幼「失礼だろう、男!」
幼「親しき仲にも礼儀あり、だ!」
幼「幼馴染の私に向かって、馬鹿とはなんだ、馬鹿とは!」
男「…あ、あのさ幼…」
幼「何だ?言ってみろ!」
幼「容姿端麗!冷静沈着!」
幼「成績は常に学年1位!」
幼「運動神経は抜群!」
幼「人望も厚く、常にクラス委員!」
幼「そんな私を捕まえて、馬鹿だと?」
幼「まったく!幼馴染じゃなければ、蹴りの一つもくれてやる所だ!」
男「…」
幼「何だ、本当の事を言われて、絶句か?」
男「…まぁ、何ていうかさ」
幼「何だ?」
男「落ち着けよ、幼」
幼「私は落ち着いている!」
幼「冷静沈着と言っただろう!」
男「今、結構熱くなってるよ、幼」
幼「男が急に変な事を言うからだろう!」
男「まぁ、突然馬鹿って言ったのは悪かったよ」
幼「わかれば良いんだ、わかれば」
男(…でもなぁ)
男(歩くの面倒だからって、市内の歩道を全自動にする)
男(って言うのは、ちょっとお馬鹿な子供の考える事だよなぁ…)
・
・
・
友「今日は暑いなー」
男「そうだなー」
友「しかし次の体育の授業、マラソンらしいぜ?」
男「あー。勘弁して欲しいなー」
友「何の拷問だよって感じだよなー」
幼「それなら!」
友「お、幼さん?」
幼「高校全部をドームで覆えば良いのではないだろうか?」
幼「そうすれば、雨の日でも運動場で体育が出来るし」
幼「炎天下でもエアコンが効いた中、マラソンでも何でも出来るだろう!」
友「え?」
男「…」
幼「何だ、友君」
友「幼さん、今、何て…?」
幼「だから…高校全体をドームで覆えば、全て解決するのではないか?」
友「えっ?」
幼「ん?私は何かおかしな事を言ったかな?」
友「…」
幼「男、私はおかしいか?」
男「いつも通りだよ、幼」
友「…」
男「…友、言いたい事はわかるが、今は言わない方が良い」
幼「何だ?二人とも。言いたい事があるなら…」
男「ほらほら、幼。体育始まるよ。女子更衣室に行かないと」
男「男子が着替えられないよ?」
幼「む。男、後でちゃんと話を聞くからな?」
友「…幼ちゃんてさぁ」
男「うん」
友「色々凄いんだけど、何かが決定的にズレてるよな?」
男「まあズレてるね…」
男「本人は割と本気なんだけどね」
・
・
・
友「それにしてもお前、ホント幼さんと仲良いよな」
男「まあねー。生まれた時からお隣さんだし」
友「羨ましいぜ、男」
男「そう?」
友「美人の幼馴染なんて都市伝説だぜ?」
男「都市伝説?」
友「口裂け女と同じくらい?」
男「大げさだなぁ」
幼「だれが都市伝説だと?」
友「!」
男「クラス委員の仕事、終わった?」
幼「あぁ、片付いた」
男「じゃ、帰ろうか」
幼「うん」
友「たまには俺も一緒に…」
男「家の方向、逆だろ?」
友「そうだけどさ」
幼「悪いが友君。私は男と2人で帰りたいんだ」
友「あ、あぁ、そっすか」
男「友、悪いな。また明日」
友「おう、また明日な」
幼「ふん」
・
・
・
男「幼、さっきみたいな態度、良くないよ」
幼「ん?友君の事か?」
男「そうだよ」
幼「ふん。人を都市伝説呼ばわりしたんだ」
幼「あれくらいの仕返しはあっても良いだろう」
男「まぁ、口裂け女は酷いけどさ」
幼「…明日、ちゃんと謝るさ」
男「うん。そうした方が良いよ」
幼「…いくらくらい包めばいいんだろうか?」
男「は?」
幼「こう言った場合、いくら位、包むのが相場だろうか?」
男「はぁ…幼。包まなくていいから」
幼「む。それでは詫びにならんのではないか?」
男「ただ、一言『昨日はごめんね』で済む話だよ」
幼「むぅ。そうか…」
男「難しく考える事じゃないよ、幼」
幼「そうか。では明日、謝罪するだけにしよう」
男「うん、それで良いと思うよ」
幼「っと、部屋に着いたな」
男「それじゃ、後で、ご飯持っていくから」
幼「うん。宜しく頼むよ、男」
・
・
・
男「しかしアレだよね」
幼「何だ?」
男「幼、何でも出来るのに、料理だけは全然出来ないよね」
幼「うむ…気にしてはいるんだがな」
男「まぁ、実家ではやらせて貰えなかったもんね」
幼「過保護なのだ、ウチの親は」
男「ウチは小さい頃から母さんが、教えてくれたからね」
幼「うん。男の作るご飯は凄く美味しい」
男「ありがと、幼」
幼「これならいつでも嫁に出せるな」
男「ははっ。嫁って?俺、一応性別は男なんだぜ?」
幼「ふふっ。そんな事は分かっているさ」
幼「なにせ、小4の頃まで一緒に風呂に入っていたんだからな」
男「そ、そうだね」
幼「ふふ…また一緒に入るか?」
男「ちょ、そう言うのは…」
幼「ふふふ…まぁ、あと2年もすれば、な?」
男「まぁね」
幼「ごちそうさま!」
男「はい、お粗末様でした」
幼「では私は風呂に入ってくるとしよう」
男「俺も自分の部屋に戻るよ」
幼「ではまた明日な、男」
男「うん、おやすみ、幼」
・
・
・
男「ん?校門の前、何か人だかりが出来てるね」
幼「む。何かあるのかな?」
男「ちょっと覗いてみようか」
イケメン「や、すまないね皆。ちょっと通してくれないかな」
男「あれ?誰だろう…転校生かな?」
幼「ふむ」
男「ていうか、リムジンで登校って凄いね」
幼「成金の臭いがするな」
男「幼、思ってても言っちゃ駄目な事があるよ」
幼「む、歯に衣着せぬ性格なのだ」
男「知ってるけどさ」
イケメン「ん?ちょっと、そこの君!」
幼「…」
イケメン「ちょ!君だよ、君!」
幼「…」
男「…幼、呼んでるみたいだけど?」
幼「ん?私の事を呼んでいたのか?」
イケメン「…やあ、美しい人」
幼「私は世辞は嫌いだ」
イケメン「いやいや、お世辞じゃありませんよ」
イケメン「僕の名前はイケメン。今日この学校に転校して来たんだ」
イケメン「よろしければ、お名前をお教えいただけますか?」
幼「幼と言う」
イケメン「…幼さん、名前もお美しい」
幼「名乗られたから、名乗り返しただけだ。他意は無い」
幼「では行こうか、男」
男「あ、うん」
イケメン「ちょ、待ってくれたまえよ」
幼「…何かな?」
イケメン「良ければ、僕とお付き合いして貰えないだろうか?」
幼「薮から棒に何を言う」
イケメン「一目惚れという奴ですよ、幼さん」
幼「断る!」
イケメン「え?」
幼「君は名前と性別以外に、私の何を知っているんだ?」
イケメン「あなたは美しい。それ以外に理由が必要ですか?」
幼「私はそのような考え方の人間を好きにはなれん!」
イケメン「ひょっとして、そのお隣にいらっしゃる」
イケメン「…冴えない男子とお付き合いされているので?」
男「…」
幼「君は自分の容姿に自信があるのか?」
イケメン「まぁ、人並み以上と自負してますが?」
幼「実に馬鹿だな、君は」
イケメン「なっ!」
幼「人の価値は、外見などでは何も測れない」
幼「君などより、男の方が1億倍も良い男だ!」
幼「さぁ、男。もう行こう」
幼「こんな人間の相手をしても、時間の無駄だ」
イケメン「ま、待て!」
幼「何だ?まだ何か言いたい事があるのか?」
イケメン「ぼ、僕はあの××産業の御曹司だぞ?」
イケメン「顔も良いし、将来性もある!」
イケメン「そんなショボイ男と比べられたくない!」
幼「…救いようがない馬鹿者だな、君は」
幼「大体、××産業と言えば…」
男「幼、ストップ。もう止めよう」
幼「む、すまない。ちょっと熱くなってしまったか」
イケメン「…覚えておきたまえよ!」
幼「断る!」
イケメン「必ず後悔させてやる!」
男「…さぁ、幼。授業遅れちゃうよ」
男「君も、職員室に行かなきゃ。初日から遅刻になっちゃうよ」
男「…あと、変な事、考えない方が良いよ?」ボソッ
イケメン「…」
・
・
・
友「うぃーす」
男「おはよう、友」
幼「おはよう、友君」
幼「昨日は変な態度とっちゃって、ごめんなさいね」
友「え、あぁ気にしてないよ、幼さん」
幼「良かった」
友「ところでお前ら、朝から派手にやってたなぁ」
男「ん?」
友「あの金持ちそうな奴とやらかしてたろ?」
男「あぁ、あの人ね」
友「大丈夫なん?」
男「何が?」
友「××産業の御曹司って聞こえたぞ?」
幼「ははは。金持ちを敵に回したからって、何がどうなるものか!」
友「そ、そう?」
男「そんな漫画みたいな事にはならないよ、大丈夫」
友「まぁ、それもそうか」
・
・
・
イケメン「何故ですか!」
教師「何故も何もないだろう」
イケメン「金なら払うと言ってるんです!」
教師「だから、そんな事されても無理なもんは無理だ!」
教師「金を積むから、クラスを自分で決めさせろ!なんて」
教師「お前は馬鹿なのか?」
イケメン「なっ!し、失礼な!」
イケメン「僕は××産業の会長の孫、社長の息子ですよ?」
教師「…だからどうした」
イケメン「一教師の首くらい、どうとでも…」
教師「やれる物ならやってみろ!この馬鹿者が!」
イケメン「ひいっ」
・
・
友「あいつ、c組らしいな」
男「ふーん」
イケメン「そんな訳で、君たちにお願いしたいんだが」
ヤンキーa「はぁ?」
ヤンキーb「馬鹿か、コイツ」
イケメン「なっ…なんだと?」
イケメン「君達は不良なんだろう?」
イケメン「金は払うと言ってるんだ!」
ヤンキーc「金貰って、人襲うとか…漫画かよ!」
イケメン「な、なぜだ…」
ヤンキーa「俺たちゃ確かに不良のレッテルを貼られてるけどよぉ…」
ヤンキーb「やって良い事と悪い事はわかってるぜ」
ヤンキーc「てめえが言ってるのは、悪い事だぜ?」
ヤンキーa「吐き気がするくれぇ悪い事なんだぜ?」
イケメン「くっ!不良ごときが、この僕に…」
ヤンキーb「…なあ、殴られてぇみたいだぜ、コイツ」
ヤンキーa「やっちまうか…」
イケメン「なっ!や、やめ…」
・
・
イケメン「くっ…い、痛い…何故こうなるんだ…」
イケメン「こうなったら、自分の力で…」
・
・
・
男「今日もクラス委員の仕事?」
幼「うん。担任に頼まれている」
男「手伝おうか?」
幼「いや、申し出はありがたいが」
幼「これはクラス委員の私が頼まれた事だから」
男「じゃ、待ってるから」
幼「いつも待たせてしまってすまないな」
男「気にしないで、幼」
幼「小一時間程で戻る」
・
・
イケメン「やあ」
男「ん?やあ、君は…イケメン君」
男「…どうしたの、その顔」
イケメン「気にしないでくれたまえ」
男「俺に何か用事?」
イケメン「まぁ…そうだね」
イケメン「君は幼さんと仲が良さそうだね?」
男「…まぁ、俺と幼は幼馴染ですよ」
イケメン「なるほど、幼馴染ね」
男「ん?」
イケメン「君に金をやろう」
男「突然、何ですか?」
イケメン「僕が自由に使える金が300万ある」
イケメン「それを全部、君にやろう」
男「は?」
イケメン「だから幼さんの傍から消えてくれ」
男「…」
イケメン「僕が見たところ、幼さんは」
イケメン「ずっと傍に居た君の事しか見えていないと思うんだ」
イケメン「まぁ幼馴染なら、それも仕方ないかもしれないね」
イケメン「そんな君さえ居なくなれば…」
イケメン「幼さんは僕の良さに気付くと思うんだ」
イケメン「君の様な冴えない人間よりも」
イケメン「僕の方が幼さんを幸せに出来ると思うんだ」
イケメン「幼さんの幸せを願うなら、君は身を引くべきだ」
イケメン「そう思わないかい?」
男「…」
イケメン「どうだろう?300万だぞ?」
男「…あー、ちょっと落ち着いた方が良いと思うんだけど」
イケメン「僕は冷静だよ?」
幼「…とことん、腐った奴だな、貴様は」
イケメン「!」
幼「例えばだ」
幼「男が私の傍から居なくなったとして」
幼「元々の考え方が腐っている貴様の事を」
幼「何故私が好意を持つ事になるのだ?」
幼「言ったはずだぞ、はっきりと」
幼「私は貴様の様な人間が嫌いなのだ!」
イケメン「ぐぐ…」
幼「金を持っている事を自慢したいようだが」
幼「私と男は…」
男「幼、ストップ!」
幼「構う物か、男。こう言う馬鹿には言ってやらねば!」
イケメン「な、何だ!」
幼「私の実家は○○財閥だ」
イケメン「え?」
幼「貴様が自慢そうに名乗った、××産業は」
幼「○○財閥の一企業だと言う事をわかっているか?」
イケメン「あ、あの…」
幼「さらに、この男の実家は…」
幼「◎◎財閥だぞ?」
イケメン「え!」
男「…あぁ、言っちゃった」
幼「私達は、個人的な事情の為」
幼「自分達が金持ちである事を隠して生活している」
幼「だが、貴様が金持ちである事を利用して」
幼「私達の生活を乱そうと言うなら…」
幼「…私は容赦しないぞ」
イケメン「…す、すみませんでした」
幼「さっさと去れ!二度と顔を見せるな!」
幼「ふぅ…やっと溜飲が下がった」
男「幼、言い過ぎだし、やり過ぎだよ」
幼「金の事もそうだが」
幼「あいつは、決して聞き流せない事を言った」
幼「男の事を冴えない男だと」
男「まぁ、冴えないのは本当だし」
幼「良く知りもしない人間の事を、悪し様に言う」
幼「私が最も嫌いで許せんタイプだ」
男「まぁ、彼も幼の事を好きになっての暴走だし」
男「許してあげようよ」
幼「…男がそう言うなら、まぁ」
男「彼が今の事を他人に話す事はないだろうし」
男「平穏に暮らせれば、それで良いじゃん」
幼「そうか」
男「それじゃ、そろそろ帰りますか」
幼「そうだな、帰るとするか」
・
・
・
男「今日も朝から暑いなぁ」
幼「だから最初からハイヤー登校にしようと言ったのだ」
男「そう言うのは駄目だって、入学前に話したろ?」
幼「それはそうだが…」
幼「この暑さはいかんともし難い!」
男「猛暑日だなぁ、今日は…」
幼「そうだ!歩道にエアコン機能を付ければ良いのではないか?」
男「エアコン?」
幼「足元から、夏はひんやり、冬はあったか…どうだろか、男?」
男「何ていうかさぁ」
幼「うむ」
男「幼はたまに馬鹿だよね」
幼「馬鹿とはなんだ!」
男「落ち着け」
幼「男がまた突然変な事を言うからだろう!」
幼「容姿端麗!冷静沈着!」
幼「成績は常に学年1位!」
幼「運動神経は…」
男「ストップ!」
幼「何だ?私の口上を邪魔するのか?」
幼「随分と偉くなったものだな、男」
男「あのー、そう言うのいいから」
幼「む?」
男「言わなくても、幼が凄いってのはさ」
男「俺が世界で一番わかってるからさ」
幼「む、その言い方、含みがあるようにも聞こえるな」
男「含ませてる訳じゃないんだけどね」
幼「む?」
男「まぁお互いの家のしきたりとは言えさ」
男「生まれた時からの許嫁で」
男「ずっと一緒に育ってきたんだ」
男「幼の事は何でも知ってるさ」
男「高校生活の3年間だけ、実家から出て、アパート暮らし」
男「急にそんな事言い出した理由もわかってるつもりだよ」
幼「…」
男「親が決めた許嫁としてじゃなくて」
男「普通の男女として、過ごしたかったんだよね」
幼「男、一つはっきり言っておくぞ」
男「何?」
幼「私は、家のしきたりとか全然関係なく」
幼「男の事が好きだぞ?」
男「…俺だってそうだよ」
幼「ふふ。こう言う事は言葉にすると、存外照れくさい物だな」
男「そうだね。卒業するまでのあと2年、宜しくね」
幼「まぁ、2年後には結婚するから」
幼「正確にはこれからもずっと、だがな」
男「…うん、こちらこそ、幼」
幼「でも、男」
男「何?」
幼「…市内全域の歩道を全自動アンドエアコン装備」
幼「いつか実現させるわよ」
男「ホント、幼はたまに馬鹿だよね」
幼「なんだと?」
男「そんなちょっとズレてる所も含めて」
男「愛してるよ、幼」
幼「そ、そう言う事を不意に言うのは卑怯だ!」
幼「あと、馬鹿と言われた事を許してはないぞ!」
おわり
これで終わりです
読んでくれた人が居たら嬉しいです
次スレは
幼馴染「ペロッ…これは…青酸カリ?」男「違うよ」
ってタイトルで立てたいと思います
見かけたら読んでくれると嬉しいです
では。
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