早坂美玲「teleportation」 (19)
デレマスSSです。
ここは初めてなので、いろいろ試しながら投下してみます。
よろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439046478
1、
本来なら楽しいはずの会話の時間…のはずなのに…
プロデューサーさんが居る事務室へ少し憂鬱な気分で歩いています…
右手にはボイスレコーダー…あんまり明るくない話題を片手に携えて
愛しい人の元に近づいていく…この感覚は…
早く会いたい切なさとこれからの話題の陰鬱さで少し複雑な気分になってしまいます。
なんて思っていると、もう目の前にはあの人の居る扉の前にたどり着いてしまいました。
この時間だとノックしてもプロデューサーさんはいつも反応してくれないんですよね…
まゆは、一息ついて呼吸を整え…音を立てないように入室して、足早に給湯室に向かいました。
音の気配からプロデューサーさんはまゆが入ったことに気が付いていないみたいです。
お湯を沸かしている時間はありませんから…冷蔵庫から今日のお昼に仕込んだアイスコーヒーを2つのカップに注いで…
プロデューサーさんはブラック派だから…まゆ用のガムシロップだけトレーに乗せて…
「お疲れ様です。プロデューサーさん♪」
プロデューサーさんを少し驚かせるように声を掛けて、トレーをプロデューサーさんの机に置いきました。
最近は机の下だったりいろんな場所から他のアイドルたちの奇襲を受けているみたいで…
今回もあまり驚いてはくれませんでした。
以前は後ろから声を掛けたら資料が崩れそうなくらい驚いてくれたのに…少し複雑です。
まゆはアイスコーヒーを手渡して、プロデューサーさんからの依頼が終わったことを報告しました。
その言葉を聞いたプロデューサーさんはパソコンの作業画面を保存して…まゆに向き直りました。
「せっかく…プロデューサーさんと2人っきりなのに…他の女の子の話はしたくないです…」
その報告内容ばっかり気にするプロデューサーさんに少しだけ、ほんの少しだけ嫉妬してしまって…
ついつい意地悪なことを言ってしまいます…。
「はぁ…プロデューサーさんと2人きりの世界なのに…」
意地悪ばっかり言っていたら…プロデューサーさんはまゆの頭を撫でてくれました。
ちょっと単純かもしれませんけど…この温もりで報告できる気がします♪
話題の中心は少し前に小さなプロダクションを吸収して移籍してきた新人アイドルさん…
『早坂美玲』という子の現在と過去のこと…
「はっきり言ってしまうと…美玲ちゃんに必要なのは…『左目』です」
まゆは、まず結論だけを伝えてしまいました。
プロデューサーさんは…とても不思議そうな表情をして首を傾げています。
そうですよね…だって美玲ちゃんの左目はいつも眼帯で隠されているんですから…
「詳細…聞きますか?」
ボイスレコーダーを見せながらプロデューサーさんの答えを伺うと…
静かに縦に首を振ったので、まゆはレコーダーにイヤホンを刺し、片方をプロデューサーさんに差し出しました。
プロデューサーさんが左耳に、もう片方はまゆの右耳に装着して2人で会話を聞けるようにして…
すぐ隣にプロデューサーさんが一緒に居て、同じ音が聞ける嬉しさが心に広がります。
じゃあ、本題に…これは1人の女の子がアイドルになるまでの物語を赤裸々にしている会話…
まゆは…美玲ちゃんのことをどう思っていいのかまだ少し悩んでいます…。
それにしても…自分の声をプレイヤーで聞くのはあまりいいものじゃないです…歌声には少し慣れましたけど。
再生してすぐにプロデューサーさんが会話があまり頭に入ってこないみたいからって…
まゆの考えで解説して欲しいと言われてしまいました。
結局、録音した会話は場面の把握だけで全部に解説を入れることになりました。
2、
早坂美玲ちゃん…まゆと同じ宮城県の出身で、まゆより年下の14歳…
同じキュートに配属されたアイドルで…動物の耳や爪を模したアイテムが好きみたいです。
あと、いつも左目に眼帯を付けていて、室内でもどこでも目深にフードを被って過ごしています。
まゆと同じ今のプロダクションに入ったのは少し前で…レッスンやお仕事は受けるけど…
誰か他のアイドルと会話をしたり、交流をしている姿はあまり見かけません。
そんなことは知ってますよね…でも、やっぱりここからスタートしたかったので…
でも、最初の挨拶のときの表情から、まゆのことは少し知っていたみたいです。
だから、プロデューサーさんは今回の聞き出し役にまゆのことを選んだんですよね?
プロデューサーさん、まゆを選んでくれて大正解でしたよぉ。
あ、横道にそれ過ぎちゃダメですね。
今日、レッスン終わりに女子寮の美玲ちゃんのお部屋を訪ねてみたら…とても驚いていました。
そうですよね…いきなりアイドルの先輩が来たらビックリしちゃいますよね…うふふ…
驚く反応はやっぱりキュートに入ったアイドルさんなんだな~って思いました。
そのあと、少しだけ事情を話して、お部屋に入れてもらうことが出来ましたけど…
プロデューサーさん、内装とかは秘密ですよ?
女の子のデリケートな秘密は守ってあげないとダメですからね♪
でも、美玲ちゃんはお部屋もキュートだってことだけは教えてあげます。
その時は音楽を聴いていたみたいで、ピンクの音楽プレイヤーの先についている水色のイヤホンから少し音楽が聞こえました。
どんな曲なのか聞いてみたのですけど…関係ないって、その時は教えてもらえませんでした。
そこからは他愛のない世間話や女子寮に慣れましたか…なんて普通な話をしていました。
少しお話が進んだ頃…美玲ちゃんが飲み物を用意してくれると冷蔵庫を開けようとしたんですけど…
まゆ、気付いたんです…1回だけ…冷蔵庫を開く取っ手を掴み損ねていたこと…。
そうです…眼帯をしているから…遠近感が分からないのですよね…。
まゆはそれを見て…やっと本題を切り出すチャンスを見つけられたと思って…
「…今、冷蔵庫を開け損ねましたよね?…眼帯をしたままだと…生活が難しくないですか?」
と質問をしました。…で、そのお返事は…
「か、関係ないだろッ!…あ、いや…その…」
という急な怒鳴りで、少し驚いちゃいましたけど…でも、その後に小さく聞こえてきたんです。
「ウチの左目は…ここには無いから…」
その言葉と一緒に見えた美玲ちゃんの表情がとても寂しそうでした…。
まゆは、ここで引いたらもうチャンスは無いと思ったのと、美玲ちゃんが寂しさで震えた小動物のように見えたので…
思い切って美玲ちゃんを胸元に抱きしめて…頭を撫でていました。
美玲ちゃんは、かなり驚いてましたけど…素直に体を預けてくれました…。
少しして…その「左目」のことを教えて欲しいとお願いしたんです…。
とても悩んでいました…やっぱり急に聞き出すのはダメかなって思ったんですけど…
「…教えてやらなくも…ない…」
不器用にそう呟いて…美玲ちゃんの昔話が始まったのです…。
3、
プロデューサーさんはグルーフっていうピンクの狼さんをご存じですか?
え?ダメですよ。流行のアイテムはちゃんと知っておかないと…あとで詳しく教えてあげますね。
簡単に言うと少し乱暴者で可愛いピンクな狼さんのキャラクターです。
飼い主が大好きでかみついたり引っ掻いたりして大けがさせちゃう乱暴な子って言えば、
もう察してくれます…よね?
そうです。美玲ちゃんのスタートはそこみたいです。
そのキャラクターのグッズとかよりも、そのキャラクターになりたかったみたいです…。
で、耳と爪の付いたフードを買ってもらって…
本人は嬉しくてずっと使っていたみたいなんですけど…周りの目はあまり良くなかったんだそうです。
そうですよね…かなり個性的な上に目立つ服装をしているんですから。
周りからの奇異な視線や言葉が気になって…でもそのフードは手放したくなくて…
事務所でいつもしているように…目深にかぶるようになったって言っていました…。
それでも視線が気になって…そのフードを売ってるお店にあった眼帯にも手を伸ばしたんだそうです…。
美玲ちゃんのご両親は好きにすればいいと言っていたようですが…他からの言葉は…かなり厳しかったみたいです。
似合わないとか、変だから一緒に遊びたくないとか…いろんな言葉に敏感な時期には辛い言葉ですよね…。
そんなことが続いて…最終的には孤立しちゃったって言ってました。
前に…「ポッピンパンク」のお仕事の前でしたっけ?事務所でフードを取った美玲ちゃんが言ってましたよね…
「視界が広い! 落ち着かない!」って…あの言葉の意味…きっと…プロデューサーさんなら察してくれますよね?
きっと自分のファッションが好きだけど…信じられないんですよね…だから隠れるような行動をしてしまう…。
そんな自分自身を『弱い』って美玲ちゃんは言っていました。
もう少し時間が進んだある頃…仙台で遊んでいたら…ある日、変な人に絡まれたんだそうです。
まぁ、よく居るナンパ目的の人ですね…
かなりしつこくて、逃げたいのにずっと付きまとわれたらしくて…それを助けてくれた人が居たらしいんです。
ナンパな男に毅然と注意して追い払ってくれたんだそうです。
え?ナンパな男じゃなくて…この会社のスカウト担当さんですか?それは…ちょっと…問題だと思います。
かなりしつこかったみたいで本気で嫌われていましたよ?
…と、とりあえず、話しを続けますね。
その追い払った人は仕事ではじめて仙台に来たみたいで…その後、道案内を頼まれたらしくて…案内をしてあげて…
そのお礼にって飲み物を奢ってくれたと…少し嬉しそうに言ってました。
更にその人は別れ際に美玲ちゃんに向かって屈んで目線を合わせて
「ありがとう、カッコよくて可愛い狼さん。そのファッションセンス、俺は大好きだよ」
って、明るい笑顔で言ってくれたんだそうです。
その言葉がずっと欲しくて…美玲ちゃんは本当に嬉しかったんだ…って照れながら教えてくれました。
いいですよね…そういう言葉…まゆもプロデューサーさんに褒めてもらうの大好きですよ。
特別なときだけじゃなくて、いつでも褒められたら嬉しいんですから…ね?
その翌日…その人の言葉が忘れられなくて…気付いたら、また仙台の案内した付近を歩いていたみたいです。
学校?…プロデューサーさん、そういう細かいことは言っちゃダメですよ。
歩き回ったけど見つからなくて…帰ろうと思ったときに…その人が見つかって…またお話をしたみたいです。
その時に、眼帯のデザインが違うことに気付いて褒めてくれて…また嬉しさが増えたって言ってました。
美玲ちゃんが勇気を出して予定を聞いたら…東京へ帰るのはその日の2日後で、明日も同じくらいの時間なら空いてるって…
次の日も会う約束をして、その日はお別れをして…次の日は仙台にある美味しいあんみつ屋を紹介して…
「お仕事がちょっと上手く言ってないんだよね…」
とその人は苦笑いしていたけど、仕事のことまでは聞けなかったって言っていました。
あと、あんみつはかなり気に入ってくれたらしくて…美味しい時間を過ごせて嬉しかったみたいです。
ちなみに、美玲ちゃんはメロンソーダを頼んだって言ってましたよ。
かなり好きな飲み物みたいなので、知っておいてあげてもいいんじゃないですか?
それにしても…いいですよね…あのお店のあんみつ、本当に美味しいんですよ。
まゆも一緒にあんみつ食べてくれる人が居て欲しいです…2人きりで言うんですから…察してください…ね?
最終日は…その人の帰りに合わせて仙台駅で待ち合わせて…また少しお話をして…
その時もファッションを褒めてくれたって嬉しそうに言っていました。
そして、別れ際に…その人の名刺をもらったんだそうです。
その名刺?…ここまでで分かりますよね?東京勤務で、女の子のファッションに詳しくて名刺を渡す存在…
えぇ…その人が美玲ちゃんの最初のプロデューサーになった人です…。
名刺をもらった日の夜…美玲ちゃんは親にお願いをして…何とか説得して…翌日にはそのプロダクションに連絡をしたって…
まゆも移籍を考えてから、すぐ動きましたけど…美玲ちゃんもそういう意味ではやり手ですよね。
その後は…転向やそのプロダクションが持ってる寮への引っ越しの手続きをして…正式にそのプロダクションの所属をしました。
長くなっちゃいましたね…少しだけお休みしてもいいですか?
ここから…デビューまでの話題も結構長かったので…まゆは長時間録音した音を聞くのは慣れてますけど…
プロデューサーさんは慣れていませんし、整理する時間も欲しいですよね?
あ、あんみつ屋さんの件をメモに入れること…忘れないでくださいね♪
4、
では、再開しますね…プロデューサーさんのお時間を取りすぎてもダメ…ですもんね…。
出来ればずっっっと独り占めしたいですけど……はぁ…分かりました…ちゃんと再開します。
プロダクションに入った美玲ちゃんは、名刺をくれた人のプロデュースを受けることになったと言っていました。
そうですよね…やっぱりスカウトした人にプロデュースされたいですよね…。
その人…実は仙台へは自分の担当を探すためにオーディションの仕事に来ていたけど、そこでは空振りだったみたいです。
美玲ちゃんが入ってくれたのは本当に嬉しかったでしょうね。
プロデューサーさんもスカウトが成功して嬉しかった経験…ありますよね?
まゆの事が1番嬉しいスカウト成功体験だったら嬉しいな…うふふ
プロダクションに入りたての美玲ちゃんは…今まで対人関係を避けていたこともあって、かなり苦労したみたいで…
挨拶に、普通の会話に…出来ることが当たり前と言われることが苦手で…レッスンを受けるのも一時は難しかったそうです。
そんな状態でも担当さんはずっと隣に居て、美玲ちゃんのフォローしてくれていたんだそうです。
「不器用な感じも可愛くていいじゃん」って言われて、照れて引っ掻いたこともあったみたいですよ。
最初の頃で一番思い出に残っていることは…美玲ちゃんが失礼なことを言いすぎて相手を傷つけちゃったことがあって…
その時に担当さんが美玲ちゃんのことを本気で怒ったことって言っていました…。
「相手との距離感が分からないのは仕方ないと思うけど、選んじゃいけない言葉くらいは分かっているんだろ?」
その言葉と担当さんの真っ直ぐな視線に…本気で反省をしたみたいです。
それから…少しずつプロダクションの人たちとも普通に話せるようになって、お仕事も増えて…
あ、モデルのお仕事の話からまゆのことを知ったって言っていました。
同じ宮城県出身のアイドルと言うことで話題になったみたいです。
知らない場所で名前が出るって嬉しいですね…これもプロデューサーさんのおかげです♪
そして更に少ししてから、デビューライブが決まって…その練習が始まったみたいです。
担当さんは美玲ちゃんの魅力を出せるようにって何回も打ち合わせて衣装を決めて…
ピンクの爪に角が生えたフードに少し際どい衣装…あの資料の衣装が出来上がったって言っていました。
「…オマエ、ウチのこと分かってるじゃないか…。な、なんだよッ!わ、笑ってるんじゃないぞこの…ガルルー!」
って衣装で喜んでるのを笑われたから、威嚇しちゃったって笑っていました。
こういう反応は本当に可愛いですよね…ちょっと…放っておけない妹みたいに見えてきちゃいました。
そのライブの日に…すごく緊張しちゃって、朝から物を掴み損ねて落としちゃったり失敗続きだったみたいで…
担当さんがそんな状態の美玲ちゃんに飲み物を…
「距離感が分からなくて失敗するなら、俺が美玲の左目になってずっと支える。だから、安心して楽しんでくれ」
って美玲ちゃんの右手を優しく包みながら手渡してくれた…と教えてくれました。
それだけですごく気持ちが楽になってライブへの緊張感が少し和らいだって言っていました。
そして、ライブの舞台に上がる直前にも優しく眼帯を撫でて…
「今は全力で相手の心を引っ掻くケモノになるときだ!いってらっしゃい!」
と声を掛けてくれて…ライブで大暴れできたって言っていました。
『左目』さん…凄いですよね…あの緊張しがちな美玲ちゃんの背中を上手に押せていて…
まゆもプロデューサーさんの声で頑張れるんですよ…忘れないでくださいね…。
そのライブは成功したけど…そこまでお仕事は増えなかったみたいです。
そして…だんだん近づいているんですよね…プロデューサーさんも知ってる日々が…。
5、
そういえば、ここまで話したときに…美玲ちゃんが聴いていた曲を1曲だけ教えてくれました。
その曲は…有名な人じゃなくて、個人でDJ活動や歌手活動をしている人が作った歌で…
離れ離れになった想い人が相手の傍に居たいって願う歌でした。
すごくストレートな歌詞で…今の美玲ちゃんを表現している気がしました…。
まゆも…もし好きな人と離ればなれになったら…あの曲が心に刺さって何度も聴いていると思います…。
…じゃあ、そろそろ続きを再生しますね…。
そのライブの後…お仕事があまり増えなかったことを聞きましたよね?
そこからこれから話すことの間に、この曲とか担当さんが美玲ちゃんに教えた曲を聴かせてもらいました。
このとき、一休みだと思って録音を一旦止めてしまっていて…全部録れていなくて、ごめんなさい。
お仕事が増えない状態が続いたある日…担当さんの様子が変なことが分かったんだそうです。
でも、美玲ちゃんは言うに言えなくて…お互いにギクシャクしはじめていたみたいです…。
そして…ある日、プロダクションのソファーでファッション誌を読んでいたら…聞いてしまったんです…
プロダクションが大手に吸収されて…アイドルは移籍だけど…職員は解雇だって…
その大手って言うのが…まゆたちのプロダクションです。
美玲ちゃんは、そのショックですぐ担当さんに言えなくて…そのあとは移籍期間中で仕事も無くて…
担当さんとは最後の日まで会うことが出来なかったって言っていました。
その最後の日…美玲ちゃんは、担当さんと2人っきりで話す時間をもらえたみたいで…
思いっきり泣きついて、離れたくないって叫んだみたいです…。
悲しいですよね…まゆもプロデューサーさんとは一生離れたくないです。
その担当さんは、ずっと応援している。誰よりも大好きなファンだから…と、
もう美玲ちゃんとの距離を置いているかのような言葉をかけて突き放そうとしていたみたいです。
でも、美玲ちゃんが見上げたら…担当さんの目は…真っ赤で…顔は…前よりやつれていたって…
担当さんも美玲ちゃんも気持ちは同じだったみたいです…。
その話をしているときの美玲ちゃん…思い出して泣きだしてしまいそうだったので…
また…いえ、さっきよりも強く抱きしめてしまいました…。
移籍じゃなくて引退する道も考えたみたいですけど…アイドルが楽しいっていう経験と、
担当さんが贈った活躍する美玲ちゃんを見たいって言う言葉が、移籍に踏み込ませたみたいです。
そして、このプロダクションに来て…
『左目』が無くなった美玲ちゃんは、また距離感が分からなくなってしまった…みたいです。
これで…美玲ちゃんから聴いたお話は終わり…です。
6、
まゆが言葉を終わらせると…プロデューサーさんはイヤホンを外して…考え出してしまいました。
まゆと2人っきりなのにまゆ以外のことを考えられてしまうのは嫌だけど…
放っておけない美玲ちゃんを考えて、今日だけは許してあげよることにしました。
プロデューサーさんに感想を聞いてみたら…予想通りの展開だったと簡単に答えてくれました。
予想通り過ぎて…とそこから先は声に出さなかったけれど…何か迷っているように感じました。
そんなプロデューサーさんを見て、これから…美玲ちゃんをどうするのか…今のまゆには聞けませんでした。
その後、プロデューサーさんからは、そこまで話を聞いた仲になったのだから、
飽きるまでとか、少しの間でもいいから美玲ちゃんの話相手になって欲しいとお願いされました…。
まゆは二つ返事で引き受けました。
振り返る前は、少し悩んでいましたけれど…やっぱり美玲ちゃんは放っておけない妹みたいで…。
そこまで話をして…その日は帰ることにしました。
帰る前に飲み物を片付けていて…プロデューサーさんが飲み残したストレートアイスコーヒーを少し飲んでみたら、
いつものストレートよりも苦さを強く感じました…。
その次の日から…まゆは美玲ちゃんと過ごせるときは一緒に過ごして…いろいろお話をしました。
お部屋にあるお気に入りのぬいぐるみのお話や、ファッションのお話。
まゆとは好きなお洋服が違うけれど、お互いにいろいろ話し合っているのは楽しいです。
あと、少しずつ美玲ちゃんが笑ってくれるようになってるのも、すごく嬉しいです…。
それに…まゆと一緒のときはフードを外してくれたり…少しずつプロダクションに慣れてくれているのも嬉しい…。
でも、きっと美玲ちゃんが1番の笑顔を見せるのは…と思うとやっぱり心が痛んでしまいます…。
まゆでは美玲ちゃんの『左目』にはなれない…。
美玲ちゃんに教えてもらった歌にある…離ればなれになった人が「聡明な科学者」にならなくても相手の傍に行ける方法…
それを実現出来る人を知っているけど…その人がどう解決するのか…まゆには少し気がかりです。
Last、
例の報告をした数週間後、プロダクションに新しいプロデューサーさんが入るという噂を聞きました。
まゆは…もう誰だから分かった気がしましたけど…当人は、興味が無いみたいです。
翌日の朝にプロデューサーさんに確認をしたら…その人が来るのは明日の午後だと言うことでした。
まゆは、自分のスケジュールと美玲ちゃんのスケジュールを確認して…、
プロデューサーさんにその人と美玲ちゃんを2人っきりに出来る時間を作れるか聞いていました。
自分で思っていた以上にまゆはお節介焼きみたいです。
ちなみに明日は、まゆと美玲ちゃんは一緒に午後までレッスンの日だったので簡単みたいです。
あとは…美玲ちゃんを上手く連れてくるだけ…。
プロデューサーさんも同じ気持ちだったようで、会議室も予約してあると言っていました。
やっぱりまゆとプロデューサーさんはソウイソウアイですね。
次の日、まゆはいつもより少し軽い足取りで美玲ちゃんのお迎えに行き、レッスンに同行しました。
まゆだけが舞い上がっていても勘ぐられてしまうので、レッスンからは真面目に受けて…
そして…クタクタな2人で事務所に向かいました。
事務所に着くと…プロデューサーさんしか居ませんでした。
もしかしたら連絡網か何かで人避けをしてくれたのかもしれません…。
プロデューサーさんから会議室に目線を向ける合図を受け取って…美玲ちゃんの背中を押しました。
困惑している美玲ちゃんを半ば無理やり会議室に入れ…
その少し後…美玲ちゃんの大きな泣き声が聞こえてきました…。
まゆは…プロデューサーさんを見つめていました。
プロデューサーさんはよくやったと言っているように大きく頷いてくれました。
まゆも…素敵な再会に目を濡らしながら頷き返しました。
聞き耳を立てたい訳じゃないから…濡れた目で転ばないように少しゆっくり歩いてドアから離れました。
さらにそれから少し時間が経ったあと…『左目』さんと美玲ちゃんは会議室から出てきました。
美玲ちゃんからは、何で隠していたんだよッ!って怒られてしまいました。
でも、その時の表情は涙でぐちゃぐちゃだったけど、今まで見たことが無い眩しくて可愛い笑顔でした。
ごめんね…って言ったら…すぐに許してくれて…何よりも本当に嬉しそうだった。
『左目』さんとも少しだけ挨拶をしたら…
美玲ちゃんはまゆの横に立ってまゆの左腕をぐっと抱きしめながら『左目』さんに向かって…
「ウチは前よりもオシャレで強くなったんだからなッ!前までと同じじゃ物足りないんだぞッ!覚悟しろよッ!!」
って、力強く宣戦布告をしていました。
そう…フードの奥で籠っていた美玲ちゃんはもう居ないよね…
『左目』さんとまゆにプロデューサーさん…それに…このプロダクションのたくさんの仲間が美玲ちゃんと一緒に居るから。
キュートな元1匹狼さんは、自信に満ちた可愛い笑顔をこれからも輝かせてくれそうです。
終わり
おっつおっつばっちし☆
以上です。
ちなみにタイトルになっているのが作中に出てきた曲のタイトルだったりします。
願わくば誰かの暇つぶしになりますように…
あとはHTML化でしたっけ…やってみます。
乙、ままゆ優しいなあ…
pixivでも見てたけどここでも貴方のSSが見れるとなると楽しみ
この話は読んだことある気がする
>>14
速報がどんな感じなのか知りたくて、
pixivの過去作で投稿体験をしてみようと出してみました。
読んでいただけたことがあるのなら嬉しいです。
このSSまとめへのコメント
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