女「一時間に一回ケツバット?」(39)

女「冗談、だよね?」

男「…」

女(あ、本気だコレ)

みたいなの頼む

男「…」


女「でも…」


男「…さあ、そのバットで俺のケツを殴るんだ」プリッ


女「っ!」


あと頼む

女「くっ! やるしかない、か」ギュ

女「――てぇーいッ!」ブンッ

 バコンッ

男「ふぐぉ!!」

 ドシャ

男「」

女「あっ」

女「やりすぎちゃったかな」オソルオソル

女「だ、大丈夫……?」

 ユッサユサ

男「はっ」

男「……」ブルブルブル

女「ごめん! うまく加減できな」


男「素晴らしい!」キラキラキラ

女「えっ?」

男「やはりお前は俺が見込んだとおりの才能の持ち主だ」

女「さ、才能?」

男「ああ、そうだ」コクン

男「普通ケツバットをしてくれと言われても、大抵の女性は……いや男性でも躊躇することだろう」

女「え、えっと」

男「だが! お前の! あの迷いのないフルスイング!!」

女「あの」

男「軌道、コントロール、スピード、そしてインパクト! どれも一級! 文句なしだ!!」

女「えっとぉ」

男「まちがいない、お前は正真正銘、天性の天才だ――」

男「ケツバットの」

女「……ケツバットの」

男「ケツバットの。」コクン

女「そんなの、ぜんぜん嬉しくないよ……」

男「俺は嬉しいぞ」ニコッ

女「そんな爽やかな笑みで言われましても」

男「ときに、女」ジッ

女「な、なに?」

男「そのバットの握り心地はどうだ?」

女「え、これ?」グ

 ブンッ

男「おお……っ」ゾクゾク

男「いい振りっぷりだ……」フゥ

女「なんかセクハラ受けてる気がするんだけど」ジー

男「気のせいだ」

女「そうかなぁ」

男「で、具合はどうだ?」

女「んー」

女「初めて握ったけど、なんかしっくり来るっていうか」

女「グリップっていうの? 手のひらにフィットする感じ」ニギニギ

男「……そうか。苦労して入手した甲斐があったな」フゥ

女「でもさ、なんで急にその、ケツバットなんて言い出したの?」

男「ああ」

男「必要な――ことなんだ」ジッ

女「そ、そう」

男「大いに重要だとも。なんなら人類の存亡がかかっていると断言してもいい」

女「それは大げさだと思うけど……」

男「女にも、そのうち分かるときが来るさ」フッ

女「う、うん」

女(そんな凛々しくも憂いを帯びた真剣な表情をされても正直その……困る)

 ウーウーウー

女「あ、サイレンだ」

女「最近、多いよね」

男「そうだな」

女「ちゃんと避難したほうがいいのかなぁ」

男「避難所に行くなら近くまで送っていくぞ?」

女「んー」

女「いいや。いっつも結局、なんにも起こらないもんね」

男「だが、政府には推奨されているからな」

女「実際、どれだけのヒトがちゃんと従ってるんだろ」

男「さてな」

女「面倒なんだよねー。シェルター遠いしさ。うちから徒歩じゃ数時間はかかるんだもん」

 ウーウーウ‥ フッ

男「む」

女「あ、終わった。今回は早かったね」

男「大した難事じゃなかったんだろう」

女「いいことだ」

 チックタック‥

男「さあ、1時間たったぞ」

女「えっ」

男「やってくれ」プリッ

女「うん、あのさ」

女「やるのは、まあ、いいんだけど」

男「ほう。もう順応するとは、やはり天才か――」

女「あのね、なんでお尻を出す必要があるワケ?」

男「それが作法だからだ」

女「……ケツバットの?」

男「ケツバットの。」コクン

女「べつに服の上からでもいいんじゃないかなぁ」

男「――ッとんでもない!!」グワッ

女「わあっ」

女(四つん這いの状態で顔だけこっち向けられると怖い)

男「服などを介在させたら、せっかくのケツバットの衝撃が吸収されてしまう!」

女「そのほうが安全でいいと思うけど」

男「あまつさえ感触まで薄れてしまうではないか!!」

女「そこ重要なの?」

男「当然だ」コクン

男「固く冷たい金属の棒が熱く唸って俺の尻を打つ、それを堪能できずして、なにがためのケツバットか――!!」

女「ぜんぜん分かんない」

男「いつか女にも理解できる日が来るさ」フッ

女「ヤだなぁ、そんな日」

男「さあ、殴ってくれ」プリッ

女「なんかこう、目の毒っていうか……うん、一義な意味で」ブツブツ

女「よっせ――」ブンッ

 ズゴッ

男「ぐぼぁ!!」ドシャ

男「」

女「あー、またやっちゃった……」ペシ

女「男ぉー? だいじょーぶ?」

 ユサユサ

男「はっ」

男「……」ブルブルブル

男「エクセレンっ! ワンダホー! グゥレイト! マーベラス! アメイジンっ! ファンタースティっ!」キラキラキラ

女「うわあ……」

男「ああ、きっとお前はケツバットをするために生まれてきたに違いない」ニコッ

女「褒めてないよ、それむしろ貶めてるよ」

男「なぜだ? 心の底からの賛辞だぞ?」キョト

女「私のレーゾンデートルにセクハラしないで」

男「ううむ。女心、いと難し」

女「女心への熱い風評被害に私がビックリだよ」

 ウーウーウー

女「えっ? また?」

男「ふむ。そろそろ潮時か……」ボソ

女「ん? なんか言った?」

男「いいや」フルフル

男「俺はそろそろお暇するとしよう」

女「あっそ」

男「なんたる冷たさ」

女「だって久しぶりに会えたのに、ケツバットしかしてないし」

男「ああ……実に有意義な時間だったな」ツヤツヤ

女「私と男とのあいだに、こんなにも意識の差があるとは思わなかったよ」

男「まあ、いいじゃないか」

男「こんなこと、お前以外には頼めない――いや」

男「お前にしか頼みたくないから、な」ジッ

女「ケツバットをでしょ?」

男「ああ。ケツバットを、だ」コクン

女「あのね、そろそろ女心と堪忍袋の緒がキレそうだよ?」

女「たまにふいっと会いに来てくれるけど、アイツ大丈夫なのかなぁ」

女「今、戒厳令とか出てるのに」

女「特にサイレン中は絶対に出歩くなって言われてんのに、もし見つかったら職務質問どころじゃ……」

 ウーウーウー!!

女「んー、今回は長めだね」

女「もうずっと鳴ってるから慣れ――」

 ウーウーウーウー!!!

女「ないわ」

女「やっぱうるさい」

女「……」

女「開戦しちゃうのかなぁ」

女「やーだなー」

女「……」

女「ほんとバッカみたい。戦争とかないわー。意味わかんない」

女「ほんのちょこっと外見とか、なんか嗜好とかが違うだけなのに」

女「いっしょにいれば……わかるのに」

女「……」

女「次はいつ来てくれるかな」

女「いつになったら昔みたいに」


 ウーウーウーウーウー!!!!


女「っ!」

 ダダダッ
 ガチャッ

女「男ぉっ――」

 タッタッタ

若年兵士「おい待てッ! そこの市民!!」

女「っ」ビク

壮年兵士「ここは限界区域だぞ! なぜ入り込んで――いや、その格好、まさか避難していないのか?」

女「あ、その、自宅がここで……この近くで」アセ

若年兵士「くそッ! 一刻も早くシェルターに退避を――俺が付き添っていきます!」

壮年兵士「いや待て、反応が遠方で消えたんだ、移動するのはマズい。君、今は家に戻りなさい」ビッ

女「あの、なにか……あったんですか?」

若年兵士「――」チラッ

壮年兵士「……本来は市民に伝えるべき事項ではないのだが」

女「……」ゴクリ

壮年兵士「この区域まで侵入された。今までで最大級、と言えば危険性は分かるだろう」

女「っ」

若年兵士「むろん心配ない、われわれが食い止めるッ!」

女「あ、あの」

壮年兵士「分かったね? 外は危険だ。早く帰りなさい」

壮年兵士「サイレンが止んだら至急シェルターに向かうこと」

女「……はい」

若年兵士「――避難区域に指定された市民には補助制度があることは知っているな?」

若年兵士「なにも持たず中央へ行っても衣食住は保障される。心配はいらない」

若年兵士「慣れ親しんだ土地から離れたくない気持ちは分かる、が、今は緊急時だ」

若年兵士「先月も、先々月も被害が出ている。これ以上、犠牲を増やすわけにはいかない」

女「はい……」

壮年兵士「……われわれは市民を守るために命をかけている」

女「っ」

壮年兵士「どうか、その本分をまっとうさせてくれないか」

女「は、い」コクリ

 クルッ
 タッタッタ

 ガチャバタン

女「……」

女「あは」

女「やだなぁ」

女「中央なんか行ったら、もう男に会えないじゃん」

女「やだ……よ」ペタン

 ウーウー‥フッ

女「あ、終わった」

女「結局1時間くらい鳴ってたかなぁ」

女「……ケツバット、ねえ」ニギッ

 ブンッ
 ブンッ

 ブォンッ

女「あ、なんかレベルアップした感じ」

女「やば。マジで才能あるかも、私」グッ

 ブォンッ

女「うん」

女「避難しなくても案外イケるんじゃない、これ」ダンッ

 ブォンッ

女「うん。要はさ、見つからなきゃいいんだよね」

女「兵士さんたちにも」

女「――結界を破って侵入してきた魔物にも」

ひとやすみー

見直すのに時間かかった……

再開ー

男「こんなところにいたのか、探したぞ」

女「あ、おひさ」

女「えっとぉ、一週間ぶりくらい?」

 ザバザバー

男「うむ、それくらい――なにしてるんだ?」

女「え? 水道とまっちゃったから、水汲み」

男「……そうか」

女「近所の古井戸が生き残っててよかったよー」

男「手伝うぞ」

女「えへ、ありがと」

 ガシャコガシャコ
 ザッパン

女「ん、これくらいで充分かな」

男「よし、家まで運んでやろう」

女「わー、さっすが頼りになるう!」パンッ

女「水属性の魔術が使えれば楽だったんだけどねぇ」コンコン パカッ

女「でも火属性が得意でよかったかな。得意っても日常レベルだけど」カシャカシャカシャ

女「とりえあず調理できるもんね」ボッ ジュージュージュワジュワ

男「いい匂いだ」クンカクンカ

女「もし中央に行ってたら、私ってば今ごろエリート魔術師だったかもよー? ふふっ」

男「火属性は……属性と親和性が高いからな」ボソ

女「え? なんか言った?」クルリ

男「いいや?」

女「もうすぐできるよ」


女「はーい、女さん特製パンケーキでーす!」

 ジャンッ

男「おお」

男「さすがお前の最大にして唯一の得意料理」パチパチ

女「余計なこと言わない!」

女「主食にもなるし、デザートにもなるからねー」パクパク

男「だからといって一度の食事に両方とも出すのはどうかと思うぞ」モグモグ

女「贅沢言わない!」

男「贅沢なのか?」

女「だって買い出しするのに市場まで徒歩で数時間だよ? それも身体強化を行使してだし」パクッ

女「しかも、いよいよ魔界から魔王軍が本腰入れて侵攻してくるって報道で、小麦粉も卵も牛乳も高騰し」

男「――なあ」

女「いいの! 好きでやってるんだから!!」

男「……」

女「アンタまで引っ越せとか言う?」

男「……いや」

男「でも、そうだな――どちらにせよ俺も、他の魔物の目を盗んでここに来るのは限界だ」

女「……そう、なんだ」パクモグゴックン

男「ああ、だからな、その前に」モグモグゴクン

男「どうしても、お前に――」

女「一時間に一回ケツバット?」

男「ああ」コクン

女「あきれた」

男「俺がいったい何のために命の危険を冒してまで、ニンゲンの領域に侵入していると思っている」

女「……ケツバットのため?」

男「ああ、無論ケツバットのためだ」フッ

女「粉砕されたよ! 今、私の女心が粉々だよ!! 玉砕するってわかってたけども!」

男「なぜだ」キョト

女「男はもっといろいろ勉強するべき!」

男「む? これでもニンゲン心理の把握にかけては魔界屈指の実力者だと自負している」グッ

女「誇らしげ!? できてないよ? 他の魔物の皆さんはもっとがんばって!?」

男「……」ジッ

女「な、なに」

男「しょせん俺はニンゲンではないから、な」バサッ

女「なにそれ」

女「そんなの今さら言われなくったって、男が昔、隣に引っ越してきたときから知ってるし」

男「……」

女「なんで今になって、そんな線を引くようなこと言うワケ?」

男「お前に隠していたことがあってな」

女「は?」

男「それを知られて嫌われたくない」

女「……」

女「バッカじゃない」

男「む?」

女「あのね、ケツバットを頼まれた時点でいろいろ諦めてるから」ハァ

女「それで――なに、隠してることって。よっぽどの内容じゃないと」


男「実は俺、魔王なんだ」

女「はいはい」

男「いや、本当だぞ」

女「あのねえ」ジトー

男「俺の意に沿わず、ニンゲンと敵対して侵攻をくり返していた輩を抑えるのに時間がかかってな」

男「でも、そろそろ何とかなりそうなんだ」

女「はいはい」

男「むう……」

男「お前に気兼ねなく会えるようにするために、がんばったのだが……」シュン

女「っ!」

女「男、あの」


男「だから、一番いいケツバットを頼む」キリッ


女「……」

女「ばかっ」

男「なぜだ」

女「ケツバットと魔王の取り合わせが、ぜんぜん理解できない」

男「お前、考えてもみろ」

男「――魔王だぞ?」

女「それがなにさ」ジトー

男「魔王にケツバットできるか?」

女「うーん、まあ、心情的には難しいのかもしんないけど」

男「それもあるが、それだけじゃない」

男「魔王の座を継承すると、職補正のせいで物理攻撃耐性が無効に近いレベルにまで上がってしまうんだ」

男「配下のものに命令して、試しにやらせてはみたんだが」

女「……ふぅーん」

男「ほとんどダメージが通らなくてな、それでは意味が――どうした?」

女「べっつにぃー」プイ

女(頼めるのは私だけ、とか言ったクセに……ホントは消去法だったってワケ? 腹立つ――)

女「って、アレ?」

男「ん?」

女「私がやったときはダメージ受けてたよね?」

男「ああ、クリティカルヒットだった……」ゾクゾクゾク

女「遠い目をして恍惚となるのはやめて」ビシ

男「すまん。つい思い出して」

女「じゃあ男が命令したのって、下っ端の弱いのだったの?」

男「いいや」

男「側近とか四天王とかだ。魔王軍ではむしろ強い順だ」

女「……こんな上司でお気の毒に」

女「じゃなくて。そんな強そうな面子でダメージなくて、なんで私なら通るの」

男「それは――」

男「アレが理由だ」ビシ

女「男がくれたバット……」

女「そっかぁ、アレそんなにすごいんだ――って」

女「それなら、あのバットを装備させて殴らせればいいだけじゃん」

男「それはできない相談だな」

男「なぜなら、あのケツバットは――お前専用の装備品なのだから」フッ

女「はああ?」

男「お前以外が振るっても、並のバット以下の攻撃にしかならないぞ? 剣でいえばナマクラ状態だ」

女「なにそれこわい」

男「いいや、お前もその存在を知っているはずだ」

男「物理ほぼ無効体質の魔王に、唯一確実にダメージを通せる伝説の武器を、な……」フッ

女「うん待って」

女「あのさ、普通は剣じゃないの、そういうの」

男「いいや? その代の使用者に最も適した武器にオートで変形するんだ」

男「つまりそれこそが、お前がケツバットの申し子という証し――」

女「うん、百歩ゆずるよ。アレが聖け――聖バットだとするよ?」

男「聖ケツバット、だ」チッチッ

女「なんでもいいけど、だったらその使用者って――私」

男「おめでとう! 女は勇者に選ばれました!!」

女「うっそー」

男「いや、実は昔、近くに越してきたのもな」

男「当代の勇者の気質を自ら見定めるためだったんだ」

女「……」

女「そう」

男「場合によっては人類と敵対する意志を固めていた可能性もある」

女「……ふうん」

男「だが! 俺は! 見出した!!」バッ

女「……なにを?」

男「お前の! あふれんばかりの才能を、だ! 敵対などできようはずもない!!」


女「…………ケツバットの?」

男「ケツバットの。」コクン


女「っの――いい加減にしろー!!!!」ピシッ

 ビシッ ビリビリ‥ッ
 バリバリバリッ

女「えっ」

 ズドドドドドドド
 ドドドッド
 ドォーンッ!!!

 パラ
 パラ‥

女「…………ウソ。わ、私の家が」

男「大丈夫か、女」ギュッ

女「っ!」カァア

女「あわわわわ、ははは離してぇ……!」ジタバタ

男「怪我はないか?」ジッ

女「ううううんうんうん!」コクコクコク

女「って男は!?」ハッ

女「私を庇って……っ」

男「平気だ。言っただろう? 俺の防御を貫けるものはない」


男「――お前のケツバット以外は、な」フッ


女「だからさぁ……」ジトー

男「だが、直撃すればきわどかったのは確かだ……」フゥー

男「勇者としての自覚を得ることで、職固有の雷属性を発動できるようになったのだな」ウンウン

男「まだコントロールが甘かったのが幸いした」

男「しかし家が半壊するとは初回なのに大したものだ。さすが俺の見込んだ――」

女「……」クスッ

男「どうした?」

女「ううん、なんでもない」フルフル

女「どうしよっかなー。住むとこなくなっちゃったよ」

男「俺といっしょに住めばいい」

女「え」

男「魔界も近年は大気と土壌の大幅な改良に成功していてな、気候風土はこちらとそう変わらないぞ」

男「どうだ?」ジッ

女「えっ、いや、あの」

男「嫌なのか……」シュン

女「いやじゃないよ! ぜんぜん!!」ブンブンッ

男「無理はしなくていい……」ドヨーン

女「そんなムリとかじゃっ」

男「――お前がここを離れたがらなかったのは、それほど愛着があるからだろう?」

女「えっ?」

男「こんな誰ひとりいなくなった土地で、不便な暮らしをしてまで」

女「あ、ちが……」

女(だって、私がずっとここにいたのは)

男「すぐ配下のものに新しい家を運ばせるから」

女「――」カァ

男「なに、隠蔽魔法を付加すれば一時間は探知されず活動でき――どうした?」

女「と、とにかく私はいいんだってば!」パタパタ

女「問題はそっちでしょ?」

男「問題などない」

女「だ、だって私、ニンゲンだよ? しかも勇者なんだよね? 魔界じゃ外聞が悪くない?」

男「いいや。先ほど何とかなりそうだと言っただろう?」

男「反ニンゲン派のめぼしい魔族は掃討済みだ」

女「あ、うん」

女(さらっと……)

男「明日にでもニンゲン政府に向けて講和の申し入れをする予定だったんだ」

女「そうなんだ」

男「武力で制圧するほうが簡単だがな。俺単独でも突破できる程度のやわい結界しかないし」

男「まあ、威圧的な強制外交にはなるだろう」

男「なにしろ切札となりうる存在とて、すでにこちらの手の内だ」ニヤリ

女(うーん……)

女(意外と魔王っぽいね)

男「これから忙しくなりそうだから、その前にお前に逢いたいと思って抜け出してきたんだ」ジッ

女「そうなんだー」

男「つれない反応」

女「だってさすがに学習したし、流れ読めるし」

男「ならば! 早速ケツバッ……」

女「野外じゃ、ヤ」プイ

男「」

女「だって、いつ兵士さんたちが巡回に来るか、わかんないし」

女「っていうか近所でサイレン鳴ってたのって、つまり男のせいだったんじゃん」

女「うるさくてホント迷惑だったんだよねー」

男「そうか……」シュン

男「よし!」

女「え?」

男「今すぐ向かうぞ!!」バッ

女「へ? どこに?」

男「無論、俺の居城に、だ――!」バサッ

 バサッ バササッ

女「ちょっ……急に飛ばないでよ!」ギュウッ

男「うむ。危ないから、ちゃんと掴まっていろ!」

女「一時間に一回ケツバット?」

男「いいや」フルフル

男「一分に一回ケツバット、だ」

女「冗談、だよね?」

男「いや、ニンゲンの領土では探索魔法を透過させる隠蔽魔法を一時間ごとにかける必要があったが」

男「ここ魔王城で遠慮することはない――さあ、そのバットで俺のケツを殴るんだ」プリッ

女「っ!」

女「いいっ加減にぃ! しなさいよーっ!!!」ブォンッ

 ドグシャアッ

男「」ドサ

女「……」ハァハァ

女「お、男? や、やりすぎちゃった……?」

男「……」ガバッ

男「やはり最高だ!! さあ続きを! さあ! さあっ!!」キラキラキラ

女「こ、こうなったら……ギブアップするまで耐久ケツバットしてやる――!!!」グッ

終わりー。





乗っ取りゆえ、ノリ重視です。どうか生温かい視線で見守ってください。

あと転載禁止でお願いします。

超余談。

水道は水、サイレンは風、調理器具は火の魔術道具があるっぽい設定。
コンロは漢字表記の焜炉だと、それっぽくていいよね。(厨二並感)

いやさ、ファンタジーものって文化水準は中世風なのが多いけど
リアル魔法なんてローコストでクリーンなエネルギーが存在する世界だったら
インフラ整備やITの分野が発達しててもおかしくないと思うの。

でもその手の設定って、すでに滅んだ超古代文明のオーバーテクノロジーとかだったりするよね。
不思議。



裏付け的な話はもうちょっとだけやります。イケたら明日。

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