女「わたし、男のことが好きっちゃん」(24)

prrrr・・・

男「はい」

女「今何かしてた?」

男「いや、なんもしとらんかったけど」

女「じゃあさ、浜に行かない?」

男「行ったってなんもないやん」

女「いいの。ただ海が見たいだけだから」

男「まぁいいか。じゃあ今からお前の家の近くの公園に行くけん」

女「うん。よろしくー」

男「おっ、きたきた」

女「ごめん、待った?」

男「いや、今来たとこやけど」

女「えへへ。何か今の恋人っぽかったね」

男「ふざけとらんで行こうぜ。あれ?お前チャリは?」

女「乗せてもらおうと思って」

男「たまには運動とかした方がいいっちゃない?太るよ」

女「うっ、人が気にしてることを」グサッ

男「そうと?すまんすまん」

女「罰として後ろ乗せて」ヒョイッ

男「結局そうなるったいね。まぁいいっちゃけどさ」

女「じゃあ、レッツゴー」

男「はいはい」

ザブーン

女「着いたね」

男「何度見ても変わらん光景たい」

女「いいの。海は何度見てもロマンチックだから」

男「そういうもんと?」

女「そうなの」

男「しかし来たところでやることがないけんねー」

女「いいじゃん。海見ながらおしゃべりでもしよ。ほら、ここ座って」

男「はいはい」

女「男は好きな人とかいる?」

男「ずいぶん急やな」

女「まぁ、定番じゃん」

男「今はおらんかな。お前はどうと?」

女「うーん、い、いないかな」

男「そうったいねー。お前男子とばっかつるんどーけんさ、誰か好きな人でもおるんかと思っとった」

女「そ、そんなわけないじゃん」///

男「そうと?じゃあ何でいっつも俺らとばっかつるんどーと?」

女「女子より男子の方が話しやすいんだよねー」

男「そんなこと言っとーけん女子の友達が少ないったい。お前だって友達増やしたいやろ?」

女「まぁ・・・、それはそうなんだけどさ」

男「みんな言っとーよ、女さんは話しかけにくいって」

女「そ、そうなの?わたしは普通に接してるつもりなんだけどなぁ・・・」

男「まぁずっと標準語やけんってのはあるかもな」

女「え?言葉って関係あるの?」

男「標準語ってこっちの人にとっては冷たい感じがするけんさ。お前って方言伝染らんったいね?」

女「ちょっとだけ都会出身のプライドが邪魔するんだよねー」

男「転校してきてどんだけ経ってんだよ。郷に入っては郷に従えって言うやろ?」

女「でもさー」

男「何でそんなに嫌がると?方言の女の子って可愛いやん」

女「か、かわいい?」

男「標準語よりは断然いいと思う」

女「そ、そっかー。じゃあやってみよーかな・・・」///

男「よし、じゃあ今から方言指導をするけん。ビシビシいくぞ」

女「方言って指導するものかな?」

男「最初は無理やり使っとっても、慣れたら自然に言えるようになっとーやろ」

女「わかった。よろしくお願いします、先生」

男「えー、じゃあ女ー、ここ分かるかー?」

女「古典教師のモノマネはいいから」

男「コホン、じゃあまず基本から。この辺の方言は語尾が特徴的やけん、そこからたい」

女「『と』、『けん』、『ちゃん』、『たい』とかだよね?」

男「そう。『と』は、そうと? みたいに使うっちゃけど、標準語で言う、そうなの? って感じやな」

女「さすがにそれぐらいはもう分かるよ。『けん』も『から』って意味だよね」

男「なんだ、分かっとーやん」

女「まぁ会話聞いてたら大体分かるよ。でも『ちゃん』の使い方がよく分かんない』

男「『ちゃん』は・・・、何かよくよく考えると説明すんの難しいな」

女「先生、しっかり」

男「大丈夫、任せろ。えーと・・・、そうっちゃん ってどういう意味か分かる?」

女「そうなんだよね って意味じゃない?」

男「正解です。まぁこのぐらいは会話聞いてたら分かるな。こっからは実践編でいこう」

女「先生、早くも投げやりな感じが見えてきました」

男「そこ、うるさい。大丈夫、話しながらの方が身につく気がしてきたから」

女「本当に大丈夫かなぁ・・・」

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


男「まぁこんなところか。暗くなってきたし、そろそろ帰ろうか」

女「そうだね。夜の海はロマンチックだからいいなー」

男「そこはロマンチック『やけん』やろ?」

女「そんなすぐには無理だよ。ずっと標準語だったんだし」

男「結局海に来た意味ってなんやったとかいな?」

女「いいの。わたしが見たかったっちゃけん・・・、でいいのかな?」

男「おっ、今のは自然に言えとーやん」

女「えへへ。なんかむず痒い感じ」

男「よし、最後に特訓の成果を見せてもらおう。何でもいいから方言で話してみて」

女「えっ?急にそんなこと言われてもさ・・・」

男「適当でいいけんさ」

女「(ここはチャンス?方言は可愛いって言ってたし・・・、ここまで付き合ってくれたんだから少しは気があるよね?)」

男「ほら、早くなんか言ってよ」

女「じゃあ・・・。えーと、きょ、今日は付き合ってくれてありがとう」

男「方言入ってないやん」

女「今のはこっちでもそういう風になるでしょ!」

男「まぁそうか。続けていいよ」

女「まったく・・・。えーと・・・、男はさ、わたしが転校してきてすぐの頃、なんも分からんけん校内で迷っとった時に助けくれたやん?」

女「その時はすごい不安やったっちゃけど、男が来てくれて本当に助かったったいね。・・・合ってる?」

男「いい感じ、いい感じ」

女「うん。でね、そっから男のことばっかり見とったったいね。男は気づいてたか分かんないけど」

女「な、何が言いたいかっていうと・・・」









女「わたし、男のことが好きっちゃん」

女「(キャー、言っちゃった!早くなんか言って///)」

男「・・・・・・」

女「(あっそういえば、方言話したところでみんなそうじゃん!これ意味ないのかな?ってか早く何か言ってよ!)」

男「・・・、うん」

女「うんって・・・、okってことだよね?」///

男「うん、ok。いい感じで話せとーよ。今度から学校でもその感じで話せば打ち解けられるって」

女「・・・・・・、は?」

男「やっぱり俺の教え方がよかったけん1日でマスターできたっちゃろうね。いやー練習とはいえ、告られるってのはキュンとくるなー」

女「(わたしの一世一代の告白が・・・)」

男「さて、さすがに遅くなるし帰るか。後ろ乗れよ」

女「・・・・・・」

男「ちょっととばすけん、しっかり捕まっとけよ」

女「・・・・・・、バカ」ボソッ

男「ん?なんか言った?」

女「・・・別に」ギューッ

男「ちょ、痛い。捕まりすぎ」

―――後日


女「み、みんな休日はなんしよったと?」

女生徒1「あっ、女さん、前まで標準語やったのにどうしたと?」

女「やっぱり標準語だと浮くみたいだし・・・、ダメ、かな?」

女生徒2「そっちの方がいいっちゃない?やっぱり他人行儀みたいやったし」

女「えへへ、ありがと。ところで休日は、な、なんしよったと?」

女生徒2「うちはねー、彼氏とデートやったっちゃん。よかろー?」

女「へー、女生徒1さんって彼氏おるったいねー」

女生徒3「この子の彼氏超チャラいとってー」

女生徒1「そんなことないし。常識はあるっちゃけんねー」

女「うちの学校の人なの?・・・、じゃなかった。うちの学校の人と?」

女生徒2「あー、言い直した。女さんかわいいー」

アハハハハハ

オンナサンオモシローイ

男「うんうん、俺の指導のおかげやな」

男友「おい男、お前この間女とデートしとったやろ?他のクラスの奴が見かけたってよ」

男「はぁ?まぁこの間海に一緒に行ったけど、デートとかそんなんじゃねぇよ。方言指導しとった」

男友「意味分からん。女は明らかにお前に気があるっちゃけん、付き合えばいいやん」

男「え?そうと?」

男友「はぁ・・・、女かわいそう」

男「(もしかしてあの時の告白って・・・)」




おわり

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