モバP「魔王とシンデレラのレンチキュラー」 (41)

モバマスSSです。

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随分と間が空いてしまいました。

申し訳ございません。

事務所

蘭子「ふふふ……」

杏「なにしてんの?」

蘭子「我が幻想を具現化しているところぞ」

杏「ふーん。そっか」

幸子「聞いといてソレですか……」

杏「まぁ、大して気にならないし」

幸子「絵を描いてるだけですしね」

杏「そういうこと。杏寝てこよっかなー」

蘭子「い、今なら特別に我がげ――」

楓「蘭子ちゃん、かみのみー」

蘭子「ひゃあ!」

蘭子「な、なに!?」

楓「ふふふ。私も漆黒の契約を結び…ません!」ガバッ

蘭子「ひゃっ!」

幸子「結ばないんですか」

楓「えぇ。特に理由はありませんけど」

楓「そもそも深い意味なんてありませんし」ドヤ

幸子「そうですか…」

菜々「それにしてもお上手ですね」

蘭子「わっ!い、いつの間に!」

菜々「楓さんと一緒にいましたよ。楓さんの挨拶が濃かったせいで存在が薄れちゃってたみたいですけど…」

杏「ウサミン星は永遠に不滅ですー」

菜々「あ、杏ちゃんがそんなことを…ナナちょっとだけ涙が出そうです…」グスッ

杏「あ、いや、なんて言うか…まぁ、それでいっか」

幸子(何と言いますか全方向からボケが飛んでくる気がします…)

古典かな?

楓「そう言えば菜々ちゃんも絵が上手いんですよね」

菜々「え!?ナナのはただの落書きですよ!」アハハ

幸子「ちょっと興味がありますね」

蘭子「むっ!?ウサミン星じゃ具現化は必須技能であったと?」

菜々「ウサミン星には美術はありませんでしたよ…」

楓「餅を描いても食べられないですしね。月に向かって飾るのは本物がいいですしね」

幸子「お酒を飲む気マンマンですね…」

楓「お餅とお酒はあんまり飲まないですけどね。結局飲みますけど」

幸子「結局飲むんですね…」

楓「言われてみれば…」

蘭子「我が心眼で見通せぬものはない!今こそ真の力を解き放つがいい!」

菜々「そ、そこまで期待されても期待通りのものが描けるとは限りませんよ……」

>>5
そうですね。お久しぶりです。

菜々「こ、こんな感じでいいですか?」

蘭子「おー」

幸子「普通に上手ですね」

楓「少女マンガチックですね」

菜々「なんだかコメントに困ってません…?」

幸子「そんなことはないですけど。普通にお上手だなぁって」

菜々「そ、そうですかね。きゃは☆」

楓「結構前の絵柄な気もしますけど」

菜々「い、家にあった漫画を真似て描いてたからです!」

P「上手いもんだな」

菜々「え?」

P「ただいま戻りました」

菜々「あ、はい。お帰りなさい」

蘭子「い、いつの間に!」

P「なんだか盛りあがってて悪いかなって思ってさ」

P「絵と言えば蘭子も描いてたよな」

蘭子「わ、我は神の目を欺き、グリモワールに禁忌の術式を…」

P「まぁ、あんまり見せてくれないよな」

蘭子「そ、そんなに自信ないし…」

菜々「ナナもなかったんですけどね…」

菜々(アイドルになって簡単な絵もサインと一緒に描けたら凄いなぁって描いてただけですし…)

菜々(ま、まぁ…実際カフェにいた時は役立ちましたけど)

蘭子「我がグリモワールの封印が解かれるまでしばし待つがよい」

杏「……?」

杏(時々って結構分からないよね蘭子の言葉って)

杏「ま。いいけど。特に困ってたりしないし」

P「杏、レッスン行くぞ」

杏「む。杏はロバであるー」グデー

P「飴やるからさ」

杏「最近、杏が飴あげとけば何でもするとか思ってない?」

P「そうは思ってないさ。飴要らないのか?」

杏「要らないとは言ってないよ。ん」

P「虫歯になるなよ」

杏「キシリトール食べてるから大丈夫」

P「歯を磨けよ…」

杏「気が向いたらね」

レッスン室

蓮実「そう言えば……」

泰葉「はい?」

蓮実「神崎さん…蘭子ちゃんの言葉って分かりますか?」

泰葉「何となくですけどね」

蓮実「慣れなんですかねぇ…」

泰葉「なんかあったんですか?」

蓮実「あ、いえ、何もないですよ。ちょっと気になっただけです」

泰葉「うーん…まぁ確かにコツはいるかもですよね」

蓮実「ですよね」

蓮実「というのもですね」

泰葉「うん?」

蓮実「今でこそ自分らしさって言うのが少しだけ分かってアイドルをやっているんですが」

泰葉「はい」

蓮実「正直デビューしたての時何をどうしたらいいのか分からなくてですね……」

泰葉「なるほど」

蓮実「色々売れてるアイドルの方の真似をしたりしたんですよ。その中に蘭子ちゃんもいたんですけど……」

泰葉「真似出来なかったと」

蓮実「…はい。挨拶だけしか無理でした」

泰葉「頭で考えて話すのは難しいかなって思います」

蓮実「一種の才能ですね」

蘭子「……」ゼェゼェ

菜々「だ、大丈夫ですか?」

蘭子「い、今は翼を休める時…」

菜々「休憩ですか…。まぁ、疲れましたよねぇ」ハァ

蘭子「い、今スグに漆黒の闇に抱かれたいものよ…」

菜々「でも、ま、練習しないとライブも出来ないんですけどね」

蘭子「…うん」

菜々「……思ったんですけど」

蘭子「……?」

菜々「蘭子ちゃん一回普通に喋ってくれませんか?」

蘭子「え…普通?」

菜々「はい。グリモワールとかは置いといて」

蘭子「えっと……こう?」

菜々「はい!もっともっと」

蘭子「な、何をしたいの…?」ビクビク

菜々「か、可愛いですねぇ!」

蘭子「ひゃっ!」

菜々「なんて言うかその…守ってあげたくなっちゃう感じですよね」

蘭子「い、異星の民よ、それは言葉が過ぎる…」

菜々「蘭子ちゃんって普段そういう恰好してるけど、元がいいから何でも似合いそうですよね。王道的なアイドルの道も行けそうです」

蘭子「そう…かな?」

菜々「えぇ!そう思いますよね。ね?楓さん」

楓「そうですねぇ。あ、でもきっとウサミン星人じゃない菜々ちゃんも可愛いと思いますよ?」

菜々「えっ!?さ、流石に生まれを変えるのは無理じゃないかなって…」アハハ

菜々(実は家は千葉です。今日も満員電車に揺られてきました。とかナナが言ったら皆に心配されそうですって)

楓「……」ジー

菜々「え、えーっと…闇に飲まれよ!」キャハ

事務所

周子「そういやさ」

P「どうした?」

周子「ん。いや大したことじゃないんだけど」

P「うん」

周子「ここのアイドルって基本的にPさん一人でスカウトしたの?」

P「まぁ…今ここにいるのは少なくとも」

周子「ふーん。そうなんだ」

P「どうした?」

周子「いやPさんは色々な子が好きなんだなぁって」

P「なんか語弊がありそうだな…」

周子「変な意味はないよ」

P「ならいいけど」

周子「そうそう。いいんだよ」

ちひろ「ちなみに私は――」

周子「ちひろさんはスカウトされてないでしょ?」

ちひろ「…はい。そうです」

周子「ま。でもPさんがスカウトしそうな感じもあるけどね」

ちひろ「そ、そうですかね?」

周子「うん。まぁ、ここで働いてるからかもだけど」

ちひろ「あ、なるほど。そういう感じですか」

周子「そういうこと」

周子「そう言えば今日仕事してる時にさ」

P「おう」

周子「煩わしい大陽ね!って観客の人から言われたよ」

P「蘭子と間違えたのか?」

周子「それは無いと思うよ。格好も違うし」

P「蘭子みたいな恰好してみるか?」

周子「え?……似合う?」

ちひろ「なんとなく似合いそうな気もしますけどね」

周子「や、やみのまとか言っちゃえばいいのかな?」

P「分からないけど」

周子「そっか。そうそう。それで挨拶されたんだよ」

P「うん」

周子「なんか、自分の事務所のアイドルが売れてて嬉しいなぁって」

ちひろ「そうですねぇ。私もコンビニとかで歌とか聞くと嬉しくなります」

P「それは分かります」

周子「今思ったけど、菜々さんと蘭子ちゃんがユニット組んだら独特の世界観が生まれそうだよね」

P「もしかしたら菜々さんは普通の女の子に戻っちゃうかもしれないけどな」

周子「菜々さんだからねぇ」

ちひろ「あ、それも分かります」

周子「凄い丁寧に周りに通訳してそう」

P「たまにウサミン星の話フラれて思わず素が出ちゃいそうだな」

周子「あ、分かる分かる」

ちひろ「想像が着きますねぇ」

P(今度考えておこう…)

蘭子「や――」

周子「やみのまー」

蘭子「あ、うん」

周子「うん?発音こんな感じじゃなかったっけ?」

蘭子「いかにも」

菜々「合ってると思いますけどどうしたんですか?」

周子「あ、えーっと、月の巫女?」

菜々「ナナは別に月から来たわけじゃないですよ…」

文香「ウサミン星と月は…別物でしたか」

菜々「で、ですよ!」

文香「なるほど…謎は深まりますね」

周子「多分自分で謎を作ってるんだと思うけど…」

文香「?そうですかね」

周子「そうどすえ」

菜々「あはは…」

数時間後

事務所

ちひろ「あ、蘭子ちゃんちょっといいですか?」

蘭子「む?」

ちひろ「これ、プロデューサーさんからです」

蘭子「ま、まさか封印されし召喚獣の…」ワナワナ

ちひろ「そんな物騒なものではないと思いますけど」

蘭子「緑の女帝がそこまで言うなら…」

ちひろ「なんか私のあだ名だけ気合いが入っていると言うか強そうですね」

蘭子「見てくれに囚われずその真を見るのだ」

ちひろ「いや、それもそれで微妙なんですけど」

ちひろ(私の真の姿は女帝なんですかね…)

ちひろ(そんなことした記憶はないんですけど)

蘭子「こ、これは……!」

ちひろ「中身は確かどこかの出演依頼だったはずですよね」

蘭子「ま、まさか緑の女帝も瞳を…」

ちひろ「Pさんが教えてくれましたよ」

ちひろ「流石蘭子ちゃんですね。シンデレラの道をしっかりと登っていますね」

蘭子「ふふ。女帝が魔王を褒めるとは…悪くない」

ちひろ「事実ですからね。あ、いや、女帝は事実じゃないですけど」

蘭子「隠さなくても良い…瞳を持つものなら分かることよ」

ちひろ「その理論だとプロデューサーさんもそっち側に入ってるんですけど…」

蘭子「魂を封じ込める器程度では、我を押えることは出来なかったか」

ちひろ「テレビの出演は珍しいですよね」

蘭子「今こそ、この国に根付く全ての民々に我の真の姿を解放する時が来たか!」

ちひろ「頑張りましょうね」

蘭子「うん!」

蘭子の部屋

蘭子「えっと……」

蘭子(テレビに出れるって嬉しいな)

蘭子「えっと…特番ドラマ…か」

蘭子「…ふふっ♪」

泰葉「なんだか嬉しそうな顔をしてますね」ヒョイ

蘭子「ひあっ!?」

泰葉「えっと…驚かせてごめんなさい」

蘭子「禁じられた扉の結界を解いたというのか」

泰葉「鍵って言うか部屋の扉開いてたからなんだろう。って見たんだけど」

蘭子「あ…そうであったか」

泰葉「それって、今度出るテレビの資料?」

蘭子「いかにも! この魔王が更なる高みに登るためのエシェルよっ!」

泰葉(えっと…有名になるためのステップ的な意味かな?)

泰葉「頑張ってね」

蘭子「優しき同胞の声に感謝する」

泰葉「ふふ…頑張ってね」

蘭子「時にパペットマスターよ」

泰葉「…蘭子ちゃん。別に人形使いじゃないからね。ドールハウスを作るのは好きだけど」

蘭子「それは失礼した」

泰葉「確かあれってホラー映画だったと思うけど…見る?」

蘭子「いっ!いいかな……あはは」

蘭子「……」ジー

泰葉「……?」

蘭子「え、えっと、同志泰葉よ…」

泰葉「うん?」

蘭子「閉じられた舞台で己が翼を広げ我が我であることを証明し続ける秘術は存在するのだろうか」

泰葉「えっと、テレビで自分が自分らしくあれるかってこと?」

蘭子「……」コクン

泰葉「蘭子ちゃんは大丈夫かなって思うけど」

蘭子「そ、そんなことない…!」

泰葉「ちょっと不安になっちゃった?」

蘭子「この魔王に限ってそんなことは! …なくはないけど」ボソッ

泰葉「隣…大丈夫?」

蘭子「あ、うん」

泰葉「ありがと」

泰葉「蘭子ちゃんはさ、アイドルになってこういう風になりたいっていうのはあるの?」

蘭子「こういう風に…?」

泰葉「ほら、どんなアイドルになりたい。とかテレビ出るならこういう感じになりたいとか」

蘭子「わ、私はこのままで…いたいかな」

泰葉「このまま?」

蘭子「う、うん。あのね…プロデューサーが言ってくれたの」

蘭子「何かに熱中出来る人は強いって」

蘭子「それが…人生に直接役立たなくても」

蘭子「幻想世界の空想でも」

泰葉「そんなことがあったんですか」

蘭子「…うん」

泰葉(何ともあの人らしいですね…)

蘭子「で、でも…やっぱり皆と出ない撮影はその、体を流れるこの血が行先を忘れ暴走を始めるのだ」

泰葉「緊張すると焦っちゃうってこと?」

蘭子「……」コク

泰葉「それは分かります。私も最初はそうでしたから」

蘭子「泰葉も…?」

泰葉「はい。それに小さい時の話ですけどね。何だかスタジオもなにもかも縮尺が滅茶苦茶に見えちゃった気がします。

照明だけがやけに明るくて…」

蘭子「その境地をいかにして…」

泰葉「私はその…お母さんに手を握って貰って励まして貰ってましたね」

蘭子「そうなんだ…」

蘭子「でも…私は…」

泰葉「蘭子ちゃん、ちょっと手貸して」

蘭子「……?」

ピタ

蘭子「ひゃっ!」

泰葉「おまじないです。手と手のシワを合わせて幸せ」

蘭子「…ふあ」

泰葉「頑張りましょうね」ニコッ

蘭子「う、うん…!」

蘭子の部屋

蘭子(なんか…さっきの良かったなぁ)ドキドキ

蘭子「憧れ…かぁ」

蘭子「華麗に舞うには友の力を借り、己が世界を構築せしめんとす…」

ガチャ

泰葉「蘭子ちゃんご飯出来たよ?」

蘭子「あ、い、いざ行かん!」

リビング

泰葉「何か見たいものある?」

蘭子「いかなる電波でも我を屈服させることは出来まい!」

泰葉「それじゃ、適当に点けるね」

ピッ

『まさか…そんなはずはありません!』

『だ、だってそんなはずないじゃないですか!』

蘭子「んっ?」

泰葉「わ、わぁ!」ピッ

泰葉(ま、まさか自分が撮影したドラマがやってるなんて思わなかった…)

蘭子「い、今の観たいなぁ…」ボソ

泰葉「え、あ、まぁ…今後の為に私も見ておきますか」

蘭子「うむっ♪」

泰葉「うう…なんか無図痒いですね」

蘭子「我は友の活躍をこの瞳に焼き付けることが出来て嬉しい限りだ」

泰葉「喜んでくれるのは嬉しいですけど…私的には恥ずかしいですね」

蘭子「すごいなぁ…」ボソ

泰葉「ん?どうかしましたか?」

蘭子「えっ!?あっ、な、なんでもない!」

数日後

P「お、蘭子。仕事行くぞ」

蘭子「うむ!」

P「泰葉も行くぞ」

泰葉「はーい。行ってきますね」

周子「ん。行ってらっしゃい」

杏「お土産待ってるね」

ちひろ「そんなに遠くは行きませんよ…」

杏「知ってるって」

ちひろ「そうでしたか」

杏「うん。杏は今日もお留守番だしね」

周子「何言ってんの?レッスンじゃん」

杏「そんなはずは…確か杏の手帳には…」

周子「そもそもそんなもの持ってないでしょうに」

杏「あ、そうだった」

P「あっても週休8日ってことは全部真っ赤じゃないか」

杏「一日だけ他よりも赤いよ」

P「次の月曜日を二度塗りするのか…」

杏「ま。そういうこと。その次は火曜日が濃いかもね」

車内

泰葉「杏ちゃんって凄いですね」

P「そうか?」

泰葉「はい。あれでもお仕事来てますし」

P「あいつは白鳥みたいなもんだからな」

泰葉「白鳥ですか…?」

蘭子「優雅に見えるその下は研鑽を怠らぬということよ!」

泰葉「なるほど。見えない所で努力を。と言ったところでしょうか」

P「まぁ、本人に言っても否定されるのが関の山だけどな」

泰葉「恥ずかしいんですかね?」

P「努力してます。なんて誇るタイプじゃないしな」

泰葉「確かにそうですね」

P「ちょっとは見せてくれると嬉しいんだけどなぁ…」

泰葉「恥ずかしいんじゃないですかね」

P「どうだろうな」

蘭子「能ある鷹は爪を隠すのだ!」

P「鷹かぁ…イメージと違うけどな」

泰葉「もっと小動物みたいな感じですよね」

P「まぁ見た目的にもそう見えるよな」

泰葉「可愛いですよねー」アハハ

蘭子「…いいなぁ」ボソ

泰葉「蘭子ちゃん?」

蘭子「えっ?」

泰葉「どうかしたの?」

蘭子「い、いや、なんでもない!」

蘭子「や、闇は光に魅せられて深みを増すものよ…!」

泰葉「……?」

スタジオ

泰葉「それじゃ、行ってきます」

P「終わったらこっち来てくれ」

泰葉「はい。分かりました」

P「さ。俺達も行くか」

蘭子「うむっ!いざ行かん!」

P「と言ってもまだ時間あるんだけどな」

蘭子「わ、我が魔翌力の昂りを感じる…」

P「頑張ろうな」

蘭子「う、うん」

蘭子「…と、時にだ。我が魔導書の鍵を開ける欠片を探す術がないものだろうか…」

P「どうした?」

蘭子「幅の合わぬ歯車のように我の中で不協和音を立てる小悪魔がいるのだ」

P「不安なことでもあるのか」

蘭子「こ、この魔王にそのようなことがあるはずがない!」

蘭子「ただ…なぜ我がこの度天啓を受けここに馳せ参じたのだろうか」

P「先方が蘭子を使いたいって言ってくれたからだよ」

蘭子「だからなぜ――!」

P「それは俺だって分からないさ。ただ、蘭子の頑張りが評価されたんだよ」

P「蘭子が覚えてるか知らないが、何かを本気でする人はそれだけで輝くって話覚えてるか?」

蘭子「愚問よ。その金言は我が心の翼。魂の奔流よ!」

蘭子「太陽に近づき過ぎた罰として体は燃え尽き、両の黒翼が解けたとしても、その心の翼は決して消えることはない」

蘭子「逆に聞こう」

蘭子「我が覇道の舵を取り、茨に囲まれたカステッロの頂きからその景色を見せんと約束したことを覚えているか?」

P「ずっと俺は蘭子のプロデューサーでいるつもりだよ」

蘭子「…う、うん!」パァァ

蘭子「じ、実は…さっきちょっとだけ羨ましいなぁって思ってたの…」

P「誰が?」

蘭子「二人共…仲良く話しているなぁって…。私、そこまでお話するのも上手じゃないし…」

P「そうか」

蘭子「や、闇は光が強ければその深さを増すものよ」

蘭子「しかし、その深さ故に光に手が届くことはない…永遠に」

P「俺から見ると蘭子は割と皆と仲良くやってると思うけどな」

蘭子「そ、そうかな?」

P「あぁ、楓さんとかは関係なく話してるし、最初は正直とっつき辛かった人もいるかもしれないけど、今はそんなことは感じないだろ?」

P「トラツグミもいなくなったことだし」

蘭子「弓を奏でる様は見事だったぞ!」

P「ありがとな」

P「昔から蘭子が持っていた幻想の世界は今こうやって現実の物になってきてるよな。

頂上に登る為の階段は蘭子にしか見えないものじゃなくてしっかりと踏みしめられる形になってる」

P「グリモワールの中の世界は現実になるんだよ」

蘭子「…ふっ! 我としたことが世迷言を吐いてしまったようだ」

蘭子「崇高なる使命をおびて、無垢なる翼は黒く染まり、我が世界は現実と一つになる」

蘭子「我に掛かれば現実を幻想たらしめてみせよう!」

P「その意気だ。頑張ろうな」

蘭子「我が魂の赴くままに。其方の願いを叶えよう」

蘭子出る時はsaga入れたほうがいいかも

蘭子の部屋

泰葉「やみのまーです」

蘭子「や、闇に飲まれよ」

泰葉「どうだった今日のお仕事」

蘭子「我が魂の輝きを刻むことが出来たわ。太陽の後ろ姿を二度見送り真の儀式が始まる」

泰葉「流石ですね」

蘭子「…うん」

泰葉「どうかしたの?」

蘭子「蟻の穴ほどの取るに足らぬ綻びが……」

泰葉「うん?」

蘭子「その綻びは遅行性の毒のように我が体を覆い尽くしかねん」

泰葉「えっと…緊張してるって感じ」

蘭子「……」コクン

泰葉「だ、大丈夫ですって」

蘭子「わ、私は……もん」

泰葉「なんですか?」

蘭子「同志泰葉のように…上手く舞う自信が…ないのだ」

蘭子「その…良くないことばっかり考えちゃって…」

>>29
参考にします。
ありがとうございます。

泰葉「面白みがない。華が無い」

蘭子「え…?」

泰葉「私の演技を見た人の感想の一つです」

泰葉「蘭子ちゃんの言った私の演技なんてそんな風に見えるみたいですよ」

蘭子「そ、そんなこと…ない!」

泰葉「ありがとうございます。確かにそう言ってくれる監督の方もいるのは事実です」

泰葉「面白いですよね。同じものを見てるはずなのに。意見が分かれるなんて」

泰葉「人によってあるモノを見た時の解釈は異なるはずです」

泰葉「それはまるで気高き主が蠅の王とされたように」

蘭子「……!」ピク

泰葉「ま。私はそういう詳しいことは分からないんですけどね」アハハ

泰葉「今回オファーをくれた人は少なくとも蘭子ちゃんを買ってくれてるのは事実ですよ」

泰葉「それに…下僕からの期待に応えるのも魔王の宿命じゃないんですか?」

蘭子「ふ、ふふふ…!その通りだ。我としたことがその宿命を忘れていた」

蘭子「民の期待に応えてこその魔王」

蘭子「いざ、見せてやらん。我が魂の赴くままに!」ビシッ

泰葉「そう。その意気です!」

蘭子「あのね…その…ありがとう」ペコリ

泰葉「いえいえ。私は別に」

泰葉「私は蘭子ちゃんって凄いと思うよ」

蘭子「え…?」

泰葉「自分の、自分だけの世界を持ってますから」

蘭子「そ、そうかな…」

泰葉「その世界に他人を巻きこんじゃえ。そういう魅力があるのは間違いないですよ」

泰葉「子供っぽいって言う人もいるかもしれないですけど、いいじゃないですか。昔は皆子供だったんですから」

泰葉「無駄なことなんて一つもない。そういう風に思います」

蘭子「……」

泰葉「なーんてちょっとくどかったですか…ね?」

蘭子「……あれ?」ポロポロ

泰葉「だ、大丈夫ですか?」

蘭子「え、あ…うん。そのえっと……なんて言うか…えっと」

蘭子(なんでだろう…涙が止まらない…)

蘭子「…っ…ひっく」

泰葉「大丈夫だよ。頑張れ」

泰葉「蘭子ちゃんはきっと誰かにそう言って欲しかったんですね……プロデューサーさん以外の誰かから」

蘭子「……っ!」ギュ

泰葉「よしよし」ナデナデ

三日後

P「さてと頑張るか」

蘭子「うむっ!」

P「なんか吹っ切れた顔してるな」

蘭子「我は一人ではないと知ったから」

P「そうだな」

P(なんかあったのかな)

蘭子「民の期待を応えるのも魔王の宿命よ」

P「魔王だったり、シンデレラだったり多忙だな蘭子は」

蘭子「そうでもあるまい。その二つは元を辿れば同じものよ。どちらから見るかの違いでしかない」

蘭子「魔王もシンデレラも共にこの我、神崎蘭子だ」

P「そうか。俺はさ、魔法使いでもなんでもないけど、かぼちゃを馬車に変えるように、ネズミを白馬に変えることは出来たかなと思う」

P「ただ、そこから目的の舞踏会へ馬を走らせるのは俺だけじゃ出来ない」

蘭子「我を勧誘せしめた言葉。忘れるわけがない」

P「俺は自分の目でスカウトした蘭子のことを信じてるからな」

蘭子「ふふふ…当然よ!」

P「なんか俺が緊張してきたな」

蘭子「あ、あの…」

P「どうした?」

蘭子「えっと…ありがとう」

P「いきなりどうした?」

蘭子「その…そういう気分なの!」

P「そ、そうか」

蘭子「オホン…。あ、ありがとう…わ、私の声を聞きとってくれて…そのこれからも…よろしくね?」

P「分かってるって」

蘭子「たまにはこうして…本当の私の言葉を聞いてくれると嬉しいな」

P「おう。分かった」

蘭子「ふふっ…闇に飲まれよ♪」ニコ

終わりです。

読んで下さった方ありがとうございます。

申し遅れましたが古典シリーズです。

蘭子の言葉は難しいですね…私は上手く書ける気がしません。

簡単な解説です。

『気高き主』と『蠅の王』というのはベルゼブブのことを表しています。

本来はバアルゼブルという名前でしたが、キリスト教にとって異教の神であった為、バアルゼブブ即ち『蠅の王』と蔑まれたのが始まりとされています。

名前と蠅の姿は見たことがあるかもしれません。

『レンチキュラー』

見る角度によって絵柄が変化したり、立体感が得られたりする印刷物のことです。

説明が難しいので調べて頂けると幸いです。

余談ですが、杏の言っていた『ロバ』は怠惰の象徴でもあります。

追記ですが、今月初めのシンデレラステージではお世話になりました。

四月の歌姫などに参加出来ればと考えております。

それでは、失礼いたしました。

なにかあればどうぞ。

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