雪ノ下「比企谷君が記憶喪失?」 (15)

下校時


戸塚「でね、その時に僕がバックハンドでこうズバッとね」


八幡「やっぱり部長やるだけあって部内では敵なしだな?」


戸塚「でも、八幡や三浦さんには敵わないよ。」


八幡「謙遜しなくていいぜ。ま、三浦はともかく俺よりは強いだろ?第一、文化部の俺じゃ3分が限度だからな。」


戸塚「うーん。やっぱり、勿体無いよ!見学くらいでいいからたまにはテニス部に遊びに来たら?」


八幡「まぁ、どうしてもって言うなら」


戸塚「うん!約束だよ!」


八幡「お、おう///」


戸塚「?あれ見て!」


八幡「随分スピード出してるな」


戸塚「こっち来た!!」


八幡「くそっ!」


ドンッ!!ゴーーン!!


戸塚「いたた、うわっ、わ、ワゴンの前部座席が無くなってる!!き、救急車!」


八幡「…」


戸塚「八幡!!」


八幡(景色がグワングワンしてる。死んではなさそうだ。戸塚…良かった)


戸塚「どうしよう!八幡が息してない!」


八幡(まだしとるがな!!ってだんだん眠くなってきた……こま……ち…)


戸塚「もしもし!……救急です!…総武高と駅の間のサイゼリアの通りです!事故があって!運転してた人と友達が!!……分かりませんグチャグチャで!!……違います!……何人乗ってたか分かんない!友達が巻き込まれて!……だから分かんないていって言ってるじゃ~~

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2日後


雪ノ下「行きましょ。由比ヶ浜さん。」


由比ヶ浜「うん。…はは、ちょっと怖いかな。」


雪ノ下「一番怖がってるのは比企谷君のはずよ。…そんな顔してちゃだめよ。」


由比ヶ浜「そう…だよね。うん。へへ。」


雪ノ下「その調子よ。……じゃあ」


ガラッ


雪ノ下「比企谷君?」


小町「あ、面会ですか?ありがとうございます。差し入れまで持ってきてもらって。」


八幡「!」


小町「ほら、お兄ちゃん。挨拶して。」


八幡「ゆきダルマ?」


雪ノ下「は?」


由比ヶ浜「ん?」


八幡「ゆきのした!ゆいがはま!」


小町「ぷっあははっ、わざとじゃないんですよ?ちょっと打ち所悪かったらしくって。」


雪ノ下「あ、その。私のこと覚えてるの?」


由比ヶ浜「記憶喪失って聞いたんだけど…」


比企谷「そうだけど…いっぱい、いったい誰から聞いた?」


雪ノ下「平塚先生なのだけれど?」


比企谷「ちっ」


小町「まぁ、一概に記憶喪失って言ってもエピソード記憶は大丈夫みたいですから心配してるようなことはないですよ。ホントゴミいちゃんが心配かけて!」


比企谷「……ま、大丈夫だから帰っていいぞ」


由比ヶ浜「エピソード記憶?」


雪ノ下「いわゆる思い出ってやつよ。」


由比ヶ浜「でも記憶喪失って」


雪ノ下「記憶にも色々な種類があるの、思い出以外の何かの機能を損傷したということよ。」


比企谷「ユキダルマ!」


小町「ゴミいちゃん、もう黙って。」


比企谷「うっ……分かったよ。」


小町「話が早くて助かります。…ええとですね、喪失したのは、いわゆる手続き記憶とか習慣記憶ってやつですね。あとは軽い失語症ですかね、今のところは。」


雪ノ下「今のところ?これから酷くなるかもしれないというの?」


小町「可能性は」


由比ヶ浜「シツゴショウ?」


雪ノ下「ああもう。由比ヶ浜さん。先生をお母さんと間違えて読んだことはある?」


由比ヶ浜「ななな、なんで知ってるの?」


雪ノ下「割と誰にでもあることよ。」


由比ヶ浜「あ、そうなんだ。」


雪ノ下「その現象がしょっちゅう、ないしはずっと続く病気よ。簡単に言うと。実際には失語症は言語野における諸障害の総称で、大きく分けて3つの〜〜小町「はい、ストーップ」


雪ノ下「ああ、ごめんなさい。つい、熱くなって」


八幡「ここ病院だぞ?」


由比ヶ浜「そうかぁ。じゃあ、私の名前は?」


八幡「由比ヶ浜」


由比ヶ浜「こっちは?」


八幡「雪ノ下」


由比ヶ浜「じゃあ、こっちは?」


八幡「小鉢!…こほん、小町…」


小町「あまり兄で遊ばないでください。」


由比ヶ浜「あ、ごめんなさい。」

小町「……」


雪ノ下「そんなことより、重要なのは習慣記憶の障害ね。」


小町「そうですね。最初はトイレも使えなかったんですよ。まさかこの歳で兄のトイレの世話をするとは思いませんでした。お母さんすぐ帰っちゃったし。」


八幡「ばっ、それを言いふらすなよ。袖に、それにすぐに使い方覚えたろ!」


小町「でも、服のボタンはとめられないけどね?」


八幡「っ…」


小町「はぁっ、退院したら大変だなぁ。お兄ちゃん?」


八幡「悪かったな。」


小町「ふふ、でも安心してね?小町、お兄ちゃんが要介護になっても、お風呂の世話からトイレの世話まで笑ってしてあげるよ。何年でも何十年でも……」


八幡「そこまで酷くねえよ。」


小町「例えばの話だよ。」


八幡「縁起でもねぇ。」


雪ノ下「……以外と元気そうで安心したわ。」


由比ヶ浜「……」


八幡「おう」


雪ノ下「帰りましょ?由比ヶ浜さん。」


由比ヶ浜「……うん」


八幡「じゃあな」


雪ノ下「さようなら」由比ヶ浜「バイバイ」


小町「ありがとうございました。」

数日後


戸塚「やっはろー」つマッカン


八幡「戸塚!」


戸塚「もう、大きい声出しちゃダメだよ。」


八幡「ごめん」


戸塚「明日抜糸なんでしょ?」


八幡「おう。」


戸塚「学校すぐ来れるの?早く普通に会いたいな。」


八幡「ああ来週、月曜から普通に登校するぞ。元の記憶を取り戻すより、うま、うば、うわばき、……新しく覚える方が早えとよ。」


戸塚「良かった。じゃあ、月曜日、朝迎えに行くね?」


八幡「マジで!?」


戸塚「もうっ、だから静かにしないと、」


八幡「わりっ」


月曜日


ピンポーン


八幡「戸塚ァ!!」


戸塚「ひいっ!……」


八幡「……おはよう…その、ごめん。」


戸塚「もうっ、びっくりしたんだから」


八幡「よいしょっと」


戸塚「自転車乗って行くの?危ないよ、やめた方が」


八幡「いや、荷物だめ、荷物だけ載せて引こうと思ったんだけど……」


戸塚「そう、なら大丈夫かな」


八幡「あ、、」


ガッシャーン!!


戸塚「カバン持とうか?」

八幡「ああ、頼む。」


戸塚「うん。いつでも僕を頼ってね?」


八幡「ちょっと待ってろ、ノート全部玄関に棄ててくから」


戸塚「え、大丈夫だよ。」


八幡「いや、戸塚に負担をかけるわけにはいかないからな。(二の腕に余計な筋肉ついたら嫌だからな)」


戸塚「気を遣わなくてもいいのに。友達でしょ?」


八幡「いや、俺は教科書に書き込む派だから。」


戸塚「嘘…板書綺麗にとってたの見たよ?」


八幡「今日からそうする。」


戸塚「気を遣わなくていいのに……」

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