男「つ、付いてくんなヨ」女「いやです!」 (18)

女「そ、そんな…」

男「いいか、俺には女一人を食わせていくほどの器量も金もない、おまけに周りにじろじろ見られることに耐え切る自信もない!」

女「ぅ…」

男「そ、それと…」

―――その二つの大きなメロンを前にして理性が欲望に勝つ自信も…ない。

女「? それと、なんですか?」

男「う、うるさい! とにかくダメなものはダメなんだ!」








※書き溜めてないから遅くなる、適当に付き合ってくりゃれ?

時間は少しだけさかのぼり…

――1時間前――

男「な、悪くない話だろ?」

友「んん…いやでもなあ、俺もそんな突飛な話されたってよお」

男「お前ならまだ結婚もしていないし身軽かと思ったんだが…ダメな理由でも在るのか?」

友「じ、実はさ…彼女、できたんだよ」

はにかみながらそう伝えてきた友に口先だけの幸せを祈り、背を向ける。
コレで何度目だ?「外の世界にいこう」って誘って断られるのは?50回目から数えていないぞ。
街中の顔見知りという顔見知りに声をかけて誘ってみたものの、先ほどと同じように断られ続けている。そろそろめげそうだ。

「あ、あの!」

明らかに男ではない声に俺は反応を示さない。
なぜなら俺は…

「あの! 聞こえてますか!?」

女の友達なんて一人も…

「あのぉ!!!」

男「うわぁ! な、ナンデスカ?」

いきなり大声を出されて顔を覗き込まれたら裏声が出てしまうのも不可抗力だ。
決して女になれていないからなんてわけじゃない。大丈夫。

女「先ほど話しておられたことについて興味があるのですが…よろしければ」

男「あ、ああごめん…その件ならもう片付いたからいいんだ、わざわざこえかけてくれたのにごめんねそれじゃ」

早足で去ろうとする俺の首根っこを以外に強い力で引っ張られたため後ろにひっくり返る。
見上げる形で女をまじまじと見ると、深い翠色の目と綺麗なブロンドの髪が肩甲骨辺りまで伸びているのが目に入った。身なりもお嬢様のようで靴は綺麗なヒールを履いている。
この街でこんな格好をして外を出歩いているのは…。

女「あの、外の世界に向かわれるんですよね?」

男「あ? ま、まあそうだけど…」

女「私もご同行できないでしょうか?」

男「ダメだ、絶対に。いろんな意味で、お断りだ」

こうして数時間ほどこの女と道路の真ん中で言い合っているこの状況。
誰か助けて…と思ったそのときだった。

女「私…もう自分の人生を自分で生きて行きたいんです! そのためならなんでも…します」

男「お前…それ一体どういう」

「そこの男! お嬢様になにをしている!?」

今度はなんだ…?

男「こっちが何してんだだよ…って、ぇぇぇ」

裏声が出なかった代わりにうめき声が出てしまうのも不可抗力だろう。
怒鳴られたと思ったら一瞬で装備をした軍人風の人間に取り囲まれてしまったのだから。

女「さ、下がりなさい! このお方は私が呼び止めたのです!」

男「そうだそうだ! ってかこの兵隊、お前やっぱり街長のとこの…」

女「すみません、迷惑をおかけしてしまって…」

男「お前には俺に絡んだ時点でそこに気づいて欲しかったよ…」

どういう世界観

母ちゃんにメールで送ってろゴミ

兵隊A「とにかく、お嬢様を呼び戻すよう命じられたのでな」

兵隊B「お譲とともにお前にも来てもらうことになる…悪いがな」

男「口先だけの言葉何ざいらねーっての、本当に面倒なやつに巻き込まれた…そして未だに状況が飲み込めていないんだけど?」

女「す、すみません…でも私」

男「まあもう日も暮れる、確かに女の子は家に帰らないといけないからな、面倒だが俺も付いていってやる」

兵隊A「まあすぐそこだ、いくぞ」

両端を兵隊のごつい腕に挟まれ、街の丘の上に建つ城のような家に向かって歩く。
周囲の森を切り開いて建てられたこの家はこの街の長が住む家で、その昔にこの土地を開いた一族の末裔であるとかなんとか。
でもこのご時勢、もうそんな田舎な事情は廃れていて他の街や国では政府がじきじきに管理をしている。
いうなればこの街で最高の権力を持つ最高政府の家に不本意ながら御呼ばれしたようだ。
さらに言えば恐らく跡取りとなるであろう娘に絡んだ不貞な輩としての強制連行なのだが、事実は受け入れてもらえるのだろうか。

そんな不安がピークを迎える頃、丘を登りきり、俺の背丈より大きな門の前の守衛に挨拶をし一行が敷地内へと入る。
もう日はすっかり暮れていた。


>>6
そのうち分かるようにするからまっててくりゃれ

>>7
ゴミのすれ見てくれてうれしいぞよ

男「なにこれバーン城?ノイシュヴァンシュタイン城?」

兵隊A「一応民家だぜ?警備員と称した元軍人が100人ほど駐屯してるがな!がはは!」

いや笑えねえよ。これ俺許してもらえなかったら楽しいリンチパーリィー始まっちゃうじゃん。

女「事情を言えばお母様もお父様もわかってくれます、申し訳ありません…」

男「…まあいいよ、お前の気持ちが分からないわけじゃないし、そんな申し訳なさそうにされたら俺が悪者みたいだし」

兵隊B「器がでけぇな少年、俺の部下にならねえか?」

男「おことわりーっと、このでかい扉の向こうにいんのか?」

女「うん、二人ともありがとう」

先ほどまでぞろぞろと引き連れていた兵隊は家に入るとそれぞれの部屋へと戻っていき、最後まで付いてきたのは最初の二人だけとなっていた。
その二人に律儀に頭を下げる姿はとてもじゃないがお嬢様には見えなかった。

女「男さん、もう少しだけお付き合いください」

男「お、おお…お付き合いしてやるよ」

兵隊B「何照れてやがる」

男「うるせっ! おら、行くぞ!」

逃げるように手を引いて扉を勢いよく開く。
縦に20mはあるほどの部屋の中は煌びやかで天井も高く度肝を抜かれた。俺の家とは大違いだ。
ひるんだ心中を見透かされないように反り返るほど胸を張って歩く。隣を歩く女は少し気まずそうだった。

「ふむ…来たか」

上座に座る白髪のおっさんが立ち上がり、俺と女に視線を向ける。
心なしか俺を見たときに少し笑っていたような気がしたが、なんだろう怖い。

「公、まずは女に事情を聞かなくてはなりませんよ」

静かに、しかし有無を言わせぬ声色でおっさんにそう告げたのは隣の席についていた綺麗な女性だった。
背格好はまさに隣の女そのもので、すぐに親子であることが伺えた。おっさんの遺伝子大丈夫ですか?おっさんだけ筋肉盛り上がりすぎてませんか?

「して、娘よ。 何ゆえ晩餐に遅れたのかその口で申してみよ」

女「申し訳ありません。こちらの男性を私が無理矢理呼びとめて話し込んでいました。私の責任です」

男「まちがいないでーす」

少し逡巡する様子を見せたおっさんは一息ついて席に座る。
座って俺と身長変わらないくらいってどういうことなの?種族から違うの?

「公、よろしいので?」

「ああ、そこの。 名を名乗れ」

男「男といいます。さっきの話は間違いなく、さらに俺個人の意見を言えばもう帰りたいんですけどいいですか?いいですよね?」

「許すと思うか? 集団の輪を乱して抜け駆けしようとする若き反逆者を?」

つぅ、と嫌な汗が背中を垂れる。
こいつ、どこまで知っている?

「まあ、お座りなさい。もうすぐ夕餉が運ばれてくるわ」

奥さん、ありがたいお誘いだけど今回ばかりは嬉しくないお呼ばれだよ。

女「す、すみません男さん」

男「…まあ仕方ねえ、ここで帰るなんて言ってみろ?その場で土に還らせられるわ」

小声でそうやり取りをして、俺は地獄の晩餐会に望む決心とともに手前のいすを引いた。

領主父「先に名乗ろう、俺がこの土地の実質的な管理を担当している領主父だ。他国で言う自治政府の役割を俺がこなしている」

領主母「おかげでここは今でも自治区として外からの介入を防いでいるのです、申し送れましたがその子は私の娘で大事な跡取りです。ご無礼をお許しくださいね」

男「いや、むしろこちらこそお許しくださいって感じで…はは」

女「父上、今日のことは謝ります。ですから男さんは」

領主母「女、これはもう私たちだけの話ではなくなっているの。領主と一人の男性の尋問も兼ねている、あなたにそれをとめる権限はないわ」

女「そんな…」

領主父「では、単刀直入に聞こうか少年。外の世界に行こうとしているな」

男「ええ」

領主父「なぜだ?それを重罪だと知らぬわけではなかろう?」


男「そうですね、逆に聞かせていただきたいが、ご領主殿はなぜこの世界の中にとどまることを善しとする?」

領主父「守るものが在ることだけが理由だ」

男「なら俺に問いをすること自体が間違っているじゃないですか。守るものがなければご領主も俺と同じことを考えるということですよね?」

女「お、男さん…」

領主母「あら、どこかの誰かさんが若い頃にそっくりね?」

領主父「ふふはははは!その通りだな!少し試させていただいた、すまないな少年よ」

男「いえ、本気だということが伝わって何よりです」

領主父「ここで考えを曲げるようならレッツパーリィーするところだったぞ。最近は吹聴するだけして行動に移さず住民を扇動し国力を下げる馬鹿が多いと聞くからな」

領主母「たちが悪いことこの上ない、男気もないタマナシめが」

女「お、お母さん…」

男「それじゃあ、俺はもう帰っても?」

領主父「急ぐことはなかろう?夕餉を食べていくがよい、それと」

ちらり、と女を見やるとまた俺に視線を戻しこう続けた。

領主父「守るものがあってなお、志を貫ける男がいるやも知れぬからな?」

男「?」

領主母「女の話もまだですし、もう少しお付き合いくださいまし?」

その言葉に俯く女が搾り出すように声を出す。

女「す、すみません…ご家族の方もいらっしゃるのに…」

男「あー、……いや、その心配はない」

女「え?」

男「じゃあ、もう少しだけお付き合いさせていただきます、ご馳走になりますね」

領主父「うむ」

そして数分後運ばれてきた料理を前に俺は礼儀も何もを無視して食事に没頭した。

食後、すっかりとまったりしたムードになった食卓で領主父が口を開く。

領主父「今でこそそのような飯が食えるが、俺の上の世代はひどいものだったと聞く」

男「まだ、異界の存在が発見されて間もない頃でしたからね、戦いも壮絶だったと文献に残っています」

領主父「俺の父親も戦死だった、敵をとろうとそればかり考えていたらいつの間にかこんな歳だ、もう夢のまた夢だろうな」

男「敵…ですか、俺もその気持ち分かる気がします」

領主父「ふむ、親か?」

男「…わからないんです、生まれて物心付いた時には教会で。神父の話じゃ真冬の寒空の下、門前に置かれてたそうです」

途端、女が凄い勢いで俺に頭を下げているのが視界の端に映った。

女「わ、私そうとは知らず酷いことを…先ほどの無礼お許しください!」

男「き、急になんだよ?なんのことだよ?」

女「あの、ご家族のこと…」

領主母「女、すまないけれどお茶を汲むのを手伝ってあげてくれない?給仕に新入りも入ったし顔も見せてきなさい」

女「え? あ、は、はい!」

ぱたぱたとキッチンのほうへ小走りで向かう女を眺める。



領主母「すみません、あの子世間知らずな上に子供っぽくて頑固で」

領主父「かわいいだろう?」

男「はあ、まあこの辺じゃ見れない顔ですよね。やっぱり他国からの血が?」

領主父「俺はこの土地の人間だが、こちらが他国出身でな。ハーフというやつだ」

領主母「まだこの人が異界の化け物を相手に取って旅をしていた頃です、私の国に現れる化け物を退治してくださったのは。一目惚れでした」

なにいちゃついてんだリア充かよ、娘いないからって客人の前でのろけんじゃねえ。

男「というか、外の世界へ行っていたんですね」

領主父「ああ、俺もこの一族の末裔だから厳しく監視されていたがな。敵を取りたい気持ちと好奇心の塊だった俺は全てを捨てて飛び出した
だが、こいつに会って娘ができて。もう俺は俺だけのものじゃないことに気づいてからは身動きが取れなくなっていてな、それが嫌じゃない自分がいることにも気がついてしまったのだ」

男「若気のItaryっすね」

領主父「ああ、だから俺にはお前を止めることはできん。ましてや境遇を聞いてしまったからな、領主である前に俺は一人の男だ。
領主としてはお前を止めなければならないが、男としてはお前を応援しなければなるまい?」

領主母「…変わりませんね、公」

男「じゃあ、正門開けてくれんのか?外にはばけもんがうようよしてんだぞ?」

領主父「なに、俺もそろそろ腕を確かめたい頃合だったからな」

男「…感謝するよ領主様」

領主父「娘を、頼んだぞ」

男「ああ……ん…?へ?なんて?」

領主母「男に二言はないですよね、ありがとう少年よ」

男「いやまてよおかしいだろ?先まで娘大事大事オーラ満載だっただろお前ら?どうした?アルツハイマーか?」

領主父「小さな世界の中で育っては小さな人間に納まってしまう。それは女とて同じことだ」

男「かもしれねーが、何で俺に」


領主父「嫌ならかまわぬ、俺の追ってから逃げつつ正門以外のあのバカみたいに高い塀をよじ登って無傷で外に出て化け物たちと渡り合うがいい」

領主母「正門の守りをもっと固めないといけませんね!」

何で活き活きしてんだよこいつらサイコパスか?

男「おまえら、娘が可愛くねーのか!?会って2時間程度の男に預けるなんて正気じゃ…」

領主父「俺は領主だぞ?民のことは知っているさ、お前のことも。お前の親のこともな」

男「な…に!?教えろ!教えてくれ!」

領主父「娘は?」

領主母「返事は?」

男「てめえらああああああ!」

女「何の騒ぎですか?」

男「てめええええ!元はといえばてめえがああああ!!」

女「い、いひゃいでふ!ほっぺはいひゃいえふうう」


そんなこんなで、この日俺は初めて教会以外の柔らかなベッドの上で睡眠をとることとなった。
クソ神父、今頃ジャックダニエルが一本空いているころか?アル中も救われるなんて神はなんて寛大なのだろうか。おお神よ、哀れな子羊を何事もなく外に送り出してくれれば嬉しかったです。

寝る、また来るから書かせてくりゃれ

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