グリP「……キス友?」 (35)

キス友
キス友とは、その言葉の通り「キスだけをする」相手の事。
不貞行為にあたるような性的交渉などは一切なく、友達以上恋人未満といった関係性を保つのが特徴だといえます。

引用 http://tanteitalk.com/uwaki/kisstomo/

このSSの登場人物は茜ちゃんとプロちゃんのみです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440256908

~事務所~

バンッ

グリP「お疲れ様です、ただいま戻りました。あぁ^~、今日も馬車馬のように働いたんじゃぁ^~。営業企画提案会議、構成チェックに技術スタッフとの打ち合わせ、ついでに目ぼしい人には売り込み。すっかり空にキラキラお星様、踊るおもちゃのチャチャチャ。おかげさまで事務所には誰も居ない、ワッショイするなら今のうち。残りはデスクワーク、アイドルの仕事割り振りとスケジュール管理と……あゝ~、ワーカホリックで脳汁がグツグツするんじゃぁ^~。あんまり食欲ないけど、帰りに軽く食べようか。よーし、取引き先にゴマすりまくったから、パパ美味しい胡麻ラーメンと一杯洒落こんじゃうぞー」

茜「じゃ~ん、茜ちゃんだよー!」ニュッ

グリP「………………………………」

茜「独り言長すぎて、ちょっと気持ち悪いよプロちゃん。正直、引いちゃって声かけるのためらっちゃった」

グリP「………………応」

茜「あれれ、反応がおかしいぞー。美少女を目の前にどうしてプロちゃんはテンションが下がっているの? リアクションが真逆だぜ~い!」

グリP「……今のは、現実逃避だ」

茜「おう?」

グリP「本当は精神も身体も疲れているけれど、フレンチカンカンのように振りかかる仕事を、ガチのフレンチカンカンなんだと思うことによって、めまぐるしい現実を幻覚のように楽しんでいたんだ。その代償がドン引きの長い独り言なんだ」

茜「プロちゃん理屈っぽい、暗いし。そういうところ直さないと彼女できないよ」

グリP「そんなの作っている暇がないのが救いだな、皮肉なモノで」

茜「言い訳くさいなぁ~、あと気持ち悪い」

グリP「言わなくても知ってるから、俺が一番知ってるから、だからもう言うな、二度と言うな」

グリP「それで、なんで夜中の事務所に茜ちゃんがいるのかな」ナデナデ

茜「そうそう! わざわざ茜ちゃんが事務所に一人寂しく残っていたのはァー! プロちゃんに直々に言いたいことがあったのだァー!」

グリP「ああ、感謝の気持ちな。いいよいいよ、それが俺の仕事だし。あとは茜ちゃんが成果でそれに答えてくれれば」ナデナデ

茜「なんで最近茜ちゃんの仕事ないのん?」

グリP「」

茜「新カード全然出ないじゃん」

グリP「いや、次ガチャで」

茜「SR?」

グリP「………………」

茜「茜ちゃん大人だから穏便にクレームしてるけどさぁ、もしプロちゃんのナデナデが一秒遅かったらインラインスケートでプロちゃんに飛び蹴りしてた」

グリP「(暗くて分かりづらかったけど、茜ちゃんの靴がスケートになっているでござる)」チラッ

茜「これでも珍しく怒っているぞーォ」

グリP「………………」

茜「怒れる茜色の星、マダーフィールド」

グリP「KAKKEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」

茜「歌って踊れて、バラエティもグラビアもイケるのに。こんなに万能な美少女を使わないなんて、もう世界の損失だね! プロちゃんは石油をドブに捨ててるよ!」

グリP「そんな、自分をアブラに例えなくても……」

茜「これじゃあ、茜ちゃんの正しい魅力が世界に伝わらないじゃーん! プロちゃんが茜ちゃんを独占したいがために茜ちゃんの力を封印したい、その気持は分かるけれどさぁ!」

グリP「…………まあ、封印云々はともかく。茜ちゃんの魅力が伝わりにくいのは事実かな」

茜「おお」

グリP「茜ちゃんはアイドル間よりもプロデューサーと絡んでいる時の方が輝くキャラだから、ストーリーとかコミカライズとかで活躍させるのは他の子よりも比較的難しいかもしれない」

茜「いや、それは非リアっていうプロちゃんのキャラが前提だし……」

グリP「いつからだろう。いきなり出てきたよね、俺の非リア充設定。ぶっちゃけ現実問題その通りだから、胸に刺さって仕方ないんだけど」

茜「上位ラウンジにもたくさん茜Pはいるし、19SRが出たら艦隊作るプロちゃんもそこそこいると思うんだよね。だからせめてイベントでもガチャでもいいから19SR出してよプロちゃーん」ガシガシ

グリP「ワイシャツ引っ張らないで、プロちゃん運営の人じゃないから、どれくらい茜ちゃんが儲かる子なのか分からないし。しょうがないんだよ、決定権は神にあるんだ。少なくとも、このSSを書いている人は絶対に茜艦隊作るけど(ただし極大は除く)。でも神も慈善事業って訳じゃなくて、金で動いているんだよ。神のくせに金で動いているんだよ。俺だって茜ちゃんの19SR出てほしいよ。あと、もう一回言うけどワイシャツ引っ張らないで」

茜「それで茜ちゃん思ったんだ。このままだとプロちゃんと茜ちゃんの仲が険悪になってしまうと!」

グリP「まあ実際問題、茜ちゃんを使いたくても使えないプロちゃんが存在する」

茜「片面は恒常の中アップのみ、両面は18の型落ち。IMCで泣く泣く茜ちゃんを外しているプロちゃんたち」

グリP「半ば諦めたプロちゃんもいると聞く」

茜「このままではプロちゃんとの距離が離れる一方。茜ちゃんは考えた! 今一度プロちゃんとの友情を深めよう」

グリP「はいはい」

茜「プロちゃん!」

グリP「なんぞ」

茜「茜ちゃんと友だちになって!」

グリP「…………?」

茜「はいって言って!」

グリP「…………は、はい」

茜「YES!」

グリP「そんなことを確認するために事務所に残ってたのか? 遅くまで」

茜「そうだね。それじゃあさっそく」

グリP「うん」

茜「キスしようかプロちゃん!」

グリP「??www?????wwwww???wwっっwwww???Ww???」

………少女解説中

茜「……というわけで、イマドキは友達どうしでキスをするのが普通なんです」雑誌ペラー

グリP「話題を集めたい変態雑誌に書いてある戯言だろ、コレ」

茜「いやいや普通普通。プロちゃんが小学時代に初めての恋心を抱いた女の子や、バイトで知り合った可愛い先輩、テレビの取材に答える清楚系の一般人も、もれなく男友達と淫らにチューチューしてるって! それが現実です!」

グリP「おいおい茜さん……。キスってさぁ、もうちょっと神聖なもんでしょ。気を許しあった恋する男女がするものだ。ああ、ここで欧米だとチョメチョメっていうお馴染みのくだりはナシだぜ。ここは日本だからね、美しきジャパーン」

茜「その考えが古いんだって。人間って普通に生きてたら友達できるじゃん。キス友もその延長線上に……あっ、ごめんなさい。プロちゃんを傷つけるつもりはなかったの。本当にごめんなさい、プロちゃんに友達っていうワードは……」

グリP「大丈夫だよ! ぜんぜん問題ないよ! たしかに俺は友達少ないけれど一人や二人は」

茜「一人や二人しかいないの?」

グリP「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」

茜「ここで毎日頑張っているプロちゃんに茜ちゃんからプレゼント。はい、ブレスケア」

グリP「ダメです、年端のいかないアイドルが、彼女いない歴イコール年齢の気持ち悪い男とキスなんて! プロちゃんは許しません!」

茜「プロちゃんの自爆芸、茜ちゃんは好きだよ」

グリP「ニホンガー、トモダチガー、アイドルガー」

茜「グダグダうるさいなぁ。それを言うなら誕生日イベントでお互いにプリン『あーん』したじゃん。ズバリ間接キスだぜ。しかも当社比では、あの一つのスプーンのやりとりは間接キスの中でもディープな部類だね。つまりプロちゃんはすでに茜ちゃんとディープキスしている!」ズキューン

グリP「まて、その理屈はおかしい! たしかに茜ちゃんに『あーん』された瞬間、すかさず舌先に神経を集めて、スプーンを口に入れられた刹那、さりげなくプラスチックの凹みをレロレロとしたし、めちゃくちゃ興奮したけれど、あれは絶対にキスじゃない!」

茜「落ち着いてプロちゃん。それが仮にキスじゃなかったとしても、プロちゃんの発言はキスと同等以上の事件性をはらんでいるよ」

グリP「言われてみればそうである」

茜「もープロちゃんは頑固だね。そんなに頭が固いから毎日がフレンチカンカンなんじゃないの? もっと頭が柔らかかったら仕事の効率化できる部分が見つかるかもしれないよ」

グリP「……言われてみればそうである」

茜「兎にも角にも、人間は生きていれば友達がいるのが普通! そしてキス友がいるのも普通!」

グリP「…………言われてみれば、そうである」

茜「世の中の女の子は男友達チュッチュペロペロしている、全員だ!」

グリP「………………言われてみれば、……そうである」

茜「とりあえず、ブレスケア飲もうか、はい『あーん』」

グリP「あーん」

茜「プロちゃんからキスするか、茜ちゃんからキスするか、選ばせてあげよう。さあ、好きな方を選びたまえ」

グリP「うわぁ、どっちも捨てがたい。これは悩む」

茜「まあ、友達は絶交しない限りずっと友達だから。キスする機会は無限にあるし、なんなら攻守は交互に交代してもいいし」

グリP「でも初めてのキスだからなぁ、思い出にしたいし。どっちがいいかなー」

茜「さりげなく爆弾発言をぶち込んでくるね、プロちゃん」

グリP「……今回は俺からでいいかな。自分のペースじゃないとキスしたって実感できそうにないし」

茜「(なんだろうなぁ……、どうして気持ち悪いんだろう。女々しいからかな)」

グリP「俺はファーストキスだけど、茜ちゃんはキス何回目ぐらいなんだ?」

茜「え? 初めてですけど」

グリP「………………」

茜「………………」

グリP「はあああああああああああああああああ?!」

茜「うわっ、びっくりした」

グリP「おいおいおいおい、止めだ止め! ふざけんな畜生!」

茜「えええ?! なんでなんで?!」

グリP「なんでって、茜ちゃんェ! 俺の担当する可愛いアイドルのファーストキスが俺みたいな冴えないクズ男じゃ駄目なんだよォ! だったら、ドラマの撮影でその辺の男優にしてもらった方がまだマシだわ! ファーストキスはそれだけ人生の大きなイベントの一つなんだ!」

茜「ちょっと待って、それを決めるのはプロちゃんじゃないから、茜ちゃんだから!」

グリP「いいや、俺だ! なぜなら俺はプロちゃんだからだ!」ガシッ

茜「うわぁ、もう面倒くさい。面倒くさいよプロちゃん」

グリP「とにかく、そんな軽い気持ちでファーストキスを捨てちゃ駄目! 大丈夫、茜ちゃんには俺よりもふさわしいキス友が現れる。そいつと茜ちゃんで美しい思い出を作るんだ!」

茜「(プロちゃんは思い出厨だったか……)」

茜「ねぇ、プロちゃん」

グリP「なんだ茜ちゃん。ブレスケア返して欲しいのか?」

茜「たしかにプロちゃんは三枚目でモテないし気持ち悪いし女々しい変態だけど」

グリP「…………」

茜「でも、今まで茜ちゃんと二人三脚でアイドル活動頑張ってきたよね」

グリP「そ、そうだな」

茜「お花見で一緒にパシられたり、愉快なワイヤーアクションしたり、カフェの支配人やったり、文化祭で水着エプロンしたりで本当に色々あったよね、それってすごいイイ思い出だと茜ちゃんは思うの」

グリP「お、おう」

茜「こんな機会じゃないと言えないけれど……。茜ちゃんはすっごくプロちゃんに感謝してて」

グリP「は、はぁ……」

茜「ありがとうプロちゃん!」ギュー

グリP「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああぁ!」ギャー

茜「(動揺しすぎ……)」ギュー

茜「でも茜ちゃん、プロちゃんに一個お願いがあって……」ギュー

グリP「ぎゃああああああああああああああああ」ギャー

茜「今までプロちゃんから貰った思い出の中に」ギュー

グリP「ぎゃああああああああああああああああ」ギャー

茜「プロちゃんと茜ちゃんの初めてが欲しいなって」ギュー

グリP「ぎゃああああああああああああああああ」ギャー

茜「プロちゃんと茜ちゃんがキス友になるのって、すっごいロマンチックだなって」ギュー

グリP「ぎゃああああああああああああああああ」ギャー

茜「プロちゃん聞いて、今いいとこだから」

グリP「すまん」

茜「プロちゃんと茜ちゃんの初めて同士だよ。プロちゃんは、まるで自分が駄目みたいに言うけれど。でも茜ちゃんはそうは思わない。だってプロちゃん以外だと、こんな想いは経験できない。そう、それが思い出だぁー!」

グリP「な、なんだってー」

茜「プロちゃん」

グリP「はい」




茜「いますぐ」

茜「此処で」

茜「キスして。」



グリP「I'll never be able to give up on you」

グリP「So never say good bye and kiss me once again」



茜「……なんだコレ」

グリP「行かないで~ね、何処にだって、私と一緒じゃなきゃ、やーよ」

茜「プロちゃん、もういいから」

グリP「よし、行くぞ茜ちゃん!」

茜「どんとこーい!」

グリP「ちゅっ」

茜「………………………………」

グリP「………………………………」

茜「……………………はい?」

グリP「……………………」

茜「ない、それはないよプロちゃん」

グリP「…………………?」

茜「いや、ほっぺって。園児じゃあるまいし」

グリP「え? え?」

グリP「いや、いま俺のバックでは『エンダアアアアアアアー』って」

茜「茜ちゃんのバックでは吉本新喜劇のテーマ曲が流れました」

グリP「す、すまん。茜ちゃんのファーストキスを吉本新喜劇に……」

茜「気に病む必要はないよ、プロちゃん。余裕でノーカウントだから」

グリP「そ、そんな。俺のファーストキスは」

茜「だからノーカウント! プロちゃんも茜ちゃんもノーカウントです!」

グリP「不成立! ノーカウントなんだ! ノーカン! ノーカン! ノーカン! はい!」

茜「右手に空き缶があったら、本当に投げてるぜプロちゃん」

グリP「すいません」

茜「唾液を交換しないで何のためのキス友だよ!」

グリP「いや、さすがに女子と唾液の交換は……」

茜「間接キスでスプーンをペロペロした人のセリフじゃない!」

グリP「だって、唾液の交換って。それもう性行為……」

茜「ディープじゃないとキス友の意味がないやい!」

グリP「なあ、茜ちゃん。本当に女子には全員キス友がいて、全員ディープキスしてるのか?」

茜「してるしてる、ちょーしてるよプロちゃん! それが普通なんだよ、世界の常識なんだよ!」

グリP「すげぇ世の中になったもんだなぁ」

茜「何さ何さ、いま以上に性の乱れた時代なんて、一昔にゃ吐き捨てるほどあったね!」

グリP「……まるで見てきたように言う」

グリP「よし、俺も男だ。こうなったら覚悟を決めるっ!」ガシッ

茜「キャッ」

グリP「……………」

茜「…………」

グリP「茜ちゃん……」

茜「……プロちゃん」

グリP「……いや」

茜「………………?」

グリP「ディープキスって、どうやるの?」

茜「…………なん……だと……?」

茜「いやー、本当、相手が優しい茜ちゃんで良かったねプロちゃん、いま茜ちゃんは確信しました、プロちゃんには一生カノジョができません。もうプロちゃんには茜ちゃんしかいないよ、そういう意味では、リアルガチで茜ちゃんに出会えたプロちゃんは幸せ者だね、リアルガチで!」

グリP「…………」

茜「茜ちゃんも女の子だからね、人並みにムードには敏感なんですよ。否、ムードなんて最初からなかったけれどね。それでも一生懸命、プロちゃんに抱きついてソレっぽいこと言ってさ、雰囲気作りましたよ。茜ちゃんは褒められるべきです! それなのにプロちゃんは、それすらぶち壊していくんだね! ファーストキスの思い出って言うなら、演出しようよぉー!」

グリP「いや、だって、分からないし、ディープキスって、……相手の口の中に自分の舌を入れるのは知ってるけれど」

茜「そうだよ、相手の口に舌を突っ込むんだよ! それ以上も以下もないよ!」

グリP「えっと、そこから……は?」

茜「知らない! レロレロすればいいんじゃないの?! 間接キスのスプーンにしたみたいにさ!」

グリP「わ、分かった。ごめん、俺が悪かった。一回落ち着こう。茜ちゃんも、結構えげつない事こと口走ってるぞ」

茜「この期に及んでプロちゃんが童貞力を発揮するから! スカウターが爆発するレベルで!」

グリP「こ、今度こそ、次で絶対に決めるから」

茜「もう、何があっても止めちゃ駄目だからね」

ソファにすわる茜の両肩に手を這わせた、手のひらに収まる肩甲骨がじわりと温かい。あんなにも普段は活動的な茜の骨格が想像以上に細い。彼女は借りてきた猫のように静まっている。――そう、華奢な女子を相手にしている。ひとしれず動悸がして心地は悪い。ジェットコースターを下るような胸の圧迫感。……ふいに茜は不満気な表情でパタリとソファに倒れた。自然と彼女に覆いかぶさる形となる。左腕を置いて身体を支え、右手が茜の腹部に触れた。「んっ……」と彼女の声が漏れる。故意はない。触れるつもりはなかった、唇以外は。

交差する視線、接近と共に熱を帯びる。彼女の頬、熱気は絹のような肌の裏で灯る。それを確かめるように右手が伸びた。茜の横顔を親指がなぞる。もぞもぞと茜の口元が動いている、くすぐったそうだ。流れるように右手が彼女の後頭部を目指した。どこまでも故意はなかった。あるいは本能かもしれない。茜の頭を撫でる。

『なでなで』は日頃から慣れ親しんだ行為だったが、今回ばっかりは反応が違う。茜はバツが悪そうに小刻みに頭を揺らし、表情を少しだけ歪めた。そのうち手のひらが彼女の頭皮を往復する度に「あっ……あっ……」と吐息が聞こえてきた。そういった楽器みたい、いつの間にか胸の圧迫感が消えている。打って変わって、腹の裏がゾクゾクと蠢き始めた。

身体を支える腕を入れ替え、すかさず空いた左手で茜の首筋をソフトに触れた。「にゃー」と鳴いて、身を捩らせる姿は猫そのもの。顎の下に指を二本差し込んでみると、いよいよ茜に睨まれた。湿っぽい瞳が鋭く光って、その視線は逸らせない。物欲しげな表情だ。なでなでやプリンを要求する際に見られる表情、しかし艶っぽさやが追加されるだけで威力は桁違い。飛びつきたい衝動を抑えて深呼吸、それなりに息が乱れている。

上着の下に手を差し込み腰のくびれに直接固定する。一瞬電流が走ったように茜の身体が小さく波打つ。彼女は口端を上げて妖しく笑う。挑発的に目を細くして、大げさに肩で息をして、あからさまに誘われている。腕を上に滑らせると、心地よい肌触りがした。俗に言うシルクのような感触、否シルクをまじまじと触った経験はない。この肌に永遠に触れていたい、それだけは間違いない。

腰からアバラに感触が移り、みるみると茜の肌が外気に晒されていく。彼女に拒む様子はない。「プロちゃんの手、熱いね」なんて呑気に口にしている。ここで当初の目的を思い出した、ディープキスをしなければならない。茜の背中に手を回し、コチラからも身体を乗り出して。顔と顔が触れ合うギリギリ、双眼の造形が細かく映る。彼女の吐息を感じて胸が高鳴った。時間が止まったかのように、何も聞こえない。ただ全神経を茜に注ぐ。…………そこで、背中に違う触感を覚えた。

ツルツルの紙質……、しっかりした用紙。茜の背中にこべりついたソレを剥がして一瞥。婚姻届の三文字。野々原茜という指名と、個人情報が記入されている。……どうだって良い。茜とディープキスをする、その事実は変わらない。「何があっても止めない」そう言ったし、そう言われた。だから、もう止まらない。「茜……」彼女の名前を呼ぶ。返事に彼女はニッコリと笑った。

グリP「いやいやいやいやいやいやいや、続けられるかーい!!」

茜「…………っち、気づいてしまったか」

グリP「なにこれ、茜さん! 何なのコレ?!」ペラペラ

茜「じゃーん! 見ての通り、婚姻届でーす!」

グリP「誰の?!」

茜「茜ちゃんの」

グリP「相手は?」

茜「プロちゃん」

グリP「くぁwせdrftgyふじこlp」

茜「プロちゃん結婚しよう!」

グリP「断る!」

ビリビリビリビリ

茜「あー、破られちゃった。けっこう書くの大変だったのに」

グリP「世間知らずの童貞をたらし込んでキスに持ち込み、既成事実を作ってズルズルと泥沼に引きずり込む計画だったんだな! すべて罠だったんだなぁ! ああああああああああ! くそぅくそぅ! プロちゃんは茜ちゃんのせいで女性不信になりそう!」

茜「まるで不信になる相手の女性がいつか現れるような口ぶり」

グリP「アブねぇ、マジで合体する5秒前だったわ」

茜「まさかキスを提案した当日にホイホイ手を出してくるなんてね、さすが童貞のプロちゃん! しかもキスの前に身体ベタベタ触ってくるあたりは流石だと思う! うん!」

グリP「言い返す言葉がない……」

茜「この様子だとプロちゃんが茜ちゃんの魅力に墜落するのも時間の問題かな」ニヤニヤ

グリP「もう騙されねぇよ! 何回も同じ手が通用すると」

茜「明日、童貞を[ピーーー]服を着てくるから。よろしく」

グリP「止めて! 正直、あの服すっごいムラムラするから止めて!」

グリP「はぁー、もう今日は仕事したくない」

茜「大丈夫。あと残っているのはスケジュール管理と、仕事の割り振りでしょ。はい、どうぞ」ゴソッ

グリP「…………なにこれ」

茜「来週の仕事表と、担当のタイムスケジュール表、まとめといた」

グリP「……………………」ナデナデ

茜「茜ちゃんが優秀でよかったねプロちゃん。お礼は胡麻ラーメンでいいよ」

グリP「ちょっと待て茜ちゃん、よく見たら一部の仕事の担当が茜ちゃんに変わってる」

茜「もー、それぐらいいいじゃん。話戻すけど、早く覚醒SR出してよぅ、この際、完走でもいいからさぁ」

グリP「コッチが本当の目的か、茜ちゃん」

茜「さあねー。さてさて! もう帰ろうプロちゃん、車で送ってってね」

グリP「ダメだ、あまりの疲労感に訂正する気が起きない。本当にもう帰りたい。まさか、すべて計算通り……」

茜「さあ、帰ろー帰ろ―帰ろー! プロちゃんゴーホーム!」

グリP「ぐ、ぐぬぬぬぬ……」

こうして、嵐の一夜が幕を閉じた。
結局スケジュールは手を加えず提出。
その結果がどうなるかは、神のみぞ知る。
金で動く神のみぞ知る。

不幸中の幸いは、キスが未遂に終わったことである。
否、どこまで茜ちゃんが本気だったのかは分からない。
最初から、そんなつもりはなかったのかも、分からない。



以上で終わりです、ありがとうございました。
茜ちゃんを性的に見ているプロちゃんってどれぐらいいるんだろう。
依頼出してきまーす。

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