モバP「インクレディブル・モバP」 (43)
映画「インクレディブル・ハルク」とのパロというかクロスというか。
設定は無茶苦茶な上、キャラがおかしくなってますが、それでも構わないという方のみお読みください。
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事務所
モバP(以下P)「いやぁ、この事務所も賑やかになりましたねぇ」
ちひろ「そうですねぇ。いつの間にか賑やかになりましたね。個性あふれる面々ばかりですし」
P「何せ、アメコミのヒーローっぽい連中が数名いますからね。これが現実とか少し信じられないですよ」
ちひろ「えっと、アイアンマンが居て、マイティ・ソーが居て、キャプテン・アメリカが居て……これであとはハルクが居ればアベンジャーズですね」
P「ハルクねぇ……。緑の怪物か……」
P「ぴにゃこら太?」
ちひろ「確かに緑色したブサイクですけど、ぴにゃこら太はマスコットですよ」
P「そうなると、残るは緑の怪物というか悪魔しか……」
ちひろ「それは一体誰の事を指しているんですかね?」
P「さぁ、心当たりあるなら間違っていませんよ?」
ちひろ「おう、良い度胸だな、表出ろ」
ヤッテヤロウジャネーカ、ナメンナヨ、ア、チョマッ、ムリムリムリムリゴメンナサイゴメンナサイ
光「いつも仲良しだな、Pさんとちひろさん!」
麗奈「あれは仲良しでいいのかしら……?」
光「いいんじゃないかなっ! なんだかんだいつもだし」
晶葉「助手はいるか?」ガチャ
P「ん? 居るけどどうした晶葉」
晶葉「助手から頼まれてた件についてだが結果が出たから報告にな」
P「ちょっとここじゃまずいから会議室行こう。ちひろさん会議室借りますね」スタスタ
ちひろ「ええ、どうぞ」
麗奈「ここじゃまずい話って何かしらね」
光「気になるよな」
ちひろ「そう言うと思いまして。こっち来てください」
麗奈「? パソコンの前で何するのよ?」
ちひろ「まぁ、見てて下さい」カチャカチャ
P『で、どうだった?』
光「あれ、これって……」
麗奈「盗撮じゃないの……、ちひろ、あんたね……」
ちひろ「必要な事なんです。それに気になるでしょう? じゃあお口チャックですよ」
光「むぅ……」
ちひろ「それより見ましょうね?」
晶葉『助手が最近感じる違和感に関してだが、結論としては私にはわからん』
晶葉『志希ならわかるかと思って助手の名前を伏せて検査結果を見てもらったが志希にもわからないらしい』
P『そうか……、医者に言っても超人的なまでに健康体って言われただけだったしなぁ』
晶葉『私たちが見落としてる可能性も否定は出来ないぞ』
P『いや、そこは晶葉達を信じるよ。まぁ、異常ないならそれでいいしな』
晶葉『しかし、万に一つでも何かあったらまずいから、もう一度検査しよう』
P『といっても俺もあんまり暇じゃないんだけどなぁ』
晶葉『仕事が出来なくなってもいいのか? 助手が居なくなったら別の人間にアイドルを取られるぞ?』
P『む、それはいかん。アイドルは俺の手で守る』
晶葉『ならもう一度検査だな、今からなら時間あるだろう?』
P『まぁ、ちひろさんに事務仕事押し付ければなんとか』
晶葉『ちひろさんも助手のためなら引き受けてくれるだろう』
P『だといいがなぁ。まぁ、とりあえず戻るか。これ以上は怪しまれる』
ちひろ、麗奈、光「「「……」」」
麗奈「アイツ……病気なの?」
光「でも、池袋博士は問題ないって……」
ちひろ「でも晶葉ちゃんがもう一度調べたいって言うからには何かひっかかるところがあったんじゃ……」
ちひろ、麗奈、光「「「うーん……」」」
P「もどりましたー」ガチャ
P「ん? どうかしました?」
ちひろ「いえ! なんでもないですよ!」
P「そうですか? っとそうだ、ちひろさん、申し訳ないですけど少しお願いが」
ちひろ「任せてください! 残りの仕事は全部やっておきますよ!」
P「まだ何も言ってないのによくわかりましたね」
ちひろ「えーっと……、そう! 長い間一緒だったから分かるんですよ!」アセアセ
P「はぁ、じゃあお願いします」
P「よし行こうか、晶葉」
晶葉「とりあえずラボの前に志希を確保して欲しいんだが」
P「了解した。志希のとこだなー」スタスタ
ちひろ「危なかった……」
麗奈「盗撮ばれたら流石のアイツも怒るわよね」
光「そもそも盗撮は犯罪だからな……」
菜々「おはようございまーすっ! ナっナでーすっ!」
ちひろ、麗奈、光「「「おはようございまーす」」」
ちひろ「あれ? 菜々さんお仕事入ってましたっけ?」
菜々「いえ、志希ちゃんに呼ばれてきたんですよ。なんか聞きたいことがあるって」
ちひろ「そうでしたか。でも志希ちゃんはまだ来てませんよ?」
ちひろ「あとプロデューサーさんと晶葉ちゃんが志希ちゃんのところに行くって出ていったので、一緒に行くと手っ取り早いと思いますよ」
菜々「そうなんですか? じゃあすぐに追いかけますね! 行ってきます!」
ちひろ「はい、行ってらっしゃい」
麗奈「……」
光「レイナ? どうしたんだ?」
麗奈「晶葉も志希に用があるって言ってたわよね」
光「そう言ってたな。それがどうかしたか?」
麗奈「晶葉が志希に用があるってことは晶葉の専門外ってことでしょ?」
麗奈「晶葉が以前言ってたけど、菜々に使われてた薬は志希の専門らしいのよ」
光「だから?」
麗奈「あー! もう鈍いわね!」イライラ
麗奈「晶葉で分からない事態がアイツに起きてる。更にそれは志希の専門分野らしい。しかも、志希は志希で菜々を呼び出しているのよ?」
麗奈「これって菜々とアイツの違和感に何か共通点があるからじゃないかって話」
ちひろ「……確かにありえない話ではないですが、でもたまたまじゃないですか?」
光「アタシもちひろさんの言う通りだと思う。偶然だよ」
麗奈「……」
光「ま! 何にせよ、池袋博士がもう一度検査するらしいし大丈夫だよ!」
麗奈「まぁ、そうね……」
光「それにしてもPさんの心配をそこまでするなんてやっぱレイナは優しいな!」
麗奈「なっ! バ、バカ言ってるんじゃないわよ!」
卯月「おはようございまーす……」ガチャ
ちひろ「おはようございます。元気ないみたいですが、大丈夫ですか?」
卯月「えっと……ごめんなさい、大丈夫です」
卯月「ただ、ちょっと最近レッスンがうまくいかなくて……」
麗奈「昨日のレッスン酷かったものね」
卯月「麗奈ちゃーん……、あんまりはっきり言わないでくださいー……」ショボン
光「卯月さん、元気出してっ!」
ちひろ「そうですよ。うまくいかない日もありますよ。元気出すためにもスタドリはいかがですか?」
卯月「ありがとうございます。いただきますね」
ちひろ「はいっ♪ 100MCになります♪」
麗奈「ちひろ……」
光「ちひろさん……」
ちひろ「な、なんですか! ちょっとした冗談ですよ!」
卯月「ふふっ」
ちひろ「ほら! 卯月ちゃんを笑わせてあげようとですね!」
麗奈「はいはい、わかったわよ」
麗奈「それより、そろそろレッスンの時間ね。行くわよ、光、卯月」
光、卯月「「はーい」」
卯月「行ってきますね、ちひろさん。スタドリありがとうございました!」
ちひろ「はい。頑張ってきてくださいね」
卯月「島村卯月、頑張ります!」
レッスン室
卯月「うぅ……やっぱりダメでした……」ドヨーン
光「げ、元気だしてよ、卯月さん! たまたま壊滅的だっただけだよ!」
麗奈「はぁ……昨日も同じことやってたじゃない。学習能力ってのものはないわけ?」
光「レイナ! 言い過ぎだぞ!」
卯月「光ちゃん、いいんです……。麗奈ちゃんの言う通り全然できてませんでしたから……」
麗奈「まったく何が駄目なのかしらね。そんなに難しくないと思うんだけど」
光「確かに……アタシやレイナは簡単にできちゃったし……」
卯月「はぅ……」グサー
麗奈「光……、卯月に刺さってるわよ
光「ああ! 卯月さん、ごめん!」ワタワタ
卯月「大丈夫です……。実際私ができてないんですし……」
麗奈「仕方ないわねぇ。まだ時間あるんでしょ? もう少し付き合ってあげるわよ」
卯月「麗奈ちゃん……!」
光「そうだな! 一緒にやってきた仲間だもんなっ!」
卯月「光ちゃん……!」
卯月「じゃあ、もう少しだけ付き合ってください! お願いします!」
一時間後
光、麗奈「「……」」
卯月「ぐすっ……」
麗奈「どうすればいいと思う……?」ヒソヒソ
光「……ヒーローにもできないことはあるんだ」ヒソヒソ
卯月「大丈夫です……、一人でなんとか頑張りますから……」シクシク
光「えっと……」
P「おーい、まだやってるのかー?」ガチャ
卯月「プロデューサーさん……」
P「どういう状況だ、これ?」
麗奈「卯月がうまく出来ないのよ。そんなに難しくもないし、ハードでもないんだけどなぜか」
麗奈「それよりあんた、検査はもういいの?」
P「なんのことだ?」フイッ
麗奈「なんでもない……」
P「ふむ。まぁいいや。一回見せてもらってもいいか?」
卯月「は、はいっ! 頑張ります!」
麗奈「あたしはちょっと休んでていい? さすがにきついわ」
P「ああ、かまわんぞ。光はどうする?」
光「アタシは一緒にやるぞっ!」
P「あいあい。じゃあよろしく頼む」
P「じゃあ、通しでよろしく、スタート」
数分後
卯月「はぁ、はぁ……」
P「ほい、水」ヒョイ
卯月「あり、ありがとうございます……」ゼエゼエ
光「ありがとう!」
P「たぶん、過労だな」
卯月「え?」
P「卯月、ここ最近無理なレッスンしただろ」
卯月「えーっと……」
P「例えば居残り練習とか、休憩挟まずにレッスンとか」
麗奈「そういや、最近、卯月が帰るの一番遅かったわよね」
光「休憩中もスタドリ飲んですぐ復習してたな」
P「やっぱりか。休息も立派なレッスンのひとつなんだぞ。無理して動かしても出来るようにはならん」
卯月「でも! 本番近いのに、光ちゃんや麗奈ちゃん達に比べるとまだまだで!」
P「そりゃそうだろ。お前は急きょゲストに決まったんだから、卯月より前からレッスンしてる二人にすぐさま追い付けるわけないだろ」
P「卯月、無理は駄目だ。わかるだろ? そりゃパフォーマンスは完璧が良いにきまってるけど、卯月が苦しそうな顔で歌って踊っててもファンは何一つ楽しくないぞ」
P「多少間違ってたり、できてなかったとしても笑顔の卯月に会えるのがファンにとっちゃ一番なんだ。わかるだろ?」
卯月「はい……」
P「じゃあ、わかったなら今日はもう休みなさい。明日のレッスンも午後からだけにしとくからな」
卯月「でも!」
P「でもじゃありません。いいから。焦りすぎ。休みなさい」
卯月「はい……」ショボン
麗奈「たまには良いこと言うのね」
P「何言ってんだ。俺はいつだって良いこと言ってるだろ?」
麗奈「はいはい……」ヤレヤレ
P「よしっ! とりあえず今日はもう帰れ。送ってくから準備しろよ」
光、麗奈「「はーい」」
卯月「はーい……」
翌日 早朝 事務所
ちひろ「おはようございます」
P「ん……、ああ、おはようございます」
ちひろ「また徹夜ですか? 駄目ですよ?」
P「はは……、いえ、大丈夫ですよ。スタドリ飲めば体力満タンですから」
ちひろ「いえ。Pさんの体力ではなく、残業代の話です」
P「この鬼! 悪魔! ちひろ!」
ちひろ「スタドリの値上げがご希望ですか?」ニッコリ
P「くそっ……搾取されるしかないのか……」
P「ああ、そうだ。スタドリといえばですが、最近卯月がどれぐらい飲んでるかわかります?」
ちひろ「卯月ちゃんがですか?」
ちひろ「えっと、正確にはわかりませんが……、あー……。かなり多いですね」
P「というと?」
ちひろ「プロデューサーさんの半分、くらいですね」
P「となると麗奈達と比べると四倍近いわけですか」
ちひろ「そうなりますね」
ちひろ「何か気になることでも?」ハテ
P「卯月が今度の本番に向けて焦りすぎてます。麗奈や光に出来て卯月に出来ないって状態が卯月にとってストレスになってるんでしょうね」
ちひろ「でも仕方ないですよね? 卯月ちゃんがゲストに決まったのも二週間くらい前ですし……」
P「ええ、そうなんです。むしろ二週間であそこまで仕上げてるなら十分過ぎる出来なんですが」
ちひろ「卯月ちゃんが納得していないと?」
P「その通りです。どうもお客さんに完璧なパフォーマンスを見せたいと思っているのか、麗奈や光と並んだときに自分が劣って見えるのが気になるのかはわかりませんが」
ちひろ「実際、卯月ちゃんの完成度はどれくらいなんです?」
P「麗奈が95%、光が90%だとすれば、卯月は80%くらいですね」
ちひろ「すごいじゃないですか! 麗奈ちゃんも光ちゃんももう二か月くらいレッスンしてますよね? それをたった二週間で8割だなんて」
P「そうなんですがね。どうも卯月はもっと頑張らないといけないって思い詰めてるみたいで」
ちひろ「あ、なるほど。それで最初のスタドリの話なんですね」
P「ええ、たぶん卯月は、自分の体力以上の事をスタドリを使って無理やり行ってるみたいなんです」
ちひろ「それは……、あんまり褒められる行動じゃないですね」
P「念のため今日のレッスンは中止したんですが、あの状態の卯月が果たして家でおとなしくしててくれるかどうか……」
ちひろ「うーん、困りましたねぇ」
晶葉「助手はいるか!」ドアバーン
P「おう、ドアは静かに開けような」
晶葉「そこに居たか! 聞け、朗報だぞ助手!」
P「朗報?」
晶葉「助手の違和感を解決するために再検査しただろう?」
晶葉「その結果と前回の結果を志希と一緒に調べつくした結果、どうやら助手の体に変化が起きていることが分かった!」
P「変化? それはまずいのか?」
晶葉「原因はわかっていないからそこまでは断定できないが、助手の体にウサミンによく似た変化が起きていることがわかったんだ」
P「菜々さんに似た変化……?」
晶葉「ああ! ウサミンはスーパーソルジャー計画の成功第一号だ。そのため、ウサミンは身体能力が人間の限界値まで上昇されている」
P「なるほど、わかったぞ。菜々さんと同じように俺の体が変化してるから最近やけに調子が良いんだな」
晶葉「その通りだ! おそらく助手の違和感は身体能力、代謝の向上などの、今までの体との微妙な変化によるものだろう!」
P「なるほど。じゃあ、とりあえずは心配ないんだな」
晶葉「当面はな、だが、問題はまだあるのだ」
P「というと?」
晶葉「助手よ……、この身体の変化の原因に心当たりはないか?」
晶葉「スーパーソルジャー計画は、人間を薬物投与によって無理やり変化させているんだ」
晶葉「助手はどこかで薬物投与を受けたりしていたのか?」
P「いや……、そんな記憶は一切ないが……あっ」
晶葉「どうした?」
P「ちひろさん? お話伺いたいのですが?」クルッ
ちひろ「ふぁぃ!?」
P「スタドリって本当に安全なんですか?」
ちひろ「い、いやですね! 安全に決まってるじゃないですか! 現にPさんはここ何年か異常な量を飲んできてますけど、今まで変化は起きてませんよね! ほら、安全ですよ!」アセアセ
P「本当に? 最近成分変えた、とかはないですよね?」
ちひろ「そんな! 水道水なんて詰めてな……あっ!」
P「ちひろさん……?」ゴゴゴ
ちひろ「き、気のせいです! なんともないです! 大丈夫です!」
晶葉「ちひろさん……。もし心当たりがあるなら早めに言ってくれないか」
晶葉「もし、早めに対処できれば、私も志希も居るんだ。なんとかできる可能性は高い」
P「このまま黙ってて本当に何かあったときは、デスこら太の件でのお仕置き程度じゃすみませんよ?」
ちひろ「……」ウツムキ
ちひろ「ごめんなさい……」
P「何が?」
ちひろ「その、デスこら太の件の時にスタドリの成分を少し変えて実験しかけてたのを忘れてました……」シュン
P「というと?」
ちひろ「あの一件以来のスタドリは安全性が確保されていた今までのスタドリと違って、効果が未知数です……」
晶葉「決まり、だな。さっそくスタドリを検査にかけてみよう」
P「だな。あとアイドルにもこれ以上スタドリ飲まないように伝えておかないと」
P「あと、ちひろさん。お仕置きはしますからね?」
ちひろ「はい……」
ここ最近感じていた違和感の原因がつかめ、安堵の息を吐いた時だった。
突如、事務所のレッスン室の方から悲鳴が聞こえてきた。
P「なんだ……!? この声……、麗奈か!」
麗奈の悲鳴と思しき声を聴いた俺は仕事を放りだしてレッスン室に急いだ。
そこで見た光景は、腰が抜けてへたり込んでいる麗奈とレッスン室の中にいる、巨大な何かだった。
P「おい! 大丈夫か麗奈!」
麗奈「あ、あたしは大丈夫だけど、卯月が!」
P「卯月? 卯月も居るのか!?」
気が動転している麗奈からなんとか話を聞き出すと、卯月の事が気になった麗奈は朝からレッスン室に顔を出していたそうだ。そこにはすでに卯月が居てレッスンを始めていたらしく、最初はなんの変化もなかったそうだが、卯月が一息入れると言ってスタドリを飲んだ瞬間、苦しみだし最終的にはこのような状態になったという。
P「じゃああのレッスン室に居るあのでかい緑っぽいのは卯月か!」
レッスン室の中には大人の男性よりも二回りほど大きい緑色の生物がうずくまっていた。
卯月「ぴにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
突如、うずくまっていたはずの卯月が大声をあげ、暴れだした。サイズが大きいだけかと思いきや、力も相応なものらしく瞬く間にレッスン室を破壊しながら俺と麗奈に向かって来ようとしている。
P「卯月! 落ち着け! とまるんだ!」
麗奈「そうよ! 止まりなさいよ! 何暴れてんのよ!」
俺と麗奈が必死に呼びかけるが、卯月には聞こえていないのか、なおも大声をあげながら周囲を破壊しながら進んできている。
P「くそっ……。ここは一旦逃げるぞ! 晶葉のラボまで行くんだ!」
麗奈「わ、わかったわ!」
卯月の事も気になるが、今は麗奈の安全を確保することが優先だ。この事務所の中でなら晶葉のラボが一番安全性が高いだろう。
P「それと大至急、光と芳乃と菜々さんに連絡とってくれ! あいつらなら今の卯月でもなんとか抑えられるだろ!」
麗奈「あ、あんたはどうするのよ!」
P「俺は、卯月を止める!」
麗奈「ば、バカなこと言ってんじゃないわよ! 今の卯月をどうやって止めるのよ!」
麗奈の疑問は至極当然であろう。だが、俺はプロデューサーだ。
P「俺は、お前らアイドル全員を守るのが仕事なんだよ」
P「それに今まで散々アイドルに助けられてきたからな。ここらで良いとこ見せないと」
P「わかったら早く行け。光達を呼ぶのが遅ければ俺も死にかねんぞ」
麗奈「っ……! わかったわよ! すぐ戻ってくるから!」
麗奈が晶葉のラボに向かって走り去って行く。
麗奈がすぐに光達に連絡してくれても到着までには少し時間がかかるだろう。菜々さんに至っては一時間は確実に。
P「そうなると……、やっぱ俺がなんとかするしかないか……」
卯月「ぴにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
どこかしら、というかモロにぴにゃこら太に見える緑の巨大生物に変化してしまった卯月を改めてみやる。もし、本当にちひろさんのスタドリが原因であるならば、摂取量が増えていた卯月に変化が生じたのもうなずける。
P「もし、そうであるなら。俺もなれるはずだな」
P「アイドルは俺の手で守る。アイドルに助けられるだけじゃない」
大きく息を吸って下腹部に力を入れる。全身に気合を入れ、卯月と向かい合う。
卯月が突進してきながら右手を振りかぶる。
P「さぁ、来い、卯月! 俺がお前を助けてやる!」
そう言った直後凄まじい衝撃が俺の体の中を駆け抜けていった。
P「うそ、だろ……」
吹き飛ばされながら、つぶやく。あまりの衝撃だったからか痛みはさほど感じない。そしてそのまま壁に叩きつけられ、壁にめり込む羽目になった。
卯月「ぴにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
P「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
卯月の咆哮に応えるかのように自身も吠える。
P「うがぁっ!」
ぼやける意識の中、なんとか気合で壁の穴から這い出る。はっきりしない意識の中で見えた俺の右手は普段のヒョロヒョロな俺の腕とは違い、太く逞しく、そして緑色の腕だった。
P「ふぅーっ!」ブンッ
卯月「ぴにゃああぁぁぁ!」ドゴォ
立ち上がった俺は卯月に向かって右手を突き出す。変化してしまった卯月の巨体を吹き飛ばすことができるほどの威力の拳に少し恐怖を感じる。
卯月「ぴにゃあっ!」ドゴッ
今度は卯月の反撃を俺が食らう。多少痛みはあるものの、大したことはない。
P「がぁっ!」バシッ
互いに殴り合いを始める。周囲への被害はお構いなしだ。それよりも今は卯月を止めることが最優先事項である。
P「ぐおぉぉぉっ!」グッ
いつまでも殴り合っていては決着がつきそうにないため、卯月には悪いが無理やり絞め落とすことにする。卯月の首元めがけて両手を伸ばし、チョークスリーパーホールドの姿勢を取る。
卯月「ぴ、ぴにゃぁぁっ!」
卯月が苦しいのか俺の手を振りほどこうと暴れまわる。肘が腹に突き立てられ、痛みを感じるがここで離せばより卯月を傷つけることになりかねない。
P「うおおおぉぉぉっ!!!」
卯月「ぴにゃああああぁぁぁぁっ!!」
卯月が苦しそうに吠えるがより手に力を込め、一気に締め上げる。
卯月「ぴ、ぴにゃっ……」フラッ バターン
P「ぐおおおぉぉぅっ!」フラフラ バタン
何とか卯月を気絶させることが出来たが、同時に俺の意識も途切れた。
数日後 病院
P「む」ムクリ
P「ここ、どこだ」キョロキョロ
菜々「ミミミン、ミミミン、ウーサミン! Pさん、起きましたかー?」ガチャ
P「あー。おはようございます」
菜々「わわっ! 意識が戻ったんですね! ナースコールナースコール!」ピッ
P「えーと……どうなったんです?」
菜々「それはですね……」
晶葉「私が説明しよう!」ドアバーン
P「おう、ドアは静かにな」
晶葉「む? すまない」ヨッコイセ
晶葉「とりあえず、あの日助手と卯月は変身したんだ。ちひろさんが言うには卯月はぴにゃこら太のようで、助手はハルクのようだったと」
P「ハルク……」
晶葉「レッスン室がある棟は滅茶苦茶に壊れてしまっているが、ほかには影響はない。もちろん死傷者もゼロだ」
晶葉「あの時、麗奈が私の元に来てくれたおかげでいち早くウサちゃんロボを周囲に派遣し、避難誘導を行えたってのも大きいが、何より助手が卯月を抑えてくれたおかげだな」
菜々「ですね! 麗奈ちゃんから連絡もらって急いで向かったんですけど、その時にはもう事態は落ち着いてましたし」
晶葉「ああ、あの時は光ですら到着に時間がかかってたからな」
P「短い間だったのか……」
晶葉「む? なんだ覚えてないのか?」
P「ああ、なんか頭の中がずーっとぼんやりしてて、どうしても思い出せないんだ」
P「……! それより、卯月は! 卯月はどうなったんだ!」
菜々「落ち着いてください! 卯月ちゃんは無事です!」
P「そうか……よかった……」ホッ
晶葉「無事は無事なんだが……」
P「?」
晶葉「卯月も今は人間サイズだが、あのぴにゃこら太状態になってしまうのが治療できていない」
P「なっ……! じゃあ卯月はあのままなのかっ!?」ドクンッ
晶葉「落ち着け! 今は志希とちひろさんが全力で治療薬の調合中だ!」
晶葉「それに助手も危険な状態なんだ!」
P「俺が……?」
晶葉「助手が寝てる間にいろいろ検査したが、どうも卯月も助手も心拍数の増大により体に変化が起きるらしい」
P「心拍数……。だから卯月はレッスン中に変身したのか……」
晶葉「それと変化の原因はやはりスタドリにあった。これはスタドリの成分解析を行ったところ100%断定できた」
P「じゃあ、スタドリ飲まなければ卯月は治るんだな!?」
晶葉「だから落ち着け! また変身してしまうぞ!」
P「ああ……すまない……。だが、卯月が……」
晶葉「卯月が心配なのは分かる。私も志希もちひろさんも全力で卯月を治してみせる。だから今はゆっくりしててくれ」
志希「にゃーっはっはー! できたよーっ♪」ドアバーン
菜々「志希ちゃん! ドアは静かに……!」
晶葉「出来たって治療薬がか!?」
P「おいおい、いくら志希でもそんな簡単に……」
志希「ふっふ~! それが出来ちゃったんだなぁ~」
P「まじか!」
志希「うんうん♪ 志希ちゃんウソツカナイ!」
菜々「なんで片言……」
晶葉「では早速卯月と助手に!」
志希「あ、卯月ちゃんにはもう投与してきたよっ! あとは卯月ちゃんの目が覚めるの待ち~」
P「まじかー……。まじでよかった……」
志希「というわけで、キミにも、えいっ」ブスッ
P「いってぇ! 急に何すんだっ!」ドクンッドクンッ
P「ん?」ドクンドクンッ
晶葉「どうした?」
P「なぁ、志希、これ……って、本当にっ……効くっのか……?」ドクン
志希「うんうん、効果はバッチリなはず。すぐ効くよん」
P「ぐっ……! がぁっ……!」ドクンッドクンッ
菜々「これって本当に効いてます……? ナナにはそんな風に見えないんですけど……」
晶葉「……まずくないか?」
志希「あっれー……? 卯月ちゃんにはすぐ効いたんだけどな……?」
P「ぐおぉっ! ぐぅっ……! があぁっ……!」
晶葉「まずい! 効いてないぞ! 急いでここから逃げるんだ! また助手がハルクになる!」
菜々「大丈夫ですよっ! Pさん!」ギュッ
菜々「大丈夫です。ここには貴方の敵は居ません。大丈夫です。皆味方です」ダキカカエ
P「がぁ……、はぁはぁ……」汗ダラダラ
晶葉「収まった、のか……?」
志希「ぽい?」
P「はぁはぁ……、菜々さん……」
菜々「はい。ナナですよ。大丈夫ですからね?」ギュッ
菜々「今は落ち着きましょう? ね? さ、横になって」
P「でも……!」
菜々「大丈夫ですよ。ちゃんとPさんが眠るまでここに居ますから。大丈夫です」ヨシヨシ
P「じゃあ……もう少しだけ……」
P「すー……すー……」
菜々「ふぅ! 大事には至らなかったですね!」
晶葉「ウサミン……君は、すごいな……」
志希「さすがはスーパーソルジャー?」
菜々「そんなことないですよ」
菜々「それより、志希ちゃん! いきなり注射針を刺しちゃいけませんよ! 分かりました?」
志希「はぁ~い……」
志希「おかしいなー、すぐ効くはずだったんだけどなぁー」
ちひろ「それはですね!」ドアバーン
菜々「ちひろさん! ドアはお静かに!」
ちひろ「あ、はい。すみません」ヘコヘコ
ちひろ「多分、プロデューサーさんが尋常じゃない量のスタドリを摂取してたからだと思います」
晶葉「尋常じゃないというと?」
ちひろ「少なくとも卯月ちゃんの二倍ですね。実際は三倍以上だと思いますけど」
晶葉「三倍だと!?」
志希「あっちゃー……それじゃあこの薬じゃ効かないねぇー……」
ちひろ「とりあえず今は、プロデューサーさんでも効くように再度調合しなおす必要があると思います」
菜々「どれくらいでできるんですか?」
ちひろ「確実なことはわかりません。ただ、ひとつ言えるのはプロデューサーさんはしばらくこのまま、ということですね」
菜々「そんな……」
晶葉「大丈夫だ、ウサミン。私と志希がいるんだ。すぐになんとかしてみせるさ」
志希「うんっ。任せてよー。ギフテッドと天才にかかればちょちょいのちょい~♪」
ちひろ「私も居ますしね!」
菜々「そうですね。みなさんに期待するしかないですね」
晶葉「そうと決まればラボに戻るぞ、志希、ちひろさん!」ダッ
志希、ちひろ「「あいあいさ~!」」ダッ
菜々「すぐ、もとに戻れますよ。Pさん」ナデナデ
菜々「さて、じゃあナナはお仕事の時間なんで、一度帰りますね。また来ますね。では」ガチャ
P「……」ムクリ
P「……すぐには治りそうにない、か……」
P「ハルクとして生きる、か……」
P「俺はあの子たちの傍に居て良いのだろうか……。傷つけてしまわないだろうか……」
P「どうしたものか……」
end
以上になります。お読みいただけましたらありがとうございます。
当初、きらりをハルクにするつもりだったのですが、緑のブサイクをアイドルにしてよいものか悩んだためこのような形になりました。
ただ、アニメではっしーがぴにゃこら太だったので、こりゃ卯月で行くしかないとも思ったのですが、卯月は可愛いですからね。
では、依頼出してきます。
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