春香「寝ているプロデューサーさんと」 (23)
春香「ただいま戻りましたー……って、あれ?」
P「……zzz」
春香「珍しい。プロデューサーさんが寝てる」
P「……zzz」
春香「……事務所には、私とプロデューサーさんの他は誰もいない」
P「……zz」
春香「そして、プロデューサーさんのデスクに飲みかけのペットボトル……」
P「…………」
春香「ひらめいた」
P「待てぃ」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428056513
P「何をだ、何を思いついた」
春香「あはは。やだなぁプロデューサーさん、起きてたならそう言ってくださいよ」
P「ごまかすな。今バッグにしまったものはなんだ」
春香「ただの栄養ドリンクですよ?」
P「すげえ不穏な響きなんだけど」
春香「まあまあ、気にしない気にしない」
春香「だいたい、職場で寝てるプロデューサーさんも悪いんじゃないですか?」
P「それを言われると弱いな……最近忙しくてまともに寝てないから、つい」
春香「だからって、体を壊しちゃ余計に酷いことになるんですよ?」
P「うーん、それもそうなんだけどなぁ……」
春香「じゃあ、栄養ドリンク飲みましょうか」
P「遠慮する」
春香「楽になりますよ?」
P「断固拒否する」
春香「ちぇっ、また使えなかった」
P「……怖いからあまり追及したくないが、本当にただの栄養ドリンクなのか?」
春香「…………」
P「嘘でもいいから肯定してくれよ……」
春香「いやですねー、本当にただの栄養ドリンクですよ。嘘ですけど」
P「嘘つくなよ」
春香「どっちなんですか」
春香「ま、実際栄養ドリンクですよ。少なくともそう言うことはできます」
P「つまり、栄養はあるが栄養ドリンクではないわけだ?」
春香「そうかもしれませんね」
P「……違法じゃないよな?」
春香「そりゃそうですよ。私がどーやって違法の薬を入手するって言うんですか」
P「いやほら、番組共演者とかから?」
春香「万一貰っても飲みませんよ。そんなことで夢をふいにしたくないですし」
P「…………」
P「……まあ、色々気にはなるが違法でも脱法でもないならいいや」
春香「あれ、てっきり没収でもするのかと」
P「そのつもりだったが、さっきの台詞聞いて気が変わった」
春香「そうですか」
P「ところで、収録はどうだったんだ?」
春香「そうですね、自分では結構うまくやれたと思いますよ」
P「そうか。お疲れ」
春香「はい。でも私よりも、プロデューサーさんの方が疲れてそうですよ? 本当に大丈夫なんですか?」
P「大丈夫だって」
春香「ならいいんですけど……」
春香「あ、そうだ。はいこれ、クッキーです」
P「お、ありがとう。じゃあ遠慮なく……」サクッ
春香「味はどうですか?」
P「ん、美味い。いつも通り美味しいよ」
春香「えへへ……ありがとうございます。あ、今お茶淹れてきますね」
P「ああ」
春香「~♪」パタパタ
P「…………」サクッ
P「…………」ボリボリ
P「…………」ゴクン
P「あれ? 春香のバッグがない……」
P「……ハッ!?」
春香「お茶が入りましたよー」
P「あ、ああ……ありがとう」
春香「はい、どうぞ」
P「あ、後で飲むよ」
春香「? 何言ってるんですか、クッキーで喉渇きましたよね?」
P「い、いや……」
春香「もう、だめですよ? 食物の消化には水分が要るんですからちゃんと飲まないと……ほら」
P「……何を入れた?」
春香「? お茶ですけど……」
P「『お茶に』何を入れた?」
春香「……チッ」
P「今舌打ちした! やっぱり何か入れたな!?」
春香「シテマセンヨーイレテマセンヨー」
P「怪しすぎるわ! そんなお茶絶対飲まねーからな!」
春香「……こうなったら!」ガシッ
P「な!? や、やめ……!」
春香「実力行使ですよ! 実力行使!」グイッ
P「んーっ!?」
春香「ほら! 口開けてください!」グイグイ
P「んーっ! んーっ!」
春香「ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらァーッ!!」グリグリ
P「んんんーッ!?」
P「ぶはっ!」
春香「今だ!」
P「んぐっ!?」ゴポッ
春香「ふふふ……」
P「んっ、んぅ……」ゴプッ…ゴプッ…
春香「ふぅ……まったく、手間をとらせないでください」
P「…………」タプン
春香「ほら、早く飲み込んで――」
ガシィッ!
春香「っ!?」
ズキュウウウン!
春香「むぐーっ!?」
ゴプッ……ゴプッ……
春香「むーっ! むーっ!」
P「…………」
ゴプッ……ゴプッ……
春香「ん……ぅ……」
P「…………」
ゴポッ……
春香「…………」
P「ぷはっ……はぁ……はぁ……。『お茶』は……おまえ自身がくらえッ!」
春香「…………」
春香「…………」ゴクッ
P「……あ、あれ?」
春香「…………」ゴクッ…ゴクッ…
P「…………」
春香「…………」ゴクン
P「…………」
春香「…………」
P「…………え、えっと……」
春香「……人がね……せっかくね……最近疲れてるプロデューサーさんを気遣ってね……」
P「うん、うん……」
春香「栄養ドリンク買ってきて……でもなんか気恥ずかしいからこっそり飲み物に混ぜようと思ってね……」
P「うん、うん……」
春香「気づかれたから適当に危ないクスリのふりして誤魔化してね、ようやくお茶に混ぜて飲ませられると思ったんですよ……」
P「うん、うん……!」
春香「なのに……なのに……この仕打ちですか……」
P「すまなかったぁぁぁ!!!」
春香「私の……ファーストキスが……うふっ、うふふふ……」
P「すまん……ほんっとうにすまん!」
春香「いいですよー……うふふふ……ファーストキスはお茶の味でしたー……あはははは……」
P「すまない……なんでもするから許してくれ……」
春香「本当ですか?」
P「え、あ、ああ……」
春香「じゃあ、キスしてください」
P「えっ」
春香「聞こえませんでしたか?」
P「ああ、だからもう一度言ってみてくれ」
春香「キスしてください」
P「聞き間違えであってほしかった……」
春香「まさかとは思いますけど、私のファーストキスをこんなにしといて断るなんて……ありえませんよね?」
P「うっ……それを言われると……」
春香「ほら、いつでもいいですよ?」
P「じゃあ十年後ってことで」
春香「しまった」
春香「ちくしょーちくしょー!」
P「どうした、完全体にでもなりたいのか」
春香「悔しい……あの失言さえなければっ……!」
P「ま、諦めるんだな」
春香「プロデューサーさんには罪悪感ってものがないんですか!?」
P「ないね」
春香「ちくしょおおおおおお!」
春香「あーあ、失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した」
P「まあまあ、気持ちはありがたく受け取ったよ」
春香「どうせなら栄養も一緒に受け取ってほしかったなー」
P「そもそもお前が最初から素直に栄養ドリンクって…………言ってたな」
春香「言ってましたー」
P「じゃああれだよ、最初のひらめいた発言が悪かったんだ」
春香「はあ……もういいですよ、過ぎたことは」
P「珍しく潔いな」
春香「まあ、マイナスだけではなかったわけですしね」
P「まあでも、たしかに俺もちょっとやり過ぎたかもな……」
春香「あれ珍しい、プロデューサーさんが反省してる」
P「ああは言ったが、まるっきり罪悪感がないわけでもないからな」
春香「ほほう。つまり、私に何かしてくれるってことですか」
P「まあそういうことだな。ただし、あんまり酷いのは無しな」
春香「わかってますよぅ……うーん、どうしよっかなー」
P「…………」
春香「……よし、決めた!」
春香「罰として、私にひざまくらされてください!」
P「なあ、本当にこんなのでよかったのか?」
春香「はい。プロデューサーさんこそ、嫌だったら断ってくれてもよかったんですよ?」
P「せっかくの気遣いだし、ありがたく膝枕されてやろうと思ってな」
春香「気遣い? なんのことですか? 私はただ、欲望の赴くままにひざまくらさせてるだけですよ?」
P「プロデューサーを膝枕したいアイドルってのも、すごい話だな」
春香「そりゃー私は未来のトップアイドルですから? 常識は通用しません」
P「未来のトップアイドルね……大きくでたもんだ」
春香「プロデューサーさんが私をトップアイドルにするって言ったんじゃないですかー」
P「そうだったな……まったく、いいアイドルに恵まれて、俺は幸せ者だよ」
春香「お望みなら、この先ずっと幸せにしてあげましょうか?」
P「…………」
春香「…………」
P「……ま、考えておくよ……」
春香「へたれーいくじなしー」
P「…………」
春香「? プロデューサーさん?」
P「……zzz」
春香「……寝てる」
P「……zzz」
春香「…………」
P「……zzz」
春香「ひらめいた♪」
おわり
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません