すみません……俺、どれくらい寝てました?」
静「昨日私が夜に見つけてから今までだから……ちょうど12時間ってところか。よく寝たな」
奏「そうですか……」
静「今日も観光……したかったな……恋愛や結婚のご利益あるところ……調べてたのにな……」
付箋がびっしり貼ってある雑誌を恨めしげに見る先生を見て、凄く可哀想に思った。誰か、もう貰ってあげなよ………
静「君は目覚めたんだが、今日の予定はパスして、ゆっくり寝ていたまえ」
奏「……わかりました」
まぁ……当然か。
いきなり倒れたら、まぁ強制送還されないだけありがたいだろう。
静「明後日から、また参加すればいいさ。またちゃんと動けるように、しっかり休んでろよ」
奏「はい」
ゆっくり休むつもりだけど……あの事は考えないと……。
修整
>>244
いきなり倒れたのだから……まぁ、比企谷宅に強制送還されないだけ、ありがたいだろう。
とりあえず、紙に書いて整理してみよう。
えっと、紙……紙……そうだ、なにも書いてない修学旅行の栞のメモ翌欄。
栞は回収されるから、後で消しておかないと……
・晴光学園の人や家族とは連絡を取ることが不可能。
・チャラ神とも連絡不可に。
・ミッションもここのろころなし。選択肢が現れるため、警戒は必要。
・ここに来る過程の記憶が曖昧。
こんなところか。
しかし……どうしてこうなった。
また、寝てしまってたみたいだ。
もう夕方か……今日も、夕飯食って寝るか。
昨日早く寝たこともあって、かなり早い時間に起きた。
部屋を出ると、そこには既に由比ヶ浜さんが。
奏「あ、おはよう」
結衣「おはよ、甘草くん。ヒッキー待ってるんだけど……」
奏「……奉仕部のこと? それともなんか個人的な用? なんなら起こしてくるけど」
すると由比ヶ浜さんは顔を赤く染め、動揺しているのがあきらかな感じで言った。
結衣「ぜ、全然!? 個人的な用、とかじゃなくって……ほ、奉仕部のことでちょっと準備しなきゃなーって思って、朝ごはんキャンセルしたしそのことも言わなきゃなーって……」
慌てて話す由比ヶ浜さんに言う。
奏「俺も奉仕部なんだし……その話聞いてもいい?」
結衣「あ……甘草くんが奉仕部だってこと忘れてた……」
奏「そ、そう……」
傷つきました。ええ、とても。
奏「えっと、じゃあ、俺も朝飯キャンセルしてくるから……それから集合でもいい? 八幡、まだしばらく起きないと思うよ」
結衣「あ、うん、わかった。……ごめんね?」
かるく両手を合わせて上目遣い。
凄いね、並みの男ならまず惚れる。
でも俺には……いるからな。片思い。
奏「いいよ、気にしてない。じゃ」
結衣「うん、じゃ」
軽く俺は手を振って、エレベーターホールに向か――
【選べ
1、女子の階に降りて先生に見つかる
2、外に出て京都の朝の街を全力ダッシュ 】
流石に1はないだろうと思いつつ……でも、一日ほぼまったく動いてない体にはきっつい選択肢だな、2は……。
俺は朝食をキャンセルしたものの、お冷を何杯かもらう羽目になった。
おしゃれなカフェで雪ノ下さんと合流し、朝食をとった後、伏見稲荷の階段を登る。
奏「ふぅ……」
朝にちょっと運動したおかげで疲れがあるかと思ったけど……逆にいい運動になったみたいだ。かなり長くつらい階段も、それほど辛くない。明日以降の筋肉痛が怖いけれど。
少しのぼったところで休憩(雪ノ下さんの体力の限界)し、そこで八幡があきらめて(主に雪ノ下さんのおもんばかって)下りることにした。
結衣「甘草くん、元気だね……」
いつも元気な由比ヶ浜さんがやや疲れ越えで言う。
奏「……そうでもないよ?」
11月だというのに、軽く額には汗をかいている。
昼頃になるにつれて増えてきた観光客による人口密度のせいもあるかもしれない。
雪乃「ふぅ……」
雪ノ下さんがため息をつく。
八幡がそんな雪ノ下さんを見て『へっ』と笑うのが見えた。
いや、君が疲れている雪ノ下さんを見てにやっとしたのはわかったけれど、笑いの擬音が『へっ』なのをちょっと自覚してほしいな。周りの観光客の方ひいてるじゃないか。俺も正直ちょっと引いてる。
東福寺に行くと、そこには葉山君たちリア充グループがいた。
写真を撮っているらしい葉山君がフラッシュと一緒に輝いて見える。すげぇ……。
葉山「や」
葉山君が八幡と雪ノ下さんを見て軽く挨拶する。
由比ヶ浜さんはもはや挨拶がいらない仲(流石リア充)、俺とは挨拶しない仲。
由比ヶ浜さんのリア充スキルで、かねてから計画していた同行計画を自然なものにした。恐るべきリア充。
雪ノ下さんと三浦さんが火花を散らす中、
姫菜「ヒキタニくん」
海老名さんが八幡を呼んでどこかに行く。
かなりの人ごみを、八幡のぼっちスキル(本人談)さながらにすり抜けていく。
八幡はその後を追いかけていくけれど……俺は呼ばれていないから行かない方がいいだろう。
【選べ
1、 比企谷八幡の邪魔をする
2、甘草奏の邪魔をする 】
訳のわからない選択肢唐突にでたな!
八幡の邪魔をしたくない、とはおもうけど……俺の邪魔をするってどういうことだ?
とりあえず2を選択すると、俺は頭痛に見舞われた。
思わず一歩よろめくと、少し軽減される。その先にはきれいに人ごみをすり抜けているぼっちの姿が。
もしかして……『ついて行かない』俺の意志を邪魔しろと? ついて行けと?
姫菜「相談、忘れてないよね?
姫菜「どうどう? メンズたちの仲は? 睦まじい?」
八幡「……仲はいいんじゃないか? 夜とか麻雀してるし」
そこかよ。てか八幡参加してたっけ?
姫菜「それだと私が見れないしおいしくないし!」
見たいんだ……
八幡「まぁ俺たちも嵐山行くし、その時に……」
姫菜「よろしくね」
海老名さんの顔は見えなかったが……「よろしくね」だけが、なぜか別の意味に聞こえた。
今日は二レスで。明日もうちょっと続けようと思います
さて、ここは北野天満宮。
学業の神様こと菅原道真を祭った神社だ。
小町ちゃんの高校合格祈願に、八幡の希望で寄った。まぁ、俺もちゃんと横で同じ絵馬描いてるあたり、人のことは言えないんだけど……。
八幡「……待たせて悪いな」
奏「待っててくれてありがとう」
俺と八幡が雪ノ下さん・由比ヶ浜さんのところに戻る。
雪乃「では、行きましょうか」
次は、嵐山。
……なぜか変なところで来る選択肢の頭痛『甘草奏の邪魔をする』で、八幡たちの少し後を追うようにして行く。
結衣「甘草くんどうしたの? 急にいなくなっちゃって……」
正確にはストーカーに近い感じで後ろをついて行っていますよ、ええ。
八幡「まぁ、あいつにはあいつなりの事情があるんだろ」
結衣「あ、あれおいしそー!」
多くの店が軒を連ねる通りで、由比ヶ浜さんが食欲を刺激され、何かいろいろと買ってるみたいだ。
雪乃「夕食、入らなくなるわよ……」
結衣「あ……。どうしよう、ゆきのん」
雪乃「はぁ……わかったわよ」
多くの人の喧騒であまり詳しくは聞こえてこないんだけど……由比ヶ浜さんの持っているものを口に入れた。
雪乃「あなたも手伝いなさい」
雪ノ下さんにジトっと睨まれて、八幡も由比ヶ浜さんから肉まんらしきもの(手で半分に割ってるから間接キスじゃない)を受け取り、食べる。
由比ヶ浜さんが次に出した揚げ物も、八幡は同じように食べる。それを見て、由比ヶ浜さんが笑う。
八幡のやつ、はたから見れば普通にリア充やってるんだけどな。
竹林の道で会話する。
……今は選択肢の効果は出ていない。
結衣「すごいね、ここ……」
奏「足元、灯篭があるんだね」
雪乃「夜になるとライトアップされるそうよ」
すると先行していた由比ヶ浜さんがはっと後ろを振り返り、
結衣「ここだ! ここがいいよ!」
と大きな声をあげた。
八幡「何が」
かな~り冷たいトーンの八幡に、照れながら由比ヶ浜さんが言う。
結衣「告られる……なら」
八幡「なぜに受動態……」
……俺は軽く苦笑して空を見る。
――今夜は晴れそうだ。
ただ、風は秋らしい冷たいものだった。
夕食の後、みんなで部屋に集まっていた。戸部君の挙動がおかしい。それはもう。恋してるなーって感じの挙動のおかしさだ。
翔「っあー、やっべ……緊張してきた」
『してきた』じゃなくて『してる』でしょ、という野暮なツッコミはしない。
彩加「なんかこっちまで緊張するね」
戸塚さ……くんが緊張気につぶやいた。
というか、本当に一瞬この人が男子部屋にいるのにどきっとするんだけど……今更だけど。
と、不意に葉山君が戸部くんに一言二言かけて部屋から出ていく。
それについて行く八幡が気になって、気づいた時にはその後を追いかけていた。
八幡「やけに非協力的だな」
川辺で会話する二人の声が聞こえる。
隼人「そうかな?」
いつものイケメンスマイルで受け答える葉山君。
でも、そこには俺でもわかるくらいの暗さがあった。
隼人「そういうつもりはなかったんだけどな」
八幡「じゃ、どういうつもりなんだ?」
隼人「……俺は今が気に入ってるんだよ」
行かない方がいいか、と思いつつ、今回の依頼に関する件なのはわかったので、どうしても抑えきれず、
奏「続き、俺も聞いてもいいかな?」
いつもの俺なら絶対にしない。
でも、隠れて聞いてる方がよっぽど悪いと思うから。
――なにか、取り返しのつかないことになるような気がして。
葉山君と八幡が驚いたように俺を見る。
葉山君は一瞬驚いたような顔をして、
隼人「別に、いいよ?」
と言った。
そして、俺と八幡の方を(自然な動きで)向き直って、続けた。
隼人「戸部も、姫菜も、一緒にいる時間がいいんだ。だから、」
しかし、そこまで言ったところで、八幡が止めた。
八幡「……それで壊れる関係なら、それまでだったってことだろ」
奏「……っ!」
言いたい。なにか言い返したい。
選択肢の頭痛はきていない。でも、文化祭のときに、まさにぶっ壊すことをした俺は……そんなこと言えない。俺が壊した責任を――感じているから。
隼人「そうかもしれない。でも……失ったものは戻らない」
八幡「勝手な言い分だな。お前の都合でしかない」
葉山君のそんな言葉を、八幡が一蹴する。
隼人「ならっ! ……きみはどうなんだ。君たちは。君たちなら、どうする」
……八幡も、俺と同じようなことをしたことがあるのだろうか。
あの屋上では、そんな雰囲気があったから、という理由で八幡を押しのけ、俺が壊したけど……。
八幡「俺の話なんてどうでもいいだろ」
奏「……俺が、意見できることじゃない」
壊した立場の人間が……守る側の気持ちなんて。
わかっているから、葉山君にそれを提示したらいけない。
隼人「……これはただの、俺のわがままなんだ」
葉山君が、寂しげに笑う。
わかった。
彼は……『依頼できない依頼』をしている。
俺の勘違いかもしれないけど……彼は、『今』を失いたくないと言った。
つまりは……。
八幡「見くびるなよ葉山。俺は人の言うことを簡単に信じない」
奏「っ!」
それも、わかった。
八幡は……やるつもりだ。
俺が、文化祭でやったことを。
自己――犠牲を。
八幡「だから、お前のわがままも信じてやらない」
葉山君が驚いた顔をする。
奏「八幡」
俺は、気づけば呼んでいた。
八幡「……なんだよ」
そろそろ7巻を完結させます。
やけにレスが長いのは気にしないでください……。
奏「なにを……するつもり?」
必死に捻り出した言葉がそれだった。
八幡「…………」
何も答えない。答えるつもりもないだろう。
でも、ここで止めなければ八幡は――
隼人「……君にだけは頼りたくなかったんだけどな」
葉山君がうつむいて話す。
――違う、そうじゃない。
この話を曖昧にしたら、取り返しのつかないことになる――!
奏「自己犠牲は、やめろよ」
迷った挙句、ストレートな言い方しか思いつかなかった。
八幡「なんの話だ」
完全に理解したうえで、八幡はわからないふりをしている。 そんな顔だった。
奏「俺も協力する、だから――」
一人で抱え込むな。
八幡「例えお前の協力があったとしても、俺のすることは変わらねえ。それがこの現状、一番効率のいい方法だ」
奏「効率って……」
否定したかった。
でも、自己犠牲以外の他の方法を――そもそも八幡の考える具体的な方法すら――思いつかない俺は、別の案がない以上、彼を否定して納得させることができない。
八幡「それに……自己犠牲だなんて呼ばせねえ。これは俺だけができる、だから俺のするべきことだ」
奏「でもっ……!」
それじゃあ――八幡が傷ついたままじゃないか。
八幡「葉山……戸部のとこ行かなくていいのか?」
俺との話を八幡が断ち切る。
隼人「さっき行ってきたばっかりだよ」
八幡「それもそうか」
隼人「というかそろそろ……海老名さんが来るのを待ってないと」
八幡「……先に行ってる」
そう言うと八幡は……先に行ってしまった。
隼人「甘草くん」
八幡が行ったあと、葉山君が話しかけてきた。
隼人「すまない。比企谷にあんな頼みをして……。でも、彼に頼るしか、俺は……」
誰だって頼りたくないだろう。
自分たちが傷つかないために……変わらないために、八幡を傷つけることになる。
それも……彼は自分から傷つくから、謝っても『それでいいのか』と思ってしまう。
彼は、だから俺に独白する。
自分ではなにもできず行き場のない感情を持つしかなかった彼は、実際に行動に移すところまではした俺に向かって。
――自分の依頼はそのままに、彼も助けてはくれないか、と。
奏「気にするな。なんとかなる」
俺自身、なんとかしたいんだ。
言われなくとも、やるだけやってやる。
隼人「…………ああ」
そこからなんとなく……戸部君の告白場所、竹林の道に向かった。
八幡「戸部」
道の真ん中に立っている戸部くんに、一言二言声をかける八幡。
俺たち(雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、葉山君、あと名前忘れちゃったけど二人)は、道の反対側からくる海老名さんから見えないところに隠れている。
たたっと八幡が戻って来る。
結衣「ヒッキー、いいとこあるじゃん」
声が少し弾んでいる由比ヶ浜さん。
雪乃「どういう風の吹き回し?」
やや驚いたように言う雪ノ下さん。
八幡「そういうんじゃないんだよまじで。このままだと戸部は……」
雪乃「そうかもしれないわね……」
結衣「そう、だね……」
八幡「一応、丸く収める方法はある」
結衣「どんな方法?」
雪乃「……まぁ、あなたに任せるわ」
二人とも、何をするか感づいてはいないみたいだ。
本当に、俺が――八幡を止めないと。
やがて海老名さんが来て、戸部くんや見守る俺たちの間に、独特の緊張感が流れる。
翔「おれ、おれさ」
姫菜「うん」
翔「あ、あのさ……」
意を決したように顔を上げる戸部くん。
と同時に、八幡が動き出した。
止めないと――。
そうだ、いっそのこと、ここで騒いでしまえば告白は未然に終わり、八幡も傷つかずに済むのではないか。
――降りてきた!
八幡を――止める! ここで!
―――――――――――――――――
次回7巻分完結です
――頭痛。
選択肢の。
奏「っっうぅ!?」
頭がかちわれそうなほどに痛い。
まるで――そう、『お前は比企谷八幡の邪魔でなく、甘草奏の邪魔を選んだだろう』とでも言いたげに。
動けない。
動きたくても――頭痛がそれを阻害する。
指を動かしただけで痛む。
額に脂汗がにじんで――でもそんなことより、八幡を――!
「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」
止められ、なかった。
姫菜「ごめんね、今はだれとも付き合う気はないの」
ぱたぱたと、誰かがどこかに走り去っていく音がする。
そのあと、葉山君たちが八幡に二言三言、声をかけてから立ち去った。
雪乃「うまく言えなくてもどかしいのだけれど……。あなたのやり方、嫌いだわ」
雪ノ下さんの声は底冷えするように冷たかった。
結衣「もっと人の気持ち、考えてよ! どうしていろんなことがわかるのに、それがわからないの……」
皆が去ってから、呆然と立ち尽くし、星の見えない空を見上げる八幡に、俺は声をかけた。
奏「……八幡」
八幡「…………なんだ」
返事がどこか、上の空だ。
でも、正直俺もそんな感じで話しかけていた。
ぼーっとしたまま、でも何かを話し始める。
奏「俺、止められなかった」
八幡「別に、止めてもらわなくたっていい。事実、これで戸部はフラれずに済んで、葉山たちはこれまでの関係のままだ」
奏「……全部が今までのままってわけじゃない」
八幡「そうかもな。葉山たちには少しの雰囲気の悪さくらいは残るだろうな。でも、これが一番壊れないで、誰も傷つかないで――」
奏「傷ついてるよ」
八幡「誰が?」
そういう八幡の声に、ややいらだちのようなものが混じる。
でも、微妙にいらだちとは違う。なんだ……?
奏「お前が。そして俺自身が」
……我ながらなんて自分本位のセリフだろう。
頭の、ろくに表に出てこない冷静な部分が軽く笑っている。
八幡「俺は傷ついてなんかいねえ」
八幡はぶっきらぼうにそう言うと、来た道を戻って宿に戻ろうとする。
奏「……待てよ」
たらたらと歩き始めていた八幡が、ふらふらと止まる。
八幡「……なんだ」
本人に傷ついている自覚はなくとも、たぶん、あいつは傷ついている。
文化祭の時は俺が代わりに傷ついた。
でも、今回は止められなかった。
それは、50%位は選択肢のせいかもしれない。
でも、もう半分は、止められない理由を選択肢のせいにした俺の――自己保身のせいだ。
奏「……悪い」
言葉が出てこない。
八幡が一番傷ついているのに、それがわかっているはずなのに、自分への絶望が止まらない。
八幡を救ってやれる言葉が、出てこない。
八幡「お前が謝る必要なんて、どこにもないだろ」
もっともなことを指摘される。
でも。
奏「謝罪って、自分がしたいからするもんじゃないのか? 俺はお前を止められなかった。たとえそれがお前が望んだ結果の通りだとしても、俺はお前を止められなかったことに対して謝るよ。悪い」
すると八幡は、へらっと(変で、竹藪のせいも相まってやや怖い)笑みを浮かべると、こう言った。
八幡「屁理屈って、自分が聞くと嫌になるもんなんだな。友達いないから初めて知ったわ」
奏「俺は、友達じゃないのか?」
八幡「訂正しようか。友達いなかったから、だ」
奏「……ははっ」
それを聞くと、気が抜けた。
八幡「俺の行動を、肯定でも否定でもなく――謝って。まぁそれは葉山もやったが、あいつは俺の行動じゃなく依頼したことに謝ったからな。ノーカンか」
そこで一旦八幡は深呼吸して、続けた。
八幡「だからお前とは、いい関係になれる気がする。でも……」
八幡「やっぱりだめだ。人を信じないわけじゃあないが……俺はまだ、友人を作れない」
修学旅行最終日。
帰りの新幹線を待っているとき、今回の八幡への依頼人と八幡が消えていた。
秘密の逢瀬、といえばややいかがわしく聞こえるかもしれないが、そんなことは二人に限ってはないだろう。
この依頼は、八幡と海老名さんだけの秘密にするだろう。
俺が気づいたことは、海老名さんは知らない。知ったところで、どうもしない。
俺は、八幡を止めようとした。
実際には止められなかったが……止めようとしている意志は、八幡にはちゃんと届いていた。
でも、あいつはやめなかった。
帰りの新幹線で、俺はだれと話すでもなく、ただぼーっと景色を眺めていた。
次からはいろはす!いろはすですよ!!
やっと!!!
某ss(名前忘れてしまった)見てからすっかりファン(推し)のいろはすです~~!
……失礼。
月曜日。
悪夢のような修学旅行から帰ってきて、休みを挟んだ月曜だ。
週初めはいつも辛いけれど、今日はいつも以上に辛い。
いや、この休みのことを考えれば、学校に行って八幡と一緒にいる時間が短くなるのはいいことなのかもしれない。
あの告白で、俺と八幡のできかけていた絆のようなものが完全に消えた。
まだなんとも言えないけれど、奉仕部内の空気もよくはならないだろう。
今までのように起き、並んで顔を洗い、リビングに朝食を取りに行く。
でも、どこかどんよりとした空気が付きまとう。
小町「あ、おにいちゃん奏さん、おはよう」
八幡「おお、おはよう」
奏「おはよ、小町ちゃん。今日もありがとう」
比企谷さん(ご両親)は既に仕事みたいだ。
小町ちゃんが朝食を並べてくれている。
俺もたまには手伝うが、最近はどうしても八幡につられて寝てしまう。
小町「いいえぇ! 気にしないでください!」
朝から快活に小町ちゃんが笑う。
小町「お兄ちゃんどしたの」
八幡「なんもねえよ。むしろあれだな、俺の人生なにもなさすぎるまである」
小町「どしたのお兄ちゃん。いっつもおかしいけど今日は特におかしい」
小町ちゃんがバッサリ言う。
おかしいけどさ。
それを面と向かって言っちゃうか……。
小町「結衣さんと雪乃さんと……なにかあった?」
八幡「あいつらに何か聞いたのか? それとも奏からか?」
少し内心ひやっとする。
……俺、言ってないよな?
小町「ううん、聞いてないよ。ただ、小町がそう思っただけだよ」
八幡「そうか」
そこで小町ちゃんは一区切りすると、切り出した。
小町「それで……なにやらかしたの?」
八幡「なんもねえよ。もともとなにもなかったんだから」
小町「またまたぁ。ちょっとずつ妹に話してみそ?」
小町ちゃんはしつこいくらいに聞く。
八幡「しつけえぞ。いい加減にしろ」
――ついに少しキレたのか、八幡が荒っぽく言う。
小町「なにその言い方ぁ!」
八幡「別に、普通のこと言っただけだろ。実際、しつこかったしうざかった」
【選べ
1、「やーいやーい八幡キレたぁwww」
2、「……あれ、この食パン賞味期限切れ? 変な味がする」 】
おおう。流石に1は煽りすぎだと思う。
この場を和ませる可能性に懸けるのもあり……いやなしだなやっぱり。
奏「……あれ、この食パン賞味期限切れ? 変な味がする」
小町「ふーん、じゃあもういい。聞かない」
八幡「そうしてくれ」
スルー不可避……。
小町「じゃあ、小町先行くから。鍵かけといて。奏さんもお願いします」
奏「あ、う、うん」
小町「やっぱりなにかあったんじゃん」
奏「……八幡」
八幡「なんだよ」
奏「今日ケーキでも買って帰る?」
八幡「どうしてそうなる」
八幡がぶっきらぼうに答える。
奏「あれは言い過ぎだ。八幡、らしくなく熱くなってる」
八幡「……熱くなるのは俺らしくないのか」
奏「……」
無言で、圧力をかける。
さっき悪いのは、しつこかった小町ちゃんもだけど、八幡の態度も悪かったと。
八幡「わかったよ。帰りになんか買ってくるか」
奏「よし」
嫌そうではあるが、悪いことをした自覚はあるみたいだ。
友達にはなれない宣言をされた俺だが、普通に話せるもんだな。
このまま小町ちゃんと八幡が仲直りできたらいいんだけど。
やっと慣れてきた総武高校への登下校。
八幡は自転車、俺は歩きだけど、だいたい同じ時間に出る。
ちゃんと間に合う。
歩きケータイは本来いけないけど、時間もないのでそっこーでメールをうつ。
『
宛先 比企谷小町
件名 朝
気持ちはわかるけど、ちょっとしつこかったかな?
八幡ももう謝る気みたいだし、許してあげて? 』
……これでいいかな?
今日もそこそこギリギリの登校。
クラスに入ると、……まぁ何もないのだけど。
挨拶を交わすような仲なのは奉仕部の面々くらいで、あとは特に交流がない。
若干浮いているくらいだ。
八幡と川崎さんが同じように窓側をぼーっと見ていたけど、意図せずして同じ状態になっているだけだろう。
そうしてそのまま、何もないまま放課後になった。
いち早く教室を出ていく八幡をチラリと見ながら、俺も部室に行く準備をはじめ――
【選べ
1、 廊下を奇声をあげながらダッシュする
2、 廊下をほふく前進で進む
3、廊下を逆立ちで進む 】
奏「キエエエエエエエエエエエエエエエエエっ!」
選択肢のバカヤロー! という思いをこめればかなりの奇声が出た。
奏「ぜぇ……ぜぇ……」
奉仕部の部室に着く。
中に入ると、雪ノ下さんが紅茶をいれているところだった。
雪乃「ああ、甘草くん」
奏「こんちわ、雪ノ下さん」
【選べ
1、「はぁはぁ雪ノ下さん、今日もお美しいですねはぁはぁ……そのお美しい脚で踏まれたい」
2、「はぁはぁ雪ノ下さん、今日もお綺麗ですねはぁはぁ……そのお綺麗な脚で踏まれたい」 】
どっちも似たような感じで社会的にアウトじゃねぇか……。
奏「はぁはぁ雪ノ下さん、今日もお美しいですねはぁはぁ……そのお美しい脚で踏まれたい」
微妙に逡巡した結果、1を選択。
まぁ2を選択しても結果は変わらないことはわかっている。
雪乃「まずは息を整えて、それから顔を5分ほど冷水につけていなさい」
奏「5分は死ぬよ」
雪乃「顔は洗ってきなさい」
奏「はい」
有無を言わさぬ雪ノ下さんの迫力に負けた。
戻ると由比ヶ浜さんが来ていて、それからほどなく八幡が来た。
冷たい空気が流れる。
さっきの俺のこともあってか、雪ノ下さんが妙に怒っているようなオーラを出している。
……はやく帰りたい。
由比ヶ浜さんが必死に話題を作ろうとしているけど、成功しない。
と、ドアがノックされた。
八幡「どうぞ」
この空気で雪ノ下さんは返事せず、由比ヶ浜さんはおろおろと様子をうかがっていたので、八幡が答えた。
静「入るぞ」
入って来たのは、平塚先生だった。
静「少し頼みたいことがあるんだが……何かあったのかね?」
八幡「いえ、なにもありませんよ」
奉仕部内に流れる空気を察して平塚先生が聞いてきたのに対し、八幡が受け答えた。
なにもなかったわけじゃない。
でも、自分たちで解決すべきことは自分たちで、ということだろうか。
【選べ
1、「yo―yo! 問題はないぜ! 依頼人もいないぜ!」
2、「いやー、実は八幡やらかしたんですよぉ~」 】
うっわぁ……。
最近の選択肢は社会的に死ぬことが少なくなってきてはいるけれど、人間関係的なものに亀裂が入りやすいものが増えてきた気がする。
奏「yo―yo! 問題はないぜ! 依頼人もいないぜ!」
一番を選択するものの、言っててちょっと悲しくなってくる。
依頼人がいないって、結構悲しいことだよな……いや、なにもないっていいことなんだろうけど。
静「…………改めた方がいいかな」
奏「いえっ、ぜんっぜん大丈夫です!」
慌てて取り繕う。かなり心苦しい。
静「……まぁ、いいならいいか。入りたまえ」
平塚先生がそう言うと、部室の入り口から二つの影が出てきた。
めぐり「こんにちは~。相談いいかな?」
一人は生徒会長・城廻先輩。俺は文化祭以来だ。
いい印象を持たれているとは言いづらいだろうな。
いろはす「こんにちは~……ってあれ、結衣先輩じゃないですかぁ」
結衣「あ、いろはちゃん。やっはろー」
二人目はなにやら今時の女子高生っぽさを固めたような、可愛らしい女子だった。
八幡がぴくっと反応する。顔見知りなのだろうか。
奏「知ってるの?」
こっそりと耳打ちする。
八幡「……見たことがあるくらいだ」
ちょっと反応が遅い、と思ったけど、俺と八幡、今けんか(?)中だっけ……。
めぐり「あ、知り合いなの? じゃ、早速相談内容に入らせてもらってもいい?」
雪乃「ええ、どうぞ」
雪ノ下さんは知っているのかわからないけれど、この人なら全校生徒の顔と名前が一致していてもおかしくないかもしれない。 ……話したことがあるかどうかは別にして。
めぐり「じゃあ……。もうすぐ生徒会選挙があるのは知ってる?」
雪乃「はい。もう公示も済んでいますよね」
めぐり「さすが雪ノ下さん。立候補者のいなかった書記以外はもう発表されてるよ」
会長が嬉しそうに顔をほころばせる。八幡ノートのとおりだな、ほんわかする……。
そうじゃなくて。
めぐり「ただ、公示までは終わったんだけど……」
結衣「こうじ……」
雪ノ下さんも八幡もなにか考えているようだったので、俺が由比ヶ浜さんに耳打ちする。
あ、耳打ちって言っても息を吹きかけたりなんかしないからな、俺は!
【選べ
1、由比ヶ浜結衣の耳元で息を吹きかけながら『公示』の説明
2、城廻めぐりの耳元で囁くように「何か問題が?」と聞く
3、平塚静に結婚を申し込む 】
すぐかよ!
しかも三つめの選択肢、微妙におかしくないか!?
前の二つがおかしくないかと言われれば、まあおかしいと答えるけれど、もう耳元関係ないし冗談で済ませられるレベルを超えているような……。
俺、これ言って冗談ですってごまかしたら、たぶん平塚先生に殺される……。
結局、1を選んだ。
由比ヶ浜さんにこういうことへの慣れがあることを祈りながら。
奏「公示っていうのは、選挙に出る人が誰とか、選挙の日はいつだとかを発表することだよ。…………ふぅ~」
最後まで息を吹きかけないでいると選択肢が頭痛をひきおこしたので、仕方なく。
結衣「ひゃっ!? あ、ありがと……?」
びっくりしながらもお礼を言ってくれた。俺こんなことしたのに……ええ子や……。
奏「あ、うん」
今度は選択肢もでないので、普通に離れて返事する。
雪乃「ところで甘草くん。由比ヶ浜さんへのセクハラは止めなさい。証人が何人もいる目の前ですることではないわ。もちろん、いなくてもしていいということにはなりはしないけれど」
11月だというのに背中に汗が流れるのを感じながら、俺は雪ノ下さんにうなずいた。
めぐり「ええと……じゃ、続けるね? ここにいる一色さんが、今回の会長に立候補してるんだけど……」
八幡の顔に「へー意外」って書いてあった。
すると一色が反応する。
いろはす「あ、今意外だって思いました?」
八幡「いや別に」
八幡がはぐらかす。
いや無理あるでしょ……。
雪乃「それで、何か問題が?」
めぐり「あ……えーっと……」
雪ノ下さんの問いかけに口ごもりながら会長が答える。
めぐり「一色さんは立候補してるんだけど、当選させないようにしたいの」
え、それ本人の目の前で言っていいの!?
と思ったが、どうやら本人の希望らしい。
めぐり「うちは推薦人さえ集めれば立候補させられるからね……。私たち選管がきちっと本人確認とっていればよかったんだけど」
本人確認をとらなかったら、このように知らぬ間に立候補というわけか。
……それ結構本人嫌われてない?
※ すみません! 書けてないです。三連休中にはまた投稿します。
乙です
乙乙ー
面白いからマイペースで頑張ってー
奏「立候補の取り下げってできないんですか? ほら、最近の政治家みたいに」
某芸能人だとか、やるーやっぱやらないー、ってやってるし。
雪乃「立候補の取り下げは選挙規約に規定されていないはずよ」
めぐり「そうなんだよ~」
ほんわか。
奏「そうなんですか」
八幡「あれだ、普通俺が会長になるーとか言うイケイケな連中は立候補の取り下げなんかしねえだろ」
奏「確かに……」
雪乃「納得するのね……」
めぐり「今のところ立候補が一色さんだけだから」
雪乃「信任投票になりますね」
八幡「そうなれば決定的、か……」
結衣「しんにんとうひょう?」
二人が理解した顔をして、もう一人は小首をかしげていた。信任投票、知っておこうよ……もうすぐ選挙権できるんですよ俺たち……。
静「この人に任せてもいいか、を投票するんだ」
平塚先生が小声でささやいた。
八幡「まぁ、信任投票でも反対票が多ければ再選挙になるんだろうけどな」
いろはす「信任投票で落選って超かっこわるいじゃないですか!」
つまりまとめると。
奏「会長に立候補させられて、なりたくないというのが依頼、けど信任投票でほぼ決定的、なおかつ落選という形にはしたくない、と」
なにこのムリゲー。
結衣「うう~ん……難しいね」
由比ヶ浜さん、ちゃんとついてこれてるみたいかな?
八幡「だな……応援演説が誰かって決まっているんですか?」
いろはす「いえ、決まっていませんよ」
八幡「そうか。なら簡単だな、一色を会長にしない方法」
結衣「どうするの?」
八幡「応援演説が原因で落選するなら、誰も一色を気にしないだろ」
雪乃「許さないわ」
八幡「何を?」
奉仕部全員が知っている、修学旅行で八幡のしたことを言っているのだろう。
俺が、それを咎めることはできない。
俺だって、自己犠牲で文化祭を乗り切ったんだから。
雪乃「そのやり方よ。もっと他にやり方はあるはずだし、票数を公開せずに結果だけを発表してもいい。その気になればいくらでも――」
静「雪ノ下」
平塚先生が止める。
しかし、結果の改ざんか。真面目そうな雪ノ下さんからとんでもない意見が出たな。
雪乃「……失言でした、撤回します」
結衣「その演説ってさ……誰がやるのかな……。そういうの、やだな……」
うつむきながら由比ヶ浜さんが言う。
八幡「それは……できるやつがやればいいんじゃねえの」
『できるやつ』が具体的に誰のことを指しているのかなんて、明白だった。
少なくとも奉仕部4人には。
あるいは平塚先生も、なにかを感じてはいるかもしれない。
奏「まぁ、そんな自己犠牲を自分からするような人、いないからなあ」
俺が言うのはすごく自分自身違和感があったが、機先を制することはできたと思う。
由比ヶ浜さんが言いかけたこと、八幡にその役をしてほしくない。
俺はそれを念を押すように、みんなと話している体を装って八幡に話す。
八幡「……」
たぶん、俺が言わなくても由比ヶ浜さんのあの言葉だけで十分だったんだろう。
まぁ、備えあれば患いなしと言うし。
雪乃「城廻先輩。一色さんが会長を辞退する場合、別の候補者を立てる必要がありますよね」
めぐり「あっ、そうだね。うん……」
名前を呼ばれてのとっさの反応は流石だったが、話の内容で凹んでしまう会長。
八幡「やる気のあるやつだったらもう立候補してますよね。どうするんですか?」
八幡のもっともな指摘。そもそも、それをどうしようかと、先輩たちは相談に来たようなものだ。
結衣「でも、やってくれそうな人にあたれば……」
流石に大変じゃないかな……。先輩たちもあたった結果、もしくはその途中でここに来たんだろうし。
八幡「仮に立候補者が見つかったとして、だ。そいつがこの一年生に勝てるのか? 高校の生徒会選挙なんて人気度で票が入るんだぞ」
静「その通りなのがなんとも言えんな」
確かに、黒白院先輩も獅子守先輩も人気あったしなあ……。
八幡「投票までの間にしなければいけないことを、今から全部こなせるのか? 確実なあてがあるのならいいが、そうじゃないだろう」
めぐり「あの、比企谷くん?」
熱くなり始めた八幡を止めたのは、困惑した様子の先輩だった。
一色さんはさも面倒そうにため息をつく。……いや、君が会長にならないための話じゃなかった?
静「すぐに結論は出なさそうだな」
それが、この話し合いのお開きの合図になった。
雪乃「では城廻先輩、また改めてでもよろしいですか?」
めぐり「うん、よろしくね。失礼します」
いろはす「失礼します」
俺もふらっと立ったが、雪ノ下さんがすぐに平塚先生に言った。
雪乃「先生。少しよろしいですか?」
静「ああ。話してみたまえ」
平塚先生が俺の方を見て、椅子の方にくいっと首を動かす。
それを見て、俺は(ああ……逃げたらなんか言われそうだな……)と思いながら、さっき立った椅子に座りなおした。
雪乃「今、私と比企谷君の勝負はどうなっていますか」
結衣・奏「勝負?」
初耳だ。
静「私の独断と偏見で勝敗を決めているんだ。どちらがより奉仕活動できているか、ね。勝った方は負けた方になんでも一つ命令できる」
結衣「なんでも……」
由比ヶ浜さんは八幡を「うわぁ……」という目で見ながら、「まぁゆきのん負けず嫌いだしね……」という顔を両立させていた。
静「勝負は、まだついていない」
雪乃「なら……比企谷君と私たちが、同じ方法をとる必要はありませんよね? 勝負が未だ継続しているのなら」
※更新遅れて本当にすみません(汗)
静「……仕方あるまい。その間部活動はどうする?」
雪乃「自由参加という形でいいかと」
静「まぁそうなるか」
おいちょっと待てよ。
八幡「じゃあ、俺は帰るわ」
結衣「あ、ちょっと待って!」
違うだろ。
どうして――八幡も雪ノ下さんも、協力しないんだよ。
協力しなかった結果は、この前の修学旅行ではっきりしたじゃあないか。
しかし俺は、既に鞄を持って下校しようとしている八幡を止められなかった。
雪乃「なれ合いなんて……わたしもあなたも一番嫌うものだったのにね……」
ぽつりと雪ノ下さんがつぶやいたその言葉に、どんな意味があったのか。
転校生の俺は、まだ知らない。
家に着いてみると、先に帰っているはずの八幡はおらず、小町ちゃんだけがいた。
小町「あ、奏さんお帰りですー」
奏「あ、うんただいま」
なんだか、すごく久しぶりに小町ちゃんに会った気がする。
どこか知らないところで時間が過ぎているような感覚。よくわからないけど。
小町「おにいちゃん知りませんか?」
奏「いや、俺も知らない。学校を出たのは八幡の方が先だから、どこか寄り道してるのかも」
あるいは、俺の朝言ったことを実践してたりするのだろうか。いや、奉仕部であんなことがあったんだ。覚えてないか……。
奏「そうだ小町ちゃん」
小町「はい」
奏「ちょっとシュークリーム買って来たんだけど、食べる? 5個買ったから全員分あるよ」
小町「わぁ、わたし3つですか!?」
奏「……どうして?」
小町「お兄ちゃんのはわたしが食べる、わたしのはわたしが食べる、お父さんは頼んだらくれる」
奏「分けてあげてください」
奏「ねえ……小町ちゃん」
小町「んっく……。はい何でしょう」
シュークリームを一気に飲む(食べるよりこっちの方が表現として適当な気がする)と、小町ちゃんが聞き返してきた。
奏「八幡や雪ノ下さん、由比ヶ浜さんのこと、知っている限りで教えてくれないかな」
シュークリームはご機嫌取り。
理由が汚いけど、奉仕部の完全な決別を回避するために俺は情報を集めたい。
奉仕部は、初めは何だこれは、と思っていたような部活だったけれど、転校したばかりの俺にはありがたい場所だったんだ。
小町「あ……それが狙いでしたか」
凄く簡単にバレてる。
小町「わかりました、ごちそうになりましたし、おいしかったですし、わたしの知っている限りでお話ししましょう!」
奏「ありがとう!」
八幡「……」
八幡が静かに帰って来た。
俺と小町ちゃんはお茶をしながらゆっくり部屋で話していたが、八幡に聞かれるとマズいことになりそうなので、静かにしておく。
すると音がしなくなった、と思い下に降りてみると、ソファで寝ている八幡が。
小町「もう……おにいちゃんてば……」
朝喧嘩したにも関わらずゆっくり毛布をかける小町ちゃん。
兄妹愛っていいなぁ。あこがれる。
ソファの前の机には紙袋があった。
……俺が朝に言ったこと覚えていたのだろうか。
小町「ほんと、ごみいちゃんは……。奏さんとモノかぶってるし、しかも奏さんの方がよっぽど高いです」
奏「はは……」
それでも嬉しそうじゃないか。よかった。
翌日。
眠りこけていた八幡を置いて(アラームだけセットしておいた)学校に行く。
寒いと連呼しながら小町ちゃんと中学校で別れ、総武高に向かう。
比較的広い道で黒いリムジンを見かけたが、中にいる人は見えなかった。
何事もなく今日の授業が終わる。
由比ヶ浜さんたちリア充組は早々に教室を出ていき、八幡だけがひとりぽつんと残る。
奏「はちま……」
【選べ
1、「昨日のシュークリーム、小町ちゃんが罵倒してたよ」
2、「昨日俺が買ってきたシュークリーム、食べた?」 】
ひっさびさに出てきたと思ったら絶対にここで使っちゃいけない選択肢でたなぁ!
シュミレーションゲームなんかでこんな選択肢が出たらBADエンド確定、みたいなそんな絶望的な選択肢だ。
ここは、小町ちゃんに迷惑にならない方向で……
奏「昨日俺が買ってきたシュークリーム、食べた?」
乙です
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八幡「あぁ、まぁ、一応な。うまかった」
頭をかきながら言う八幡。
八幡「ドーナツと迷ったんだがな……。そっちにしておくべきだったか……」
奏「そうだったかもね」
そして二人笑う。
このまま……このまま。
なにごともなく、終わってくれ。
八幡と共に奉仕部に来て、戸を開ける。
結衣「あ……来てくれたんだ」
由比ヶ浜さんが少し安心したように言う。
八幡「……ああ、まぁな」
軽く八幡はそう返した。
部室には雪ノ下さん、そして一色さんがいた。
雪乃「では、話を聞きましょうか」
奏「あ……ごめん、待たせちゃってた?」
結衣・いろはす「ううん(いえ)、全然!」
奏「そう? ならいいんだけど」
たぶんそこそこには待っていただろうけれど、その気持ちがうれしかったり申し訳なかったり。
結衣「あ、じゃあ聞いてくね? あたしたちの方針きめるから~」
いろはす「はーい」
結衣「じゃ早速。とりあえず、選挙で他の候補者を立てて、ふんわりと会長にならない。そんな感じ?」
いろはす「そんな感じですー」
一色さんが元気に答える。ぼーっとグラウンドを眺めてるあたり、部活のサッカーが気になるのだろうか。
八幡「誰か候補は見つかったのか?」
結衣「それはまだ見つかってない……」
雪乃「立候補の最終締め切りまでは、まだ時間があるわ。それまでにはなんとか。それより、他のことを決めてしまいましょう」
気のせいだろうか。雪ノ下さんが、やや焦っているような……?
八幡との勝負、そんなに熱くなっているのかな?
雪乃「どういう形になるにしろ、一色さんには演説してもらうことになるわ」
いろはす「ですよね~……」
雪ノ下さんの言葉に一色さんがうなだれる。
いろはす「大丈夫なのは大丈夫ですけど、そういうの」
大丈夫なんだ……。結構恥ずかしくない?
雪乃「私たちが立てる候補者と公約が重ならないようにする方がいいと思うわ。そこで、公約の案を考えてみたのだけれど」
さすが雪ノ下さん、仕事が早い。
一色さんが紙に目を通す中、八幡がつぶやいた。
八幡「……これ、お前らのやってること、完全な傀儡候補なんだが、それでいいのか?」
雪乃「なら、あなたのやり方には何の意味があるの?」
八幡が雪ノ下さんから目をそらす。
雪乃「あなたは前もそうやって、逃げてきたわ」
修学旅行。俺が――止めてさえできていれば。
いや、それはそれでエゴというものだろうか。
八幡「それで……何か問題があったか?」
奏「あったじゃないか!」
俺は思わず、大声を出してしまっていた。
八幡「奏……?」
奏「八幡と雪ノ下さんが協力しなくなって! 小町ちゃんにも心配かけて! それで何も問題はなかったって、そう言い切れるのかよ!?」
八幡「…………」
黙りきる八幡。
しかしそこには、何か頑ななものがあって。
雪乃「……変えるつもりは、ないのね」
八幡「……ああ」
二人の間に沈黙が横たわる。
結衣「あ、あのさ……」
由比ヶ浜さんが間に入ろうとして、入れない。
八幡「そろそろ帰るわ。話も聞いたし」
そう言って、八幡は出て行ってしまった。
想像通りの生ける屑野郎でしたね~(汗) 葉山お前にはガッカリだよ!
これからも屑山が邪魔するかもしれませんが温かい目で見てもらえるとありがたいです!
葉山信者はスルーしましょう
乙です
いろはす「あ、じゃあわたしも部活あるので失礼しますね」
八幡が出て行ってすぐ後に、一色さんが出て行った。八幡と個人的に会話するためだろうか。
俺たちが来る前に由比ヶ浜さんと雪ノ下さん、二人と話していただろうから。
奏「ねえ、由比ヶ浜さん。雪ノ下さん」
結衣「なぁに?」
雪乃「なにかしら」
俺もちょっと二人に、話しておくだけ話そう。
奏「もし……八幡が変わったら。その時は手伝ってくれる?」
結衣「それは……うん」
由比ヶ浜さんからはすんなりと了承いただけた。問題は、
雪乃「私が手伝う理由はないでしょう?」
雪ノ下さん。
奏「うーん…………」
悩んで考えた末に俺が出した結論は。
奏「……雪ノ下さん」
雪乃「なにかしら」
奏「俺に貸しを一つ作れる」
雪乃「ふふっ」
奏「あっ」
結構個人的には良さげな考えの気がするんだけど。
雪乃「甘草くん。私があなたに貸しを作って、あなたは何をするのかしら?」
奏「……え?」
なに雪ノ下さん急に怖い。
奏「な、何って……」
雪乃「冗談よ。私も前に似たようなことを言ったから、それで面白くなって」
面白くなってからかったんですか。
雪乃「悔しいけれど……あ、この話は置いておきましょう。いいわ、比企谷君がもし変わったのなら、協力してあげる」
原作からの分岐で、修学旅行が終わった翌日からの話になります。
地の文が多いかもしれません。
初心者ですので、誤字脱字などがあれば感想にてご指摘頂ければ幸いです。
タグのアンチ・ヘイトなどは一応、予防線として入れてます。
https://novel.syosetu.org/97847/
ぜひとも続きをください!!!!
お待ちしてました!!&続きを全裸待機!!
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正直間違ってない選択だと俺は思う
明らかにあの2人は身勝手なんだよな
八幡自身が理想を押し付けていたって原作のどこかで発言したはずだったが、またあの2人も
勝手な理想を八幡に押し付けて、失望して、無責任な言葉を投げかけてるんだよな
ここまで一緒に活動して、八幡の依頼に対するスタンス解決ではなく解消を見てきてまだ
気付けないのかと思った
それも仕方の無い事なんだろうけど
雪ノ下はきっと勧善懲悪主義なんだろうな
グレーを消して許せず万物に対する悪と正義を主観で決めて常に自分は正義であろうと、正義で
なくてはならないと思い込み愚直に走り続けてる気がする
だからこそ八幡の問題時代を有耶無耶にして無かった事にする、言わばグレーを許せないんだろうな
自分が嫌われ役を買って出て悪を被ってまで物事を解消するそのスタンスが、明確な悪が、敵が存在
するのにその全てを有耶無耶にして自分が悪になって物事を終わらせるのが許せないんだろうな
人として一番正解で、人類がみな雪ノ下のような思いなら決して間違いは起こらないがそんな事が有り得ない
ということから目をそらし、あまつさえ自分が人類を人事変えるという理想しか見えていない
まるで子供だ
年端もいかない、戦隊ヒーローを見て興奮する子供のようだ
由比ヶ浜に対してはもう恋に恋する愚かな少女としか言えない
飼い犬を助けてくれたヒーローに己のヒーロー像、理想を押し付けて勝手に失望する
正直な所今まで奉仕部で解決した依頼に2人が使えたところなんて一つもないのにも関わらず、そのことに
気付けずさも自分たちが正義だと言わんばかりの2人は本当に愚かだ
憐憫の情すら覚える
平塚先生は雪ノ下と八幡を組ませてそこに中和剤で由比ヶ浜を加えればプラマイゼロくらいになると踏んで
組ませたんだろうと勝手に思ってるけど残念ながらプラスにマイナスかけてもマイナスなんだなこれが
そして葉山はクソ
はっきりわかんだね
さてさて
はたして八幡が抜けた奉仕部はどうなるのか
ドキがムネムネするぜ
>>345
長文びっくり ありがとうございます(自分のssに関係ないこと話してたらボク恥ずかしいけど)
最近レスが増えた……? これからもよろしくです
最近ガイルss変なの湧きすぎだねぇ…
>>1は気にせずに頑張って
>>347 ありがとうございます
一周年更新です(いつも通りの更新ですが)
それから数日。
思い出したが。
俺は八幡が変わったら―なんて息巻いていたくせに、八幡とはそもそも半分喧嘩状態で、話をしない。
よくもまあぬけぬけと雪ノ下さん・由比ヶ浜さんと約束したものだと思う。
はぁ。
金曜の朝だった。
朝起きて、いつものように朝ごはん。
ただ、いつもより八幡がそわそわとしている気がする。
八幡があえて少しずらしていた登校時間を、今日は俺が合わせて、家を出てすぐ(小町ちゃんとも時間をずらしていた)、八幡に聞いた。
奏「ねえ、今日なにかあるの?」
八幡「……まぁな。もしかしたら、少し帰るのが遅いかもしれない」
奏「っ!? まさか、八幡……ガールフレンドが……!? (仮)じゃないガールフレンドが……!?」
八幡「あると思うか?」
それは非常に返しにくい質問です。
奏「冗談だよ。誰と会うの?」
八幡「お前とは関係のないやつだ」
奏「ふーん……そっか」
誰かと会う、という情報は得――
【選べ
1、「雪ノ下さんに話してみよう。雪ノ下雪乃さん」
2、「雪ノ下さんに話してみよう。雪ノ下陽乃さん」
3、「由比ヶ浜さんに話してみよう。由比ヶ浜結衣さん」
4、「平塚先生に話してみよう。八幡が将来の相手に会いに行くって」 】
奏「平塚先生に話してみよう。八幡が将来の相手に会いに行くって」
さして迷うこともなくこの選択肢を選んでいた。
雪乃さん(お姉さんも選択肢にいるのでここではわかりやすく)と由比ヶ浜さんは、八幡と絶賛きまずい雰囲気。
陽乃さん(説明省略)は、なぜか本当に電話とかかけてきそうで怖い。俺あの人の連絡先知らないけど。
静「おう、比企谷と甘草じゃないか。おはよう」
平塚先生が後ろから、高そうな車に乗ってやってきた。
奏・八幡「おはようございます」
平塚先生は俺たちの横に車をつける。
八幡「ここ止めていいんすか? あれ駐禁の看板じゃ……」
静「す、少しなら大丈夫だろ。……たぶん」
前にやってしまったことがあるのか、平塚先生は額に汗を浮かべていた。朝なのになぁ。
奏「あ、そういえば平塚先生」
静「ん? なんだ?」
本当は八幡に言うだけの選択肢で実際に言う必要なんて微塵もないけれど、話すことで八幡がフォローしてポロっと漏らすかもしれないし、……ちょっと反応に興味あるし。
奏「八幡が今日の放課後、将来の相手に会いに行くって言ってるんですよ。どう思いますか?」
八幡「おい、ちょっ……」
静「ん? 私と約束してはいないだろう比企谷?」
聞かなきゃよかったと今更後悔している自分がいる。
八幡「あれですよ、友達付き合いってやつですよ」
静「比企谷……嘘は良くないぞ。本当のことを話したまえ」
平塚先生が優しい目で八幡を見る。
八幡「いや……別に嘘ついてはいないんですけど……」
八幡も、自分でおかしなことを言っているという自覚のあるような顔だった。おかしいのに嘘じゃないのか。
八幡「葉山に誘われたんですよ」
静「それだけで君は行かないだろう」
八幡「……釘を刺されたんですよ。陽乃さんに」
選択肢の陽乃さんはこういうことか。
というか平塚先生には言うんだな、八幡。少しショックだ。
静「そうか……お前も大変なんだな……」
あ、同志を増やしたかっただけか?
八幡「そろそろ学校行かなくていいんすか」
八幡が平塚先生に言った。
静「おお、そうだな。お前たちも遅れるなよ」
平塚先生はそう言い残すと、スポーツカーを走らせ学校の方へと行ってしまった。
八幡がスタスタと先を歩き始める。
奏「あ、ちょっと待ってよ! さっきの話詳しくぅぅぅ!」
八幡「……」
そしてそのまま、話をすることはなかった。
放課後。
俺は
【選べ
1、ゴーグルを身につける
2、パーティー眼鏡を身につける 】
という選択肢を乗り越え(だから今俺は季節外れ・場所違いのゴーグルを首につけている)、どこかに向かう八幡をつけていた。
場所は駅前。
平塚先生にした話の通り、葉山君と一緒にいる。誰かを待っているようだった。
と、不意に後ろから肩を叩かれる。
驚いて振り返るとそこには、
陽乃「あ、君文化祭で見たねえ! どうし……まあなんとなくわかったけど」
俺と同じように「こちらからは見えるけど八幡たちからは見えない建物の影になっている場所」に、俺と同じやや前かがみの体勢で様子をうかがう雪ノ下さんの姿があった。
陽乃「ねえ、君もあの子たち気になるんでしょ? 一緒に尾行してみない?」
奏「え、え!?」
陽乃さんが俺ににやっといたずらっぽく笑いかけて近い近い近いいい匂い近い!
陽乃「もし君が見つかってもわたしが絶対に成し遂げるから! お金いるならわたし出すから! 大学生だし! どう?」
魅力的すぎる。提案が。
でも
奏「そんなに頼っていいんですか?」
陽乃「大丈夫! これが比企谷君や雪乃ちゃんだったら裏があるって疑ってかかるところなんだけど、君は素直でいいね~!」
ですから近い近いいい匂い!
奏「貸しとかですか?」
ありそう。
陽乃「今回はそんなの気にしなくていいから! だって、他人の恋愛事情ほど面白いことってなかなかないでしょ!?」
雪ノ下さん……そんな動機か……。あと今回は、って……。
陽乃「それに……隼人がなにするのか、ってことも気にはなるし、ね」
陽乃「あ、映画館入ったよ甘草くん!」
奏「ですね」
俺は、ニヤニヤが止まらない陽乃さんと共に尾行していた。
かく言う俺も、陽乃さんにおされて段々楽しくなってきている。
陽乃「さ、私たちも入るよー!」
奏「え、でも俺余裕あるわけじゃ……」
陽乃「わたし出すって! 観察行くよー!」
奏「え、ちょ、雪ノ下さん!?」
美人の女性に全額出してもらっている冴えない高校生男子が、そこにいた。というか、俺だった。
映画館の中。
ふと、飲み物に手を出した時、そこに肘をついていた雪ノ下さんに触れてしまった。
奏「あ、すみませ……」
陽乃「ねえ、甘草くん」
奏「はい」
陽乃さんは、純粋な疑問で、完全にそうであるとわかる顔、口調で、こう尋ねた。
陽乃「君はどうして、彼と付き合おうとしているのかな」
奏「えっ?」
陽乃「変な意味じゃなくて。どうして彼と一緒にいたいと思うの? わたしは彼が面白いと思うからだけど。自分で言うのも変だけど、わたしは変わってる。どうして君は、彼を見ようとしてるのかな」
彼とはだれか。そんな質問はしなかった。
俺が葉山くんにそんなことを思うはずもないし、彼女自身、今回は葉山くんはおまけのように話していた。
どうして。
それは……
奏「たぶん、同じ気がするからです」
陽乃「続けて?」
奏「あいつは、ちょっと前の俺とそっくりなんです。何かあった時には、自分を落とすことで他人を救おうとする。でも俺は、俺と似たことをするあいつを見て、思ったんです。そのやり方には、どうしても限界がある、って……」
陽乃「うん」
奏「どうしてもそうしないと解決しないようなこともあります。けど、全てにおいての選択肢がそうと決まっているわけじゃない。だから、あいつがそれに気づくまで、俺だけでもそばにいてやろうって思うんです」
陽乃「ふぅーん、そっか……」
奏「どうしました?」
陽乃「いや、なんでもないよ。あ、さっき君、爆発のときキョドってたよね?」
奏「ほっといてくださいよ……」
かおり「爆発の時の比企谷、超きょど、って、て……っ!」
結局ポップコーンまでごちそうになった俺だったが……。今は精神的にとても辛い。
陽乃「ひぃ……! 比企谷君と、キョドるところ、一緒……!」
お腹を抱えてまで笑わないでください。
陽乃「お、次は買い物かあ」
切り替えがはやすぎる……と思ったけど、まだ顔が笑いでひくひくしてる。
陽乃「わたしたちも行っくよー!」
奏「え、ちょ雪ノ下さん!?」
俺は雪ノ下さんに手を引かれて、人ごみの中へと足を踏み入れた。
陽乃「甘草くん、手離さないでね」
えっ……?
陽乃「でないと、君と尾行している意味がなくなるから。君ついてこれなくなるから」
ご配慮、感謝します。大丈夫、期待なんてしていませんから。
八幡たち……いや八幡は一緒にいるのにハブられているような雰囲気だからここは葉山君たち、と言った方がいいだろうか、がエスカレーターを半分ほど過ぎたところで俺と陽乃さんもエスカレーターに乗る。
間に数人、人がいるのでふとした拍子に目に入る、ということはないだろう。
気になるのはエスカレーターですぐ隣にいる陽乃さんだが……なにも起きない。常に肩が当たっているが、逆に言えばそれだけ
【選べ
1、雪ノ下陽乃によろめいたふりをして密着する
2、よろめいたふりをしてそのまま落ちる 】
どっちを選んでも死にそうだな……。
1番なら殺されるし、2番ならまだ生きる可能性はあっても尾行が確実に終わる。
2番が一番迷惑をかけな……いや、後ろもうひと乗ってるから巻き込むことになるのか。
なら、俺一人が……。
……正確には俺なんかに密着される陽乃さんもだろうけど……。
よろっ。
奏「あっ、陽乃さん、すみません」小声
陽乃「ん? いいよ」
……あれ? 俺生きてる? ……生きてる!
陽乃「くっついて感極まるのはやめてもらえるかな」
奏「あ、すみません……」
顔は笑顔なのにすごい威圧感があった。これが八幡たちが恐れる所以だろうか。
陽乃「さて、隼人たちはどこに……っとあれは」
奏「あ」
向こうは気づいていないみたいだけど……三浦さんと海老名さんだ。
このままだと、葉山君と会うことに……あ、八幡が葉山君にそれとなく話しかけて移動させようとしてる。
陽乃「修羅場ならずか~。比企谷くん働き者だね~」
本人が聞いたら全否定しそうですけどね。
と思ったのもつかの間。八幡たちが移動した先に
翔「いろはす~、やっぱムラスポいくべ?」
いろはす「えー、あっちにもラなんとかスポー……あるじゃないですかー」
翔「ライスポは野球用品店だしさ」
一色さんと戸部くんだ。
いろはす「あー、先輩方も買い物ですかー?」
一色さんが先に気づいた。もうさっきの様には逃げられない。
一色さんが八幡によって、その袖をぐいとつかむ。
陽乃「あの子は? 甘草くん」
奏「一年生の一色さんです。今ちょっと奉仕部に依頼してます」
陽乃「へー。どんな?」
奏「流石にそれは」
この人は総武高のOGらしいから、『生徒会長にならないようにしてほしい』なんて依頼、知らない方がいい。
知ったらやばいことになりそう、という思いもあるが。
いろはす「~~」
八幡「~~」
お互いに葉山君たちに聞こえないようにするためか、小さい声で話すからこっちまで聞こえない。
いろはす「葉山先輩。私達とも一緒に遊びませんか?」
八幡を解放した一色さんが葉山君に言った。
隼人「でも、二人ともまだ買い物あるんだろ?」
翔「だべ。いくべいろはすー」
わー。空気読めねー戸部君。君この前恋愛がらみで告白しようとしてたのに他の人のことには無頓着なの?
……いやあるいは、気づいて葉山君に気をつかっているか。
いろはす「は~い。ではまたー。先輩、また今度話聞かせてくださいね?」
一色さんが別れ際に放った八幡への一言で、八幡が軽く震えるのが見えた。
お店を出てから一行は、すぐ近くにあるカフェに入った。
陽乃「さ、行くよ甘草くん!」
奏「は、はい……」
結局尾行ついでに買い物をした陽乃さんに荷物持ちにされ、俺は両手に荷物を抱えて陽乃さんについて行く。……あれ、俺なにしにここに来たんだっけ? そうだ、八幡の尾行じゃん……。
八幡たちがテーブルに着いた時、俺と陽乃さんは喫煙可能のカウンター席の隣同士に座った。
陽乃さんが小さく八幡に向けて手を振り、八幡が陽乃さんを確認してその隣にいる荷物持ちを見た。
八幡「ぶっふぉ!?」
コップに口をつけた状態だった。
かおり「ちょ、比企谷汚いしwwww」
隼人「どうした比企谷君? 大丈夫か?」
八幡「あ、ああ、悪い……ちょっと気管に入ってな」
苦しいいいわけだな……。思いっきり吹いてたじゃないか……。
陽乃「く……は、はっ……! 比企谷君、面白すぎ……!」
隣には大笑いをこらえている陽乃さん……。
奏「どうしてバレるようにしたんですか?」
陽乃「ん? 面白そうかなーって」
だと思いました。
注文したコーヒーも飲み終わるころ(これも陽乃さんが出してくれた。本当にいいのか、俺?)、話題が尽きてきた女子がこんなことを話し始めた。
かおり「しかし、サイゼはないわー」
仲町「だねー」
かおり「ねー、隼人君はどう?」
隼人「俺もあんまり好きじゃないな」
かおり「だよねー!」
あ、八幡がみるみるしぼんで……。
隼人「いや、俺が言っているのは君たちのことさ」
かおり「え?」
隼人「来たか」
葉山君が手を上げる、その視線の先には
八幡「……おまえら」
結衣「ヒッキー」
制服姿の由比ヶ浜さんと雪ノ下さんがいた。
陽乃「わーお雪乃ちゃん。来るんだ」
陽乃さんが少し意味深につぶやいた。
八幡「なんで……」
隼人「俺が呼んだんだ」
隼人「比企谷は君たちが思っている程度のやつじゃない。こんな素敵な人たちと親しくしている。表面だけ見て、勝手なことを言うのはやめてくれないかな」
八幡の顔が、暗く、より暗くなっていく。
かおり「……ごめん、帰るね」
仲町「わ、わたしも……」
二人が店から出ていく。お勘定はしろよ、と場違いなツッコミが脳裏をよぎる。
雪乃「生徒会選挙の打ちあわせ、と聞いていたのだけれど」
結衣「隼人君に会長に立候補してもらえないかなー、って……」
隼人「俺はただ、できることをやろうとしただけだよ」
【選べ
1、雪ノ下陽乃の袖をつかむ
2、雪ノ下陽乃の座っている椅子を引く 】
※お待たせしました。
……雪ノ下さんにケンカを売れと。
そういうことですかそうですか。
まず、袖を引いた時。
~予想~
陽乃「……ん? どうしたの甘草くん」
奏「あ、え、声大きくないですか陽乃さ……」
八幡「……奏」
~予想終了~
見つかって面倒なことになるって俺思うな!
でもこれって椅子を引いた時でも同じような……?
※ごめんなさい修正です
……雪ノ下さんにケンカを売れと。
そういうことですかそうですか。
まず、袖を引いた時。
~予想~
陽乃「……ん? どうしたの甘草くん」
奏「あ、え、声大きくないですか陽乃さ……」
隼人「……甘草くん」
結衣「奏君……と陽乃さん?」
雪乃「……」
~予想終了~
見つかって面倒なことになるって俺思うな!
でもこれって椅子を引いた時でも同じような……?
――頭痛。
奏「痛っ……」
どちらかを、選ばなきゃ。
……予想していない椅子引きをやってみようか。
そう思って、俺は勢いよく陽乃さんの椅子を引いた。
がっ(椅子を引いた音)
どっ(陽乃さんが椅子を掴んで座ったまま引かれる音)
しゅるっ(陽乃さんが勢いに乗って椅子を回る音)
陽乃「どうしたの?」
バケモノ過ぎるよう……!?
急に椅子を引いたら反応して座ったままでいるとか、人間の技じゃないと思う。完全な不意打ちだったのに……。
八幡「……これで、なにかやった気になってるのか」
隼人「君と同じことをしただけだよ」
八幡「……そうかよ」
そう言い残すと八幡は、さっさと店を出て行ってしまった。
結衣「あ、ちょっと、ヒッキー!」
雪乃「用がないのなら、私も帰るわ」
隼人「……ああ、ありがとう」
由比ヶ浜さんも雪ノ下さんも、八幡に続いて出て行ってしまった。
陽乃「で? どうしたの?」
奏「いえなんでもありませんすみません」
あるといえばあるけれど、それは言えない。
陽乃「そう。……しっかし、隼人はやっぱりつまらないわね」
葉山君に聞こえる声で陽乃さんが言った。
隼人「……陽乃さん。いたんですか」
葉山君がこちらに来た。
陽乃「あ。あんたのテーブルの代金はあんたが払いなよ? 自分で誘った人たちでしょう?」
隼人「俺が誘ったわけじゃあないんだけど……。まあ俺だけ残ってるし、それが当然の義務だろうね」
凄い。リア充すごい。
陽乃「飽きちゃった。私の尾行はここでおしまい。甘草くん、車呼ぶからそれまで荷物お願いできる?」
奏「はい、大丈夫です」
陽乃「ありがと。助かったわ」
奏「こちらこそ、全部払ってもらって申し訳ないです」
陽乃「いいのよ。そのかわり、今度もつきあってくれる?」
今度があるのか。
奏「はい、その時は」
陽乃「ありがとう。じゃあ、お休み」
奏「おやすみなさい」
そう言うと陽乃さんは、黒塗りの高級車に乗って行ってしまった。
休日だ。
八幡はぐうすかと惰眠をむさぼり、小町ちゃんは受験勉強をしている。
そして、俺はというと……。
奏「はああぁぁぁ……」
相手がいなくなったことで、ようやく息をついた。
俺は、朝に選んでしまった選択肢――
【選べ
1、雪ノ下陽乃に一日連れられる
2、比企谷小町の邪魔をする
3、比企谷八幡を連れていく 】
で、3を選ぼうとしたらあまりにも「行きたくない」意思を突き付けられた(完全な寝たふり)ので、仕方なく1を選んだ。
まあ……ちょうど後悔しているわけだが。
休日だ。
八幡はぐうすかと惰眠をむさぼり、小町ちゃんは受験勉強をしている。
そして、俺はというと……。
奏「はああぁぁぁ……」
相手がいなくなったことで、ようやく息をついた。
俺は、朝に選んでしまった選択肢――
【選べ
1、雪ノ下陽乃に一日連れられる
2、比企谷小町の邪魔をする
3、比企谷八幡を連れていく 】
で、3を選ぼうとしたらあまりにも「行きたくない」意思を突き付けられた(完全な寝たふり)ので、仕方なく1を選んだ。
まあ……ちょうど後悔しているわけだが。
※おっとやってしまった
すみません
~回想~
1を選んですぐ、本当にすぐ、家の前に黒塗りの高級車が止まった。
ベルが鳴る。
陽乃「こんにちはー。奏君いるー?」
奏「陽乃さん!? ちょ、とりあえず朝ごはん食べてないんで待っ……というか事前に連絡してくださいよ!?」
~回想終わり~
俺を連れ出した陽乃さんは、昨日とは別の場所で、昨日しなかった買い物をするらしかった。
陽乃「奏君、これどうかな?」
奏「え、えと、似合ってますよ」
陽乃「んー。もっと捻ったというか、バリエーションつけてくれないかなー。こっちも面白くないじゃん?」
だんだんと寒くなってくるこの時期。陽乃さんは冬服を現在試着中。
俺はその荷物持ち兼感想を言う役。
奏「でも陽乃さん綺麗だから、何着ても似合ってるじゃないですか」
陽乃「そう? ありがとう。でもそれも聞き飽きたって言えば聞き飽きたのよねー……」
それはそれですg
【選べ
1、「服がかわいそうですよねー。どれ着ても似合ってるから、どれも陽乃さんの特別にはならない」
2、「あ、じゃあ。陽乃さんすっごいブサイクですよね」
3、一輪車を漕ぎながらソフトクリームを食べる 】
1も2も選びにくい。
2つとも陽乃さんを傷つけることになる。たぶん。
なら、俺の選ぶ選択肢は一つ、なんだが……冬にソフトクリームなんて売っているとはとても思えない。
物理的に不可能な選択肢が出ることなんて……、いや何回かあったか?
となると、上二つから選ぶしかないわけで。
陽乃「どう? 似合ってる?」
さっき似合ってるって俺言ったじゃないですか。
頭痛が催促してくる中、そんなことを思いながら俺は1を選択した。
会話の流れ的に。
奏「服がかわいそうですよねー。どれ着ても似合ってるから、どれも陽乃さんの特別にはならない」
陽乃「ほうほう?」
陽乃さんがこっちを興味深そうに見てくる。
……え、いや、自分の意思じゃないことに対して続けなきゃいけないのかな……。
奏「陽乃さん何着ても似合うから、だから特別な思い入れのできるような服って、ないような気がして」
陽乃「奏君にはそういうのある?」
奏「服……は特には……」
陽乃「男子だもんねー」
陽乃さんは軽快に笑う。
陽乃「服以外だったら?」
奏「それは、まぁ……」
謳歌や、ふらのや、ショコラ。真っ先にその三人が浮かぶ。
陽乃「そうかー。確かに、私にはないかもねー」
陽乃「昔からだいたいのことはできたし、人はわたしから近づかずとも向こうから来るし」
口調には一切の含みがない。本心でそう思っているのだろう。客観的に見ても、それは事実だ。
陽乃「だからこそ、対等に見ようとして歯向かってくる雪乃ちゃんや、寄ってこない比企谷くんを面白いと感じるのかも」
もちろん君も。と陽乃さんは付け足す。
陽乃「特別……ね。雪乃ちゃんにとって私は特別なんだろうけど……私にとっての雪乃ちゃんって、なんだろう?」
奏「俺に振らないでくださいよ」
返答に困る。
陽乃「そうだね。ごめん」
陽乃さんはぱっとそう謝った。
陽乃「特別なものは、大切にしなきゃ」
俺にとって大切なもの。
ショコラ。謳歌。ふらの。
誰も優劣なんてつけがたい、俺の大切な人たち。
こんな俺に好意を寄せてくれている女の子。
でもいつかは、一人を選ばなければ。
それが、彼女たちや俺にとって辛いことでも。
陽乃「ねえ――奏君はさ、どこから来たの?」
――そうだ。俺はここじゃないところから来た。
奏「遠いところですよ、たぶん」
彼女たちに答えるために。まずは帰らなければ。
陽乃「ふーん……」
Prrrrrrrrrrrr
奏「あ、すみません……」
俺のポケットでスマホが鳴った。
陽乃「いいよ気にしなくて~」
陽乃さんがひらひらと手を振って出るように言った。
奏「ありがとうございます。……もしもし?」
チャラ神『……つながった! 一週間お店行かなかった甲斐があった!』
電話の主は、あの神様だった。
奏「神様の世界にキャバクラあるのかよ」
ツッコまずにはいられない。
チャラ神『そこは一旦おいといて! 実は、次のミッション次第で元の場所に帰れるんだよ!』
奏「……は? また唐突な」
見ている人たちが怒りそうな超展k――もとい、急展開で。
チャラ神『前に君のことをアマノカミノソラウになんとか連絡しようとしたんだ。君の世界に目撃情報があったから、使者を送って。そうしたら、彼女の方でもイレギュラーが発生していたみたいで……。選択肢が、彼女の手を離れて暴走しているらしい』
奏「暴走……」
これまたラノベの後付け設定みたいな……。
チャラ神『元はと言えば彼女の力である選択肢で君はそこに飛ばされている。だから、同じようにミッションで条件を満たし、彼女の力で戻ってこられるはずなんだ』
チャラ神『もしミッションに失敗すれば、今度は戻って来られなくなる。でも今回のミッションには挑戦しないっていう選択肢がある』
奏「脳内選択肢が消えなくなるってことは?」
チャラ神『ない。その時にはミッションの話自体がなかったことになる』
奏「うーん……」
チャラ神『悩むのはわかる。でも早くしてくれ。この回線もいつまで持つかわからない』
奏「わかった。やるよ」
彼女たちを、いつまでも待たせておくわけにはいかない。
チャラ神『わかっ……。……ールで……。幸……のってる!』
そこで電話は切れ、かわりにメールの着信が来た。
〈ミッション
クリスマスでの決別を防ぐ〉
誰かと誰かが、決別することが決定しているみたいなミッションだな……。
『幸運を祈ってる』か……キャバクラの神様にそんなこと言われても、ありがたみなんて全くない。
奏「おまたせしてすみません」
陽乃「いいよいいよ~」
謝ると(まあ形の上のものだけど)陽乃さんは手を振って許してくれた。
陽乃「で、誰からの電話? 故郷の彼女とか?」
奏「まさか。厄介ごとを持ち込むおっさんでした」
陽乃「はははっ! その割には長いような気もしたけど?」
奏「そうですか?」
勘が鋭い。
陽乃「まあいいや。次のお店行こうか」
手には、さっきの店の紙袋があった。
陽乃「今日はありがと」
奏「いえ、この程度ならいつでも」
陽乃「雪乃ちゃんは……選挙、どうするのかな」
奏「……?」
陽乃「生徒会選挙。雪乃ちゃんは、今まで姉である私を追いかけてきた。でも、文化祭の実行委員長にはならなかった。私がなったのに」
奏「……」
陽乃「彼と会って、雪乃ちゃんは変わったよ。あるいはあの女の子か、その両方か」
奏「俺には、変わったようには見えませんけど」
陽乃「そう? まあ君は昔の雪乃ちゃんを知らないしね。でもだからこそ。中心に近い位置にいながら、決して中心足りえない君に、頼みたいんだよ」
奏「傷つきますね……。……でも、おせっかいじゃ……」
陽乃「かもしれない。だから、もし雪乃ちゃんが行き場をなくしてしまうようなことがあったら……。もし比企谷君たちと仲たがいしちゃったときは、君が間に入ってくれないかな?」
奏「酷い役目ですね」
陽乃「お願い」
今日初めて見る、軽い冗談を言っていた時とは全く違う目。
真剣そのものの顔だった。
奏「……わかりました」
陽乃「私は、大切なものの扱い方を間違えたみたいだから」
奏「違います」
陽乃「え?」
奏「そう考えることが間違っているんです」
俺は、自分の選んだ選択肢を後悔したことはない。
もちろん、嫌なことはたくさんあった。
でも、俺が傷つくことで他の誰かが笑ったままなら、それでいいと思うんだ。
奏「だから、今までの自分を後悔しないでください。それが嫌なら、後悔したいのなら、これからを変えてこれからを努力してください」
陽乃「……うん。そうするよ」
最後に陽乃さんは、ふわりと微笑んだ。
静「……比企谷。あとで職員室にこい」
月曜日。
重たい教室の雰囲気の中、チャイムの後の平塚先生の言葉で4時間目の授業は終わり、昼休みになった。
俺は八幡が平塚先生について教室を出ていったのを確認してから、この空気を作っている一人に話しかけた。
奏「葉山くん。ちょっといい?」
隼人「どうした?」
奏「教室……なんか重たいよね」
隼人「……そうだな」
奏「葉山くん。俺は金曜日、君をつけてた」
隼人「陽乃さんから話は聞いた。……陽乃さん、随分と君を気に入っていたよ」
奏「そう?」
隼人「ああ。それに、何か今までとは違う雰囲気になってた」
……どうしてだろ?
奏「葉山くん。雪ノ下さん、由比ヶ浜さんから連絡あった?」
隼人「どうして?」
奏「あ……いや、なんでもないよ」
ミッションのことを気にしすぎたか……。まだクリスマスにはしばらくあるのに。
隼人「二人をあの場に連れてきたこと、間違いだったとは思ってないよ」
奏「え?」
隼人「比企谷君は自分の力で彼女たちの信用を勝ち取った。それなのに、彼のことを何も知らないでこの間の彼女たちは彼のことを馬鹿にしていた。俺には、それが許せなかった」
――ああ。だからか。
八幡が、葉山君と友達になれないのは。
八幡は、自分を犠牲にすることを厭わず、依頼を解決しようとする。それがどんな形であれ、本人たちの意向が叶うならそれでいい、という考え方。
葉山くんは、自分たちの今の関係を崩したくないから、自分がそうでありたいと思ったことをそのままにしておいたい、という考え方。
つまるところ――彼らは同族嫌悪なんだ。
立場の違い故、異なるやり方で。しかし同じところを目指す彼らは、「ああはなりたくない」と思うと同時に、お互いのやり方に憧れて、そして同族嫌悪する。
奏「……そう」
ここでもし、葉山君に「八幡に頼まれた?」と聞けば、十中八九「違う」と返ってくるだろう。
八幡がそうであるように――彼もまた、自分の信念をしっかりと持っているから、悪びれなんてするはずがない。
明けましておめでとうございます。
更新遅れてすみません
奏「ごめん、変なこと聞いた」
隼人「いや、気にするなよ。まあ、あの空気は何とかしないといけないと思うけど」
奏「付き合ってくれてありがとう」
隼人「いや。俺も話せてよかったよ」
そう言って俺たちは別れた。
放課後。
さっさと教室を出ていった八幡と、それを慌てて追いかける由比ヶ浜さんを横目に俺も荷物をカバンに詰め、部室に向かう。
奏「こんにちは」
部室が開いていることを確認しながらドアを開けた。中には、雪ノ下さんだけがいた。
雪乃「あら、甘草くん。部活は自由参加なのに、一体どうしたの?」
奏「……あ」
すっかり忘れてた。
だから八幡と由比ヶ浜さんがいないんだな。
奏「すっかり忘れてた。雪ノ下さんはどうして部活に?」
雪乃「私は、生徒会選挙のことで城廻先輩に相談しようと思って。……でも、そうね。先にあなたに相談しようかしら」
雪ノ下さんは俺に椅子に座るよう促し、紙コップと紅茶の準備を始めた。
奏「相談って?」
お茶を飲んで一息入れてから、俺は雪ノ下さんに尋ねた。
雪乃「私、生徒会長に立候補するべきかしら?」
奏「どうして?」
雪乃「一色さんの依頼を達成するには、それが一番手っ取り早いからよ」
一色さんの依頼は信任選挙で悪い結果は出したくないけど会長にはなりたくない、というもの。
あるいは、
雪乃「私が相手で選挙に負けるというのなら、彼女のメンツも保たれるでしょう?」
誰もが納得するような、「この人が相手なら仕方ない」という負け方をすること。
他の人、例えば俺なんかが立候補すると、誰もが納得するどころか一色さんに負けることすらあるだろう。
でも、雪ノ下さんならそんなこともないのかもしれない。
奏「雪ノ下さんは、それで大丈夫なの?」
雪乃「どういうこと?」
奏「文化祭の時も雪乃さんは仕事を多く抱えすぎて倒れてる。あの時とは違うんだろうけど……それでも、雪ノ下さんの性格というか、特性というか、できることを自分一人でしようとするところは、簡単に変わるものでもないよね」
雪乃「あなたが私を押し倒そうとしたときのことね」
奏「それは本当にごめんなさい」
脳内選択肢のせいだから……。
【選べ
1、雪ノ下雪乃を押し倒す
2、雪ノ下雪乃を突き倒す 】
あああああ……。フラグ立ててしまった……。
前に雪ノ下さんのマンションの部屋で似たような選択肢が出た時は、雪ノ下さんが俺を投げ飛ばして拘束したんだったっけ……。もうずいぶんと前のように思える。
って、そんなことじゃなくて。
これ、どっちを選んでもあの時と同じようなことになる気がする。
突き倒すのと押し倒す……どっちが悪いだろうか。
どっちもいいわけないから、「どっちがいいか」なんて考え方はしない。
まず、押し倒す方。
長く密着する。つまり、雪ノ下さんが技をかけやすい。以上。
次に突き倒す方。
触れる時間が短い分、技はかけにくいだろうけど……椅子に座っている雪ノ下さんは、こけたりすると危ないだろう。
なら……。
奏「雪ノ下さん」
俺は立ち上がり、雪ノ下さんの座っている近くに行く。
雪乃「なにかしら」
奏「えっと……ごめんっ」
謝りながら、雪ノ下さんを押し倒した。
雪乃「……なにかしら」
奏「……え?」
雪ノ下さんはそれはもう嫌そうな顔をしていたが……でも、俺に押し倒されていた。
そして――
奏「いだだだだだだ!?」
指の関節を極められていた。
もう一度雪ノ下さんが聞いてきた。
雪乃「なにをしているのかしら?」
奏「いででででごめんなさいどきますごめんなさいっ」
雪乃「甘草くん……懲りないわね」
奏「ごめんなさい」
説明したいけど、選択肢のことは説明できない。
雪乃「で、押し倒してまであなたが言いたかったことはなにかしら?」
あ、そういう風に解釈してくれたんだ。
奏「え、えと、それは……」
雪乃「ごまかさずにはっきり言って」
奏「雪ノ下さんに、生徒会長に立候補してほしくない」
雪乃「それは、どうして?」
どうして、だろうか。
ミッションがあるから?
いや、生徒会選挙は、彼女たちの決別に直接関係はしないだろう。
もっとも、俺は何が原因で決別するかなんてまったくわからないけど。
奏「雪ノ下さんに無理してほしくないから、かな」
雪乃「……続けて?」
奏「と言われても……偽らざる本音なんだけど」
いくら雪ノ下さんが優秀だとしても、いや実際優秀なんだけど、それでも女の子に無理はしてほしくないというか。
奏「前の学校で、俺が仲いい人たちがさ」
……まあ、実際には世界すら違う? らしいけどさ。
奏「自分勝手に気ままに、楽しくやってたからさ。仕事もするにはするけど、みんなで分担してさ」
雪ノ下さんは無言で促す。
奏「でも、雪ノ下さんは違う。どうしても、たぶん、一人で抱え込んでしまうんだ。信頼をおく人ができても、いやきっとその人にこそ、頼らないんだと思う。たぶん、雪ノ下さんはそういう人だよ」
雪乃「たぶん、が多いわね」
奏「仕方ないよ。まだ会ってそう時間も経ってない」
雪乃「まあ、確かにそうね」
奏「でも、たぶんをつけていても、俺はほぼ確信に近い思いだよ」
雪乃「……時間、経っていないのに、ど」
奏「わかるよ。これでも結構、個性豊かな人たちと仲いいんだ」
雪平ふらの。遊王子謳歌。ショコラ。他、生徒会の人たちやお断り5の人たち。
個性豊かな、俺の知っている人たち。
奏「経験値、じゃないかもしれないけど、俺なりに、理解しているはずだよ」
それはきっと八幡や、由比ヶ浜さんや、平塚先生も。
だからこそのこの奉仕部で、生徒会になって雪ノ下さんがたとえ体を崩さずに仕事ができたとしても、いままでの奉仕部はたぶん、消えてしまうから。
奏「だから、俺は雪ノ下さんに立候補してほしくない」
いきなり人を押し倒した奴の話を真面目に聞いてあげる人間の鑑
>>433
に、二回目だから(震え声)
雪乃「……まだ理由が薄いわね」
奏「…………」
【選べ
1、「雪ノ下さんともっと話したいから……かな」
2、「生徒会で時間を取られるようになったら、雪ノ下さんを攻略できないじゃないか」 】
なぜ二つとも口説くような文言なのか。
『理由』になってないわけじゃあないけど……違う気がする……。
奏「雪ノ下さんともっと話したいから、かな」
雪乃「たとえばどのような?」
奏「……世界平和?」
雪乃「比企谷君と同じような思考回路ね」
クスリと雪ノ下さんは笑った。
雪乃「一生の?」
奏「……少なくとも、八幡と由比ヶ浜さんに相談してからにしてほしい。俺なんかより、あの人たちの方が雪ノ下さんのことを知ってるから」
一生のお願い、と言わせたかったのかな……。
雪乃「……わかったわ。明日、二人に聞いてみることにするわ」
結衣「な、なにかな」
奏「今日、奉仕部の部室に来てほしいんだ」
結衣「どうして?」
奏「雪ノ下さんが、話があるって」
結衣「ふーん……。ゆきのん、どうしてメールとかで教えてくれなかったんだろう……」
奏「もし雪ノ下さんから連絡来てたら、どうしてた?」
結衣「それはもちろん、すぐになんの話か聞いて……」
奏「でしょ? あくまで、雪ノ下さんは部室で話したがってた。でも由比ヶ浜さんに尋ねられたら、自分で話してしまうかもしれないって言ってた」
結衣「……。じゃあ、どうして奏くんには言ったのかな」
奏「昨日、部活が休みになったことすっかり忘れててさ……。で、たまたまそういう話を聞いて、だったら伝えるって請け負ったんだ」
結衣「ヒッキーには?」
奏「家で言ってる」
と由比ヶ浜さんに言ったものの、実を言うと八幡から「行く」という言質をとってない。
俺は言ったけど、八幡は乗り気じゃない返事だったし、放課後逃げようとしたら捕まえて引きずってでも連れて行こうと思っている。
奏「八幡」
授業が終わってするっと帰ろうとしている八幡を取る。
八幡「なんだよ」
奏「奉仕部、行くよ。昨日言ったでしょ……。雪ノ下さんから招集かかったって」
八幡「その雪ノ下が自由参加にしたんだろうが」
奏「雪ノ下さんだって前言撤回くらいするさ」
八幡「行かないと言ったら?」
奏「平塚先生を呼ぶ。結婚してくれるっていう若い男性がいるって」
八幡「やめろよ……。本当に食いついてきそうだろ……」
奏「連れてきたよー」
雪乃「……本当に連れてこられたのね……」
結衣「やっはろー」
八幡「……」
奏「やっはろー」
無言で椅子に座る八幡を俺含む三人は横目で見ながら、挨拶を交わした。
八幡「それで、話って?」
奏「雪ノ下さん」
雪乃「……ええ、そうね。集まってもらったのは、私の相談を聞いてもらうためよ」
結衣「ゆきのんの?」
雪乃「ええ。……私、生徒会長に立候補しようと思うの」
八幡「どうしてだ?」
雪乃「あなただってわかっているでしょう。一色さんを傷つけないように会長にしないためには、これしかないって」
八幡「それは最悪応援演説で……」
結衣「それはダメだって結論つけたよね?」
八幡「……」
結衣「私、ずっと考えていたんだけど……。私が、立候補したらいいと思う」
八幡「……」
知ってたな。
雪乃「それは――」
奏「当選は、できると思う。でも、それじゃあ雪ノ下さんが立候補することとかわらない」
八幡「……ああ」
八幡だって、わかってないはずない。
二人のどちらかが欠けても、奉仕部は成り立たなくなる。
八幡も、たぶんそう。
……じゃあ、俺はどうなのだろう。
俺は――。
……もしかして、俺だけは。
この奉仕部において、「例え欠けても奉仕部が成り立つ存在」なんじゃないのか?
なら、俺が。会長に立候補すればいい。たったそれだけのことが、どうして今まで思いつかなかったのだろう?
俺が、本来はこの学校にいてはいけない存在だからか?
そうだとしても、今だけは――!
奏「俺が、立候補するよ」
八幡「……お前が立候補しても、勝てる見込みはないだろ」
そうでしたー!
学園祭の件はそこそこ知れ渡ってて、かといってその悪い印象を挽回するようなこともしていない。
そもそもの問題、俺は一色さんの「対等な敵」足り得ない。
雪乃「……」
結衣「……」
二人は黙ってしまい、八幡はため息をついた。
なにもそこまで飽きれなくてもいいじゃないか。
しかし……。そもそもが無理難題なんだよなぁ。
一色さんを傷つけない方法で、一色さん一人しか候補者のいない選挙で一色さんを負けさせる。
方法として、今考えていたのは「一色さん一人の候補者」という状況を変えて、奉仕部の誰かが立候補するというもの。
でもそれだと、どうしても今の奉仕部がなくなってしまう気がしてならない……。
一色さんを傷つける、というのは一色さんが可哀そうだし、そもそもそれは大前提だ。
なら、どうす……ん?
一色さんを、負けさせる?
一色さんが傷つかないのなら、それを大前提とするのなら、一色さんを勝たせるもしくは負けさせることはさして重要じゃあないのか?
一色さんをその気にさせられれば、そもそもこの依頼自体が消えるんじゃ……?
奏「俺に、ちょっと考えがある」
八幡「……」
八幡は何かつかみかけている。そんな表情だった。
結衣「どんな考え?」
奏「ちょっと口では説明しづらいかな。でも、誰も傷つかないことは確かだよ。俺も含めて」
自己犠牲の方法ではないことを強調した。
家に帰って、八幡と二人で話し始めた。
奏「八幡が考えているのは?」
八幡「俺は一色をその気にさせるだけでいいと思ってる。やる気にさせるなにか、が大事なんだが……」
奏「俺も同じ考えだ」
八幡「これは詐欺まがいかもしれねえが……」
奏「そんなのはだめだよ」
八幡からの『やり方』の説明を聞いて、真っ向から反対した。
八幡「どうして……」
奏「いつか一色さんがその話を聞いた時に、後悔してしまうかもしれないから」
八幡「じゃあ、他に案があるのかよ」
奏「八幡のやり方を聞いて、完全にできたよ。署名活動だ。選挙前投票をしよう」
八幡「選挙前投票……」
奏「うん。俺たちの方で何人か許可をもらって、誰がいいかに署名する形で投票してもらう。一色さんのところに名前が多くなれば、それを見て一色さんはやる気になってくれるかなって」
八幡「そう簡単にいくのか?」
確かに、そもそも一色さんに署名が集まらないといけない。
でもまあ、だからこその署名という形だ。
奏「他の人に、自分が誰に入れたかわかる形なのが署名だよ。この人を応援するっていう街角アンケートで、実名を出す感じ」
八幡「ああ……?」
奏「一色さんの立候補に必要だった30人の署名。その人たちは一色さんに入れざるを得ないだろうし、それに葉山君にも頼むつもりだよ」
八幡「葉山に?」
奏「大衆心理で、一色さんに入れてもらう。葉山君の名前が一番上にあるのなら、みんなそこに入れたくならないかな?」
八幡「そもそもの問題として、あいつがやってくれると思うか?」
奏「俺ならともかく、八幡ならいけると思う。卑怯かもしれないけれど、修学旅行のことをチラつかせれば」
八幡「お前な……」
奏「葉山君も、言ってたじゃないか。八幡にだけは頼りたくなかったって。俺は葉山君がどうしてそんなことを言ったのかは知らないけれど、ここで恩を返してもらえば、それでおあいこになる」
八幡「できれば恩はとっておきたいんだが」
奏「今使うべきでしょ……」
塾講師みたいな言い方になっちゃったじゃないか。
翌日。
葉山君に聞いてみると。
隼人「……」
渋られた。
八幡「俺だってお前に頼みたくなんてねえよ」
それはあるいは、修学旅行の時の再現だったかもしれない。
ただ――
【選べ
1、スカートをはいた状態で逆立ちしながらお願いする
2、生まれたままの姿で土下座をしながらお願いする 】
こんなものさえ出ていなければ。
奏「頼むよ葉山君!」
隼人「……」
可哀そうな人を見る目だった。
突然ズボンがスカートに変わるという超常現象の後、逆立ちをしてお願いを始めれば誰だって引く。俺だって以前、その状態で「レッツ真理」された時は引いた。
隼人「わかったから、逆立ちを止めてくれないか……。周りの視線が痛いんだ」
たぶんその痛い視線は葉山君には向けられていないのだが、それでも承諾を得ることができた。そのことにほっとする。
奏「ありがとう葉山君!」
隼人「頼む。やめてくれないか」
奏「ごめん、もう少し無理そう」
葉山君の懇願が、周囲の視線が、何より俺の普段鍛えていない両腕が痛いのだが、選択肢が引き起こす頭痛の方が痛かった。やめるなよ、と。
すみません、一週飛ばします
そこからの話は早かった。
最初は葉山くん、それからクラスの人、一色さんの立候補に必要な30人をつきとめ(というかつきとめていた雪ノ下さんに聞いて)署名をしてもらった。
学校裏サイトに署名を集めていることを載せると、そこそこの反響があった。
だれもあまり注目していないイベントではあるものの、聞いたこともない事前投票という話に、みんな少し興味を持ってくれたようだった。
そこまでが、初日の動き。
次の日には葉山君にも紙を渡して、署名を集めてもらった。
葉山君は苦い顔をしていたけれど、三日目に裏まで署名で埋まった紙を渡してくれた。
裏サイトを見ている生徒も、協力をしてくれた。
城廻先輩に
めぐり「甘草くん。なにか選挙のことでやってるんだって?」
と言われ、急ぎすぎたことを一瞬後悔もしたが、
めぐり「まあ今まできいたことがないってことはたぶん校則にもないから、まあ平塚先生にばれないようにだけ気を付けてね」
とふんわりと忠告されただけだったので、安堵した。
いろはす「ところでせんぱーい。これってなんのリストですかー」
八幡「事前投票を俺たちがやってたのは知ってるか?」
いろはす「はいー。二年の先輩がおかしなことしてるって噂になってました」
八幡「これは、お前に入れるって言った人の署名だ。お前が会長でいいって言う人が、これだけの数いる」
いろはす「……。……一番上、葉山先輩じゃないですか」
いろはす「……わかりました。ちょっと、頑張ってみます」
結衣「やったー!」
奏「一色さんの依頼は蹴ったみたいなものだし、選挙のこと、手伝わせてもらえないかな」
いろはす「ちょっ、みなさんどこに――外か!」
雪乃「ええ、部室の外で聞かせてもらったわ」
結衣「新会長いろはすの誕生だね!」
雪乃「流石に気が早いわ由比ヶ浜さん……」
すみません、今日の更新はお休みします。
いろはす「私が生徒会長になった暁には――」
壇上で一色さんが演説を滞りなく続けている。
雪ノ下さんと原稿を考え、雪ノ下さんの厳しい指導の下練習を重ねて一色さんに、生徒から「一年生会長だ」などという不安の声は出なかった。
奏「んっしょ……」
新旧生徒会の引きつぎ作業に、俺たち奉仕部が駆り出されていた。
城廻先輩が「ついでに~お願いできないかな~、力仕事もあって男手がほしいんだよ~」と仰せられたので、手伝いに来た運びだ。
めぐり「ごめんね、思ったより私物が多くて……」
生徒会室は私物持ち込み可なのか。
いろはす「戸部先輩、冷蔵庫は向こうです」
翔「お、おー……」
新会長も冷蔵庫持ち込んでるし……。
いろはす「よしっと、これで終わりですね」
八幡「お疲れ一色」
奏「お疲れ様―」
いろはす「はい! お二人ともありがとうございました」
翔「ふ~。やっと俺も帰れる……」
いろはす「戸部先輩は部活あるじゃないですか」
翔「鬼かいろはすー……」
いろはす「葉山先輩に連れて来いって言われてるんで」
翔「わー、隼人君マジぱねえわ……」
それから、部室へ向かう。
その道すがら、俺と八幡は他愛無いことを話した。
奏「なんとか、一件落着だね」
八幡「……ああ。助かった」
奏「……熱とかない? 八幡が素直に礼をするなんて珍しい」
八幡「俺だってお礼くらいする」
奏「まあ、礼には及ばないというか俺からもお礼しないと。ありがとう八幡」
八幡「ああ」
奏「そこは飲み込んじゃうんだね……」
話していると、部室はすぐに見えてくる。
ふんわりと漂う紅茶の香り。そして由比ヶ浜さんの楽し気な笑い声と、それに受け答えする雪ノ下さんの声。
これを、このまま。
ミッションのことを抜きにしても、この空間を守りたいと、そう思った。
結衣「寒くなってきたねー」
雪乃「そうね」
【選べ
1、 上着を脱いで振り回す
2、 下着を脱いで振り回す 】
話変わったと思ったらこれかよ! 少しは容赦ってもんをだな!
奏「イエェーイ! 今日も元気に回します!」
結衣「ねえ、それ寒くない?」
奏「……寒いです」
雪乃「いい加減やめてもらえるかしら。なぜかその言葉、集中を削がれるのよ」
奏「ごめんなさい」
これで今週三回目ともなると、さすがに皆さん慣れてこられる。
保守レス
すみません、もう一週更新休みます
いろはす「せんぱー…………えっ」
そんな奉仕部の戸を叩いて入ってきたのは、生徒会長いろはすこと一色いろはさん。
いろはす「…………なんで上着脱いで振り回してるんですか」
雪乃「なにか事情が」
奏「ないね!」
あることにされても後々面倒そうなので先に言う。
いろはす「……そうですか。まあ天草先輩はいつも通りですね。ところでセンパイ」
おう……冷たいぜ一色さん……。今の服装よりよっぽど寒い……。
いろはす「やばいですやばいです」
語尾が「よ」なら出川〇朗さんかな……。
結衣「とりあえず座ったら?」
由比ヶ浜さんが一色さんにそう声をかけた。
いろはす「すみませんありがとうございますー」
すみません今週もお休みします
いろはす「生徒会の仕事でー、クリスマスをすることになったんですよー」
八幡「は?」
結衣「ちょっとヒッキー静かに」
八幡「……え、今の俺が悪いの?」
まあ、話は最後までね……。
いろはす「海浜幕張高校ってとこの誘いで、平塚先生がやれって言うから……」
大変だね会長も。
雪乃「で、具体的に何をするのかしら?」
あら雪ノ下さん、ばっさりと切り込んでいきますね。
いろはす「クリスマスイベントですよ。お年寄りや小さい子相手に、地域に貢献しよー的な」
あー、あるよねそういうの。
いろはす「それがなかなかうまくいかなくて。それでここに相談にきた次第でして……」
雪乃「どううまくいかないのかしら?」
いろはす「んー……なんというか、意識高い系の方々がわーっとやっててまとまらない? というかー」
八幡「他校とやってるんだから当然だろ……。というか一色に意識高い系と言われる奴らなのか……」
奏「なかなか濃いよね、その人たち」
いろはす「ちょっと。先輩たちの間で私の印象ってどうなってるんですかー」
どうなってるも何も……。
選べ
1、「生意気な後輩」
2、「やんちゃな後輩」
奏「やんちゃな後輩」
八幡「パリピ」
結衣「いろはちゃんはかわいいよ!」
雪乃「責任の自覚が認められない」
いろはす「先輩方ひどいですね!! 私の見方は結衣先輩だけですよー」
一色さんは泣き顔を作って由比ヶ浜さんのところに行った。
雪乃「責任云々は、まぁ私たちが言える立場にないことはわかっているのだけれど」
いろはす「話脱線してましたね……。それで、どーですかー?」
一色さんが改めて問うた。
雪乃「……どうかしら?」
結衣「いいんじゃないかな。手伝ってあげようよ!」
八幡「やめといた方がいいんじゃねえの。一色も最初から人に頼りにすんのはいいことじゃねえだろ」
それを聞いて思い出すのはつい最近のこと。
生徒会選挙を、バラバラになって解決しようと行動した。
ミッションのこともある。ここで別行動をするのは、あまりいいような気がしない。
奏「確かに頼りにしすぎるのも悪いけど、元はと言えば俺たちも一色さんが会長になることにはかかわってるわけだし。一色さん、これが初めての大きな生徒会活動だよね?」
いろはす「あ、はい。そうですね」
俺に振られることが意外だったのか、若干の間をおいて一色さんが答えた。
奏「手伝ってあげてもいいんじゃないかな?」
八幡「それで頼る癖がついたら?」
奏「手伝うのは今回だけ、ってことでどうかな? 依頼は達成できるし、一色さんがこれ以上頼るってこともない」
いろはす「こ、今回だけですか……。願いを聞くのは一度だけ、みたいな」
雪乃「一度だけ、ではないわ。今回だけ、よ」
いろはす「えっと……?」
雪乃「今回手伝わなかったとしても、次はないわ。しっかり自立して動けるようになってもらわないと」
いろはす・奏「「厳しい!」」
八幡「葉山はどうしたんだよ、葉山は。あいつに頼ればいいだろう」
いろはす「は、葉山先輩忙しそうだったので。ほら、部活もありますし」
俺たちも部活やってるんだけど……?
いろはす「じゃ、先輩方。このあと校門に集まって、それから一緒に行きましょう」
奏「え、今日から?」
いろはす「あんまり時間ないんですよ~……」
八幡「……わかった、出る準備したら行く」
いろはす「はい。ではではー、よろしくです」
そう言って一色さんは奉仕部の部室を後にした。
いろはす「あ、すいません、お待たせしました~」
八幡「他の役員は?」
いろはす「奉仕部の皆さんにちょっと頼んでみるって言って、先に行ってもらってます」
それでいいのか生徒会。黒白院先輩の「完璧な生徒会長」の印象が強すぎるのかな……。
いろはす「ここですよー!」
学校を出てほどなくして着いたのは、とあるコミュニティセンターだった。
いろはす「それじゃ、私はちょっと買い物があるのでそこまで行ってきます」
そう言って一色さんが目を向けたのは、向かいのコンビニだった。
八幡「何を買うんだ?」
いろはす「会議してるときに飲むジュースとかです」
雪乃「……それはもしかして、生徒会の予算から出ているのかしら……?」
いろはす「む、向こうも飲むので折版ですよ!」
奏「重いだろうし、持とうか?」
【選べ
1、馬になって
2、ストーカーになって 】
いろはす「あのー……。持っていただいてほんとにありがたいんですが、その数m空けてついて来るのやめてただけません?」
奏「きょ、今日たまたま気まぐれでそういうことしたいんだ」
いろはす「はあ……?」
会議一日目。……俺たちが参加したのが、という意味でなら。
もう、なんていうか聞くだけでお腹がいっぱいになってしまう内容だった。
とてもここに参加できるとは思えないなあ……。
玉縄「ロジカルシンキングで論理的に」
かおり「それある!」
海浜幕張の生徒A「ラショナルで合理的な考えも大切だね」
かおり「それある!」
聞いてるだけで疲れるのか、意識高い系の会話は……。
【選べ
1、 「お前たちのその幻想をぶち壊す!」
2、「イベントの企画? そんなもの、俺の頭の中にすべてできている」(とんとんと頭をさしながら) 】
両方ネタじゃねえか!
2、よりは……1を選んだ方が面倒にならなくて済むか? ……いや俺は何を考えているんだ。どっちも結局面倒だろ……。
奏「お前たちのその幻想をぶち壊す!」
玉縄「は?」
海浜幕張の生徒A「は???」
雪乃「甘草くん。とりあえず座ってくれるかしら。邪魔なのだけれど」
奏「あ、はいごめんなさい」
素で謝っていた。秒で。
だって背中を一瞬、凍りついたかと思うほどの視線が貫いたから……。
雪乃「せっかく立ったのだし、とりあえずあなたたちにも。さきほどから中身のない会話を続けるばかりで、具体的な内容が全く決まっていないように思えるのだけれど、違うかしら? 仮にもやると決めたことなら、どうやって決めるかよりも何をやるかを重点的に話し合うべきではなくて? それに、あなたたちの会話に一色さんが混ざっていたかしら? 仲間内だけの仲良しごっこなら他の場所でやってちょうだい。高校生の生徒会の会議だとは思えないわ。……あなた」
総武の生徒会役員A「はいっ」
あ、今ビクッてした。同じ視線向けられたんだな……。同情するよ。
雪乃「クリスマス会の日程は?」
役員A「あ、あと一ヶ月と少しです」
雪乃「……決まっている内容は?」
玉縄「それはだね――」
雪乃「あなたには聞いていないわ」
玉縄「っ」
あ、向こうの会長さんも少しビクッてなった。
役員A「会場に使う場所、それと予算……でしょうか」
雪乃「……はあ。予算なんて大前提、一か月前ともなれば参加していただく各所にお願いや告知を始めていなければならない時期よ。何もかも遅いわ。部外者の私がとやかく言うつもりはないけれど、あなたたち、ちょっとは自覚あるのかしら?」
あの、すみません。すっっっっごくとやかく言ってると思うのは俺だけでしょうか。
その後、メンタルをボロボロにされた海浜幕張の生徒たちは、話の流れをあまりよく理解していない一人を除いて帰ってしまった。
かおり「お疲れー」
生徒B「お、つかれー……」
残った一人は他の人を見送った後、俺たちに話しかけてきた。
かおり「比企谷じゃん! うーわ久しぶりー!」
八幡「……おう」
雪乃「比企谷くん?」
八幡「中学の時の同級生だ」
雪乃「どこかで……」
八幡「もう覚えてないのかよ……」
雪乃「人の脳には、不必要な記憶と必要な記憶を分ける機能があるのよ」
つまり雪ノ下さんにとって折本さんの情報は不必要、と……。
まあ、あの時は陽乃さんもいたから、どちらかというとそっちに気を取られていたんだろうけど。
かおり「え、っと、改めて。折本かおりです。クリスマスパーティー、一緒に頑張ろう! じゃ、私も帰るから」
海浜幕張の生徒でただ一人だけ、俺たちに挨拶していった折本さんの背中を、誰も声をかけず見送っていた。
……俺たちの間に流れた空気に、いろは会長がおどおどしていたことは、俺だけが気づいた。だからどう、というわけでもないけれど。
いろはす「あの……」
翌日、一色さんが部室にやってきた。
雪ノ下さんに「今回だけと言ったでしょう? もうこれ以上関わる必要はないわ」と圧力をかけられ、今日も行く気だった俺・八幡・由比ヶ浜さんはおとなしく部室で暖を取っていた。
いろはす「ここの席失礼しますねー」
一色さんが座ったのは、いつも依頼者に座ってもらう椅子。
雪ノ下さんが無言でスッと出した紅茶にほっと一息ついてから、一色さんは話し始めた。
いろはす「大変なことになりました」
雪乃「手伝わないわよ。愚痴ならそこの二人が聞くから、そっちを向いてくれるかしら?」
いろはす「相談、というか依頼ですよう!」
雪乃「……」
八幡「……で? なんだ。部長の意向だし、愚痴くらいなら聞いてやる」
いろはす「だから依頼ですってば! 今回は解決してほしいとかじゃなく、単に人員が少なすぎるので手伝ってほしいってことなんですけど」
奏「人員が少ない?」
昨日の今日で、いったい何があったのだろう。
いろはす「昨日SNSで連絡があって……。要約すると『やっぱりそれぞれの学校で行う方がいいよね!』だそうです」
奏「えーっと、それってつまり……」
いろはす「海浜幕張高校が、主催だったはずのクリスマスパーティーが、各校で開催になっちゃったんですよ!」
なっちゃったって。
雪乃「……どういうことなのかしら」
雪ノ下さんが頭痛をこらえるようにこめかみを抑えながら行った。
いろはす「そちらには優秀なスタッフがいるようだから、別に僕たちがいなくともなんとかなるだろう! 幸運を祈るグッドラック! だそうです」
八幡「そもそも合同でやること前提のイベントじゃないのかよ……」
いろはす「そうなんですよ! しかも向こうからの誘いなのにうちも続けることになってるんですっ!」
奏「会長権限でやめられないの?」
いろはす「この学校には生徒会長よりも権限のある人はいくらでもいるんですよ。例えば平塚先生とか」
あー……。
静「私からも説明しよう」
八幡「……平塚先生」
ガラッと戸を開けて入ってきた平塚先生が話し始めた。
静「といっても、私も詳しいことは知らない。向こうが突然断ってきた理由とかな。とりあえず今の時点で確実なのは、スタッフ側の人数が足りないということだ」
八幡「中止にする線は?」
静「残念なことにないぞ比企谷。海浜幕張側が既に、近隣の小学校と幼稚園にお誘いをかけている」
八幡「なら向こうがやれば――」
静「そういうわけにもいかないんだ。簡単に承諾をもらえるとは思っていなかったらしくてな。どうやら複数の幼稚園や小学校に声をかけたそうだ。で、結果的に参加者が非常に多い事態になっている。まさか今から中止にはできんだろう。向こうの予定もある」
奏「……キャンセルは、強行開催よりはいいのでは?」
無理なことと可能なことはどうしたって出てくる。それが青春だとか人生だとか仕事だとか言われてしまえばそれまでなのだが、ぎりぎり引き返せるところにいるなら引き返すべき案件だと思う。
静「……上の方から、高校生にとっても小さい子にとっても有意義なイベントだと認識されてしまっていてな」
……引き返せないらしい。どうするんだよまったく……。
【選べ
1、諦めきれずに床を転げまわって駄々をこねる
2、「それじゃあ、ブレインストーミングを始めようか!」
3、諦めて結婚する 】
結婚は……諦めてくれ……っ! ごめんなさい……!
奏「それじゃあ、ブレインストーミングを始めようか!」
平塚先生以外からすごい目で見られてしまった。これでゾクゾクする趣味はないんだ……。
静「生憎、やることはおおよそ決まっている。というか、限られた予算でできることを消去法で決めた。必要なものは、当日及び準備におけるスタッフだ。今のままでは、イベントの開催が非常に困難だ。つまり、私の評価がだな……」
結衣「平塚先生の評価はともかく、このままイベントがなくなっちゃったりしたら、楽しみにしてた子たちがかわいそうだよ! 手伝おうよ、ゆきのん!」
平塚先生の涙は見なかったことにされた。
雪乃「由比ヶ浜さん、近い……。でも、そもそも手伝わないという話で……」
奏「先生。これは奉仕部としてでなく、個々に頼んだ方がいいのでは?」
静「……ああすまない。まともなことを言ったんだな」
先生の俺に対する評価がひどい!
静「どういうことだ?」
奏「雪ノ下さんは奉仕部として手伝うことをためらっている、ってことでいい?」
雪乃「まあ、一色さんに頼られ続けるわけにはいかないもの。ここはそういう部活よ」
奏「なら、さ。奉仕部としてでなく、総武高校の一生徒として、学校のイベントを手伝う、っていうのならどう? 足りないのは開催運営側だけど、メインじゃなくて手足になるスタッフなんだから」
雪乃「……手足?」
奏「こ、構成メンバーの一人!」
手足は嫌らしい。
結衣「ゆきのん……。ゆきのんと一緒だと心強いんだけどな……」
由比ヶ浜さんの上目づかい! 雪ノ下さんに効果は抜群だ!
雪乃「……」
効果は抜群。でも、まだ決めかねている。
必要なのはあと一押し。
それは――
八幡「……俺はもともと動くつもりだった。一色を会長にしたのは俺だしな。わかりやすく一生徒としてって名目ができたから、動きやすい。生徒会長の一色を、生徒会を助けるんじゃなく、一生徒として作り上げることに参加する。……まあ俺たちにとっては苦手分野だが、それを言ったら総武祭実行委員だってそうだしな。雪ノ下。お前がいると、俺もやりやすい」
八幡の言葉だった。
そこにはメインの仕事を任せて裏方にまわれるとか、できるだけ仕事をサボりたいという意思がなかったわけではないだろうけど、それでも一押しになった。
雪乃「……わかったわ。私も協力しましょう」
結衣「ゆきのーん! ありがとう!」
雪乃「だから由比ヶ浜さん、近い……」
静「さて。そうと決まればさっそく始めてもらおう。一色、資料を」
いろはす「もってきますね~」
ぱたぱたと一色さんが部室を出ていった。
静「……すまないな。手伝ってもらえることを感謝しよう」
八幡「なんか平塚先生に感謝されると変な気がしますね。……ア、アイアンクローはやめて、体罰ですよ」
静「君が訴えなければ何もないことになる」
八幡「ええー……。でもまあ、一番『奉仕』部って名前に則した依頼じゃないですかね。学校と地域に奉仕するわけでしょう?」
静「ある意味ではそうなんだが……。ん、待て。比企谷お前、それは自分から働くということか?」
八幡「はっ? いやそんな……」
静「冗談だ」
一色さんが資料を持ってきて、おおまかな役割を確認した。
奏「けっこうしっかり配分されちゃったね……」
帰り道。俺と八幡は並んで帰っていた。
八幡「ったく、余計なことを……」
笑ってはいない。
でも、どこかほっとしたような表情だった。
このどこかぬるま湯のような関係が続くことを、果たして望んでいいのだろうか。
それでも、今はまだ……。そのぬるま湯を望んでいる俺が、俺たちがいた。
生徒「各所への、変更に関するお知らせとお詫びの文書、送り届け終わりました! 来ていない返事は2件、確認した返事は了承のみです!」
雪乃「そう。了承いただけて良かったわ。報告次」
いろはす「はい。次は私から。再調整したスタッフの当日の仕事の割り当てが終わりました。表にまとめましたので、改めて全員自分の役割を確認しておいてください」
雪乃「聞いていたものはこれで全てね。他に報告は?」
会議の場に使っている教室が、完全に無音になる。
雪乃「では、これで今日のミーティングを終わります。一日おつかれさまでした」
その一言を待ってました! と言わんばかりに、生徒たちから声が上がった。
静「お疲れ、雪ノ下」
雪乃「お疲れ様です、平塚先生。私は一色さんの用意したミーティングの流れの原稿と、今日報告のある人のリストを見て進行をしているだけですから、そう難しくはありません。……当然、最初言われていた以上の仕事であるという認識はしていますが」
静「そこは、まあ、なんだ……許してほしい。実際、雪ノ下が前に出るだけで生徒たちの真面目さが一気に高まったからな」
雪乃「本当は、一色さんが作らないといけないものですけれど」
いろはす「あ、あははー……。そこはまあ、いずれということで……」
静「甘草」
昇降口で平塚先生に声をかけられた。
静「少しいいか。いや、別にまた今度でもいいんだが」
靴は履いていたけれど、特に急いで帰る用事もない。
奏「大丈夫です」
静「三人の様子はどうだ?」
奏「三人とは、八幡、雪ノ下さん、由比ヶ浜さんのことでいいですか?」
静「ああ。お前から見て、どう思う?」
平塚先生の用件は、三人について俺がどう思うかだった。
奏「表面上はやり取りできているかと思います」
事実、クリスマス会の準備は順調に進んでいる。奉仕部だけの話ではもちろんないけれど、それでも彼らの間にわかりやすい溝はない。
静「表面上は、か」
奏「はい」
でも、おそらく誰だって経験したことのある壁が、確かにあった。
必要があれば話すし、協力だってする。
でも、どこか冷めたような関係。仲間ごっこを見ているような気分になる。
静「ここからは独り言だから気にするな。溝ができるほど関りを持てたのだと言うべきか、それともまだ他人を排斥しようとしているのか。難しいところだな。どう動くか、それとも動かないのかすら、大人で、教師の立場の私からすれば難しい」
奏「……」
独り言と言いながら、しっかりと俺に聞かせている平塚先生の意図は、よくわかる。
静「こんなことを考えるべきではないと思っているのだがな。それでも思ってしまう……。仲間たちで、彼らの間で解決はしないものか、と」
その仲間に、俺は入っているのだろうか。
単に動けるコマとして、俺のことを利用したいんじゃないのか……。
静「さて! 甘草」
奏「はい」
どうやら、独り言は終わったらしい。
静「おまえが抱えている葛藤が何なのか、私にはわからない」
――ハッとした。
俺は、葛藤していたのか?
静「動かなければなにも変わらない、なんていうのは幻想だからな。時間が過ぎると解決することもあるが、そうでないこともある。重い問題なら特に、な。だから、今後悔しないように最善を尽くせ。独身の私みたいに……ぅっ……後悔、するなよ」
そういうだけ言って、平塚先生は歩いていった。
八幡「奏」
ポスターもあと一枚というところで、近くを同じようにまわっていた八幡と遭遇した。
奏「あ、八幡。ポスター張りどう?」
八幡「おおかた終わった。あと数枚だな。そこの自販機で何か飲もうと思ってな。マッカン見えたし」
奏「寒いからね。俺も一息つこうかな」
八幡「ちなみにお前は? 残り何枚だ?」
奏「ラス1」
八幡「……お、おう」
自販機に温められた缶を手の中で転がしながら、俺は八幡と談笑いながら帰り道を歩いた。
ポスターを貼るのはすぐ終わった。というか、ふとした拍子に八幡と帰ることが増えてきた気がする。帰る場所は同じなんだから、タイミングが合えば一緒に還るのは当然と言えば当然なんだけど。
このポスターを町の人に見てもらって、高校生が企画したイベントに来てもらい、地域の人たちとの交流をする。半ば押し付けられてしまったようなこの企画も、なんとか体裁ができてきた。ポスターを貼る許可をもらったりすることも交流の一つだった。
奏「そういえば八幡、よくポスター貼らせてもらう許可とれたよね」
八幡「俺ができないのはパリピみたいな日常会話だ、馬鹿にするな」
奏「自慢じゃないなぁ……」
このSSまとめへのコメント
うぽつ 期待
俺が少し前にパロ路線とタイトルだけ考えて投げたSSが継がれててワロタ
いろはすのも誰か拾ってくれんかな
>>2
書いてる本人です(といっても証明のしようがありませんが。)
特に他の俺ガイル×脳コメのssを見たり、タイトルだけ考えて~みたいなスレを見て書き始めたわけではないのですが……
今後も閲覧、よろしければお願いしますっ
カワゅす
とても面白いです。 期待してます。